JP2016072038A - 非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および該正極活物質を用いた非水系電解質二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
このようなリチウムイオン二次電池は、現在研究、開発が盛んに行われているところであるが、中でも、層状またはスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
上記低抵抗化を実現する方法として異元素の添加が用いられており、とりわけW、Mo、Nb、Ta、Reなどの高価数をとることができる遷移金属が有用とされている。
しかし、このリチウム遷移金属系化合物粉体は、原料を液体媒体中で粉砕し、これらを均一に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、得られた噴霧乾燥体を焼成することで得ている。そのため、Mo、W、Nb、Ta及びReなどの異元素の一部が層状に配置されているNiと置換してしまい、電池の容量やサイクル特性などの電池特性が低下してしまう問題があった。
このような被覆により、酸素ガスを吸収させ安全性を確保できるとしているが、出力特性に関しては全く開示されていない。また、開示されている製造方法は、遊星ボールミルを用いて被覆するものであり、このような被覆方法では、正極活物質に物理的なダメージを与えてしまい、電池特性が低下してしまう。
この提案によれば、正極活物質の表面にタングステン酸化合物またはタングステン酸化合物の分解物が存在し、充電状態における複合酸化物粒子表面の酸化活性を抑制するため、非水電解液等の分解によるガス発生を抑制することができるとしているが、出力特性に関しては全く開示されていない。
さらに、その製造方法として、タングステンを含むアルカリ溶液とリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物溶液を混合して熱処理することで、上記一次粒子表面全体にWおよびLiを含む微粒子を形成させることが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
さらに、その製造方法は、容易で工業的規模での生産に適したものであり、その工業的価値は極めて大きいものである。
本発明の正極活物質は、一般式:Li1+uNixCoyMnzMtO2+α(0.40≦u<0.60、z−x>0.4の時z−x≦u、z<0.6の時u≦z、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.5≦z<0.8、0<x+y、x+y+z+t=1、z−x<0.6、0.4≦α<0.6、Mは添加元素であり、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の元素)で表される一次粒子および、その一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物を母材とし、そのリチウム金属複合酸化物の一次粒子表面に分散状態で存在させた、WおよびLiを含む微粒子を有することを特徴とするものである。
さらに、その母材のリチウム金属複合酸化物の一次粒子表面に分散状態で形成されたW(タングステン)およびLi(リチウム)を含む微粒子により、充放電容量を維持しながら出力特性を向上させるものである。
これに対して、本発明は、母材としたリチウム金属複合酸化物の一次粒子の表面に層状物を形成せずに、WおよびLiを含む微粒子のみを分散状態で形成させるが、この微粒子は、リチウムイオン伝導率が高く、リチウムイオンの移動を促す効果があるため、リチウム金属複合酸化物粉末の表面に、この微粒子を分散状態で形成させることで、電解液との界面でLiの伝導パスを形成することから、活物質の反応抵抗を低減して出力特性を向上させ、さらにサイクル特性の向上を可能とするものである。
その粒子径が1nm未満では、微細な粒子が十分なリチウムイオン伝導度を有しない場合がある。また、粒子径が100nmを超えると、表面上への分散状態で存在する微粒子の形成が不均一になり、反応抵抗の低減効果が十分に得られない場合があるためである。
ここで、本発明における一次粒子表面とは、二次粒子の外面で露出している一次粒子表面と二次粒子外部と通じて電解液が浸透可能な二次粒子の表面近傍および内部の空隙に露出している一次粒子表面を含むものである。さらに、一次粒子間の粒界であっても一次粒子の結合が不完全で電解液が浸透可能な状態となっていれば含まれるものである。
したがって、一次粒子表面全体において、微粒子を分散状態で存在するように形成させることで、リチウム金属複合酸化物粒子の反応抵抗をより一層低減させることが可能となる。
微粒子が点在している状態でも、リチウム金属複合酸化物の二次粒子の外面および内部の空隙に露出している一次粒子表面に微粒子が形成されていれば、反応抵抗の低減効果が得られる。
一方、完全に一次粒子の全表面、或いは一部分において微粒子が層状物の形態で形成されていると、電解液との接触が少なくなり、反応抵抗の低減効果が十分に得られないことがある。
一方、リチウム金属複合酸化物粒子間で不均一に微粒子が形成された場合は、リチウム金属複合酸化物粉末間でのリチウムイオンの移動が不均一となるため、特定のリチウム金属複合酸化物粒子に負荷がかかり、サイクル特性の悪化や反応抵抗の上昇を招きやすい。したがって、リチウム金属複合酸化物粒子間においても均一に微粒子が形成されていることが好ましい。
微粒子に含まれるタングステン量は、リチウム金属複合酸化物に含まれるニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)およびMの原子数の合計に対して、0.1〜3.0原子%とすることが好ましい。これにより、高い充放電容量と出力特性を両立することができる。
以下、本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法を工程ごとに詳細に説明する。
第1工程は、一次粒子および一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物に、タングステン化合物を溶解させたアルカリ溶液(以下、タングステン化合物を溶解させたアルカリ溶液をアルカリ溶液(W)と称す。)を添加して混合する工程である。
これにより、電解液と接触可能なリチウム金属複合酸化物の一次粒子表面にWを分散させることができる。
溶解方法は、通常の粉末の溶解方法でよく、例えば、撹拌装置付の反応槽を用いて溶液を撹拌しながらタングステン化合物を添加して、均一な分散状態を得るためにアルカリ溶液に完全に溶解する。
アルカリ溶液に溶解させるタングステン量は、混合するリチウム金属複合酸化物に含まれるNi、Co、MnおよびMの原子数の合計に対して、0.1〜3.0原子%とすることが好ましい。
不純物混入のおそれがないアンモニア、水酸化リチウムを用いることができるが、Liのインターカレーションを阻害しない観点から水酸化リチウムを用いることが好ましい。
水酸化リチウムを用いる場合には、混合後の正極活物質に含有されるリチウム量が、一般式のLi/Mの範囲内とする必要があるが、水酸化リチウム量をWに対して、原子比で4.5〜15.0とすることが好ましい。Liはリチウム金属複合酸化物から溶出して供給されるが、この範囲の水酸化リチウムを用いることで、タングステン酸リチウムを形成させるのに十分な量のLiを供給することができる。
Wを二次粒子を構成する一次粒子の表面に分散させるためには、二次粒子内部の空隙および不完全な粒界にも浸透させる必要があり、揮発性が高いアルコールなどの溶媒を用いると、アルカリ溶液が二次粒子内部の空隙に浸透する前に、溶媒が蒸発して十分に浸透しないことがある。
pHが9未満の場合には、リチウム金属複合酸化物からのリチウム溶出量が多くなり過ぎて電池特性が劣化するおそれがある。また、pHが12を超えると、リチウム金属複合酸化物に残留する過剰なアルカリが多くなり過ぎて電池特性が劣化するおそれがある。
また、電解液との接触面積を多くすることが、出力特性の向上に有利であることから、一次粒子および一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなり、二次粒子に電解液の浸透可能な空隙および粒界を有するリチウム金属複合酸化物粉末を用いる。
その混合は、アルカリ溶液(W)が液体であり、かつ50℃以下の温度で行うことが好ましい。アルカリ溶液(W)は、二次粒子の空隙および粒界にも浸透させる必要があり、液体であることが必要である。また、50℃を超える温度とすると、アルカリ溶液の乾燥が速いため、二次粒子の空隙および粒界に十分に浸透しないおそれがある。また、乾燥が速いとリチウム金属複合酸化物粉末からのLiの溶出が期待できず、特にアルカリ溶液(W)にLiが含有されない場合、表面に形成される微粒子にLiが含有されないことがある。
例えばシェーカーミキサーやレーディゲミキサー、ジュリアミキサー、Vブレンダーなどを用いてリチウム金属複合酸化物粉末の形骸が破壊されない程度でアルカリ溶液(W)と十分に混合してやればよい。これにより、アルカリ溶液(W)中のWを、リチウム金属複合酸化物の一次粒子表面に均一に分布させることができる。
第2工程は、アルカリ溶液(W)とリチウム金属複合酸化物粉末の混合物を熱処理する工程である。
この熱処理により、アルカリ溶液(W)より供給されたWと、アルカリ溶液(W)リチウム金属複合酸化物粉末からのリチウムの溶出のいずれか、又は両者により供給されたリチウム(Li)から、タングステン(W)およびリチウム(Li)を含む微粒子を形成し、リチウム金属複合酸化物の一次粒子表面に、WおよびLiを含む微粒子を分散状態で点在させて有する非水系電解質二次電池用正極活物質が得られる。
熱処理温度が100℃未満では、水分の蒸発が十分ではなく、微粒子が十分に形成されない場合がある。一方、熱処理温度が600℃を超えると、リチウム金属複合酸化物の一次粒子が焼結を起こすとともに一部のWがリチウム金属複合酸化物の層状構造に固溶してしまうために、電池の充放電容量が低下することがある。
熱処理時間は、特に限定されないが、アルカリ溶液の水分を十分に蒸発させて微粒子を形成するために5〜15時間とすることが好ましい。
本発明の非水系電解質二次電池は、正極、負極および非水系電解液などからなり、一般の非水系電解質二次電池と同様の構成要素により構成される。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本発明の非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
先に述べた非水系電解質二次電池用正極活物質を用いて、例えば、以下のようにして、非水系電解質二次電池の正極を作製する。
まず、粉末状の正極活物質、導電材、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。
その正極合材ペースト中のそれぞれの混合比も、非水系電解質二次電池の性能を決定する重要な要素となる。溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60〜95質量部とし、導電材の含有量を1〜20質量部とし、結着剤の含有量を1〜20質量部とすることが望ましい。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
なお、必要に応じ、正極活物質、導電材、活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加する。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
負極には、金属リチウムやリチウム合金等、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤等を含んでいてもよい。
以上のように説明してきた正極、負極、セパレータおよび非水系電解液で構成される本発明の非水系電解質二次電池の形状は、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。
いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。
本発明の正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、高容量で高出力となる。
特により好ましい形態で得られた本発明による正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、例えば、2032型コイン電池の正極に用いた場合、250mAh/g以上の高い初期放電容量が得られ、さらに低抵抗で高出力で、かつサイクル特性にも優れたものである。また、熱安定性が高く、安全性においても優れているといえる。
以下、本発明の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
正極活物質の評価には、図1に示す2032型コイン電池(以下、コイン型電池と称す)を使用した。
コイン型電池は、ケースと、このケース内に収容された電極とから構成されている。
ケースは、中空かつ一端が開口された正極缶6と、この正極缶6の開口部に配置される負極缶7とを有しており、負極缶7を正極缶6の開口部に配置すると、負極缶7と正極缶6との間に電極を収容する空間が形成されるように構成されている。
なお、ケースはガスケット4を備えており、このガスケット4によって、正極缶6と負極缶7との間が非接触の状態を維持するように相対的な移動が固定されている。また、ガスケット4は、正極缶6と負極缶7との隙間を密封してケース内と外部との間を気密液密に遮断する機能も有している。
先ず、非水系電解質二次電池用正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、直径10mmで10mg程度の重量になるまで薄膜化して、正極1を作製した。作製した正極1を真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。
この正極1と、負極2、セパレータ3および電解液とを用いて、上述したコイン型電池を、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
セパレータ3には膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。電解液には、1MのLiPF6を支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の3:7混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
初期放電容量は、コイン型電池を製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2としてカットオフ電圧4.8Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。
まず、反応槽内に純水を半分の量まで入れて撹拌しながら、窒素ガスを流通させ反応槽内の酸素濃度を低下させ、槽内温度を40℃に設定し、純水に25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量加えて、液のpHを液温25℃基準で(pHは全て液温25℃基準で調整)12.8に、液中アンモニア濃度を10g/Lに調節して反応液を調製した。ここに、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン(金属元素モル比でNi:Co:Mn=2:1:7)を純水に溶かして得た1.8mol/Lの水溶液(混合水溶液A)と、アンモニア水および水酸化ナトリウム水溶液を一定速度で加えていき、pH値を12.8(核生成pH)に制御しながら2分30秒間晶析を行った。
得られた複合水酸化物を大気雰囲気中150℃で12時間熱処理した後、Li/Me=1.5となるように炭酸リチウムを秤量し、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて、その熱処理した複合水酸化物と炭酸リチウムを十分に混合した混合物を得た。
この混合物を空気(酸素:21容量%)気流中にて900℃で10時間焼成し、さらに解砕して母材となるリチウム金属複合酸化物を得た。
得られたリチウム金属複合酸化物の平均粒径はレーザー回折散乱法における体積積算平均値を用い、比表面積はBET法を用いて評価した。このリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒径は5.2μmであり、比表面積は1.1m2/gであった。
3mlの純水に、0.2gの水酸化リチウム(LiOH)を溶解した水溶液のアルカリ溶液中に、0.183gの酸化タングステン(WO3)を添加して撹拌することにより、タングステンを含有したアルカリ溶液(W)を得た。
次に、作製した母材のリチウム金属複合酸化物粉末15gに、アルカリ溶液(W)を添加し、さらに、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて十分に混合して、アルカリ溶液(W)とリチウム金属複合酸化物の混合物を得た。
得られた混合物を、マグネシア製焼成容器に入れ、100%酸素気流中において、昇温速度2.8℃/分で500℃まで昇温して10時間熱処理し、その後室温まで炉冷した。
熱処理後のリチウム金属複合酸化物の粉末のタングステン含有量をICP法により分析したところ、タングステン含有量はNi、CoおよびMnの原子数の合計に対して0.5原子%の組成であることが確認された。これより、アルカリ溶液(W)とリチウム金属複合酸化物の混合物の配合と、その熱処理後の組成が同等であることが確認された。
得られた正極活物質の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、リチウム金属複合酸化物の一次粒子の表面にWおよびLiを含む微粒子が分散状態で存在するように形成されていることを確認した。
得られた正極活物質を使用して作製した正極を有する図1に示すコイン型電池1を用いて、初期放電容量と正極抵抗およびサイクル容量維持率を評価した。なお、抵抗は比較例2からの低減率により評価した。その結果を表1に示した。
第1工程および第2工程に替えて焼成時にタングステン含有量がNi、CoおよびMnの原子数の合計に対して0.5原子%になるように酸化タングステンを添加して焼成した以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価を行った。その初期放電容量と正極抵抗およびサイクル容量維持率の結果を表1に示した。
なお、得られた正極活物質のタングステン含有量をICP法により分析したところ、タングステン含有量はNi、CoおよびAlの原子数の合計に対して0.5原子%の組成であることが確認された。また、この正極活物質を構成するリチウム金属複合酸化物の一次粒子表面をSEM観察した所、W及Liを含む層状物が観察された。
実施例1で得られたリチウム金属複合酸化物に対して、第1工程および第2工程を省略し、微粒子を一次粒子表面に設けず母材のみとした正極活物質を得るとともに評価を行った。初期放電容量と正極抵抗およびサイクル容量維持率の結果を表1に示した。
Li1.060Ni0.76Co0.14Al0.10O2で表されるリチウム金属複合酸化物粉末を母材に用いた以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価を行った。このリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒径は5.0μmであり、比表面積は0.9m2/gであった。また、熱処理後のリチウム金属複合酸化物の粉末のタングステン含有量をICP法により分析したところ、タングステン含有量はNi、CoおよびAlの原子数の合計に対して0.5原子%の組成であることが確認された。これより、アルカリ溶液(W)とリチウム金属複合酸化物の混合物の配合と、その熱処理後の組成が同等であることが確認された。
その初期放電容量と正極抵抗およびサイクル容量維持率の結果を表1に示した。
また、本発明の非水系二次電池は、優れた安全性を有することから、純粋に電気エネルギーで駆動される電気自動車、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃焼機関と併用するハイブリッド自動車もしくはプラグインハイブリッド自動車などの大型電源装置としても好適に用いることができる。
2 カーボン負極
3 セパレータ
4 ガスケット
5 ウェーブワッシャー
6 正極缶
7 負極缶
Claims (6)
- 一般式:Li1+uNixCoyMnzMtO2+α(0.40≦u<0.60、z−x>0.4の時z−x≦u、z<0.6の時u≦z、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.5≦z<0.8、0<x+y、x+y+z+t=1、z−x<0.6、0.4≦α<0.6、Mは添加元素であり、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の元素)で表される一次粒子および前記一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物であって、
前記リチウム金属複合酸化物の一次粒子が、前記一次粒子の表面に分散して点在するWおよびLiを含む微粒子を有することを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質。 - 前記微粒子中に含有されるタングステン量が、前記リチウム金属複合酸化物に含まれるNi、Co、MnよびMの原子数の合計に対してWの原子数が0.1〜3.0原子%であることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
- 一般式:Li1+uNixCoyMnzMtO2+α(0.40≦u<0.60、z−x>0.4の時z−x≦u、z<0.6の時u≦z、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.5≦z<0.8、0<x+y、x+y+z+t=1、z−x<0.6、0.4≦α<0.6、Mは添加元素であり、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の元素)で表される一次粒子および前記一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物に、タングステン化合物を溶解させたアルカリ溶液を添加し、混合物を形成して前記リチウム金属複合酸化物の一次粒子表面にWを分散させる第1工程と、
前記タングステン化合物を溶解させたアルカリ溶液とリチウム金属複合酸化物の混合物を熱処理して、WおよびLiを含む微粒子を、前記リチウム金属複合酸化物の一次粒子の表面に分散させて点在状態に形成する第2工程を有することを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。 - 前記第2工程における熱処理が、大気雰囲気、酸素雰囲気あるいは真空雰囲気中において、100〜600℃で行うことを特徴とする請求項3に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記タングステン化合物を溶解させたアルカリ溶液に含まれるタングステン量が、混合するリチウム金属複合酸化物に含まれるNi、Co、MnおよびMの原子数の合計に対して、0.1〜3.0原子%とすることを特徴とする請求項3又は4に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質を含む正極を有することを特徴とする非水系電解質二次電池。
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