JP2023138472A - メタクリル系樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

メタクリル系樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、光を良好に透過し、かつ光を十分に拡散させる性能に優れ、良好な耐熱変形性、長期使用特性、光源色の再現性や視認性を有した、メタクリル系樹脂組成物、成形体を提供することにある。【解決手段】本発明のメタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂100質量部に対し、波長380nmから780nmにおいて波長500~670nmに極大吸収波長を有する波長調整剤を0.000003質量部~0.0003質量部、平均粒径0.2~20μmの光拡散性フィラーを0.3~6質量部含有し、中間点ガラス転移温度が105℃以上であることを特徴としている。【選択図】なし

Description

従来、各種ディスプレイ、看板等に用いられている光拡散性部材としては、無機系又は有機系の微粒子を基材樹脂である透明樹脂中に分散させた材料を成形したものが検討されてきた。該光拡散性部材は、透明性を有する基材樹脂とこれに分散させた微粒子との屈折率差により、基材樹脂と微粒子との界面で光線を散乱あるいは反射させ、光拡散性を持たせる方法が広く用いられている。この場合の透明樹脂としては、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂等が通常用いられている。
上記各種ディスプレイ、看板等の製品においては、より明るくかつ均一であることが強く求められているため、これらの商品に用いられる光拡散性材料には、より光を透過し、かつ光を十分に拡散させる性能が必要となる。加えて近年では光源のLED化によって、従来よりも製品寿命が長くなっており、より長期にわたる使用や、屋外での長期使用に好適なことが要求されており、光源のLED光を拡散させた光において光源のLED光の色を良好に再現することが求められている。また、近年、より明るく、遠方からの視認性に優れた発光体とするために従来よりも内部光源の出力が大きくなっており、良好な耐熱変形性を持つ光拡散性材料が求められている。
特許文献1ではメタクリル系樹脂に架橋シリコーン系樹脂を添加したメタクリル系樹脂組成物が開示されており、良好な光線透過と良好な光拡散性を達成しているが、特許文献1では長期使用に適していない。また、メタクリル系樹脂組成物の生産性が悪く、耐熱変形性も十分とは言えない上、車両用部材として用いようとした時に良好な成形体が得られないものであった。また、光源色の再現性や視認性が良好でないものであった。
特許文献2では良好な光線透過と良好な光拡散性を達成するのに適した微粒子が開示されているが、その使用においては、やはり耐熱変形性が不十分であり、長期使用にも適していなかった。また、光源色の再現性や視認性が良好でないものであった。
特許文献3では良好な光線透過と良好な光拡散性、耐熱変形性を達成しているが、波長調整剤が380-495nmに極大吸収を示すものを用いており、白色LED光源の光を拡散させようとした場合、拡散された光は光源の光再現性や視認性が良好でないものであった。
特開平3-207743号公報 特開平10-67829号公報 国際公開2013-150891号公報
一方で、車両用のコンビネーションランプの内部に配置されたランプカバー等の用途においては、使用される環境温度が比較的高温であるため、良好な耐熱変形性を有する透明樹脂を用いて、透明樹脂の成形体表面にシボを賦形することで透過光を拡散させる手法が用いられてきた。しかし、表面へのシボ賦形では、大型の成形体や、成形流動長が長い成形体において、賦形がうまく出来ず、内部の光源が透けてしまうことがあり、成形体の形状が制限されることがあった。また、シボ賦形は特に射出成形において長期間成形を続けていると、金型表面の凹凸が小さくなってしまい内部光源が透けるようになってしまうため、品質維持の面でも問題があった。
また、上述のような光拡散性材料を用いようとしたとき、耐熱変形性が不足していたり、長期使用に適していなかったり、光が拡散されることで導光距離が導光方向における成形体厚みよりも大きくなり、黄色味が強調され光源色の再現性や視認性に悪影響を与えることがあり、これらの問題を解決できる良好な耐熱変形性を持ち、自動車等の長期に使用する車両においても使用できる長期使用特性、光源色の再現性や視認性に優れた光拡散性材料が強く求められている。
そこで本発明は、光を良好に透過し、かつ光を十分に拡散させる性能に優れ、良好な耐熱変形性、長期使用特性、光源色の再現性や視認性を有した、メタクリル系樹脂組成物、成形体を提供とすることを目的とする。本発明のメタクリル系樹脂組成物、成形体は光源として白色LEDを用いた光拡散性材料として特に適している。
本発明者らは上記した従来技術の問題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、特定の組成を有するメタクリル系樹脂組成物において上記従来技術の問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
メタクリル系樹脂100質量部に対し、波長380nmから780nmにおいて波長500~670nmに極大吸収波長を有する波長調整剤を0.000003質量部~0.0003質量部、平均粒径0.2~20μmの光拡散性フィラーを0.3~6質量部含有し、
中間点ガラス転移温度が105℃以上である、
ことを特徴とするメタクリル系樹脂組成物。
[2]
シリンダー温度240℃、金型温度60℃、金型磨き番手8000番の金型用いて射出成形された厚さ2mmの平板の波長570nmにおける分光透過率(B)に対する波長470nmにおける分光透過率(A)の割合(A/B)と光拡散率(LD)が条件(1)または(2)を満たす、[1]に記載のメタクリル系樹脂組成物。
条件(1):LD≦40%でかつ、0.96≦A/B≦1.04
条件(2):LD>40%でかつ、0.99≦A/B≦1.01
[3]
前記メタクリル系樹脂の重量平均分子量が75,000~200,000である、[1]または[2]に記載のメタクリル系樹脂組成物。
[4]
前記光拡散性フィラーが前記メタクリル系樹脂よりも低い屈折率を有し、その屈折率差が0.005以上0.12以下である、[1]から[3]のいずれかに記載のメタクリル系樹脂組成物。
[5]
波長570nmにおける分光透過率(B)に対する波長470nmにおける分光透過率(A)の割合(A/B)と光拡散率(LD)が条件(1)または(2)を満たし、
メタクリル系樹脂と平均粒径0.2~10μmの光拡散性フィラーと波長調整剤を含有するメタクリル系樹脂組成物からなる、
ことを特徴とする成形体。
条件(1):LD≦40%でかつ、0.97≦A/B≦1.04
条件(2):LD>40%でかつ、0.99≦A/B≦1.01
[6]
前記メタクリル系樹脂組成物が、[1]~[4]のいずれかに記載のメタクリル系樹脂組成物である、[5]に記載の成形体。
[7]
厚みtが1~5mmである、[5]または[6]に記載の成形体。
[8]
前記メタクリル系樹脂組成物の流動長Lと成形体の厚みtが下記条件(1)、(2)、(3)を満たす、[5]~[7]のいずれかに記載の成形体。
1mm≦t≦5mm・・・条件(1)
L≧100mm ・・・条件(2)
L/t≧65 ・・・条件(3)
[9]
車両用部材に用いられる、[5]~[8]のいずれかに記載の成形体。
[10]
車両灯具用部材に用いられる、[5]~[9]のいずれかに記載の成形体。
[11]
[5]~[10]のいずれかに記載の成形体とLED光源とを含み、
LED光の導光方向と並行方向に前記成形体の長手方向が配置される、光拡散性カバー。
[12]
光拡散性カバーの内部に透明樹脂製導光体が配置され、前記透明樹脂製導光体によって導光された光を拡散する、[11]に記載の光拡散性カバー
[13]
白色LED光源の光拡散性カバーとして用いられる、[11]または[12]に記載の光拡散性カバー。
[14]
前記白色LED光源が青色LEDと蛍光体とで構成されている、[13]に記載の光拡散性カバー。
[15]
N-置換マレイミド構造、無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも一種の環構造を主鎖に有するメタクリル系樹脂100質量部に対し、平均粒径0.2~20μmの光拡散性フィラーを0.3~6質量部含有し、波長380nmから780nmにおいて波長500~670nmに極大吸収波長を有する波長調整剤を含み、中間点ガラス転移温度が120℃以上140℃以下である、ことを特徴とするメタクリル系樹脂組成物。
本発明によれば、光を良好に透過し、かつ光を十分に拡散させる性能に優れ、良好な耐熱変形性、長期使用特性、光源色の再現性や優れて視認性を有した、メタクリル系樹脂組成物、成形体を得ることができる。本発明のメタクリル系樹脂組成物、成形体は光源として白色LEDを用いた光拡散性材料として特に適している。
LED光源に対する光拡散性カバーとしての評価方法を説明する概略図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
なお、以下において、重合体を構成する構成単位のことを「~単量体単位」、及び/又は複数の該「~単量体単位」を含む「~構造単位」ということがある。
また、かかる「~単量体単位」の構成材料のことを、「単位」を省略して、単に「~単量体」と記載する場合もある。
[メタクリル系樹脂組成物]
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂100質量部に対し、平均粒径0.2~10μmの光拡散性フィラーを0.3~6質量部(好ましくは0.5~6質量部)、波長380nmから780nmにおいて波長500~670nmに極大吸収波長を有する波長調整剤を0.000003質量部~0.0003質量部含有し、中間点ガラス転移温度が105℃以上である。
中間点ガラス転移温度を105℃以上とし、波長380nmから780nmにおいて波長500~670nmに極大吸収波長を有する波長調整剤を0.000003質量部~0.0003質量部を含有することで成形体としたときより良好な耐熱変形性と光源色の再現性や優れて視認性を持たせることができ、高出力LED等の内部光源に近接するような用途、昼夜間問わず視認性が安定していることが要求されるような用途、光源色の再現性が良好であることが求められる用途でもより好適に用いることができる。
また、他の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、N-置換マレイミド構造、及び無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の環構造を主鎖に有するメタクリル系樹脂100質量部に対し、平均粒径0.2~20μmの光拡散性フィラーを0.3~6質量部含有し、波長380nmから780nmにおいて波長500~670nmに極大吸収波長を有する波長調整剤を含み、中間点ガラス転移温度が120℃以上140℃以下である。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、上記メタクリル系樹脂、上記波長調整剤及び上記光拡散フィラーのみからなる組成物であってもよいし、上記メタクリル系樹脂、上記波長調整剤、上記光拡散フィラー及び後述の紫外線吸収剤のみからなる組成物であってもよいし、上記メタクリル系樹脂、上記波長調整剤、上記光拡散フィラー、後述の紫外線吸収剤及び後述の離型剤のみからなる組成物であってもよい。
<メタクリル系樹脂>
メタクリル系樹脂は、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の構成成分の一つである。メタクリル系樹脂を含むことにより、外観が良好となり、良好な耐熱変形性と長期使用特性とを併せもつ。
上記メタクリル系樹脂は、流動性、透明性、黄色度、耐熱変形性を良好なものとするために、メタクリル酸メチルの単独重合体又はメタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位を含む共重合体が好ましい。中でも、優れた長期使用特性を確保する観点から、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸メチル)に由来する単量体単位とメタクリル酸エステルと共重合可能な芳香環を含有しないモノマー(例えば、後述の他の単量体のうち芳香環を含有しないモノマー)に由来する単量体単位とを含む共重合体が好ましく、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸メチル)に由来する単量体単位とメタクリル酸エステルと共重合可能な芳香環を含有しないモノマー(例えば、後述の他の単量体のうち芳香環を含有しないモノマー)に由来する単量体単位とのみからなる共重合体がより好ましい。
上記共重合体としては、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単量体単位の質量割合がメタクリル系樹脂100質量%に対し、70質量%以上の共重合体であることが好ましく、75質量%以上の共重合体であることがより好ましい。上記共重合体は、メタクリル系樹脂100質量%に対し、85質量%以上100質量%未満のメタクリル酸メチル単量体単位と0質量%を超え15質量%以下の他の単量体に由来する繰り返し単量体単位を含む共重合体がより好ましく、さらに好ましくは93質量%以上100質量%未満のメタクリル酸メチル単量体単位と0.3質量%を超え7質量%以下の他の単量体に由来する繰り返し単量体単位を含有する共重合体、特に好ましくは96質量%以上99.5質量%未満のメタクリル酸メチル単量体単位と0.5質量%を超え4質量%以下の他の単量体に由来する繰り返し単量体単位を含有する共重合体である。メタクリル酸メチル単量体単位を93質量%以上含むことにより、優れた耐熱変形性を得ることができる。
上記他の単量体としては、メタクリル酸エステル(好ましくはメタクリル酸メチル)と共重合可能な単量体であることが好ましい。
上記メタクリル系樹脂に含まれる、上記他の単量体に由来する繰り返し単量体を構成する他の単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアクリレート基を1つ有するアクリル酸エステル単量体(好ましくは、芳香環を含有しない、アクリレート基を1つ有するアクリル酸エステル単量体)等が挙げられる。長期使用特性の観点から芳香環を含有しないモノマーを用いることが好ましい。入手が容易であり、長期使用特性も兼ねる観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが好ましく、アクリル酸メチルがより好ましい。
アクリレート基を1つ有するアクリル酸エステル単量体(例えば、芳香環を含有しない、アクリレート基を1つ有するアクリル酸エステル単量体)を用いる場合、流動性を良好なものにするために、メタクリル系樹脂100質量%に対して、上記アクリレート基を1つ有するアクリル酸エステル単量体に由来する繰り返し単位の質量割合は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、1質量%以上がよりさらに好ましい。耐熱変形性を良好なものにするために、メタクリル系樹脂100質量%に対し、8質量%以下の上記アクリレート基を1つ有するアクリル酸エステル単量体を由来の繰り返し単位を含むことが好ましく、5質量%以下がより好ましく、4質量%以下がさらに好ましい。
中でも、アクリル酸メチル単量体を用いる場合は、一層優れた耐熱変形性が得られる観点から、メタクリル系樹脂100質量%に対してアクリル酸メチルに由来する繰り返し単量体単位を0.5~8質量%(より好ましくは0.5~4質量%)含むことが好ましく、アクリル酸エチル単量体を用いる場合は、メタクリル系樹脂100質量%に対してアクリル酸エチルに由来する繰り返し単量体単位を0.5~5質量%含むことが好ましい。
その他にも、上記他の単量体としては、(メタ)アクリレート基を2つ以上有する、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;といったアクリル酸エステル単量体が挙げられる。中でも、長期使用特性の観点から、芳香環を含有しないアクリル酸エステル単量体が好ましい。
(メタ)アクリレート基を2つ有する単量体を使用する場合には、上記メタクリル系樹脂100質量%に対して(メタ)アクリレート基を2つ有する単量体に由来する繰り返し単量体単位が0.4質量%以下であることが、(メタ)アクリレート基を3つ有する単量体を使用する場合には0.2質量%以下であることが、(メタ)アクリレート基を4つ以上有する単量体を使用する場合には0.1質量%以下であることが、射出成形時の流動性の確保や、透明性維持の観点から好ましい。
また、アクリル酸エステル単量体以外の上記他の単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等のα,β-不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、桂皮酸等の不飽和基含有二価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル;スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、イソプロペニルベンセン(α-メチルスチレン)等のスチレン系単量体;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;マレイミドや、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド等;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等も挙げられる。中でも、耐熱変形性の観点からは、N-置換マレイミド、メタクリル酸が好ましく、昼夜間安定性と光源色再現性の観点から芳香環を含有しないモノマー、具体的にはメタクリル酸を用いることが好ましい。
メタクリル系樹脂を構成する、上述したメタクリル酸エステル単量体に共重合可能な他のビニル単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂中0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
上述したメタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体に由来する繰り返し単量体単位の質量割合を、上記メタクリル系樹脂100質量%に対して、0.1質量%以上とすることにより、流動性、耐熱性を向上させることができ、また、20質量%以下とすることにより、良好な流動性、靭性を担保することができる。好ましくは0.5~17質量%であり、より好ましくは1~10質量%であり、さらに好ましくは3~8質量%である。
上記他の単量体は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上組み合わせて使用してもよい。
上記メタクリル系樹脂は、N-置換マレイミド構造及び無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の環構造を主鎖に有することが好ましい。N-置換マレイミド構造としては、上述のN-置換マレイミドに由来する単位が挙げられ、無水マレイン酸構造としては、無水マレイン酸に由来する単位が挙げられる。
メタクリル系樹脂100質量%に対するN-置換マレイミド構造及び無水マレイン酸構造の合計質量割合としては、良好な耐熱変形性、良好な耐衝撃性、良好な成形流動性を兼ね備えるために0.3~20質量%であることが好ましく、より好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは3~13質量%である。
メタクリル系樹脂100質量%に対するN-置換マレイミド構造の質量割合としては、良好な耐熱変形性、良好な耐衝撃性、良好な成形流動性を兼ね備えるために0.3~15質量%であることが好ましく、より好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは1~7質量%である。
メタクリル系樹脂100質量%に対する無水マレイン酸構造の質量割合としては、良好な耐熱変形性、良好な耐衝撃性、良好な成形流動性を兼ね備えるために1~20質量%であることが好ましく、より好ましくは5~15質量%、さらに好ましくは8~13質量%である。
上記メタクリル系樹脂は、N-置換マレイミド構造とメタクリル酸メチルに由来する単位とからなる樹脂、無水マレイン酸構造とメタクリル酸メチルに由来する単位とスチレン系単量体に由来する単位とからなる樹脂であることが好ましい。
(メタクリル系樹脂の特性)
-重量平均分子量、分子量分布-
上記メタクリル系樹脂の重量平均分子量及び分子量分布について説明する。
上記メタクリル系樹脂は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量(Mw)が200000以下であることが好ましい。優れた機械的強度及び耐溶剤性を得るためには、上記メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、75000以上が好ましく、80000以上がより好ましく、85000以上がさらに好ましく、90000以上がさらにより好ましい。また、メタクリル系樹脂が良好な流動性を示すためには、重量平均分子量(Mw)は200000以下であることが好ましく、190000以下がより好ましく、180000以下がさらに好ましく、160000以下が特に好ましい。中でも、重量平均分子量が75000~150000であると、成形流動性、拡散度、長期使用特性、及び耐衝撃性のバランスに優れる。これを成形すると、自動車部材用途において用いられるような成形体のサイズでも良好に成形できるためさらに好ましい。
上記メタクリル系樹脂が、上述した重量平均分子量の範囲であることにより、流動性、機械的強度、及び耐溶剤性のバランスを図ることができ、良好な成形加工性が維持される。特に、Mwが75000以上であると、強度に一層優れる。また、150000以下であると、成形流動性に一層優れる。
上記メタクリル系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、1.7~6.0であることが好ましく、1.8~5.0であることがより好ましく、1.9~5.0であることがさらに好ましく、2.0~5.0であることがさらにより好ましい。メタクリル系樹脂の分子量分布が1.6以上6.0以下であることにより成形加工流動と機械強度のバランスに優れる効果が得られる。
メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
具体的には、あらかじめ単分散の重量平均分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル系樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておき、続いて得られた検量線を元に、所定の測定対象のメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めることができ、これらにより分子量分布を算出することができる。
数平均分子量(Mn)とは、単純な分子1本あたりの分子量の平均であり、系の全重量/系中の分子数で定義される。
重量平均分子量(Mw)とは、重量分率による分子量の平均で定義される。
-ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の存在量-
上記メタクリル系樹脂は、成形性と耐衝撃性を良好なものにするために、当該メタクリル系樹脂に存在するピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の存在量が、5~50%であることが好ましく、6~50%であることがより好ましく、7~45%であることがさらに好ましく、8~43%であることがさらにより好ましく、10~30%であることが特に好ましい。
ここで、上記ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の存在量(%)とは、GPC溶出曲線の全エリア面積を100%とした場合の、上記ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分に相当するエリア面積の割合であり、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
なお、上記ピークトップ分子量(Mp)とは、GPC溶出曲線においてピークを示す重量分子量を指す。
GPC溶出曲線においてピークが複数存在する場合は、存在量が最も多い重量分子量が示すピークにおける分子量を、ピークトップ分子量(Mp)とする。
当該メタクリル系樹脂に存在するピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の存在量が6%以上であることより、光拡散性フィラーが成形流動時に金型のガスを巻き込み、炸裂させ成形不良となるのを効果的に防止し良好な成形性が得られる。また、良好な成形流動性も得られる。50%以下であることより、良好な耐衝撃性が得られる。
また、分子量が500以下のメタクリル系樹脂成分は、成形時にシルバーと呼ばれる発泡様の外観不良の発生を防止するため、できる限り少ない方が好ましい。
-示差走査熱量計を用いて測定される中間点ガラス転移温度-
上記メタクリル系樹脂は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素ガス雰囲気下、α-アルミナをリファレンスとし、JIS-K-7121に準拠して、40℃から210℃まで昇温速度10℃/minで昇温して得られたガラス転移曲線から求めた中間点ガラス転移温度(℃)が105℃以上であることが好ましい。
後述する実施例に示す測定方法により得られる中間点ガラス転移温度(℃)は、その値が高い程、樹脂としての耐熱変形性が向上することを示し、成形体に光源が近接した時の変形し始める温度に影響する。従って、中間点ガラス転移温度が高いほど高出力の光源をより近接させることが可能になる。また、近接した高出力LED光源を用いるような用途でも、成形体を所望の形状で安定的に使用することが出来る。上記メタクリル系樹脂は、中間点ガラス転移温度が、109℃以上であることがより好ましく、111℃以上であることがさらに好ましく、113℃以上がよりさらに好ましく、120℃以上が特に好ましい。また、メタクリル系樹脂の強度、流動性との物性バランスを良好なものに140℃以下であることが好ましい。
中でも、N-置換マレイミド構造、及び無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の環構造を主鎖に有するメタクリル系樹脂の中間点ガラス転移温度は、120~140℃であることが好ましい。
(メタクリル系樹脂の製造方法)
上記メタクリル系樹脂は、溶液重合法、塊状重合法やキャスト重合法、懸濁重合法により製造できるが、これらの方法に限定されるものではない。好ましくは、塊状重合、溶液重合、懸濁重合法であり、より好ましくは懸濁重合法である。懸濁重合を選択することで0.5μm~5mmの小さな球状のポリマーが得られ、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を製造する際に、添加剤の分散を良好にすることが出来る。
重合温度は、重合方法に応じて適宜最適の重合温度を選択すればよいが、懸濁重合を行う場合、好ましくは50℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃以上90℃以下である。溶液重合を行う場合は、180℃以下が好ましく、160℃以下がさらに好ましい。
上記メタクリル系樹脂を製造する際には、重合開始剤を用いてもよい。
上記重合開始剤としては、以下に限定されるものではないが、ラジカル重合を行う場合は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル等のアゾ系の一般的なラジカル重合開始剤が挙げられる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのラジカル重合開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。
これらのラジカル重合開始剤及び/又はレドックス系開始剤は、メタクリル系樹脂の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して、0~1質量部の範囲で用いるのが一般的であり、重合を行う温度と重合開始剤の半減期を考慮して適宜選択することができる。
上記メタクリル系樹脂の重合方法として、塊状重合法、キャスト重合法、又は懸濁重合法を選択する場合には、メタクリル系樹脂の着色を防止する観点から、過酸化系重合開始剤を用いて重合することが好ましい。
上記過酸化系重合開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられ、ラウロイルパーオキサイドがより好ましい。
上記メタクリル系樹脂を、90℃以上の高温下で溶液重合法により重合する場合には、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤等を重合開始剤として用いることが好ましい。
上記過酸化物、アゾビス開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等が挙げられる。
上記メタクリル系樹脂を製造する際には、本発明の目的を損なわない範囲で、メタクリル系樹脂の分子量の制御を行ってもよい。メタクリル系樹脂の分子量を制御する方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤、ジチオカルバメート類、トリフェニルメチルアゾベンゼン、テトラフェニルエタン誘導体等のイニファータ等を用いることによって分子量の制御を行う方法が挙げられる。また、これらの添加量を調整することにより、分子量を調整することも可能である。
上記連鎖移動剤としては、取扱性や安定性の観点から、アルキルメルカプタン類が好ましく、上記アルキルメルカプタン類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
上記連鎖移動剤及びイニファータは、目的とするメタクリル系樹脂の分子量に応じて適宜添加することができるが、一般的には、メタクリル系樹脂の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して0.001質量部~5質量部の範囲で用いられる。
また、その他の分子量制御方法としては、重合方法を変える方法、重合開始剤、上述した連鎖移動剤やイニファータ等の量を調整する方法、重合温度等の各種重合条件を変更する方法等が挙げられる。
これらの分子量制御方法は、一種の方法のみを用いてもよく、二種以上の方法を併用してもよい。
<波長調整剤>
波長調整剤は本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の構成成分の一つである。波長調整剤は、白色LED光中に高い強度で含まれる波長570nmの光に対し、吸収を持つことが必要である。波長570nmの光を効果的に制御するために、波長380nmから780nmにおいて波長500~670nmに極大吸収波長を有する波長調整剤を用いることが好ましく、波長540~630nmに極大吸収波長を有する波長調整剤を用いることがより好ましい。波長調整剤を含有することで光拡散性フィラーを含有するメタクリル系樹脂組成物のように成形体としたときに入光した光が多重に屈折し、光源色の色味が再現されづらいメタクリル系樹脂組成物であっても良好に光源色を再現させることが出来るようになる。
波長調整剤における極大吸収波長は紫外可視分光光度計(例えば、島津製作所製UV―2600)の透過測定によって測定され、内寸10mm角のガラスセル内に波長調整剤を溶媒によって分散させたものを測定用サンプルに、溶媒のみを内寸10mm角のガラスセル内に満たしたものを参照用サンプルとし、得られた分光透過率曲線における透過率が最も低い波長を波長調整剤の極大吸収波長とした。分光透過率曲線は樹脂中に波長調整剤を分散させた成形体を測定用サンプルに、測定用サンプルと同じ厚みの樹脂のみからなる成形体を参照用サンプルとしても良い。このとき、成形条件は同一の条件である。
上記波長調整剤の添加量は、上記メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.000003質量部~0.0003質量部である。メタクリル系樹脂組成物を成形体としたときに良好な耐候性とし、また、光源色の再現性を維持する観点から、0.0003質量部以下であり、より好ましくは0.0002質量部以下、さらに好ましくは0.00009質量部以下である。光源色再現性と昼夜間安定性の観点から、0.000003質量部以上であり、より好ましくは0.000004質量部以上、さらに好ましくは0.000005質量部以上である。
主鎖に環構造(好ましくは、N-置換マレイミド構造、及び無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の環構造)を有するメタクリル系樹脂を用いたメタクリル系樹脂組成物においては、メタクリル系樹脂組成物を成形体としたときに良好な耐候性とし、また、光源色の再現性を維持する観点から、波長380nmから780nmにおいて波長500~670nmに極大吸収波長を有する波長調整剤を含むことが好ましく、上記メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.0003質量部以下であること好ましく、より好ましくは0.00025質量部以下、さらに好ましくは0.0002質量部以下、特に好ましくは0.00008質量部以下である。光源色再現性と昼夜間安定性の観点から、0.00001質量部以上であり、より好ましくは0.00002質量部以上、さらに好ましくは0.00003質量部以上である。
波長380nmから780nmにおいて波長500~670nmに極大吸収波長を有する波長調整剤とは、以下に限定されるものではないが、例えば、「Solvent Violet13」(商品名:「マクロレックスバイオレットB」(バイエル社製)、商品名:「ダイアレジンブルーG」(三菱化学製)、商品名:「スミプラストバイオレットB」(住友化学工業製)など)、「Solvent Violet31」(商品名:「ダイアレジンバイオレットD」(三菱化学製))、「Solvent Violet33」(商品名:「ダイアレジンブルーJ」(三菱化学製))、「Solvent Blue94」(商品名:「プラストブルー8520」(有本化学製))、「Solvent Violet36」(商品名:「マクロレックスバイオレット3R」(バイエル社製))、「Solvent Blue97」(商品名:「マクロレックスバイオレットRR」(バイエル社製))、「Solvent Blue45」(商品名:「テトラゾールブルーRLS」(サンド社製))、商品名:マクロレックス ブルーRR(ランクセス社製)、スミプラストブルーOR(住化ケムッテクス製)、等を使用することができる。車輛部材などで求められる良好な耐候性を確保するために好ましくは、アンスラキノン系波長調整剤(例えば、商品名:マクロレックス ブルーRR(ランクセス社製)、プラストブルー8520(有本化学製)、スミプラストブルーOR(住化ケムッテクス製)、「Solvent Violet36」(商品名:「マクロレックスバイオレット3R」))である。
これらは1種類で用いられても良く、2種類以上の混合物として用いられても良い。2種類以上の混合物として用いられる場合は、混合物として極大吸収波長を測定すればよく、また、最も含有量の多い化学種を混合物の化学種名として適用して良い。
<光拡散性フィラー>
光拡散性フィラーは本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の構成成分の一つである。平均粒径0.2~10μmの光拡散性フィラーを、上記メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.3~6質量部含有することで、内部に光源を持つ製品、特に車輌用部材において効果的に光源イメージを低減しつつも視認性が明瞭な明るさを保つことができる。
光拡散性フィラーの平均粒径は種粒子の体積平均粒子径の測定は、レーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製「LS13320」)によって行うことができる。測定には、光拡散性フィラー0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中に超音波洗浄器を用いて分散させ、分散液としたものを使用し、LS13320の濃度計の示度を適正範囲に合わせることで測定を行い算出した値を用いた。平均粒径は、体積基準の累積50%粒子径とした。<測定パラメータ>、<測定条件>、<測定手順>は下記のように設定した。
<測定パラメータ>
液体(ノニオン性界面活性剤水溶液)の屈折率B.I.の実部=1.333(水の屈折率)
固体(測定対象の種粒子)の屈折率の実部=種粒子の屈折率
固体の屈折率の虚部=0
固体の形状因子=1
<測定条件>
測定時間:60秒
測定回数:1
ポンプ速度:50~60%
PIDS相対濃度:40~55%程度
超音波出力:8
<測定手順>
オフセット測定、光軸調整、バックグラウンド測定を行った後、上記した分散液を、スポイトを用いて、上記のレーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置のユニバーサルリキッドサンプルモジュール内へ注入する。上記のユニバーサルリキッドサンプルモジュール内の濃度が上記のPIDS相対濃度に達し、上記のレーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置のソフトウェアが「OK」と表示したら、測定を開始する。なお、測定は、ユニバーサルリキッドサンプルモジュール中でポンプ循環を行うことによって上記種粒子を分散させた状態、かつ、超音波ユニット(ULM ULTRASONIC MODULE)を起動させた状態で行う。
上記光拡散性フィラーとしては、二酸化チタン、三酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の無機粒子や、架橋シリコーン樹脂、架橋メタクリル系樹脂、架橋スチレン-メタクリル酸メチル系樹脂、架橋スチレン樹脂等の有機粒子が好ましい。中でも、透過光量を多くし、成形体に入光した時の明るさ、視認性を向上させるために有機粒子がより好ましく、光拡散性と成形体に入光した時の明るさ、視認性のバランスと長期使用特性、光源色再現性をさらに良好なものにするために架橋シリコーン樹脂、架橋スチレン-メタクリル酸メチル系樹脂がさらに好ましく、光拡散性をさらに良好なものにするために架橋シリコーン樹脂を用いることがさらにより好ましい。
なお、上記メタクリル系樹脂とは架橋度(%)が0.5以下の樹脂をいい、上記光拡散性フィラーにおける有機粒子とは架橋度が2以上の樹脂をいう。なお、架橋度は、ガラス容器にN,N-ジメチルホルムアミド29gと試料1gを添加し、24時間振とうして膨潤液とした後、遠心分離により上澄み液を除いたゲル分を130℃真空乾燥機で蒸発乾固し、残存物の重量を測定し、ASTM D6725と同様の方法により測定される値をいう。
光拡散性フィラーの平均粒径は、1.2μm以上9μm以下がより好ましく、1.7μm以上8μm以下がさらに好ましく、2μm以上6μm以下がよりさらに好ましい。
上記平均粒径は、成形体から切り出したメタクリル系樹脂組成物試料2gをアセトン100mlに溶解させ、遠心分離によって不溶物を沈殿させ、乾燥させたものを0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液3mL中に分散させ、分散液としたものを気泡が生じない程度に緩く振とうしながらベックマンコールター製LS13320に滴下して、濃度計の示度を適正範囲に合わせることで測定を行い体積基準の累積50%粒子径を算出することで測定することができる。
上記メタクリル系樹脂100質量部に対して、光拡散性フィラーの含有量は、良好な光拡散性を達成しつつ、光源色の再現性をより良好なものとするために0.3質量部以上5質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上2質量部以下がさらに好ましい。
光拡散性フィラーとして有機微粒子を用いる時、ベースとなる樹脂よりも屈折率が大きい有機微粒子を用いる場合は、光拡散性を良好なものとしつつ、耐候性や光源色再現性を良好にするためにメタクリル系樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下が好ましく、1質量部以上3質量部以下がより好ましく、1.5質量部以上3質量部以下がさらに好ましい。
光拡散性フィラーとして有機微粒子を用いる時、ベースとなる樹脂よりも屈折率が小さい有機微粒子を用いる場合は、良好な光拡散性を達成しつつ、良好な光線透過率とするために、メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3質量部以下がより好ましく、1質量部以上3質量部以下がさらに好ましい。
上記光拡散性フィラーは、上記メタクリル系樹脂よりも低い屈折率を有することが好ましい。
光拡散性フィラーとして有機微粒子を用いる時、ベースとなる樹脂よりも屈折率が大きい有機微粒子を用いる場合は、良好な耐候性を有するメタクリル系樹脂組成物とするためにメタクリル系樹脂と光拡散性フィラーとの屈折率差が0.12以下であることが好ましく、0.06以下であることがより好ましく、0.05以下であることがさら好ましく、0.04以下であることが特に好ましい。また、光拡散性を良好なものにするために屈折率差は0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.02以上がさらに好ましい。ベースとなる樹脂よりも屈折率が小さい有機微粒子を用いる場合は、良好な光拡散性を達成しつつ、耐候性と全光線透過率を良好にし、光源の光を入光した時、明るく視認性の良い成形体とするために、メタクリル系樹脂と光拡散性フィラーとの屈折率差が0.12以下であることが好ましく、0.08以下であることがより好ましい。また、光拡散性を良好なものにするために屈折率差は0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.02以上がさらに好ましい。
光拡散性フィラーとして無機微粒子を用いる際には、全光線透過率を良好にし、光源の光を入光した時、明るく視認性の良い成形体とするために、メタクリル系樹脂と光拡散性フィラーとの屈折率差は1.5以下が好ましく、1.1以下がより好ましい。
本発明においては、ベース樹脂となるメタクリル系樹脂に対し屈折率が小さい有機系の光拡散性フィラーを用いることが光源の色調再現性、昼夜間の視認安定性向上の観点から好ましい。上記屈折率差は、限界分子量を超えるポリメタクリル酸メチルの持つ屈折率を1.492として求められる値であり、上記光拡散性フィラーとはポリメタクリル酸メチルに対して、屈折率差が0.003以上であることが好ましい。光拡散性フィラーの屈折率は種々の屈折率を有する分散溶媒に微粒子を分散させ、散乱光強度を測定し、散乱光強度が0になる時を求めることで求めることが出来る。
(紫外線吸収剤)
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物には、メタクリル系樹脂100質量部に対し、紫外線吸収剤を0.005~0.3質量部含有していることが好ましい。紫外線吸収剤を含有することで耐候性及び長期使用特性が良好になり、成形したときに長期使用に好適な成形体が得られるだけでなく、光源に含まれる紫外領域の波長の光に曝された時の変色や、変色に起因するLED光の吸収による透過光量の減少を効果的に防止することができる。本実施形態の光拡散性フィラーを含むメタクリル系樹脂組成物は、光の拡散により、成形体を透過する光の光路長は成形体の厚みよりも大きく、変色がより強調されてしまうため、変色を防止することは非常に重要である。上記紫外線吸収剤は紫外線領域の光を直接吸収するものであっても、紫外線による樹脂の劣化の原因となる反応を防ぐものであっても良く、結果として紫外線の持つエネルギーが何らかの形で吸収されれば良い。
紫外線吸収剤の性能を十分に発揮するために、メタクリル系樹脂100質量部に対し、紫外線吸収剤は0.005質量部以上含有されていることが好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、0.015質量部以上がさらに好ましく、0.02質量部以上がさらにより好ましい。また、成形時の紫外線吸収剤の析出による、金型の汚染や金属ロールへの樹脂の張り付きを防止するために、メタクリル系樹脂100質量部に対し、紫外線吸収剤は0.3質量部以下含有されていることが好ましく、より好ましくは0.19質量部以下、更に好ましくは0.15質量部以下、さらにより好ましくは0.1質量部以下、よりさらに好ましくは0.07質量部以下、特に好ましくは0.04質量部以下である。
上記紫外線吸収剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられ、好ましくはベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物である。
上記紫外線吸収剤は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
光拡散性フィラーを含む本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、光の拡散により、成形体を透過する光の光路長は成形体の厚みよりも大きく、色調が強調されるため、メタクリル系樹脂組成物の可視光波長領域での色味に影響しないよう、紫外線吸収剤は波長300nmから830nmの範囲において波長300nm以上350nm以下に極大吸収波長を持つもの、または、極大吸収波長を波長380~780nmの可視光領域に持たないものが好ましく、波長300nmから830nmの範囲において波長300nm以上350nm以下に極大吸収波長を持ち、かつ、極大吸収波長を波長380~780nmの可視光領域に持たないものがより好ましい。波長350nm以下に極大吸収波長を持つもの、または、極大吸収波長を可視光領域に持たないものであれば、例えば自動車部材として用いられるときに、光源の白色LEDをより白色に近いまま拡散させることが出来、光源色再現性や夜間の視認性に優れる。
上記紫外線吸収剤の20℃における蒸気圧(P)は、成形加工性の観点から、1.0×10-4Pa以下であることが好ましく、より好ましくは1.0×10-6Pa以下であり、さらに好ましくは1.0×10-8Pa以下である。
成形加工性に優れるとは、例えば射出成形時に、金型表面への紫外線吸収剤の付着が少ないことや、フィルム成形時に、紫外線吸収剤のロールへの付着が少ないこと等を示す。
金型表面へ紫外線吸収剤が付着すると、例えば成形体表面へ付着し外観、光学特性を悪化させるおそれがあるため、成形体を光拡散性材料として使用する場合は好ましくない。
上記紫外線吸収剤の融点(Tm)は、80℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。融点が80℃以上で紫外線吸収剤が成形時に揮発することを抑制でき、性能を十分に発揮させることができる。また、揮発した紫外線吸収剤における金型への汚染を効果的に予防できる。
上記紫外線吸収剤は、23℃から260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の重量減少率が50%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下、よりさらに好ましくは5%以下である。
<その他の添加剤>
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記メタクリル系樹脂、上記波長調整剤、上記光拡散性フィラー及び任意成分である上記紫外線吸収剤以外のその他の添加剤を含有させてもよい。上記その他の添加剤としては、熱安定剤、及び強度改質剤等を添加することが好ましい。上記その他の添加剤としては、ゴム成分を使用しないことが好ましい。なお、本明細書において、上記その他の添加剤を、単に「添加剤」と称する場合がある。
(熱安定剤)
熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工安定剤等の酸化防止剤等が挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリン)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミン)フェノール等が挙げられ、ペンタエリスリトールテラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい熱安定剤として挙げられる。
熱安定剤を用いる際は、その効果を十分に発揮するために、メタクリル系樹脂100質量部に対し、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上添加することがより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また、モールドデポジット等の金型汚染を防止するために熱安定剤の添加量は0.5質量%以下が好ましく、0.2質量部以下がより好ましく、0.15質量%以下がさらに好ましく、0.12質量部以下であることが特に好ましい。
(その他の樹脂)
上記その他の添加剤として使用に供されるその他の樹脂としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されるものではなく、公知の熱可塑性樹脂が好適に使用される。
上記熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体)、AS系樹脂(アクリロニトリル-スチレン系共重合体)、BAAS系樹脂(ブタジエン-アクリロニトリル-アクリロニトリルゴム-スチレン系共重合体、AAS系樹脂(アクリロニトリル-アクリロニトリルゴム-スチレン系共重合体)、熱可塑性ポリウレタン樹脂、生分解性樹脂、ポリカーボネート-ABS樹脂のアロイ、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
特に、AS樹脂、BAAS樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、流動性を向上させるために好ましく、ABS樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂は耐衝撃性を向上させるために好ましく、また、ポリエステル樹脂は耐薬品性を向上させるために好ましい。
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等は難燃性を向上させる効果が期待できる。
これらの樹脂は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
その他の樹脂を用いる場合には良好な全光線透過率と耐候性を保つために、メタクリル系樹脂組成物100質量%に対して0質量%超30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
上記その他の添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系等の可塑剤;高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ、又はトリグリセリド系等の滑剤;金属石鹸;脂肪酸アミド;ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等の帯電防止剤、難燃助剤、導電性付与剤、応力緩和剤、結晶化促進剤、加水分解抑制剤、潤滑剤、強度改質剤、摺動性改良剤、相溶化剤、核剤、強化剤、補強剤、流動調整剤、増感材、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、充填剤、消泡剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌・防黴剤、防汚剤、導電性高分子等が挙げられる。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物中における、メタクリル系樹脂組成物100質量部に対する上記その他の添加剤の含有量は、滑剤を用いる場合は、離型性を良好にするために0.03質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましい。ブリードアウト等の成形不良を防止するために、0.5質量部以下が好ましく、0.3質量部以下がより好ましく、0.2質量部以下さらに好ましく、0.12質量部以下が特に好ましい。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、黄色系染料は含まないことが好ましい。黄色系染料とは波長380nmから780nmの可視光領域において波長380~495nmに極大吸収波長を持つ染料のことを指す。黄色系染料を含まないことで、白色LED光中に高い強度で含まれる波長470nmの光を良好に拡散させることが出来る。逆に、黄色系波長調整剤を含むと波長470nmの光を吸収してしまい、光源色の再現性を低下させたり、材料が蓄熱し、樹脂温度が上がってしまうことで十分にLED光源に近接して用いることや、遠方でも良好な視認性とするためのLED光源の高出力化が難しくなる上、メタクリル系樹脂組成物が黄色くなるため、夜間での白色LEDの視認性が悪化してしまう。
強度改質剤を用いる場合には効果的に強度を改質するために、上記メタクリル系樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。良好な耐熱変形性と流動性を確保するために30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
自動車のランプハウジング内のように高温多湿になる空間内において用いられる場合にも添加剤のブリードアウトを抑制し光の透過、拡散特性を安定させることが出来るようにするために、ゴム成分を除く添加剤の合計質量割合が、上記メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.3質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以下であることがより好ましく0.15質量部以下であることがさらに好ましい。
上記その他の添加剤を上述の数値範囲で含有することにより、それぞれの材料の機能を発揮することができる。
<メタクリル系樹脂組成物の製造方法>
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、例えば、上記メタクリル系樹脂と上記波長調整剤と上記光拡散性フィラー、及び必要に応じて上記紫外線吸収剤を混合することにより製造することができる。
混合方法は特に限定されるものではないが、溶融混錬法、溶媒混錬法、ドライブレンド法等が用いられ、生産性の観点から、溶融混錬法、ドライブレンド法が好ましい。
混合に用いる機器は、通常の混錬機、混合機であればよく、具体的には一軸押出機、二軸押出機、変シェルミキサー、バンバリーミキサー、タンブラー等が挙げられる。
溶融混錬の方法として、二軸押出機を用いることが光拡散剤を凝集させずに均一分散させることが出来、得られる樹脂成形体の光拡散性、光拡散性の均一さを良好にさせることが出来るので、好ましい。
製造温度は溶融混錬の場合、200℃以上320℃以下であることが好ましい。生産性の観点からより好ましくは210℃以上、さらに好ましくは220℃以上であり、樹脂の分解によるメタクリル系樹脂組成物の黄変防止の観点から、300℃以下がより好ましく、290℃以下がさらに好ましい。
<メタクリル系樹脂組成物の特性>
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、中間点ガラス転移温度(Tg)が105℃以上である。
上記中間点ガラス転移温度は、その値が高い程、樹脂組成物としての耐熱変形性が向上することを示し、成形体に光源が近接した時の変形し始める温度に影響する。従って、中間点ガラス転移温度が高いほど高出力の光源をより近接させることが可能になる。また、近接した高出力LED光源を用いるような用途でも、成形体を所望の形状で安定的に使用することが出来る。
上記中間点ガラス転移温度は、107℃以上であることが好ましく、109℃以上であることがより好ましく、111℃以上であることがさらに好ましく、113℃以上がよりさらに好ましい。特に優れた耐熱変形性を有する主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂(好ましくは、N-置換マレイミド構造、及び無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の環構造を主鎖に有するメタクリル系樹脂)を用いたメタクリル系樹脂組成物においては、120℃以上が好ましく、124℃以上がより好ましい。また、メタクリル系樹脂組成物における昼夜間安定性と光源色再現性を良好に保つことと、強度、流動性との物性バランスを良好なものにするために140℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。メタクリル系樹脂組成物は、中間点ガラス転移温度がこの範囲にあることで、良好な耐熱変形性を示しつつ、メタクリル系樹脂組成物の強度、成形流動性といった他の物性とのバランスを取ることができる。
なお、上記中間点ガラス転移温度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記中間点ガラス転移温度は、上述のメタクリル系樹脂を好適な実施形態のものを用いること、光拡散性フィラーの添加量を好適な実施形態の範囲とすること、添加剤をその他の成分の添加量を好適な実施形態の範囲とすることで調整できる。
-残存モノマー量-
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物中に含まれる全残存モノマーの合計質量は9000質量ppm以下であることが好ましく、8000質量ppm以下であることがより好ましい。8000質量ppm以下とすることで溶融混錬にてメタクリル系樹脂組成物を製造する時のベントアップなどの不具合を効果的に予防することが出来る。また、光拡散性フィラーが含まれていることで成形時に樹脂のフローフロントが乱れ、成形ガスによる成形不良が発生しやすくなる本実施形態のような樹脂材料においても、成形体流動長Lが大きな成形体を良好に成形することが出来る。この特性は、自動車部材などの成形体の流動長Lが大きな成形体を射出成形する際に特に有用である。
メタクリル系樹脂組成物中に含まれる全残存モノマーは後述する(メタクリル系樹脂の構造単位の解析)より解析された単量体成分種、その他用いた樹脂の単量体成分種について、後述のようにガスクロマトグラム(GC)を用いて分析することで測定することが出来る。
メタクリル系樹脂組成物中に含まれる全残存モノマーの量は6000質量ppm以下がより好ましく、5000質量ppm以下がさらに好ましく、4000質量ppm以下がさらにより好ましく、3000質量ppm以下が特に好ましい。メタクリル系樹脂組成物中に含まれる全残存モノマーの量は、メタクリル系樹脂の製造においては、例えば、懸濁重合時に発熱ピークを観測するまで重合を継続すること、発熱ピーク観測後に88℃以上に昇温し30分以上保持することで低減することが出来る。溶液重合においては、1分間半減期温度-20℃以上の温度を重合温度とすることで低減を図ることが出来る。メタクリル系樹脂組成物製造時には、溶融混錬を用いること、溶融混錬時に減圧ベントで揮発分を除去することで残存モノマーを低減することが出来る。
―光拡散率―
メタクリル系樹脂組成物をシリンダー温度240℃、金型温度60℃、金型磨き番手8000番の金型用いて射出成形された厚さ2mmの平板における光拡散率(LD)は、光源イメージを効果的に低減させつつ、拡散された光によって観察角度を変更してもなお明るく視認性が良いものとするために、10%以上であることが好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましく、50%以上がさらにより好ましい。また、光拡散性カバーとした時全体が暗く見えないように90%以下であることが好ましい。
上記光拡散率は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
―分光透過率と光拡散率の関係―
メタクリル系樹脂組成物をシリンダー温度240℃、金型温度60℃、金型磨き番手8000番の金型用いて射出成形された厚さ2mmの平板の波長570nmにおける分光透過率(B)に対する波長470nmにおける分光透過率(A)の割合((A)/(B))は0.96以上1.1以下を満たすことが好ましい。上記分光透過率は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
上記光拡散率LDが40%以下の時、上記(A)/(B)が0.96以上1.04以下を満たすことが好ましい。(A)/(B)が0.96以上1.04以下であることで、白色LED光源を用いた際の光源色を良好に再現することが出来る。これは白色LED光源が波長470nmと570nmに特徴的な分光分布を持つためである。光源色再現性をより良好なものにするために(A)/(B)は0.97以上がより好ましく、0.98以上がさらに好ましく、0.99以上がさらにより好ましい。また、(A)/(B)は、1.03以下がより好ましく、1.02以下がさらに好ましく、1.01以下がさらにより好ましい。
また、光拡散率が40%を超える時、光がより拡散され、成形体を透過するにはより長い光路長が必要となり色味がより強調されるため、上記(A)/(B)が0.99以上1.01以下であることが好ましい。光源色再現性をより良好なものにするために(A)/(B)は0.992以上がより好ましく、0.994以上がさらに好ましく、0.996以上がさらにより好ましい。また、(A)/(B)は、1.008以下がより好ましく、1.006以下がさらに好ましく、1.004以下がさらにより好ましい。
(A)/(B)は光拡散性フィラーの種類や添加量、波長調整剤の種類や添加量を変更することで調整することが出来る。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物100質量%中の、上記メタクリル系樹脂の質量割合は、80~99.7質量%であることが好ましく、より好ましくは90~99.5質量%、さらに好ましくは94~99.4質量%、さらにより好ましくは96.5~99.3質量%である。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物100質量%中の、上記光拡散性フィラーの質量割合は、0.3~5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物100質量%中の、上記波長調整剤の質量割合は、0.000003~0.0003質量%であることが好ましく、メタクリル系樹脂組成物を成形体としたときに良好な耐候性とし、また、光源色の再現性を維持する観点から、0.0003質量%以下がより好ましく、さらに好ましくは0.0002質量%以下、特に好ましくは0.00009質量%以下である。光源色再現性と昼夜間安定性の観点から、0.000003質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.000004質量%以上、さらに好ましくは0.000005質量%以上である。中でも、N-置換マレイミド構造、及び無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の環構造を主鎖に有するメタクリル系樹脂を含むメタクリル系樹脂組成物は、光源色再現性を良好にする観点から、波長380nmから780nmにおいて波長500~670nmに極大吸収波長を有する波長調整剤を含むことが好ましい。N-置換マレイミド構造、及び無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の環構造を主鎖に有するメタクリル系樹脂を含むメタクリル系樹脂組成物100質量%中の、上記波長調整剤の質量割合は、0.00001~0.0003質量%であることが好ましく、メタクリル系樹脂組成物を成形体としたときに良好な耐候性とし、また、光源色の再現性を維持する観点から、0.00025質量%以下がより好ましく、さらに好ましくは0.0002質量%以下、特に好ましくは0.00008質量%以下である。光源色再現性と昼夜間安定性の観点から、0.00001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.00002質量%以上、さらに好ましくは0.00003質量%以上である。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物100質量%中の、上記紫外線吸収剤の質量割合は、0.01~0.3質量%であることが好ましく、より好ましくは0.015~0.19質量%、さらに好ましくは0.02~0.05質量部である。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物100質量%中の、上記メタクリル系樹脂、上記光拡散性フィラー及び上記波長調整剤の合計質量の割合は、85質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらにより好ましくは99質量%以上であり、100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは99.9質量%以下、さらに好ましくは99.8質量%以下である。
[成形体]
本実施形態の成形体は、上述の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を含むことが好ましい。例えば、上述の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形体であってよい。中でも、本実施形態の成形体は、射出成形して得られる射出成形体であることが好ましい。
成形体を得る方法としては例えば、公知の射出成形法、押出成形法、加圧成形法等の公知の成形方法が挙げられ、得られた成形体を圧空成形法や真空成形法等の公知の成形方法を用いて2次成形しても良い。
成形温度は、射出成形の場合、200℃以上320℃以下であることが好ましい。生産性の観点から、より好ましくは210℃以上、さらに好ましくは220℃以上であり、樹脂の分解によるメタクリル系樹脂組成物の黄変防止の観点から、300℃以下がより好ましく、290℃以下がさらに好ましい。
本実施形態の成形体は、薄手長物形状の成形品であることが好ましい。
ここで、「薄手長物形状」とは、成形品のチャンネル構造を有する部分以外の最も薄い薄肉部の厚さが3.5mmよりも薄く、成形品の流動方向の長さ、すなわち成形原料の樹脂組成物の流動長Lが、該樹脂組成物の流動方向に垂直な方向の長さ(V)よりも長いものを言う。
上記薄手長物形状の成形体において、流動長L(mm)と流動方向に垂直な方向の長さV(mm)との関係は、L/V>1.2であることがより好ましく、L/V>1.3であることがさらに好ましい。
(厚みt)
厚みtとは、上述したように、成形体のチャンネル構造を有する部分以外の最も薄い薄肉部の厚さ、すなわち、本実施形態の成形体を、その流動方向に垂直の方向で切断した際に現れる、流動断面の最薄肉厚部を言う。
成形体においては、流動支援のために、部分的に葉脈状のチャンネル構造を設けるようにする場合や、他部材との溶着、篏合、ねじ止め、タッピングのためにチャンネル構造を設ける場合があるが、本実施形態の成形体の厚みtとは、当該チャンネル構造を有する部分の厚さではなく、当該チャンネル構造を有する部分以外の最も薄い薄肉部の厚さを言うものとする。成形体の強度を良好なものにし、内部光源の光源イメージを効果的に低減させるために厚みtは1mm以上が好ましく、1.3mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましい。また、成形体に入光した時に明るく視認性の良い成形体とするために5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、3.5mm以下がさらに好ましく、3.5mm未満が特に好ましい。
(流動長L)
本実施形態における成形体の流動長Lとは、成形体におけるゲートからゲートに対し最遠の場所までの長さをいう。2つのゲートを用いる場合には、ゲート1とゲート2間の中間点を中点1とし、中点1に対し最遠の場所Uから場所Uに対し最も近いゲートまでの長さ、もしくはゲート1またはゲート2から中点1までの長さの中で、最も長い長さを、流動長Lとする。3つのゲートを用いる場合には、ゲート1とゲート2間の中間点を中点1、ゲート1とゲート3間の中間点を中点2、ゲート2とゲート3間の中間点を中点3とし、中点1に対し最遠の場所Wから場所Wに対し最も近いゲートまでの長さ、中点2に対し最遠の場所Xから場所Xに対し最も近いゲートまでの長さ、中点3に対し最遠の場所Yから場所Yに対し最も近いゲートまでの長さ、ゲート1またはゲート2から中点1までの長さ、ゲート1または3から中点2までの長さ、ゲート2またはゲート3から中点3までの長さの中で、最も長い長さを、流動長Lとする。ゲートを4つ以上用いる場合にも同様に計測する。
上記ゲート間の中間点や流動長Lは、成形体の表面に沿ってアールゲージ、ピンゲージ、デジタルノギス、マイクロメーターなどで計測することができる。なお、成形体が球状等で中点が複数存在する場合は、そのいずれか1つを中点として採用し、最遠の場所や流動長Lを求めて良い。
成形体に入光した時に明るく視認性の良い成形体とするために内部光源が大きいものや、多くの内部光源を配置する目的、樹脂と樹脂の流れが合流して光拡散性フィラーが巻き込んだガスの炸裂を防止するため、樹脂と樹脂の流れが合流して発生するウェルドラインの発生個所を低減し均一に光が拡散される成形体とするために、Lは100mm以上が好ましく、150mm以上がより好ましく、180mm以上がさらに好ましく、210mm以上がさらにより好ましく、240mm以上がよりさらに好ましく、270mm以上が特に好ましい。
なお、流動長Lを測定するためには金型内に最終充填部を有する金型を用いる必要がある。金型内に最終充填部を有する金型を用いることで、充填する樹脂組成物からのガスの発生や、光拡散性フィラーに巻き込まれたガスが放出されることによる、樹脂組成物の流動方向に対して逆向きに働く樹脂組成物の流動を阻害する力を加味した上で、上記好適な範囲のLを有する成形体が得られるかを評価することができる。
(成形体の流動長Lと厚みtの比L/t)
適切な内部光源を配置し、成形体に入光した時に明るく視認性の良い成形体とするために流動長Lと厚みtの比L/tは、65以上が好ましく、70以上がより好ましく、75以上がさらに好ましく、90以上がさらにより好ましく、110以上がよりさらに好ましい。
中でも、本実施形態の成形体は、厚みtが1~5mmであり、流動長Lが100mm以上であり、流動長L/厚みtが65以上であることが好ましい。また、本実施形態の成形体は、厚みtが1.5~4mmであり、流動長Lが150mm以上であり、L/tが75以上であることがより好ましい。
(成形体の光拡散率)
成形体の光拡散率は光源イメージを効果的に低減させつつ、拡散された光によって観察角度を変更してもなお明るく視認性が良いものとするために10%以上であることが好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましく、50%以上がさらにより好ましい。
成形体における光拡散率は、製品としての使用を考慮し、光源からの光を拡散させたときに成形体が明るく見える範囲の中央部において測定するものする。詳細には後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
(成形体の分光透過率と光拡散率)
本実施形態の成形体はメタクリル系樹脂と平均粒径0.2~10μmの光拡散性フィラーと波長調整剤を含有するメタクリル系樹脂組成物からなり、波長570nmにおける分光透過率(B)に対する波長470nmにおける分光透過率(A)の割合A/Bと光拡散率(LD)が条件(1)または(2)を満たすことが好ましい。条件(1)または(2)を満たすことで、光拡散性カバーとして使用した時に光源色の再現性が良好なものになる。
条件(1):LD≦40%でかつ、0.96≦A/B≦1.04
条件(2):LD>40%でかつ、0.99≦A/B≦1.01
光拡散率が40%以下の成形体においては、波長570nmにおける分光透過率(B)に対する波長470nmにおける分光透過率(A)の割合A/Bが0.96以上1.04以下を満たすことが好ましい。(A)/(B)が0.96以上1.04以下であることで、白色LED光源を用いた際の光源色を良好に再現することが出来る。これは白色LED光源が波長470nmと570nmに特徴的な分光分布を持つためである。光源色再現性をより良好なものにするために(A)/(B)は0.97以上がより好ましく、0.98以上がさらに好ましく、0.99以上がさらにより好ましい。また、(A)/(B)は、1.03以下がより好ましく、1.02以下がさらに好ましく、1.01以下がさらにより好ましい。光拡散率が40%を超える成形体においては、光がより拡散され成形体を透過するにはより長い光路長が必要となり色味がより強調されるため、0.99を超え1.01以下であることが好ましい。光源色再現性をより良好なものにするために(A)/(B)は0.992以上がより好ましく、0.994以上がさらに好ましく、0.996以上がさらにより好ましい。また、(A)/(B)は、1.008以下がより好ましく、1.006以下がさらに好ましく、1.004以下がさらにより好ましい。
(A)/(B)は光拡散性フィラーの種類や添加量、波長調整剤の種類や添加量を変更することで調整することが出来る。
成形体における光拡散率は、製品としての使用を考慮し、光源からの光を拡散させたときに成形体が明るく見える範囲の中央部において測定するものする。
(用途)
本実施形態の成形体は、耐熱変形性、長期特性、光源色再現性に優れ、良好に光を透過させつつ、光拡散性に優れるため、建築用部材、車両用部材、電気電子用部材、照明用部材等に好適に用いることが出来る。具体的には、例えば、照明カバーや看板、車両灯具用部材、エンブレム、シフトレバー、スイッチパネル、ボタンの導光部等の車両内外装部材として好適である。本実施形態の成形体は車両用部材として用いることが好ましく、車両灯具用部材として用いることがより好ましい。
特に高出力LEDに近接しても成形体の形状を保つことが出来、光源イメージを十分に低減させつつ、明るく、光源色の再現性、昼夜間の視認安定性に優れるため、車両灯具用部材、コンビネーションランプ(特に、リアコンビネーションランプ)の内部に配置されるランプカバー等の光源イメージ低減用部材として特に好適である。
コンビネーションランプ(特に、リアコンビネーションランプ)の内部に配置されるランプカバーの中でも白色LED光源が使用され、白色LED光源光の導光方向と並行方向に成形体の長手方向が配置される光拡散性ランプカバーとして好適である。この時、単一のLED光源での導光距離を長くし、少ないLED光源でもより長尺な成形体において均質に光を拡散できるようにするために、光拡散性ランプカバーの内側にポリカーボネート系樹脂組成物、メタクリル系樹脂組成物からなる樹脂導光体が配置されることが好ましく、樹脂導光体および/または樹脂導光体の更に内側に配置されたリフレクター板から導光、反射された光を本実施形態の成形体によって拡散する構造を持つことがより好ましい。
本実施形態の光拡散カバーは、上述の本実施形態の成形体を含むことが好ましい。上記光拡散カバーは、さらにLED光源を含むことが好ましく、LED光の導光方向と並行方向に静形態の長手方向が配置されることがより好ましい。
上記光拡散カバーは、内部に透明樹脂製導光体が配置され、該透明樹脂製導光体によって導光された光を拡散することが好ましい。
上記光拡散カバーは、白色LED光源(好ましくは青色LEDと蛍光体とで構成される白色LED光源)の光拡散性カバーとして用いられることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[原料]
(メタクリル系樹脂)
メタクリル系メタクリル系樹脂組成物の製造に用いたメタクリル系樹脂の原料は、下記のとおりである。
・メタクリル酸メチル(MMA):旭化成製(重合禁止剤として中外貿易製2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノールを2.5ppm添加されているもの)
・アクリル酸メチル(MA):三菱ケミカル製(重合禁止剤として川口化学工業製4-メトキシフェノール(4-methoxyphenol)が14ppm添加されているもの)
・n-オクチルメルカプタン:アルケマ製
・2-エチルヘキシルチオグリコレート:東京化成工業製
・ラウロイルパーオキサイド:日本油脂製
・第三リン酸カルシウム:日本化学工業製、懸濁剤として使用
・炭酸カルシウム:白石工業製、懸濁剤として使用
・ラウリル硫酸ナトリウム:和光純薬工業製、懸濁助剤として使用
(光拡散性フィラー)
・架橋シリコーン樹脂:モメンティブジャパン製(平均粒径2μm、屈折率1.42)
・架橋スチレン-MMA系樹脂:積水化成品製(平均粒径5μm、屈折率1.53)
・硫酸バリウム:竹原化学工業製(平均粒径5μm、屈折率1.64)
(紫外線吸収剤)
・チヌビンP:BASF製 融点128℃ ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(極大吸収波長345nm)
・シーソーブ703:シプロ化成製 融点138℃ ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(極大吸収波長355nm)
(離型剤)
・ステアリルアルコール:花王ケミカル製カルコール8098
(波長調整剤)
・マクロレックス ブルーRR:ランクセス製(C.I.Solvent Blue94)、波長380nmから780nmにおける極大吸収波長580nm
・マクロレックスバイオレット3R:ランクセス製(C.I.Solvent Violet36)、波長380nmから780nmにおける極大吸収波長558nm
・スミプラストブルーOR:住化ケミテックス製(波長調整剤複数種の混合物)、波長380nmから780nmにおける極大吸収波長:592nm
[測定、評価方法]
(メタクリル系樹脂の分子量測定)
メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)(Mnは数平均分子量)を下記の装置、及び条件で測定した。
・測定装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH-H 1本、TSKgel SuperHM-M 2本、TSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量は溶出する時間が遅い。
検出器 :RI(示差屈折)検出器
検出感度 :3.0mV/min
カラム温度:40℃
サンプル :0.02gのメタクリル系樹脂のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量 :10μL
展開溶媒 :テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/min、内部標準として、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を、0.1g/L添加した。
検量線用標準サンプルとして、単分散のピーク分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymer Laboratories製;PMMA Calibration Kit M-M-10)を用いた。
なお、検量線用標準サンプルに用いた標準試料のポリメタクリル酸メチルは、それぞれ単ピークのものであるため、それぞれに対応するピークを重量ピーク分子量Mpと表記した。この点、一試料についてピークが複数ある場合に算出されるピークトップ分子量と区別した。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 70,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準資料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂の溶出時間に対するRI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線とを基に、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
(メタクリル系樹脂の構造単位の解析)
H-NMR測定により単量体単位を同定し、その存在量(質量%)を算出した。
H-NMR測定の測定条件は、以下のとおりである。
装置:JEOL-ECA500
溶媒:CDCl-d(重水素化クロロホルム)
試料:メタクリル系樹脂1gをアセトン10mlに溶解させ、メタノール20mlを滴下しろ過。不溶分を40℃で15時間真空乾燥したもの15mgをCDCl-d 0.75mLに溶解し、測定用サンプルとした。
(メタクリル系樹脂組成物の全残存モノマー量の測定)
GCを用いて検量線法により測定を実施した。
より具体的には、得られたメタクリル系樹脂組成物の一部を採取・秤量し、この試料をクロロホルムに溶解させて、0.5質量%の溶液を調製し、内部標準物質としてノナンを添加した。島津製作所製、FID式のガスクロマトグラフィー(品番:GC2025)に、内径0.32mm、長さ30mのキャピラリカラム(phenomenex社製、品番:ZB-1)を用いた。測定においては、45℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度にて110℃まで昇温し、その後200℃まで30℃/分で昇温し、さらに240℃まで10℃/分で昇温し、その後50℃/分で300℃まで昇温し、300℃で10分間保持した。
(分光透過率)
島津製作所製紫外可視分光光度計UV―2600を用いて、厚さ2mmの平板における分光透過率を測定した。測定は測定間隔1nm、スリット幅5nm、スキャンスピード:中速にて実施した。
(光拡散率)
平板状試料の厚さ2mm部分での透過光拡散率は、日本電色工業製GC5000を用いて、5°、20°、70°の輝度(透過光強度)を測定し、DIN5036に準じて下記の式より、拡散度を算出した。なお、平板状試料は、後述の射出成形により製造された100mm×100mm×2mmの平板状試料Bを用いた。
(光拡散率の計算式)
光拡散率=(20°透過光強度+70°透過光強度)÷(2×5°透過光強度)×100
光拡散率は40%以上で◎(特に優れている)、30%以上で〇(良好)、10%以上で△(実用上問題なし)、10%未満で×(不良)とした。
(長期使用特性)
スガ試験機製サンシャインカーボンアークウェザーメーターを用いて、ブラックパネル温度63℃、120分中18分降雨の条件で2040時間の試験を実施した。東京電色製TC8600を用いてC光源10°視野透過モードで測定された3mm厚みでの試験前後での色差(ΔE)で長期使用特性を評価した。なお、平板状試料は、後述の射出成形により製造された100mm×100mm×3mmの平板状試料Aを用いた。
ΔEが1.0以下であれば◎(特に優れている)、1.8以下であれば〇(良好)、2.2以下であれば△(実用上十分なレベル)、ΔEが2.2を超える場合は×(不良)とした。
(耐熱変形性)
耐熱変形性の指標として、成形体から切り出したメタクリル系樹脂組成物試料の中間点ガラス転移温度を測定した。示差走査熱量計(パーキンエルマージャパン(株)製 Diamond DSC)を用いて、窒素ガス雰囲気下、α-アルミナをリファレンスとし、JIS-K-7121に準拠して、試料約10mgを40℃から210℃まで昇温速度10℃/minで昇温した後、40℃まで降温し、再度40℃から210℃まで昇温速度10℃/minで昇温して2回目のDSC曲線から中間点ガラス転移温度を求めた。中間点ガラス転移温度は124℃以上で◎A(特に優れている)、120℃以上で◎B(より優れている)、113℃以上で◎(優れている)、109℃以上で〇(良好)107℃以上で△(実用上問題なし)、107℃未満で×(不良)とした。なお、ガラス転移曲線に複数の変曲点が見られた場合、最も大きな変曲点の値を採用した。
なお、メタクリル系樹脂の中間点ガラス転移温度も、上記と同様の方法で測定することができる。
(耐衝撃性)
JIS K7111-1に準拠し、実施したノッチなしシャルピー衝撃試験の結果が、20kJ/m以上であれば◎(優れる)、17kJ/m以上で〇(良好)、15kJ/m以上であれば△(実用上十分なレベル)、15kJ/m未満であれば×(不良)とした。15kJ/m以上であれば、他部材との取り付け部の強度が良好な成形体を得ることができる。
(流動性)
メルトマスフローレイト(MFR)を測定することで成形時における流動性の指標とした。測定試料は、後述する実施例及び比較例で製造したメタクリル系樹脂組成物を80℃に設定した電気式乾燥機で24時間乾燥させたものを測定試料とし、JIS K7210:1999に基づいて荷重3.8kgf、試験温度230℃で測定したMFRの値(g/10分)を測定した。
MFRが3g/10分以上であれば◎(特に優れている)、1.0g/10分以上であれば〇(良好)、0.6g/10分以上であれば△(実用上十分なレベル)とした。
(総合評価)
光源再現性、光拡散率、長期使用特性、耐熱変形性、耐衝撃性、流動性の評価結果から、特に評価結果が優れていたものを◎、良好であったものを〇、実用上十分なもののやや劣る物性が見られたものを△とした。
<製造例1(メタクリル系樹脂1の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:25kgを投入して80℃に昇温し、混合液全量、メタクリル酸メチル:21.1kg、アクリル酸メチル:0.54kg、ラウロイルパーオキサイド:40g、及びn-オクチルメルカプタン:57gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、94℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、60℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子(メタクリル系樹脂1)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は10.4万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85、また、単量体単位はMMA/MA=97.5/2.5質量%であった。
<製造例2(メタクリル系樹脂2の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液を得た。
次いで、60Lの反応器にイオン交換水:25kgを投入して80℃に昇温し、混合液全量、メタクリル酸メチル:21.3kg、アクリル酸メチル:2.3kg、ラウロイルパーオキサイド:65g、及びn-オクチルメルカプタン:70gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、94℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、60℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子(メタクリル系樹脂2)を得た。
得られたメタクリル系樹脂のMwは9.2万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.86であり、単量体単位はMMA/MA=90/10質量%であった。
<製造例3(メタクリル系樹脂3の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:25kgを投入して80℃に昇温し、混合液全量、メタクリル酸メチル:21.1kg、アクリル酸メチル:0.54kg、ラウロイルパーオキサイド:38g、及びn-オクチルメルカプタン:78gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、94℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、60℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子(メタクリル系樹脂3)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は7.9万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.88であった。また、単量体単位はMMA/MA=98/2.5質量%であった。
<製造例4(メタクリル系樹脂4の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液を得た。
次いで、60Lの反応器にイオン交換水:25kgを投入して80℃に昇温し、混合液全量、メタクリル酸メチル:21.1kg、アクリル酸メチル:0.54kg、ラウロイルパーオキサイド:36g、及びn-オクチルメルカプタン:94gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、94℃に1℃/minの速度で昇温した。
その後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、60℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子(メタクリル系樹脂4)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は6.9万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.84であった。また、単量体単位はMMA/MA=97.5/2.5質量%であった。
<製造例5(メタクリル系樹脂5の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液を得た。
次いで、60Lの反応器にイオン交換水:25kgを投入して80℃に昇温し、混合液全量、メタクリル酸メチル:21kg、アクリル酸メチル:0.65kg、ラウロイルパーオキサイド:36g、及びn-オクチルメルカプタン:46gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、94℃に1℃/minの速度で昇温した。
その後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、60℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子(メタクリル系樹脂5)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は12.5万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.86であった。また、単量体単位はMMA/MA=97/3質量%であった。
<製造例6(メタクリル系樹脂6の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液を得た。
次いで、60Lの反応器にイオン交換水:25kgを投入して80℃に昇温し、混合液全量、メタクリル酸メチル:20.4kg、アクリル酸メチル:1.3kg、ラウロイルパーオキサイド:36g、及びn-オクチルメルカプタン:26gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、94℃に1℃/minの速度で昇温した。
その後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、60℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子(メタクリル系樹脂6)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は19.6万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.96であった。また、単量体単位はMMA/MA=94/6質量%であった。
<製造例7(メタクリル系樹脂7の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液を得た。
次いで、60Lの反応器にイオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液全量、メタクリル酸メチル:20.9kg、シクロヘキシルマレイミド:0.96kg、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート:40g、及びn-オクチルメルカプタン:66gを投入した。
その後、約75℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子(メタクリル系樹脂7)を得た。
得られたメタクリル系樹脂7のMwは9.5万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.95、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は、5.2%であった。また、単量体単位は、MMA/CMI=96.1/4.2質量%であり、不飽和二重結合末端の量は0.007モル%であった。
<製造例8(メタクリル系樹脂8の製造)>
攪拌装置の付いた容器を用いて、メチルメタクリレート74質量部、スチレン15質量部、無水マレイン酸11質量部を混合し、これにラウロイルパーオキサイド0.03質量部、及びn-オクチルメルカプタン0.23質量部を加えて溶解し、モノマー配合液を作製した。一方、大きさが250×350mm、厚さが6mmの2枚のガラス板を用いてこれらの外周近辺を柔軟性のある塩化ビニル製ガスケットで貼りまわし、2枚のガラス板の距離が30mmになるようにしたセルを組み立てて準備した。
上述したモノマー配合液を50torrの減圧下で攪拌しながら、2分間の脱揮操作を行った。その後、減圧を解いて、常圧に復し、直ちに前記ガラスセルに注入して満たした。
次に、60~65℃に温調した温水槽中に23時間保ち、その後110℃に温調した熱風循環オーブン中で5時間保った後、室内で静置放冷し、ガラス板を除去し、シート状樹脂を得た。上記のようにして得られたシート状樹脂を、5mmメッシュの網を取り付けたセイシン企業(株)製粗粉砕機オリエントミルVM-22型機で粉砕し、その後、粉砕物を500μmの篩にかけて、微粉を取り除いてメタクリル系樹脂を得た。得られたメタクリル系樹脂のMwは11.5万であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は、7.2%であった。また、単量体単位は、MMA/無水マレイン酸/スチレン=76/11/14質量%であり、不飽和二重結合末端の量は0.006モル%であった。
[実施例1~19][比較例1~6]
表1に記載の配合割合になるよう、メタクリル系樹脂、光拡散性フィラー、波長調整剤、紫外線吸収剤、その他の添加剤をそれぞれ計量した後、タンブラーへ投入し、混合した。十分混合させた後、φ26mmの二軸押出機にその混合原料を投入し、溶融混練(コンパウンド)してストランドを生成し、ウォーターバスでそのストランドを冷却した後、ペレタイザーで切断してペレットを得た。なお、コンパウンドの際、押出機のベント部に真空ラインを接続し、-0.08MPaの条件で水分やモノマー成分等の揮発成分を除去した。こうして、メタクリル系樹脂組成物を得た。なお、樹脂組成物の混錬温度は、実施例13、14、17は220℃、実施例16は260℃、その他は240℃であった。なお、表1中の数値は、メタクリル系樹脂の質量を100質量部としたときの配合部数(質量部)を表す。全残存モノマー量はメタクリル系樹脂組成物100質量%に対し、0.1~0.3質量%であった。
<平板状試料>
(射出成形)
得られたメタクリル系樹脂組成物のペレットを射出成形機(芝浦機械製EC-100SX)に投入し、平板状試料A(100mm×100mm×3mm、厚みt=3mm、流動長L=110mm、L/t=37)、平板状試料B(100mm×100mm×2mm、厚みt=2mm、流動長L=110mm、L/t=55)を成形し、評価用の平板状試料とした。なお、金型は、金型表面(金型キャビティ内面)が8000番の磨き番手で研磨されているものを用いた。
なお、この評価用平板試料の成形条件は、下記のように設定した。
成形温度(シリンダー温度): 250℃
射出速度:20mm/秒
保圧:70MPa
金型温度: 65℃
また、射出成形時の金型温度は、8000番の磨き番手で研磨された金型表面の転写性を高めるため、より高温に保つことが重要である。金型温度が高過ぎても冷却時間が長すぎ、実用的ではなくなる。それらを良質させる金型の温度範囲は、50℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃以上90℃以下、さらに好ましくは60℃以上85℃以下であり、今回はその中の65℃を選択した。
<ISOダンベル試験片>
(射出成形)
得られたメタクリル系樹脂組成物のペレットを射出成形機(芝浦機械製EC-100SX)に投入し、ISO1号ダンベル試験片(厚みt=4mm、流動長L=175mm、L/t=44)を成形し、シャルピー衝撃試験用の試料を切り出した。成形条件は、ISOK6717-2に準拠した。
<板状成形体の成形>
(射出成形)
実施例1~19、比較例1~6について、350mm×100mm×2mm厚みの寸法の成形体が成形できる左辺、上辺から50mmの位置にピンゲートを持つ金型を用いて芝浦機械製EC-100SXをシリンダー温度270℃、金型温度80℃、射出速度140mm/秒、一次保圧90MPaの条件に設定し、良好な成形性を有していた実施例1~19、比較例1~6について、350mm×100mm×t=2mm、流動長L=304mm、L/t=152の射出成形体Sを得た。
(光源再現性の評価)
白色LED光源(TSPA22×8-57W WHITE)から、20mm離れた位置に上記の平板状試料Bを設置し、平板状試料B越しに見た白色LED光源光を拡散させた色を平板状試料Bから1m離れた位置から平板状試料Bと同じ高さで観察した。8人で観察を実施し、元の光源光色に対して色が明らかに変化していると感じた人数が0または1人であれば〇(光源色再現性が良好)、2~4人であれば△(実用上問題ないレベル)、5人以上であれば×(不良)とした。
(LED光源に対する光拡散性カバーとしての評価)
図1のように前面のみが開いた不透過白色メタクリル系樹脂組成物製の箱の中に白色LED光源から1mmの位置に、マイクロプリズム加工が施された直径10mm、長さ250mmのメタクリル系樹脂組成物製導光体を設置した。開いた箱の前面に光拡散性カバーとして射出成形体Sを設置し、白色光源LED光源を点灯させ、射出成形体S越しの光を観察した。この時、光拡散性カバーとして用いた射出成形体Sと導光体との距離は20mmとした。光源再現性評価が良好であった実施例1~5、実施例7、9~19については、上記のような使用方法においても光源光色が良好に再現されていることが確認された。
比較例1~4については、透明樹脂導光体によって導光されたことで黄色味が強調され、光拡散性カバー越しに見た光はLED光源の光源色を良好に再現出来ていなかった。
Figure 2023138472000001
表1に示すように、実施例1~5、7、9、11、12、14、15、18においては、良好な光源色再現性、光拡散率、長期使用特性、耐熱変形性、流動性、耐衝撃性を兼ね備えたメタクリル系樹脂組成物や成形体、光拡散性カバーを製造することができた。中でも特に実施例1~5、7、11、12、14、15が優れていた。また、実施例18は耐熱変形性により優れており、光源が近接する環境や高温環境でも好適に用いることが出来る。
比較例1、2では、波長調整剤が含まれていないため光源色再現性が劣っていた。
比較例3、4では、波長調整剤が過大であったため光源色再現性が劣り、また、長期使用特性も良好なものではなかった。
比較例5は耐熱変形性が良好ではなく、LED光源の高出力化や光源へ近接させることが出来ない。
比較例6は、光拡散性フィラーが過大であったため、光源色の再現性が劣り、また、長期使用特性も良好なものではなかった。
実施例6においてはA/Bの値が0.988と拡散率が40%を超える実施例の中では低く、実用上十分なレベルであるものの光源色の再現性がわずかに劣っていた。
実施例8においてはA/Bの値が0.966と拡散率が40%以下の実施例の中では低く、実用上十分なレベルであるものの光源色の再現性がわずかに劣っていた。
実施例10においては、実用上十分なレベルであるものの光拡散率がわずかに劣っていた。
実施例13においては、実用上十分なレベルであるものの他の実施例に比べるとメタクリル系樹脂の分子量が低いため耐衝撃性がわずかに劣っていた。
実施例16においては、実用上十分なレベルであるもののほかの実施例に比べるとメタクリル系樹脂の分子量が高いため流動性がわずかに劣っていた。
実施例17においては、光拡散性フィラーとして無機化合物を用いているため、実用上十分なレベルであるもののほかの実施例に比べると耐衝撃性と長期使用特性がわずかに劣っていた。
実施例19においては、耐熱変形性が特に優れていたが、長期使用特性が実用上十分である物のわずかに劣っていた。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、良好な光源色再現性、光拡散率、長期使用特性、耐熱変形性、成形流動性、耐衝撃性を兼ね備えたメタクリル系樹脂組成物、樹脂成形体を得ることができるため、建築用部材、車両用部材、電気電子用部材、照明用部材等に好適に用いることが出来る。具体的には、例えば、照明カバーや看板、車両灯具用部材、エンブレム、シフトレバー、スイッチパネル、ボタンの導光部等の車両内外装部材として産業上の利用可能性を有している。特に白色LED光源、光源イメージを十分に低減させつつ、光源の色を良好に再現でき、長期使用特性に優れるため、車両灯具用部材、リアコンビネーションランプの内部に配置される光源イメージ低減用部材、LED光源が使用され、LED光の導光方向と並行方向に成形体の長手方向が配置されるような光拡散性カバー、LED光源が使用され、光拡散性カバーの内部に透明樹脂製導光体が配置され、透明樹脂製導光体によって導光された光を拡散するような光拡散性カバーとして特に好適で産業上の利用可能性を有している。

Claims (15)

  1. メタクリル系樹脂100質量部に対し、波長380nmから780nmにおいて波長500~670nmに極大吸収波長を有する波長調整剤を0.000003質量部~0.0003質量部、平均粒径0.2~20μmの光拡散性フィラーを0.3~6質量部含有し、
    中間点ガラス転移温度が105℃以上である、
    ことを特徴とするメタクリル系樹脂組成物。
  2. シリンダー温度240℃、金型温度60℃、金型磨き番手8000番の金型用いて射出成形された厚さ2mmの平板の波長570nmにおける分光透過率(B)に対する波長470nmにおける分光透過率(A)の割合(A/B)と光拡散率(LD)が条件(1)または(2)を満たす、請求項1に記載のメタクリル系樹脂組成物。
    条件(1):LD≦40%でかつ、0.96≦A/B≦1.04
    条件(2):LD>40%でかつ、0.99≦A/B≦1.01
  3. 前記メタクリル系樹脂の重量平均分子量が75,000~200,000である、請求項1または2に記載のメタクリル系樹脂組成物。
  4. 前記光拡散性フィラーが前記メタクリル系樹脂よりも低い屈折率を有し、その屈折率差が0.005以上0.12以下である、請求項1または2に記載のメタクリル系樹脂組成物。
  5. 波長570nmにおける分光透過率(B)に対する波長470nmにおける分光透過率(A)の割合(A/B)と光拡散率(LD)が条件(1)または(2)を満たし、
    メタクリル系樹脂と平均粒径0.2~10μmの光拡散性フィラーと波長調整剤を含有するメタクリル系樹脂組成物からなる、
    ことを特徴とする成形体。
    条件(1):LD≦40%でかつ、0.97≦A/B≦1.04
    条件(2):LD>40%でかつ、0.99≦A/B≦1.01
  6. 前記メタクリル系樹脂組成物が、請求項1または2に記載のメタクリル系樹脂組成物である、請求項5に記載の成形体。
  7. 厚みtが1~5mmである、請求項5に記載の成形体。
  8. 前記メタクリル系樹脂組成物の流動長Lと成形体の厚みtが下記条件(1)、(2)、(3)を満たす、請求項5に記載の成形体。
    1mm≦t≦5mm・・・条件(1)
    L≧100mm ・・・条件(2)
    L/t≧65 ・・・条件(3)
  9. 車両用部材に用いられる、請求項5に記載の成形体。
  10. 車両灯具用部材に用いられる、請求項5に記載の成形体。
  11. 請求項5に記載の成形体とLED光源とを含み、
    LED光の導光方向と並行方向に前記成形体の長手方向が配置される、光拡散性カバー。
  12. 光拡散性カバーの内部に透明樹脂製導光体が配置され、前記透明樹脂製導光体によって導光された光を拡散する、請求項11に記載の光拡散性カバー。
  13. 白色LED光源の光拡散性カバーとして用いられる、請求項11または12に記載の光拡散性カバー。
  14. 前記白色LED光源が青色LEDと蛍光体とで構成されている、請求項13に記載の光拡散性カバー。
  15. N-置換マレイミド構造、及び無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の環構造を主鎖に有するメタクリル系樹脂100質量部に対し、平均粒径0.2~20μmの光拡散性フィラーを0.3~6質量部含有し、波長380nmから780nmにおいて波長500~670nmに極大吸収波長を有する波長調整剤を含み、中間点ガラス転移温度が120℃以上140℃以下である、ことを特徴とするメタクリル系樹脂組成物。
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