JP6998107B2 - 非水系電解質二次電池用正極材料、正極合材、およびそれぞれを用いた非水系電解質二次電池 - Google Patents
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Description
このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。
このようなリチウムイオン二次電池については、現在研究、開発が盛んに行われているところであるが、中でも、層状またはスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
このうちリチウムニッケル複合酸化物、及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、サイクル特性が良く、低抵抗で高出力が得られ電池特性に優れた材料として注目され、近年、さらには高出力化に必要な低抵抗化が重要視されている。
例えば、特許文献1には、非水系電解質二次電池の正極材として、リチウム金属複合酸化物粉末とタングステン酸リチウムを混合することで高容量、高出力をもたらすことができる正極材料が提案されている。また、特許文献2では、リチウム金属複合酸化物粉末と酸化タングステンを混合して同様の効果が得られるとある。
しかし、いずれもタングステン化合物を正極材中に均一に分散させることで効果を得るものであるが、混合量が増える場合には活物質表面にタングステン酸リチウムを均一に被覆することの不安定さが増す虞があり、リチウムイオン伝導性を安定して大きく向上させることが難しかった。
前記リチウム金属複合酸化物粉末とのぬれ性が良好なエタノール、前記リチウム金属複合酸化物粉末とのぬれ性が良好なメタノール、前記リチウム金属複合酸化物粉末とのぬれ性が良好なアセトニトリルから選択される少なくとも1種の有機溶剤を、前記リチウム金属複合酸化物粉末100g当たり、10~200mlの量と、平均粒径0.01~0.05μmの酸化タングステン、若しくは平均粒径0.01~0.05μmのタングステン酸リチウムのタングステン添加材料を混合することを特徴とする非水系電解質二次電池用正極材料の製造方法である。
本発明の非水系電解質二次電池用正極材料は、一般式LizNi1-x-yCoxMyO2(ただし、0.01≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0.97≦z≦1.20、Mは添加元素であり、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表され、一次粒子と、その一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物粉末と、粒径0.01~0.09μmの酸化タングステン若しくは粒径0.01~0.09μmのタングステン酸リチウムのタングステン添加材料の混合物であることを特徴とするものである。
本発明においては、母材となる正極活物質として上記一般式で表されるリチウム金属複合酸化物粉末を用いることにより、高い充放電容量が得られ、さらにリチウム金属複合酸化物粉末と、粒径0.01~0.09μmの酸化タングステン若しくは粒径0.01~0.09μmのタングステン酸リチウムのタングステン添加材料を混合することにより、充放電容量を維持しながら出力特性を向上させるものである。
一方で、リチウムイオン伝導率が高い化合物は、リチウムイオンの移動を促す効果があるため、正極活物質の表面をこのような化合物で被覆することで、逆に正極活物質の表面におけるインターカレーションの促進が可能であるが、被覆するためには熱処理等の後処理が必要であり、正極活物質が有する優れた電池特性の劣化を招く虞もある。
そこで、リチウムイオン伝導率が高い化合物を微粒子にして用い、正極活物質表面にその微粒子を存在させることで、熱処理による被覆の必要がなくなり、性能向上が可能であることを見出した。
しかし、タングステン添加材料の微粒子を正極活物質表面に被覆する際に、粒子の偏析が起こり易く、均一な被覆が得難く、効果の全てを発揮することは困難であった。
そこで、正極活物質粒子を被覆する際、もしくは被覆する前に正極活物質との濡れ性が高く、電池特性に悪影響を与えない有機溶剤であるエタノールなどを混合することで、タングステン添加材料微粒子の偏析が抑制され、より均一な被覆が可能であることを見出した。
このタングステン酸リチウムが、活物質の表面に微粒子として均一に存在することで、電解液若しくは正極活物質に作用して、電解液と正極活物質界面との間でリチウムの伝導パスが形成され、活物質の反応抵抗を低減して出力特性を向上させる。
したがって、活物質表面にタングステン酸リチウムの微粒子が均一に存在し、正極材料内において均一に粒径0.01~0.09μmの酸化タングステン若しくは粒径0.01~0.09μmのタングステン酸リチウムが分布されていることが好ましい。
その粒径が0.01μm未満では、粉砕コストがかかり過ぎることがあるため好ましくなく、粒子径が0.09μmを超えると、正極材料表面にタングステン酸リチウムを均一に付着させることができず、反応抵抗の低減効果が十分に得られない場合があり好ましくない。
この粒径は、レーザー回折散乱法、またはマイクロトラックにおける体積積算平均値を用いて測定した平均粒径を使用する。
なお、粒子径が上記範囲を超える場合には、混合前に粉砕することが好ましい。
これにより、高い充放電容量と出力特性を両立することができるが、タングステン量が0.1原子%未満では、活物質表面に均一に微粒子を設けることができずに、出力特性の改善効果が十分に得られない場合がある。一方タングステン量が3.0原子%を超えると、タングステン酸リチウムが多くなり過ぎてリチウム金属複合酸化物と電解液のリチウム伝導が阻害され、または、活物質の量が相対的に減少するため充放電容量が低下することがある。
タングステン酸リチウム中にLi4WO5が50%以上含まれることが特に好ましい。
これらのタングステン酸リチウムは、高いリチウムイオン伝導率を有するものであり、リチウム金属複合酸化物粉末と混合することで上記効果が十分に得られる。
Li/Meが0.97未満であると、上記正極材料を用いた非水系電解質二次電池における正極の反応抵抗が大きくなるため、電池の出力が低くなってしまう。また、Li/Meが1.20を超えると、正極材料の放電容量が低下するとともに、正極の反応抵抗も増加してしまう。そこで、より大きな放電容量を得るためには、Li/Meを1.10以下とすることが好ましい。
一方、Coの添加量を示すxが0.01未満になると、サイクル特性や熱安定性が十分に得られない。したがって、電池に用いたときに十分な電池容量を得るためには、添加元素Mの添加量を示すyを0.15以下とすることが好ましい。
リチウム金属複合酸化物粉末と、酸化タングステン若しくはタングステン酸リチウムを混合することにより得られる効果は、たとえば、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物など、本発明で掲げた正極活物質だけでなく一般的に使用されるリチウム二次電池用正極活物質にも適用できる。
本発明の非水系電解質二次電池用正極材料の製造方法においては、母材としての正極活物質として一般式LizNi1-x-yCoxMyO2(ただし、0.01≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0.97≦z≦1.20、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表され、一次粒子および前記一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物粉末と、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、アセトニトリルから選択される少なくとも1種の有機溶剤と、粒径0.01~0.09μmの酸化タングステン若しくは粒径0.01~0.09μmのタングステン酸リチウムのタングステン添加材料を混合する。混合後、溶剤を含む正極材料を乾燥させてもいいし、そのまま正極合材の製造に用いることもできる。乾燥は、公知の方法および条件でよく、リチウム金属複合酸化物の電池特性が劣化しない範囲で行えばよい。
その混合には、一般的な混合機を使用することができ、例えば、シェーカーミキサーやレーディゲミキサー、ジュリアミキサー、Vブレンダーなどを用いてリチウム金属複合酸化物粒子の形骸が破壊されない程度で、酸化タングステン若しくはタングステン酸リチウムとを十分に混合してやればよい。
これにより、酸化タングステン若しくはタングステン酸リチウムの微粒子を、リチウム金属複合酸化物粉末表面に均一に分布させることができる。
この水洗は、公知の方法および条件でよく、リチウム金属複合酸化物粉末から過度にリチウムが溶出して電池特性が劣化しない範囲で行えばよい。
水洗した場合には、乾燥してから酸化タングステン若しくはタングステン酸リチウムと混合しても、固液分離のみで乾燥せずに酸化タングステン若しくはタングステン酸リチウムと混合した後、乾燥しても、いずれの方法でもよい。
また乾燥は、公知の方法および条件でよく、リチウム金属複合酸化物の電池特性が劣化しない範囲で行えばよい。
本発明の非水系電解質二次電池は、正極、負極および非水系電解液などからなり、一般の非水系電解質二次電池と同様の構成要素により構成される。
なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本発明の非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
本発明による非水系電解質二次電池用正極材料を用いて、例えば、以下のようにして、非水系電解質二次電池の正極を作製する。
まず、粉末状の正極材料、導電材、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。尚、本発明の正極材料の製造方法であるリチウム金属複合酸化物粉末と、その粉末と濡れ性の良い有機溶剤と、酸化タングステン若しくはタングステン酸リチウムの微粉末を混合するのと同時に、導電材、結着剤、溶剤を添加し混練して正極合材のペースト(以下、正極合材ペーストと称す)を作製して用いることもできる。
ここで、正極合材ペースト中のそれぞれの混合比も、非水系電解質二次電池の性能を決定する重要な要素となる。
そのため、溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60~95質量部とし、導電材の含有量を1~20質量部とし、結着剤の含有量を1~20質量部とすることが望ましい。
このようにして、シート状の正極を作製することができる。
作製したシート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等をして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、前記例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
必要に応じ、正極活物質、導電材、活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加する。
使用する溶剤としては、具体的には、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
負極には、金属リチウムやリチウム合金等、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDF等の含フッ素樹脂等を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。
セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶剤に溶解したものである。
有機溶剤としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤等を含んでいてもよい。
以上のように説明してきた正極、負極、セパレータおよび非水系電解液で構成される本発明の非水系電解質二次電池の形状は、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。
いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。
本発明の正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、高容量で高出力となる。
特により好ましい形態で得られた正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、例えば、2032型コイン電池の正極に用いた場合、165mAh/g以上の高い初期放電容量と低い正極抵抗が得られ、さらに高容量で高出力である。また、熱安定性が高く、安全性においても優れているものである。
電気化学的評価手法として一般的な交流インピーダンス法にて電池反応の周波数依存性について測定を行うと、溶液抵抗、負極抵抗と負極容量、および正極抵抗と正極容量に基づくナイキスト線図が図1のように得られる。
この等価回路を用いて測定したナイキスト線図に対してフィッティング計算を行い、各抵抗成分、容量成分を見積もることができる。
以上のことから、作製される正極について、交流インピーダンス測定を行い、得られたナイキスト線図に対し等価回路でフィッティング計算することで、正極抵抗を見積もることができる。
以下、本発明の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
正極材料の評価には、図2に示す2032型コイン電池(以下、コイン型電池1という)を使用した。
図2に示すように、コイン型電池1は、ケース2と、このケース2内に収容された電極3とから構成されている。
ケース2は、中空かつ一端が開口された正極缶2aと、この正極缶2aの開口部に配置される負極缶2bとを有しており、負極缶2bを正極缶2aの開口部に配置すると、負極缶2bと正極缶2aとの間に電極3を収容する空間が形成されるように構成されている。
なお、ケース2はガスケット2cを備えており、このガスケット2cによって、正極缶2aと負極缶2bとの間が非接触の状態を維持するように相対的な移動が固定されている。また、ガスケット2cは、正極缶2aと負極缶2bとの隙間を密封してケース2内と外部との間を気密液密に遮断する機能も有している。
まず、非水系電解質二次電池用正極材料52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚み100μmにプレス成形して、正極3aを作製した。
次に作製した正極3aを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。
乾燥した正極3aと、負極3b、セパレータ3cおよび電解液とを用いて、図2のコイン型電池1を、露点が-80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
また、セパレータ3cには、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。
電解液は、1MのLiClO4を支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
初期放電容量は、コイン型電池1を製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(open circuit voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2としてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。
得られたナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および、正極抵抗とその容量を示す特性曲線の和として表しているため、このナイキストプロットに基づき等価回路を用いてフィッティング計算して、正極抵抗の値を算出した。
なお、本実施例では、複合水酸化物製造、正極活物質および二次電池の作製には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の各試料を使用した。
なお、組成はICP法により分析し、平均粒径はレーザー回折散乱法における体積積算平均値を用いて評価した。
この正極材料中のタングステン含有量をICP法により分析したところ、ニッケル、コバルトおよび添加元素Mの原子数の合計に対して1.5原子%の組成であることを確認した。
これより、タングステン酸リチウム粉末とリチウム金属複合酸化物粉末の混合物の配合と正極材料の組成が同等であることも確認した。
得られた正極材料を用いて形成された正極を有するコイン型電池1について、電池特性を評価した。
実施例1に5おける初期放電容量は196.4mAh/gであった。
実施例1で母材として用いたリチウム金属複合酸化物粉末を正極活物質(正極材料)に用いてコイン型電池を作成し、その電池評価を行った。
実施例1で母材としたリチウム金属複合酸化物粉末に粒径10μmのタングステン酸リチウムLi2WO4を添加した以外は、実施例1と同様にして作製した非水系電解質二次電池用正極材料を用いてコイン型電池を作製し、その電池評価を行った。
以上の実施例1~4、及び比較例1、2の測定結果を表1に纏めて示す。
なお、組成はICP法により分析し、平均粒径はレーザー回折散乱法における体積積算平均値を用いて評価した。
この正極材料中のタングステン含有量をICP法により分析したところ、ニッケル、コバルトおよび添加元素Mの原子数の合計に対して0.3原子%の組成であることを確認した。
これより、タングステン酸リチウム粉末とリチウム金属複合酸化物粉末の混合物の配合と正極材料の組成が同等であることも確認した。
得られた正極材料を用いて形成された正極を有するコイン型電池1について、電池特性を評価した。
実施例5における初期放電容量は196.0mAh/gであった。
以下、実施例6~9および比較例3についても、実施例5から変更した物質、条件のみを示す。
実施例5で母材としたリチウム金属複合酸化物粉末に、添加する有機溶剤としてN-メチル-2-ピロリジノン(NMP)を用い、粒径0.01μmのタングステン酸リチウムLi4WO5を添加した以外は、実施例5と同様にして作製した非水系電解質二次電池用正極材料を用いてコイン型電池1を作製し、その電池評価を行った。
以上の実施例5~9、比較例3の結果を纏めて表2に示す。
実施例1~9の正極材料は、本発明に従って製造されたため、この正極材料を用いた非水系電解質二次電池は、初期放電容量が高く、正極抵抗も低いものとなっており、優れた特性を有した電池が得られることが確認された。
特に実施例5~9の正極材料は、正極活物質との濡れ性に優れた有機溶剤を含むために、初期放電容量と正極抵抗がともに良好である。
比較例2は、タングステン添加材料のタングステン酸リチウムLi2WO4の粒径が10μmと本発明の範囲から外れていたため、比較例1と同様に正極抵抗が高くなってしまい高出力化の要求に対応することが困難である。
また、比較例3は、有機溶剤として正極活物質との濡れ性に優れないNMPのみを用いたことで、濡れ性に優れる有機溶剤を用いる場合に比べて正極抵抗を下げることができなかった。
また、実施例9では、粉末との濡れ性が良い有機溶剤を混合し、正極材料を形成した後に、導電材、結着剤と共に、結着剤を溶解する溶剤のN-メチル-2-ピロリジノン(NMP)を混合した場合でも良好な特性が得られていることが判る。
また、本発明の非水系電解質二次電池は、優れた安全性を有し、小型化、高出力化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける電気自動車用電源として好適である。
なお、本発明は、純粋に電気エネルギーで駆動する電気自動車用の電源のみならず、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃焼機関と併用するいわゆるハイブリッド車用の電源としても用いることができる。
2 ケース
2a 正極缶
2b 負極缶
2c ガスケット
3 電極
3a 正極
3b 負極
3c セパレータ
Claims (11)
- 一般式LizNi1-x-yCoxMyO2(ただし、0.01≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0.97≦z≦1.20、Mは添加元素であり、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表され、一次粒子および前記一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物粉末と、
前記リチウム金属複合酸化物粉末とのぬれ性が良好なエタノール、前記リチウム金属複合酸化物粉末とのぬれ性が良好なメタノール、前記リチウム金属複合酸化物粉末とのぬれ性が良好なアセトニトリルから選択される少なくとも1種の有機溶剤を、前記リチウム金属複合酸化物粉末100g当たり、10~200mlの量と、平均粒径0.01~0.05μmの酸化タングステン、若しくは平均粒径0.01~0.05μmのタングステン酸リチウムのタングステン添加材料を混合することを特徴とする非水系電解質二次電池用正極材料の製造方法。 - 前記リチウム金属複合酸化物粉末と、前記タングステン添加材料を混合する前に、前記リチウム金属複合酸化物粉末を水洗する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水系電解質二次電池用正極材料の製造方法。
- 前記正極材料に含まれるタングステン量が、リチウム金属複合酸化物粉末に含まれるニッケル、コバルトおよび添加元素Mの原子数の合計に対して、0.1~3.0原子%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系電解質二次電池用正極材料の製造方法。
- 前記タングステン添加材料がWO3の酸化タングステン、若しくはLi2WO4、Li4WO5、Li6W2O9から選択される少なくとも1種のタングステン酸リチウムであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極材料の製造方法。
- 一般式LizNi1-x-yCoxMyO2(ただし、0.01≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0.97≦z≦1.20、Mは添加元素であり、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表され、一次粒子および前記一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物粉末と、前記リチウム金属複合酸化物粉末とのぬれ性が良好なエタノール、前記リチウム金属複合酸化物粉末とのぬれ性が良好なメタノール、前記リチウム金属複合酸化物粉末とのぬれ性が良好なアセトニトリルから選択される少なくとも1種の有機溶剤と、前記リチウム金属複合酸化物粉末100g当り、10~200mlの量と、平均粒径0.01~0.05μmの酸化タングステン、若しくは平均粒径0.01~0.05μmのタングステン酸リチウムのタングステン添加材料との混合物を含むことを特徴とする非水系電解質二次電池用正極材料。
- 前記正極材料に含まれるタングステン量が、リチウム金属複合酸化物粉末に含まれるニッケル、コバルトおよび添加元素Mの原子数の合計に対して、0.1~3.0原子%であることを特徴とする請求項5に記載の非水系電解質二次電池用正極材料。
- 前記タングステン添加材料が、WO3の酸化タングステン、若しくはLi2WO4、Li4WO5、Li6W2O9から選択される少なくとも1種のタングステン酸リチウムであることを特徴とする請求項5又は6に記載の非水系電解質二次電池用正極材料。
- 前記タングステン添加材料が、タングステン酸リチウムである場合にはLi4WO5を含むタングステン酸リチウムであることを特徴とする請求項7に記載の非水系電解質二次電池用正極材料。
- 請求項5~8のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極材料を用いた正極を有することを特徴とする非水系電解質二次電池。
- 一般式LizNi1-x-yCoxMyO2(ただし、0.01≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0.97≦z≦1.20、Mは添加元素であり、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表され、一次粒子および前記一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物粉末と、
前記リチウム金属複合酸化物粉末とのぬれ性が良好なエタノール、前記リチウム金属複合酸化物粉末とのぬれ性が良好なメタノール、前記リチウム金属複合酸化物粉末とのぬれ性が良好なアセトニトリルから選択される少なくとも1種の有機溶剤を、前記リチウム金属複合酸化物粉末100g当り、10~200mlの量と、平均粒径0.01~0.05μmの酸化タングステン、若しくは平均粒径0.01~0.05μmのタングステン酸リチウムのタングステン添加材料との混合物と、
導電材と、結着剤及び、前記リチウム金属複合酸化物、導電材、及び活性炭を分散させ、前記結着剤が溶解している溶剤のN-メチル-2-ピロリジノンとの混合物からなることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極合材。 - 請求項10に記載の非水系電解質二次電池用正極合材を用いた正極を有することを特徴とする非水系電解質二次電池。
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