JP2017137474A - メタクリル系樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

メタクリル系樹脂組成物及びその成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】塗装品並みの漆黒性と、高い耐擦傷性を有するメタクリル系樹脂組成物及びこれを用いた成形体を提供することを目的とする。【解決手段】メタクリル系樹脂(A)と、表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B)と、シロキサン系化合物(C)と、を含む、メタクリル系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、メタクリル系樹脂組成物及びその成形体に関する。
従来、自動車の内外装部品向けに漆黒調に塗装されたABS樹脂等の成形品が用いられている。しかしながら、塗料に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の問題及びコスト削減の観点から、塗装をしない成形品が望まれており、着色コンパウンドによる樹脂への代替について、近年盛んに検討されている。
着色コンパウンドについて、例えば、染料を熱可塑性樹脂へ混合する(コンパウンドする)方法が古くより用いられている。熱可塑性樹脂としては、主にメタクリル系樹脂が用いられることが近年多くなっている。その理由は、メタクリル系樹脂が耐候性に優れることと、樹脂の中で最も透明性の高い部類に属するためである。特に、成形品に良好な漆黒性を発現させるには、コンパウンドのベース樹脂の透明性は重要である。
染料を用いて漆黒性を発現する場合、通常、補色関係にある染料を組み合わせて用いられる。なお、ここでいう「補色関係」とは、2色の場合なら色相環で正反対に位置する関係を意味する。また、3色であれば、そのうちの2色の減法混合で生成した色相と残りの1色とが、色相環で正反対に位置する関係を意味し、4色以上でも同様である。
染料以外にも、カーボンブラックをコンパウンドして漆黒性を発現する方法も提案されている。例えば、特許文献1では、特定量の揮発成分を有する市販のカーボンブラックを用いることで、従来にない成形板表面平滑性及び漆黒性を実現することを意図した方法が提案されている。また、特許文献2では、特定の粒径範囲のカーボンブラックをアクリル樹脂及び分散剤等の添加剤と共に2回ペレット化してマスターバッチを作製し、そのマスターバッチを使用してアクリル樹脂にコンパウンドすることで、カーボンブラックの凝集がなく、漆黒性を発現させたアクリル樹脂を実現することを意図した方法が提案されている。
他方で、近年のトレンドとして、高い漆黒性を維持しつつ、表面の耐擦傷性を向上させた材料やその成形体が切望されている。
アクリル樹脂は、熱可塑性樹脂の中でも高い表面鉛筆硬度及び耐引掻性を有することが一般的に知られているが、特に高い要求が表面に課せられる用途においては、アクリル樹脂ですら、様々な摩耗現象に耐えることができず、しばしばハードコート処理をされることが多い。この問題を解決する方法として、例えば、特許文献3では、アクリル系樹脂と特定のシロキサン化合物を含有させることにより、耐擦性や耐引掻性を向上させる技術が提案されている。
特開平11−228764号公報 国際公開第2011/152449号 特表2013−537252号公報
特許文献1には直接の記載はないものの、その実施例に記載されているカーボンブラックのメーカーの資料には、「カーボンブラックを950℃で7分間加熱した際の揮発(減量)分。一般に表面官能基が多いほど、揮発する成分は多くなる。」との記述がある。このことから、特許文献1に記載された技術の本質は、表面官能基の多いカーボンブラックを用いることで、その周囲の樹脂との親和性を高めて漆黒性を発現させようとしていることにあると推定される。また、特許文献2に記載の方法は、マスターバッチの作製までに2回、及び最終樹脂組成物の調製の際に1回、の合計3回コンパウドを実施している。すなわち、特許文献2に記載された技術の本質は、分散剤の力を借りながら、基本的にはコンパウンドを繰り返して徹底的にせん断をかけることによって、カーボンブラックの分散性を向上させ、漆黒性を発現させようとしていることにあると推定される。
ところで、染料をメタクリル系樹脂にコンパウンドして漆黒性を発現させようとすると、特に肉厚の薄い成形品を作製する場合に遮蔽性が問題となる。すなわち、他部材の上に成形品を取り付けた場合、取り付けられた側の部材の表面が成形品を通して透けて見えてしまったり、また、その取り付けが両面テープによるものの場合では、そのテープが透けて見えてしまったりして、外見上、好ましくない。
この遮蔽性の問題は、染料の配合量を増量すれば解決できるが、その一方で、多量の染料の配合は、機械的・熱的物性の低下と原料コストの上昇とを招いてしまう。更に染料は一般的に耐候性に劣るため、自動車の外装部材のように屋外で使用される場合は、退色性も問題となる。
これら遮蔽性及び退色性の改善のため、染料と共に微量のカーボンブラックを併用する方法がある。カーボンブラックは光透過性の低い無機物なので、微量添加でも遮蔽性を発現でき、かつ微量添加であれば機械的・熱的物性の低下を抑制できる。しかしながら、カーボンブラックによる黒着色は、業界で「白ボケ」と呼ばれる、白味を帯びた黒着色となってしまうため、特に高い漆黒性が求められる用途では好適ではない。なお、この「白ボケ」のメカニズムはまだよく分かっていない。ただ、本発明者らは、カーボンブラック表面とマトリックスである樹脂表面との間に空隙が存在し、ここで入射光が光散乱を生じていることが「白ボケ」の原因であると考えている。
上記特許文献1及び特許文献2に記載の方法は、通常のカーボンブラックによる方法と比較すれば、確かに漆黒性の向上は認められる。しかしながら、どちらの方法も、塗装品や染料のみを用いた成形品の漆黒性と比較してしまうと、まだその域に及んでおらず不十分である。本発明者らは、特許文献1に記載されたカーボンブラック表面に特殊官能基を持たせることで周囲の樹脂とカーボンブラックとの密着性を高める手法、及び、特許文献2に記載された徹底的にせん断をかけて密着性を高めようとする手法では、周囲に存在する樹脂が溶融状態でもやはり高粘度であるため、上記空隙に入り込んで埋めるには難しいのではないかと考えている。
他方で、上記特許文献3に記載の方法では、表面の耐擦傷性は改良されているものの、黒色染料を併用した場合の上述の「白ボケ」の改善については記載も示唆もなく、さらに、シロキサン系化合物の添加により、漆黒性が低下してしまうことが予想される。
以上のような状況の中、本発明においては上述の従来技術の問題点に鑑み、塗装品並みの漆黒性と、高い耐擦傷性を有するメタクリル系樹脂組成物及びこれを用いた成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、メタクリル系樹脂組成物において、特定のカーボンブラックと特定構造のシロキサン系化合物を併用することで、上述の従来技術における課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
メタクリル系樹脂(A)と、
表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B)と、
シロキサン系化合物(C)と、を含む、
メタクリル系樹脂組成物。
〔2〕
前記シロキサン系化合物(C)が、下記式(I)で表されるものである、〔1〕に記載のメタクリル系樹脂組成物。
(式(I)中、Rは、各々独立して、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基であり、R1は、各々独立して、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基又はポリエステル基であり、R2は、各々独立して、ポリエステル基又は12〜36個の炭素原子を有する炭化水素基であり、n、m、及びpは、各々独立して、0〜58であり、かつ、N=n+m+p+2は、15〜75を満たし、m及びpが0である場合、全てのR1はポリエステル基である。)
〔3〕
前記表面コーティング剤が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアリルアミド、及びエチレンビスステアリルアミドからなる群より選ばれる1種以上を含む、〔1〕又は〔2〕に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔4〕
染料(D)をさらに含む、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔5〕
前記染料(D)が、赤系染料、黄系染料、緑系染料、青系染料、及び紫系染料からなる群より選ばれる3種以上の染料を含む、〔4〕に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔6〕
前記染料(D)が、アントラキノン系染料、複素環式化合物系染料、及びペリノン系染料からなる群より選ばれる1種以上を含む、〔4〕又は〔5〕に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔7〕
前記染料(D)の総質量xと前記カーボンブラック(B)の総質量yとの比率x/yが、下記式(II)で表される条件を満足する、〔4〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
4<x/y<50 …(II)
〔8〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した前記メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が、50000〜300000であり、かつ、
前記メタクリル系樹脂(A)のGPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の量が、前記メタクリル系樹脂(A)の前記GPC溶出曲線の総面積に対して、6〜50%である、〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔9〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物を含む、成形体。
〔10〕
JIS B0601:2013に基づく算術平均粗さRaの値が0.1μm以下である平滑面を有し、
分光変角色差計を用いた前記平滑面に対する45°反射測定において、−20°〜20°の測定範囲での反射光のL*平均値が0.15以下である、〔9〕に記載の成形体。
〔11〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物を含む、射出成形体。
〔12〕
前記成形体の厚さt(単位:mm)と流動長L(単位:mm)との間に下記式(III)で表される関係を有し、1つのゲート部を有する、〔9〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の成形体。
L/t<150 …(III)
〔13〕
前記厚さtが、1.5mm以上3.0mm以下である、〔12〕に記載の成形体。
〔14〕
前記成形体の形状が長方形又は略長方形の意匠面を有する短冊状であり、かつ、前記長方形又は略長方形の一方の短辺側に、前記意匠面から前記成形品の厚み方向に一段下がった面を有し、
該一段下がった面が、前記成形体を得る際に前記1点ゲートの金型におけるゲートと接触するものであり、前記一段下がった面上に別部材が存在する場合に、前記成形体を成形により得る際に前記ゲートに接触する前記成形体の部分が前記別部材により覆われる、〔12〕又は〔13〕に記載の成形体。
〔15〕
自動車用の意匠材である、〔9〕〜〔14〕のいずれか一項に記載の成形体。
〔16〕
テールランプガーニッシュ、フロントランプガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、リアグリル、及びナンバープレートガーニッシュのいずれかである、〔15〕に記載の成形体。
本発明によれば、塗装品並みの漆黒性と、高い耐擦傷性を有するメタクリル系樹脂組成物及びこれを用いた成形体を提供することができる。
実施例における分光変角色差計を用いた45°反射測定の結果の一例を示す図である。 本実施形態の成形品の一例を模式的に示す斜視図である。 実施例における耐擦傷試験の一例を模式的に示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
なお、本明細書において、重合前のモノマー成分のことを「〜単量体」といい、「単量体」を省略することもある。また、重合体を構成する構成単位のことを「〜単量体単位」といい、単に「〜単位」と表記することもある。
〔メタクリル系樹脂組成物〕
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)と、表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B)と、シロキサン系化合物(C)と、を含む。
以下、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
〔メタクリル系樹脂(A)〕
メタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステル単量体単位からなる単独重合体であっても、メタクリル酸エステル単量体単位と、該メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な他のビニル単量体単位(以下、単に「他のビニル単量体」ともいう)とを含む共重合体であってもよい。このなかでも、共重合体が好ましい。
(メタクリル酸エステル単量体)
メタクリル系樹脂(A)を構成するメタクリル酸エステル単量体としては、本発明の効果を達成できるものであれば特に限定されないが、好ましい例としては、下記一般式(IV)で示される単量体が挙げられる。
(一般式(IV)中、R3は、1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、該炭化水素基の炭素上の水素原子は水酸基やハロゲン基によって置換されていてもよい。)
メタクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2−エチルヘキシル)、メタクリル酸(t−ブチルシクロヘキシル)、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸(2,2,2−トリフルオロエチル)等が挙げられる。このなかでも、取扱いや入手のし易さの観点より、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル等がより好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。上記メタクリル酸エステル単量体は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
メタクリル系樹脂(A)が共重合体である場合、上記メタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂(A)の総量に対して、好ましくは80〜99.9質量%であり、より好ましくは88〜99質量%であり、さらに好ましくは90〜98質量%である。メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が80質量%以上であることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。また、メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が99.9質量%以下であることにより流動性がより向上する傾向にある。
(他のビニル単量体)
メタクリル系樹脂(A)を構成する上述した他のビニル単量体としては、特に限定されないが、好ましい例としては、下記一般式(V)で表されるアクリル酸エステル単量体が挙げられる。
(一般式(V)中、R4は1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、該炭化水素基の炭素上の水素原子は水酸基やハロゲン基によって置換されていてもよい。)
上記アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(t−ブチルシクロヘキシル)、アクリル酸ベンジル、アクリル酸(2,2,2−トリフルオロエチル)等が挙げられる。このなかでも、取り扱いや入手のし易さの観点より、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル等がより好ましく、アクリル酸メチルが特に好ましい。
また、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な、一般式(V)のアクリル酸エステル単量体以外の他のビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等のα,β−不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、桂皮酸等の不飽和基含有二価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、о−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、イソプロペニルベンセン(α−メチルスチレン)等のスチレン系単量体;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;マレイミドや、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド等;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等が挙げられる。
上記メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な、一般式(V)のアクリル酸エステル単量体や、一般式(V)のアクリル酸エステル単量体以外のビニル単量体は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のビニル単量体の含有量は、メタクリル系樹脂(A)の総量に対して、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは1.0〜15質量%であり、さらに好ましくは1.5〜12質量%であり、特に好ましくは2.0〜10質量%である。他のビニル単量体の含有量が0.1質量%以上であることにより、流動性及び耐熱性がより向上する傾向にある。また、他のビニル単量体の含有量が20質量%以下であることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。
メタクリル系樹脂(A)においては、耐熱性、加工性等の特性を向上させる目的で、上記例示したビニル単量体以外のビニル系単量体を適宜添加して共重合させてもよい。
(メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量及び分子量分布)
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物に含まれるメタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量及び分子量分布について説明する。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したメタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、50000〜300000であることが好ましい。メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が上記範囲内であることにより、流動性、機械的強度、及び耐溶剤性のバランスを図ることができ、良好な成形加工性が維持される傾向にある。特に、優れた機械的強度及び耐溶剤性を得る観点から、メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、50000以上が好ましく、60000以上がより好ましく、70000以上がさらに好ましく、80000以上がさらにより好ましく、90000以上がよりさらに好ましい。また、メタクリル系樹脂が良好な流動性を示す観点から、メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は300000以下であることが好ましく、250000以下がより好ましく、230000以下がさらに好ましく、210000以下がさらにより好ましく、180000以下がよりさらに好ましい。
メタクリル系樹脂(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.6〜6.0であり、より好ましくは1.7〜5.0であり、さらに好ましくは1.8〜5.0である。メタクリル系樹脂の分子量分布が上記範囲内であることにより成形加工流動と機械強度のバランスがより優れる傾向にある。ここで、Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPCで測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。具体的には、あらかじめ単分散の重量平均分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル系樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておき、続いて得られた検量線を元に、所定の測定対象のメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めることができる。得られた重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)から分子量分布を算出することができる。数平均分子量(Mn)とは、単純な分子1本あたりの分子量の平均であり、系の全重量/系中の分子数で定義される。重量平均分子量(Mw)とは、重量分率による分子量の平均で定義される。
(ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の存在量)
耐溶剤性、流動性の観点から、メタクリル系樹脂(A)のGPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の量は、メタクリル系樹脂(A)のGPC溶出曲線の総面積に対して、好ましくは6〜50%であり、より好ましくは7〜45%であり、さらに好ましくは8〜43%であり、よりさらに好ましくは9〜40%であ、さらにより好ましくは10〜38%である。メタクリル系樹脂(A)に存在するピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の量が6%以上であることより、成形流動性がより向上する傾向にある。また、メタクリル系樹脂(A)に存在するピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の量が50%以下であることより、耐溶剤性がより向上する傾向にある。
ここで、「ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の量(%)」とは、GPC溶出曲線の全エリア面積を100%とした場合の、ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分に相当するエリア面積の割合であり、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。なお、「ピークトップ分子量(Mp)」とは、GPC溶出曲線においてピークを示す重量分子量を指す。GPC溶出曲線においてピークが複数存在する場合は、存在量が最も多い重量分子量が示すピークにおける分子量を、ピークトップ分子量(Mp)とする。
なお、重量平均分子量が500以下のメタクリル系樹脂成分は、成形時にシルバーと呼ばれる発泡様の外観不良の発生を防止するため、できる限り少ない方が好ましい。
〔メタクリル系樹脂(A)の製造方法〕
メタクリル系樹脂(A)は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合法もしくは乳化重合法のいずれかの方法により製造することができる。このなかでも、好ましくは、塊状重合、溶液重合及び懸濁重合法であり、より好ましくは懸濁重合法である。
重合温度は、重合方法に応じて適宜最適の重合温度を選択すればよいが、好ましくは50℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃以上90℃以下である。
メタクリル系樹脂(A)を製造する際には、重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、特に限定されないが、ラジカル重合を行う場合は、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等のアゾ系の一般的なラジカル重合開始剤が挙げられる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのラジカル開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。
これらのラジカル重合開始剤及び/又はレドックス系開始剤は、メタクリル系樹脂の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して、0〜1質量部の範囲で用いるのが一般的であり、重合を行う温度と重合開始剤の半減期を考慮して適宜選択することができる。
メタクリル系樹脂の重合方法として、塊状重合法、キャスト重合法、又は懸濁重合法を選択する場合には、メタクリル系樹脂の着色を防止する観点から、有機過酸化物を重合開始剤として用いて重合することが好ましい。このような有機過酸化物としては、上記と同様のものが挙げられ、このなかでもラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が好ましく、ラウロイルパーオキサイドがより好ましい。
また、メタクリル系樹脂(A)を、90℃以上の高温下で溶液重合法により重合する場合には、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である有機過酸化物及びアゾビス開始剤等を重合開始剤として用いることが好ましい。このような有機過酸化物及びアゾビス開始剤としては、上記と同様のものが挙げられ、このなかでも1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等が好ましい。
メタクリル系樹脂(A)を製造する際には、必要に応じて、メタクリル系樹脂(A)の分子量の制御を行ってもよい。メタクリル系樹脂(A)の分子量を制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合方法又は重合条件を変える方法、重合開始剤の選択、連鎖移動剤やイニファータ等の量を調整する方法等が挙げられる。これらの分子量制御方法は、一種の方法のみを用いてもよく、二種以上の方法を併用してもよい。
イニファータとしては、特に限定されないが、例えば、ジチオカルバメート類、トリフェニルメチルアゾベンゼン、テトラフェニルエタン誘導体等が挙げられる。
連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等が挙げられる。このなかでも、取扱性や安定性の観点から、アルキルメルカプタン類が好ましい。当該アルキルメルカプタン類としては、特に限定されないが、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
連鎖移動剤及びイニファータは、目的とするメタクリル系樹脂(A)の分子量に応じて適宜添加することができ、連鎖移動剤及びイニファータの添加量を調整することにより、分子量を調整することが可能である。一般的には、メタクリル系樹脂(A)の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して0.001質量部〜5質量部の範囲で用いられる。
また、GPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の存在量が、6〜50%の範囲であるメタクリル系樹脂を製造する方法としては、低分子量のメタクリル系樹脂と高分子量のメタクリル系樹脂とを溶融ブレンドする方法や、多段重合法により製造する方法等が挙げられる。上記のMpの1/5以下の分子量成分の存在量が6〜50%のメタクリル系樹脂(A)を製造する場合、その方法については特に限定されるものではないが、品質安定性の観点から多段重合法を使用することがより好ましい。
多段重合法を使用する場合、まず、1段目の重合において、メタクリル酸エステル単量体と他のビニル単量体とを重合し、GPCで測定した重量平均分子量が5000〜50000である重合体(i)を製造することが好ましい。次に、重合系内を1段目の重合温度よりも高い温度に一定時間保持する。その後、重合体(i)の存在下で、メタクリル酸エステル単量体と他のビニル単量体とをさらに重合し、重量平均分子量が60000〜350000である重合体(ii)を製造することが好ましい。なお、メタクリル系樹脂(A)が単独重合体である場合には、他のビニル単量体を用いずに、1段目及び2段目の重合において、単独重合を行う。また、メタクリル系樹脂(A)が単独重合体と共重合体の混合物であるような場合には、1段目の重合において単独重合を行い、2段目の重合において共重合を行うこともできる。
製造時の重合安定性及びメタクリル系樹脂(A)の流動性や樹脂成形体の機械的強度を向上させる観点から、重合体(i)の含有量は、メタクリル系樹脂(A)の総量に対して、好ましくは5〜50質量%であり、重合体(ii)の含有量は、メタクリル系樹脂(A)の総量に対して、好ましくは95〜50質量%である。重合安定性、流動性、成形体の機械的強度のバランスを考慮すると、重合体(i)/重合体(ii)の含有量比率は、より好ましくは7〜47質量%/93〜53質量%、さらに好ましくは10〜45質量%/90〜65質量%であり、さらにより好ましくは13〜43質量%/87〜57質量%であり、よりさらに好ましくは15〜40質量%/85〜60質量%である。
さらに、重合体(i)は、メタクリル酸エステル単量体単位80〜100質量%及び他のビニル単量体単位0〜20質量%を含む重合体であることが好ましく、メタクリル酸エステル単量体単位90〜100質量%及び他のビニル単量体単位0〜10質量%を含む重合体であることがより好ましく、メタクリル酸エステル単量体単位95〜100質量%及び他のビニル単量体単位0〜5質量%を含む重合体であることがさらに好ましい。重合体(i)を構成する単量体単位の比率は、多段重合の重合体(i)の重合工程において添加する単量体量を制御することにより調整することができる。重合体(i)は、他のビニル単量体の含有量が少ない方が好ましく、他のビニル単量体を含まなくてもよい。
また、成形時のシルバー等の不具合抑制、重合安定性、流動性の観点から、重合体(i)の重量平分均子量は、好ましくは5000〜50000であり、より好ましくは10000〜45000であり、さらに好ましくは18000〜42000であり、特に好ましくは20000〜40000である。重合体(i)の重量平均分子量は、上述したように、連鎖移動剤やイニファータを用いたり、これらの量を調整したり、重合条件を適宜変更することにより制御できる。重合体(i)の重量平分均子量は、上記同様、GPCで測定することができる。
重合体(ii)は、メタクリル酸エステル単量体単位80〜99.9質量%及び他のビニル単量体単位0.1〜20質量%を含む重合体であることが好ましく、メタクリル酸エステル単量体単位90〜99.9質量%及び他のビニル単量体単位0.1〜10質量%を含む重合体であることがより好ましく、メタクリル酸エステル単量体単位92.5〜99.8質量%及び他のビニル単量体単位0.2〜7.5質量%を含む重合体であることがさらに好ましい。重合体(ii)を構成する単量体単位の比率は、多段重合の重合体(ii)の重合工程において添加する単量体量を調整することにより制御することができる。
また、耐溶剤性、流動性の観点から、重合体(ii)の重量平分均子量は、好ましくは60000〜350000であり、より好ましくは100000〜320000であり、さらに好ましくは130000〜300000であり、よりさらに好ましくは150000〜270000である。重合体(ii)の重量平均分子量は、上述したように、連鎖移動剤やイニファータを用いたり、これらの量を調整したり、重合条件を適宜変更することにより制御できる。重合体(ii)の重量平分均子量は、上記同様、GPCで測定することができる。
上記多段重合法は、重合体(i)と重合体(ii)のそれぞれの組成を制御しやすく、重合時の重合発熱による温度上昇が押さえられ、系内の粘度も安定化できる。この場合、重合体(i)の重合が完了しないうちに重合体(ii)の原料組成混合物は一部重合が開始されている状態であってもよいが、一度キュア(この場合、系内を重合温度より高い温度に保つこと)を行い、重合を完了させた後に重合体(ii)の原料組成混合物を添加する方が好ましい。1段目にキュアを行うことにより、重合が完了するだけでなく、未反応の単量体、開始剤、連鎖移動剤等を除去又は失活させることができ、2段目の重合に悪影響を及ぼさなくなる。結果として、目的の重量平均分子量を得ることができる。
重合温度は、重合方法に応じて適宜最適の重合温度を選択して製造すればよいが、好ましくは50℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃以上90℃以下である。重合体(i)及び重合体(ii)の重合温度は、同じであっても異なっていてもよい。
キュアの際に昇温させる温度は、重合体(i)の重合温度よりも5℃以上高くすることが好ましく、より好ましくは7℃以上、さらに好ましくは10℃以上である。さらに、キュアの際に昇温した温度で保持する時間は、10分間以上180分間以下が好ましく、より好ましくは15分間以上150分間以下である。
〔表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B)〕
カーボンブラック(B)は、その表面を表面コーティング剤によりコーティングされたものである。このようなカーボンブラック(B)を用いることにより、より深みのある漆黒性を発現できる。
表面コーティング剤としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアリルアミド及びエチレンビスステアリルアミド(EBS)が挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸亜鉛及びEBSがより好ましい。このような表面コーティング剤を用いることにより、より深みのある漆黒性を実現できる傾向にある。表面コーティング剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
なお、これらの化合物は、カーボンブラック等の顔料分散剤としても通常用いられるものでもある。ただし、分散剤としてこれらの化合物を用いる場合、カーボンブラックとただ粉体同士を混ぜ合わせるだけであるため、カーボンブラックの表面をコーティングする表面コーティング剤としては機能していない状態にある。この状態のカーボンブラックは、上記化合物を表面コーティング剤として用いた場合と比較して、メタクリル系樹脂にコンパウンドした場合の漆黒性が低くなる傾向にある。本発明者らは、表面コーティング剤をその融点以上に加熱した後でカーボンブラックと混ぜ合わせてせん断をかけ、十分撹拌することで、表面コーティング剤のカーボンブラックとの配合比を分散剤として用いる場合と全く同じ組成にした場合であっても、上記化合物が表面コーティング剤として機能し、漆黒性を著しく向上できることを見出した。このメカニズムとして本発明者らは下記を推定している。すなわち、上記のとおり本発明者らは、カーボンブラック表面とマトリックスである樹脂表面との間に空隙が存在し、ここで入射光が光散乱を生じていることが、漆黒性を十分に発現できない状態である「白ボケ」の原因であると考えている。この点において、表面コーティング剤をその融点以上に加熱した後でカーボンブラックと混ぜ合わせて撹拌することにより、そのカーボンブラック表面に存在する微細な凹凸、又は複数のカーボンブラック粒子間に存在する空隙をより容易に埋めることができると推定される。また、溶融樹脂とのコンパウンドの前に、表面コーティング剤でカーボンブラック表面の凹凸又はカーボンブラック粒子間の空隙を埋めておくことにより、コンパウンド時のマトリックスである溶融樹脂がそれらの凹凸や空隙を埋めることができるか否かにかかわらず、「白ボケ」をより十分に抑制するという観点から極めて有効な手段であると考える。
なお、上述の推定メカニズムに基づけば、表面コーティング剤は特に上記で例示した化合物に限定されず、メタクリル系樹脂と相溶性があり、かつその物性に影響を与え難い物質であれば好適に使用できることは容易に類推される。
カーボンブラックが表面コーティング剤によりその表面をコーティングされている場合、カーボンブラックの質量Wcと表面コーティング剤の質量Wsとの比率(Wc/Ws)は、好ましくは20/80〜60/40であり、より好ましくは30/70〜50/50である。Wc/Wsが上記範囲内であることにより、より深みのある漆黒性を実現することができる傾向にある。
カーボンブラック(B)の含有量は、メタクリル系樹脂組成物の総量に対して、好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下であり、より好ましくは0.02質量%以上1.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下である。カーボンブラック(B)の含有量が0.01質量%以上であることにより、特に肉厚の薄い成形品であっても遮蔽性を高く維持することができる傾向にある。また、カーボンブラック(B)の含有量が1.5質量%以下であることにより、十分に深みのある漆黒性を発現することができる傾向にある。また、表面コーティング剤を除いたカーボンブラックの含有量としては、メタクリル系樹脂組成物の総量に対して、好ましくは0.001質量%以上0.6質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以上0.4質量%以下である。
また、コーティング前のカーボンブラックの種類として、より具体的には、顕微鏡観察による算術平均粒径が10〜40nm、JIS K6217:2001で規定される窒素吸着比表面積が50〜300m2/g、及び950℃で7分間加熱した際の揮発分が0.5〜3質量%であることのうち1種以上の条件を満たすカーボンブラックを好適に使用できる。
〔シロキサン系化合物(C)〕
シロキサン系化合物(C)としては、特に限定されないが、例えば、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基を有するシロキサン系化合物、ポリエステル基を有するシロキサン系化合物、12〜36個の炭素原子を有する炭化水素基を有するシロキサン系化合物等が挙げられる。このなかでも、ポリエステル基を有するシロキサン系化合物が好ましい。また、シロキサン系化合物(C)は、直鎖状、環状、分岐状のいずれの構造を有してもよいが、このなかでも直鎖状のシロキサン系化合物が好ましく、ポリエステル基を有する直鎖状のシロキサン系化合物がより好ましい。
また、シロキサン系化合物(C)として、より具体的には、下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
(式(I)中、Rは、各々独立して、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基であり、R1は、各々独立して、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基又はポリエステル基であり、R2は、各々独立して、ポリエステル基又は12〜36個の炭素原子を有する炭化水素基であり、n、m、及びpは、各々独立して、0〜58であり、かつ、N=n+m+p+2は、15〜75を満たし、m及びpが0である場合、全てのR1はポリエステル基である。)
R又はR1で表される1〜11個の炭素原子を有するアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、テキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等、が挙げられる。
2で表される12〜36個の炭素原子を有する炭化水素基としては、直鎖状、分岐状、又は環状の脂肪族炭化水素基;芳香族炭化水素基等が挙げられる。
1及び/又はR2で表されるポリエステル基は、好ましくは3〜30個のエステル単位から構成される基であり、より好ましくは8〜25個のエステル単位から構成される基であり、さらに好ましくは15〜25個のエステル単位から構成される基である。このようなポリエステル基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(VI)で表される基が挙げられる。
式(VI):−Rq−(Rru
(式(VI)中、Rqは、−(CH2s−O−で表される基であり、Rrは、各々独立して、C(O)−(CH2t−O−で表される基であり、sは、2〜10、好ましくは3〜7、より好ましくは6であり、tは2〜10、好ましくは3〜8、より好ましくは4又は5であり、uは3〜30、好ましくは8〜25、より好ましくは15〜25である。)
ポリエステル基は、同じ又は異なる出発分子から構成されていてもよい。ポリエステル基は、好ましくは同じ出発分子から構成されている。ポリエステル基は、好ましくは開環によって進む、ラクトンのポリ(エステル化)によって得られるものであり、より好ましくはカプロラクトン又はバレロラクトン、殊にε−カプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン又はδ−カプロラクトンによって得られるものであり、さらに好ましくはε−カプロラクトンのポリ(エステル化)によって得られるものである。R1及び/又はR2がポリエステル基である式(I)におけるより好ましい化合物は、ポリエステル基が3〜30個、好ましくは8〜25個、より好ましくは15〜25個のε−カプロラクトン単位から構成されているものである。さらに好ましくは、全てのR1は同じポリエステル基である。
1のほかに1つ以上のR2もポリエステル基である場合が、さらに好ましい。式(I)の化合物中、R1も1つ以上のR2もポリエステル基である場合、これらのポリエステル基は、同じであることがさらにより好ましい(同じ数の出発分子単位を有する)。
1が全てRである(ここで、Rは、好ましくはメチル基である)場合、R2は、好ましくは12〜36個の炭素原子、より好ましくは20〜30個の炭素原子、さらに好ましくは24〜30個の炭素原子を有する炭化水素基であり、また、nは、好ましくは30以上、より好ましくは40〜50である。pは、上述の場合、好ましくは0であり、かつmは、好ましくは30〜48である。
1及び/又はR2の1つ以上がポリエステル基である場合、nは、有利には10〜45、有利には20〜30、特に有利には20〜30未満である。R2がポリエステル基である場合、pは、好ましくは0であり、かつmは1〜10、より好ましくは2〜5の値を有する。
式(I)で表されるシロキサン系化合物(C)は、好ましくは、R2がポリエステル基であるか又は12〜36個の炭素原子を有する炭化水素基である化合物である。
2が炭化水素基である式(I)で表されるシロキサン系化合物(C)のうち、好ましい化合物は、R1=R=メチル、n=40〜50、より好ましくは40又は50であり、かつR2が30個の炭素原子を有するアルキル基又は24〜28個の炭素原子を有するアルキル基の混合物である化合物である。
1及び/又はR2がポリエステル基である式(I)で表されるシロキサン系化合物(C)のうち、好ましい化合物は、R=メチル及びn=20〜45であり、かつポリエステル基が15〜25個のエステル単位を有する化合物である。
式(I)で表されるシロキサン系化合物(C)のうち、好ましい化合物(p=0、Rq=ヘキサノール基及びR=メチル)は、以下の表1から読み取ることができる。
式(I)で表されるシロキサン系化合物(C)の市販品としては、特に限定されないが、例えば、Evonik Goldschmidt GmbHより得られるTEGOMER(R)H−Si 6440 P及びTEGOPREN 6846が挙げられる。
式(I)で表されるシロキサン系化合物(C)は、相応する水素シロキサンと不飽和炭化水素若しくは飽和アルコールとの反応及び引き続く(ポリ)エステル化によって、又は不飽和ポリエステルと水素シロキサンとの直接反応によって得ることができる。反応は、EP1640418に記載されるようにヒドロシリル化によって若しくは脱水素的ヒドロシリル化によって行われることができる。ポリエステル基を有するポリシロキサンの製造方法は、例えば、EP0208734を参考にできる。
シロキサン系化合物(C)の含有量は、メタクリル系樹脂組成物の総量に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上8質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上7質量%以下であり、さらにより好ましくは0.1質量%以上6質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以上4質量%以下である。シロキサン系化合物(C)の含有量が0.01質量%以上であることより、メタクリル系樹脂組成物を含む成形体の耐擦傷性がより向上する傾向にある。また、シロキサン系化合物(C)の含有量が10質量%以下であることより、漆黒性がより向上する傾向にある。
〔染料(D)〕
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、カーボンブラックに加えて、染料(D)を含むことが、より漆黒性の深みを増す上で好ましい。更に深みのある漆黒性を発現させる観点から、メタクリル系樹脂組成物が、3種以上の染料を含むことが好ましく、それらの染料は、互いに色相の異なる3種以上の染料であるとより好ましく、赤系染料、黄系染料、緑系染料、青系染料及び紫系染料からなる群より選ばれる3種以上の染料であることが更に好ましい。単純に青系染料と黄系染料との組合せのみ、又は緑系染料と赤系染料との組合せのみという狭い範囲での組合せよりも、所謂光の3原色をまんべんなく含んだ組合せによって漆黒性を発現させる方が、より深みを増した漆黒性を発現させる観点で好ましいからである。そのような組合せとしては、例えば、紫系染料、緑系染料、黄系染料及び青系染料の組合せ;紫系染料、黄系染料、緑系染料及び赤系染料の組合せ;赤系染料、緑系染料及び青系染料の組合せ、といった、複数の系統の染料の適量ずつの組合せが挙げられ、これらの中では、既に多くの市販製品があり、後述する耐光性染料の種類も多いのでより所望の漆黒性を実現しやすいという観点から、赤系染料、緑系染料、黄系染料及び青系染料の組合せが好ましい。
赤系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent red 52、同111、同135、同145、同146、同149、同150、同151、同155、同179、同180、同181、同196、同197、同207、Disperse Red 22、同60、及び同191等が挙げられる。青系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Blue 35、同45、同78、同83、94、同97、同104、及び同105等が挙げられる。黄系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Disperse Yellow 54、同160、及びSolvent yellow 33が挙げられる。緑系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Green 3、同20、及び同28等が挙げられる。紫系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Violet 28、同13、同31、同35、及び同36等が挙げられる。これらの染料は各色毎に、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
なお、染料の種類は特に限定されないが、耐候性の観点から、アントラキノン系染料、複素環式化合物系染料及びペリノン系染料からなる群より選ばれるものが好ましい。アントラキノン系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Violet 36、Solvent Green 3、同28、Solvent Blue 94、同97、及びDisperse Red 22等が挙げられる。複素環式化合物系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Disperse Yellow 160等が挙げられる。ペリノン系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent red 179等が挙げられる。これらはそれぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
また、メタクリル系樹脂組成物における染料(D)の配合量について、配合される染料(D)の総質量xと、カーボンブラック(B)の総質量y(xとyは同単位である。)との比率x/yが、下記式(II)で表される条件を満足することが好ましい。
4<x/y<50 …(II)
一般的に、染料はカーボンブラックよりも高価なため、x/yを50未満とすることにより、染料の割合を低くして、コスト的なメリットを向上させることができる。一方、x/yが4を超えると、カーボンブラックに対する染料の割合が適度に高くなり、染料を添加することによる漆黒性の深みを増す効果が更に向上する。同様の観点から、比率x/yは、下記式(IIa)で表される条件を満足することがより好ましく、下記式(IIb)で表される条件を満足することが更に好ましい。
9<x/y<15 …(IIa)
10<x/y<12 …(IIb)
〔本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の含有し得るその他の材料〕
(その他の樹脂)
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物には、必要に応じて、メタクリル系樹脂(A)以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂は、特に限定されるものではなく、公知の硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が好適に使用される。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体)、AS系樹脂(アクリロニトリル−スチレン系共重合体)、BAAS系樹脂(ブタジエン−アクリロニトリル−アクリロニトリルゴム−スチレン系共重合体、MBS系樹脂(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン系共重合体)、AAS系樹脂(アクリロニトリル−アクリロニトリルゴム−スチレン系共重合体)、生分解性樹脂、ポリカーボネート−ABS樹脂のアロイ、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。このなかでも、特に、AS樹脂、BAAS樹脂は、流動性を向上させるために好ましく、ABS樹脂、MBS樹脂は耐衝撃性を向上させるために好ましく、また、ポリエステル樹脂は耐薬品性を向上させるために好ましい。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等は難燃性を向上させるために好ましい。
硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、キシレン樹脂、トリアジン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、オキセタン樹脂、ケトン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、スチリルピリジン樹脂、シリコン樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
上述した樹脂は、一種のみを単独で用いても、二種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
(添加剤)
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物には、必要に応じて、各種の添加剤を添加してもよい。
添加剤としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系等の可塑剤;高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ、又はトリグリセリド系等の離型剤;ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等の帯電防止剤;酸化防止剤、及び紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等の安定剤;難燃剤、難燃助剤、硬化剤、硬化促進剤、導電性付与剤、応力緩和剤、結晶化促進剤、加水分解抑制剤、潤滑剤、衝撃付与剤、摺動性改良剤、相溶化剤、核剤、強化剤、補強剤、流動調整剤、染料、増感材、着色用顔料、ゴム質重合体、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、充填剤、消泡剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌・防黴剤、防汚剤、導電性高分子等が挙げられる。
特に、熱安定剤、紫外線吸収剤、及び難燃剤等を添加することが好ましい。また、応力緩和剤や衝撃付与剤として、ゴム質共重合体を添加してもよい。
(熱安定剤)
熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工安定剤等の酸化防止剤等が挙げられる。このなかでも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。このような熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−о−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリン)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノール等が挙げられ、ペンタエリスリトールテラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。このなかでも、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物が好ましい。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、優れた成形加工性を得る観点から、紫外線吸収剤の20℃における蒸気圧(P)は、好ましくは1.0×10-4Pa以下であり、より好ましくは1.0×10-6Pa以下であり、さらに好ましくは1.0×10-8Pa以下である。ここで、「優れた成形加工性」とは、例えば射出成形時に、金型表面への紫外線吸収剤の付着が少ないことや、フィルム成形時に、紫外線吸収剤のロールへの付着が少ないこと等を意味する。紫外線吸収剤がロールへ付着すると、最終的に目的とする成形体の表面に紫外線吸収剤が付着してしまい、外観性、光学特性を悪化させるおそれがあるため、成形体を光学用材料として使用する場合は特に上記成形加工性に優れていることが重要である。
また、ブリードアウト防止の観点から、紫外線吸収剤の融点(Tm)は、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは130℃以上であり、さらにより好ましくは160℃以上である。
さらに、ブリードアウト防止の観点から、23℃から260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の紫外線吸収剤の質量減少率は、好ましくは50%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、さらにより好ましくは10%以下であり、よりさらに好ましくは5%以下である。
(難燃剤)
難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、環状窒素化合物、リン系難燃剤、シリコン系難燃剤、籠状シルセスキオキサン又はその部分開裂構造体、シリカ系難燃剤が挙げられる。
メタクリル系樹脂組成物と種々の添加剤や、上述した他の樹脂とを混合する場合の混練方法としては、後述する〔メタクリル系樹脂組成物の製造方法〕に記載した方法に従えばよく、特に限定されるものではない。
〔メタクリル系樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態に係るメタクリル系樹脂組成物は、例えば、メタクリル系樹脂(A)、カーボンブラック(B)、シロキサン系化合物(C)及び必要に応じて配合される染料(D)などのその他の原料を撹拌によって十分混合させた後で、溶融混練(コンパウンド)することによって得ることができる。あるいは、カーボンブラック(B)、シロキサン系化合物(C)及び/又は染料(D)を用い、メタクリル系樹脂(A)をベースとした高濃度のマスターバッチを溶融混練して調製し、そのマスターバッチを他のメタクリル系樹脂(A)を用いて薄めて溶融混練しても、本実施形態に係るメタクリル系樹脂組成物を得ることができる。
溶融混練方法としては、例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練製造する方法が挙げられる。このなかでも、特に、押出機による混練が、生産性の観点から好ましく、単軸よりも二軸押出機が好ましい。混練温度は、メタクリル系樹脂(A)の好ましい加工温度に従えばよく、好ましくは140〜300℃であり、より好ましくは180〜280℃であり、さらに好ましくは160〜260℃である。混練温度が300℃以下であることにより、メタクリル系樹脂(A)の熱分解による残存モノマーの発生をより抑制でき、残存モノマーの可塑化効果による耐熱性等の物性低下及び射出成型時のシルバーをより有効かつ確実に防止することができる傾向にある。また、混練回転数は、メタクリル系樹脂組成物の着色や熱分解を防止する観点から、300rpm以下で行うことが好ましく、より好ましくは250rpm以下であり、さらに好ましくは200rpm以下である。
〔メタクリル系樹脂組成物を含む成形体〕
(成形体の平滑性)
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を含む成形体(以下、単に「成形体」ともいう。)は、上述のメタクリル系樹脂組成物からなる成形体であり、深みのある漆黒性が求められる平滑面を意匠面として有している。その意匠面は、面粗度の数値が極めて低い状態であり、具体的には、JIS B0601:2013で規定される算術平均粗さ(中心線表面粗さ)Raの値は、好ましくは0.1μm以下であり、より好ましくは0.08μm以下、さらに好ましくは0.05μm以下である。この算術平均粗さRaが、0.1μm以下であることにより、意匠面が人間の目に白っぽく見えるのを防止することができる。これは、算術平均粗さRaが0.1μm以下であることにより、その意匠面での凹凸により光散乱が大きくなるのを抑制できるためと本発明者らは推定している。なお、上記算術平均粗さRaの下限は特に限定されず、算術平均粗さRaを測定する装置の検出下限以下であってもよい。例えば、算術平均粗さRaを測定する装置が下記の(株)東京精密製の表面粗さ計である場合、算術平均粗さRaの下限は、その検出下限である0.01μmであってもよい。
本実施形態の成形品の面粗度測定は、市販の表面粗さ計にて測定が可能である。市販の表面粗さ計としては、例えば、(株)東京精密製の表面粗さ計(商品名「サーフコム558A」)が挙げられる。
上述の範囲にある算術平均粗さRaを有する平滑面を実現させるためには、その平滑面に対応する金型のキャビティ表面も同等以上の算術平均粗さRaを有することが好ましい。具体的には、磨き番手5000番以上で磨かれたキャビティ表面が好ましく、より好ましくは8000番以上、更に好ましくは10000番以上の磨き番手で磨かれたキャビティ表面である。
意匠面である平滑面の形状は、平面であっても曲面であってもよい。平滑面が曲面である場合、算術平均粗さRaは、JIS B 0601に規定の方法に準拠して上記曲率を補正して計測すればよい。
また、算術平均粗さRaが0.1μm以下である平滑面に対する分光変角色度計を用いた45°反射測定において、−20°〜20°の測定範囲での反射光のL*平均値は、好ましくは0.15以下であり、より好ましくは0.13以下であり、さらに好ましくは0.10以下である。45°反射測定の反射光のL*平均値が0.15以下であることにより、より優れた漆黒性を発現することができる。その反射光のL*平均値の下限は特に限定されず、測定装置の検出下限以下であってもよい。例えば、反射光のL*平均値を測定する装置が後述の日本電色工業(株)製の分光変角色度計である場合、反射光のL*平均値の下限は、その検出下限である0.01であってもよい。
平滑面に対する分光変角色度計を用いた45°反射測定において、−20°〜20°の測定範囲での反射光のL*平均値は、下記実施例に記載の方法に準拠して測定される。
上述の範囲にある反射光のL*平均値を示す平滑面を実現させるためには、優れた漆黒性を有するようにするための上述の各手段を採用することが好ましい。特に反射光のL*平均値を示す平滑面をより有効かつ確実に実現するためには、成形品内部の内部散乱と、成形品表面での外部散乱とを、共に抑制することが重要であると推定される。前者は、カーボンブラック表面をコーティングすること、後者は例えば成形品表面の表面粗さ、すなわちその部分に対応する金型表面を磨くことが重要であり、それぞれ前出の方法を採用することが好ましい。
また、本実施形態に係る平滑面の面積は、その成形品の大きさにも依存するが、人間が目視で漆黒性を現認しやすい観点から、1cm2以上であると好ましく、より好ましくは4cm2以上であり、更に好ましくは9cm2以上である。
(成形体の厚さと流動長との関係)
本実施形態の成形体は、厚さt(単位:mm)と流動長L(単位:mm)との間に下記式(II)で表される関係を有することが好ましい。
L/t<150…(III)
成形体が、上記式(III)で表される関係を有することにより、射出成形時に金型キャビティ内の流動末端部まで樹脂組成物を良好に充填することができる傾向にある。また、上記式(III)で表される関係を有することで成形歪を抑制することができるので、反りやソルベントクラック尾を防止することも可能となる。同様の観点から、L/tは145未満であるとより好ましく、140未満であると更に好ましい。一方、L/tの下限は特に限定されないが、成形品に軽量化・薄肉化の要求を一層満足させる観点から、L/tが100以上であると好適である。なお、流動長Lは、成形品を得る際にメタクリル系樹脂組成物が流動した長さを示し、その大きさに合せて適宜、ノギス、マイクロメータ、物差し及び三次元測定機等、市販の各種計測道具によって測定される。
また、成形体の厚さtは、1.5mm以上3.0mm以下であると好ましく、1.8mm以上2.8mm以下であるとより好ましく、2.0mm以上2.6mm以下であるとさらに好ましい。成形体の厚さtが1.5mm以上であると、成形歪を低減できるという効果を奏する。一方、厚さtが3mm以下であると、成形品をより軽量化することができる。例えば、成形体を自動車外装・内装用意匠材などの意匠面を有する用途に用いると、成形品は意匠面を有していればよく、その厚さを薄くするほど軽量化できるので好ましい。
本実施形態の成形体は、意匠性を重要視する場合に、ウエルドライン等の発生を抑える観点から、1点ゲートの金型を用いて成形されることが好適である。すなわち、本実施形態の成形体は、1つのゲート部を有することが好ましい。なお、ここで、「ゲート部」とは、成形体のうち金型のゲート(流入口)により形成される部分であり、以下、「ゲートが接触した部分」ともいう。図2は、本実施形態の成形品の一例を模式的に示す斜視図である。成形品100は、長方形の意匠面Dを有する短冊の形状を有する。また、成形品100において、その成形品100を得る際に1点ゲートの金型におけるゲートが接触する部分は、図2において符号Gで示すように、成形品100の一方の短辺側であると好ましい。このように成形品の形状が長方形又は略長方形の意匠面を有する短冊状である場合に、ゲートが接触した部分を一方の短辺側にすると、樹脂流動の乱れのため他の部分に比べると外観が荒れやすくなるゲート付近のその乱れを目立ち難くすることが可能となる。図2に戻って詳細に見ると、成形品100は、長方形の一方の短辺側に、意匠面Dから成形品の厚み方向に一段下がった面Sを有し、その面Sに上記ゲートが接触した部分がある。このように意匠面から成形品の厚み方向に一段下がった面に、ゲートが接触した部分があると、その一段下がった面上に別部材(図示せず。)が存在する場合(例えば成形品と別部材が接合する場合)に、ゲートが接触した部分がその別部材に覆われて目視によって確認し難くなるので、好適である。さらに、一段下がった面上に別部材を存在させると、成形品の意匠面と別部材の表面とを面一にすることも可能となる。ただし、短冊状の成形品が、上記のような意匠面から一段下がった面を有しなくてもよく、その場合であってもゲートが接触した部分が別部材に覆われると目視によって確認し難くなるので好ましい。
〔成形体の製造方法〕
本実施形態の成形体は、例えば、下記のようにして製造することができる。まず、必要に応じてペレットの形態で得られた上記メタクリル系樹脂組成物を射出成形機の金型キャビティ内に投入する。この際、金型としては成形体の形状に対応する形状の金型キャビティを有し、かつ、1点ゲートである金型を用いることが好ましい。また、その金型におけるゲートの位置は、最終的に得られる成形体において別部材によって覆われることで目視にて確認できなくなるような部分と接触する位置であると好ましい。次いで、その射出成形機により所定の条件にてメタクリル系樹脂組成物を射出成形する。こうして本実施形態の射出成形体を得ることができる。
また、射出成形時の金型温度は、金型表面を研磨した場合に研磨された金型表面の転写性をより高める観点、及び、メタクリル系樹脂のガラス転移温度を考慮して過度な冷却を抑制する観点から、60℃以上100℃以下であると好ましく、70℃以上90℃以下であるとより好ましく、75℃以上85℃以下であると更に好ましい。
〔成形体の用途〕
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を含む成形体は、塗装品並みの漆黒性かつ耐擦傷性が求められる用途に好適に用いることができる。
このような用途としては特に限定されないが、例えば、家具類、家庭用品、収納・備蓄用品、壁・屋根等の建材、玩具・遊具、パチンコ面盤等の趣味用途、医療・福祉用品、OA機器、AV機器、電池電装用、照明機器、船舶、航空機の構造の車体部品、車両用部品等に使用可能であり、特に車体部品や車両用部品等の車両用途や、光学用途、電気・電子用途に好適に用いることができる。光学用途としては、例えば、各種レンズ、タッチパネル等、また、太陽電池に用いられる透明基盤等が挙げられる。
その他、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバーEL照明等のカバー等としても利用することができる。
電気・電子用途としては、例えば、パソコン、ゲーム機、テレビ、カーナビ、電子ペーパーなどのディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、CDプレーヤー、MDプレーヤー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等が挙げられる。特に、テレビ、パソコン、カーナビ、電子ペーパー等の筐体の意匠性部品等に好適に用いることができる。
特に、自動車用の意匠材として用いられることが好ましい。自動車用の意匠材としては、例えば自動車外装用意匠材及び自動車内装用意匠材が挙げられるが、本発明による作用効果をより有利に活用する観点から、自動車外装用意匠材が好ましい。本実施形態の自動車外装用意匠材としては、例えば、テールランプガーニッシュ、フロントランプガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、リアグリル及びナンバープレートガーニッシュが挙げられ、これらが好適である。これらの用途は総じて、薄肉の長手部品であり、意匠性が重要視されるものである。
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態は、後述する実施例に限定されるものではない。
〔実施例及び比較例において用いた原料〕
メタクリル系樹脂(A)の製造に用いた原料は下記のとおりである。
・メタクリル酸メチル(MMA):旭化成ケミカルズ製(重合禁止剤として中外貿易製2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール(2,4−di−methyl−6−tert−butylphenol)を2.5ppm添加されているもの)
・アクリル酸メチル(MA):三菱化学製(重合禁止剤として川口化学工業製4−メトキシフェノール(4−methoxyphenol)が14ppm添加されているもの)
・アクリル酸エチル(EA):三菱化学製
・n−フェニルマレイミド(PMI):日本触媒製
・n−シクロヘキシルマレイミド(CMI):日本触媒製
・スチレン(St):旭化成製
・n−オクチルメルカプタン(n−octylmercaptan):アルケマ製
・2−エチルヘキシルチオグリコレート(2−ethylhexyl thioglycolate):アルケマ製
・ラウロイルパーオキサイド(lauroyl peroxide):日本油脂製
・第3リン酸カルシウム(calcium phosphate):日本化学工業製、懸濁剤として使用
・炭酸カルシウム(calcium calbonate):白石工業製、懸濁剤として使用
・ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate):和光純薬製、懸濁助剤として使用
〔測定、評価方法〕
<I.メタクリル系樹脂(A)の分子量及び分子量分布の測定方法>
メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量、分子量分布を下記の装置、及び条件で測定した。
測定装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC−8320GPC)
カラム :TSKgel SuperH2500 1本、TSKgel SuperHM−M 2本、TSKguardcolumn SuperH−H 1本、直列接続
本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量は溶出する時間が遅い。
検出器 :RI(示差屈折)検出器
検出感度 :3.0mV/min
カラム温度:40℃
サンプル :0.02gのメタクリル系樹脂のテトラヒドロフラン10mL溶液
注入量 :10μL
展開溶媒 :テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/min
検量線用標準サンプルとして、単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymethyl methacrylate Calibration Kit PL2020−0101 M−M−10)を用いた。
なお、検量線用標準サンプルに用いたポリメタクリル酸メチルは、それぞれ単ピークのものであるため、(Mp)をピーク分子量と表記し、ピークが複数ある場合の表記「ピークトップ分子量」と区別した。
ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂の溶出時間に対する、RI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線を基にメタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、GPCピーク分子量(Mp)及びGPCピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合(%)を求めた。
<II.メタクリル系樹脂(A)構造単位の解析>
1H−NMR測定により構造単位を同定し、その存在量(質量%)を算出した。
1H−NMR測定の測定条件は、以下のとおりである。
装置:JEOL−ECA500
溶媒:CDCl3−d1(重水素化クロロホルム)
試料:成分(A)15mgをCDCl3−d1 0.75mLに溶解し、測定用サンプルとした。
<III.遮蔽性>
各メタクリル系樹脂組成物の平板状成形体(後述の評価用試料)を遮蔽性評価用の試料として用いた。遮蔽性は、JIS K7361−1に基づく全光線透過率の測定にて評価した。
<IV.算術平均粗さRa>
各メタクリル系樹脂組成物の平板状成形体(後述の評価用試料)の平滑面の算術平均粗さRaは、JIS B0601:2013に従い測定した。具体的には、(株)東京精密製の表面粗さ計(商品名「サーフコム558A」)を用い、任意の位置で3mmの距離を掃引して算術平均粗さRaを測定した。その結果を表5に示す。
<V.分光変角色差計での45°反射測定>
日本電色工業(株)製の分光変角色差計(製品名「GC5000」)を用いて、上記評価用試料の45°反射測定を行った。この測定では、平板状の評価用試料に45°の角度で測定光を照射し、その反射光のL*を測定角度−80°から+80°まで5°間隔で測定した。例として、図1に実施例1及び比較例2の成形体(後述の評価用試料)での測定チャートを示す。図1では、測定角度+45°の位置が実施例1及び比較例2共に上側に突き抜けているが、これは正反射光成分である。この正反射光成分のL*は、どの実施例及び比較例においてもほぼ一定であり、91±1の間に収まっていた。そして、正反射光成分の影響が無視できる測定角度−20°〜+20°の範囲にて、5°間隔で計測された数値、すなわち、測定角度−20°、−15°、−10°、−5°、0°、5°、10°、15°及び20°での反射光のL*の算術平均を各実施例及び比較例において算出した。その結果を表5に記す。
<VI.目視評価:漆黒性>
各メタクリル系樹脂組成物の平板状成形体(後述の評価用試料)の意匠面における漆黒性を、晴天の太陽光の下、5人の判定員の目視によって評価した。塗装品並みの漆黒レベルであると5人中4人以上が判定したものは「〇」、3人が判定したものは「△」、2人以下が判定したものは「×」と評価した。その結果を表5に示す。本発明に係る成形品(後述の評価用試料)は、いずれも優れた漆黒性を示すことがわかった。
<VII.耐擦傷性評価>
耐擦傷試験は以下の方法で実施した。射出成形によって成形された平板状評価用試料を用いて、往復摺動試験機((株)オリエンテック製 AFT−15M)の荷重先端に5φSUS球(ベアリング用)をセットし、図3のように評価用試料と接触するSUS球表面を6号綿帆布で覆い、帆布がずれないよう固定し、荷重1kgf、試験距離50mm、試験速度50mm/sの条件で樹脂の流動方向に40回往復摺動させた。耐擦傷性試験後の試料表面を目視にて観察し、次の評価基準で評価した。
◎・・・傷跡がない、もしくは試料を傾けて観察するとわずかに摩耗痕が観察できる。
○・・・試料を傾けて観察すると少数摩耗痕が観察できる(線状すじ3本程度)。
△・・・試料を傾けずとも観察できる摩耗痕がわずかにある(線状すじ6本程度)。
×・・・試料を傾けずとも明瞭に摩耗痕が認められる。
〔メタクリル系樹脂組成物〕
後述する実施例及び比較例で、メタクリル系樹脂組成物の構成成分として用いたメタクリル系樹脂(A)、表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B)及び化合物(C)について、以下記載する。
(メタクリル系樹脂(A))
メタクリル系樹脂(A)は、下記製造例A1〜A6により製造した(A−1)〜(A−6)のメタクリル系樹脂を使用した。
<製造例A1(メタクリル系樹脂(A−1)の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(a)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(a)、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸メチル:0.43kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn−オクチルメルカプタン:62gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−1)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は10.2万であり、ピークトップ分子量(Mp)は10.9万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は、4.5%であった。また、構造単位はMMA/MA=98/2質量%であった。
<製造例A2(メタクリル系樹脂(A−2)の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(b)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(b)、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸エチル:1.35kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn−オクチルメルカプタン:32.8gを投入した。その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温した。その後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−2)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は17.4万であり、ピークトップ分子量(Mp)は18.2万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は、4.6%であった。また、構造単位はMMA/EA=94/6質量%であった。
<製造例A3(メタクリル系樹脂(A−3)の製造)>
(1段目)
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(c)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:23kgを投入して80℃に昇温し、混合液(c)、メタクリル酸メチル:5.5kg、ラウロイルパーオキサイド:40g、及び2−エチルヘキシルチオグリコレート:90gを投入した。その後、約80℃を保って懸濁重合を行った。原料を投入してから80分後に発熱ピークが観測された。
(2段目)
次いで、92℃に1℃/min速度で昇温した後、30分間92℃〜94℃の温度を保持した。その後、1℃/minの速度で80℃まで降温した後、次いで、メタクリル酸メチル:16.2kg、アクリル酸メチル:0.75kg、ラウロイルパーオキサイド:21g、n−オクチルメルカプタン:17.5gを投入し、引き続き約80℃を保って懸濁重合を行った。原料を投入してから105分後に発熱ピークが観測された。その後、92℃に1℃/minの速度で昇温した後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−3)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は17.2万であり、ピークトップ分子量(Mp)は19.7万であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.65であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は24.5%であった。また、構造単位はMMA/MA=96.5/3.5質量%であった。
<製造例A4(メタクリル系樹脂(A−4)の製造)>
(1段目)
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(d)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:23kgを投入して80℃に昇温し、混合液(d)及びメタクリル酸メチル:7.8kg、アクリル酸メチル:0.16kg、ラウロイルパーオキサイド:55g、2−エチルヘキシルチオグリコレート:165gを投入した。その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測した。
(2段目)
その後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、30分間92℃〜94℃の温度を保持した。その後、1℃/minの速度で80℃まで降温した後、次いで、メタクリル酸メチル:15.0kg、アクリル酸メチル:0.3kg、ラウロイルパーオキサイド:25g、n−オクチルメルカプタン:18.5gを投入し、引き続き約80℃を保って懸濁重合を行った。発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温した後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。得られたポリマー微粒子を230℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断してメタクリル系樹脂ペレット(A−4)を得た。
得られたメタクリル系樹脂ペレットの組成比は、Mwは12.7万であり、ピークトップ分子量(Mp)は16.5万であり、分子量分布(Mw/Mn)は4.45であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は、32.5%であった。また、構造単位はMMA/MA=98.1/1.9wt%であった。
<製造例A5(メタクリル系樹脂(A−5)の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(e)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(e)、メタクリル酸メチル:16.8kg、フェニルマレイミド:2.93kg、スチレン:1.04kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn−オクチルメルカプタン:43gを投入した。その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−5)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は12.3万であり、ピークトップ分子量(Mp)は10.9万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.83であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は、4.0%であった。また、構造単位はMMA/PMI/St=81/14/5質量%であった。
<製造例A6(メタクリル系樹脂(A−6)の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(f)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(f)、メタクリル酸メチル:17.3kg、シクロヘキシルマレイミド:1.77kg、スチレン:1.88kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn−オクチルメルカプタン:50gを投入した。その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−6)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は10.6万であり、ピークトップ分子量(Mp)は8.9万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.93であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は、4.3%であった。また、構造単位はMMA/CMI/St=83/8/9質量%であった。
(表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B))
B−A1、B−A2、B−B1、及びB−C1については、表2に記載のカーボンブラックに対して、表2にそれぞれ記載の表面コーティング剤を用いてコーティング処理を施した。具体的には、まず、カーボンブラックの1.5倍の質量の表面コーティング剤を量り取り、それを融点以上に加熱して溶融させた後、所定量のカーボンブラックをその融液の中へ投入し撹拌した。なお、ステアリン酸亜鉛の融点は約140℃、エチレンビスステアリルアミド(EBS)の融点は約140〜145℃である。十分撹拌して分散させた後、冷却して、表面がコーティングされたカーボンブラックを得た。
(シロキサン系化合物(C))
シロキサン系化合物(C)としては、下記市販の添加剤を用いた。
C−1:TEGOMER(R)H−Si 6440P(エボニック社製)
C−2:TEGOMER(R)H−Si 6846P(エボニック社製)
<その他の添加剤>
(染料(D))
染料としては、表3に記載の市販品を用い、それらをコンパウンド原料とした。それぞれの配合量は表4に示す。
(ゴム質共重合体(F))
ゴム質共重合体としては、下記製造例により製造したゴム質共重合体を使用した。配合量は表4に示す。
<製造例F−1(ゴム質共重合体の製造)>
内容積10Lの還流冷却器付反応器にイオン交換水:6868mL、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム:13.7gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。
メタクリル酸メチル:907g、アクリル酸ブチル:33g、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール:0.28g及びアリルメタクリレ−ト:0.93gからなる混合物(I−1)のうち222gを一括添加し、5分後に過硫酸アンモニウム0.22gを添加した。
その40分後から(I−1)の残りの719gを20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに60分間保持した。
次に、過硫酸アンモニウム1.01gを添加した後、アクリル酸ブチル:1067g、スチレン:219g、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール:0.39g、アリルメタクリレ−ト:27.3gからなる混合物(I−2)を140分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに180分間保持した。
次に、過硫酸アンモニウム:0.30gを添加した後、メタクリル酸メチル:730g、アクリル酸ブチル:26.5g、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール:0.22g、n−オクチルメルカプタン:0.76gからなる混合物(I−3)を40分間かけて連続的に添加し、添加終了後95℃に昇温し30分間保持した。
重合乳化液(ラテックス)を3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩拆・凝固させ、次いで、脱水・洗浄を5回繰り返したのち乾燥し、ゴム質共重合体(F−1)を得た。
得られたゴム質共重合体(F−1)の平均粒子径は0.23μmであった。なお、ゴム質共重合体の平均粒子径は、以下のようにして求めた。まず、得られたゴム質共重合体の乳化液をサンプリングして、固形分500ppmになるように水で希釈し、UV1200V分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて波長550nmでの吸光度を測定した。
透過型電子顕微鏡写真より粒子径をあらかじめ計測したサンプルについて同様に吸光度を測定した値に基づいて作成した検量線を用い、上記ゴム質共重合体の乳化液の吸光度の測定値から平均粒子径を求めた。
〔実施例1〜17〕〔比較例1〜4〕
表4に記載の配合割合になるよう、メタクリル系樹脂(A)、表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B)及びシロキサン系化合物(C)とその他添加剤をそれぞれ計量した後、ヘンシェルミキサーへ投入し、それらを撹拌によって混合し分散させた。十分撹拌によって混合させた後、φ30mmの二軸押出機にその混合原料を投入し、溶融混練(コンパウンド)してストランドを生成し、ウォーターバスでそのストランドを冷却した後、ペレタイザーで切断してペレットを得た。なお、コンパウンドの際、押出機のベント部に真空ラインを接続し、水分やモノマー成分等の揮発成分を除去した。こうして、メタクリル系樹脂組成物を得た。なお、コンパウンド時の樹脂組成物の温度は、250〜270℃であった。
〔平板状評価用試料〕
(射出成形)
得られたメタクリル系樹脂組成物のペレットを射出成形機に投入し、平板状(100mm×100mm×3mmt)に成形し、評価用試料とした。なお、金型は、評価用試料の後述の45°反射測定及び目視評価に用いられる側の金型表面(金型キャビティ内面)が8000番の磨き番手で研磨されているものを用いた。そして、その8000番の磨き番手で研磨されている側の金型表面が転写されている成形品表面を、この評価用試料の平滑面とした。すなわち、この評価用試料での平滑面の面積は100cm2であった。
なお、この評価用試料の成形条件は、下記のように設定した。
樹脂温度: 250℃〜270℃
金型温度: 80℃
また、射出成形時の金型温度は、8000番の磨き番手で研磨された金型表面の転写性を高めるため、より高温に保つことが重要である。しかし、メタクリル系樹脂のガラス転移温度が100℃前後である事から、高過ぎても冷却時間が長すぎる事となり、実用的ではなくなる。それらを良質させる温度範囲は、60℃以上100℃以下であり、より好ましくは70℃以上90℃以下、更に好ましくは75℃以上85℃以下であり、今回はその中の80℃を選択した。
x/y:染料総質量xとカーボンブラック総質量yとの比率
実施例1〜8においては、メタクリル系樹脂(A)、表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B)、シロキサン系化合物(C)を配合しており、遮蔽性、漆黒性、耐擦傷性の全てにおいて、実用上良好なレベルに合った。
実施例9においては、シロキサン系化合物(C)の添加量がやや少なく、実施例1に比べて、耐擦傷性が低下する傾向にあったが、その他の物性は良好であった。
実施例10においては、表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B)の内、コーティング前のカーボンブラックの窒素吸着比表面積や揮発分の観点で、実施例1に比べて、漆黒性が低下する傾向にあったが、その他の物性は良好であった。
実施例11、12においては、表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B)の内、コーティング前のカーボンブラック量yと染料(D)の総量xのより好ましい比率である9<x/y<15から外れているため、実施例1に比べて、漆黒性が低下する傾向にあったが、その他の物性は良好であった。
実施例13においては、ゴム質共重合体(F)を含有しているにもかかわらず、遮蔽性、漆黒性、耐擦傷性の全てにおいて、実用上良好なレベルに合った。
実施例14においては、表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B)、シロキサン系化合物(C)、染料(D)の添加量がやや多く、実施例1に比べて、漆黒性が低下する傾向にあったが、その他の物性は良好であった。
実施例15においては、シロキサン系化合物(C)の添加量がやや多く、表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B)の内、コーティング前のカーボンブラック量yと染料(D)の総量xのより好ましい比率である9<x/y<15から外れているため、実施例1に比べて、漆黒性が低下する傾向にあったが、その他の物性は良好であった。
実施例16においては、シロキサン系化合物(C)の添加量がやや多いが、表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B)の内、コーティング前のカーボンブラック量yと染料(D)の総量xの更に好ましい比率である10<x/y<12の範囲内であったため、漆黒性も良好であった。
実施例17においては、シロキサン系化合物(C)の添加量が多く、実施例1に比べて漆黒性が低下する傾向にあったが、その他の物性は良好であった。
一方で、比較例1〜3においては、コーティングされていないカーボンブラックを用い、シロキサン系化合物(C)も添加していないため、漆黒性、耐擦傷性ともに不十分であった。
また、比較例4においては、シロキサン系化合物(C)を適量添加していたが、コーティングされていないカーボンブラックを使用したため、漆黒性が不十分であった。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を使用した成形体の利用に関しては、漆黒性、耐擦傷性の要求される用途に対して全般的に産業上利用可能である。

Claims (16)

  1. メタクリル系樹脂(A)と、
    表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック(B)と、
    シロキサン系化合物(C)と、を含む、
    メタクリル系樹脂組成物。
  2. 前記シロキサン系化合物(C)が、下記式(I)で表されるものである、請求項1に記載のメタクリル系樹脂組成物。
    (式(I)中、Rは、各々独立して、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基であり、R1は、各々独立して、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基又はポリエステル基であり、R2は、各々独立して、ポリエステル基又は12〜36個の炭素原子を有する炭化水素基であり、n、m、及びpは、各々独立して、0〜58であり、かつ、N=n+m+p+2は、15〜75を満たし、m及びpが0である場合、全てのR1はポリエステル基である。)
  3. 前記表面コーティング剤が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアリルアミド、及びエチレンビスステアリルアミドからなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2に記載のメタクリル系樹脂組成物。
  4. 染料(D)をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
  5. 前記染料(D)が、赤系染料、黄系染料、緑系染料、青系染料、及び紫系染料からなる群より選ばれる3種以上の染料を含む、請求項4に記載のメタクリル系樹脂組成物。
  6. 前記染料(D)が、アントラキノン系染料、複素環式化合物系染料、及びペリノン系染料からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項4又は5に記載のメタクリル系樹脂組成物。
  7. 前記染料(D)の総質量xと前記カーボンブラック(B)の総質量yとの比率x/yが、下記式(II)で表される条件を満足する、請求項4〜6のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
    4<x/y<50 …(II)
  8. ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した前記メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が、50000〜300000であり、かつ、
    前記メタクリル系樹脂(A)のGPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の量が、前記メタクリル系樹脂(A)の前記GPC溶出曲線の総面積に対して、6〜50%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物を含む、成形体。
  10. JIS B0601:2013に基づく算術平均粗さRaの値が0.1μm以下である平滑面を有し、
    分光変角色差計を用いた前記平滑面に対する45°反射測定において、−20°〜20°の測定範囲での反射光のL*平均値が0.15以下である、請求項9に記載の成形体。
  11. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物を含む、射出成形体。
  12. 前記成形体の厚さt(単位:mm)と流動長L(単位:mm)との間に下記式(III)で表される関係を有し、1つのゲート部を有する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の成形体。
    L/t<150 …(III)
  13. 前記厚さtが、1.5mm以上3.0mm以下である、請求項12に記載の成形体。
  14. 前記成形体の形状が長方形又は略長方形の意匠面を有する短冊状であり、かつ、前記長方形又は略長方形の一方の短辺側に、前記意匠面から前記成形品の厚み方向に一段下がった面を有し、
    該一段下がった面が、前記成形体を得る際に前記1点ゲートの金型におけるゲートと接触するものであり、前記一段下がった面上に別部材が存在する場合に、前記成形体を成形により得る際に前記ゲートに接触する前記成形体の部分が前記別部材により覆われる、請求項12又は13に記載の成形体。
  15. 自動車用の意匠材である、請求項9〜14のいずれか一項に記載の成形体。
  16. テールランプガーニッシュ、フロントランプガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、リアグリル、及びナンバープレートガーニッシュのいずれかである、請求項15に記載の成形体。
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