JP2019056110A - 成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、塗装やHC処理品並みの高い漆黒性と、高い耐擦傷性を有する成形体を提供することを目的としている。【解決手段】本発明の成形体は、非結晶性樹脂(A)と、染料(B)とを含み、SCE測定での明度(L*)が0.3以上2.5以下であることを特徴としている。【選択図】なし

Description

本発明は、非結晶性樹脂を含む成形体に関する。
従来、自動車の内外装部品向けにハードコート処理が施されたポリカーボネートやABS樹脂、漆黒調に塗装されたASA、ABS樹脂等の成形品が用いられている。しかしながら、ハードコート処理(HC処理)では、コート斑発生による不良や生産性が低いといった問題があり、塗装では塗料に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の問題が挙げられる。こういった問題を背景にコスト削減の観点から、HC処理や塗装をしない成形品が切望されており、コンパウンドによる樹脂への代替について、近年盛んに検討されている。ここで、重要となる特性としては、表面の耐擦傷性および漆黒性である。
これらの特性付与のため、例えば、添加剤を熱可塑性樹脂へ混合する(コンパウンドする)方法が古くより用いられている。熱可塑性樹脂としては、主にメタクリル系樹脂が用いられることが近年多くなっている。その理由は、メタクリル系樹脂が耐候性に優れることと、樹脂の中で最も高い表面鉛筆硬度及び耐傷付き性を有するためである。また、高い透明性を有するために、特に塗装代替の場合、成形品に深みのある良好な着色を発現させることができる。
しかし、高い要求特性が表面に課せられる用途においては、メタクリル系樹脂ですら、様々な摩耗現象に耐えることができず、しばしばHC処理をされることが多い。この問題を解決する方法として、例えば、特許文献1では、アクリル系樹脂と耐傷防止剤を含有させることにより、耐傷付き性を向上させる技術が提案されている。
また、高い漆黒性を発現させるための技術が、特許文献2に紹介されている。
国際公開第2016/158564号公報 特開2016−37518号公報
特許文献1には、特定の耐傷防止剤を含有させることで、耐傷付き性を向上させているが、添加剤の含有により成形品自体の黒色性が維持できなくなり、いわゆる業界用語で「白ボケ」と呼ばれる、白味を帯びた黒着色となる懸念があり、特に高い漆黒性が求められる用途では好適ではない。また、耐傷付き性に関しても十分とは言えない。
特許文献2には、一定量のCBと表面粗さを制御することで、高い漆黒性を発現させているが、耐擦傷性に関しては不十分であり、市場要求を満たしていない。
また、黒色にすることで、透明な成形体に比べて傷が目立ちやすい状況となり、単純に高い漆黒性になるほど、さらに表面粗さが小さいほど、擦傷後のΔL*(明度の変化率)
が大きくなる傾向にある。よって、擦傷前の初期L*が適度に低く、擦傷後のΔL*が小
さい成形体を設計することが重要となっており、HC処理または塗装を施さず、初期漆黒性が調整され、かつ耐擦傷性を有する成形体が、多くの用途で切望されている。
以上のような状況の中、本発明においては上述の従来技術の問題点に鑑み、外光反射時においても高い漆黒性を有し、塗装品並みの高い耐擦傷性を有する成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、染料を含む成形体において、特定パラメータを有する成形体を使用することで、上述の従来技術における課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
非結晶性樹脂(A)と、染料(B)とを含み、SCE測定での明度(L*)が0.3以上2.5以下であることを特徴とする成形体。
〔2〕
カーボンブラック(C)をさらに含む、〔1〕に記載の成形体。
〔3〕
上記カーボンブラック(C)が、コーティング剤で表面コーティングされたカーボンブラックであり、上記コーティング剤が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアリルアミド、及びエチレンビスステアリルアミドからなる群より選ばれる1種以上を含む、〔2〕に記載の成形体。
〔4〕
摺動剤(D)をさらに含む、〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の成形体。
〔5〕
上記摺動剤(D)が、下記式(I)で表されるシロキサン系化合物を含む、〔4〕に記載の成形体。
Figure 2019056110
(式(I)中、Rは、各々独立して、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基であり、R1は、各々独立して、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基又はポリエステル基であり、R2は、各々独立して、ポリエステル基又は12〜36個の炭素原子を有する炭化水素基であり、n、m、及びpは、各々独立して、0〜58であり、かつ、N=n+m+p+2は、15〜75を満たし、m及びpが0である場合、全てのR1はポリエステル基である。)
〔6〕
上記染料(B)が、赤系染料、黄系染料、緑系染料、青系染料、及び紫系染料からなる群より選ばれる1種以上の染料を含む、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の成形体。
〔7〕
上記染料(B)が、アントラキノン系染料、複素環式化合物系染料、及びペリノン系染料からなる群より選ばれる1種以上の染料を含む、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の成形体。
〔8〕
上記非結晶性樹脂(A)が、メタクリル系樹脂である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の成形体。
〔9〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した、上記メタクリル系樹脂の重量平均分子量が、50000〜300000であり、かつ、
上記メタクリル系樹脂のGPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が、上記メタクリル系樹脂の上記GPC溶出曲線の総面積に対して、6〜50%である、〔8〕に記載の成形体。
〔10〕
射出成形体である、〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の成形体。
〔11〕
前記成形体の厚さt(単位:mm)と流動長L(単位:mm)とが下記式(II)の関係を満たし、かつ、1つのゲート部を有する、〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の成形体。
L/t<150 ・・・(II)
〔12〕
上記成形体の厚さt(単位:mm)が、0.5以上3.0以下である、〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の成形体。
〔13〕
自動車用の意匠材である、〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の成形体。
〔14〕
テールランプガーニッシュ、リアランプガーニッシュ、フロントランプガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、リアグリル、及びナンバープレートガーニッシュのいずれかである、〔1〕〜〔13〕のいずれかに記載の成形体。
〔15〕
非結晶性樹脂(A)と、染料(B)とを含み、
長さ100mm、幅100mm、厚さ3mmの成形板とした時のSCE測定での明度(L*)が0.3以上2.5以下である
ことを特徴とする樹脂組成物。
本発明によれば、塗装やHC処理品並みの高い漆黒性と、高い耐擦傷性を有する成形体を提供することができる。
実施例における耐擦傷性試験を模式的に示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
なお、本明細書において、重合前のモノマー成分のことを「〜単量体」といい、「単量体」と省略することもある。また、重合体を構成する構成単位のことを「〜単量体単位」といい、単に「〜単位」と表記することもある。
本実施形態の成形体は、非結晶性樹脂(A)と、染料(B)と、を含む。本実施形態の成形体は、さらに、カーボンブラック(C)、摺動剤(D)、その他の成分を含んでいてもよい。
なお、本明細書において、成形する前の本実施形態の成形体の原料である混合物を非結晶性樹脂組成物と称する場合がある。上記非結晶性樹脂組成物は、非結晶性樹脂(A)と染料(B)とを含み、さらにカーボンブラック(C)、摺動剤(D)、その他の成分を含んでいてもよい。
以下、本実施形態の成形体を構成する各成分について説明する。
〔非結晶性樹脂(A)〕
非結晶性樹脂(A)としては、特に限定されないが、例えば、メタクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体)、AS系樹脂(アクリロニトリル−スチレン系共重合体)、BAAS系樹脂(ブタジエン−アクリロニトリル−アクリロニトリルゴム−スチレン系共重合体)、MBS系樹脂(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン系共重合体)、AAS系樹脂(アクリロニトリル−アクリロニトリルゴム−スチレン系共重合体)、生分解性樹脂、ポリカーボネート−ABS樹脂のアロイ、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂等が挙げられる。このなかでも、特に漆黒性や耐擦傷性の観点で、メタクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂が好ましく、中でも高い透明性、表面硬度、耐擦傷性の観点で、メタクリル系樹脂が特に好ましい。
ここで、上記樹脂は、複数種の単量体を重合した共重合体を含み、該共重合体は、主モノマーに由来する単量体単位の含有量が、樹脂全量に対して50質量%以上であることが好ましい。なお、主モノマーとは、メタクリル系樹脂ではメタクリル酸エステル単量体、ポリスチレン系樹脂ではスチレン系単量体、ポリカーボネート系樹脂ではカーボネート系単量体等の各樹脂を主に構成する主モノマーをいう。
上記非結晶性樹脂(A)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
(メタクリル系樹脂)
以下、メタクリル系樹脂の詳細について述べる。
メタクリル系樹脂の場合、メタクリル酸エステル単量体に由来する構成単位(本明細書において、単に「メタクリル酸エステル単量体単位」ともいう)からなる単独重合体であってもよいし、メタクリル酸エステル単量体単位と、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な他のビニル単量体に由来する構成単位(本明細書において、単に「他のビニル単量体単位」ともいう)とを含む共重合体であってもよい。このなかでも、共重合体が好ましい。
−メタクリル酸エステル単量体−
メタクリル系樹脂を構成するメタクリル酸エステル単量体単位を形成するメタクリル酸エステル単量体としては、本発明の効果を達成できるものであれば特に限定されないが、好ましい例としては、下記一般式(III)で示される単量体が挙げられる。
Figure 2019056110
(一般式(III)中、R3は、1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、該炭化水素基の炭素上の水素原子は水酸基やハロゲン基によって置換されていてもよい。)
上記メタクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2−エチルヘキシル)、メタクリル酸(t−ブチルシクロヘキシル)、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸(2,2,2−トリフルオロエチル)等が挙げられる。このなかでも、取扱いや入手のし易さの観点より、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル等がより好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。上記メタクリル酸エステル単量体は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記メタクリル系樹脂が共重合体である場合、メタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂の総量に対して、好ましくは80〜99.9質量%であり、より好ましくは88〜99質量%であり、さらに好ましくは90〜98質量%である。メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が80質量%以上であることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。また、メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が99.9質量%以下であることにより流動性がより向上する傾向にある。
−他のビニル単量体−
メタクリル系樹脂を構成するメタクリル酸エステル単量体に共重合可能な他のビニル単量体単位を形成する他のビニル単量体(本明細書において、単に「他のビニル単量体」ともいう)としては、特に限定されないが、好ましい例としては、下記一般式(IV)で表されるアクリル酸エステル単量体が挙げられる。
Figure 2019056110
(一般式(IV)中、R4は1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、該炭化水素基の炭素上の水素原子は水酸基やハロゲン基によって置換されていてもよい。)
上記アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(t−ブチルシクロヘキシル)、アクリル酸ベンジル、アクリル酸(2,2,2−トリフルオロエチル)等が挙げられる。このなかでも、取り扱いや入手のし易さの観点より、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル等がより好ましく、アクリル酸メチルが特に好ましい。
また、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な、一般式(IV)で表されるアクリル酸エステル単量体以外の他のビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等のα,β−不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、桂皮酸等の不飽和基含有二価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、о−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、イソプロペニルベンセン(α−メチルスチレン)等のスチレン系単量体;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;マレイミドや、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド等;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー;等が挙げられる。
上記他のビニル単量体は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記他のビニル単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂の総量に対して、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは1.0〜15質量%であり、さらに好ましくは1.5〜12質量%であり、特に好ましくは2.0〜10質量%である。他のビニル単量体単位の含有量が0.1質量%以上であることにより、流動性及び耐熱性がより向上する傾向にある。また、他のビニル単量体単位の含有量が20質量%以下であることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。
メタクリル系樹脂においては、耐熱性、加工性等の特性を向上させる目的で、上記例示したビニル単量体以外のビニル系単量体を適宜添加して共重合させてもよい。
−メタクリル系樹脂の重量平均分子量及び分子量分布−
上記メタクリル系樹脂の重量平均分子量及び分子量分布について説明する。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、50000〜300000であることが好ましい。メタクリル系樹脂の重量平均分子量が上記範囲内であることにより、流動性、機械的強度、及び耐溶剤性のバランスを図ることができ、良好な成形加工性が維持される傾向にある。特に、優れた機械的強度及び耐溶剤性を得る観点から、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、50000以上が好ましく、60000以上がより好ましく、70000以上がさらに好ましく、80000以上がさらにより好ましく、90000以上がよりさらに好ましい。また、メタクリル系樹脂が良好な流動性を示す観点から、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は300000以下であることが好ましく、250000以下がより好ましく、230000以下がさらに好ましく、210000以下がさらにより好ましく、180000以下がよりさらに好ましい。
上記メタクリル系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.6〜6.0であり、より好ましくは1.7〜5.0であり、さらに好ましくは1.8〜5.0である。メタクリル系樹脂の分子量分布が上記範囲内であることにより成形加工流動と機械強度のバランスがより優れる傾向にある。ここで、Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPCで測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。具体的には、あらかじめ単分散の重量平均分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル系樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておき、続いて得られた検量線を元に、所定の測定対象のメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めることができる。得られた重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)から分子量分布を算出することができる。数平均分子量(Mn)とは、単純な分子1本あたりの分子量の平均であり、系の全重量/系中の分子数で定義される。重量平均分子量(Mw)とは、重量分率による分子量の平均で定義される。
−メタクリル系樹脂のピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の割合−
耐溶剤性、流動性の観点から、GPC法により求めた上記メタクリル系樹脂のGPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分が占める割合は、上記メタクリル系樹脂のGPC溶出曲線の総面積に対して、好ましくは6〜50%であり、より好ましくは7〜45%であり、さらに好ましくは8〜43%であり、よりさらに好ましくは9〜40%であ、さらにより好ましくは10〜38%である。ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が6%以上であることより、成形流動性がより向上する傾向にあり、成形体表面の分子配向が緩和されて耐擦傷性が良好となる傾向にある。また、ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が50%以下であることより、耐溶剤性がより向上する傾向にある。
ここで、「ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分が占める割合(%)」とは、GPC溶出曲線の全エリア面積を100%とした場合の、ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分に相当するエリア面積の割合であり、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。なお、「ピークトップ分子量(Mp)」とは、GPC溶出曲線においてピークを示す重量分子量を指す。GPC溶出曲線においてピークが複数存在する場合は、存在量が最も多い重量分子量が示すピークにおける分子量を、ピークトップ分子量(Mp)とする。
なお、重量分子量が500以下のメタクリル系樹脂成分は、成形時にシルバーと呼ばれる発泡様の外観不良の原因となるため、できる限り少ない方が好ましい。
−メタクリル系樹脂の製造方法−
メタクリル系樹脂は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合法もしくは乳化重合法のいずれかの方法により製造することができる。このなかでも、好ましくは、塊状重合、溶液重合及び懸濁重合法であり、より好ましくは懸濁重合法である。
重合温度は、重合方法に応じて適宜最適の重合温度を選択すればよいが、好ましくは50℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃以上90℃以下である。
メタクリル系樹脂を製造する際には、重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、特に限定されないが、ラジカル重合を行う場合は、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等のアゾ系の一般的なラジカル重合開始剤が挙げられる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのラジカル開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。
これらのラジカル重合開始剤及び/又はレドックス系開始剤は、メタクリル系樹脂の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して、0〜1質量部の範囲で用いるのが一般的であり、重合を行う温度と重合開始剤の半減期を考慮して適宜選択することができる。
メタクリル系樹脂の重合方法として、塊状重合法、キャスト重合法、又は懸濁重合法を選択する場合には、メタクリル系樹脂の着色を防止する観点から、有機過酸化物を重合開始剤として用いて重合することが好ましい。このような有機過酸化物としては、上記と同様のものが挙げられ、このなかでもラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が好ましく、ラウロイルパーオキサイドがより好ましい。
また、メタクリル系樹脂を、90℃以上の高温下で溶液重合法により重合する場合には、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である有機過酸化物及びアゾビス開始剤等を重合開始剤として用いることが好ましい。このような有機過酸化物及びアゾビス開始剤としては、上記と同様のものが挙げられ、このなかでも1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等が好ましい。
メタクリル系樹脂を製造する際には、必要に応じて、メタクリル系樹脂の分子量の制御を行ってもよい。メタクリル系樹脂の分子量を制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合方法又は重合条件を変える方法、重合開始剤の選択、連鎖移動剤やイニファータ等の量を調整する方法等が挙げられる。これらの分子量制御方法は、一種の方法のみを用いてもよく、二種以上の方法を併用してもよい。
イニファータとしては、特に限定されないが、例えば、ジチオカルバメート類、トリフェニルメチルアゾベンゼン、テトラフェニルエタン誘導体等が挙げられる。
連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等が挙げられる。このなかでも、取扱性や安定性の観点から、アルキルメルカプタン類が好ましい。当該アルキルメルカプタン類としては、特に限定されないが、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
連鎖移動剤及びイニファータは、目的とするメタクリル系樹脂の分子量に応じて適宜添加することができ、連鎖移動剤及びイニファータの添加量を調整することにより、分子量を調整することが可能である。一般的には、メタクリル系樹脂の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して0.001質量部〜5質量部の範囲で用いられる。
また、GPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が、6〜50%の範囲であるメタクリル系樹脂を製造する方法としては、低分子量のメタクリル系樹脂と高分子量のメタクリル系樹脂とを溶融ブレンドする方法や、多段重合法により製造する方法等が挙げられる。上記のMpの1/5以下の分子量を有する成分の存在量が6〜50%のメタクリル系樹脂を製造する場合、その方法については特に限定されるものではないが、品質安定性の観点から多段重合法を使用することがより好ましい。
多段重合法を使用する場合、まず、1段目の重合において、メタクリル酸エステル単量体と他のビニル単量体とを重合し、GPCで測定した重量平均分子量が5000〜50000である重合体(i)を製造することが好ましい。次に、重合系内を1段目の重合温度よりも高い温度に一定時間保持する。その後、重合体(i)の存在下で、メタクリル酸エステル単量体と他のビニル単量体とをさらに重合し、重量平均分子量が60000〜350000である重合体(ii)を製造することが好ましい。なお、メタクリル系樹脂が単独重合体である場合には、他のビニル単量体を用いずに、1段目及び2段目の重合において、単独重合を行う。また、メタクリル系樹脂が単独重合体と共重合体の混合物であるような場合には、1段目の重合において単独重合を行い、2段目の重合において共重合を行うこともできる。
製造時の重合安定性及びメタクリル系樹脂の流動性や樹脂成形体の機械的強度を向上させる観点そして成形体表面の分子配向緩和の観点から、重合体(i)の含有量は、メタクリル系樹脂の総量に対して、好ましくは5〜50質量%であり、重合体(ii)の含有量は、メタクリル系樹脂の総量に対して、好ましくは95〜50質量%である。重合安定性、流動性、成形体の機械的強度、成形体表面の分子配向緩和のバランスを考慮すると、重合体(i)/重合体(ii)の含有量比率は、より好ましくは7〜47質量%/93〜53質量%、さらに好ましくは10〜45質量%/90〜65質量%であり、さらにより好ましくは13〜43質量%/87〜57質量%であり、よりさらに好ましくは15〜40質量%/85〜60質量%である。
さらに、重合体(i)は、メタクリル酸エステル単量体単位80〜100質量%及び他のビニル単量体単位0〜20質量%を含む重合体であることが好ましく、メタクリル酸エステル単量体単位90〜100質量%及び他のビニル単量体単位0〜10質量%を含む重合体であることがより好ましく、メタクリル酸エステル単量体単位95〜100質量%及び他のビニル単量体単位0〜5質量%を含む重合体であることがさらに好ましい。重合体(i)を構成する単量体単位の比率は、多段重合の重合体(i)の重合工程において添加する単量体量を制御することにより調整することができる。重合体(i)は、他のビニル単量体の含有量が少ない方が好ましく、他のビニル単量体を含まなくてもよい。
また、成形時のシルバー等の不具合抑制、重合安定性、流動性の観点から、重合体(i)の重量平分均子量は、好ましくは5000〜50000であり、より好ましくは10000〜45000であり、さらに好ましくは18000〜42000であり、特に好ましくは20000〜40000である。重合体(i)の重量平均分子量は、上述したように、連鎖移動剤やイニファータを用いたり、これらの量を調整したり、重合条件を適宜変更することにより制御できる。重合体(i)の重量平分均子量は、上記同様、GPCで測定することができる。
重合体(ii)は、メタクリル酸エステル単量体単位80〜99.9質量%及び他のビニル単量体単位0.1〜20質量%を含む重合体であることが好ましく、メタクリル酸エステル単量体単位90〜99.9質量%及び他のビニル単量体単位0.1〜10質量%を含む重合体であることがより好ましく、メタクリル酸エステル単量体単位92.5〜99.8質量%及び他のビニル単量体単位0.2〜7.5質量%を含む重合体であることがさらに好ましい。重合体(ii)を構成する単量体単位の比率は、多段重合の重合体(ii)の重合工程において添加する単量体量を調整することにより制御することができる。
また、耐溶剤性、流動性の観点から、重合体(ii)の重量平分均子量は、好ましくは60000〜350000であり、より好ましくは100000〜320000であり、さらに好ましくは130000〜300000であり、よりさらに好ましくは150000〜270000である。重合体(ii)の重量平均分子量は、上述したように、連鎖移動剤やイニファータを用いたり、これらの量を調整したり、重合条件を適宜変更することにより制御できる。重合体(ii)の重量平分均子量は、上記同様、GPCで測定することができる。
上記多段重合法は、重合体(i)と重合体(ii)のそれぞれの組成を制御しやすく、重合時の重合発熱による温度上昇が抑えられ、系内の粘度も安定化できる。この場合、重合体(i)の重合が完了しないうちに重合体(ii)の原料組成混合物は一部重合が開始されている状態であってもよいが、一度キュア(この場合、系内を重合温度より高い温度に保つこと)を行い、重合を完了させた後に重合体(ii)の原料組成混合物を添加する方が好ましい。1段目にキュアを行うことにより、重合が完了するだけでなく、未反応の単量体、開始剤、連鎖移動剤等を除去又は失活させることができ、2段目の重合に悪影響を及ぼさなくなる。結果として、目的の重量平均分子量を得ることができる。
重合温度は、重合方法に応じて適宜最適の重合温度を選択して製造すればよいが、好ましくは50℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃以上90℃以下である。重合体(i)及び重合体(ii)の重合温度は、同じであっても異なっていてもよい。
キュアの際に昇温させる温度は、重合体(i)の重合温度よりも5℃以上高くすることが好ましく、より好ましくは7℃以上、さらに好ましくは10℃以上である。さらに、キュアの際に昇温した温度で保持する時間は、10分間以上180分間以下が好ましく、より好ましくは15分間以上150分間以下である。
(ポリスチレン系樹脂)
上記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、о−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、イソプロペニルベンセン(α−メチルスチレン)等のスチレン系単量体に由来する単量体単位として含む樹脂が挙げられる。上記ポリスチレン系樹脂は、上記スチレン系単量体以外に、上述のメタクリル酸エステル単量体、他のビニル単量体(スチレン系単量体を除く)に由来する構成単位を含んでいてもよい。中でも、ポリスチレンが好ましい。
上記ポリスチレン系樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
上記ポリスチレン系樹脂中の、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
(ポリカーボネート系樹脂)
上記ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、触媒及び分子量調節剤の存在下で、二価フェノール系化合物とホスゲンとを反応させて製造した樹脂、二価フェノール系化合物及びジフェニルカーボネート等のカーボネート前駆体のエステル交換を利用して製造した樹脂等が挙げられる。
上記二価フェノール系化合物としては、ビスフェノール系化合物を用いることができ、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましく用いられる。ビスフェノールAは、部分的又は全体的に他種の二価フェノールに変わってもよい。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルや、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のハロゲン化ビスフェノール等が挙げられる。
上記ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールA系ポリカーボネート等の単一重合体や、2種以上の二価フェノールの共重合体又はこれらの混合物等を用いることができる。また、上記ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、線状ポリカーボネート、分岐型ポリカーボネート又はポリエステルカーボネート共重合体等が挙げられる。
上記分岐型ポリカーボネートとしては、例えば、トリメリット酸無水物、トリメリット酸等の多官能性芳香族化合物を、二価フェノール系化合物及びカーボネート前駆体と反応させたもの等が挙げられる。
上記ポリエステルカーボネート共重合体としては、例えば、二官能性カルボン酸を、二価フェノール系化合物及びカーボネート前駆体と反応させたもの等が挙げられる。
上記ポリカーボネート系樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
非結晶性樹脂(A)の含有量は、得られる成形体の漆黒性が一層優れる観点から、非結晶性樹脂組成物の総量に対して、好ましくは50質量%以上99.9質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上98.5質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上98質量%以下である。
また、メタクリル系樹脂の含有量は、得られる成形体の漆黒性、表面硬度、及び耐傷つき性に一層優れる観点から、非結晶性樹脂組成物の総量に対して、好ましくは50質量%以上99.9質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上98.5質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上98質量%以下である。
〔染料(B)〕
上記非結晶性樹脂組成物は、染料(B)を含むことが、より漆黒性の深みを増す上で必要である。
上記染料(B)は、赤系染料、黄系染料、緑系染料、青系染料、及び紫系染料からなる群より選ばれる1種以上の染料を含むことが好ましく、赤系染料、黄系染料、緑系染料、青系染料、及び紫系染料からなる群より選ばれる1種以上の染料であることがより好ましい。
さらに深みのある漆黒性を発現させる観点から、3種以上の染料を含むことが好ましく、それらの染料は、互いに色相の異なる3種以上の染料であるとより好ましく、赤系染料、黄系染料、緑系染料、青系染料及び紫系染料からなる群より選ばれる3種以上の染料であることが更に好ましい。単純に青系染料と黄系染料との組合せのみ、又は緑系染料と赤系染料との組合せのみという狭い範囲での組合せよりも、所謂光の3原色をまんべんなく含んだ組合せによって漆黒性を発現させる方が、より深みを増した漆黒性を発現させる観点で好ましいからである。そのような組合せとしては、例えば、紫系染料、緑系染料、黄系染料及び青系染料の組合せ;紫系染料、黄系染料、緑系染料及び赤系染料の組合せ;赤系染料、緑系染料及び青系染料の組合せ、といった、複数の系統の染料の適量ずつの組合せが挙げられ、これらの中では、既に多くの市販製品があり、後述する耐候性染料の種類も多いのでより所望の漆黒性を実現しやすいという観点から、赤系染料、緑系染料、黄系染料及び青系染料の組合せが好ましい。
赤系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent red 52、同111、同135、同145、同146、同149、同150、同151、同155、同179、同180、同181、同196、同197、同207、Disperse Red 22、同60、及び同191等が挙げられる。青系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Blue 35、同45、同78、同83、同94、同97、同104、及び同105等が挙げられる。黄系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Disperse Yellow 54、同160、及びSolvent yellow 33が挙げられる。緑系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Green 3、同20、及び同28等が挙げられる。紫系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Violet 28、同13、同31、同35、及び同36等が挙げられる。これらの染料は色毎に、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
なお、染料の種類は特に限定されないが、染料(B)は、耐候性の観点から、アントラキノン系染料、複素環式化合物系染料及びペリノン系染料からなる群より選ばれる1種以上の染料を含むことが好ましく、アントラキノン系染料、複素環式化合物系染料及びペリノン系染料からなる群より選ばれる1種以上の染料のみからなることがより好ましい。
アントラキノン系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Violet 36、Solvent Green 3、同28、Solvent Blue 94、同97、及びDisperse Red 22等が挙げられる。
複素環式化合物系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Disperse Yellow 160等が挙げられる。
ペリノン系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent red 179等が挙げられる。
これらはそれぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
染料(B)の含有量は、非結晶性樹脂組成物の総量に対して、耐候性や原料コストの観点より、好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下であり、より好ましくは0.02質量%以上1.0質量%以下であり、さらにより好ましくは0.03質量%以上0.8質量%以下であり、特に好ましくは0.05質量%以上0.6質量%以下である。染料(B)が、0.01質量%以上1.5質量%以下であることにより、後述のL*を所定の範囲に調整できる傾向にある。
〔カーボンブラック(C)〕
上記非結晶性樹脂組成物は、さらにカーボンブラック(C)を含むことが、耐候性の観点で好ましい。カーボンブラック(C)は、その表面をコーティング剤により表面コーティングされたものを含むことが好ましく、その表面をコーティング剤により表面コーティングされたものであることがより好ましい。このようなカーボンブラック(C)を用いることにより、より深みのある漆黒性を発現できる。
上記コーティング剤としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアリルアミド及びエチレンビスステアリルアミド(EBS)からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含むことが好ましく、1種以上の該化合物のみからなることがより好ましい。
これらの中でも、ステアリン酸亜鉛及びEBSがより好ましい。このようなコーティング剤を用いることにより、より深みのある漆黒性を実現できる傾向にある。コーティング剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
なお、これらの化合物は、カーボンブラック等の顔料分散剤としても通常用いられるものでもある。ただし、分散剤としてこれらの化合物を用いる場合、カーボンブラックと粉体とを混ぜ合わせただけの混合物であるため、カーボンブラックの表面をコーティングするコーティング剤としては機能していない状態にある。この状態のカーボンブラックは、上記コーティング剤で表面をコーティングしたカーボンブラックと比較して、非結晶性樹脂にコンパウンドした場合の漆黒性が低くなる傾向にある。本発明者らは、コーティング剤をその融点以上に加熱した後でカーボンブラックと混ぜ合わせてせん断をかけ、十分撹拌することで、コーティング剤とカーボンブラックとの配合比を分散剤として用いる場合と全く同じ組成にした場合であっても、上記コーティング剤が表面コーティング剤として機能し、漆黒性を著しく向上できることを見出した。このメカニズムとして本発明者らは下記を推定している。すなわち、本発明者らは、カーボンブラック表面とマトリックスである樹脂表面との間に空隙が存在し、ここで入射光が光散乱を生じていることが、漆黒性を十分に発現しにくい状態である「白ボケ」の原因であると考えている。この点において、コーティング剤をその融点以上に加熱した後でカーボンブラックと混ぜ合わせて撹拌することにより、そのカーボンブラック表面に存在する微細な凹凸、又は複数のカーボンブラック粒子間に存在する空隙をより容易に埋めることができると推定される。また、溶融樹脂とのコンパウンドの前に、カーボンブラック表面の凹凸又はカーボンブラック粒子間の空隙をコーティング剤で埋めておくことにより、コンパウンド時のマトリックスである溶融樹脂がそれらの凹凸や空隙を埋めることができるか否かにかかわらず、「白ボケ」をより十分に抑制するという観点から極めて有効な手段であると考える。
なお、上述の推定メカニズムに基づけば、コーティング剤は特に上記で例示した化合物に限定されず、メタクリル系樹脂と相溶性があり、かつその物性に影響を与え難い物質であれば好適に使用できることは容易に類推される。
カーボンブラックがコーティング剤によりその表面をコーティングされている場合、カーボンブラックの質量Wcとコーティング剤の質量Wsとの比率(Wc/Ws)は、好ましくは20/80〜60/40であり、より好ましくは30/70〜50/50である。Wc/Wsが上記範囲内であることにより、より深みのある漆黒性を実現することができる傾向にある。
カーボンブラック(C)の含有量は、非結晶性樹脂組成物の総量に対して、好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下であり、より好ましくは0.02質量%以上1.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下である。カーボンブラック(C)の含有量が0.01質量%以上であることにより、特に肉厚の薄い成形体であっても遮蔽性を高く維持することができる傾向にある。また、カーボンブラック(C)の含有量が1.5質量%以下であることにより、深みのある漆黒性を発現することができる傾向にある。また、コーティング剤を除いたカーボンブラックの含有量としては、非結晶性樹脂組成物の総量に対して、好ましくは0.005質量%以上0.6質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.03質量%以上0.4質量%以下である。
コーティング前のカーボンブラックの種類として、より具体的には、顕微鏡観察による算術平均粒径が10〜40nm、JIS K6217:2001で規定される窒素吸着比表面積が50〜400m2/g、及び950℃で7分間加熱した際の揮発分が0.5〜3質量%であることのうち1種以上の条件を満たすカーボンブラックを好適に使用できる。
〔摺動剤(D)〕
上記非結晶性樹脂組成物は、さらに摺動剤(D)を含むことが、耐擦傷性の観点で好ましい。摺動剤(D)としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系等の可塑剤、高級脂肪酸およびその塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ、又はトリグリセリド系等の離型剤、シロキサン系化合物等が挙げられる。中でも、漆黒性の観点から、シロキサン系化合物が好ましい。
上記シロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリル基を含有するシロキサン系化合物、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基を有するシロキサン系化合物、ポリエステル基を有するシロキサン系化合物、12〜36個の炭素原子を有する炭化水素基を有するシロキサン系化合物等が挙げられる。このなかでも、ポリ(メタ)アクリル基を含有するシロキサン系化合物、ポリエステル基を有するシロキサン系化合物が好ましい。また、シロキサン系化合物は、直鎖状、環状、分岐状のいずれの構造を有してもよいが、このなかでも直鎖状のシロキサン系化合物が好ましい。
また、シロキサン系化合物として、より具体的には、下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2019056110
(式(I)中、Rは、各々独立して、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基であり、R1は、各々独立して、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基又はポリエステル基であり、R2は、各々独立して、ポリエステル基又は12〜36個の炭素原子を有する炭化水素基であり、n、m、及びpは、各々独立して、0〜58であり、かつ、N=n+m+p+2は、15〜75を満たし、m及びpが0である場合、全てのR1はポリエステル基である。)
上記摺動剤(D)は、上記式(I)で表されるシロキサン系化合物を含むことが好ましく、上記式(I)で表されるシロキサン系化合物のみであることがより好ましい。
R又はR1で表される1〜11個の炭素原子を有するアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、テキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、等が挙げられる。
2で表される12〜36個の炭素原子を有する炭化水素基としては、直鎖状、分岐状、又は環状の脂肪族炭化水素基;芳香族炭化水素基;等が挙げられる。
1及び/又はR2で表されるポリエステル基は、好ましくは3〜30個のエステル単位から構成される基であり、より好ましくは8〜25個のエステル単位から構成される基であり、さらに好ましくは15〜25個のエステル単位から構成される基である。このようなポリエステル基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(V)で表される基が挙げられる。
式(V):−Rq−(Rru
(式(V)中、Rqは、−(CH2s−O−で表される基であり、Rrは、各々独立して、C(O)−(CH2t−O−で表される基であり、sは、2〜10、好ましくは3〜7、より好ましくは6であり、tは2〜10、好ましくは3〜8、より好ましくは4又は5であり、uは3〜30、好ましくは8〜25、より好ましくは15〜25である。)
ポリエステル基は、同じ又は異なる出発分子から構成されていてもよい。ポリエステル基は、好ましくは同じ出発分子から構成されている。ポリエステル基は、好ましくは開環によって進む、ラクトンのポリ(エステル化)によって得られるものであり、より好ましくはカプロラクトン又はバレロラクトン、殊にε−カプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン又はδ−カプロラクトンのポリ(エステル化)によって得られるものであり、さらに好ましくはε−カプロラクトンのポリ(エステル化)によって得られるものである。R1及び/又はR2がポリエステル基である式(I)で表されるより好ましい化合物は、ポリエステル基が3〜30個、好ましくは8〜25個、より好ましくは15〜25個のε−カプロラクトン単位から構成されているものである。さらに好ましくは、全てのR1は同じポリエステル基である。
式(I)で表される化合物は、R1のほかに1つ以上のR2もポリエステル基であることがさらに好ましい。式(I)の化合物中、R1も1つ以上のR2もポリエステル基である場合、これらのポリエステル基は、同じであることがさらにより好ましい(同じ数の出発分子単位を有する)。
全てのR1が1〜11個の炭素原子を有するアルキル基である(ここで、R1は、好ましくはメチル基である)場合、R2は、好ましくは12〜36個の炭素原子、より好ましくは20〜30個の炭素原子、さらに好ましくは24〜30個の炭素原子を有する炭化水素基であり、また、nは、好ましくは30以上、より好ましくは40〜50である。全てのR1が1〜11個の炭素原子を有するアルキル基であるの場合、pは、好ましくは0であり、かつ、mは、好ましくは30〜48である。
1及び/又はR2の1つ以上がポリエステル基である場合、nは、有利には10〜45、より有利には20〜30、特に有利には20以上30未満である。R2がポリエステル基である場合、pは、好ましくは0であり、かつ、mは、好ましくは1〜10であり、より好ましくは2〜5である。
式(I)で表されるシロキサン系化合物は、好ましくは、R2が、ポリエステル基又は12〜36個の炭素原子を有する炭化水素基である化合物である。
2が炭化水素基である式(I)で表されるシロキサン系化合物のうち、好ましい化合物は、R1=R=メチル基、n=40〜50、より好ましくは40又は50であり、かつR2が30個の炭素原子を有するアルキル基又は24〜28個の炭素原子を有するアルキル基である化合物の混合物である。
1及び/又はR2がポリエステル基である式(I)で表されるシロキサン系化合物(C)のうち、好ましい化合物は、R=メチル基、n=20〜45であり、かつ上記ポリエステル基が15〜25個のエステル単位を有する化合物である。
式(I)で表されるシロキサン系化合物のうち、好ましい化合物(p=0、R=メチル基、R1及び/又はR2が式(V)で表されるポリエステル基である場合はRq=ヘキサノール基)は、以下の表1から読み取ることができる。なお、R1は、一方のR1が表1に示される構造であることが好ましく、全てのR1が表1に示される構造であることがより好ましい。
Figure 2019056110
式(I)で表されるシロキサン系化合物の市販品としては、特に限定されないが、例えば、Evonik Goldschmidt GmbHより得られるTEGOMER(登録商標) H−Si 6440 P、TEGOPREN(登録商標) 6846等が挙げられる。
式(I)で表されるシロキサン系化合物は、相応する水素シロキサンと不飽和炭化水素若しくは飽和アルコールとの反応及び引き続く(ポリ)エステル化によって、又は不飽和ポリエステルと水素シロキサンとの直接反応によって得ることができる。反応は、欧州特許出願公開第1640418号明細書に記載されるようにヒドロシリル化によって又は脱水素的ヒドロシリル化によって行われることができる。ポリエステル基を有するポリシロキサンの製造方法は、例えば、欧州特許出願公開第0208734号明細書を参考にできる。
摺動剤(D)の含有量は、非結晶性樹脂組成物の総量に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上8質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上7質量%以下であり、さらにより好ましくは0.1質量%以上6質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以上4質量%以下である。摺動剤(D)の含有量が0.01質量%以上であることより、非結晶性樹脂組成物を含む成形体の耐擦傷性がより向上する傾向にある。また、摺動剤(D)の含有量が10質量%以下であることより、漆黒性がより向上する傾向にある。
また、シロキサン系化合物の含有量は、非結晶性樹脂組成物の総量に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上8質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上7質量%以下であり、さらにより好ましくは0.1質量%以上6質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以上4質量%以下である。シロキサン系化合物の含有量が0.01質量%以上であることより、非結晶性樹脂組成物を含む成形体の耐擦傷性がより向上する傾向にある。また、シロキサン系化合物の含有量が10質量%以下であることより、漆黒性がより向上する傾向にある。
〔その他の成分〕
(添加剤)
本実施形態の成形体には、必要に応じて、各種の添加剤を添加してもよい。
上記添加剤としては、例えば、ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等の帯電防止剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等の安定剤;難燃剤、難燃助剤、硬化剤、硬化促進剤、導電性付与剤、応力緩和剤、結晶化促進剤、加水分解抑制剤、衝撃付与剤、相溶化剤、核剤、強化剤、補強剤、流動調整剤、増感材、ゴム質重合体、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、充填剤、消泡剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌・防黴剤、防汚剤、導電性高分子等が挙げられる。
特に、熱安定剤、紫外線吸収剤及び難燃剤等を添加することが幅広い屋内外用途として、好ましい。また、応力緩和剤や衝撃付与剤として、ゴム質共重合体を添加してもよい。
(熱安定剤)
上記熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工安定剤等の酸化防止剤等が挙げられる。このなかでも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。このような熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−о−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリン)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノール等が挙げられ、ペンタエリスリトールテラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(紫外線吸収剤)
上記紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。このなかでも、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物が好ましい。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
紫外線吸収剤の20℃における蒸気圧(P)は、優れた成形加工性を得る観点から、好ましくは1.0×10-4Pa以下であり、より好ましくは1.0×10-6Pa以下であり、さらに好ましくは1.0×10-8Pa以下である。ここで、「優れた成形加工性」とは、例えば射出成形時に、金型表面への紫外線吸収剤の付着が少ないことや、フィルム成形時に、紫外線吸収剤のロールへの付着が少ないこと等を意味する。紫外線吸収剤がロールへ付着すると、最終的に目的とする成形体の表面に紫外線吸収剤が付着してしまい、外観性、光学特性を悪化させるおそれがあるため、成形体を光学用材料として使用する場合は特に上記成形加工性に優れていることが重要である。
紫外線吸収剤の融点(Tm)は、ブリードアウト防止の観点から、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは130℃以上であり、さらにより好ましくは160℃以上である。
23℃から260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の紫外線吸収剤の質量減少率は、ブリードアウト防止の観点から、好ましくは50%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、さらにより好ましくは10%以下であり、よりさらに好ましくは5%以下である。
(難燃剤)
上記難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、環状窒素化合物、リン系難燃剤、シリコン系難燃剤、籠状シルセスキオキサン又はその部分開裂構造体、シリカ系難燃剤等が挙げられる。
非結晶性樹脂組成物と種々の添加剤とを混合する場合の混練方法としては、後述する「非結晶性樹脂組成物の製造方法」に記載した方法等が挙げられ、特に限定されるものではない。
〔非結晶性樹脂組成物の製造方法〕
上記非結晶性樹脂組成物は、例えば、非結晶性樹脂(A)、染料(B)、および必要に応じて配合されるカーボンブラック(C)、摺動剤(D)、その他の成分などを撹拌によって十分混合させた後で、溶融混練(コンパウンド)することによって得ることができる。あるいは、染料(B)及び/又はカーボンブラック(C)、摺動剤(D)を用い、非結晶性樹脂(A)をベースとした高濃度のマスターバッチを溶融混練して調製し、そのマスターバッチを他の非結晶性樹脂(A)を用いて薄めて溶融混練してもよい。
溶融混練方法としては、例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練製造する方法が挙げられる。このなかでも、特に、押出機による混練が、生産性の観点から好ましく、単軸よりも二軸押出機が好ましい。混練温度は、非結晶性樹脂(A)の好ましい加工温度に従えばよく、好ましくは140〜300℃であり、より好ましくは180〜280℃であり、さらに好ましくは160〜260℃である。混練温度が300℃以下であることにより、非結晶性樹脂の熱分解による残存モノマーの発生をより抑制でき、残存モノマーの可塑化効果による耐熱性等の物性低下及び射出成形時のシルバーをより有効かつ確実に防止することができる傾向にある。また、混練回転数は、非結晶性樹脂組成物の着色や熱分解を防止する観点から、300rpm以下で行うことが好ましく、より好ましくは250rpm以下であり、さらに好ましくは200rpm以下である。
また、吐出量(kg/hr)/混練回転数(rpm)は、非結晶性樹脂(A)、染料(B)、カーボンブラック(C)、摺動剤(D)、及び添加剤等その他の成分の分解物の量を調整し、明度L*を適度な範囲に制御しやすくなる観点から、0.2以上1.5以下で行うことが好ましく、0.3以上1.4以下であることがより好ましく、0.4以上1.3以下であることがさらに好ましい。0.2以上1.5以下であることにより、L*を目的とする範囲に調整することが可能となる傾向にある。吐出量/混練回転数が0.2以上であると、せん断発熱による分解物の発生を抑え、L*値を2.5以下に調整しやすくなる傾向にあり、吐出量/混練回転数が1.5以下であると、混練状態がマイルドになり過ぎず、また、分解が適度に発生し、L*値が低くなりすぎない傾向にある。
成形に用いる金型は、金型表面(金型キャビティ内面)を、1000〜4000番の磨き番手で研磨しておくことが好ましい。
〔成形体の特性〕
(明度(L*))
本実施形態の成形体の「明度(L*)」とは、JIS Z 8729において採用されているL***表色系における色彩値のうちの明度の値(L*)を意味し、「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
本実施形態の成形体のSCE測定での明度(L*)は、漆黒性及び耐擦傷性を有する観点で、0.3以上2.5以下であり、好ましくは0.35以上2.0以下であり、より好ましくは0.4以上1.8以下、さらに好ましくは0.4以上1.6以下、さらにより好ましくは0.6以上1.6以下、特に好ましくは0.9以上1.55以下である。中でも、漆黒性に一層優れる観点から、後述の耐擦傷性試験前のL*が、上記範囲であることが好ましく、後述の耐擦傷性試験前のL*及び耐擦傷性試験後のL*が何れも上記範囲であることがより好ましい。
さらに、後述する試験方法による耐擦傷性試験前後のΔL*(ΔL*=(耐擦傷性試験
後のL*)−(耐擦傷性試験前のL*))は、耐擦傷性の観点から、1.0以下であることが好ましく、より好ましくは0.9以下であり、さらに好ましくは0.8以下、さらにより好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.5以下である。耐擦傷試験前のL*が0.3以上であることより、耐擦傷試験前後のΔL*が低減される傾向にある。また、ΔL
*が1.0以下であることにより、傷が付いていない周辺部との視認による区別が困難となり、傷が目立ち難くなる。
(成形体の厚さと流動長との関係)
本実施形態の成形体は、厚さt(単位:mm)と流動長L(単位:mm)とが下記式(II)の関係を満たすことが好ましい。
L/t<150・・・(II)
成形体が、上記式(II)で表される関係を有することにより、射出成形時に金型キャビティ内の流動末端部まで樹脂組成物を良好に充填することができる傾向にある。また、上記式(II)で表される関係を満たすことで成形歪を抑制することができるので、反りやソルベントクラック尾を防止することも可能となる。同様の観点から、L/tは145未満であるとより好ましく、140未満であると更に好ましい。一方、L/tの下限は特に限定されないが、成形体に軽量化・薄肉化の要求を一層満足させる観点から、L/tが100以上であると好適である。なお、流動長Lは、成形体を得る際に非結晶性樹脂組成物が流動した長さを示し、その大きさに合せて適宜、ノギス、マイクロメータ、物差し及び三次元測定機等、市販の各種計測道具によって測定される。
本実施形態の成形体の厚さtは、1.5mm以上4.0mm以下であると好ましく、1.8mm以上3.5mm以下であるとより好ましく、2.0mm以上3.0mm以下であるとさらに好ましく、0.5mm以上3.0mm以下であると特に好ましい。成形体の厚さtが1.5mm以上であると、成形歪を低減できるという効果を奏する。一方、厚さtが4mm以下であると、成形体をより軽量化することができる。例えば、成形体を自動車外装・内装用意匠材などの意匠面を有する用途に用いると、成形体は意匠面を有していればよく、その厚さを薄くするほど軽量化できるので好ましい。
本実施形態の成形体は、成形時に使用した金型のゲートに対応するゲート部を有することが好ましい。上記ゲート部の数は、少なくとも1個であることが好ましく、より好ましくは1個である。
本実施形態の成形体は、生産性の観点から、射出成形体であることが好ましい。
本実施形態の成形体中の非結晶性樹脂(A)の含有量は、得られる成形体の漆黒性が一層優れる観点から、成形体の総量に対して、好ましくは50質量%以上99.9質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上98.5質量%以下、更に好ましくは70質量%以上98質量%以下である。
また、本実施形態の成形体中のメタクリル系樹脂の含有量は、得られる成形体の漆黒性、表面硬度、及び耐傷つき性に一層優れる観点から、成形体の総量に対して、好ましくは50質量%以上99.9質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上98.5質量%以下、更に好ましくは70質量%以上98質量%以下である。
本実施形態の成形体中の染料(B)の含有量は、成形体の総量に対して、耐候性や原料コストの観点より、好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下であり、より好ましくは0.02質量%以上1.0質量%以下であり、さらにより好ましくは0.03質量%以上0.8質量%以下であり、特に好ましくは0.05質量%以上0.6質量%以下である。染料(B)が、0.01質量%以上1.5質量%以下であることにより、L*を所定の範囲に調整できる傾向にある。
本実施形態の成形体中のカーボンブラック(C)の含有量は、成形体の総量に対して、好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下であり、より好ましくは0.02質量%以上1.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下である。カーボンブラック(C)の含有量が0.01質量%以上であることにより、特に肉厚の薄い成形体であっても遮蔽性を高く維持することができる傾向にある。また、カーボンブラック(C)の含有量が1.5質量%以下であることにより、深みのある漆黒性を発現することができる傾向にある。また、コーティング剤を除いたカーボンブラックの含有量としては、成形体の総量に対して、好ましくは0.005質量%以上0.6質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.03質量%以上0.4質量%以下である。
本実施形態の成形体中の摺動剤(D)の含有量は、成形体の総量に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上8質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上7質量%以下であり、さらにより好ましくは0.1質量%以上6質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以上4質量%以下である。摺動剤(D)の含有量が0.01質量%以上であることより、成形体の耐擦傷性がより向上する傾向にある。また、摺動剤(D)の含有量が10質量%以下であることより、漆黒性がより向上する傾向にある。
また、シロキサン系化合物の含有量は、成形体の総量に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上8質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上7質量%以下であり、さらにより好ましくは0.1質量%以上6質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以上4質量%以下である。シロキサン系化合物の含有量が0.01質量%以上であることより、成形体の耐擦傷性がより向上する傾向にある。また、シロキサン系化合物の含有量が10質量%以下であることより、漆黒性がより向上する傾向にある。
(成形体の製造方法)
本実施形態の成形体は、例えば、下記のようにして製造することができる。まず、必要に応じてペレットの形態で得られた上記の非結晶性樹脂組成物を射出成形機の金型キャビティ内に投入する。この際、金型としては成形体の形状に対応する形状の金型キャビティを有し、かつ、1点ゲートである金型を用いることが好ましい。また、その金型におけるゲートの位置は、最終的に得られる成形体において別部材によって覆われることで目視にて確認できなくなるような部分と接触する位置であると好ましい。次いで、その射出成形機により所定の条件にて、非結晶性樹脂組成物を射出成形する。こうして本実施形態の射出成形体を得ることができる。
また、射出成形時の金型温度は、金型表面を研磨した場合に研磨された金型表面の転写性をより高める観点、及び、非結晶性樹脂のガラス転移温度を考慮して過度な冷却を抑制する観点から、50℃以上100℃以下であると好ましく、60℃以上95℃以下であるとより好ましく、65℃以上90℃以下であると更に好ましい。
但し、金型を研磨する際に用いるやすりの番手が5000番手以上であるとL*が低くなり過ぎ、本実施形態のL*下限値から外れる傾向にあるため、初期L*を制御する観点で、番手は5000番未満を使用することが好ましい。
(成形体の用途)
本実施形態の成形体は、塗装品並みの漆黒性かつ耐擦傷性が求められる用途に好適に用いることができる。
このような用途としては特に限定されないが、例えば、家具類、家庭用品、収納・備蓄用品、壁・屋根等の建材、玩具・遊具、パチンコ面盤等の趣味用途、医療・福祉用品、OA機器、AV機器、電池電装用、照明機器、船舶、航空機の構造の車体部品、車両用部品等に使用可能であり、特に車体部品や車両用部品等の車両用途や、光学用途、電気・電子用途に好適に用いることができる。光学用途としては、例えば、各種レンズ、タッチパネル等、また、太陽電池に用いられる透明基盤等が挙げられる。
その他、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバーEL照明等のカバー等としても利用することができる。
電気・電子用途としては、例えば、パソコン、ゲーム機、テレビ、カーナビ、電子ペーパーなどのディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、CDプレーヤー、MDプレーヤー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等が挙げられる。特に、テレビ、パソコン、カーナビ、電子ペーパー等の筐体の意匠性部品等に好適に用いることができる。
特に、自動車用の意匠材として用いられることが好ましい。自動車用の意匠材としては、例えば自動車外装用意匠材及び自動車内装用意匠材が挙げられるが、本発明による作用効果をより有利に活用する観点から、自動車外装用意匠材が好ましい。本実施形態の自動車外装用意匠材としては、例えば、テールランプガーニッシュ、リアランプガーニッシュ、フロントランプガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、リアグリル及びナンバープレートガーニッシュが挙げられ、これらが好適である。これらの用途は総じて、薄肉の長手部品であり、意匠性が重要視されるものである。
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態は、後述する実施例に限定されるものではない。
〔測定、評価方法〕
<I.非結晶性樹脂(A)の分子量及び分子量分布>
非結晶性樹脂の重量平均分子量、分子量分布を下記の装置、及び条件で測定した。
測定装置:東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC−8320GPC)
カラム :TSKgel SuperH2500 1本、TSKgel SuperHM−M 2本、TSKguardcolumn SuperH−H 1本、直列接続
本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量は溶出する時間が遅い。
検出器 :RI(示差屈折)検出器
検出感度 :3.0mV/min
カラム温度:40℃
サンプル :0.02gの熱可塑性樹脂のテトラヒドロフラン10mL溶液
注入量 :10μL
展開溶媒 :テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/min
検量線用標準サンプルとして、単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymethyl methacrylate Calibration Kit PL2020−0101 M−M−10)を用いた。
なお、検量線用標準サンプルに用いたポリメタクリル酸メチルは、それぞれの単ピークのピーク分子量は以下のものを使用した。
ピーク分子量
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、非結晶性樹脂の溶出時間に対する、RI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線を基に非結晶性樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、GPCピークトップ分子量(Mp)及びGPCピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合(%)を求めた。
<II.非結晶性樹脂(A)の構造単位の解析>
1H−NMR測定により構造単位を同定し、その存在量(質量%)を算出した。
1H−NMR測定の測定条件は、以下のとおりである。
装置:JEOL−ECA500
溶媒:CDCl3−d1(重水素化クロロホルム)
試料:非結晶性樹脂(A)15mgをCDCl3−d1 0.75mLに溶解し、測定用サンプルとした。
<III.漆黒性>
実施例及び比較例で得られた成形体について、分光測色計(コニカミノルタジャパン社製、「CM−700d」)を用いて明度L*を、SCE方式(10°視野/D65光源)にて測定した。
明度L*が低いほど黒色となり、漆黒性が良好である。
<IV.耐擦傷性>
耐擦傷試験は以下の方法で実施した。実施例及び比較例で得られた射出成形された平板状評価用試料を用いて、学振型摩擦試験機(大栄科学精器製作所社製、RT−200)の2cm□冶具の先端に純綿軍手をセットし、図1のように評価用試料と接触する治具表面を6号綿帆布で覆い、帆布がずれないよう固定し、荷重1kgf、試験距離50mm、試験速度50mm/sの条件で樹脂の流動方向に40回往復摺動させた。耐擦傷性試験前後の明度L*を測定し、ΔL*を算出した。
ΔL*=耐擦傷性試験後のL*−耐擦傷性試験前のL*
また、耐擦傷性試験後の成形体表面を目視にて観察し、次の評価基準で耐擦傷性を判断した。
◎(優れる):摩耗痕がほぼ視認できない。
○(良好):わずかに摩耗痕が視認できる。
×(劣る):摩耗痕が十分に視認できる。
なお、ΔL*が0.7以下である場合、目視にて摩耗痕を視認することができず耐擦傷
性に優れていた。ΔL*が0.7超1.0以下である場合、目視にてわずかに摩耗痕が視
認できるだけで、耐擦傷性が良好であった。ΔL*が1.0超である場合、摩耗痕が十分
に視認でき、耐擦傷性に劣っていた。
<V.耐熱性>
耐熱性の評価として、後述する実施例及び比較例の非結晶性樹脂組成物のビカット軟化温度(VST)を、HDT試験装置 (ヒートディストーションテスター)(東洋精機製作所社製)を用いて、ISO 306 B50に準じて、測定した。
<VI.耐候性>
耐候性の評価として、実施例及び比較例で得られた成形体について、分光測色計(コニカミノルタジャパン社製、「CM−700d」)を用いて、SCE方式(10°視野/D65光源)にてL***を測定した後、スガ試験機株式会社社製のサンシャインウェザーメーターS80を用いて、暴露条件63℃雨有(18分間降雨/120分間照射)2000時間試験後のL***も測定し、ΔEを算出した。ΔEは低い値程、耐候性に
優れることを示している。
〔非結晶性樹脂組成物〕
後述する実施例及び比較例で、非結晶性樹脂組成物の製造に用いた非結晶性樹脂(A)、染料(B)、カーボンブラック(C)及び摺動剤(D)について、以下記載する。
〔実施例及び比較例において用いた原料〕
(非結晶性樹脂(A))
非結晶性樹脂(A)として用いた市販品、及び非結晶性樹脂(A)の製造に用いた原料は下記のとおりである。
・ポリカーボネート
三菱エンジニアリング社製 グレード名:H−3000
重量平均分子量:3.8万、分子量分布:2.3
・ポリスチレン
PSジャパン社製 グレード名:G9305
重量平均分子量:25万、分子量分布:2.3
構造単位は、St:100質量%であった。
・メタクリル系樹脂
メタクリル系樹脂は、下記製造例A1〜A4により製造した(A−1)〜(A−4)のメタクリル系樹脂を使用した。
メタクリル系樹脂の原料
・メタクリル酸メチル(MMA):旭化成ケミカルズ製(重合禁止剤として中外貿易製2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール(2,4−di−methyl−6−tert−butylphenol)を2.5ppm添加されているもの)
・アクリル酸メチル(MA):三菱化学製(重合禁止剤として川口化学工業製4−メトキシフェノール(4−methoxyphenol)が14ppm添加されているもの)
・n−フェニルマレイミド(PMI):日本触媒製
・スチレン(St):旭化成製
・n−オクチルメルカプタン(n−octylmercaptan):アルケマ製
・2−エチルヘキシルチオグリコレート(2−ethylhexyl thioglycolate):アルケマ製
・ラウロイルパーオキサイド(lauroyl peroxide):日本油脂製
・第三リン酸カルシウム(calcium phosphate):日本化学工業製、懸濁剤として使用
・炭酸カルシウム(calcium calbonate):白石工業製、懸濁剤として使用
・ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate):和光純薬製、懸濁助剤として使用
<製造例A1(メタクリル系樹脂(A−1)の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(a)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(a)、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸メチル:0.43kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn−オクチルメルカプタン:62gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−1)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は10.2万であり、ピークトップ分子量(Mp)は10.9万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は、4.5%であった。また、構造単位はMMA/MA=98/2(質量%)であった。
<製造例A2(メタクリル系樹脂(A−2)の製造)>
(1段目)
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(b)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:23kgを投入して80℃に昇温し、混合液(b)、メタクリル酸メチル:5.5kg、ラウロイルパーオキサイド:40g、及び2−エチルヘキシルチオグリコレート:90gを投入した。その後、約80℃を保って懸濁重合を行った。原料を投入してから80分後に発熱ピークが観測された。
(2段目)
次いで、92℃に1℃/min速度で昇温した後、30分間92℃〜94℃の温度を保持した。その後、1℃/minの速度で80℃まで降温した後、次いで、メタクリル酸メチル:16.2kg、アクリル酸メチル:0.75kg、ラウロイルパーオキサイド:21g、n−オクチルメルカプタン:17.5gを投入し、引き続き約80℃を保って懸濁重合を行った。原料を投入してから105分後に発熱ピークが観測された。その後、92℃に1℃/minの速度で昇温した後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−2)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は17.2万であり、ピークトップ分子量(Mp)は19.7万であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.65であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は24.5%であった。また、構造単位はMMA/MA=96.5/3.5(質量%)であった。
<製造例A3(メタクリル系樹脂(A−3)の製造)>
(1段目)
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(c)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:23kgを投入して80℃に昇温し、混合液(c)及びメタクリル酸メチル:7.8kg、アクリル酸メチル:0.16kg、ラウロイルパーオキサイド:55g、2−エチルヘキシルチオグリコレート:165gを投入した。その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測した。
(2段目)
その後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、30分間92℃〜94℃の温度を保持した。その後、1℃/minの速度で80℃まで降温した後、次いで、メタクリル酸メチル:15.0kg、アクリル酸メチル:0.3kg、ラウロイルパーオキサイド:25g、n−オクチルメルカプタン:18.5gを投入し、引き続き約80℃を保って懸濁重合を行った。発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温した後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。得られたポリマー微粒子を230℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断してメタクリル系樹脂ペレット(A−3)を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は12.7万であり、ピークトップ分子量(Mp)は16.5万であり、分子量分布(Mw/Mn)は4.45であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は、32.5%であった。また、構造単位はMMA/MA=98.1/1.9(質量%)であった。
<製造例A4(メタクリル系樹脂(A−4)の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(d)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(d)、メタクリル酸メチル:16.8kg、フェニルマレイミド:2.93kg、スチレン:1.04kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn−オクチルメルカプタン:43gを投入した。その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−4)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は12.3万であり、ピークトップ分子量(Mp)は10.9万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.83であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は、4.0%であった。また、構造単位はMMA/PMI/St=81/14/5(質量%)であった。
(結晶性樹脂)
・ポリエチレンテレフタレート
ユニチカ社製:グレード名:MA−2103
(染料(B))
染料としては、表2に記載の市販品を用い、それらをコンパウンド原料とした。それぞれの配合量は表4に示す。
Figure 2019056110
(カーボンブラック(C))
C−A1については、表3に記載のカーボンブラックC−A0に対して、コーティング剤を用いて表面コーティング処理を施した。具体的には、まず、カーボンブラックC−A0の1.5倍の質量のコーティング剤を量り取り、それを融点以上である160℃に加熱して溶融させた後、所定量のカーボンブラックをその融液の中へ投入し撹拌した。なお、ステアリン酸亜鉛の融点は約140℃である。十分撹拌して分散させた後、冷却して、表面がコーティングされたカーボンブラックを得た。
Figure 2019056110
(摺動剤(D))
シロキサン系化合物としては、下記市販の添加剤を用いた。
D−1:TEGOMER(登録商標)H−Si 6440P(エボニック社製)
D−2:シャリーヌ R‐170S(日油社製)
D−1は、ポリエステル基を有するポリシロキサン系化合物
D−2は、ポリ(メタ)アクリル基を有するポリシロキサン系化合物
その他摺動剤としては、下記市販品を用いた。
D−3:ステアリン酸亜鉛(関東化学社製)
D−4:ノフアロイ KA832(日油社製)熱可塑性エラストマー
〔実施例1〜15〕〔比較例1〜7〕
表4に記載の配合割合になるよう、非結晶性樹脂(A)、染料(B)、カーボンブラック(C)及び摺動剤(D)をそれぞれ計量した後、ドライブレンドによって混合し分散させた。十分に混合させた後、φ30mmの二軸押出機にその混合原料を投入し、溶融混練(コンパウンド)してストランドを生成し、ウォーターバスでそのストランドを冷却した後、ペレタイザーで切断してペレットを得た。なお、コンパウンドの際、押出機のベント部に真空ラインを接続し、水分やモノマー成分等の揮発成分を除去した。こうして、非結晶性樹脂組成物を得た。なお、コンパウンド時の樹脂組成物の温度は、230〜280℃であった。また、吐出量(kg/hr)/混練回転数(rpm)を表4の値になるように調整した。各実施例、比較例の混練条件を表4に示した。
〔平板状評価用試料〕
(射出成形)
得られた非結晶性樹脂組成物のペレットを射出成形機に投入し、平板状(100mm×100mm×3mmt)に成形し、評価用試料とした。なお、金型は、金型表面(金型キャビティ内面)が2000番、4000番、又は8000番の磨き番手で研磨されているものを用いた。そして、その磨き番手で研磨されている側の金型表面が転写されている成形体表面を、この評価用試料の平滑面とした。すなわち、この評価用試料での平滑面の面積は100cm2であった。なお、この評価用試料の成形条件は、下記のように設定した。
樹脂温度: 230℃〜280℃
金型温度: 60〜85℃(比較例7のみ30℃)
なお、得られた成形体の含有成分、及び各成分の質量割合は非結晶性樹脂組成物と同じであった。また各実施例、比較例の成形条件を表4に示した。
Figure 2019056110
実施例1においては、ポリカーボネート、染料(B)、カーボンブラック(C)、摺動剤(D)を配合しており、初期L*が適切であったため、漆黒性、耐擦傷性において、実用上良好なレベルであった。
実施例2においては、ポリスチレン、染料(B)、カーボンブラック(C)、摺動剤(D)を配合しており、L*が適切であったため、漆黒性、耐擦傷性において、実用上良好なレベルであった。
実施例3、4、6においては、メタクリル系樹脂を用いることで、実施例1に比べて、漆黒性が良化傾向であり、耐擦傷性も実用上良好なレベルであった。
また、実施例7〜10では、L*が適切であり、さらに摺動剤(D)の添加により、擦傷試験後の傷がほぼ視認できず、耐擦傷性が非常に良好であった。
実施例5においては、GPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の存在量が、6〜50%の範囲であるメタクリル系樹脂であったため、実施例4に比べて、耐擦傷性が良化傾向であった。
実施例11では、上述の成形条件において、2000番の磨き番手で研磨されている金型を用いたため、実施例5に比べて、L*が適切であり、耐擦傷性が実用上良好なレベルであった。
実施例12では、押出条件において、吐出量(kg/hr)/混練回転数(rpm)が1.3であり、最も好ましい範囲から外れていたため、実施例5に比べて、ややL*が小さくなり、ΔL*が大きくなったが、実用上良好なレベルであった。
実施例13は、押出条件において、吐出量(kg/hr)/混練回転数(rpm)が0.5であり、最も好ましい範囲であったため、実施例5に比べて、L*が適切であったため、耐擦傷性において、実用上非常に良好なレベルであった。
実施例14では、2000番の磨き番手で研磨されている金型を用い、押出条件において、吐出量(kg/hr)/混練回転数(rpm)が0.5であり、最も好ましい範囲であったため、実施例5に比べて、L*がより適切となり、耐擦傷性において、実用上非常に良好なレベルであった。
実施例15では、2000番の磨き番手で研磨されている金型を用い、押出条件において、吐出量(kg/hr)/混練回転数(rpm)が0.5であり、最も好ましい範囲であったため、実施例9に比べて、L*がさらにより適切となり、耐擦傷性において、実用上非常に良好なレベルであった。
一方で、比較例1においては、染料(B)を用いていないため、漆黒性が低下し、摺動剤を添加せず、ポリカーボネート単体のため、耐擦傷性が不十分であった。
比較例2、3においては、上述の成形条件において、8000番の磨き番手で研磨されているものを用いたため、L*の下限値から外れた。結果として、耐擦傷性試験後の傷が目立ちやすくなった。
比較例4では、熱可塑性エラストマー添加の影響で、L*の上限値から外れ、耐擦傷性試験後の傷が目立ちやすくなった。
比較例5では、比較例2に比べて、押出条件において、吐出量(kg/hr)/混練回転数(rpm)が2.0としたためか、L*の下限値からより外れ、耐擦傷性試験後の傷が目立ちやすくなった。
比較例6では、4000番の磨き番手で研磨されている金型を用いたが、押出条件において、吐出量(kg/hr)/混練回転数(rpm)が2.0であり、実施例5に比べて、L*の下限値から外れ、耐擦傷性試験後の傷が目立ちやすくなった。
比較例7では、結晶性樹脂を使用したため、実施例と比較し、多量の染料を添加しないとL*が低くならず、また、L*が所定内となるも耐擦傷性試験後の傷が目立ちやすくなった。
本実施形態の成形体の利用に関しては、漆黒性、耐擦傷性の要求される用途に対して全般的に産業上利用可能である。

Claims (15)

  1. 非結晶性樹脂(A)と、染料(B)とを含み、
    SCE測定での明度(L*)が0.3以上2.5以下である
    ことを特徴とする成形体。
  2. カーボンブラック(C)をさらに含む、請求項1に記載の成形体。
  3. 前記カーボンブラック(C)が、コーティング剤で表面コーティングされたカーボンブラックであり、
    前記コーティング剤が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアリルアミド、及びエチレンビスステアリルアミドからなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項2に記載の成形体。
  4. 摺動剤(D)をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形体。
  5. 前記摺動剤(D)が下記式(I)で表されるシロキサン系化合物を含む、請求項4に記載の成形体。
    Figure 2019056110
    (式(I)中、Rは、各々独立して、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基であり、R1は、各々独立して、1〜11個の炭素原子を有するアルキル基又はポリエステル基であり、R2は、各々独立して、ポリエステル基又は12〜36個の炭素原子を有する炭化水素基であり、n、m、及びpは、各々独立して、0〜58であり、かつ、N=n+m+p+2は、15〜75を満たし、m及びpが0である場合、全てのR1はポリエステル基である。)
  6. 前記染料(B)が、赤系染料、黄系染料、緑系染料、青系染料、及び紫系染料からなる群より選ばれる1種以上の染料を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形体。
  7. 前記染料(B)が、アントラキノン系染料、複素環式化合物系染料、及びペリノン系染料からなる群より選ばれる1種以上の染料を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の成形体。
  8. 前記非結晶性樹脂(A)が、メタクリル系樹脂である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の成形体。
  9. ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した、前記メタクリル系樹脂の重量平均分子量が、50000〜300000であり、かつ、
    前記メタクリル系樹脂のGPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が、前記メタクリル系樹脂の前記GPC溶出曲線の総面積に対して、6〜50%である、請求項8に記載の成形体。
  10. 射出成形体である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の成形体。
  11. 前記成形体の厚さt(単位:mm)と流動長L(単位:mm)とが下記式(II)の関係を満たし、かつ、1つのゲート部を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の成形体。
    L/t<150 ・・・(II)
  12. 前記成形体の厚さt(単位:mm)が、0.5以上3.0以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の成形体。
  13. 自動車用の意匠材である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の成形体。
  14. テールランプガーニッシュ、リアランプガーニッシュ、フロントランプガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、リアグリル、及びナンバープレートガーニッシュのいずれかである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の成形体。
  15. 非結晶性樹脂(A)と、染料(B)とを含み、
    長さ100mm、幅100mm、厚さ3mmの成形板とした時のSCE測定での明度(L*)が0.3以上2.5以下である
    ことを特徴とする樹脂組成物。
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