JP2017136607A - 伸線装置用キャプスタン - Google Patents

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Abstract

【課題】 回転軸のふらつきを低減し、伸線作業精度が低下したり、伸線装置が故障したりすることを抑制する。【解決手段】 複数のセラミック焼結体からなる環状部材と、前記環状部材が固定される土台部とを備え、複数の前記環状部材は、前記土台部の一方端から他方端に向かって段階的に外径状が大きくなるよう前記土台部に配置されており、前記他方端側に配置される第1環状部材は、前記一方端側に配置される第2環状部材よりも密度が低い伸線装置用キャプスタン。【選択図】 図1

Description

本開示は、金属等の線材を伸ばす伸線装置に用いられるキャプスタンに関する。
従来、金属等の線材を伸ばす作業には、キャプスタンを装着した伸線装置が用いられている。キャプスタンは、複数の環状部材と、この環状部材が固定される土台部とを備えている。複数の環状部材は、土台部の一方端から他方端に向かって段階的に外径状が大きくなるよう土台部に配置されている。このような形状のキャプスタンはコーン型と呼ばれる。下記特許文献1には、環状部材がいずれもジルコニアを主成分とするセラミック焼結体からなる例が開示されている。
特許第4301231号公報
コーン型のキャプスタンにおいて、特許文献1の例のように、複数の環状部材がいずれも同様の組成のセラミック焼結体からなる場合、外形状の違いにより、他方端側の環状部材に生じる遠心力が一方端側の環状部材の遠心力に比べて大きくなり易い。環状部材の遠心力の大きさの違いは、他方端側の環状部材の回転ブレの程度と、一方端側の回転ブレの程度との違いとなる。そして、この回転ブレの程度の違いは、回転軸のふらつきなどにつながり、このふらつきが大きいときには、伸線作業精度が低下したり、伸線装置が故障したりする。
本開示の伸線装置用キャプスタンは、セラミック焼結体からなる複数の環状部材と、前記環状部材が固定される土台部とを備え、複数の前記環状部材は、前記土台部の一方端から他方端に向かって段階的に外径状が大きくなるよう前記土台部に配置されており、前記他方端側に配置される第1環状部材は、前記一方端側に配置される第2環状部材よりも密度が高い。
本開示の伸線装置用キャプスタンは、回転軸のふらつきを抑制することができる。
本実施形態の伸線装置用キャプスタンの一例を示す斜視図である。 図1に示す伸線装置用キャプスタンの一部を拡大して示す断面図である。 図1に示す伸線装置用キャプスタンを備えて構成される伸線装置の一例を示す概略図である。
以下、図面を参照して、本実施形態の一例について詳細に説明する。ただし、本明細書の全図において、混同を生じない限り、同一部分には同一符号を付し、その説明を適時省略する。
図1は、本実施形態の伸線装置用キャプスタンの一例を示す斜視図である。図2は、図
1に示す伸線装置用キャプスタンの一部を拡大して示す断面図である。図3は、図1に示すキャプスタンを備えて構成される伸線装置の一例を示す概略断面図である。図1〜3に示す伸線装置用キャプスタン10(以下、伸線装置用キャプスタンを単にキャプスタンという。)は、いわゆるコーン型のキャプスタンである。
まず、図3に示す伸線装置20の構成と動作について説明しておく。伸線装置20は、いわゆる並列掛け伸線構造となっている。伸線装置20では、機台11内部の所定位置に回転軸3a,3bが配置されており、回転軸3a,3bの双方に、キャプスタン10が固定されている。すなわち、各々の回転軸3a、3bに固定されたキャプスタン10が、回転軸3a、3bの回転に従動してそれぞれ回転する。回転軸3aと回転軸3bとの間隙には、複数のダイス(ダイス群)12が配置されている。上述のように、キャプスタン10は、図示面の上方から下方に向かって段階的に外径状が大きい環状部材を備え、環状部材2はそれぞれ摺接面(外周面)を備えている。
また、伸線装置20は、駆動モータ13、駆動プーリー14、従動プーリー15および16、駆動ベルト17、従動ベルト18を備える。駆動プーリー14と従動プーリー15および16には、駆動ベルト17が掛け回されており、駆動モータ13によって駆動プーリー14が回転し、従動プーリー15および16の双方も従動して回転する。従動プーリー15は回転軸3bと接続され、駆動プーリー14は回転軸3aと接続されており、駆動モータ13によって、回転軸3aおよび3bが回転駆動される。
伸線装置20では、案内ローラ(不図示)を介して外部から送られてくる線材Wを、2つのキャプスタン10に掛け回しながら搬送する。具体的には、外部から送られてくる線材Wを、キャプスタンロール10間に配置したダイス群12に通過させ、駆動モータ13の駆動によりキャプスタン10を回転させる。この際、線材Wは、キャプスタン10における環状部材のうち、外径の小さい方から外径の大きい方(図示面における上方から下方へ)へと、順次掛け回されていく。線材Wは、例えば金(Au)からなる。線材Wは、金(Au)以外でも、例えばCu、Ag、Alなど各種金属線であってもよい。
伸線装置20では、駆動モータ13の駆動により、キャプスタン10が回転し、線材Wはダイス群12内を強制的に順次通過しつつ縮径されて伸線される。なお、図3では、2本のキャプスタン10を用いた装置を示しているが、さらにキャプスタン10の本数を増やして設置した装置であってもよい。
次に、図1および図2を参照して本実施形態のキャプスタン10について説明する。キャプスタン10は、例えばAu等の線材Wを引き伸ばすための、伸線装置20の内部に配置される。伸線装置20において、キャプスタン10は、回転軸3を中心に回転可能に設置され、例えば、1000〜6000rpmで回転する。回転軸3にはキャプスタン10の土台部分1が固定されている。
キャプスタン10は、セラミック焼結体からなる複数の環状部材2と、環状部材2が固定される土台部1とを備える。ここで、キャプスタン10の説明にあたり、土台部1の一方端にA、他方端にBの符号を付す。なお、符号については、便宜上、土台部1の端面から離れた位置に付している。そして、図1および図2においては、環状部材2の間に、保持部材4を備えている例を示している。具体的には、土台部1の一方端A側から他方端B側に向って段階的に外径が大きくなる複数の保持部材4が装着されている例を示している。
次に、環状部材2は、隣接する保持部材4によって保持されている。具体的には、図2に示すように、環状部材2は、保持部材4に対して空転しないよう、ビス5によって係止
されている。保持部材4は、ボルト6によって土台部1に締結されている。保持部材4は、環状部材2の外周面よりも外側に突出する鍔部4aを備えている。鍔部4aは、隣接する保持部材4との間において、線材Wの摺動領域を確定させる役割を担うためのガイドである。また保持部材4は、環状部材2との当接面に凹部4b、4cを有し、環状部材2の端部が凹部4b、4cに嵌合された構成となっている。
キャプスタン10における複数の環状部材2は、土台部1の一方端Aから他方端Bに向かって段階的に外径状が大きくなるよう土台部1に配置されており、他方端B側に配置される第1環状部材21は、一方端A側に配置される第2環状部材22よりも密度が低い。
次に、各部材を構成する材質について説明する。土台部1は例えば炭素鋼、炭素工具鋼、アルミニウム等の金属からなる。また、保持部材4は、例えば、炭素鋼あるいは炭素工具鋼からなる。
第1環状部材21は、例えば、酸化アルミニウム、炭化珪素または炭窒化珪素を主成分とするセラミック焼結体からなる。また、第2環状部材22は、例えば、酸化ジルコニウム、窒化珪素、サイアロンまたは炭化チタンを主成分とするセラミック焼結体、あるいは酸化アルミニウムと、炭化チタン、窒化チタンおよび酸化ジルコニウムの少なくともいずれかとからなる複合焼結体から形成されていてもよい。
特にキャプスタン10では、第1環状部材21は、酸化アルミニウムが主成分であり、第2環状部材22は、酸化ジルコニウムが主成分であることが好適である。
主成分が酸化アルミニウムであるセラミック焼結体は、製造コストが比較的低いながらも、機械的特性に優れているため、比較的優れた耐摩耗性を有するキャプスタン10を比較的安価に構成することができる。主成分が酸化ジルコニウムであるセラミック焼結体は耐磨耗性が高く、また、酸化ジルコニウムの線膨張係数は保持部材4を構成する炭素鋼あるいは炭素工具鋼との線膨張係数と近いため、保持部材4に当接しても熱膨張による寸法のずれが生じにくい。
なお、上述したセラミック焼結体における主成分とは、セラミック焼結体を構成する成分の合計100質量%のうち、80質量%以上を占める成分をいう。
セラミック焼結体における主成分は、まず、X線回折装置を用いて成分の同定を行う。次に、例えば、酸化アルミニウム(Al)の存在が確認できた場合には、蛍光X線分析装置(XRF)またはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析装置(ICP)を用いて、Alの含有量を求め、Alに換算し、換算したAlの含有量が80質量%以上であれば、主成分が酸化アルミニウムである。酸化ジルコニウムについても同様である。
なお、一方端A側とは、一方端Aから他方端Bの長さ(高さ)方向に沿った領域の中で、一方端Aから上記長さ方向全体の1/3までの領域のことをいう。他方端B側とは、他方端Bから上記長さ方向全体の1/3までの領域のことをいう。図1においては、一方端A側にあたる領域にα、他方端B側にあたる領域にβの符号を付している。
第1環状部材21は、他方端B側(β)に配置される環状部材2のうち、1つ以上の環状部材2であればよい。また第2環状部材22は、一方端A側(α)に配置される環状部材2のうち、1つ以上の環状部材2であればよい。なお、他方端B側に配置される環状部材2がすべて第1環状部材21であることが好ましい。また、一方端A側に配置される環状部材2がすべて環状部材22であることが好ましい。
例えば、土台1に配置される複数の環状部材の密度がほぼ同じ場合、比較的大きい外径を有する環状部材は、慣性モーメントが大きいため、生じる遠心力が大きくなり、他方端側の環状部材の回転ブレの程度と、一方端A側の回転ブレの程度とに違いが生じ、回転軸にふらつきが生じる。本実施形態では、他方端B側に配置される第1環状部材21が、一方端A側に配置される第2環状部材22よりも密度が低いため、第1環状部材21の慣性モーメントを比較的小さくでき、第1環状部材21に生じる遠心力を比較的小さくすることができる。これにより、他方端B側の第1環状部材21の回転ブレの程度と、一方端A側の第2環状部材2bの回転ブレの程度とに違いが生じ難いため、この回転ブレの程度の違いに起因したふらつき(大きな振動等)が生じ難い。そのため、本実施形態のキャプスタン10は、伸線作業精度が低下したり、伸線装置が故障したりし難い。
第1環状部材21と第2環状部材22との密度の差は、例えば、1.5g/cm以上であることが好適である。第1環状部材21および第2環状部材22の各密度は、JIS
R 1634−1998に準拠して見掛密度を適用すればよい。具体的には、第1環状部材21が酸化アルミニウムを主成分とするセラミック焼結体であれば、密度は約3.6(g/cm)であり、第2環状部材22が酸化ジルコニウムを主成分とするセラミック焼結体であれば、密度は約5.6(g/cm)である。
また、第1環状部材21は第2環状部材22よりもヤング率が大きい。第1環状部材21にヤング率が大きい材質を用いることで、第1環状部材21の回転にともなう変形を抑制することができる。ヤング率の差は、例えば、70GPa以上であることが好ましい。第1環状部材21および第2環状部材22の各ヤング率(動的弾性率)は、JIS R 1602−1995に準拠して求めればよい。具体的には、第1環状部材21が酸化アルミニウムを主成分とするセラミック焼結体であれば、ヤング率は280(GPa)であり、第2環状部材22が酸化ジルコニウムを主成分とするセラミック焼結体であれば、ヤング率は200(GPa)である。
また、キャプスタン10では、第2環状部材22は第1環状部材21よりも破壊靭性が高い。上述のように伸線装置20では、案内ローラ(不図示)を介して外部から送られてくる線材Wは、キャプスタン10の複数の環状部材2の外周面を、一方端Aから他方端Bに向かって、すなわち外径の小さい方から外径の大きい方へと順次掛け回されていく。このように順次掛け回されて移動していくにつれて、線材Wの直径は徐々に小さくなっていく。線材Wの直径が大きい方が、線材Wが変形せずに環状部材2に与える強度が強くなるので、環状部材2の外周面に与える機械的圧力等は、一方端A側で大きくなり易い。すなわち、環状部材2に与える機械的圧力は、一方端A側でより大きくなる。第2環状部材22は第1環状部材21よりも破壊靭性が高いことで、環状部材2の摩耗や損傷を抑制することができる。
破壊靭性の差は、例えば、2MPa・m1/2以上であることが好適で、第1のセラミック焼結体および第2のセラミック焼結体の各破壊靭性は、JIS R 1607−2015(ISO 15732:2003)に規定される圧子圧入法(IF法)に準拠して求めればよい。具体的にはは、第1環状部材21が酸化アルミニウムを主成分とするセラミック焼結体であれば、破壊靭性は約4.6(MPa・m1/2)であり、第2環状部材22が酸化ジルコニウムを主成分とするセラミック焼結体であれば、破壊靭性は約7〜8(MPa・m1/2)である。
次に、本実施形態のキャプスタン10の製造方法について説明する。
先ず、酸化アルミニウムが主成分である第1環状部材21を得るには、酸化アルミニウ
ムの粉末と、焼結助剤として、例えば、酸化珪素、水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウム等の各粉末を冷間静水圧成形法(CIP)などの成形方法にて、78〜147MPaの成形圧にて成形し、切削加工した後、1450〜1700℃にて焼成し、所望の形状に研削加工して、他方端B側に配置される第1環状部材21を得ることができる。
また、酸化ジルコニウムが主成分である第2環状部材22を得るには、酸化ジルコニウムの粉末と、焼結助剤として、例えば、酸化珪素および酸化アルミニウム等の各粉末を冷間静水圧成形法(CIP)などの成形方法にて、78〜147MPaの成形圧にて成形し、切削加工した後、1350〜1600℃にて焼成し、所望の形状に研削加工して、一方端A側に配置される第2環状部材22を得ることができる。
なお、仕上げ加工として、必要に応じてホーニング加工や、ELID研削、テープ研磨などで仕上げてもよい。例えば、鋳鉄ボンドにて、60Vか90Vの20〜90%の範囲で電圧をかけて研削加工を行えばよい。また、例えば、砥粒の入ったテープにて研磨加工を行えばよい。
そして、図1および図2に示す本実施形態のキャプスタン10を得るには、先ず、他方端B側で保持部材4を土台部1の外周側の所定位置に配置して、ビス5を保持部材4に装着する。そして、第1環状部材21を土台部1の外周側の所定位置に配置して、保持部材4を被せてボルト6で土台部1に締結する。第1環状部材21、環状部材2、第2環状部材22、保持部材4、ビス5、ボルト6を用いて、上述した作業を一方端A側に向って順次繰り返すことにより、本実施形態のキャプスタン10を得ることができる。
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組合せ等が可能である。
1 土台部
2 環状部材
3 回転軸
4 保持部材
5 ビス
6 ボルト
10 キャプスタン
11 機台
12 ダイス
13 駆動モータ
14 駆動プーリー
15、16 従動プーリー
17 駆動ベルト
18 従動ベルト
20 伸線装置

Claims (4)

  1. セラミック焼結体からなる複数の環状部材と、
    前記環状部材が固定される土台部とを備え、
    複数の前記環状部材は、前記土台部の一方端から他方端に向かって段階的に外径状が大きくなるよう前記土台部に配置されており、
    前記他方端側に配置される第1環状部材は、前記一方端側に配置される第2環状部材よりも密度が低いことを特徴とする伸線装置用キャプスタン。
  2. 前記第1環状部材は、前記第2環状部材よりもヤング率が大きいことを特徴とする請求項1に記載の伸線装置用キャプスタン。
  3. 前記第2環状部材は、前記第1環状部材よりも破壊靭性が高いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の伸線装置用キャプスタン。
  4. 前記第1環状部材が、酸化アルミニウムを主成分とするセラミック焼結体であり、前記第2環状部材が、酸化ジルコニウムを主成分とするセラミック焼結体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の伸線装置用キャプスタン。
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