JP5772626B2 - 非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および該正極活物質を用いた非水系電解質二次電池 - Google Patents
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Description
このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。このリチウムイオン二次電池は、負極および正極と電解液等で構成され、負極および正極の活物質は、リチウムを脱離および挿入することの可能な材料が用いられている。
このリチウムイオン二次電池は、現在研究、開発が盛んに行われているところであるが、中でも、層状またはスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
このうちリチウムニッケル複合酸化物およびリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、サイクル特性が良く、低抵抗で高出力が得られる材料として注目されており、近年では高出力化に必要な低抵抗化が重要視されている。
例えば、特許文献1には、Mo、W、Nb、Ta及びReから選ばれる1種以上の元素が、Mn、Ni及びCoの合計モル量に対して0.1〜5モル%含有されているリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体が提案され、一次粒子の表面部分のLi並びにMo、W、Nb、Ta及びRe以外の金属元素の合計に対するMo、W、Nb、Ta及びReの合計の原子比が、一次粒子全体の該原子比の5倍以上であることが好ましいとされている。
しかしながら、モリブデン、バナジウム、タングステン、ホウ素およびフッ素からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素による効果は、初期特性、すなわち初期放電容量および初期効率の向上にあるとされ、出力特性に言及したものではない。また、開示されている製造方法によれば、添加元素をリチウム化合物と同時に熱処理した水酸化物と混合して焼成するため、添加元素の一部が層状に配置されているニッケルと置換してしまい電池特性の低下を招く問題があった。
このような被覆により、酸素ガスを吸収させ安全性を確保できるとしているが、出力特性に関しては全く開示されていない。また、開示されている製造方法は、遊星ボールミルを用いて被覆するものであり、このような被覆方法では、正極活物質に物理的なダメージを与えてしまい、電池特性が低下してしまう。
この提案によれば、正極活物質の表面にタングステン酸化合物またはタングステン酸化合物の分解物が存在し、充電状態における複合酸化物粒子表面の酸化活性を抑制するため、非水電解液等の分解によるガス発生を抑制することができるとしているが、出力特性に関しては全く開示されていない。
この提案によれば、高い初期放電容量を大きく劣化させずに、従来提案されている正極活物質より熱的な安定性が良好なリチウム二次電池用正極活物質を提供できるとしているが、出力特性に関しては全く開示されていない。
さらに、開示されている製造方法は、リチウム複合酸化物粉末と、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とLiとを含む複合酸化物との混合物を、約650〜約950℃の温度で熱処理するものであり、固体同士の混合であるため、均一に添加元素をリチウム複合酸化物粉表面に分散させることが困難である。
この提案は、初期容量の低下を最小限に抑制でき、かつ高温度での充放電サイクルの進行に伴う容量の低下を効果的に抑制することを目的としたものであり、出力特性に関しては全く開示されていない。さらに、開示されている製造方法は、溶液と活物質本体粉末を混合するものであるが、活物質から溶媒中へのリチウムの溶出による電池特性の劣化については全く考慮されていない。
前記タングステン酸リチウムまたはその水和物は、タングステン酸リチウムの形態が、Li 2 WO 4 、Li 4 WO 5 、Li 6 WO 6 、Li 2 W 4 O 13 、Li 2 W 2 O 7 、Li 6 W 2 O 9 、Li 2 W 2 O 7 、Li 2 W 5 O 16 、Li 9 W 19 O 55 、Li 3 W 10 O 30 、Li 18 W 5 O 15 、またはこれらの水和物から選択される少なくとも1種の形態であることを特徴とするものである。
さらに、その製造方法は、容易で工業的規模での生産に適したものであり、その工業的価値は極めて大きい。
(1)正極活物質
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質は、一般式LizNi1−x−yCoxMyO2(ただし、0.10≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0.97≦z≦1.20、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される一次粒子および、その一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物粉末の一次粒子の表面に、層状あるいは島状のタングステン酸リチウムあるいはその水和物を有することを特徴とするものである。
対して、本発明においては、リチウム金属複合酸化物粉末の一次粒子の表面にタングステン酸リチウムあるいはその水和物(以下、表面形成物と記載することがある)を形成させているが、この表面形成物は、リチウムイオン伝導率が高く、リチウムイオンの移動を促す効果がある。このため、リチウム金属複合酸化物粉末の一次粒子の表面に上記化合物を島状あるいは極めて薄い層状に形成させることで、電解液との界面でリチウムイオンの伝導パスを確保し、活物質の反応抵抗を低減して出力特性を向上させるものである。
粒子径が1nm未満では、表面形成物が十分なリチウムイオン伝導度を有しない場合がある。また、粒子径が100nmを超えると、表面形成物による被覆率が低下し、反応抵抗の低減効果が十分に得られない場合があるためである。
層状に形成させる場合は、層厚が1nm未満では十分なリチウムイオン伝導度を有しない場合があり、30nmを超えると粒子全体の比表面積を低下させてしまい、電解液との反応面積が十分に取れずに特性が低下することがある。
表面形成物が、このような形状をなすことで、高容量を維持しながら活物質の反応抵抗を低減して十分に出力特性を向上させることができる。
ここで、本発明における一次粒子表面とは、二次粒子の外面で露出している一次粒子表面と二次粒子外部と通じて電解液が浸透可能な二次粒子の表面近傍および内部の空隙に露出している一次粒子表面を含むものである。さらに、一次粒子間の粒界であっても一次粒子の結合が不完全で電解液が浸透可能な状態となっていれば含まれるものである。
一方、リチウム金属複合酸化物粉末間で不均一にタングステン酸リチウムあるいはその水和物が形成された場合は、リチウム金属複合酸化物粉末間でのリチウムイオンの移動が不均一となるため、特定のリチウム金属複合酸化物粉末に負荷がかかり、サイクル特性の悪化や反応抵抗の上昇を招きやすい。したがって、リチウム金属複合酸化物粉末間においても均一にタングステン酸リチウムあるいはその水和物が形成されていることが好ましい。
タングステン量が0.1原子%未満では、出力特性の改善効果が十分に得られない場合があり、タングステン量が3.0原子%を超えると、形成される上記タングステン酸リチウムあるいはその水和物が多くなり過ぎてリチウム金属複合酸化物と電解液のリチウム伝導が阻害され、充放電容量が低下することがある。
リチウム金属複合酸化物粉末の一次粒子表面に、タングステン酸リチウムあるいはその水和物を形成させることによる効果は、たとえば、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物などの粉末、さらに本発明で掲げた正極活物質だけでなく一般的に使用されるリチウム二次電池用正極活物質にも適用できる。
以下、本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法を工程ごとに詳細に説明する。
[第1工程]
第1工程は、一次粒子および一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物粉末にタングステン酸化合物溶液を添加して混合する工程である。
この工程により、電解液と接触可能なリチウム金属複合酸化物粉末の一次粒子表面に、タングステン酸化合物をリチウム金属複合酸化物粉末間で均一に分散させることができる。
用いるタングステン酸化合物溶液は、水溶性タングステン酸化合物の水溶液であることが好ましく、メタタングステン酸アンモニウム水溶液、パラタングステン酸アンモニウム水溶液、タングステン酸アンモニウム水溶液、リンタングステン酸水溶液から選択される少なくとも1種であることがより好ましいが、メタタングステン酸アンモニウム水溶液が特に好ましい。
また、タングステン酸化合物溶液のタングステン濃度は、0.05〜4mol/Lであることが好ましい。0.05mol/L未満では、タングステン濃度が低く溶液が大量に必要となるため、リチウム金属複合酸化物と混合する際にスラリー化してしまう。スラリー化することによりリチウム金属複合酸化物の結晶構造中に含まれるLiが溶出してしまい、そのため、電池特性の低下を招いてしまうため好ましくない。一方、タングステン濃度が4mol/Lを超えると、溶液が少なく、上記一次粒子表面にタングステン酸化合物を均一に分散できないことがある。
一方、タングステン酸化合物溶液が150mlを超えると、溶液量が多くなりすぎリチウム金属複合酸化物と混合する際にスラリー化してしまう。スラリー化することによりリチウム金属複合酸化物の層状格子に含まれるLiが溶出してしまい、そのため、電池特性の低下を招く。そこで、タングステン酸化合物溶液をリチウム金属複合酸化物粉末100gに対して0.5〜150mlとすることで、上記層状格子に含まれるLiの溶出を抑制するとともに上記一次粒子表面にタングステン酸化合物を均一に分散させることができる。
また、電解液との接触面積を多くすることが、出力特性の向上に有利であることから、一次粒子および一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなり、二次粒子に電解液の浸透可能な空隙および粒界を有するリチウム金属複合酸化物粉末を用いることが好ましい。
この水洗は、公知の方法および条件でよく、リチウム金属複合酸化物粉体から過度にリチウムが溶出して電池特性が劣化しない範囲で行えばよい。水洗した場合には、乾燥させてからタングステン酸化合物溶液と混合しても、固液分離のみで乾燥せずにタングステン酸化合物溶液と混合しても、いずれの方法でもよいが、固液分離のみの場合は、上記スラリー化によるLiの溶出が抑制できるようにタングステン酸化合物溶液量を調製する必要がある。
第2工程は、タングステン酸化合物溶液を表面に分散させたリチウム金属複合酸化物粉体を熱処理する工程である。
これにより、タングステン酸化合物溶液より供給されたタングステン酸化合物とリチウム金属複合酸化物に含まれるリチウムイオンの反応が促進されてリチウム金属複合酸化物粉末の一次粒子表面に上記表面形成物を形成させることができる。また、熱処理直後の表面形成物は、タングステン酸リチウムであるが、その後の水分吸着により、水和物を含むものとなることがある。
熱処理温度が100℃未満では、水分の蒸発が十分ではなく、上記表面形成物が十分に形成されない場合がある。一方、熱処理温度が900℃を超えると、リチウム金属複合酸化物の一次粒子が焼結を起こすとともにタングステンイオンが過度にリチウム金属複合酸化物の層状構造に固溶してしまうために、電池の充放電容量が低下することがある。
熱処理時の雰囲気は、雰囲気中の水分や炭酸との反応を避けるため、酸素雰囲気などのような酸化性雰囲気あるいは真空雰囲気とすることが好ましい。
熱処理時間は、特に限定されないが、溶液の水分を十分に蒸発させて上記表面形成物を形成するために5〜15時間とすることが好ましい。
本発明の非水系電解質二次電池は、正極、負極および非水系電解液などからなり、一般の非水系電解質二次電池と同様の構成要素により構成される。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本発明の非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
先に述べた非水系電解質二次電池用正極活物質を用いて、例えば、以下のようにして、非水系電解質二次電池の正極を作製する。
まず、粉末状の正極活物質、導電材、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。
その正極合材ペースト中のそれぞれの混合比も、非水系電解質二次電池の性能を決定する重要な要素となる。溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60〜95質量部とし、導電材の含有量を1〜20質量部とし、結着剤の含有量を1〜20質量部とすることが望ましい。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
なお、必要に応じ、正極活物質、導電材、活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加する。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
負極には、金属リチウムやリチウム合金等、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2等、およびそれらの複合塩を用いることができる。
さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤等を含んでいてもよい。
以上のように説明してきた正極、負極、セパレータおよび非水系電解液で構成される本発明の非水系電解質二次電池の形状は、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。
いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。
本発明の正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、高容量で高出力となる。
特により好ましい形態で得られた本発明による正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、例えば、2032型コイン電池の正極に用いた場合、165mAh/g以上の高い初期放電容量と低い正極抵抗が得られ、さらに高容量で高出力である。また、熱安定性が高く、安全性においても優れているといえる。
電極における電池反応は、電荷移動に伴う抵抗成分と電気二重層による容量成分とからなり、これらを電気回路で表すと抵抗と容量の並列回路となり、電池全体としては溶液抵抗と負極、正極の並列回路を直列に接続した等価回路で表される。この等価回路を用いて測定したナイキスト線図に対してフィッティング計算を行い、各抵抗成分、容量成分を見積もることができる。正極抵抗は、得られるナイキスト線図の低周波数側の半円の直径と等しい。
以下、本発明の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
正極活物質の評価には、図3に示す2032型コイン電池1(以下、コイン型電池と称す)を使用した。
図3に示すように、コイン型電池1は、ケース2と、このケース2内に収容された電極3とから構成されている。
ケース2は、中空かつ一端が開口された正極缶2aと、この正極缶2aの開口部に配置される負極缶2bとを有しており、負極缶2bを正極缶2aの開口部に配置すると、負極缶2bと正極缶2aとの間に電極3を収容する空間が形成されるように構成されている。
電極3は、正極3a、セパレータ3cおよび負極3bとからなり、この順で並ぶように積層されており、正極3aが正極缶2aの内面に接触し、負極3bが負極缶2bの内面に接触するようにケース2に収容されている。
まず、非水系電解質二次電池用正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形して、正極3aを作製した。作製した正極3aを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。
なお、負極3bには、直径14mmの円盤状に打ち抜かれた平均粒径20μm程度の黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンが銅箔に塗布された負極シートを用いた。
セパレータ3cには膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。電解液には、1MのLiClO4を支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
初期放電容量は、コイン型電池1を製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2としてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。
なお、本実施例では、複合水酸化物製造、正極活物質および二次電池の作製には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の各試料を使用した。
得られた混合物を、マグネシア製焼成容器に入れ、真空雰囲気において、200℃で14時間熱処理し、その後室温まで炉冷した。
最後に目開き38μmの篩にかけ解砕することにより、一次粒子表面にタングステン酸リチウムを有する正極活物質を作製した。
次に、実施例1の正極活物質を使用した正極を有する図3に示すコイン型電池1を作製し、その電池特性を評価した。なお、正極抵抗は実施例1を100とした相対値を評価値とした。初期放電容量は191.2mAh/gであった。
以下、実施例2〜11および比較例1については、上記実施例1と変更した物質、条件のみを示す。また、実施例1〜11および比較例1の初期放電容量および正極抵抗の評価値を表1に示す。
実施例1で母材として用いたリチウム金属複合酸化物を比較例1として、タングステン酸リチウムを形成せずに用いて、その電池特性の評価を行った。その結果を表1に示す。
特許文献4に開示される実施例と同様の方法を用いて、硫酸ニッケルと硫酸コバルトとアルミン酸ナトリウムとを水中に溶解し、さらに十分に攪拌させながら水酸化ナトリウム溶液を加えて、NiとCoとAlとのモル比がNi:Co:Al=77:20:3となるようにして生成したニッケル−コバルト−アルミニウム複合共沈水酸化物の共沈物を水洗、乾燥させた後、水酸化リチウム一水和塩を加え、モル比がLi:(Ni+Co+Al)=105:100となるように調整して前駆体を作製した。
この複合酸化物粒子100重量部に、パラタングステン酸アンモニウム((NH4)10W12O41・5H2O)を、1.632重量部を加え、乳鉢で十分混合した混合物を、酸素気流中、700℃で4時間焼成して室温まで冷却した後、取り出して粉砕し、従来例の正極活物質を作製した。
表1から明らかなように、実施例1〜11の複合水酸化物粒子および正極活物質は、本発明に従って製造されたため、従来例に比べて初期放電容量が高く、正極抵抗も低いものとなっており、優れた特性を有した電池となっている。
特に、添加したタングステン量、タングステン酸化合物溶液のタングステン濃度、熱処理温度を好ましい条件で実施した実施例1〜8は、初期放電容量と正極抵抗がさら良好であり、非水系電解質二次電池用正極活物質として一層好適なものとなっている。
実施例10では、添加量は本発明の範囲であるが、メタタングステン酸アンモニウム溶液濃度が低くいため、用いた液量が多く、リチウム金属複合酸化物中のリチウムが溶出したと考えられ、実施例1〜8と比較すると正極抵抗が高くなっている。
また、実施例11では、タングステン酸化合物溶液とリチウム金属複合酸化物の混合後の熱処理温度が900℃と高いため、正極活物質の層状構造のニッケルサイトにタングステンが固溶したと考えられ、初期放電容量、正極抵抗が実施例1〜8より低下している。
従来例は、固体のタングステン化合物と混合したため、Wの分散が十分でないことと微粒子中へのLiの供給がないため、正極抵抗が大幅に高い結果となった。
2 ケース
2a 正極缶
2b 負極缶
2c ガスケット
3 電極
3a 正極
3b 負極
3c セパレータ
Claims (10)
- 一般式LizNi1−x−yCoxMyO2(ただし、0.10≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0.97≦z≦1.20、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される一次粒子および前記一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物粉末に、前記リチウム金属複合酸化物粉末100gに対して0.5〜150mlのタングステン酸化合物水溶液を添加し、混合することにより、前記リチウム金属複合酸化物粉体の二次粒子の外面で露出している一次粒子の表面と二次粒子外部と通じて電解液が浸透可能な二次粒子の表面近傍および内部の空隙に露出している一次粒子の表面にタングステン酸化合物を分散させる第1工程と、
前記タングステン酸化合物を分散させたリチウム金属複合酸化物粉体を、熱処理することによりタングステン酸リチウムを前記リチウム金属複合酸化物粉体の一次粒子の表面に結晶成長させ形成する第2工程を有することを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。 - 前記第1工程を行う前に、前記リチウム金属複合酸化物粉体を水洗する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記タングステン酸化合物溶液に含まれるタングステン量が、混合するリチウム金属複合酸化物粉体に含まれるNi、CoおよびMの原子数の合計に対して、0.1〜3.0mol%とすることを特徴とする請求項1または2に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記タングステン酸化合物溶液中のタングステン濃度が、0.05〜4mol/Lであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記タングステン酸化合物溶液が、水溶性タングステン酸化合物の水溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記水溶性タングステン酸化合物の水溶液が、メタタングステン酸アンモニウム水溶液、パラタングステン酸アンモニウム水溶液、タングステン酸アンモニウム水溶液、リンタングステン酸水溶液から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記第2工程における熱処理が、酸素雰囲気あるいは真空雰囲気中での100〜900℃の熱処理温度で行うものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 一般式LizNi1−x−yCoxMyO2(ただし、0.10≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0.97≦z≦1.20、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される一次粒子および前記一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物であって、
前記リチウム金属複合酸化物の二次粒子の外面で露出している一次粒子の表面と二次粒子外部と通じて電解液が浸透可能な二次粒子の表面近傍および内部の空隙に露出している一次粒子の表面に、層状あるいは島状のタングステン酸リチウムあるいはその水和物を有し、
前記タングステン酸リチウムあるいはその水和物は、Li 2 WO 4 、Li 4 WO 5 、Li 6 WO 6 、Li 2 W 4 O 13 、Li 2 W 2 O 7 、Li 6 W 2 O 9 、Li 2 W 2 O 7 、Li 2 W 5 O 16 、Li 9 W 19 O 55 、Li 3 W 10 O 30 、Li 18 W 5 O 15 またはこれらの水和物から選択される少なくとも1種の形態である
ことを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質。 - 前記タングステン酸リチウム中に含有されるタングステン量が、リチウム金属複合酸化物に含まれるNi、CoおよびMの原子数の合計に対してWの原子数が0.1〜3.0mol%であることを特徴とする請求項8に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
- 請求項8または9に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質を含む正極を有することを特徴とする非水系電解質二次電池。
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