JP2017111207A - エレクトロクロミック装置及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一般に、エレクトロクロミック装置は、2つの平板状の電極のうちの何れかにエレクトロクロミック材料を含む層を形成した後、該エレクトロクロミック材料を含む層と、イオン伝導可能な電解質層とを挟みこむように2つの電極を貼り合わせて作製される。そして速い応答性を得るため、電解質層には液体状の電解質(電解液)が用いられている。
上記製法において貼合せプロセスをなくすことができれば、曲面など多様な部位に装置を形成することが可能となり、応用範囲が広がるとともに、片側の支持体が不要となるため低コストで生産できるので、貼合せプロセスなしの製法が提案されている。
しかし、支持体が片側のみであるため、電解質層の上に透明酸化物電極を直接形成する場合には電極の電気的抵抗が高くなるという問題があった。また、電解液を完全に密閉することは困難であり、電解液の漏れなどの不具合に対応するため固体状の電解質に変えると電気伝導度が低くなり、所望の発消色特性が得られないという問題があった。
1) 支持体上に、第1の電極層、第1のエレクトロクロミック層、固体電解質層、第2のエレクトロクロミック層、第2の電極層をこの順に有し、更に保護層を有するエレクトロクロミック装置において、前記第1のエレクトロクロミック層が下記一般式(1)で示されるラジカル重合性官能基を有するトリアリールアミン誘導体を含有し、前記第2のエレクトロクロミック層が金属酸化物からなることを特徴とするエレクトロクロミック装置。
[一般式(1)]
An−Bm
但し、n=2のときmは0、n=1のときmは0又は1である。Aは下記一般式(2)で示される構造を有し、m=1のとき、R1〜R15のいずれかの位置でBと結合している。Bは下記一般式(3)で示される構造を有し、m=1のとき、R16〜R21のいずれかの位置でAと結合している。また、A及びBの少なくとも1つはラジカル重合性官能基を有する。
[一般式(2)]
2) 前記固体電解質層が絶縁性金属酸化物からなる微粒子を含むことを特徴とする1)に記載のエレクトロクロミック装置。
3) 支持体上に真空製膜法で第1の電極層を形成し、その上に塗布法で第1のエレクトロクロミック層を形成し、その上に電解質材料を塗布した後、固体化し、その上に真空製膜法で第2のエレクトロクロミック層及び第2の電極層を順次形成した後、保護層を形成する工程を含むことを特徴とする1)又は2)に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
また、貼合せプロセスなしで作製できることから、多様な部位にエレクトロクロミック装置を形成でき、エレクトロクロミック装置の適用範囲を広げることができる。
また、一般式(1)で示されるトリアリールアミン誘導体を含有する発色濃度に優れた第1のエレクトロクロミック層と、製膜が容易な金属酸化物からなる第2のエレクトロクロミック層を有するので良好な酸化還元反応が得られる。即ち、第1の電極層側に+電圧を印加すると、第1のエレクトロクロミック層が酸化反応し、第2のエレクトロクロミック層が還元反応して発色する。また電圧を逆に印加すると消色する。また、黒色など色彩特性にも優れた装置、特に黒色の調光装置を実現できる。
更に、固体電解質層に無機微粒子を含むことが好ましい。これにより第2のエレクトロクロミック層形成時の熱による電解質層のダメージを軽減できるとともに、均一な第2のエレクトロクロミック層を形成することができ、良好な酸化還元反応が得られる。
保護層材料は有機材料、無機材料から選択することが出来、積層することが好ましい。有機材料の形成プロセスには塗布法、無機材料の形成プロセスには真空製膜法などを用いることができる。
図1は、第1の実施形態に係るエレクトロクロミック装置の一例を示す概略断面図である。エレクトロクロミック装置10は、支持体11と、支持体11上に順次積層された、第1の電極層12、第1のエレクトロクロミック層13、固体電解質層14、第2のエレクトロクロミック層15、第2の電極層16、及び保護層17を有する。
この例では、第1の電極層12、第2のエレクトロクロミック層15、第2の電極層16、及び保護層17は無機材料(金属酸化物など)の真空製膜法で形成し、他の層は塗布法で製膜する。真空製膜法で緻密な膜を形成することにより、電極層の導電性、無機保護層のバリア性を向上させるとともに、有機層を塗布法で製膜することにより生産性が向上する。また、真空製膜法により、第2のエレクトロクロミック層15、第2の電極層16を形成することが可能となり、塗布プロセスにより固体電解質層14を劣化させることがないので、装置の性能が向上する。
[支持体]
支持体11は、第1の電極層12、第1のエレクトロクロミック層13、固体電解質層14、第2のエレクトロクロミック層15、第2の電極層16、及び保護層17を支持する機能を有する。
支持体11の材料としては、前記各層を支持さえできれば、周知の有機材料や無機材料をそのまま用いることができる。その例としては、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、フロートガラス、ソーダ石灰ガラス等のガラス基板などが挙げられる。また、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂基板を用いてもよい。更に、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属基板を用いてもよい。
なお、エレクトロクロミック装置10が第2の電極層16側から視認する反射型表示装置である場合は、支持体11の透明性は不要である。また、支持体11として導電性金属材料を用いる場合は、支持体11が第1の電極層12を兼ねることもできる。 また、支持体11の表面に、水蒸気バリア性、ガスバリア性、視認性を高めるために透明絶縁層、反射防止層等をコーティングしてもよい。
第1の電極層12及び第2の電極層16の材料としては、導電性を有する材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。しかし、調光装置として利用する場合は、光の透過性を確保する必要があるため、透明かつ導電性に優れた透明導電性材料が用いられる。これにより、透明性が得られると共に着色のコントラストをより高めることができる。
前記透明導電性材料としては、例えば、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)等の無機材料などが挙げられる。これらの中でも、真空成膜により形成されたインジウム酸化物(In酸化物)、スズ酸化物(Sn酸化物)、及び亜鉛酸化物(Zn酸化物)のいずれか1つを含む無機材料が好ましい。
前記In酸化物、Sn酸化物、及びZn酸化物は、スパッタ法、蒸着法により、容易に成膜が可能であると共に、良好な透明性と電気伝導度が得られる材料である。これらの中でも、InSnO、GaZnO、SnO、In2O3、ZnOが特に好ましい。
更に、透明性を有する銀、金、カーボンナノチューブ、金属酸化物等のネットワーク電極、又はこれらの複合層も有用である。前記ネットワーク電極とは、カーボンナノチューブや他の高導電性の非透過性材料等を微細なネットワーク状に形成して透過率を持たせた電極である。
これらの材料としてITOを用いた場合、第1の電極層12及び第2の電極層16の各々の厚みは、20〜500nmが好ましく、50〜200nmがより好ましい。
また、調光ミラーとして利用する場合には、第1の電極層12及び第2の電極層16のいずれかが反射機能を有する構造であってもよい。その場合には、第1の電極層12及び第2の電極層16の材料として金属材料を含むことができる。前記金属材料としては、例えば、Pt、Ag、Au、Ni、Al、Ti、Cr、ロジウム、又はこれらの合金、あるいはこれらの積層構成などが挙げられる。
第1の電極層12及び第2の電極層16の作製方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
第1のエレクトロクロミック層13は、前記一般式(1)で示されるラジカル重合性官能基を有するトリアリールアミン誘導体を含有する。
第1のエレクトロクロミック層13が該トリアリールアミン誘導体の重合により形成されると、繰返し駆動(酸化還元反応)特性が良好になるとともに光耐久性に優れる点で有利である。また、消色状態が透明であり、酸化反応で高濃度の着色発色性能が得られる。更に、前記トリアリールアミン誘導体と、これとは異なる他のラジカル重合性化合物を含むエレクトロクロミック材料(組成物)を架橋した架橋物を含有すると、重合物の耐溶解性及び耐久性が一層向上するので好ましい。
−一価の有機基−
前記一般式(2)及び一般式(3)における一価の有機基としては、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、アミド基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノカルボニル基、スルホン酸基、置換基を有していてもよいアルコキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、スルホンアミド基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノスルホニル基、アミノ基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよい複素環基などが挙げられる。
これらの中でも、安定動作及び光耐久性の点から、アルキル基、アルコキシル基、水素原子、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン基、アルケニル基、アルキニル基が特に好ましい。
前記置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
前記ラジカル重合性官能基としては、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば特に限定されない。その例としては、下記一般式(i)で表される、1−置換エチレン官能基、下記一般式(ii)で表される、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられるが、中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
(1)1−置換エチレン官能基
前記一般式(i)で表される1−置換エチレン官能基の具体例としては、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基などが挙げられる。
前記一般式(ii)で表される1,1−置換エチレン官能基の具体例としては、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基などが挙げられる。
なお、これらX1、X2、Yに係る置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
<例示化合物1>
他のラジカル重合性化合物は、前記ラジカル重合性官能基を有するトリアリールアミン誘導体とは異なる化合物であって、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有する。
その例としては、1官能、2官能、又は3官能以上のラジカル重合性化合物、機能性モノマー、ラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらの中でも、2官能以上のラジカル重合性化合物が特に好ましい。
他のラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性官能基としては、前記ラジカル重合性官能基を有するトリアリールアミン誘導体におけるラジカル重合性官能基と同様であるが、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
なお、上記において、EO変性はエチレンオキシ変性を、PO変性はプロピレンオキシ変性を、ECH変性はエピクロロヒドリン変性を指す。
前記ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
前記ラジカル重合性官能基を有するトリアリールアミン誘導体の含有量は、エレクトロクロミック組成物の全量に対して、10〜100質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましい。前記含有量が10質量%以上であれば、エレクトロクロミック層のエレクトロクロミック機能が充分に発現し、加電圧による繰り返し使用での耐久性が良好であり、発色感度が良好である。また、前記含有量が100質量%でもエレクトロクロミック機能は発現し、この場合、最も厚みに対する発色感度が高い。しかし、電荷の授受に必要であるイオン液体との相溶性が低くなる場合があり、加電圧による繰り返し使用での耐久性の低下などによる電気特性の劣化が現れる。使用されるプロセスによって要求される電気特性が異なるため一概には言えないが、発色感度と繰り返し耐久性の両特性のバランスを考慮すると、30〜90質量%がより好ましい。
前記エレクトロクロミック組成物は、前記ラジカル重合性官能基を有するトリアリールアミン誘導体と前記他のラジカル重合性化合物との架橋反応を効率よく進行させるため、必要に応じて重合開始剤を含有することが好ましい。
前記重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられるが、これらの中でも、重合効率の点から光重合開始剤が好ましい。
なお、光重合促進効果を有する化合物を単独で用いたり、前記光重合開始剤と併用したりすることもできる。このような化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
第2のエレクトロクロミック層15は真空製膜法で固体電解質上に形成する。作製方法としては、例えば真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
前記エレクトロクロミック層13及び15の厚みは特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2〜5.0μmが好ましい。厚みが0.2μm以上であれば、発色濃度が得難くなることはなく、5.0μm以下であれば、製造コストが増大したり、着色によって視認性が低下したりすることはない。
固体電解質層14は、光又は熱硬化型樹脂中に電解質を保持した膜として形成される。
前記硬化型樹脂、電解質、及び無機微粒子などを混合した溶液を第1のエレクトロクロミック層13上に塗布した後、光又は熱により硬化させることが好ましい。しかし、予め多孔質の無機微粒子層を形成した後、硬化型樹脂や電解質を混合した溶液を無機微粒子層に浸透するように塗布し、光又は熱で硬化させることもできる。
前記電解液としては、イオン液体等の液体電解質、又は固体電解質を溶媒に溶解した溶液が用いられるが、電解質としてLiイオンを混合することが好ましい。金属酸化物エレクトロクロミック材料の酸化還元反応にはL+又はH+が寄与するためである。
電解質の材料としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩を用いることができる。具体的には、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3COO、KCl、NaClO3、NaCl、NaBF4、NaSCN、KBF4、Mg(ClO4)2、Mg(BF4)2などが挙げられる。
有機のイオン性液体には、室温を含む幅広い温度領域で液体状態を示すものがあり、カチオン成分とアニオン成分からなる。
前記カチオン成分としては、例えば、N,N−ジメチルイミダゾール塩、N,N−メチルエチルイミダゾール塩、N,N−メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N−ジメチルピリジニウム塩、N,N−メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体等の芳香族系の塩;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム等の脂肪族4級アンモニウム系化合物などが挙げられる。
前記アニオン成分としては、大気中の安定性の面でフッ素を含んだ化合物が好ましく、例えば、BF4 −、CF3SO3 −、PF4 −、(CF3SO2)2N−、B(CN4)−などが挙げられる。
これらのカチオン成分とアニオン成分を組み合わせて処方したイオン性液体を用いることができる。
このような材料としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエチレングリコールの誘導体が挙げられる。また、前記硬化型樹脂として光硬化可能な樹脂を用いることが好ましい。熱重合や溶剤を蒸発させて薄膜化する方法に比べて、低温かつ短時間で素子を製造できるためである。
前記無機微粒子の大きさ(平均粒径)には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm〜10μmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。
保護層17は、第2の電極層16の上面を覆うように形成される。また、必要に応じて各層の側面を覆うように形成してもよい。例えば紫外線硬化性や熱硬化性の絶縁性樹脂等を、第1の電極層12、第1のエレクトロクロミック層13、固体電解質層14、第2のエレクトロクロミック層15の各側面、並びに第2の電極層16の側面及び上面を覆うように塗布し、その後、硬化させることにより形成できる。更に保護層17は、硬化性樹脂と無機材料との積層構造とすることが好ましい。これにより、酸素や水に対するバリア性が向上する。
前記無機材料としては、絶縁性、透明性、耐久性が高い材料が好ましく、具体例としては、シリコン、アルミニウム、チタン、亜鉛、錫などの酸化物又は硫化物、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。 これらの膜はスパッタ法や蒸着法などの真空製膜プロセスで容易に形成することができる。
保護層17の厚みには特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、0.5〜10μmが好ましい。
図2は、第2の実施形態に係るエレクトロクロミック装置の一例を示す概略断面図である。
第2の実施形態のエレクトロクロミック装置20は、支持体11が支持体101に置換された点、及び保護層17が無機保護層17−1、有機保護層17−2の積層構成になっている点で第1の実施形態のエレクトロクロミック装置10(図1参照)と相違する。
支持体101は光学レンズ基板である。支持体101は各層を形成する面が曲面となっているため、従来のような電解液を挟んで2枚の支持体を貼り合わせる方法では、各層の形成は極めて難しい。一方、本実施形態では、前述した貼合せプロセスを有しない製造方法により、支持体の層形成面が平面の場合と同様に各層を積層形成できる。なお、支持体101は、メガネ等であっても構わない。
(1)各層を形成する面が曲面である支持体を用いることができるため、支持体として光学レンズやメガネ等の曲面を有する光学素子を選定できる。
(2)光学レンズやメガネ等の光学素子を用いることにより、容易に調光可能なエレクトロクロミック装置(電気的に調光可能な光学デバイス)を実現できる。
<図1に示すエレクトロクロミック装置10の作製>
<<第1の電極層、及び第1のエレクトロクロミック層の形成>>
支持体11(40mm×40mm、厚み0.7mmのガラス基板)上の20mm×20mmの領域、及び引き出し部分にメタルマスクを施した後、スパッタ法によりITO膜を厚み100nmに製膜して、第1の電極層12を形成した。
次いで、第1の電極層12であるITO膜の表面に、(a)下記構造式Aで示される化合物、(b)ポリエチレングリコールジアクリレート(KAYARAD PEG400DA、日本化薬社製)、(c)光重合開始剤(IRGACURE 184、BASF社製)、(d)テトラヒドロフランを、a:b:c:d=10:5:0.25:85(質量比)となるように混合した溶液をスピンコート法で塗布した後、UV60℃のアニール処理を1分間行い、紫外線照射により硬化させて、有機高分子材料からなる第1のエレクトロクロミック層13を形成した。膜厚は1.3μmであった。
[構造式A]
電解質として(a)過塩素酸リチウム、溶媒として(b)ポリエチレングリコール(分子量200)と(c)炭酸プロピレン、紫外線硬化材として(d)ウレタン接着剤(LOCTITE(登録商標)3301、ヘンケル社製)を、a:b:c:d=1.4:3:8:10(質量比)となるように混合して電解液を得た。この電解液に、SiO2ナノ粒子の30質量%メチルエチルケトン分散液(オルガノシリカゾル、日産化学工業社製、10〜15nm標準タイプ)を10質量%混合し、第1のエレクトロクロミック層13の表面にスピンコート法により塗布し、60℃のホットプレート上で1分間乾燥させた後、紫外線照射により硬化させて固体電解質層14を形成した。
続いて、固体電解質層14上に、真空蒸着法によりWO3膜を400nmの平均厚みで成膜して、第2のエレクトロクロミック層15を形成し、更にその上に、第1の電極層12として形成したITO膜と重なる20mm×20mmの領域、及び、第1の電極層12とは異なる領域にメタルマスクを施した後、スパッタ法によりITO膜を厚み100nmに製膜して、第2の電極層16を作製した。なお、第1の電極層12とは異なる領域に形成したITO膜は、第2の電極層16の引き出し部分である。作製した第2の電極層16のシート抵抗は約100Ω/□であった。
第2の電極層16の上に、紫外線硬化接着剤(KAYARAD R−604、日本化薬社製)に光重合開始剤(IRGACURE 184、BASF社製)を5質量%添加した塗布液をスピンコート法により塗布した。次いで、紫外線照射により硬化させて平均厚み3μmの保護層17を形成した。
以上により、図1に示す構造のエレクトロクロミック装置10を得た。このエレクトロクロミック装置10は、調光ガラス装置として使用できる。
作製したエレクトロクロミック装置10の発消色を確認した。即ち、第1の電極層12の引き出し部分と第2の電極層16の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を3秒間印加したところ、第1の電極層12と第2の電極層16の重なった部分に、上記構造式Aのエレクトロクロミック化合物に由来する青緑発色及びWO3の発色に由来する青発色が確認された。
更に、第1の電極層12の引き出し部分と第2の電極層16の引き出し部分との間に、−1Vの電圧を3秒間印加したところ、第1の電極層12と第2の電極層16の重なった部分の色素が消色し、透明になることが確認された。
<図1に示すエレクトロクロミック装置10の作製>
<<電解質の充填と固体化>>
電解質として(a)1−エチル−3−メチルイミダゾリウムの(FSO2)2N−塩、(b)過塩素酸リチウム、(c)ポリエチレングリコールジアクリレート(KAYARAD PEG400DA、日本化薬社製)、(d)光重合開始剤(IRGACURE 184、BASF社製)、(e)SiO2ナノ粒子の40質量%メタノール分散液(オルガノシリカゾル、日産化学工業社製、10〜15nm標準タイプ)を、a:b:c:d:e=2:1:3:0.15:10(質量比)となるように混合した。得られた溶液を、第1のエレクトロクロミック層13の表面にスピンコート法で塗布し、60℃のホットプレート上で1分間乾燥させた後、紫外線照射により硬化させて固体電解質層14を形成した。
上記した点以外は実施例1と同様にして、図1に示すエレクトロクロミック装置10を作製した。このエレクトロクロミック装置10は、調光ガラス装置として使用できる。
作製したエレクトロクロミック装置10の発消色を確認した。即ち、第1の電極層12の引き出し部分と第2の電極層16の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を3秒間印加したところ、第1の電極層12と第2の電極層16の重なった部分に、上記構造式Aのエレクトロクロミック化合物に由来する青緑発色及びWO3の発色に由来する青発色が確認された。
更に、第1の電極層12の引き出し部分と第2の電極層16の引き出し部分との間に、−1Vの電圧を3秒間印加したところ、第1の電極層12と第2の電極層16の重なった部分の色素が消色し、透明になることが確認された。
<図1に示すエレクトロクロミック装置10の作製>
<<第1のエレクトロクロミック層の形成>>
第1の電極層12であるITO膜の表面に、(a)下記構造式Bで表される化合物、(b)ポリエチレングリコールジアクリレート(KAYARAD PEG400DA、日本化薬社製)、(c)光重合開始剤(IRGACURE 184、BASF社製)、(d)テトラヒドロフランを、a:b:c:d=10:5:0.25:85(質量比)となるように混合した。得られた溶液をスピンコート法で塗布した後、UV60℃のアニール処理を1分間行い、紫外線照射により硬化させて有機高分子材料からなる第1のエレクトロクロミック層13を形成した。膜厚は1.3μmであった。
上記した点以外は、実施例2と同様にして、図1に示すエレクトロクロミック装置10を作製した。このエレクトロクロミック装置10は、調光ガラス装置として使用できる。
[構造式B]
作製したエレクトロクロミック装置10の発消色を確認した。即ち、第1の電極層12の引き出し部分と第2の電極層16の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を3秒間印加したところ、第1の電極層12と第2の電極層16の重なった部分に、上記構造式Bのエレクトロクロミック化合物に由来する黄色発色及びWO3の発色に由来する青発色が確認され、黒色となった。
更に、第1の電極層12の引き出し部分と第2の電極層16の引き出し部分との間に、−1Vの電圧を3秒間印加したところ、第1の電極層12と第2の電極層16の重なった部分の色素が消色し、透明になることが確認された。
<図1に示すエレクトロクロミック装置10の作製>
実施例3における構造式Bで表される化合物を、下記構造式Cで表される化合物に変えた点以外は、実施例3と同様にして、図1に示すエレクトロクロミック装置10を作製した。このエレクトロクロミック装置10は、調光ガラス装置として使用できる。
[構造式C]
作製したエレクトロクロミック装置10の発消色を確認した。即ち、第1の電極層12の引き出し部分と第2の電極層16の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を3秒間印加したところ、第1の電極層12と第2の電極層16の重なった部分に、上記構造式Cのエレクトロクロミック化合物に由来するシアン発色及びWO3の発色に由来する青発色が確認された。
更に、第1の電極層12の引き出し部分と第2の電極層16の引き出し部分との間に、−1Vの電圧を3秒間印加したところ、第1の電極層12と第2の電極層16の重なった部分の色素が消色し、透明になることが確認された。
<図1に示すエレクトロクロミック装置10の作製>
実施例3における構造式Bで表される化合物を、下記構造式Dで表される化合物に変えた点以外は、実施例3と同様にして、図1に示すエレクトロクロミック装置10を作製した。このエレクトロクロミック装置10は、調光ガラス装置として使用できる。
[構造式D]
<<発消色駆動>>
作製したエレクトロクロミック装置10の発消色を確認した。即ち、第1の電極層12の引き出し部分と第2の電極層16の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を3秒間印加したところ、第1の電極層12と第2の電極層16の重なった部分に、上記構造式Dのエレクトロクロミック化合物に由来するシアン発色及びWO3の発色に由来する青発色が確認された。
更に、第1の電極層12の引き出し部分と第2の電極層16の引き出し部分との間に、−1Vの電圧を3秒間印加したところ、第1の電極層12と第2の電極層16の重なった部分の色素が消色し、透明になることが確認された。
<図1に示すエレクトロクロミック装置10の作製>
実施例3における構造式Bで表される化合物を、下記構造式Eで表される化合物に変えた点以外は、実施例3と同様にして、図1に示すエレクトロクロミック装置10を作製した。このエレクトロクロミック装置10は、調光ガラス装置として使用できる。
[構造式E]
作製したエレクトロクロミック装置10の発消色を確認した。即ち、第1の電極層12の引き出し部分と第2の電極層16の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を3秒間印加したところ、第1の電極層12と第2の電極層16の重なった部分に、上記構造式Eのエレクトロクロミック化合物に由来する橙発色及びWO3の発色に由来する青発色が確認された。
更に、第1の電極層12の引き出し部分と第2の電極層16の引き出し部分との間に、−1Vの電圧を3秒間印加したところ、第1の電極層12と第2の電極層16の重なった部分の色素が消色し、透明になることが確認された。
11 支持体
12 第1の電極層
13 第1のエレクトロクロミック層
14 固体電解質層
15 第2のエレクトロクロミック層
16 第2の電極層
17 保護層
17−1 無機保護層
17−2 有機保護層
20 エレクトロクロミック装置
101 支持体(光学レンズ基板)
Claims (3)
- 支持体上に、第1の電極層、第1のエレクトロクロミック層、固体電解質層、第2のエレクトロクロミック層、第2の電極層をこの順に有し、更に保護層を有するエレクトロクロミック装置において、前記第1のエレクトロクロミック層が下記一般式(1)で示されるラジカル重合性官能基を有するトリアリールアミン誘導体を含有し、前記第2のエレクトロクロミック層が金属酸化物からなることを特徴とするエレクトロクロミック装置。
[一般式(1)]
An−Bm
但し、n=2のときmは0、n=1のときmは0又は1である。Aは下記一般式(2)で示される構造を有し、m=1のとき、R1〜R15のいずれかの位置でBと結合している。Bは下記一般式(3)で示される構造を有し、m=1のとき、R16〜R21のいずれかの位置でAと結合している。また、A及びBの少なくとも1つはラジカル重合性官能基を有する。
[一般式(2)]
- 前記固体電解質層が絶縁性金属酸化物からなる微粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
- 支持体上に真空製膜法で第1の電極層を形成し、その上に塗布法で第1のエレクトロクロミック層を形成し、その上に電解質材料を塗布した後、固体化し、その上に真空製膜法で第2のエレクトロクロミック層及び第2の電極層を順次形成した後、保護層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
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