JP2017134996A - 非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、及び該正極活物質を用いた非水系電解質二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 一般式:LizNi1−x−yCoxMyO2(ただし、0.00≦x≦0.35、0.00≦y≦0.35、0.95≦z≦1.20、MはMn、V、Mg、Mo、Nb、Ti及びAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される一次粒子及び一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなるリチウムニッケル複合酸化物粒子と、Liを含有しないW化合物粉末を混合してW混合物を得る混合工程と、前記W混合物を熱処理して一次粒子表面にWを分散させ、W及びLiを含む化合物を設けたリチウムニッケル複合酸化物粒子を形成する熱処理工程を有する非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
【選択図】なし
Description
このような非水系電解質二次電池は、現在研究、開発が盛んに行われているところであるが、中でも、層状またはスピネル型のリチウムニッケル複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
このうちリチウムニッケル複合酸化物は、サイクル特性が良く、低抵抗で高出力が得られる材料として注目されており、近年では高出力化に必要な低抵抗化が重要視されている。
例えば、特許文献1には、Mo、W、Nb、Ta及びReから選ばれる1種以上の元素が、Mn、Ni及びCoの合計モル量に対して0.1〜5モル%含有されているリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体が提案され、一次粒子の表面部分のLi並びにMo、W、Nb、Ta及びRe以外の金属元素の合計に対するMo、W、Nb、Ta及びReの合計の原子比が、一次粒子全体の該原子比の5倍以上であることが好ましいとされている。
この提案によれば、リチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体の低コスト化及び高安全性化と高負荷特性、粉体取り扱い性向上の両立を図ることができるとされている。
このような被覆により、酸素ガスを吸収させ安全性を確保できるとしているが、出力特性に関しては全く開示されていない。また、開示されている製造方法は、遊星ボールミルを用いて被覆するものであり、このような被覆方法では、正極活物質に物理的なダメージを与えてしまい、電池特性が低下してしまう。
この提案によれば、正極活物質の表面にタングステン酸化合物またはタングステン酸化合物の分解物が存在し、充電状態における複合酸化物粒子表面の酸化活性を抑制するため、非水電解液等の分解によるガス発生を抑制することができるとしているが、出力特性に関しては全く開示されていない。
この提案によれば、高い初期放電容量を大きく劣化させずに、従来提案されている正極活物質より熱的な安定性が良好なリチウム二次電池用正極活物質が得られるとしているが、出力特性に関しては全く開示されていない。
例えば特許文献6には、一次粒子および、その一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物であって、そのリチウム金属複合酸化物の表面に、Li2WO4、Li4WO5、Li6W2O9のいずれかで表されるタングステン酸リチウムを含む微粒子を有する非水系電解質二次電池用正極活物質が提案され、高容量とともに高出力が得られるとされている。
しかしながら、高容量が維持されながら高出力化されているものの、更なる高容量化が要求されている。
さらに、高容量とともに高出力が得られ、工業的規模での製造が容易で高い生産性を有する非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
さらに、その製造方法は、容易で工業的規模での生産に適し高い生産性を有するものであり、その工業的価値は極めて大きい。
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質は、一般式:LizNi1−x−yCoxMyO2(ただし、0.00≦x≦0.35、0.00≦y≦0.35、0.95≦z≦1.20、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、Ti及びAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される一次粒子と、一次粒子が凝集した二次粒子とからなるリチウムニッケル複合酸化物粒子(以下、単に「複合酸化物粒子」ということがある。)から構成された非水系電解質二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」ということがある。)であって、そのリチウムニッケル複合酸化物粒子の二次粒子の表面及び内部の一次粒子の表面(以下、二次粒子の表面と内部の一次粒子の表面を合わせて単に「一次粒子表面」ということがある。)にタングステンおよびリチウムを含む化合物を有し、リチウムニッケル複合酸化物の一次粒子表面に存在する、リチウムを含む全ての化合物に含有されるリチウム量が、正極活物質の全量に対して0.05〜0.35質量%以下、タングステンおよびリチウムを含む化合物以外のリチウムを含む化合物に含有されるリチウム量が、正極活物質の全量に対して0.05質量%以下、前記リチウムを含む化合物における炭酸リチウムに含まれるリチウム量が、正極活物質の全量に対して0.03質量%以下であることを特徴とするものである。
さらに、リチウムニッケル複合酸化物粒子の一次粒子表面に形成されたタングステンおよびリチウムを含む化合物と、リチウムニッケル複合酸化物の表面に存在する、リチウムを含む全ての化合物に含有されるリチウム量が、正極活物質の全量に対して0.05〜0.35質量%以下、タングステンおよびリチウムを含む化合物以外のリチウムを含む化合物に含有されるリチウム量を、正極活物質に対して0.05質量%以下、前記リチウムを含む化合物における炭酸リチウムに含まれるリチウム量が、正極活物質の全量に対して0.03質量%以下にすることにより、充放電容量を維持しながら出力特性を向上させ、さらにサイクル特性を向上させたものである。
対して、本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」という。)においては、リチウムニッケル複合酸化物粒子の表面にリチウム(Li)とタングステン(W)を含む化合物(以下、「LiW化合物」ということがある。)を形成させているが、この化合物は、リチウムイオン伝導率が高く、リチウムイオンの移動を促す効果がある。このため、リチウムニッケル複合酸化物粒子の表面に上記化合物を形成させることで、電解液との界面でLiの伝導パスを形成することから、正極活物質の反応抵抗(以下、「正極抵抗」ということがある。)を低減して出力特性を向上させるものである。
本発明における一次粒子表面とは、二次粒子の外面で露出している一次粒子表面と二次粒子外部と通じて電解液が浸透可能な二次粒子の表面近傍および内部の空隙に露出している一次粒子表面を含むものである。さらに、一次粒子間の粒界であっても一次粒子の結合が不完全で電解液が浸透可能な状態となっていれば含まれるものである。
したがって、電解液との接触が可能な一次粒子表面の多くにLiW化合物を形成させることで、リチウムニッケル複合酸化物粒子の反応抵抗をより一層低減させることが可能となる。
特に、二次粒子の表面近傍の内部の一次粒子の表面においては、リチウムイオンの移動を促す効果による正極抵抗の寄与が大きく、少なくとも二次粒子の表面近傍の一次粒子の表面にまでLiW化合物が形成されることで、正極抵抗低減に対する大きな効果が得られる。ここで、表面近傍とは、例えば、二次粒子表面から1〜3μm程度までの範囲である。
したがって、より高い効果を得るため、LiW化合物は、粒子径1〜300nmの微粒子としてリチウムニッケル複合酸化物の一次粒子の表面に存在することが好ましい。
しかし、粒子径が300nmを超えると、微粒子の表面における形成が不均一になり、反応抵抗低減のより高い効果が得られない場合があるためである。
しかしながら、そのLiW化合物は、全てが粒子径1〜300nmの微粒子として存在する必要がなく、好ましくは一次粒子表面に形成された微粒子の個数で50%以上が、1〜300nmの粒子径範囲で形成されていれば高い効果が得られる。
その膜厚が1nm未満では、被膜が十分なリチウムイオン伝導度を有しない場合がある。また、膜厚が200nmを超えると、リチウムイオン伝導率が低下し、反応抵抗低減効果より高い効果が得られない場合があるためである。
さらに、微粒子形態と薄膜の被膜形態が混在して一次粒子表面にLiW化合物が形成されている場合にも、電池特性に対する高い効果が得られる。
リチウムを含む全ての化合物、すなわち、LiW化合物とLiW化合物以外のリチウムを含む化合物の合計を上記範囲とすることで、リチウムニッケル複合酸化物粒子中のLi量の不足を抑制して高容量かつ高出力の正極活物質が得られるとともに、サイクル特性も向上させることができる。
複合酸化物粒子の二次粒子表面および一次粒子表面には、LiW化合物以外にも水酸化リチウムおよび炭酸リチウムが存在し、これらの余剰リチウム量として存在量を表すことができるリチウムを含む化合物は、リチウムの伝導性が悪く、リチウムニッケル複合酸化物質からのリチウムイオンの移動を阻害している。
また、余剰リチウム量を制御することで、複合酸化物粒子間でのリチウムイオンの移動も均一化され、特定の複合酸化物粒子に負荷がかかることが抑制され、サイクル特性を向上させることができる。
余剰リチウムが少なくなり過ぎることは、LiW化合物が形成される際に複合酸化物粒子の結晶中から過剰にリチウムが引き抜かれていることを示している。したがって、電池特性の低下を抑制するため、余剰リチウム量は0.01質量%以上であることが好ましい。
0.02質量%を超えると、複合酸化物粒子の表面に存在する炭酸リチウムの量が多くなり、充放電を繰り返す過程で発生するガス量が増加してしまうことがあり、このように炭酸リチウム量を制限することにより、ガス発生を抑制することができ、電池の性能劣化を抑えるとともに安全性を確保することができる。また、炭酸リチウム量が多くなると、電解液と正極活物質のLiイオンの伝導が阻害されるため、正極活物質の反応抵抗の増加や充電容量の低下という問題が生じる。
一方、上記リチウムニッケル複合酸化物粒子は、リチウムの過剰な溶出による表面の劣化層が非常に少ないため、高い電池特性が得られる。すなわち、前記表面の劣化層は、高抵抗であり、正極抵抗を増加させる一因となっているため、劣化層を低減することで正極抵抗を下げ、出力特性を向上させるとともに、高い電池容量も得られる。
タングステン量が0.1原子%未満では、出力特性の改善効果が十分に得られない場合があり、タングステン量が3.0原子%を超えると、形成される上記LiW化合物が多くなり過ぎてリチウムニッケル複合酸化物と電解液のリチウム伝導が阻害され、充放電容量が低下することがある。
そのLi/Meが0.95未満であると、得られた正極活物質を用いた非水系電解質二次電池における正極の反応抵抗が大きくなるため、電池の出力が低くなってしまう。また、Li/Meが1.20を超えると、正極活物質の初期放電容量が低下するとともに、正極の反応抵抗も増加してしまう。上記LiW化合物に含まれるリチウム分は、母材となるリチウムニッケル複合酸化物粒子から供給されるため、前記LiW化合物の形成前後において正極活物質全体のリチウム量は変化しない。ここで、母材は、LiW化合物を形成させる前の原料として用いられるリチウムニッケル複合酸化物粒子であり、芯材は、その一次粒子表面にLiW化合物を形成させたリチウムニッケル複合酸化物粒子をいう。
したがって、正極活物質全体のリチウム量は、0.97〜1.15であることがより好ましい。
コバルト含有量が上記範囲であることにより、優れたサイクル特性、熱安定性が得られる。このコバルト含有量が増えることによって正極活物質のサイクル特性を改善することができるが、正極活物質の高容量化の観点から、コバルト含有量は0.2以下とすることが好ましい。
yが0.35を超えると、正極活物質の高容量化が困難となる。電池特性の改善する効果を得る場合、Mを添加することが好ましく、電池特性の改善効果を十分に得るためには、yを0.01以上とすることがより好ましい。
また、リチウムニッケル複合酸化物粒子の二次粒子の表面および一次粒子表面に、LiW化合物を設けることによる効果は、たとえば、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物などの粉末、さらに本発明で掲げた正極活物質だけでなく一般的に使用されるリチウム二次電池用正極活物質にも適用できる。
以下、本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法を工程ごとに詳細に説明する。
混合工程は、母材であるリチウムニッケル複合酸化物粒子にタングステン化合物粉末を混合して、リチウムニッケル複合酸化物粒子とタングステン化合物粒子のタングステン混合物(以下、単に混合物という。)を得る工程である。
複合酸化物粒子にリチウムを含有しないタングステン化合物粉末を混合することで、次の熱処理工程おいて母材の複合酸化物粒子の一次粒子表面に存在するタングステンを含有しないリチウムを含む化合物と前記タングステン化合物粒子を反応させることができる。すなわち、後述するように一次粒子表面に存在するタングステンを含有しないリチウムを含む化合物とリチウムを含有しないタングステン化合物を反応させて一次粒子表面に分散させ、さらに熱を加えることでLiW化合物を一次粒子表面に形成させる。
さらに、混合前の複合酸化物粒子は、焼成した状態のままであることが好ましい。焼成状態の複合酸化物粒子を用いることで、タングステン化合物と反応する十分な量の一次粒子表面に存在するリチウム化合物を確保することができ、タングステン化合物と反応することにより複合酸化物粒子から引き抜かれるリチウムを低減して、一次粒子表面の劣化層の形成を抑制することができる。
これにより、正極活物質中におけるLiW化合物に含まれるタングステン量を好ましい範囲とすることができ、正極活物質の高い充放電容量と出力特性をさらに両立することができる。
熱処理工程は、タングステン混合物を熱処理する工程であり、さらにリチウムニッケル複合酸化物粒子の一次粒子表面に存在するタングステンを含有しないリチウム化合物とタングステン化合物粒子を反応させて一次粒子表面に分散させ、一次粒子表面にリチウムタングステン化合物を形成させるものである。
熱処理工程において、タングステン混合物を加熱することで、二次粒子の表面に残存しているリチウム化合物がタングステン化合物粒子と反応する。一次粒子表面に残存しているリチウム化合物中には水酸化リチウムが含まれるため、タングステン化合物と反応する際に水が生成され、生成した水とともにタングステンとリチウムが、少なくとも二次粒子の表面近傍の一次粒子表面まで浸透して分散し、リチウム化合物とタングステン化合物の反応が継続される。さらに加熱を続けると、水は蒸発してLiW化合物が形成される。このLiW化合物の形成により、電池特性を向上させることができる。また、得られる正極活物質における余剰リチウムが大幅に低減され、電池特性をより向上させることができる。
100℃未満では、LiW化合物が十分に形成されないことがある。一方、600℃より高い場合は、複合酸化物粒子内からのリチウムの溶出が加速し過ぎる、あるいは複合酸化物内部にてカチオンミキシングにより複合酸化物自体の構造が崩れることにより、十分な電池特性が得られないことがある。
一方、熱処理温度が60℃未満では、リチウムニッケル複合酸化物の一次粒子表面に存在するリチウム化合物とタングステン化合物の反応が十分に起こらないことがある。また、80℃より高い場合は、水分の蒸発が早過ぎるため、一次粒子表面へのタングステンの分散が十分に進まないことがある。
第1熱処理工程の加熱時間は、特に限定されないが、リチウム化合物とタングステン化合物が反応し、タングステンを十分に分散させるため、0.5〜2時間とすることが好ましい。
第2熱処理工程の熱処理時間は、特に限定されないが、水分を十分に蒸発させてLiW化合物を形成させるために1〜15時間とすることが好ましく、5〜12時間とすることが好ましい。
ここで、脱炭酸空気について説明する。通常の大気は若干量の炭酸ガス(CO2)を含むが、本発明の脱炭酸空気は、この炭酸ガスの含有量を、通常の大気以下の10ppm以下に脱炭酸処理したものである。
本発明の非水系電解質二次電池は、正極、負極及び非水系電解液などからなり、一般の非水系電解質二次電池と同様の構成要素により構成される。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本発明の非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
先に述べた非水系電解質二次電池用正極活物質を用い、例えば、以下のようにして、非水系電解質二次電池の正極を作製する。
まず、粉末状の正極活物質、導電材、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。
その正極合材ペースト中のそれぞれの混合比も、非水系電解質二次電池の性能を決定する重要な要素となる。溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60〜95質量部とし、導電材の含有量を1〜20質量部とし、結着剤の含有量を1〜20質量部とすることが好ましい。
シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等をして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
負極には、金属リチウムやリチウム合金等、あるいは、リチウムイオンを吸蔵及び脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。
セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
使用する有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤及び難燃剤等を含んでいてもよい。
以上、説明した正極、負極、セパレータ及び非水系電解液で構成される本発明の非水系電解質二次電池の形状は、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。
いずれの形状を採る場合であっても、正極及び負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通じる正極端子との間、及び、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。
本発明の正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、高容量で高出力となる。
特に、より好ましい形態で得られた本発明による正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、例えば、2032型コイン電池の正極に用いた場合、165mAh/g以上の高い初期放電容量と低い正極抵抗が得られ、さらに高容量で高出力である。また、熱安定性が高く、安全性においても優れているといえる。
電気化学的評価手法として一般的な交流インピーダンス法にて電池反応の周波数依存性について測定を行うと、溶液抵抗、負極抵抗と負極容量、及び正極抵抗と正極容量に基づくナイキスト線図が図1のように得られる。
電極における電池反応は、電荷移動に伴う抵抗成分と電気二重層による容量成分とからなり、これらを電気回路で表すと抵抗と容量の並列回路となり、電池全体としては溶液抵抗と負極、正極の並列回路を直列に接続した等価回路で表される。
正極抵抗は、得られるナイキスト線図の低周波数側の半円の直径と等しい。
以上のことから、作製される正極について、交流インピーダンス測定を行い、得られたナイキスト線図に対し等価回路でフィッティング計算することで、正極抵抗を見積もることができる。
以下、本発明の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
得られた非水系電解質二次電池用正極活物質の評価は、以下のように電池を作製し、充放電容量を測定することで行なった。
非水系電解質二次電池用正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形して図2に示す正極1(評価用電極)を作製した。その作製した正極1を真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。そして、この正極1を用いて2032型のコイン型電池Bを、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
Li金属負極2には、直径14mmの円盤状に打ち抜かれた平均粒径20μm程度の黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンが銅箔に塗布された負極シートを用い、電解液には、1MのLiPF6を支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の3:7混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。セパレータ3には膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。また、コイン型電池Bは、ガスケット4とウェーブワッシャー5を有し、正極缶6と負極缶7とでコイン状の電池に組み立てられた。
製造したコイン型電池Bの性能を示す初期放電容量、正極抵抗は、以下のように評価した。
充放電容量の測定には,マルチチャンネル電圧/電流発生器(株式会社富士通アクセス製)を用いた。
このナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、及び、正極抵抗とその容量を示す特性曲線の和として表しているため、このナイキストプロットに基づき等価回路を用いてフィッティング計算を行い、正極抵抗の値を算出した。
150gの母材に、リチウムニッケル複合酸化物に含まれるNi、Co及びAlの原子数の合計に対してW量が0.30原子%となるように酸化タングステン(WO3)を1.08g添加し、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて十分に混合し、混合粉末を得た。
得られた正極活物質のタングステン含有量をICP法により分析したところ、タングステン含有量はNi、Co及びAlの原子数の合計に対して0.30原子%であることが確認された。
得られた正極活物質1gに純水10mlを加えて1分間攪拌後、固液分離して液中に溶出したLiをICP法により分析することで求めた。全リチウム量は、正極活物質の全量に対して0.09質量%であった。
得られた正極活物質の余剰リチウムを、正極活物質から溶出してくるLiを滴定することにより評価した。得られた正極活物質1gに純水10mlを加えて1分間攪拌後、ろ過したろ液のpHを測定しながら塩酸を加えていくことにより出現する中和点から溶出するリチウムの化合物状態を分析して余剰リチウム量を評価したところ、余剰リチウム量は、正極活物質の全量に対して0.02質量%であった。
得られた正極活物質の表面に存在する炭酸リチウム量を、炭素硫黄分析装置(LECO社製CS−600)で全炭素元素(C)含有量を測定し、この測定された全炭素元素の量を炭酸リチウム(Li2CO3)に換算することにより求め、得られた炭酸リチウム量から炭酸リチウム中のLi量を算出した。得られた正極活物質の表面に存在する炭酸リチウム中のLi量は、正極活物質の質量に対して、0.012質量%であった。
得られた正極活物質を、樹脂に埋め込み、断面観察が可能なように加工を行ったものについて、倍率を5000倍としたSEMによる断面観察を行ったところ、一次粒子および一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなり、その一次粒子表面にリチウムとタングステンを含む化合物の微粒子が形成されていることが確認され、微粒子の粒子径は20〜170nmであった。また、得られた正極活物質を樹脂に埋め込み、透過型電子顕微鏡(TEM)による二次粒子の断面観察が可能な状態とした後、一次粒子の表面付近をTEMにより観察したところ、一次粒子の表面に膜厚2〜90nmのリチウムとタングステンを含む化合物の薄膜による被覆が形成され、その化合物はタングステン酸リチウムであることを確認した。
得られた正極活物質を使用して作製された正極を有する図2に示すコイン型電池Bの電池特性を評価した。なお、サイクル試験前の正極抵抗は実施例1を「1.00」とした相対値を評価値とした。
初期放電容量は、214mAh/gであった。
以下、実施例及び比較例については、実施例1と変更した物質、条件のみを示す。また、実施例1の初期放電容量、正極抵抗及びサイクル特性の評価値を合わせて表1に示す。
その結果を表1に示す。
その結果を表1に示す。
その結果を表1に示す。
実施例1で用いた母材をそのまま正極活物質として評価を行った。
その結果を表1に示す。
熱処理温度を60℃としたこと、リチウムニッケル複合酸化物に含まれるNi、Co及びAlの原子数の合計に対してW量が0.15原子%となるように酸化タングステン(WO3)を0.54g添加したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行った。
その結果を表1に示す。
リチウムニッケル複合酸化物に含まれるNi、Co及びAlの原子数の合計に対してW量が0.15原子%となるように、タングステン酸リチウム(LWO:Li2WO4)を添加したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価を行った。
その結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜4の正極活物質は、本発明に従って製造されたため、比較例に比べて初期放電容量が高く、正極抵抗も低いものとなっており、また、サイクル特性も良好であって、優れた特性を有した電池となっている。
また、図3に本発明の実施例で得られた正極活物質の断面SEM観察結果の一例を示すが、得られた正極活物質は一次粒子及び一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなり、一次粒子表面にLiW化合物が形成されていることが確認された。LiW化合物が確認された位置を図3において黒矢印で示す。
また、比較例2は、熱処理温度が低いことでリチウム化合物とタングステン化合物の反応が十分でなく、正極活物質の一次粒子表面に均一にタングステン酸リチウムが存在していないことで正極抵抗を低くする効果が小さく、高出力化の要求に対応することは困難である。
また、比較例3は、タングステン酸リチウムを添加したため、リチウムニッケル複合酸化物の一次粒子表面に存在するリチウム化合物とタングステン化合物の反応が十分に起こらず、電池特性が十分に改善されていない。
2 Li金属負極
3 セパレータ
4 ガスケット
5 ウェーブワッシャー
6 正極缶
7 負極缶
B コイン型電池
Claims (11)
- 一般式:LizNi1−x−yCoxMyO2(ただし、0.00≦x≦0.35、0.00≦y≦0.35、0.95≦z≦1.20、MはMn、V、Mg、Mo、Nb、Ti及びAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される一次粒子及び一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなるリチウムニッケル複合酸化物粒子と、リチウムを含有しないタングステン化合物粉末を混合してリチウムニッケル複合酸化物粒子とタングステン化合物粒子を含むタングステン混合物を得る混合工程と、
前記タングステン混合物を熱処理して一次粒子表面にタングステンを分散させ、一次粒子表面にタングステンおよびリチウムを含む化合物を設けたリチウムニッケル複合酸化物粒子を形成する熱処理工程を有することを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。 - 前記熱処理工程における熱処理温度が、100〜600℃であることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記熱処理工程が、
前記タングステン混合物を熱処理することにより、リチウムニッケル複合酸化物粒子の一次粒子表面に存在するリチウム化合物とタングステン化合物粒子を反応させ、一次粒子表面にタングステンを分散させたリチウムニッケル複合酸化物粒子を形成する第1熱処理工程と、
前記第1熱処理工程の次に行う前記第1熱処理工程より高い温度で熱処理することにより、前記リチウムニッケル複合酸化物粒子の一次粒子表面にタングステンおよびリチウムを含む化合物を設けたリチウムニッケル複合酸化物粒子を形成する第2熱処理工程と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。 - 前記混合工程に用いるリチウムを含有しないタングステン化合物が、酸化タングステン(WO3)またはタングステン酸(WO3・H2O)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記タングステンおよびリチウムを含む化合物が、タングステン酸リチウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記タングステン混合物に含まれるタングステン量が、前記リチウムニッケル複合酸化物粒子に含まれるNi、Co及びMの原子数の合計に対して、0.05〜3.0原子%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記熱処理工程における雰囲気が、脱炭酸空気、不活性ガス、真空のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 一般式:LizNi1−x−yCoxMyO2(ただし、0.00≦x≦0.35、0.00≦y≦0.35、0.95≦z≦1.20、MはMn、V、Mg、Mo、Nb、Ti及びAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される一次粒子および一次粒子が凝集した二次粒子からなるリチウムニッケル複合酸化物粒子から構成された非水系電解質二次電池用正極活物質であって、
前記リチウムニッケル複合酸化物粒子の一次粒子表面にタングステンおよびリチウムを含む化合物を有し、
前記リチウムニッケル複合酸化物粒子の一次粒子表面に存在する、リチウムを含む全ての化合物に含有されるリチウム量が、正極活物質の全量に対して0.05〜0.35質量%、タングステンおよびリチウムを含む化合物以外のリチウムを含む化合物に含有されるリチウム量が、正極活物質の全量に対して0.05質量%以下、前記リチウムを含む化合物における炭酸リチウムに含まれるリチウム量が、正極活物質の全量に対して0.03質量%以下であることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質。 - 前記正極活物質に含まれるタングステン量が、前記リチウムニッケル複合酸化物粒子に含まれるNi、Co及びMの原子数の合計に対して0.05〜3.0原子%であることを特徴とする請求項8に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
- 前記タングステンおよびリチウムを含む化合物が、タングステン酸リチウムであることを特徴とする請求項8又は9に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
- 請求項8〜10のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質を含む正極を有することを特徴とする非水系電解質二次電池。
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