JP2018120199A - エレクトロクロミック装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】赤外波長光に対して高い透過率及び透過率変化を実現できるエレクトロクロミック装置の提供。【解決手段】第1の支持体上に形成した第1の電極と、前記第1の電極に対向するように設けられた第2の支持体に形成した第2の電極と、前記第1の電極に接するように設けられた第1のエレクトロクロミック層と、前記第1の電極と対向する側に前記第2の電極と接するように設けられた劣化防止層と、前記第1のエレクトロクロミック層及び前記劣化防止層と接するように設けられた電解質層と有し、前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくともいずれかが、酸化インジウム(In2O3)を含む酸化物材料を含有し、かつ波長1,500nmでの赤外光の透過率が70%以上であり、前記第1のエレクトロクロミック層が、特定のトリアリールアミン化合物を含有するエレクトロクロミック装置である。【選択図】図1

Description

本発明は、エレクトロクロミック装置に関する。
電圧を印加することにより酸化還元反応が起こり、可逆的に色が変化する現象をエレクトロクロミズムという。前記エレクトロクロミズムを利用したエレクトロクロミック装置は、前記エレクトロクロミズムの特徴に由来する応用が実現できるとして、今日まで多くの研究がなされている。特に、ガラス窓の陽射しを調節するエレクトロクロミック電子調光窓は省エネルギーデバイスとして期待されており、実用化が進んでいる。
一般に、エレクトロクロミック装置は、2つの平板状の電極のうち、いずれかの電極にエレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック層を形成し、このエレクトロクロミック層と、イオン伝導可能な電解質層とを挟みこむようにして2つの電極を貼り合せることにより作製される。
エレクトロクロミック電子調光窓の省エネルギーは、太陽光を取り込むことで室内の暖房エネルギー低減の効果、及び太陽光をカットすることで室内の冷房エネルギー低減の効果があり、外気温(季節)や陽射しに合わせた電子調光により最大の省エネルギー効果が期待できる。しかし、従来のエレクトロクロミック電子調光窓は太陽光の中でも主に可視光領域の調光機能を有する技術であり、熱線となる赤外領域の調光機能が不十分であった。これは、前記エレクトロクロミック装置の透明電極として一般的に採用されているITO(インジウムスズ酸化物)が赤外領域をプラズマ反射してしまうために赤外線をカットすること、また、赤外領域での光透過率変化が大きいエレクトロクロミック材料が見出されていないことが原因である。
このため、例えば、ITO電極のキャリア電子密度を1×1020cm−3以上4×1020cm−3以下とすることで、赤外透過率を改善した酸化タングステン粒子を含むエレクトロクロミック層を有するエレクトロクロミック装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、電極をカーボンナノチューブにより形成することで、赤外領域の透過率が向上したエレクトロクロミック装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、有機エレクトロクロミック材料としては、熱や光に対する耐久性の点から、導電性ポリマーが有望であり、種々の材料が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
本発明は、赤外波長光に対して高い透過率及び透過率変化を実現できるエレクトロクロミック装置を提供することを目的とする。
本発明のエレクトロクロミック装置は、第1の支持体と該第1の支持体上に形成した第1の電極と、
前記第1の電極に対向するように設けられた第2の支持体上に形成した第2の電極と、
前記第1の電極に接するように設けられたエレクトロクロミック層と、
前記第1の電極と対向する側に前記第2の電極と接するように設けられた劣化防止層と、
前記エレクトロクロミック層及び前記劣化防止層と接するように設けられた電解質層とを有し、
前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくともいずれかが、酸化インジウム(In)を含む酸化物材料を含有し、かつ波長1,500nmでの赤外光の透過率が70%以上であり、
前記エレクトロクロミック層が、下記一般式(1)で示されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含有する。
[一般式(1)]
−B
ただし、n=2のときにはmは0であり、n=1のときmは0又は1である。A及びBの少なくとも1つはラジカル重合性官能基を有する。前記Aは、下記一般式(2)で示される構造であり、RからR15のいずれかの位置で前記Bと結合している。前記Bは、下記一般式(3)で示される構造であり、R16からR21のいずれかの位置で前記Aと結合している。
[一般式(2)]
[一般式(3)]
ただし、前記一般式(2)及び(3)中、RからR21は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記一価の有機基のうち少なくとも1つはラジカル重合性官能基である。
本発明によると、赤外波長光に対して高い透過率及び透過率変化を実現できるエレクトロクロミック装置を提供することができる。
図1は、第1の実施の形態に係る本発明のエレクトロクロミック装置の一例を示す概略断面図である。 図2は、第2の実施の形態に係る本発明のエレクトロクロミック装置の一例を示す概略断面図である。 図3は、第3の実施の形態に係る本発明のエレクトロクロミック装置の一例を示す概略断面図である。 図4は、第4の実施の形態に係る本発明のエレクトロクロミック装置の一例を示す概略断面図である。 図5は、第5の実施の形態に係る本発明のエレクトロクロミック装置の一例を示す概略断面図である。 図6Aは、本発明のエレクトロクロミック装置における製造時の貼合わせ後の状態を示す概略断面図である。 図6Bは、図6Aの長手方向の概略断面図である。 図7は、実施例で用いた各エレクトロクロミック化合物の赤外光吸収スペクトルを示す図である。 図8は、実施例6における各第1の電極の光透過率を測定した結果を示すグラフである。 図9Aは、実施例6における第1の電極のスパッターパワー6.5kWでのXRDスペクトル図である。 図9Bは、実施例6における第1の電極のスパッターパワー1.0kWでのXRDスペクトル図である。 図10は、実施例7における各第1の電極の光透過率を測定した結果を示すグラフである。 図11は、実施例7における各第1の電極のXRDスペクトル図である。 図12は、実施例8で用いた各第2のエレクトロクロミック化合物の光吸収スペクトルを示すグラフである。 図13は、実施例10におけるエレクトロクロミックの光透過率を測定した結果を示すグラフである。
(エレクトロクロミック装置)
本発明のエレクトロクロミック装置は、第1の支持体と該第1の支持体上に形成した第1の電極と、
前記第1の電極に対向するように設けられた第2の支持体上に形成した第2の電極と、
前記第1の電極に接するように設けられたエレクトロクロミック層と、
前記第1の電極と対向する側に前記第2の電極と接するように設けられた劣化防止層と、
前記エレクトロクロミック層及び前記劣化防止層と接するように設けられた電解質層とを有し、
前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくともいずれかが、酸化インジウム(In)を含む酸化物材料を含有し、かつ波長1,500nmでの赤外光の透過率が70%以上であり、
前記エレクトロクロミック層が、下記一般式(1)で示されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含有し、更に必要に応じてその他の層を有する。
[一般式(1)]
−B
ただし、n=2のときにはmは0であり、n=1のときmは0又は1である。A及びBの少なくとも1つはラジカル重合性官能基を有する。前記Aは、下記一般式(2)で示される構造であり、RからR15のいずれかの位置で前記Bと結合している。前記Bは、下記一般式(3)で示される構造であり、R16からR21のいずれかの位置で前記Aと結合している。
[一般式(2)]
[一般式(3)]
ただし、前記一般式(2)及び(3)中、RからR21は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記一価の有機基のうち少なくとも1つはラジカル重合性官能基である。
本発明のエレクトロクロミック装置は、前記特許文献1(特開2008−107587号公報)に記載の赤外領域のプラズモン反射を抑えた前記キャリア密度の電極では、一般的なITO電極に比べ電気抵抗が高くなるため、エレクトロクロミック層の酸化還元反応に必要な電荷授受が困難になり、着色消色しにくい、又は着色消色応答が遅いという問題がある。特に、酸化タングステンなどの無機エレクトロクロミック材料は赤外領域のエレクトロクロミックが知られているが、有機エレクトロクロミック材料に比べ、着色消色に必要な電荷量が大きく、電極の電気抵抗が課題となるという知見に基づくものである。
また、前記特許文献2(特表2014−523000号公報)に記載の従来のカーボンナチューブ透明電極は、エレクトロクロミック装置に必要な電極抵抗(シート抵抗:100Ω以下)の条件では、ITOに比べ光透過率が得られない(電極抵抗と透過率が両立しない)ため、60%以上の十分な透過率を満足する条件が得にくいという知見に基づくものである。
また、前記非特許文献1(Electrochromic Materials and Devices 5章 Conjugated Electrochromic Polymers:Structure−Driven Colour and Processing Controls,Aubrey et al 2015)に記載のポリチオフェン、ポリアニリンなどの分子構造を有する一般的な導電性高分子材料では、赤外光吸収状態(還元)と可視光吸収状態(酸化)の間でエレクトロクロミックするため、可視光透過率が60%以上の光透明な状態から、赤外光の光透過率を調光することができず、透明ガラスとして使用することができない。
したがって、赤外波光に対して高い透過率及び透過率変化を実現できるエレクトロクロミック装置の提供が望まれている。特に、近赤外領域(波長:750nm〜1,500nm)の光は皮膚のひりひり感にも関係するため、調光性能(高い透過率及び透過率変化)への要望が強いことを知見した。
前記課題に基づき本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、前記一般式(1)で表されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物が赤外領域において優れた調光性能(高い透過率及び透過率変化)を有していることを知見した。
前記一般式(1)で表されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物は、5mC/cm程度の投入電荷量で高濃度の調光(吸光度(波長1,500nm)1.0以下)が可能であり、キャリア密度を調整した赤外光透過率の高い無機酸化物系透明電極と組み合わせることにより、赤外波長光に対して高性能なエレクトロクロミック装置を提供することができる。
前記一般式(1)で表されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物は安定状態で可視光領域450nm以上1,000nm以下に光吸収がないため、光透過率が60%以上の透明状態から、前記エレクトロクロミック層が酸化還元反応することにより、750nm以上1,500nm以下の領域の光透過率が減少変化することが好ましい。これにより、透明なエレクトロクロミック調光窓として好適に用いることができる。
<第1の支持体、第2の支持体>
前記第1の支持体及び第2の支持体は、第1の電極、エレクトロクロミック層、電解質層、劣化防止層、及び第2の電極を支持する機能を有する。
前記支持体としては、これらの各層を支持できれば、周知の光透過性材料(有機材料や無機材料)をそのまま用いることができる。
前記無機材料としては、例えば、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、フロートガラス、ソーダ石灰ガラス等のガラス基板などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂基板などが挙げられる。
なお、前記支持体の表面に、水蒸気バリア性、ガスバリア性、視認性を高めるために透明絶縁層、反射防止層等がコーティングされていてもよい。
<第1の電極、第2の電極>
前記第1の電極及び第2の電極の少なくともいずれかが、酸化インジウム(In)を含有する酸化物材料を含有し、かつ波長1,500nmでの赤外光の透過率が70%以上である。これにより、赤外領域(750nm〜1,500nm)で透明性に優れた導電性材料が得られ、支持体の透明性と共に、着色のコントラストをより高めることができる。
なお、前記波長1,500nmでの赤外光の透過率は、例えば、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)、紫外可視近赤外分光光度計UH4150(日立ハイテクサイエンス株式会社製)で測定することができる。
従来の電気電導性に優れるITO材料は、In:SnO(質量比)が85:15〜90:10であり、膜の結晶性などにも依存するがキャリア密度は1.1×1021cm−3程度であるため、プラズマ反射により波長1,500nmでの赤外光の透過率は50%以下である。
本発明においては、酸化インジウム(In)を含有する酸化物材料のキャリア密度を5×1020cm−3以下に調整することで波長1,500nmでの赤外光の透過率70%以上を達成できる。
前記酸化物材料のキャリア密度を5×1020cm−3以下に調整する方法としては、例えば、添加するSnOの質量比、酸素量、添加金属、膜の結晶性の調整などが挙げられる。
赤外光透過率の高い透明電極を得るために、キャリア密度を調整する必要があるが、調整の容易性、及び生産性の観点から、前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくともいずれかが、酸化インジウム(In)を含む酸化物材料を含有し、酸化インジウム(In)を含有する酸化物材料中の酸化スズ(SnO)の含有率が5質量%以下であり、
前記酸化物材料中の酸化インジウム(In)の含有率が95質量%以上であることが好ましい。
前記第1の電極及び第2の電極の添加剤としては、例えば、Sn、Zr、Ga、Zn、Al、W、Zn、Ti等の金属、又はこれらの酸化物などが挙げられる。
前記第1の電極及び前記第2の電極は、例えば、スパッタ法、蒸着法により、容易に成膜が可能であると共に、良好な透明性と電気電導性が得られる。また、膜の結晶性は製膜時の基板温度又は、製膜後のアニール処理などで制御することができる。
前記第1の電極及び前記第2の電極を形成する支持体がガラスの場合は、結晶性の高い膜になるが、プラスチック基板(ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレートなど)を用いる場合は、結晶化しにくい傾向があり、赤外光透過率の高い電極を得やすい。
前記結晶性は、一般的なXRD(X−ray diffraction)により、測定可能である。例えば、In:SnO(質量比9:1)のスパッタターゲットを用いて、ガラス支持体に電極を約110nmの厚みでスパッタ製膜した場合、XRD測定にて、2θ≒52(deg.)付近の(440)面ピークが検出されない。又は2θ≒32(deg.)付近の主ピーク(222)面とのピーク強度比(I440/I222)が0.14未満であることが好ましい。
前記第1の電極及び第2の電極の各々の厚みは、エレクトロクロミック層の酸化還元反応に必要な電気抵抗値が得られるように調整される。
前記第1の電極及び第2の電極の各々の厚みは、20nm以上500nm以下が好ましく、50nm以上200nm以下がより好ましい。
また、透明性を有する銀、金、カーボンナノチューブ、金属酸化物等のネットワーク電極、又はこれらの複合層も有用である。前記ネットワーク電極とは、カーボンナノチューブや他の高導電性の非透過性材料等を微細なネットワーク状に形成して透過率を持たせた電極である。
更に、開口率を調整した金属グリッド電極、又はこれらの複合層も有用である。開口率は60%以上が好ましい。
金属材料としては、例えば、Pt、Ag、Au、Cr、ロジウム、又はこれらの合金、あるいはこれらの積層構成などが挙げられる。
金属グリッド電極の形成方法としては、例えば、金属層形成後にリソグラフィーにてパターニングする方法、マスクを用いて真空製膜する方法、金属インクをパターン印刷する方法、メッキシード層をパターン形成した後メッキ製膜する方法などが挙げられる。
これらの電極材料は、酸化インジウム(In)を含む酸化物材料の膜と併用して用いるか、及び/又は一方の電極材料として用いることができる。
<エレクトロクロミック層>
前記エレクトロクロミック層は、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含有する。
前記エレクトロクロミック層は、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物の重合により形成されると、繰返し駆動(酸化還元反応)特性が良好になるとともに、光耐久性に優れる点で有利である。また、消色状態が透明であり、酸化反応で高濃度の着色発色性能が得られる。
前記エレクトロクロミック層は、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物と、これとは異なる他のラジカル重合性化合物とを少なくとも含有するエレクトロクロミック組成物を架橋した架橋物を含有すると、耐溶解性及び耐久性が一層向上するので好ましい。
前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物としては、例えば、前記一般式(1)で表される化合物などが挙げられる。
−一価の有機基−
前記一般式(2)及び前記一般式(3)における一価の有機基としては、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、アミド基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノカルボニル基、スルホン酸基、置換基を有していてもよいアルコキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、スルホンアミド基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノスルホニル基、アミノ基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよい複素環基などが挙げられる。
これらの中でも、安定動作の点から、アルキル基、アルコキシ基、水素原子、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基が特に好ましい。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基などが挙げられる。
前記複素環基としては、例えば、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾールなどが挙げられる。
置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
−ラジカル重合性官能基−
前記ラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であればいずれでもよい。
前記ラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(i)で表される官能基などが挙げられる。
ただし、前記一般式(i)中、Xは、置換基を有してもよいアリーレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R100)−基〔R100は、水素、アルキル基、アラルキル基、アリール基を表す。〕、又は−S−基を表す。
前記一般式(i)のアリーレン基としては、例えば、置換基を有してもよいフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
前記アルケニレン基としては、例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記一般式(i)で表されるラジカル重合性官能基の具体例としては、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基などが挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(ii)で表される官能基などが挙げられる。
ただし、前記一般式(ii)中、Yは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR101基〔R101は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又はCONR102103(R102及びR103は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい。)〕を表す。また、Xは、前記一般式(i)のXと同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y及びXの少なくともいずれか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、芳香族環である。
前記一般式(ii)のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などが挙げられる。
前記一般式(ii)で表されるラジカル重合性官能基の具体例としては、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基などが挙げられる。
なお、これらX、X、Yについての置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
前記ラジカル重合性官能基の中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物としては、以下の一般式(1−1)から一般式(1−3)で表されるラジカル重合性化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、近赤外領域での光透過率変化が大きい点から、下記一般式(1−1)で表されるラジカル重合性化合物が好ましい。
[一般式(1−1)]
[一般式(1−2)]
[一般式(1−3)]
前記一般式1−1から一般式1−3中、R27からR88は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記一価の有機基のうち少なくとも1つはラジカル重合性官能基である。また、R39とR41及びR40とR42の少なくともいずれかは環状構造を形成していてもよい。
前記環状構造としては、例えば、炭素数5又は6で構成されるシクロアルケンなどが挙げられ、更に炭素数1から20のアルキル基等の置換基を有していてもよい。
前記一価の有機基及び前記ラジカル重合性官能基としては、前記一般式(2)及び(3)と同じものが挙げられる。
前記一般式(1)、及び前記一般式(1−1)から一般式(1−3)で表される例示化合物としては、以下に示すものが挙げられる。前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物はこれらに限定されるものではない。
[例示化合物1]
[例示化合物2]
[例示化合物3]
[例示化合物4]
[例示化合物5]
[例示化合物6]
[例示化合物7]
[例示化合物8]
[例示化合物9]
[例示化合物10]
[例示化合物11]
[例示化合物12]
[例示化合物13]
[例示化合物14]
[例示化合物15]
[例示化合物16]
[例示化合物17]
[例示化合物18]
[例示化合物19]
[例示化合物20]
[例示化合物21]
[例示化合物22]
[例示化合物23]
[例示化合物24]
[例示化合物25]
[例示化合物26]
[例示化合物27]
[例示化合物28]
[例示化合物29]
[例示化合物30]
[例示化合物31]
[例示化合物32]
[例示化合物33]
[例示化合物34]
[例示化合物35]
[例示化合物36]
[例示化合物37]
[例示化合物38]
[例示化合物39]
[例示化合物40]
[例示化合物41]
[例示化合物42]
<エレクトロクロミック組成物>
本発明で用いられるエレクトロクロミック組成物は、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物と、これとは異なる他のラジカル重合性化合物を含有し、重合開始剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
−他のラジカル重合性化合物−
前記他のラジカル重合性化合物は、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる化合物であって、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有する。
その例としては、1官能、2官能、又は3官能以上のラジカル重合性化合物、機能性モノマー、ラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらの中でも、3官能以上のラジカル重合性化合物が特に好ましい。
前記他のラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性官能基としては、前記ラジカル重合性官能基を有するトリアリールアミン誘導体におけるラジカル重合性官能基と同様であるが、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
前記1官能のラジカル重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記2官能のラジカル重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記3官能以上のラジカル重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
なお、前記において、EO変性はエチレンオキシ変性を、PO変性はプロピレンオキシ変性を、ECH変性はエピクロロヒドリン変性を指す。
前記機能性モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報に記載のシロキサン繰り返し単位が20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
架橋物を形成する点からは、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物と前記他のラジカル重合性化合物の少なくとも一方が、ラジカル重合性官能基を2つ以上有していることが好ましい。
前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物の含有量は、エレクトロクロミック組成物の全量に対して、10質量%以上100質量%以下が好ましく、使用されるプロセスによって要求される電気特性が異なるため一概には言えないが、発色感度と繰り返し耐久性の両特性のバランスの点から、30質量%以上90質量%以下がより好ましい。
前記含有量が、10質量%以上であれば、エレクトロクロミック層のエレクトロクロミック機能が充分に発現し、加電圧による繰り返し使用での耐久性が良好であり、発色感度が良好である。また、前記含有量が、100質量%でもエレクトロクロミック機能は発現し、この場合、最も厚みに対する発色感度が高い。しかし、電荷の授受に必要であるイオン液体との相溶性が低くなる場合があり、加電圧による繰り返し使用での耐久性の低下などによる電気特性の劣化が現れる。
−重合開始剤−
前記エレクトロクロミック組成物は、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物と前記他のラジカル重合性化合物との架橋反応を効率よく進行させるため、必要に応じて重合開始剤を含有することが好ましい。
前記重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられるが、これらの中でも、重合効率の点から光重合開始剤が好ましい。
前記熱重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、クメンヒドロペルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
その他の光重合開始剤としては、例えば、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
なお、光重合促進効果を有する化合物を単独で用いたり、前記光重合開始剤と併用したりすることもできる。このような化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶媒、フィラー、可塑剤、レベリング剤、増感剤、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤などが挙げられる。
更に後述する電解質層材料と混合し、エレクトロクロミック層と電解質層を一体化した混合層として形成することもできる。
前記エレクトロクロミック層は、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物、又は前記エレクトロクロミック組成物を溶媒に溶解して塗布製膜した後、光や熱により重合させてエレクトロクロミック層を形成することが好ましい。
塗布法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法などが挙げられる。
前記エレクトロクロミック層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2μm以上5.0μm以下が好ましい。前記エレクトロクロミック層の平均厚みが好ましい範囲であると、発色濃度が得やすくなるとともに、製造コストを抑制でき、着色による視認性の低下が発生しにくくなる点で有利である。
<電解質層>
前記電解質層に含有する電解質としては、固体電解質を溶媒に溶解した溶液、又はイオン液体等の液体電解質が用いられる。
前記電解質の材料としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩を用いることができる。具体的には、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BFなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
これらのカチオン成分とアニオン成分を組み合わせて処方したイオン液体を用いることができる。
前記固体電解質を溶解させる溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記イオン液体としては、特に制限はなく、一般的に研究・報告されている物質を適宜用いることができる。
有機のイオン液体には、室温を含む幅広い温度領域で液体状態を示すものがあり、カチオン成分とアニオン成分からなる。
前記カチオン成分としては、例えば、N,N−ジメチルイミダゾール塩、N,N−メチルエチルイミダゾール塩、N,N−メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N−ジメチルピリジニウム塩、N,N−メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体等の芳香族系の塩;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム等の脂肪族4級アンモニウム系化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記アニオン成分としては、大気中の安定性の面でフッ素を含んだ化合物が好ましく、例えば、BF 、CFSO 、PF 、(CFSO、B(CNなどが挙げられる。
前記電解質層としては、固体電解質が好ましく、その場合は、光又は熱硬化型樹脂中に電解質を保持した膜として形成される。
硬化型樹脂、電解液、更に添加物として光学透明な無機微粒子などを混合した溶液を第1のエレクトロクロミック層と劣化防止層の間に形成した後、光又は熱により硬化させることが好ましい。
前記硬化型樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などの一般的な材料が挙げられる。これらの中でも、電解質との相溶性の高い材料が好ましい。
このような材料としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエチレングリコールの誘導体が挙げられる。また、前記硬化型樹脂として光硬化可能な樹脂を用いることが好ましい。熱重合や溶剤を蒸発させて薄膜化する方法に比べて、低温かつ短時間でエレクトロクロミック素子を製造できるためである。
無機微粒子としては、多孔質層を形成して電解質と硬化樹脂を保持することができる材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エレクトロクロミック反応の安定性、視認性の点から、絶縁性、透明性、及び耐久性が高い材料が好ましい。前記無機微粒子としては、例えば、シリコン、アルミニウム、チタン、亜鉛、錫等の酸化物又は硫化物、あるいはそれらの混合物が挙げられるが、特に絶縁性金属酸化物からなる微粒子が好ましい。
前記無機微粒子の大きさ(平均粒径)については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm以上10μm以下が好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましい。
<劣化防止層>
前記劣化防止層の役割は、前記エレクトロクロミック層と逆の化学反応をして電荷のバランスをとることにより、第2の電極が不可逆的な酸化還元反応で腐食や劣化することを抑制して、繰返し安定性を向上することである。なお、逆反応とは、前記劣化防止層が酸化還元する場合に加え、キャパシタとして作用することも含む。
前記エレクトロクロミック層は光透明状態から酸化反応による赤外領域に着色するため、劣化防止層としては光透明な状態で還元反応するキャパシタ材料、又は光透明な状態から還元反応により着色するエレクトロクロミック材料を用いることができる。
前記キャパシタ材料としては、バインダにより導電性金属酸化物微粒子及び半導体性金属酸化物微粒子の少なくともいずれかを前記第2の電極に形成した構成が高容量を得やすいため、好ましい。
前記導電性金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化アンチモン錫、フッ素ドープ酸化錫などが挙げられる。前記半導体性金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記バインダとしては、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂、イソシアネート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂などが挙げられる。
前記エレクトロクロミック層と逆反応する第2のエレクトロクロミック層を劣化防止層として用いた場合は、両極で着色する構成になるため、エレクトロクロミック(着色)の電荷反応効率が向上する。また、駆動電圧を低下させることができる。この場合、前記エレクトロクロミック層を第1のエレクトロクロミック層とする。
前記第2のエレクトロクロミック層としては、エレクトロクロミック化合物として下記一般式(4)で表されるジピリジン化合物を含有することが好ましい。
[一般式(4)]
前記一般式(4)において、R1及びR2は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、及びアリール基のいずれかを表し、後述する導電性微粒子及び半導体性微粒子の少なくともいずれかにエレクトロクロミック化合物を担持した構造とする場合は、R1及びR2の少なくとも一方は、COOH、PO(OH)、及びSi(OC2k+1(ただし、kは、1〜20を表す)から選択される置換基を有する。R1又はR2の少なくとも一方に付与した、COOH、PO(OH)、又はSi(OC2k+1が吸着反応に寄与することができる。
前記一般式(4)において、A、B、及びCは、各々独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、及び複素環基のいずれかを表す。
前記一般式(4)において、Xは、一価のアニオンを表す。前記一価のアニオンとしては、カチオン部と安定に対をなすものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Brイオン(Br)、Clイオン(Cl)、ClOイオン(ClO )、PFイオン(PF )、BFイオン(BF )などが挙げられる。
前記一般式(4)において、n、m、及びlは、それぞれ独立に0、1、又は2を表す。
前記一般式(4)で表されるジピリジン化合物は透明状態から還元反応で着色するため、着色濃度を向上することができる。特に前記一般式(4)においてm=1のジピリジン化合物は赤外領域に着色する光吸収帯を有するため、赤外領域の着色濃度を得やすいという利点がある。これらの材料は有機膜として第2の電極に形成することもできるが、導電性微粒子及び半導体性微粒子の少なくともいずれかに前記エレクトロクロミック化合物を担持した構造を用いることが好ましい。
前記一般式(4)に表されるような有機エレクトロクロミック材料を用いる場合は、電解質層材料と混合し、第2エレクトロクロミック層と電解質層を一体化した混合層として形成することもできる。
更に、第1のエレクトロクロミック層と第2のエレクトロクロミック層及び電解質層を一体化した混合層として形成することもできる。
第2のエレクトロクロミック層を混合して用いる場合は、吸着反応に寄与する基であるCOOH、PO(OH)、及びSi(OC2k+1(ただし、kは、1〜20を表す)をR1及びR2に形成する必要はない。
前記一般式(4)で表される例示化合物としては、以下に示すものが挙げられる。なお、前記一般式(4)で表される例示化合物はこれらに限定されるものではない。
[例示化合物43]
[例示化合物44]
[例示化合物45]
[例示化合物46]
[例示化合物47]
[例示化合物48]
[例示化合物49]
[例示化合物50]
[例示化合物51]
[例示化合物52]
[例示化合物53]
[例示化合物54]
前記導電性微粒子及び半導体性微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属酸化物であることが好ましい。
前記金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化インジウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、ア
ルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケート等を主成分とする金属酸化物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化タングステン、酸化鉄から選ばれる1種、又はそれらの混合物が、発消色の応答速度に優れた色表示が可能となる点で好ましい。更に、これらの中でも、酸化チタンが、確実に発消色の応答速度に優れた色表示が可能となる点でより好ましい。
前記導電性微粒子及び半導体性微粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エレクトロクロミック化合物を効率よく担持するために、単位体積当たりの表面積(以下、「比表面積」ということがある。)が大きい形状が好ましい。例えば、前記導電性微粒子及び前記半導体性微粒子がナノ粒子の集合体であるときは、大きな比表面積を有するため、より効率的にエレクトロクロミック化合物が担持され、発消色の表示コントラスト比が優れる。
更に、第2のエレクトロクロミック層としては、従来から知られる有機又は無機エレクトロクロミック材料を用いることもできる。
前記有機エレクトロクロミック化合物としては、前記一般式(4)以外にも、例えば、希土類フタロシアニン、スチリル等が挙げられる。又、導電性ポリマーとして、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、又はそれらの誘導体等が挙げられる。
前記無機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化チタン等が挙げられる。
<その他の層>
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、絶縁性多孔質層、保護層などが挙げられる。
−絶縁性多孔質層−
前記絶縁性多孔質層としては、前記第1の電極と前記第2の電極とが電気的に絶縁されるように隔離すると共に、電解質を保持する機能を有する。
前記絶縁性多孔質層の材料としては、多孔質であれば特に制限はなく、絶縁性、及び耐久性が高く成膜性に優れた有機材料、無機材料、又はそれらの複合体が好ましい。
前記絶縁性多孔質層の形成方法としては、例えば、焼結法(高分子微粒子や無機粒子を、バインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法などが挙げられる。
−保護層−
前記保護層は、外的応力、及び洗浄工程の薬品からエレクトロクロミック素子を守ることができ、また、前記電解質の漏洩を防ぐことができ、更に大気中の水分や酸素などエレクトロクロミック素子が安定的に動作するために不要なものの侵入を防ぐことができる。
また、紫外線などの外光によるダメージを防ぐことができる。
前記保護層の材料としては、例えば、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などを用いることができ、具体的には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
前記保護層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上200μm以下が好ましい。
<エレクトロクロミック装置の製造方法>
本発明で用いられるエレクトロクロミック装置の製造方法は、塗布工程を含み、架橋工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
<塗布工程>
前記塗布工程は、前記第1の電極上に、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物又は前記エレクトロクロミック組成物を含む塗布液を塗布する工程である。
前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物、及び前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物としては、前記エレクトロクロミック装置で説明したものと同様のものを用いることができる。
前記塗布液は、必要に応じて溶媒により希釈して塗布する。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記溶媒による希釈率は、組成物の溶解性、塗工法、目的とするエレクトロクロミック層の厚みなどにより変わり、適宜選択することができる。
前記塗布は、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法などにより行うことができる。
<架橋工程>
架橋工程は、塗布した前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物又は前記エレクトロクロミック組成物を含む塗布液に対し加熱又は光エネルギーを付与して架橋する工程である。
前記第1の電極上に前記塗布液を塗布後、外部からエネルギーを与え、硬化させて、エレクトロクロミック層を形成する。
前記外部エネルギーとしては、例えば、熱、光、放射線などが挙げられる。
前記熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素等の気体、蒸気、又は各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行われる。
前記加熱温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上170℃以下が好ましい。
前記光のエネルギーとしては、主に紫外光(UV)に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。
UVの照射光量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mW/cm以上15,000mW/cm以下が好ましい。
第1エレクトロクロミック層と電解質層を一体化した混合層として形成する場合、また第2エレクトロクロミック層と電解質層を一体化した混合層として形成する場合、第1のエレクトロクロミック層と電解質層及び第2のエレクトロクロミック層を一体化した混合層として形成する場合も同様である。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、例えば、第1の電極形成工程、第2の電極形成工程、劣化防止層形成工程、貼り合わせ工程などが挙げられる。
ここで、図1は、第1の実施の形態に係る本発明のエレクトロクロミック装置の一例を示す概略断面図である。
この図1を参照すると、エレクトロクロミック装置10は、第1の支持体11と、前記第1の支持体11上に、順次積層された第1の電極12、第1のエレクトロクロミック層13、電解質層14、劣化防止層15、第2の電極16、第2の支持体17、及び保護層18を有する。
第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、電圧を印加して電荷を注入すると、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分の第1のエレクトロクロミック層13が発色する。電圧を逆にすると、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分の第1のエレクトロクロミック層13が透明になる。
なお、劣化防止層15として第1のエレクトロクロミック層13と逆反応する第2のエレクトロクロミック層を用いた場合は、第1の電極12と第2の電極16との間に第1の電極側に+電圧を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層13が酸化反応して発色すると共に、第2のエレクトロクロミック層が還元反応して発色する。更に電圧を逆に印加することで消色する。
図2は、第2の実施の形態に係る本発明のエレクトロクロミック装置の一例を示す概略断面図である。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは層構成の異なるエレクトロクロミック装置を例示する。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
図2を参照するに、第2の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置20は、第1のエレクトロクロミック層13及び電解質層14が混合された一体化層19として形成されている点が、第1の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置10(図1参照)と相違する。
図3は、第3の実施の形態に係る本発明のエレクトロクロミック装置の一例を示す概略断面図である。
第3の実施の形態では、第1及び第2の実施の形態とは層構成の異なるエレクトロクロミック装置を例示する。なお、第3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
図3を参照するに、第3の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置30は、第1のエレクトロクロミック層13、電解質層14、第2のエレクトロクロミック層15が混合された一体化層21として形成されている点が、第1及び第2の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置10、20と相違する。
図4は、第4の実施の形態に係る本発明のエレクトロクロミック装置の一例を示す概略断面図である。
第4の実施の形態では、第1、第2、及び第3の実施の形態とは層構成の異なるエレクトロクロミック装置を例示する。なお、第4の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
図4を参照するに、第4の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置40は、第2のエレクトロクロミック層15と電解質層14が混合された一体化層22として形成されている点が、第1、第2、及び第3の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置10、20、30と相違する。
図5は、第5の実施の形態に係る本発明のエレクトロクロミック装置の一例を示す概略断面図である。
第5の実施の形態では、第1、第2、第3、及び第4の実施の形態とは層構成の異なるエレクトロクロミック装置を例示する。なお、第5の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
図5を参照するに、第5の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置50は、保護層18が側面のみでなく、表裏面にも形成されている点が、第1、第2、第3、及び第4の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置10、20、30、40と相違する。
−用途−
本発明のエレクトロクロミック装置は、例えば、エレクトロクロミックディスプレイ、株価の表示板等の大型表示板、防眩ミラー、調光ガラス等の調光素子、タッチパネル式キースイッチ等の低電圧駆動素子、光スイッチ、光メモリ、電子ペーパー、電子アルバムなどに使用することができる。これらの中でも、赤外波長光に対して高い透過率及び透過率変化を実現できるので、エレクトロクロミック調光窓等の調光ガラス装置が特に好ましい。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<エレクトロクロミック装置の作製>
以下のようにして、図1に示すエレクトロクロミック装置10を作製した。
−第1の電極の形成−
第1の支持体11(40mm×40mm、厚み0.7mmのガラス基板)上の30mm×30mmの領域、及び引き出し部分にスパッタ法により、インジウムとスズを含有する酸化物からなる第1の電極12を形成した。具体的には、スパッタターゲットとしてIn:SnO(質量比)95:5を用い、メタルマスクを施すことで前記パターンを形成した。なお、ガラス基板は200℃に加熱し、膜厚は110nmとした。
得られた第1の電極12の波長1,500nmでの赤外光の透過率は79%であり、van der Pauw法から得たキャリア密度は4×1020cm−3、シート抵抗は60Ωであった。
波長1,500nmでの赤外光の透過率は、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)で測定した。
キャリア密度は、van der Pauw法により、ホール効果測定装置(Bio−Lad社製、HL5500PC)を用いて測定した。
シート抵抗は、ロレスタAX(三菱化学アナリテック株式会社製)により測定した。
−エレクトロクロミック層の形成−
次に、(a)下記構造式Aで示されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物(例示化合物40)、(b)ポリエチレングリコールジアクリレート(KAYARAD PEG400DA、日本化薬株式会社製)、(c)光重合開始剤(IRGACURE 184、BASF社製)、及び(d)テトラヒドロフランを、a:b:c:d=10:5:0.15:85(質量比)となるように混合して、エレクトロクロミック層用溶液を調製した。
次に、第1の電極12であるITO膜の表面に、得られたエレクトロクロミック層用溶液をスピンコート法で塗布した後、60℃のアニール処理を1分間行い、紫外線照射により硬化させて、有機高分子材料からなる、平均厚み1.3μmのエレクトロクロミック層13を形成した。
[構造式A]
<第2の電極、及び劣化防止層の形成>
次に、第1の支持体11と同形状の第2の支持体17上に第1の電極12と同様にして第2の電極16を形成した。なお、得られた第2の電極16の波長1,500nmでの赤外光の透過率、キャリア密度、及びシート抵抗は第1の電極12と同じである。
次に、第2の電極16上に、酸化スズのメタノール分散液(セルナックス、日産化学株式会社製)にポリビニルブチラールを1質量%添加した溶液をスピンコート後、120℃で5分間アニールすることにより、劣化防止層15を形成した。
<貼り合せ、固体電解質層の形成>
次に、(a)1−エチル−3−メチルイミダゾリウムの(FSO塩、(b)ポリエチレングリコールジアクリレート(KAYARAD PEG400DA、日本化薬株式会社製)、及び(c)光重合開始剤(IRGACURE184、BASF社製)をa:b:c=2:1:0.01(質量比)となるように混合し、電解質溶液を調製した。
次に、得られた電解質溶液を、エレクトロクロミック層13と劣化防止層15との間に充填した後、60℃のアニール処理を1分間行い、紫外線照射により硬化させて貼り合せて、貼り合わせ体を作製した(図6A、図6B参照)。図6Bは、図6Aの長手方向の断面図である。第1の支持体と第2の支持体をずらして貼り合わせた構造となっている。
固体電解質層の平均厚みが30μmとなるように電解質溶液の充填量を調整し、各電極の引き出し部が貼り合せ領域の外に出るようにした。図6Bに示すように、貼り合せ領域とは第1の支持体と第2の支持体が重なった部分をさす。
次に、前記貼り合せ体の側面に紫外線硬化樹脂(KAYARAD R604、日本化薬株式会社製)を塗布し、紫外線照射により硬化させて、図1に示すエレクトロクロミック装置10(A)を作製した。得られたエレクトロクロミック装置10(A)は、調光ガラス装置として使用することができる。
<発消色駆動>
作製したエレクトロクロミック装置10(A)の発消色を確認した。即ち、第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を印加して5mC/cmの電荷を注入したところ、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分に、前記構造式Aの化合物に由来する赤外光吸収スペクトルが確認された。波長750nm以上1,500nm以下の領域に光吸収帯が生じ、光透過率が減少した(図7の構造式A)。
次いで、第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、−1Vの電圧を印加して電荷を放出したところ、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分が消色し、透明になることが確認された。波長450nm以上1,000nm以下の光透過率は60%以上であった。
なお、光透過率は、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)で測定した。
(実施例2)
<エレクトロクロミック装置の作製>
実施例1において、エレクトロクロミック層の形成に用いたトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物(例示化合物40)を、下記構造式Bで表されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物(例示化合物41)に変更した以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミック装置10(B)を作製した。
[構造式B]
(実施例3)
<エレクトロクロミック装置の作製>
実施例1において、エレクトロクロミック層の形成に用いたトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物(例示化合物40)を、下記構造式Cで表されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物(例示化合物42)に変更した以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミック装置10(C)を作製した。
[構造式C]
(実施例4)
<エレクトロクロミック装置の作製>
実施例1において、エレクトロクロミック層の形成に用いたトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物(例示化合物40)を、下記構造式Dで表されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物(例示化合物2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミック装置10(D)を作製した。
[構造式D]
ただし、前記構造式D中、Meはメチル基を表す。
<発消色駆動>
作製したエレクトロクロミック装置10(B)、10(C)、及び10(D)の発消色性を確認した。即ち、各エレクトロクロミック装置の第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を印加して5mC/cmの電荷を注入したところ、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分に、前記構造式B、C、及びDで表される化合物に由来する赤外光吸収スペクトルが確認された。波長750nm〜1,500nm領域に光吸収帯が生じ、光透過率が減少した(図7の構造式B、C、D参照)。なお、図7において、R40とR42で環状構造を形成した構造式Bで表される化合物が750nm〜1,500nmでの光吸収帯が最も大きい。
更に、第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、−1Vの電圧を印加して電荷を放出したところ、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分が消色し、エレクトロクロミック装置10(B)、10(C)、及び10(D)の全てにおいて透明になることが確認された。また、エレクトロクロミック装置10(B)、10(C)、及び10(D)の全てにおいて、波長450nm〜1,000nmの光透過率は60%以上であった。
なお、光透過率は、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)で測定した。
(実施例5)
<エレクトロクロミック装置の作製>
−第2のエレクトロクロミック層の形成−
実施例1において、下記構造式Eで表される化合物(例示化合物46)を2,2,3,3−テトラフロロプロパノールに2質量%溶解した溶液を、酸化スズ層(劣化防止層)表面にスピンコートした後、120℃で5分間アニールし、劣化防止層を第2のエレクトロクロミック層に変更した以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミック装置10(E)を作製した。
[構造式E]
<発消色駆動>
作製したエレクトロクロミック装置10(E)の発消色を確認した。即ち、第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、+1.5Vの電圧を印加して5mC/cmの電荷を注入したところ、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分に、前記構造式A及びEで表される化合物に由来する赤外光吸収スペクトルが確認され、実施例1よりも低い電圧で反応する結果を得た。波長750nm〜1,500nm領域に光吸収帯が生じ、光透過率が減少した(図7の構造式E参照)。なお、光透過率は、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)で測定した。
更に、第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、−1Vの電圧を印加して電荷を放出したところ、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分が消色し、透明になることが確認された。波長450nm〜1,000nmの光透過率は60%以上であり、発色電圧が減少した。
(実施例6)
<エレクトロクロミック装置の作製>
−第1の電極の形成と光透過率、結晶性の測定−
第1の支持体11(40mm×40mm、厚み0.7mmのガラス基板)上の30mm×30mmの領域、及び引き出し部分にスパッタ法により、インジウムとスズを含有する酸化物からなる第1の電極12を形成した。具体的には、スパッタターゲットとしてIn:SnO(質量比)90:10を用い、メタルマスクを施すことで前記パターンを形成した。製膜時は基板加熱せず、製膜後に150℃で0.5時間及び8時間加熱した。
スパッターパワーは1kW(ガス圧O/(Ar+O):0.3)及び6.5kW(ガス圧O/(Ar+O):3.6)で製膜し、膜厚は110nmとした。シート抵抗は全てのサンプルで60Ω以下に調整した。なお、シート抵抗は、ロレスタAX(三菱化学アナリテック株式会社製)により測定した。
得られた各第1の電極12の光透過率を紫外可視近赤外分光光度計 UH4150(日立ハイテクサイエンス株式会社製)で測定した(図8)。また、結晶性をXRD(X−ray diffraction)D8 DISCOVER(BURKER社製)で測定した(図9A、図9B)。その結果、6.5kW、150℃ 8時間アニールした条件では、1,500nmでの透過率が70%を満足せず、XRD測定から結晶性が高く、2θ≒52(deg.)付近の(440)面ピークが検出され。2θ≒32(deg.)付近の主ピーク(222)面とのピーク強度比(I440/I222)は0.14であった。
(実施例7)
<エレクトロクロミック装置の作製>
−第1の電極の形成と光透過率、結晶性の測定−
実施例6において、スパッタターゲットとしてIn:ZrO(質量比)90:10(SSR、東ソー株式会社製)を用い、スパッターパワーは1kW(ガス圧O/(Ar+O):0.4)及び6.5kW(ガス圧O/(Ar+O):2.5)で製膜した以外は、実施例6と同様にして、透明電極を作製した。シート抵抗は60Ω以下であった。なお、シート抵抗は、ロレスタAX(三菱化学アナリテック株式会社製)により測定した。
得られた各第1の電極12の光透過率を紫外可視近赤外分光光度計 UH4150(日立ハイテクサイエンス株式会社製)で測定した(図10)。また、結晶性をXRD(X−ray diffraction)D8 DISCOVER(BURKER社製)で測定した(図11)。その結果、1kW、6.5kWともに1,500nmで70%以上の透過率が得られた。XRD測定から2θ≒52(deg.)付近の(440)面ピークが検出された。2θ≒32(deg.)付近の主ピーク(222)面とのピーク強度比(I440/I222)は、どちらも0.11であった。
(実施例8)
<エレクトロクロミック装置の作製>
−第2のエレクトロクロミック層の形成−
実施例5において、第1のエレクトロクロミック層を形成せず、劣化防止層を第2のエレクトロクロミック層(例示化合物46)、例示化合物48、49、51、53、54に変更した以外は、実施例5と同様にして、6種のエレクトロクロミック装置10を作製した。
<発消色駆動>
作製した各エレクトロクロミック装置10の発消色を確認した。即ち、第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、+3.5Vの電圧を印加して5mC/cmの電荷を注入したところ、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分に、前記第2のエレクトロクロミック化合物に由来する光吸収スペクトルが確認され、波長450nm〜1,000nm領域に光吸収帯が生じ、光透過率が減少した(図12)。特に、例示化合物48、49、53では、波長750nm〜1,500nm領域にも光吸収帯が確認された。
なお、光透過率は、光透過率を紫外可視近赤外分光光度計 UH4150(日立ハイテクサイエンス株式会社製)で測定した。
(実施例9)
<エレクトロクロミック装置の作製>
−第2のエレクトロクロミック層の形成−
実施例1において、酸化スズ劣化防止層を形成せず。電解質溶液に第2のエレクトロクロミック層(例示化合物43)を1質量%混合した溶液を硬化することで、第2のエレクトロクロミック層と電解質層を一体化したエレクトロクロミック装置40を作製した。
<発消色駆動>
作製したエレクトロクロミック装置40の発消色を確認した。即ち、第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、+1.5Vの電圧を印加して5mC/cmの電荷を注入したところ、前記構造式Eで表される化合物(例示化合物46)と例示化合物43は同じ母骨格を有することから、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分に、前記構造式Eで表される化合物と同様の光吸収スペクトルが確認され、波長750nm〜1,500nm領域に図7の構造式Eの化合物と同様の光吸収帯が生じ、光透過率が減少した。
更に、第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、−1Vの電圧を印加して電荷を放出したところ、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分が消色し、透明になることが確認された。波長450nm〜1,000nmの光透過率は60%以上であり、発色電圧が減少した。
(実施例10)
<エレクトロクロミック装置の作製>
実施例5において、支持体として厚みが0.3mmのポリカーボネイト基板を用い、透明電極をスパッタターゲットとしてIn:SnO(質量比)90:10を用い、スパッターパワーは6.5kW(ガス圧O/(Ar+O):3.6)で製膜し、膜厚は110nmとした以外は、実施例5と同様にして、エレクトロクロミック装置10(F)を作製した。なお。製膜時は基板加熱せず、製膜後に120℃で0.5時間加熱した。電極のシート抵抗は53Ωであった。
得られた第1の電極12、第2の電極16の波長1,500nmでの赤外光透過率は84%であった。
<発消色駆動>
作製したエレクトロクロミック装置10(F)の発消色を確認した。即ち、第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、+1.5Vの電圧を印加して7mC/cmの電荷を注入したところ、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分に、前記構造式A及びEで表される化合物に由来する赤外光吸収スペクトルが確認され、波長750nm〜1,500nm領域に光吸収帯が生じ、光透過率が減少した(図13)。
更に、第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、−1Vの電圧を印加して電荷を放出したところ、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分が消色し、透明になることが確認された。波長450nm〜1,000nmの光透過率は70%以上であった。
なお、光透過率は、光透過率を紫外可視近赤外分光光度計 UH4150(日立ハイテクサイエンス株式会社製)で測定した。
(比較例1)
<エレクトロクロミック装置の作製>
実施例1において、以下のようにして、スパッタターゲットとしてIn:SnO(質量比)85:15に変更して第1の電極を作製した以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミック装置10(G)を作製した。
−第1の電極の形成−
第1の支持体11(40mm×40mm、厚み0.7mmのガラス基板)上の30mm×30mmの領域、及び引き出し部分にスパッタにより、インジウムとスズを含有する酸化物からなる第1の電極12を形成した。具体的には、スパッタターゲットとしてIn:SnO(質量比)85:15を用い、メタルマスクを施すことで前記パターンを形成した。なお、ガラス基板は200℃に加熱し、膜厚は110nmとした。
得られた第1の電極12の、実施例1と同様にして測定した波長1,500nmでの赤外光の透過率は40%であり、van der Pauw法から得たキャリア密度は1×1021cm−3、シート抵抗は20Ωであった。なお、シート抵抗は、ロレスタAX(三菱化学アナリテック株式会社製)により測定した。
<発消色駆動>
作製したエレクトロクロミック装置10(G)の発消色を確認した。即ち、第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を印加して5mC/cmの電荷を注入したところ、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分に、前記構造式Aの化合物に由来する赤外光吸収スペクトルが確認された。波長750nm以上1,500nm以下の領域に光吸収帯が生じ、光透過率が減少した。
次いで、第1の電極12の引き出し部分と第2の電極16の引き出し部分との間に、−1Vの電圧を印加して電荷を放出したところ、第1の電極12と第2の電極16の重なった部分が消色し、透明になることが確認された。波長450nm以上1,000nm以下の光透過率は60%以上であり、発色電圧が減少した。
なお、光透過率は、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)で測定した。
(比較例2)
<エレクトロクロミック装置の作製>
実施例1において、以下のようにして、スパッタターゲットとしてIn:SnO(質量比)90:10に変更して第1の電極12を作製した以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミック装置10(H)を作製した。
−第1の電極の形成と光透過率の測定−
第1の支持体11(40mm×40mm、厚み0.7mmのガラス基板)上の30mm×30mmの領域、及び引き出し部分にスパッタにより、インジウムとスズを含有する酸化物からなる第1の電極12を形成した。具体的には、スパッタターゲットとしてIn:SnO(質量比)90:10を用い、メタルマスクを施すことで前記パターンを形成した。製膜時は基板加熱せず、製膜後に150℃で8時間加熱した。スパッターパワーは6.5kWで製膜し、膜厚は110nmとした。シート抵抗は60Ωであった。なお、シート抵抗は、ロレスタAX(三菱化学アナリテック株式会社製)により測定した。
得られた第1の電極12の、実施例1と同様にして測定した波長1,500nmでの赤外光の透過率は63%であった。
なお、光透過率は、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)で測定した。
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 第1の支持体と該第1の支持体上に形成した第1の電極と、
前記第1の電極に対向するように設けられた第2の支持体上に形成した第2の電極と、
前記第1の電極に接するように設けられたエレクトロクロミック層と、
前記第1の電極と対向する側に前記第2の電極と接するように設けられた劣化防止層と、
前記エレクトロクロミック層及び前記劣化防止層と接するように設けられた電解質層とを有し、
前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくともいずれかが、酸化インジウム(In)を含む酸化物材料を含有し、かつ波長1,500nmでの赤外光の透過率が70%以上であり、
前記エレクトロクロミック層が、下記一般式(1)で示されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含有することを特徴とするエレクトロクロミック装置である。
[一般式(1)]
−B
ただし、n=2のときにはmは0であり、n=1のときmは0又は1である。A及びBの少なくとも1つはラジカル重合性官能基を有する。前記Aは、下記一般式(2)で示される構造であり、RからR15のいずれかの位置で前記Bと結合している。前記Bは、下記一般式(3)で示される構造であり、R16からR21のいずれかの位置で前記Aと結合している。
[一般式(2)]
[一般式(3)]
ただし、前記一般式(2)及び(3)中、RからR21は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記一価の有機基のうち少なくとも1つはラジカル重合性官能基である。
<2> 波長450nm以上1,000nm以下の光透過率が60%以上の透明状態から、前記エレクトロクロミック層が酸化還元反応することにより、波長750nm以上1,500nm以下の光透過率が減少変化する前記<1>に記載のエレクトロクロミック装置である。
<3> 前記酸化インジウム(In)を含有するスパッタターゲットを用いて作製した電極が、XRD測定にて、2θ≒52(deg.)付近の(440)面ピークが検出されないか、又は2θ≒32(deg.)付近の主ピーク(222)面とのピーク強度比(I440/I222)が0.14未満である前記<1>から<2>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
<4> 前記酸化物材料中の前記酸化インジウム(In)の含有率が95質量%以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
<5> 前記一般式(1)で示されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物が、下記一般式(1−1)で示されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
[一般式(1−1)]
ただし、前記一般式(1−1)中R27〜R54は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記R27〜R54のうち少なくとも1つはラジカル重合性官能基であり、R39とR41及びR40とR42の少なくともいずれかは環状構造を形成していてもよい。
<6> 前記重合性官能基が、アクリロイル基及びメタクリロイル基のいずれかである前記<1>から<5>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
<7> 前記エレクトロクロミック層が、前記トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他の重合性化合物を含有するエレクトロクロミック組成物を含む前記<1>から<6>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
<8> 前記エレクトロクロミック化合物とは異なる他の重合性化合物が、少なくとも1つの重合性官能基を有する化合物である前記<7>に記載のエレクトロクロミック装置である。
<9> 前記エレクトロクロミック組成物が、重合開始剤を含有する前記<7>から<8>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
<10> 前記劣化防止層が、下記一般式(4)で示されるジピリジン化合物を含有する前記<1>から<9>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
[一般式(4)]
ただし、前記一般式(4)中、R1及びR2は、それぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1から8のアルキル基、又はアリール基を表す。Xは1価のアニオンを表す。n、m、及びlは、0、1、又は2を表す。A、B、Cは各々独立に置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、及び複素環基のいずれかを表す。
<11> 前記一般式(4)で示されるジピリジン化合物において、mが1である前記<10>に記載のエレクトロクロミック装置である。
<12> 前記劣化防止層と前記電解質層が混合された一体化層として形成されている前記<1>から<11>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
<13> 調光ガラス装置である前記<1>から<12>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
前記<1>から<13>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
10 エレクトロクロミック装置
11 第1の支持体
12 第1の電極
13 エレクトロクロミック層
14 電解質層
15 劣化防止層
16 第2の電極
17 第2の支持体
18 保護層
19 第1のエレクトロクロミック層と電解質層との一体化層
20 エレクトロクロミック装置
21 第1のエレクトロクロミック層と電解質層と第2のエレクトロクロミック層との一体化層
22 第2のエレクトロクロミック層と電解質層との一体化層
30 エレクトロクロミック装置
40 エレクトロクロミック装置
50 エレクトロクロミック装置
特開2008−107587号公報 特表2014−523000号公報
Electrochromic Materials and Devices 5章 Conjugated Electrochromic Polymers:Structure−Driven Colour and Processing Controls,Aubrey et al 2015

Claims (8)

  1. 第1の支持体と該第1の支持体上に形成した第1の電極と、
    前記第1の電極に対向するように設けられた第2の支持体上に形成した第2の電極と、
    前記第1の電極に接するように設けられたエレクトロクロミック層と、
    前記第1の電極と対向する側に前記第2の電極と接するように設けられた劣化防止層と、
    前記エレクトロクロミック層及び前記劣化防止層と接するように設けられた電解質層とを有し、
    前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくともいずれかが、酸化インジウム(In)を含む酸化物材料を含有し、かつ波長1,500nmでの赤外光の透過率が70%以上であり、
    前記エレクトロクロミック層が、下記一般式(1)で示されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含有することを特徴とするエレクトロクロミック装置。
    [一般式(1)]
    −B
    ただし、n=2のときにはmは0であり、n=1のときmは0又は1である。A及びBの少なくとも1つはラジカル重合性官能基を有する。前記Aは、下記一般式(2)で示される構造であり、RからR15のいずれかの位置で前記Bと結合している。前記Bは、下記一般式(3)で示される構造であり、R16からR21のいずれかの位置で前記Aと結合している。
    [一般式(2)]
    [一般式(3)]
    ただし、前記一般式(2)及び(3)中、RからR21は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記一価の有機基のうち少なくとも1つはラジカル重合性官能基である。
  2. 波長450nm以上1,000nm以下の光透過率が60%以上の透明状態から、前記エレクトロクロミック層が酸化還元反応することにより、波長750nm以上1,500nm以下の光透過率が減少変化する請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
  3. 前記酸化インジウム(In)を含有するスパッタターゲットを用いて作製した電極が、XRD測定にて、2θ≒52(deg.)付近の(440)面ピークが検出されないか、又は2θ≒32(deg.)付近の主ピーク(222)面とのピーク強度比(I440/I222)が0.14未満である請求項1から2のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
  4. 前記酸化物材料中の前記酸化インジウム(In)の含有率が95質量%以上である請求項1から3のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
  5. 前記一般式(1)で示されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物が、下記一般式(1−1)で示されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含有する請求項1から4のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
    [一般式(1−1)]
    ただし、前記一般式(1−1)中R27〜R54は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記R27〜R54のうち少なくとも1つはラジカル重合性官能基であり、R39とR41及びR40とR42の少なくともいずれかは環状構造を形成していてもよい。
  6. 前記劣化防止層が、下記一般式(4)で示されるジピリジン化合物を含有する請求項1から5のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
    [一般式(4)]
    ただし、前記一般式(4)中、R1及びR2は、それぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1から8のアルキル基、又はアリール基を表す。Xは1価のアニオンを表す。n、m、及びlは、0、1、又は2を表す。A、B、Cは各々独立に置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、及び複素環基のいずれかを表す。
  7. 前記劣化防止層と前記電解質層が混合された一体化層として形成されている請求項1から6のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
  8. 調光ガラス装置である請求項1から7のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
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