JP2016045404A - エレクトロクロミック素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】解像性及びメモリ性が向上し、滲みを低減できるエレクトロクロミック素子を提供する。
【解決手段】第1の電極2と、第1の電極2上に第1のエレクトロクロミック層3を有し、第1の電極2と対向するように設けられた第2の電極6と、第2の電極6上に第2のエレクトロクロミック層5を有し、第1の電極2と第2の電極6との間に充填された電解質4とを有してなり、第2のエレクトロクロミック層5が、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物を含有してなり、第2のエレクトロクロミック層5が、複数分割して独立に形成されているエレクトロクロミック素子である。
【選択図】図1

Description

本発明は、エレクトロクロミック素子に関する。
近年、紙に替わる電子媒体として、電子ペーパーの開発が盛んに行われている。前記電子ペーパーは、表示装置が紙のように用いられるところに特徴がある。このため、CRTや液晶ディスプレイといった従来の表示装置とは異なった特性が要求される。例えば、反射型表示装置であり、かつ高い白反射率及び高いコントラスト比を有すること、高精細な表示ができること、表示にメモリ効果があること、低電圧でも駆動できること、薄くて軽いこと、安価であること、などの特性が要求される。これらの中でも、表示の品質に関わる特性である、紙と同等な白反射率及びコントラスト比についての要求度が高い。
前記電子ペーパー用途の表示装置として、例えば、反射型液晶を用いる方式、電気泳動を用いる方式、トナー泳動を用いる方式、などが提案されている。しかし、いずれの方式も白反射率及びコントラスト比を確保しながら多色表示を行うことは極めて困難である。
一般に多色表示を行うためには、カラーフィルタを設けるが、前記カラーフィルタを設けると、前記カラーフィルタ自身が光を吸収し、反射率が低下する。また、前記カラーフィルタは、一画素をレッド(R)、グリーン(G)、及びブルー(B)に3分割するため、表示装置の反射率が低下し、それに伴ってコントラスト比が低下する。白反射率及びコントラスト比が大幅に低下した場合には、視認性が非常に悪くなり、電子ペーパーとして用いることが困難である。
一方、前記カラーフィルタを設けず、反射型の表示装置を実現するための有望な技術として、エレクトロクロミック現象を用いる方式がある。電圧を印加することで、可逆的に酸化還元反応が起こり、可逆的に色が変化する現象をエレクトロクロミズムという。前記エレクトロクロミズムを引き起こすエレクトロクロミック化合物の発色/消色(以下、「発消色」と称する)を利用した表示装置が、エレクトロクロミック表示装置である。
前記エレクトロクロミック表示装置は、反射型の表示装置であること、メモリ効果があること、低電圧で駆動できることから、電子ペーパー用途の表示装置技術の有力な候補として、材料開発からデバイス設計に至るまで、幅広く研究開発が行われている。
前記エレクトロクロミック表示装置は、酸化還元反応を利用して発消色を行う原理ゆえに、発消色の応答速度が遅いという欠点がある。このため、例えば、エレクトロクロミック化合物を電極近傍に固定させることによって発消色の応答速度の改善を図った技術が提案されている(特許文献1参照)。この提案によれば、従来数10秒間程度であった発消色に要する時間が、無色から青色への発色時間、及び青色から無色への消色時間ともに1秒間程度まで向上している。しかし、発消色の応答速度は前記提案の技術で十分であるというわけではなく、エレクトロクロミック表示装置の研究開発に際しては、更なる発消色の応答速度の向上が必要である。
一方、前記エレクトロクロミック表示装置は、エレクトロクロミック化合物の構造によって様々な色を発色できるため、多色表示装置として期待されている。前記多色表示装置としては、例えば、複数種のエレクトロクロミック化合物の微粒子を積層したエレクトロクロミック化合物を用いた多色表示装置が提案されている(特許文献2参照)。この提案では、発色を示す電圧の異なる複数の機能性官能基を有するエレクトロクロミック化合物を複数積層し、多色表示エレクトロクロミック化合物とした多色表示装置の例が記載されている。
また、電解質層を挟み込む形でエレクトロクロミック層とラジカルポリマーを設け、更にその外側に電極を設けた構成、つまり、エレクトロクロミック層を表示側とすると反対側に逆の酸化還元反応をするラジカルポリマー層を設けた構成のエレクトロクロミック素子が提案されている(特許文献3参照)。この提案によると、応答速度、繰り返し性、及び化学的安定性などの特性を改善することができると記載されている。
また、エレクトロクロミック素子における、発消色の応答性と画像のボケ低減を両立することを解決課題とし、この課題を解決するため、電解質層が低分子液晶化合物とヘキサフルオロ燐酸イオンを対アニオンとする塩類との混合物からなる液晶状電解質により構成されているエレクトロクロミック素子が提案されている(特許文献4参照)。
しかし、前記特許文献4のように発色時の解像性が良いことはもちろん、エレクトロクロミック素子の特徴の1つであるメモリ性において、メモリ時の解像性が良いことも解像性として求められる。メモリ時の解像性が向上するということはメモリ性の向上につながる。また、最近の電極やTFTにおける作製技術の向上及び要求(デザインルール)に伴って、高解像度の製品がより廉価で一般的になりつつある。
そこで、本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、解像性及びメモリ性が向上し、滲みを低減できるエレクトロクロミック素子を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明のエレクトロクロミック素子は、第1の電極と、前記第1の電極上に第1のエレクトロクロミック層を有し、
前記第1の電極と対向するように設けられた第2の電極と、前記第2の電極上に第2のエレクトロクロミック層を有し、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に充填された電解質とを有してなり、
前記第2のエレクトロクロミック層が、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物を含有してなり、
前記第2のエレクトロクロミック層が、複数分割して独立に形成されている。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、解像性及びメモリ性が向上し、滲みを低減できるエレクトロクロミック素子を提供することができる。
図1は、本発明のエレクトロクロミック素子の一例を示す概略図である。 図2は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図3は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図4は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図5は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図6は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図7は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図8は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図9は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図10は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図11は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図12は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図13は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図14は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図15は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図16は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図17は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図18は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図19は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図20は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図21は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図22は、本発明のエレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。 図23は、実施例2においてメタルマスクを用いてパターニングを行った状態を示す図である。
(エレクトロクロミック素子)
本発明のエレクトロクロミック素子は、第1の電極と、第1のエレクトロクロミック層と、前記第1の電極と対向するように設けられた第2の電極と、第2のエレクトロクロミック層と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電解質とを有してなり、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
本発明においては、前記第2のエレクトロクロミック層が、酸化反応によって着色を呈するトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物を含有してなり、
前記第2のエレクトロクロミック層が、複数個に独立して形成されていることを特徴とし、複数の第2のエレクトロクロミック層が、パターン状に配列していることが好ましい。
これにより、第1のエレクトロクロミック層の還元反応と逆の酸化反応を第2のエレクトロクロミック層が含有するトリアリールアミンが行うことでメモリ性の向上を図ると共に、第2のエレクトロクロミック層が形成された第2の電極への負荷を低減しており、耐久性の改善につながり、発色時と経時の解像性が向上し、経時解像性の向上によりメモリ性の向上が図られる。
前記第2のエレクトロクロミック層が、複数個に独立して形成されている態様としては、前記第2の電極に対し一様に成膜されているのではなく形状的に分割されている態様、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物の重合の有無により特性的に分割されている態様などが挙げられる。
前記第2のエレクトロクロミック層の分割方法、分割のタイミングなどについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
具体的には、第2の電極毎に分割する方法、第2の電極の配置パターンと同様の形状に第2のエレクトロクロミック層を分割する方法、複数の第2の電極をまとめて1組とし、別の組と分割する方法、などが挙げられる。
前記第2のエレクトロクロミック層の成膜方法については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、スクリーン法、ディップ法、バス法、スプレー法、バーコート法、スパッタ法、電子線蒸着法、抵抗線加熱法などが挙げられる。
前記第2のエレクトロクロミック層が、第2の電極上のみに形成されていることが好ましい。これにより、解像度の向上をより実現できる。
前記第2のエレクトロクロミック層を前記第2の電極上のみに形成する方法としては、例えば、前記第2の電極上以外の前記第2のエレクトロクロミック層を除去又は最初から形成されないようにする方法、第2の電極上と第2の電極上以外の部分に壁のように特性が異なるエリアを設けるのではなく、第2の電極上とそれ以外で特性を変えることにより、横方向(水平方向)への電荷や電位の拡散を制限する方法、などが挙げられる。
これにより、前記第2の電極の形成に必要な図面(マスク図面、露光図面、CADやその他描画データ)を共通に用いることができるのでコスト抑制も可能である。また、同じフォトマスクを用いることができ、更なるコスト抑制が可能である。
前記第2のエレクトロクロミック層は、第2の電極よりも小さく形成されることが好ましい。
前記第2のエレクトロクロミック層の面積(実形成領域,特性変化領域)を前記第2の電極の面積より小さく形成することにより、更なる解像度の向上が実現できる。この場合、前記第2のエレクトロクロミック層の大きさは、前記第2の電極のサイズより小さなパターン(デザインルールでの)であることが好ましく、例えば、円柱、四角柱、多角柱、又はこれらに属さない柱状のものでも構わない。また、前記第2の電極に接する面は第2の電極と同サイズでも構わない。前記第2のエレクトロクロミック層の断面が台形や三角となる三角錐、四角錐、多角錐、又はその類似形状、これらの先端が無い形状であっても構わない。なお、前記エレクトロクロミック層は、第2の電極に接する面から第2の電極より小さく形成されていても構わない。
前記第2のエレクトロクロミック層は、2層以上からなる積層構造であることが好ましい。これにより、多色表示が可能となる。
前記第2のエレクトロクロミック層は、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物の重合の有無により、前記第2の電極上に複数分割して独立に形成されていることが好ましい。これにより、第2の電極上への第2のエレクトロクロミック層の形成範囲を重合の有無により切り分けることができる。
前記第2のエレクトロクロミック層は、光パターニング法により、前記第2の電極上に複数分割して独立に形成されていることが好ましい。
前記第2のエレクトロクロミック層の分割形成方法としては、例えば、スクライブやワイプなどで分割する方法、拭き取りをしての形成、分割する形成などが挙げられる。また、熱を用いた硬化や軟化によって分割領域を選択し、その後前記スクラブやワイプ、他にも洗浄や溶解などで分割する方法でも可能である。更に、光パターニング法がある。これらの中でも、前記光パターニング法は、TFTの作製においてもフォトリソを用いるように電極と同等のデザインルールでパターン形成(照射及び露光)が可能であるという利点がある。
前記光パターニング法としては、前述のフォトリソでも、レーザーでもその他既存のパターニング可能な方法でもよい。また、前記光パターニングを行うことで前記第2のエレクトロクロミック層の電気に対しての活性/非活性(抵抗率,誘電率)を変えることにより、光パターニング後の除去工程を省くこともできる。また、除去しないことは光パターニング後に凹凸が増加しない(ラフネスを抑えることができる)ため、更に層を形成する場合に有利である。
前記更に重ねる層として、第2のエレクトロクロミック層を重ねてもよいし、反射素子として用いるための反射層が用いられていてもよいし、保護層、電気特性等を調整するための絶縁層、誘電層、素子自体の耐久性向上などを目的とした層、フィルム、粒状、鎖状の粒子などを用いてもよい。この場合、全ベタの層ではなく、ネットワーク状、穴あきなどを用いて、電解質層が分断されないようにすることでエレクトロクロミック素子本来の動作を担保することが好ましい。また、凹凸が増加しないことは、第1の電極側の第1のエレクトロクロミック層に傷を付けないことにもつながる。なお、第1のエレクトロクロミック層から見て反対側の第2のエレクトロクロミック層に前述の各種機能層が必要に応じて用いられていてもよい。
前記光パターニング法は、前記第2のエレクトロクロミック層の形成後に限られず、露光による密着性の変化などにより、前記第2のエレクトロクロミック層の形成自体をパターニングすることもできる。また、光自体ではパターニングせず、露光対象物(前記第2の電極とそれ以外の箇所)が光によって密着性が異なれば、該密着性の変化も光を用いたパターニングと考える。
もちろん、前記第2のエレクトロクロミック層の形成前に光パターニングを行い、前記第2のエレクトロクロミック層を形成後に前述の方法で除去を行ってもよい。また、前記第2のエレクトロクロミック層を形成前後に光パターニングを行ってもよく、更に、前記第2のエレクトロクロミック層形成後に前述の方法で除去を行ってもよい。
<第2のエレクトロクロミック層>
前記第2のエレクトロクロミック層は、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
更に、前記酸化反応によって着色を呈する材料としては、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物と、該トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物とを含む第2のエレクトロクロミック組成物を架橋した架橋物であることが、重合物の溶解性及び耐久性の点からより好ましい。
ここで、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む第2のエレクトロクロミック組成物を重合した重合物からなる第2のエレクトロクロミック層を前記第2の電極上に積層した態様、前記第2のエレクトロクロミック層を前記第2の電極上に2層以上積層した態様、前記第2のエレクトロクロミック層を前記第2の電極上の一部に積層した態様、などが挙げられる。
また、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物と、該トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物を含む第2のエレクトロクロミック組成物を架橋した架橋物からなる第2のエレクトロクロミック層を前記第2の電極上に積層した態様、前記第2のエレクトロクロミック層を前記第2の電極上に2層以上積層した態様、前記第2のエレクトロクロミック層を前記第2の電極上の一部に積層した態様、などが挙げられる。
<<第2のエレクトロクロミック組成物>>
前記第2のエレクトロクロミック組成物は、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含有し、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物以外の他のラジカル重合性化合物を含有することが好ましく、重合開始剤を含有することがより好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
−トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物−
前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物は、第2の電極の表面において酸化還元反応を有するエレクトロクロミック機能を付与するために重要である。
前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物としては、下記一般式1で表される化合物が挙げられる。
[一般式1]
−B
ただし、n=2のときにはmは0であり、n=1のときmは0又は1である。A及びBの少なくとも1つはラジカル重合性官能基を有する。前記Aは下記一般式2で示される構造であり、RからR15のいずれかの位置で前記Bと結合している。前記Bは下記一般式3で示される構造であり、R16からR21のいずれかの位置で前記Aと結合している。
[一般式2]
[一般式3]
ただし、RからR21は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記一価の有機基のうち少なくとも1つはラジカル重合性官能基である。
−一価の有機基−
前記一般式2及び前記一般式3における前記一価の有機基としては、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、アミド基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノカルボニル基、スルホン酸基、置換基を有していてもよいアルコキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、スルホンアミド基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノスルホニル基、アミノ基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよい複素環基などが挙げられる。
これらの中でも、安定動作などの点から、アルキル基、アルコキシ基、水素原子、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基が特に好ましい。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基などが挙げられる。
前記複素環基としては、例えば、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾールなどが挙げられる。
前記置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
−ラジカル重合性官能基−
前記ラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であればいずれでもよい。
前記ラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(i)で表される官能基が挙げられる。
ただし、前記一般式(i)中、Xは、置換基を有してもよいアリーレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R100)−基〔R100は、水素、アルキル基、アラルキル基、アリール基を表す。〕、又は−S−基を表す。
前記一般式(i)のアリーレン基としては、例えば、置換基を有してもよいフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
前記アルケニレン基としては、例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記一般式(i)で表されるラジカル重合性官能基の具体例としては、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基などが挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(ii)で表される官能基が挙げられる。
ただし、前記一般式(ii)中、Yは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR101基〔R101は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又はCONR102103(R102及びR103は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい。)〕を表す。また、Xは、前記一般式(i)のXと同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y及びXの少なくともいずれか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、芳香族環である。
前記一般式(ii)のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などが挙げられる。
前記一般式(ii)で表されるラジカル重合性官能基の具体例としては、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基などが挙げられる。
なお、これらX、X、Yについての置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
前記ラジカル重合性官能基の中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物としては、以下の一般式(1−1)から(1−3)で表される化合物が好適に挙げられる。
[一般式1−1]
[一般式1−2]
[一般式1−3]
前記一般式(1−1)から(1−3)中、R27からR88は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記一価の有機基のうち少なくとも1つはラジカル重合性官能基である。
前記一価の有機基及び前記ラジカル重合性官能基としては、前記一般式(1)と同じものが挙げられる。
前記一般式(1)、及び前記一般式(1−1)から(1−3)で表される例示化合物としては、以下に示すものが挙げられる。前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物はこれらに限定されるものではない。
<例示化合物1>
<例示化合物2>
<例示化合物3>
<例示化合物4>
<例示化合物5>
<例示化合物6>
<例示化合物7>
<例示化合物8>
<例示化合物9>
<例示化合物10>
<例示化合物11>
<例示化合物12>
<例示化合物13>
<例示化合物14>
<例示化合物15>
<例示化合物16>
<例示化合物17>
<例示化合物18>
<例示化合物19>
<例示化合物20>
<例示化合物21>
<例示化合物22>
<例示化合物23>
<例示化合物24>
<例示化合物25>
<例示化合物26>
<例示化合物27>
<例示化合物28>
<例示化合物29>
<例示化合物30>
<例示化合物31>
<例示化合物32>
<例示化合物33>
<例示化合物34>
<例示化合物35>
<例示化合物36>
<例示化合物37>
<例示化合物38>
<例示化合物39>
<例示化合物40>
−他のラジカル重合性化合物−
前記他のラジカル重合性化合物は、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なり、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有する化合物である。
前記他のラジカル重合性化合物としては、例えば、1官能のラジカル重合性化合物、2官能のラジカル重合性化合物、3官能以上のラジカル重合性化合物、機能性モノマー、ラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらの中でも、2官能以上のラジカル重合性化合物が特に好ましい。
前記他のラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性官能基としては、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性官能基と同様であり、これらの中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
前記1官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記2官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、上記において、EO変性はエチレンオキシ変性を指し、PO変性はプロピレンオキシ変性を指す。
前記機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報に記載のシロキサン繰り返し単位が20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチル等のポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物及び前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物の少なくともいずれか一方がラジカル重合性官能基を2つ以上有していることが、架橋物を形成する点から好ましい。
前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物の含有量は、第2のエレクトロクロミック組成物全量に対して、10質量%以上100質量%以下が好ましく、30質量%以上90質量%以下がより好ましい。
前記含有量が、10質量%以上であると、第2のエレクトロクロミック層のエレクトロクロミック機能が充分に発現でき、加電圧による繰り返しの使用で耐久性が良好であり、発色感度が良好である。
前記含有量が、100質量%でもエレクトロクロミック機能が可能であり、この場合、最も厚みに対する発色感度が高い。それに相反して電荷の授受に必要であるイオン液体との相溶性が低くなる場合があるため、加電圧による繰り返しの使用で耐久性の低下などによる電気特性の劣化が現れる。使用されるプロセスによって要求される電気特性が異なるため一概には言えないが、発色感度と繰り返し耐久性の両特性のバランスを考慮すると30質量%以上90質量%以下が特に好ましい。
<<重合開始剤>>
前記第2のエレクトロクロミック組成物は、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物と、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物との架橋反応を効率よく進行させるため、必要に応じて重合開始剤を含有することが好ましい。
前記重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられるが、重合効率の観点から光重合開始剤が好ましい。
前記熱重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;などが挙げられる。
その他の光重合開始剤としては、例えば、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、光重合促進効果を有するものを単独又は前記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
前記重合開始剤の含有量は、前記ラジカル重合性化合物の全量100質量部に対して、0.5質量部以上40質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましい。
<<その他の成分>>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶媒、可塑剤、レベリング剤、増感剤、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、フィラーなどが挙げられる。
<第2のエレクトロクロミック層の形成方法>
前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を重合した重合物を含む第2のエレクトロクロミック層は、以下に示す第2のエレクトロクロミック層の形成方法により形成することができる。
前記第2のエレクトロクロミック層の形成方法は、塗布工程を含み、架橋工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
−塗布工程−
前記塗布工程は、前記第1の電極上に、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物と、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物とを含む第2のエレクトロクロミック組成物を塗布する工程である。
前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物としては、前記エレクトロクロミック素子で説明したものと同様のものを用いることができる。
前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物と、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物とを含有する塗布液を塗布する。塗布液は、必要に応じて溶媒により希釈して塗布する。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチ
ルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記溶媒による希釈率は、前記第1のエレクトロクロミック組成物の溶解性、塗工法、目的とするエレクトロクロミック層の厚みなどにより変わり、適宜選択することができる。
前記塗布は、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法などにより行うことができる。
−架橋工程−
前記架橋工程は、塗布した第2のエレクトロクロミック組成物に対し加熱又は光エネルギーを付与して架橋する工程である。
前記第2の電極上に第2のエレクトロクロミック組成物を塗布後、外部からエネルギーを与え、硬化させて、第2のエレクトロクロミック層を形成する。
前記外部エネルギーとしては、例えば、熱、光、放射線などが挙げられる。
前記熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素等の気体、蒸気、又は各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側、あるいは支持体側から加熱することによって行われる。
前記加熱温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上170℃以下が好ましい。
前記光のエネルギーとしては、主に紫外光(UV)に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。
UVの照射光量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mW/cm以上15,000mW/cm以下が好ましい。
前記第2のエレクトロクロミック層の平均厚みは、1μm以上30μm以下が好ましく、2μm以上20μm以下がより好ましく、4μm以上15μm以下が更に好ましい。
<第1のエレクトロクロミック層>
前記第1のエレクトロクロミック層は、還元反応によって透明から着色を呈するエレクトロクロミック材料を用いることができる。
前記第1のエレクトロクロミック層は、前記第1のエレクトロクロミック層と同じ色調の材料を用いることで、最大発色濃度を向上でき、コントラストを改善できる。また、異なる色調の材料を用いることで、混色が可能となる。また、両極で反応させることで、駆動電圧を効果的に低減し、繰返し耐久性を向上できるという利点がある。
前記第1のエレクトロクロミック層におけるエレクトロクロミック材料としては、例えば、無機エレクトロクロミック化合物、有機エレクトロクロミック化合物、導電性ポリマーなどが挙げられる。
前記無機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化チタンなどが挙げられる。これらの中でも、発消色電位が低く、良好な色値を示す点から、酸化タングステンが好ましい。
前記酸化タングステンは、ビオロゲン系化合物と比較して、カラーバリエーションや発色効率の点で課題はあるが、還元電位が低く、無機材料であるため耐久性に優れるという利点がある。
前記導電性ポリマーとしては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、又はこれらの誘導体などが挙げられる。
前記有機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、アゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、ジピリジン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、トリフェニルアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェニレンジアミン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、フタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、メタロセン系等の低分子系有機エレクトロクロミック化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、発消色電位が低く、良好な色値を示す点から、ビオロゲン系化合物、ジピリジン系化合物が好ましい。
前記ビオロゲン系化合物としては、例えば、特許第3955641号公報、特開2007−171781号公報に記載の化合物などが挙げられる。
前記ビオロゲン系化合物は、後述するように酸化チタン粒子と組み合わせて用いることが好ましい。このように酸化チタン粒子と組み合わせて用いることにより、高い光学的濃度及び高コントラスト比を維持できるという利点がある。
前記ジピリジン系化合物としては、例えば、特開2007−171781号公報、特開2008−116718号公報に記載の化合物などが挙げられる。
これらの中でも、良好な発色の色値を示す点から、下記一般式1で表されるジピリジン系化合物が好ましい。
[一般式1]
前記一般式1において、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基、又はアリール基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、COOH、PO(OH)、及びSi(OC2k+1(ただし、kは、1〜20を表す)から選択される置換基を有する。
前記一般式1において、Xは1価のアニオンを表す。前記一価のアニオンとしては、カチオン部と安定に対をなすものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Brイオン(Br)、Clイオン(Cl)、ClOイオン(ClO )、PFイオン(PF )、BFイオン(BF )などが挙げられる。
前記一般式1において、n、m、及びlは、0、1又は2を表す。A、B、及びCは、それぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。
また、金属錯体系及び金属酸化物系のエレクトロクロミック化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化インジウム、酸化イリジウム、酸化ニッケル、プルシアンブルー等の無機系エレクトロクロミック化合物などが挙げられる。
前記第1のエレクトロクロミック層としては、導電性又は半導体性微粒子に有機エレクトロクロミック化合物を担持した構造としてもよい。具体的には、電極表面に粒径5nm以上50nm以下程度の微粒子を焼結し、その微粒子の表面にホスホン酸やカルボキシル基、シラノール基等の極性基を有する有機エレクトロクロミック化合物を吸着した構造である。
このような構造では、微粒子の大きな表面効果を利用して、効率よく有機エレクトロクロミック化合物に電子が注入されるため、従来のエレクトロクロミック表示素子と比較して高速応答が可能となる。更に、微粒子を用いることで表示層として透明な膜を形成することができるため、エレクトロクロミック色素の高い発色濃度を得ることができる。また、複数種類の有機エレクトロクロミック化合物を導電性又は半導体性微粒子に担持することもできる。
前記導電性又は半導体性微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属酸化物が好ましい。前記金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケート等を主成分とする金属酸化物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、電気伝導性等の電気的特性や光学的性質等の物理的特性の点から、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化タングステンが特に好ましい。
前記導電性又は半導体性微粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エレクトロクロミック化合物を効率よく担持するために、単位体積当たりの表面積(以下比表面積)が大きい形状が用いられる。例えば、微粒子が、ナノ粒子の集合体であるときは、大きな比表面積を有するため、より効率的にエレクトロクロミック化合物が担持され、発消色の表示コントラスト比が優れる。
前記第1のエレクトロクロミック層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンレーティング法等を用いることができる。また、前記第1のエレクトロクロミック層の材料が塗布形成できるものであれば、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
前記第1のエレクトロクロミック層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2μm以上5.0μm以下が好ましい。前記平均厚みが、0.2μm未満であると、発色濃度が得にくくなることがあり、5.0μmを超えると、製造コストが増大すると共に、着色によって視認性が低下しやすいことがある。
前記第1のエレクトロクロミック層及び導電性又は半導体性微粒子層は真空製膜により形成することも可能であるが、生産性の点で粒子分散ペーストとして塗布形成することが好ましい。
<電解質>
前記電解質は、前記第1の電極と前記第2の電極との間に充填されている。
前記電解質としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩を用いることができ、具体的には、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BFなどが挙げられる。
前記電解質の材料としては、イオン性液体を用いることもできる。これらの中でも、有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造を有しているため、用いることが好ましい。
前記有機のイオン性液体の分子構造として、カチオン成分としては、例えば、N,N−ジメチルイミダゾール塩、N,N−メチルエチルイミダゾール塩、N,N−メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N−ジメチルピリジニウム塩、N,N−メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム系などが挙げられる。
また、アニオン成分としては、大気中での安定性を考慮して、フッ素を含んだ化合物を用いることが好ましく、例えば、BF 、CFSO 、PF 、(CFSOなどが挙げられる。
前記電解質の材料としては、前記カチオン成分と前記アニオン成分とを任意に組み合わせたイオン性液体を用いることが好ましい。
前記イオン性液体は、光重合性モノマー、オリゴマー、及び液晶材料のいずれかに直接溶解させてもよい。なお、溶解性が悪い場合は、少量の溶媒に溶解させて、該溶液を光重合性モノマー、オリゴマー、及び液晶材料のいずれかと混合して用いればよい。
前記溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる。
前記電解質は低粘性の液体である必要はなく、ゲル状や高分子架橋型、液晶分散型などの様々な形態をとることが可能である。電解質はゲル状、固体状に形成することで、素子強度向上、信頼性向上などの利点が得られる。
固体化手法としては、電解質と溶媒をポリマー樹脂中に保持することが好ましい。これにより高いイオン伝導度と固体強度が得られるためである。
更に、前記ポリマー樹脂としては光硬化可能な樹脂が好ましい。熱重合や溶剤を蒸発させることにより薄膜化する方法に比べて、低温かつ短時間でエレクトロクロミック素子を製造できるためである。
前記電解質からなる電解質層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm以上10μm以下が好ましい。
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、絶縁性多孔質層、保護層、などが挙げられる。
−絶縁性多孔質層−
前記絶縁性多孔質層、第1の電極と第2の電極とが電気的に絶縁されるように隔離すると共に、電解質を保持する機能を有する。
前記絶縁性多孔質層の材料としては、透明で多孔質であればよく特に限定されるものではないが、絶縁性及び耐久性が高く成膜性に優れた有機材料や無機材料、及びそれらの複合体を用いることが好ましい。
前記絶縁性多孔質層の形成方法としては、焼結法(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)や、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)などを用いることができる。
前記絶縁性多孔質層の形成方法として、高分子重合体等を加熱や脱気する等して発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の形成方法を用いてもよい。具体例としては、金属酸化物微粒子(SiO粒子やAl粒子等)とポリマー結着剤を含むポリマー混合粒子膜、多孔性有機膜(ポリウレタン樹脂やポリエチレン樹脂等)、多孔質膜状に形成した無機絶縁材料膜等が挙げられる。これらの中でも、SiO粒子は絶縁性に優れている点、比較的低屈折率な点、安価な点から好適に用いることができる。
前記絶縁性多孔質層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。また、前記絶縁性多孔質層の材料が塗布形成できるものであれば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
前記絶縁性多孔質層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm以上3μm以下が好ましい。
−保護層−
前記保護層の役割は、外的応力や洗浄工程の薬品から素子を守ることや、電解質の漏洩を防ぐこと、大気中の水分や酸素などエレクトロクロミック素子が安定的に動作するために不要なものの侵入を防ぐこと等である。
前記保護層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上200μm以下が好ましい。
前記保護層の材料としては、例えば、紫外線硬化型や熱硬化型の樹脂を用いることができ、具体的には、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
ここで、図1〜図22は、本発明のエレクトロクロミック素子の一例を示す概略図である。なお、図中に示している第2のエレクトロクロミック層は1層だけで第1のエレクトロクロミック層とは別の電極を覆っているような図となっているが、第2のエレクトロクロミック層がトリアリールアミンを有するラジカル化合物を重合した層である場合には、少なくとも1層であり、複数の第2の電極を覆っていてもよく、また、第2の電極と第2のエレクトロクロミック層の間に更に第3のエレクトロクロミック層が入っている構成やエレクトロクロミック層と保護層が同じ層であっても構わない。
図1のエレクトロクロミック素子は、第1の基板1と、該第1の基板1上に順次形成された第1の電極2と、該第1の電極2と接するように設けられた第1のエレクトロクロミック層3と、第2の基板7と、該第2の基板7上に順次形成された第2の電極6と、該第2の電極6と接するように設けられた第2のエレクトロクロミック層5と、前記第1の電極2と第2の電極6との間に前記第1のエレクトロクロミック層3、及び第2のエレクトロクロミック層5と接するように形成され、電極間のイオン伝導を担う電解質層4からなる。
前記エレクトロクロミック素子の作製方法としては、第1の基板1上に順次第1の電極2、第1エレクトロクロミック層3が形成されたものと、第2の基板7上に順次第2の電極6、第2のエレクトロクロミック層5が形成されたものとを用意し、電解質層4を介してこれらを貼り合せることによって作製する。電解質層4が光や熱によって硬化可能な場合、貼り合せ後に硬化させることができる。
図1に示すエレクトロクロミック素子は、複数の第2の電極6上に形成された第2のエレクトロクロミック層5が仕切り8によって、前記複数の第2の電極6毎に分割されたものである。前記仕切り8は、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷、スパッタ法、蒸着法などにより前記第2のエレクトロクロミック層5より絶縁性が高い材料を、第2のエレクトロクロミック層5の形成工程の前乃至後に形成することができる。前記第2のエレクトロクロミック層5に光又は熱の反応性を持つ材料を用いた場合には、それらの反応生成物、生成物を用いる場合には未反応物が挙げられる。これらの形成方法としては、例えば、マスクを用いたスパッタ法、蒸着法、フォトリソ法、インクジェット法やディスペンスによる直接描画、レーザー等の照射範囲の狭い光源乃至熱源を用いた反応方法、などが挙げられる。
なお、図3、図5、図7、図9、図11、及び図13に示すエレクトロクロミック素子は、図1に記載のエレクトロクロミック素子において、仕切り8の数、大きさ、配置などを適宜変更したものである。
図2に示すエレクトロクロミック素子は、図1に記載のエレクトロクロミック素子において、仕切り8ではなく、複数の第2の電極6上に形成された第2のエレクトロクロミック層5が隙間9によって、前記複数の第2の電極6毎に分割したものである。
前記隙間9としては、例えば、事前の形成の場合には、マスク使用や直接描画により当該箇所に前記第2のエレクトロクロミック層5が前記隙間9に直接形成されないようにする方法や、前記仕切り8の形成を前記第2のエレクトロクロミック層5への光乃至熱反応で行っている場合には、有機溶剤を用いることにより、前記仕切り8を除去することができる。ネガやポジは材料に依存する。前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類;ヘキサン等の脂肪酸類;トルエン、キシレン、酢酸エチル、レジスト剥離材で用いられる溶剤、エタノールアミン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドリン、水又はこれらの混合物などが挙げられる。更に、出力の高いレーザーで焼き切ることもできる。
前記隙間のサイズが、数μm以上数mm以上であればレーザー等の光や熱反応、数十μm以上であればメタルマスクを用いたフォトリソグラフィ、数百μm以上であればマスクを用いたスパッタ法や蒸着法、サブmm以上数mm以上であれば直接又はマスクを介し、更に必要に応じて前記有機溶剤を用い工具で引っ掻くことによる除去、ウェスでの拭き取り除去などが挙げられる。
なお、図4、図6、図8、図10、及び図12に示すエレクトロクロミック素子は、図2に記載のエレクトロクロミック素子において、隙間9の数、大きさ、配置などを適宜変更したものである。
図14〜図15は、複数の第2の電極6上に形成された第2のエレクトロクロミック層5が隙間9によって、前記複数の第2の電極6毎に分割されたものであり、第2のエレクトロクロミック層5の大きさが第2の電極6よりも小さいものである。
図16は、第2のエレクトロクロミック層5の大きさが第2の電極6の大きさと同じものである。
図17は、分割されていない一つの第2の電極6上に形成された第2のエレクトロクロミック層5のみを隙間9によって、分割されたものである
図18は、分割されていない一つの第2の電極6上に形成された第2のエレクトロクロミック層5のみを仕切り8によって、分割されたものである
図19は、複数の第2の電極6上に形成された第2のエレクトロクロミック層5が隙間9及び仕切り8によって、分割されたものである。
図20は、複数の第2の電極6上に形成された第2のエレクトロクロミック層5が隙間9によって、分割されたものである。
図21は、分割されていない一つの第2の電極6上に形成された第2のエレクトロクロミック層5のみを隙間9及び仕切り8によって、分割したものである
図22は、複数の第2の電極6上に形成された第2のエレクトロクロミック層5が分割されていない比較例のエレクトロクロミック素子である。
本発明のエレクトロクロミック素子は、解像性及びメモリ性が向上し、滲みを低減できるので、例えば、エレクトロクロミックディスプレイ、株価の表示板等の大型表示板、防眩ミラー、調光ガラス等の調光素子、タッチパネル式キースイッチ等の低電圧駆動素子、光スイッチ、光メモリ、電子ペーパー、電子アルバムなどに好適に使用することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<第1のエレクトロクロミック層の形成>
まず、ガラス基板(厚み40mm、無アルカリガラス)を準備した。
前記ガラス基板の上面の領域に酸化インジウムと酸化スズよりなる透明導電性薄膜をスパッタ法により成膜することによって第1の電極を形成した。
次に、前記第1の電極上に、酸化チタンナノ粒子分散液としてSP210(昭和タイタニウム株式会社製)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、酸化チタン粒子膜を形成した。
次に、前記酸化チタン粒子膜上に、ビオロゲン化合物[4,4’−(1−phenyl−1H−pyrrole−2,5−diyl)bis(1−(4−(phosphonomethyl)benzyl)pyridinium)bromide]の5質量%の2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液と前記SP210とを2.4/4の質量比で混合した塗布液をスピンコート法により塗布し、120℃で10分間アニール処理を行うことによって、酸化チタン粒子とビオロゲン化合物よりなる第1のエレクトロクロミック層を形成した。
<第2のエレクトロクロミック層の形成>
次に、別のガラス基板を準備した。前記ガラス基板の上面の領域に第1の基板と同様に透明導電性薄膜をスパッタ法により成膜することによって第2の電極を形成した。なお、前記第2の電極は2本の並行なストライプ形状で、その2本のストライプのL&Sは、L/S=11/1(mm)となるように形成されている。
次に、前記第2の電極上に、第2のエレクトロクロミック層を形成するために、以下に示す組成の第2のエレクトロクロミック組成物を調製した。
・1官能アクリレートを有するトリアリールアミン化合物1(前記例示化合物1):50質量部
・IRGACURE184(BASFジャパン株式会社製):5質量部
・2官能アクリレートを有するPEG400DA(日本化薬株式会社製):50質量部
・メチルエチルケトン:900質量部
前記第2のエレクトロクロミック組成物をスピンコート法により前記第2の電極上に塗布し、得られた膜上に前記第2の電極形状のメタルマスクを用いUV照射装置により60秒間、前記第2の電極上の前記第2のエレクトロクロミック組成物を硬化し、60℃で10分間アニール処理を行った後、メタノールを用いて未硬化部分、及びUV光未照射部分を除去すること(トリミング)により、前記第2のエレクトロクロミック組成物を重合した重合物からなる層を第2の電極上にのみ形成した。
<電解質液の充填>
以下に示す組成の電解質液を調製した。
[組成]
・IRGACURE184(BASFジャパン株式会社製):5質量部
・PEG400DA(日本化薬株式会社製):100質量部
・1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Sigma−Aldrich社製):50質量部
得られた電解質液をマイクロピペットで30mg測り取り、前記第1の電極及び第1のエレクトロクロミック層を有するITOガラス基板に対して滴下した。前記第1のエレクトロクロミック層上に、電極の引き出し部分があるように、前記第2のエレクトロクロミック層を有するITOガラス基板を貼り合せた。
得られた貼り合せ素子をUV照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により10mWで60秒間照射した。以上により、エレクトロクロミック素子を作製した。
(比較例1)
実施例1において、前記第2のエレクトロクロミック層の形成で、前記第2のエレクトロクロミック組成物を重合した重合物からなる層を形成後の前記トリミングを実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミック素子を作製した。
(比較例2)
実施例1において、前記第2のエレクトロクロミック層を、水溶性ポリウレタン樹脂及びATOナノ粒子(三菱マテリアル株式会社製)のTFP分散液(ATOと水溶性ポリウレタン樹脂の混合質量比で45:55としたもの)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間のアニール処理により作製した逆反応性の無い無機層に変更し、実施例1と同様にして、第2の電極と同じ形状にエタノールを染み込ませたウェスを用いた拭き取り、及びストライプ間のスパチュラを用いた除去によりトリミングを実施した以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミック素子を作製した。
次に、作製した実施例1、比較例1、及び比較例2のエレクトロクロミック素子について、以下のようにして、滲み、発色濃度、メモリ性、及び繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示した。
<滲み>
作製した各エレクトロクロミック素子について、印加条件を−3V、1秒間で発色させ、第1の基板側から、所定の画素をデジタルマイクロスコープ(ハイロックス社製、KH−7700)で拡大観察し、下記基準で滲みを評価した。
[評価基準]
○:1分間以上滲まない
△:1分間未満で滲む
×:発色時又は直後に画素電極端が滲む
<発色濃度>
作製した各エレクトロクロミック素子について、印加条件を−3V、1秒間で発色させ、第1の基板側から、所定の画素をマルチチャンネル分光器(オーシャンプティクス社製、USB4000)により発色濃度を測定し、下記基準により波長550nmの反射率が3%以下となるか否かで、発色濃度を評価した。
[評価基準]
○:550nmの反射率が3%以下
×:550nmの反射率が3%未満
<メモリ性>
作製した各エレクトロクロミック素子について、印加条件を−3V、1秒間で発色させ、発色後に印加を行った電源とエレクトロクロミック素子とを切り離して、前記発色濃度で使用した分光器を用い、発色直後と1時間後の発色濃度を測定した後、下記式からメモリ性を求め、下記基準により発色直後に対し80%以上発色濃度を保持しているか否かで、メモリ性を評価した。
メモリ性=(1時間後の濃度/発色直後の濃度)*100
[評価基準]
○:メモリ性が80%以上
×:メモリ性が80%未満
<繰返し耐久性>
作製した各クトロクロミック素子について、−3V5s、+3V5sの発消色駆動を500回繰り返し、繰返し前後の前記発色濃度で使用した分光器を用い、繰り返し初期と500回後の発色濃度とを測定し、下記式から繰り返し耐久性を求め、下記基準により書き繰り返し初期に対し500回後で80%以上の発色濃度を示すか否かで、繰り返し耐久性を評価した。
繰り返し耐久性=(500回後の発色濃度/初期の発色濃度)*100
[評価基準]
○:繰り返し耐久性が80%以上
×:繰り返し耐久性80%未満
以上の結果から、周辺への滲みが少ない順に、実施例1>比較例1≧比較例2であった。また、発色が濃い順に、実施例1≧比較例1>比較例2であった。
更に、発色後に印加を行った電源とエレクトロクロミック素子とを切り離して時間をおいてメモリ性の確認を行ったが、滲みの程度、発色の濃さ共に、比較例1、2と比べて、実施例1では滲みが少なく発色が濃い上記関係を維持しており、メモリ性が高いことがわかった。発色、消色とも負荷の高い条件で繰り返しを行ったが、滲みがなく逆反応性の層を有する実施例1において優れた結果が得られた。
(実施例2)
実施例1において、前記第2のエレクトロクロミック層の形成の際に、前記ガラス基板上の透明導電性薄膜をストライプ形状にするのではなく前記第1の電極のようにベタ膜で形成した第2の電極に第2のエレクトロクロミック組成物を重合した重合物からなる第2のエレクトロクロミック層を形成した後、前記第2のエレクトロクロミック層に対して実施例1とは異なるメタルマスクを用い、UV照射装置により光パターニングを行った後、オーブンでアニール処理を行った。その後、メタノール(MeOH)を用いてエッチングを行う以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミック素子を作製した。
図23に示すように、第2のエレクトロクロミック層のパターニング(UV照射〜エッチング)のみで、メタルマスクのマスクパターンに忠実な発色を確認できた。
<発消色駆動>
作製したエレクトロクロミック素子の発消色を確認した。具体的には、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、−3Vの電圧を1秒間印加させたところ、前記第1の電極と前記第2の電極の重なった部分に、エレクトロクロミック架橋層のトリアリールアミンのエレクトロクロミックに由来する青緑色の発色パターンが確認できた。
次いで、前記第1の電極の引き出し部分と前記第2の電極の引き出し部分との間に、+3Vの電圧を1秒間印加させたところ、前記第1の電極と前記第2の電極の重なった部分が消色し、透明になることが確認できた。
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 第1の電極と、前記第1の電極上に第1のエレクトロクロミック層を有し、
前記第1の電極と対向するように設けられた第2の電極と、前記第2の電極上に第2のエレクトロクロミック層を有し、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に充填された電解質とを有してなり、
前記第2のエレクトロクロミック層が、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物を含有してなり、
前記第2のエレクトロクロミック層が、複数分割して独立に形成されていることを特徴とするエレクトロクロミック素子である。
<2> 複数の第2のエレクトロクロミック層が、パターン状に配列している前記<1>に記載のエレクトロミック素子である。
<3> 前記第2のエレクトロクロミック層が、複数分割された第2の電極上のみに形成されている前記<1>から<2>のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
<4> 前記第2のエレクトロクロミック層が、第2の電極より小さく形成されている前記<3>に記載のエレクトロクロミック素子である。
<5> 前記第2のエレクトロクロミック層が、2層以上からなる積層構造である前記<1>から<4>のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
<6> 前記第2のエレクトロクロミック層が、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物の重合の有無により、前記第2の電極上に複数分割して独立に形成されている前記<1>から<5>のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
<7> 前記第2のエレクトロクロミック層が、光パターニング法により、前記第2の電極上に複数分割して独立に形成されている前記<1>から<6>のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
<8> 前記第2のエレクトロクロミック層が、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物と、該トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物とを含む第1のエレクトロクロミック組成物を架橋した架橋物を有する前記<1>から<7>のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
<9> 前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物が、下記一般式1で示される前記<1>から<8>のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
<一般式1>
−B
ただし、n=2のときにはmは0であり、n=1のときmは0又は1である。A及びBの少なくとも1つはラジカル重合性官能基を有する。前記Aは下記一般式2で示される構造であり、RからR15のいずれかの位置で前記Bと結合している。前記Bは下記一般式3で示される構造であり、R16からR21のいずれかの位置で前記Aと結合している。
<一般式2>
<一般式3>
ただし、RからR21は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記一価の有機基のうち少なくとも1つはラジカル重合性官能基である。
<10> 前記第1のエレクトロクロミック層が、還元反応によって着色を呈する材料からなる前記<1>から<9>のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
1 第1の基板
2 第1の電極
3 第1のエレクトロクロミック層
4 電解質層
5 第2のエレクトロクロミック層
6 第2の電極
7 第2の基板
8 仕切り
9 隙間
特表2001−510590号公報 特開2003−121883号公報 特開2007−298713号公報 特開2012−123055号公報

Claims (10)

  1. 第1の電極と、前記第1の電極上に第1のエレクトロクロミック層を有し、
    前記第1の電極と対向するように設けられた第2の電極と、前記第2の電極上に第2のエレクトロクロミック層を有し、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間に充填された電解質とを有してなり、
    前記第2のエレクトロクロミック層が、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物を含有してなり、
    前記第2のエレクトロクロミック層が、複数分割して独立に形成されていることを特徴とするエレクトロクロミック素子。
  2. 複数の第2のエレクトロクロミック層が、パターン状に配列している請求項1に記載のエレクトロミック素子。
  3. 前記第2のエレクトロクロミック層が、複数分割された第2の電極上のみに形成されている請求項1から2のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  4. 前記第2のエレクトロクロミック層が、第2の電極より小さく形成されている請求項3に記載のエレクトロクロミック素子。
  5. 前記第2のエレクトロクロミック層が、2層以上からなる積層構造である請求項1から4のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  6. 前記第2のエレクトロクロミック層が、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物の重合の有無により、前記第2の電極上に複数分割して独立に形成されている請求項1から5のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  7. 前記第2のエレクトロクロミック層が、光パターニング法により、前記第2の電極上に複数分割して独立に形成されている請求項1から6のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  8. 前記第2のエレクトロクロミック層が、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物と、該トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物とを含む第1のエレクトロクロミック組成物を架橋した架橋物を有する請求項1から7のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  9. 前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物が、下記一般式1で示される請求項1から8のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
    <一般式1>
    −B
    ただし、n=2のときにはmは0であり、n=1のときmは0又は1である。A及びBの少なくとも1つはラジカル重合性官能基を有する。前記Aは下記一般式2で示される構造であり、RからR15のいずれかの位置で前記Bと結合している。前記Bは下記一般式3で示される構造であり、R16からR21のいずれかの位置で前記Aと結合している。
    <一般式2>
    <一般式3>
    ただし、RからR21は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記一価の有機基のうち少なくとも1つはラジカル重合性官能基である。
  10. 前記第1のエレクトロクロミック層が、還元反応によって着色を呈する材料からなる請求項1から9のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
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