以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
はじめに発明の理解を容易にするために、発明の基本コンセプトについて説明する。
入浴によってリラックスするが(心身のリラックス)、たとえば、肩こり等がある場合には、浴槽内で肩を揉みほぐすとマッサージ効果と温浴の効果が相まって、肩の血流量が増大し、肩が楽になる(身のリラックス)。また、入浴時に「ぼー」とすることで、心がリラックスする。この入浴時に「ぼー」とするときとは、飲酒後の入浴、深夜の入浴等、そもそも脳の活動が低下しているときが多い。また、浴槽湯温が高め(たとえば42℃)の場合には、身体が早く温まることで、早期にリラックス(心のリラックス)する。
「ぼー」とした状態で入浴していると、いつのまにか長時間湯船につかってしまうことがある。すると、温浴によって末梢血管が拡張し、SBP(収縮期血圧)が降下する。浴室が寒い冬場は、高い湯温での入浴が好まれる。湯温を夏場は40℃/冬場は42℃というように、冬場に湯温を高く設定する人も多い。湯温が高いほうが、温浴による末梢血管の拡張が起きやすくなり、入浴中のSBP降下が激しくなる。
SBPが降下した状態で、浴槽内で立ち上がる(又は、浴槽内で立ち上がろうとして力を入れようとする)と、起立性低血圧が生じることがある。この起立性低血圧は加齢とともに起こりやすくなる。若年者よりも高齢者に起こりやすい。起立性低血圧の影響による血管迷走神経反射(血管が収縮することで脳血流量維持機能がうまく作用せず血の気がすーと引く現象)によって失神する場合がある。最悪の場合は、浴中失神による溺死のおそれもある。
通常であれば、血管迷走神経反射は、自律神経の作用によって、脳への血流が確保されて回避される。たとえば、脳幹部にある血管運動中枢経由の動脈収縮動作によって、身体と脳への血流分配比が変えられることで、脳への血流量が維持されて、血管迷走神経反射が回避される。また、動脈圧受容器が反応する血圧反射機能によって、血圧・心拍数が上昇することで、脳への血流量が維持されて、血管迷走神経反射が回避される。なお血圧反射機能の感受性は、本態性高血圧症の患者の一部では低下しているが、健康な人は反応する。
しかしながら、何らかの原因で(健康な人であっても)、自律神経系が突然失調を来たして血管迷走神経反射を回避できない場合に、脳への血流不足(脳貧血)が生じることがある。本願発明者は、何らかの原因の一つに脳活動量の低下(前記「ぼー」とした状態)があるものと推定し、これが原因で起立性低血圧に対応する血管迷走神経反射回避機能が失調(自立神経系が失調)し、脳への血流不足(脳貧血)が起き、出浴動作開始時に失神状態に至る可能性が高い点に着目した。
脳貧血が生じているか否かは、デオキシヘモグロビンとオキシヘモグロビンの濃度を調べれば判るが、濃度変化が生じて失神するので、突然の失調(例えば失神)を事前に検出することはできない。入浴中の入浴者が意識を失うような異常が発生した場合に(例えば圧力センサー112の出力が所定時間変化しない場合に)、事後に警報をいくら流しても(圧力センサー112の出力から得られる、動かなくなったという情報をフィードバックして警報を出しても)、失神しているので動くことができず、特に一人暮らしの入浴では、警報を聞きつけて浴室に駆け付ける家族がいないので、事故を防止できない。
他方、風呂場における死亡事故(溺死)の特徴として、寒い日に、一人暮らしで、健康な女性の高齢者が、夜遅くに入浴している場合が多いと言われている。本願発明者が推測する事故原因の一つは、男女差のない前記起立性低血圧であるが、もう一つの原因として推定している、後述の寝入りばなの金縛り現象等においては、女性が多いと本願発明者は推測している。その理由は、高齢の男性に多いと言われているレム睡眠行動障害(レム睡眠中は通常、夢うつつのまま行動すると危険なために筋肉が緩み、身体が動かないが、筋肉が緩まず、行動できるという障害)が、入浴中の溺死寸前の所で救命行動に繋がり、同じように浴中で寝入りばなの金縛り現象にあっても男女差が生じる原因と推定している。本願発明者は、事故原因と推測される後述の寝入りばなの金縛り現象等が、脳活動量の低下が原因の一つとなって脳による呼吸量の調節機能が失調(自立神経系の呼吸中枢が失調)し、血中炭酸ガス濃度上昇が起き、入浴中に睡魔が襲う状態に至ってから発生する点にも着目した。
本願発明者は、このような点に着目し、突然、自律神経系が失調することを防止する本発明を完成するに至ったのである。
より具体的には、自律神経系失調に関係の深い脳活動に関連する値をフィードフォワード演算(予測演算)し、浴槽内で立ち上がると、起立性低血圧が生じる状態に近づいたと予測される場合や、又は、呼吸量の調節機能が失調状態に近づいたと予測される場合には、事前に所定時間毎に身体や脳に刺激を与えることで、脳への血流分配比を変えたり、血圧・心拍数を上昇させるといった脳の活動を低下させないようにすることで、自律神経系の失調を防止するのである。
なお、浴室が寒く湯温が高い場合には、白い湯気が浴湯表面から立ち登る。湯気(水蒸気)があるので、その分、浴湯表面の酸素分圧が低くなっている。このような状況で、肩まで湯に浸かると酸素が少ない空気を吸い込むので、血中の炭酸濃度が上がり、浴中で眠気に襲われることがある。入眠時には、まずノンレム睡眠が現れ、続いて約1時間から2時間ほどしてレム睡眠に移る。ノンレム睡眠中に目覚めても、人体はすぐさま活動を開始することができない。したがって、浴中睡眠は、溺死につながる可能性があり、危険である。さらに、上記ノンレム睡眠から始まる睡眠が、不規則な生活や身体が非常に疲れていることが原因で、脳はまだ目覚めているのに身体がいきなりレム睡眠モードに入ってしまうことがある(レム睡眠もノンレム睡眠同様に身体は休んでいるので筋肉は緩んでいる。)。このような場合には、目が覚めても脳と筋肉の連動が上手くいかず、タイミングがずれ、意識はあるのに動こうとしても動けない状態(通称、寝入りばなの金縛り現象。例えば、溺れていそうなことが薄ら認識でき、溺れるのを回避しようと力を入れようとしても、うまく動けない状態)になることがある。このような状態では、警報をいくら流しても動くことができず、溺死につながる可能性がある。
これに対して、この発明によれば、血中炭酸ガス濃度上昇をも防止でき、脳による呼吸量の調節機能の失調も防止できる。血中の炭酸濃度が上がることを防止して適正値を維持できるので、眠気に襲われて浴中で眠ってしまうことに起因する溺死にも対応することができるのである。
次に、図1を参照して、本発明による浴槽内での脳活動維持システムを適用する給湯器11及び浴室12の一例について説明する。なお図1に示す構成は一例であって、これに限定されるものではない。
給湯器11は、浴室12に設置された浴槽121に湯を供給する。給湯器11と浴槽121とは、往湯管路131及び戻湯管路132で接続されている。
給湯器11の内部管路110の入口には戻湯管路132が接続され、内部管路110の出口には往湯管路131が接続される。内部管路110には、風呂出温度センサー111,圧力センサー112,三方弁113,浴槽湯水循環ポンプ114,水流スイッチ115,サーミスター116,熱交換装置117が配置されている。
風呂出温度センサー111は、流入した浴槽湯水の温度を検出する。
圧力センサー112は、浴槽121の浴槽湯水の水位を圧力として検出する水位センサーである。
三方弁113は、給湯器11に浴槽121の湯水を供給するか/市水を供給するかを切り替える。
浴槽湯水循環ポンプ114は、浴槽121の湯水又は外部から供給される市水を吸引し、浴槽121に循環させる。
水流スイッチ115は、浴槽湯水循環ポンプ114から吐出された湯水の流れに応じてオン/オフする。浴槽121が空の状態で浴槽湯水循環ポンプ114が作動しても、湯水が流れない。水流スイッチ115によって、このような状態が検出されたら、三方弁113を切り替えることで、給湯器11に市水を取り込む。
サーミスター116は、浴槽湯水循環ポンプ114から吐出された湯水の温度を検出する。
熱交換装置117は、浴槽湯水循環ポンプ114から吐出された湯水をバーナー1171によって加熱する。熱交換装置117の加熱熱量は、現在の湯温及び目標湯温に基づいて適宜制御される。
浴槽湯水循環ポンプ114から吐出された湯水は、水流スイッチ115を流れて、サーミスター116で温度が検出され、熱交換装置117で加熱されて、往湯管路131を流れ、浴槽121の循環金具122から浴槽121に流入し、戻湯管路132を流れて、浴槽湯水循環ポンプ114に戻る、というように循環する。
次に浴室12について説明する。
浴室12には、浴槽121が設置されている。また給湯等を指示するための浴室リモコン123も設置されている。この浴室リモコン123には、後述のようにアナウンスを発するスピーカーも内蔵されている。
次に、本発明による、浴槽内での脳活動維持システムの具体的な制御ロジックについてフローチャートに沿って説明する。
図2は、浴槽内での脳活動維持システムの第1実施形態のコントローラーが実行する具体的な処理内容を示すメインフローチャートである。なお以下の処理は、所定時間サイクル(たとえば1秒サイクル)で繰り返し実行される。
ステップS11において、コントローラーは、圧力センサー112の信号に基づいて、人が浴槽に入ったか否かを判定する。判定結果が肯であればステップS12へ処理を移行し、判定結果が否であればステップS15へ処理を移行する。
ステップS12において、コントローラーは、入浴中フラグをオンにする。
ステップS13において、コントローラーは、経過時間カウント値Sをリセットする。
ステップS14において、コントローラーは、風呂出温度センサー111で検出した湯温Xを次式(1)に適用して、脳活動量の初期値Yを設定する。
この式(1)から判るように、脳活動量の初期値Yは、湯温Xが高いほど、小さく設定される。
ステップS15において、コントローラーは、入浴中フラグがオンであるか否かを判定する。判定結果が肯であればステップS16へ処理を移行し、判定結果が否であれば一旦処理を抜ける。
ステップS16において、コントローラーは、圧力センサー112の信号に基づいて、人が浴槽から出たか否かを判定する。判定結果が否であればステップS17へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS18へ処理を移行する。
ステップS17において、コントローラーは、入浴中処理を実行する。詳細は後述される。
ステップS18において、コントローラーは、入浴中フラグをオフにする。
図3は、第1実施形態の入浴中処理について説明するフローチャートである。
ステップS171において、コントローラーは、経過時間カウント値Sをインクリメントする。なおこの処理は上述の通り、1秒サイクルで繰り返し実行されているので、この経過時間カウント値Sが、経過時間[秒]となる。
ステップS172において、コントローラーは、脳活動関連値演算処理を実行する。本実施形態では、脳活動関連値として脳活動量Yを演算する。詳細は後述される。
ステップS173において、コントローラーは、脳活動量Yが300(基準値)よりも小さいか否かを判定する。脳活動量Yの300は、浴槽内で立ち上がる、又は立ち上がろうとして力を入れた時に、起立性低血圧が生じるやすくなっていることを示す閾値である。判定結果が否であるうちは、ステップS174,S175をスキップしてステップS176へ処理を移行し、判定結果が肯になったらステップS174へ処理を移行する。なお300という基準値は、予め設定されているが、仕様等に応じて適宜設定すればよい。なお、入浴したまま失神するときの脳活動量(本願では使用していない)よりも、起立性低血圧が生じるときの脳活動量(基準値)のほうが、早めの経過時間で判定結果が肯の状態に達する。
ステップS174において、コントローラーは、ワーニング(たとえば「軽く身体を動かしてください」というアナウンス)を行う。
ステップS175において、コントローラーは、浴槽湯水循環ポンプ114の作動を制限する。なお制限中は、自動運転の保温タイミングになっても、浴槽湯水循環ポンプ114は作動しない。
ステップS176において、コントローラーは、圧力センサー112の信号に基づいて、入浴者が浴槽中で運動したか否かを判定する。判定結果が肯であればステップS177へ処理を移行し、判定結果が否であれば一旦処理を抜ける。
ステップS177において、コントローラーは、風呂出温度センサー111で検出した湯温X及び経過時間カウント値Sを次式(2)に適用して、脳活動量Yを再設定する。
この式(2)から判るように、脳活動量Yは、浴槽に入ってからの経過時間Sが長いほど小さく再設定される。
ステップS178において、コントローラーは、浴槽湯水循環ポンプ114の作動制限を解除する。
図4は、第1実施形態の脳活動関連値演算処理について説明するフローチャートである。
ステップS1721において、コントローラーは、現在の時刻が22時〜4時の時間帯に該当するか否かを判定する。判定結果が否であればステップS1722へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS1723へ処理を移行する。
ステップS1722において、コントローラーは、演算係数Aとして1を設定する。
ステップS1723において、コントローラーは、演算係数Aとして1.43を設定する。
ステップS1724において、コントローラーは、圧力センサー112の信号に基づいて、入浴者があまり動いていないか否かを判定する。判定結果が肯であればステップS1725へ処理を移行し、判定結果が否であればステップS1727へ処理を移行する。
ステップS1725において、コントローラーは、浴室リモコン123が操作されたか否かを判定する。判定結果が否であればステップS1726へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS1727へ処理を移行する。
ステップS1726において、コントローラーは、現在の脳活動量Yから演算係数Aを減算することで、脳活動量Yを更新する。
ステップS1727において、コントローラーは、現在の脳活動量Yを維持する。
以上の制御ロジックが実行されて以下のように作動する。なお以下では、上述のフローチャートとの対応が分かりやすくなるように、フローチャートのステップ番号を適宜記載する。
人が浴槽に入るまでは、コントローラーは、START→S11→S15→ENDを処理する。
圧力センサー112の信号が大きく変化して、人が浴槽に入ったことが検出されたら、
コントローラーは、ステップS11に続いて、ステップS12に処理を移行することで、入浴中フラグをオンするとともに、経過時間カウント値Sをリセットし(S13)、風呂出温度センサー111で検出した湯温Xに基づいて脳活動量の初期値Yを設定する(S14)。湯温がたとえば40℃であれば、脳活動量の初期値Yとして600(=660−30(40−38))を設定する。
次サイクルでは、入浴中フラグがオンなので、コントローラーは、START→S11→S15→S16→S17→ENDを処理する。ステップS17の内容を詳述すると、経過時間カウント値Sをインクリメントし(S171)、脳活動関連値演算処理を実行する(S172)。現在の時刻が22時〜4時の時間帯に該当せず、人が浴槽中でリラックスしてあまり動いていなければ、演算係数Aとして1を設定して(S1722)、現在の脳活動量Yから1を減算することで、脳活動量Yを更新する(S1726)。
次サイクル以降は、コントローラーは、START→S11→S15→S16→S17→S171→S172→S1721→S1722→S1724→S1725→S1726→S173→S176→ENDを繰り返し処理する。
上述のように、この処理は、1秒サイクルで繰り返し実行されているので、人が浴槽に入ってから300秒(5分)経過すると、脳活動量Yが300を下回り、ステップS173→S174と処理されて、「軽く身体を動かしてください」というアナウンスが流れる。
これを聞いた入浴者が身体を動かせば、ステップS176→S177と処理されて、今度は、脳活動量Yとして510(=660−30(40−38)−0.3×300))が再設定される。
次サイクル以降は、コントローラーは、再び、START→S11→S15→S16→S17→S171→S172→S1721→S1722→S1724→S1725→S1726→S173→S176→ENDを繰り返し処理する。
前回のアナウンスから210秒(3分30秒)[人が浴槽に入ってからは510秒(8分30秒)]が経過すると、脳活動量Yが300を再度下回り、ステップS173→S174と処理されて、再び「軽く身体を動かしてください」というアナウンスが流れる。
これを聞いた入浴者が身体を動かせば、ステップS176→S177と処理されて、今度は、脳活動量Yとして447(=660−30(40−38)−0.3×510))が再設定される。
次サイクル以降は、コントローラーは、再び、START→S11→S15→S16→S17→S171→S172→S1721→S1722→S1724→S1725→S1726→S173→S176→ENDを繰り返し処理する。
前回のアナウンスから147秒(2分27秒)[人が浴槽に入ってからは657秒(10分57秒)]が経過すると、脳活動量Yが300を再度下回り、ステップS173→S174と処理されて、再び「軽く身体を動かしてください」というアナウンスが流れる。
なお上記の例では、湯温が40℃の場合で説明した。この場合は、ステップS14において、脳活動量の初期値Yとして600(=660−30(40−38))が設定されたが、たとえば湯温が42℃であれば、脳活動量の初期値Yとして540(=660−30(42−38))が設定される。すなわち、浴槽湯温が高いほど、脳活動量初期値を小さく設定される。そして、現在の時刻が22時〜4時の時間帯に該当せず、人が浴槽中でリラックスしてあまり動いていなければ、毎秒、現在の脳活動量Yから1が減算されて、脳活動量Yが更新されるので(S1726)、人が浴槽に入ってから240秒(4分)経過すると、「軽く身体を動かしてください」というアナウンスが流れる。すなわち、湯温が高いほうが、短い時間でワーニングされる。
また上記の例では、現在の時刻が22時〜4時の時間帯に該当せず、人が浴槽中でリラックスしてあまり動いていない場合で説明した。この場合は、ステップS1722で、演算係数Aとして1を設定して、現在の脳活動量Yから1を減算することで、脳活動量Yを更新したが(S1726)、現在の時刻が22時〜4時の時間帯に該当すれば、ステップS1723で、演算係数Aとして1.43を設定して、現在の脳活動量Yから1.43を減算することで、脳活動量Yを更新する(S1726)。この場合は、脳活動量の初期値Yとして600が設定されている場合に、人が浴槽に入ってから210秒(3分30秒)経過すると、「軽く身体を動かしてください」というアナウンスが流れる。すなわち、現在の時刻が22時〜4時の時間帯に該当する場合のほうが、該当しない場合よりも短い時間でワーニングされる。なお時間帯を例えば1秒毎に設定し、演算毎に演算係数を可変させるようにしても良い。
以上説明したように、本実施形態によれば、所定時間毎に身体に刺激を与えることで、脳への血流分配比を変えたり、血圧・心拍数を上昇させるといった脳の活動を低下させないようにすることで、自律神経系の失調を防止するようにした。
具体的には、入浴を圧力センサー112の圧力上昇で捉え(S11でYes)、脳活動量の演算を開始する。圧力センサー112で入浴中の圧力変化(水位変化)を監視することで、浴槽内で入浴者の動きがゆったりしているか激しいかを判断し(S1724)、入浴者の動きがゆったりしている等動きがない場合には、脳活動量が低下しつつあるものとして減算し(S1726)、入浴者の動きが激しい場合には、浴槽内でストレッチ等を行っているものとして減算を行わない(S1727)。なお入浴者の動きがゆったりしていても、入浴者が浴室リモコン123を操作した場合には(S1725でYes)、動きが激しい場合と同様に処理する(S1727)。浴室リモコン123を操作するには、入浴者の意思が必要であり、脳が活性されて脳活動量が上昇するからである。
そして、脳活動量が一定値以下を検出したら、浴室リモコン123から例えば「軽く身体を動かしてください」とのアナウンスを流し(S174)、圧力センサー112で身体の動かしの程度(強度と時間)を捉えて、脳活動量を再設定する(S177)。脳活動量を一定値以上に保つことで血管迷走神経反射対応能力の維持を図り、浴室内での失神を防止できる。
なお本実施形態では、浴槽湯温が高いほど、脳活動量初期値が小さく設定される。これは、浴槽湯温が高いほど、脳活動量自体が低くなり、入浴後のSBP降下量が大きいからである。また、入浴開始からの時間が長いほど、脳活動量が小さく再設定される。これも同様の理由であり、入浴開始からの時間が長いほど、脳活動量自体が低くなり、その後のSBP降下量が大きいからである。さらに、入浴時間帯が深夜であれば、脳活動量が速く降下するようにした。深夜帯には脳活動量自体が低く、入浴後にSBPが大きく降下するからである。
また、浴槽湯温、入浴時間帯、入浴開始からの時間に応じて、脳活動量の初期値(上限値)や減算量が設定される。例えば浴槽の温度40℃の場合には、入浴を開始してから5分間、入浴者の動きがゆったりしている等動きがない場合には、「軽く身体を動かしてください」とのアナウンスが流れる。そして、圧力センサー112で身体の動かしの程度(強度と時間)が捉えられて、減らされていた脳活動量が加算(再設定)される。ただし、加算(再設定)されても入浴開始時の脳活動量にまでは戻らない(戻す上限値が下げられる)。再度の「軽く身体を動かしてください」というアナウンスは、例えば入浴を開始してから8.5分後(前回運動から3.5分後)に流れる。さらに再度の「軽く身体を動かしてください」というアナウンスは、入浴開始11分後(前回運動から2.5分後)に流れる。このように、戻す上限値が下げられることで、血管迷走神経反射対応能力の維持が図られるのである。
なお、戻す上限値が下げられるのではなく、減算量(演算係数A)が大きくされてもよい。例えば上述では入浴を開始してから5分後に「軽く身体を動かしてください」というアナウンスが流れたが、その後、減算量(演算係数A)が大きくされることで、入浴を開始してから8.5分後(前回運動から3.5分後)に再度の「軽く身体を動かしてください」というアナウンスが流れるようにしてもよい。
また上記では、浴槽湯温42℃の場合には、40℃の場合よりも、初期の脳活動量が低めに設定されたり、戻す上限値の下げ具合が大きくされたが、浴槽湯温42℃の場合には、40℃の場合よりも、入浴後のSBP降下量が大きく、脳活動量の低下が激しくなるので、入浴後のSBP降下量に応じて減算量(演算係数A)が大きくなるようにすることで、入浴を開始してから4分後にアナウンスが流れるようにしてもよい。
本実施形態では、入浴者の動きがある場合には、ステップS1724→S1727と処理され、現在の脳活動量Yが減算されることなく維持される。この状態が続く限り、脳活動量Yが低下して基準値(300)を下回ることがない。したがって、ステップS174,S175がスキップされるので、アナウンスが流れない。入浴者の動きがある場合、たとえば、入浴者が浴槽内でストレッチを行っている場合などには、脳活動量が低下しないため、自律神経系の失調を来たさないからである。
浴槽への自動湯張り等、注湯水圧を受けるような場面では、圧力センサー112での検出が難しい。そこで、本実施形態では、このような場面において、湯張りを一旦中断して、他の水圧変動の影響を受けない状態で水位を測定してP−Qデータ(水量−水位データ。このデータから使用される浴槽の大きさ、すなわち貯湯量も判る)を作成する。したがって、運動量を検出しなければならないタイミング(「軽く身体を動かしてください」とのアナウンス後、運動が終わるのを把握するまでの期間)では、浴槽湯水循環ポンプ114の作動を制限して、保水(注湯)・追焚を行わず、運動が終わるのを待って、浴槽湯水循環ポンプ114の作動制限を解除して、保水(注湯)・追焚を行うようにした。このようにすることで、運動量を適切に把握できるのである。
子供と一緒に入浴している場合は、浴槽内の入浴者が動かなくても、子供が洗髪等を行うために洗面器で浴槽水を汲みだすことで、浴槽水の水位が変化することがある。この場合は、圧力センサー112の検出値が変動し、浴槽内の入浴者が動いていないにもかかわらず、浴槽水の水位変化を入浴者の運動として捉えられて、脳活動量が減算されず、「軽く身体を動かしてください」というアナウンスが流れないことが考えられる。このような場合には、浴槽内の入浴者が動かなくても子供の動きを感じる結果(所定時間毎に脳に刺激が与えられる結果)、入浴者が運動しなくても(子供の浴槽水汲みだしの動きで)、入浴者の脳が活性されて脳活動量が上昇するので、誤演算ではない。
夜遅くから早朝にかけて脳活動量は低下しやすくなるが、昼間に読書をしながら長時間にわたって半身浴を行う人もいる。このような場合にも、入浴者が浴槽内であまり動かないので、所定時間が経過すると、「軽く身体を動かしてください」というアナウンスが流れるが、このアナウンスは痩身(美容)上有効である。
血液の炭酸ガス濃度は、肺胞換気量(肺胞に出入りする空気の量)が低下すると上昇する。この関係は比較的単純で、たとえば肺胞換気量が半分になると血液の炭酸ガス濃度が2倍になる。つまり呼吸が小さく、あるいは呼吸の回数が少なくなりすぎると、血液の炭酸ガス濃度が上昇する。
また、吸気中の酸素分圧が低下すると血液の炭酸ガス濃度が上昇しやすくなる。特に、浴室が寒く湯温が高いときには白い湯気が浴湯表面から立ち登り、浴湯表面の酸素分圧が低くなるので、血液の炭酸ガス濃度が上昇しやすい。しかも、浴室が寒い場合は、浴室への冷気侵入を防止するために、浴室換気扇を停止して入浴することが多い。この結果、狭い浴室内の炭酸ガス濃度が上昇しやすく、血液の炭酸ガス濃度も上昇しやすくなる。
通常は、血液の炭酸ガスの量を脳が感知(頚動脈小体からの情報を脳幹の呼吸中枢で感知)して呼吸の量を調節しているので、このようなこと(血液の炭酸ガス濃度上昇)は起こらない。しかしながら、脳活動量が低下すると調節機能が失調し、呼吸が弱くなって血中炭酸ガス濃度が上昇する。炭酸ガスは麻酔薬のような作用があるので、入浴者が眠気に襲われて眠ってしまう。入眠時には、まずノンレム睡眠が現れるが、ノンレム睡眠中に目覚めても、人体はすぐさま活動を開始することができないので、溺れそうになっても対応できず、溺死につながる可能性があり、危険である。
本実施形態によれば、脳活動量低下演算によって「軽く身体を動かしてください」というアナウンスがなされるが、このようなアナウンス(ワーニング)は、血液の炭酸ガス量上昇防止にも有効である。
以上説明したように、本実施形態によれば、入浴者の入浴中の動き(運動強度と時間)を圧力センサー112で捉えて脳活動量推移を演算し、必要に応じて、入浴を安全に継続させるために必要な運動を促す。これによって、身体に適切に刺激を与えることで脳活動量を一定値以上に保つことができ、浴槽内での脳貧血による失神を防止できるのである。
(第2実施形態)
図5は、浴槽内での脳活動維持システムのコントローラーが実行する脳活動関連値演算処理の第2実施形態について説明するフローチャートである。なお以下では前述と同様の機能を果たす部分には同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
ステップS17221において、コントローラーは、現在の時刻が19時〜22時の時間帯に該当するか否かを判定する。判定結果が否であればステップS17222へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS1722へ処理を移行する。
ステップS17222において、コントローラーは、演算係数Aとして0.5を設定する。
この第2実施形態では、19時よりも前に入浴した場合には、コントローラーは、START→S11→S15→S16→S17→S171→S172→S1721→S17221→S17222→S1724→S1725→S1726→S173→S176→ENDを繰り返し処理し、脳活動量Yは1秒ごとに0.5減算されて更新されることとなる。そのため、脳活動量の初期値Yとして600が設定された場合は、人が浴槽に入ってから600秒(10分)経過すると、脳活動量Yが300(基準値)を下回り、ステップS173→S174と処理されて、「軽く身体を動かしてください」というアナウンスが流れる。
入浴時間帯が早い場合には、そもそも意識がしっかりしている状態での入浴なので、減算量を低く設定することで、入浴者の動きがゆったりしている等動きがなくても入浴開始10分以内にはアナウンスが流れないようにしても問題ない。なお出浴を圧力センサー112で検出すると脳活動量の演算は、上記と同様にリセットされる。
第2実施形態では、このようにすることで、そもそも意識がしっかりしている状態での入浴中に、無闇矢鱈にアナウンスが流れることを防止でき、適切なタイミングでアナウンスを流すことができる。
(第3実施形態)
上記実施形態では、浴槽湯温に基づいて脳活動量初期値を設定し(S14,S177)、人が浴槽に入ったときから、脳活動量初期値から一定時間ごとに一定値を減算することで現在の脳活動量を逐次演算し(S1726)、現在の脳活動量が基準値を下回ったら、浴槽に入っている人に対して身体を動かすことを促すようにした(S174)。
しかしながら、このように減算する手法には限られない。一定時間ごとに一定値を累積する手法としてもよい。そこでこのような手法について以下に具体的に説明する。
図6は、浴槽内での脳活動維持システムの第3実施形態のコントローラーが実行する具体的な処理内容を示すメインフローチャートである。このフローチャートでは、図2に示される第1実施形態のメインフローチャートのステップS14が、ステップS143に置きかえられている。他は同じである。
このステップS143においては、コントローラーは、脳活動に関連する累積値Zをリセットするとともに、風呂出温度センサー111で検出した湯温Xを次式(3)に適用して、脳活動に関連する累積値の基準値Z0を設定する。
図7は、第3実施形態の入浴中処理について説明するフローチャートである。このフローチャートでは、図3に示される第1実施形態のフローチャートのステップS173がステップS1733に置きかえられるとともに、ステップS177がステップS1773に置きかえられている。他は同じである。
このステップS1733においては、コントローラーは、脳活動に関連する累積値Zが、脳活動に関連する累積値の基準値Z0よりも大きいか否かを判定する。判定結果が否であるうちは、ステップS174,S175をスキップしてステップS176へ処理を移行し、判定結果が肯になったらステップS174へ処理を移行する。
またステップS1773においては、コントローラーは、脳活動に関連する累積値Zをリセットするとともに、風呂出温度センサー111で検出した湯温Xを次式(4)に適用して、脳活動に関連する累積値の基準値Z0を再設定する。
図8は、第3実施形態の脳活動関連値演算処理について説明するフローチャートである。このフローチャートでは、図4に示される第1実施形態のフローチャートのステップS1726がステップS17263に置きかえられるとともに、ステップS1727がステップS17273に置きかえられている。他は同じである。
このステップS17263においては、コントローラーは、現在の脳活動に関連する累積値Zに演算係数Aを加算することで、脳活動に関連する累積値Zを更新する。
ステップS17273において、コントローラーは、現在の脳活動に関連する累積値Zを維持する。
以上の制御ロジックが実行されて以下のように作動する。
人が浴槽に入るまでは、コントローラーは、START→S11→S15→ENDを処理する。
圧力センサー112の信号が大きく変化して、人が浴槽に入ったことが検出されたら、
コントローラーは、ステップS11に続いて、ステップS12に処理を移行することで、入浴中フラグをオンするとともに、経過時間カウント値Sをリセットし(S13)、風呂出温度センサー111で検出した湯温Xに基づいて脳活動に関連する累積値の基準値Z0を設定する(S143)。湯温がたとえば40℃であれば、脳活動に関連する累積値の基準値Z0として300(=360−30(40−38))を設定する。
次サイクルでは、入浴中フラグがオンなので、コントローラーは、START→S11→S15→S16→S17→ENDを処理する。ステップS17の内容を詳述すると、経過時間カウント値Sをインクリメントし(S171)、脳活動関連値演算処理を実行する(S172)。現在の時刻が22時〜4時の時間帯に該当せず、人が浴槽中でリラックスしてあまり動いていなければ、演算係数Aとして1を設定して(S1722)、現在の脳活動に関連する累積値Zに演算係数Aを加算することで、脳活動に関連する累積値Zを更新する(S17263)。
次サイクル以降は、コントローラーは、START→S11→S15→S16→S17→S171→S172→S1721→S1722→S1724→S1725→S17263→S173→S176→ENDを繰り返し処理する。
上述のように、この処理は、1秒サイクルで繰り返し実行されているので、人が浴槽に入ってから300秒(5分)経過すると、脳活動に関連する累積値Zが基準値Z0を上回り、ステップS1733→S174と処理されて、「軽く身体を動かしてください」というアナウンスが流れる。
これを聞いた入浴者が身体を動かせば、ステップS176→S1773と処理されて、今度は、基準値Z0として210(=360−30(40−38)−0.3×300))が再設定される。
次サイクル以降は、コントローラーは、再び、START→S11→S15→S16→S17→S171→S172→S1721→S1722→S1724→S1725→S17263→S173→S176→ENDを繰り返し処理する。
前回のアナウンスから210秒(3分30秒)[人が浴槽に入ってからは510秒(8分30秒)]が経過すると、脳活動に関連する累積値Zが基準値Z0を再度上回り、ステップS1733→S174と処理されて、再び「軽く身体を動かしてください」というアナウンスが流れる。
これを聞いた入浴者が身体を動かせば、ステップS176→S1773と処理されて、今度は、基準値Z0として147(=360−30(40−38)−0.3×510))が再設定される。
次サイクル以降は、コントローラーは、再び、START→S11→S15→S16→S17→S171→S172→S1721→S1722→S1724→S1725→S17263→S1733→S176→ENDを繰り返し処理する。
前回のアナウンスから147秒(2分27秒)[人が浴槽に入ってからは657秒(10分57秒)]が経過すると、脳活動に関連する累積値Zが基準値Z0を再度上回り、ステップS1733→S174と処理されて、再び「軽く身体を動かしてください」というアナウンスが流れる。
このように、一定時間ごとに一定値を累積する手法としても、第1実施形態と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態の脳活動関連値演算処理について説明するフローチャートである。このフローチャートでは、図4に示される第1実施形態のフローチャートに対してステップS172841及びステップS172842が追加されている。他は同じである。
この第4実施形態では、入浴者が動いたがそれほど大きくなければ、現在の脳活動量Yを変えることなく維持し(S1727)、入浴者の動きが激しい場合には、たとえば浴槽内でストレッチ等を行っているなどが想定されるので、現在の脳活動量Yに所定の演算係数を加算する(S172842)。
浴槽内でストレッチ等を行うと入浴者の脳が活性されて脳活動量が上昇するので、この第4実施形態のようにすることで、入浴者の感覚に合った脳活動量を求めることができる。
(第5実施形態)
図10は、浴槽内での脳活動維持システムの第5実施形態のコントローラーが実行する具体的な処理内容を示すメインフローチャートである。図11は、第5実施形態の入浴中処理について説明するフローチャートである。図12は、第5実施形態の脳活動関連値演算処理について説明するフローチャートである。
図10のフローチャートでは、図2に示される第1実施形態のメインフローチャートのステップS14が、ステップS145に置きかえられている。他は同じである。図11のフローチャートでは、図3に示される第1実施形態の入浴中処理のステップS177が、ステップS1775に置きかえられている。他は同じである。図12のフローチャートでは、図4に示される第1実施形態のフローチャートのステップS1722がステップS17225に置きかえられるとともに、ステップS1723がステップS17135に置きかえられている。他は同じである。
第1実施形態では、湯温に応じて初期値を変更した。これに対して、この第5実施形態では、湯温に応じて初期値を変えずに減算量(演算係数A)を変更する。このようにすることで、湯温変化を一層正確に反映させることができる。
(第6実施形態)
図13は、浴槽内での脳活動維持システムの第6実施形態のコントローラーが実行する具体的な処理内容を示すメインフローチャートである。図14は、第6実施形態の入浴中処理について説明するフローチャートである。図15は、第6実施形態の脳活動関連値演算処理について説明するフローチャートである。
図13のフローチャートでは、図2に示される第1実施形態のメインフローチャートのステップS14が、ステップS146に置きかえられている。他は同じである。図14のフローチャートでは、図3に示される第1実施形態のフローチャートのステップS173がステップS1736に置きかえられるとともに、ステップS177がステップS1776に置きかえられている。他は同じである。図15のフローチャートでは、図4に示される第1実施形態のフローチャートのステップS1726がステップS17266に置きかえられるとともに、ステップS1727がステップS17276に置きかえられている。他は同じである。
第1実施形態では、現在の脳活動量Yから演算係数Aを減算することで、脳活動量Yを更新した。これに対して、この第6実施形態では、脳活動に関連する値として脳活動量反映値Yaを用い、現在の脳活動量反映値Yaに演算係数Aを加算することで、脳活動量反映値Yaを更新する。このように減算ではなく加算することでも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第7実施形態)
図16は、浴槽内での脳活動維持システムの第7実施形態のコントローラーが実行する具体的な処理内容を示すメインフローチャートである。図17は、第7実施形態の入浴中処理について説明するフローチャートである。図18は、第7実施形態の脳活動関連値演算処理について説明するフローチャートである。
図16のフローチャートでは、図2に示される第1実施形態のメインフローチャートのステップS14が、ステップS147に置きかえられている。他は同じである。図17のフローチャートでは、図3に示される第1実施形態のフローチャートのステップS177がステップS1777に置きかえられるとともに、ステップS1797が追加されている。他は同じである。図18のフローチャートでは、図4に示される第1実施形態のフローチャートのステップS1722がステップS17227に、ステップS1723がステップS17237に置きかえられるとともに、ステップS1726がステップS17267に置きかえられている。他は同じである。
前述した実施形態においては、一定時間ごとに一定値を減算したりや、一定時間ごとに一定値を累積するなどして、脳活動に関連する値を演算した。これに対して、この第7実施形態では、一定時間ごとに一定値を除算する。脳活動量の初期値YをY=600として(S147)、湯温Xがたとえば40℃の場合は時間が1秒経つ毎に1.021552061で除し(S17267)、Yが閾値の1以下(300秒後)となったら(S173でYes)、すなわち「1≧600/(1.021552061)^300」が成立したらワーニングを発する(S174)。例えば、38℃の時は1.01792806で除せば、Yが閾値の1以下(360秒後)でワーニングを発することとなり、39℃の時は1.019573736で除せば、330秒後にYが閾値の1以下となワーニングを発する。このように、湯温別に除す値を変える手法を用いても良い。このようにしても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお演算手法は既知の方法を用いれば良く、四則演算以外でも、微分、積分、log等を用いても良く、特に限定されるものではない。
(第8実施形態)
図19は、浴槽内での脳活動維持システムの第8実施形態のコントローラーが実行する具体的な処理内容を示すメインフローチャートである。図20は、第8実施形態の入浴中処理について説明するフローチャートである。
図19のフローチャートでは、図2に示される第1実施形態のメインフローチャートのステップS14がステップS148に置きかえられるとともに、ステップS1981,ステップS1982が追加されている。他は同じである。図20のフローチャートでは、図3に示される第1実施形態のフローチャートのステップS172が削除されるとともに、ステップS173がステップS1738に、ステップS177がステップS1778に置きかわり、さらにステップS17981,ステップS17982が追加されている。他は同じである。
第1実施形態では、一定時間ごとに演算していた。これに対して、この第8実施形態では、脳活動に関連する値として浴槽に入ってからの経過時間を用い、たとえば、湯温が40℃の場合、浴槽に入ってからの経過時間の基準値S0として300(=360−30(40−38))を設定する(S148)。そして、浴槽に入ってからの経過時間Sを測定し(S171)、経過時間Sが基準値S0(=300)に達したら(S173でYes)、ワーニングを発する(S174)。基準値300の場合に300秒後の脳活動量が基準値に達することが入浴開始時に判るので、この第8実施形態では、入浴開始時等に1回だけ演算を行って、基準値に至る300秒間は、圧力センサー112の動きのみを監視して時間測定だけを行い、このシステムにのみ特有に必要となる値の演算を行わないようにするのである。このようにしても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
たとえば、上記実施形態においては、浴槽湯温・入浴時間帯・入浴開始からの時間に応じて、脳活動量の初期値Y・演算係数A・基準値Z0を設定した。しかしながら、これらのパラメーターだけではなく、たとえば、浴室リモコン123に、アルコールセンサー・においセンサーなどを取り付けることで、これらのセンサーの検出値を反映して、脳活動量の初期値Y・演算係数A・基準値Z0を設定してもよい。食事後の入浴は、食事前の入浴よりも脳活動が低下しやすいからである。また飲酒量が多いほど、脳活動が低下しやすいからである。
また上記実施形態では、入浴者が動いた場合に、現在の脳活動量Y/現在の脳活動に関連する累積値Zを変えることなく維持するようにした(S1727/S17273)。しかしながら、入浴者が動けば現在の脳活動が増えるとして、現在の脳活動量Yに所定の演算係数を加算したり、現在の脳活動に関連する累積値Zから所定の演算係数を減算してもよい。
さらに上記実施形態では、風呂出温度センサー111で検出した湯温Xに基づいて、脳活動量の初期値Yや脳活動に関連する累積値の基準値Z0を設定したが、これらの値を浴室温度,外気温,浴槽の貯湯量などに基づいて設定してもよい。またこれらと湯温などを組み合わせて設定してもよい。また演算係数Aを設定するときに湯温や外気温を考慮してもよい。この場合、浴室温度・外気温は低いほど、また浴槽の貯湯量が多いほど、白い湯気が浴湯表面から立ち登りやすく、浴湯表面の酸素分圧が低くなっており、血中の炭酸濃度が上がりやすい。そこで、浴室温度・外気温は低いほど、また浴槽の貯湯量が多いほど、早期にワーニングするようにするとよい。
また上記実施形態では、ワーニングとして、「軽く身体を動かしてください」というアナウンスを流したが、チャイムやブザー・メロディーなどの音声や、ランプなどによるものであってもよい。またそれらの音声が徐々に大きくなったり、ランプなどが徐々に明るくなったり、点滅したりしてもよい。さらに、アナウンスによって浴室リモコン123を操作するよう指示してもよい。
また上記実施形態では、人が浴槽に入ったか否かや入浴者が浴槽中で運動したか否かを圧力センサー112を用いて判定したが、モーションセンサーを用いてもよい。
さらに第1実施形態では、浴槽湯温に基づいて脳活動量初期値を設定し、一定時間ごとに一定値(演算係数A)を減算することで現在の脳活動量を逐次演算したが、これに限らず、脳活動量初期値を一定値として、浴槽湯温に基づいて可変な演算係数Aを減算することで現在の脳活動量を逐次演算してもよい。また第3実施形態では、浴槽湯温に基づいての基準値を設定するとともに、一定時間ごとに一定値を累積することで脳活動に関連する累積値を逐次演算したが、基準値を一定値として、浴槽湯温に基づいて可変な演算係数Aを累積することで脳活動に関連する累積値を逐次演算してもよい。
演算係数などの具体的な数値は一例に過ぎない。仕様等に合わせて適宜設定すればよい。浴槽の温度、入浴時間帯、入浴開始からの時間に応じて、脳活動量の初期値(上限値)や減算量を設定するのにかえて、除算・微積分等各種演算を用いても良いし、浴槽の大きさに応じて(同じように身体を動かしても、動く浴槽水の水量に応じて圧力センサー112の出力が変わるので)圧力センサー112の出力と運動量の関係を可変させても良い。浴室が寒い時とは、外気温が低い時に起こるので、浴室温度に代えて外気温を用いるようにしても良い。
さらに、浴槽の温度、入浴時間帯、入浴開始からの時間等をマトリックス状の一覧(一種の図や表)とし、そこから求められるワーニングまでの時間に基づいて(一種の演算)、脳活動量を維持するようにしても良い。
上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。