JP2016024303A - エレクトロクロミック装置及びその製造方法 - Google Patents

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Keiichiro Yutani
圭一郎 油谷
山本 諭
Satoshi Yamamoto
諭 山本
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禎久 内城
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和明 辻
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Abstract

【課題】高いコントラストを得られるエレクトロクロミック装置を提供する。
【解決手段】支持体11と、支持体11上に形成された第1の電極層12と、第1の電極層12に対向するように形成された第2の電極層17と、第1の電極12層又は第2の電極層17に接するように形成された第1のエレクトロクロミック層13と、第1のエレクトロクロミック層13に接するように形成された第3の電極層14と、第3の電極層14に接するように形成された第2のエレクトロクロミック層15と、第1の電極層12と第2の電極層17との間に形成された電解質層16とを備え、第3の電極層14及び第2のエレクトロクロミック層15がイオン透過性を有し、前記第1のエレクトロクロミック層が接する前記第1の電極層又は第2の電極層と、前記第2のエレクトロクロミック層が接する前記第3の電極層とが導通していることを特徴とするエレクトロクロミック装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、エレクトロクロミック装置及びその製造方法に関する。
電圧を印加することで、可逆的に酸化還元反応が起こり、可逆的に色が変化する現象をエレクトロクロミズムという。このエレクトロクロミズムを利用した装置がエレクトロクロミック装置である。エレクトロクロミック装置にはエレクトロクロミズムの特徴に由来する応用が実現できるとして、今日まで多くの研究がなされている。
エレクトロクロミック装置に用いられるエレクトロクロミック材料としては、有機材料や無機材料がある。有機材料は、その分子構造により様々な色彩発色が可能であることから、カラー表示装置として有望である。一方、無機材料は色彩の制御に課題があるが、特に固体電解層を用いた場合、耐久性に優れる。この特徴を利用し、色彩度が低いことが利点となるアプリケーションとして調光ガラスやNDフィルターへの実用化が検討されている。
エレクトロクロミック装置では、一般に、互いに対向する2つの電極間にエレクトロクロミック材料が設けられ、イオン伝導可能な電解質層が電極間に形成された構成により、酸化還元反応が行われる。エレクトロクロミズムは電気化学現象の一つであり、電解質層の性能(イオン伝導度等)が応答速度や発色のメモリ効果に影響する。電解質層は電解質を溶媒に溶かした液体状である場合は速い応答性を得やすいが、素子強度・信頼性の点で固体化、ゲル化による改良が検討されている。
エレクトロクロミック装置は、一般に、エレクトロクロミック層を互いに対向する2つの電極間に形成した後、イオン伝導可能な電解質層を介して貼合せることで作製される。エレクトロクロミック装置の色濃度は、エレクトロクロミック層の膜厚と注入した電荷量に依存する。デバイスとして高濃度色変化(高いコントラスト)を実現するためには、一般的にエレクトロクロミック層の膜厚を厚くする必要があるが、その場合エレクトロクロミック層の電気抵抗が高くなってしまう。さらに、電解質層のイオンとの接触界面が減少するため、十分な色濃度が得られにくく、高いコントラストを得ることが困難であるという問題があった。
そこで、半導体ナノ粒子にエレクトロクロミック材料を吸着させて、導電性と接触界面を確保して高い色濃度を得る構造が提案されている。特許文献1では半導体ナノ粒子として酸化チタンを用いることで、高い色濃度を実現するとともに、複数のエレクトロクロミック層を隔離して積層配置した装置での混色表示を例示している。
しかしながら、上記の技術では構成が複雑であり、複数の透明電極により透過率が低下しやすいという問題があった。特にエレクトロクロミック装置を電子調光フィルターとして利用する場合は、透明状態での透過率低下が問題になる。そのため、色濃度が十分でなく、コントラストの向上が求められていた。
そこで、本発明は上記課題を鑑み、高いコントラストを得られるエレクトロクロミック装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のエレクトロクロミック装置は、支持体と、前記支持体上に形成された第1の電極層と、前記第1の電極層に対向するように形成された第2の電極層と、前記第1の電極層又は第2の電極層に接するように形成された第1のエレクトロクロミック層と、前記第1のエレクトロクロミック層に接するように形成された第3の電極層と、前記第3の電極層に接するように形成された第2のエレクトロクロミック層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に形成された電解質層とを備え、前記第3の電極層及び前記第2のエレクトロクロミック層がイオン透過性を有し、前記第1のエレクトロクロミック層が接する前記第1の電極層又は第2の電極層と、前記第2のエレクトロクロミック層が接する前記第3の電極層とが導通していることを特徴とする。
本発明によれば、高いコントラストを得られるエレクトロクロミック装置を提供することができる。
本発明に係るエレクトロクロミック装置の一例を示す模式図である。 本発明に係るエレクトロクロミック装置の他の例を示す模式図である。 本発明に係るエレクトロクロミック装置の他の例を示す模式図である。 本発明に係るエレクトロクロミック装置の他の例を示す模式図である。 本発明に係るエレクトロクロミック装置の他の例を示す模式図である。 本発明に係るエレクトロクロミック装置の他の例を示す模式図である。 本発明に係るエレクトロクロミック装置の各電極層の形成領域の一例を示す模式図である。
以下、図面を参照して、実施の形態の説明を行う。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置を例示する断面図である。図1では、第1の基板(支持体)11、第1の電極層12、第1のエレクトロクロミック層13、第3の電極層14、第2のエレクトロクロミック層15、電解質層16、第2の電極層17、保護層18、第2の基板(支持体)19、導通部22が図示されている。
エレクトロクロミック装置10において、第1の基板(支持体)11上には第1の電極層12が設けられ、第1の電極層12に接して第1のエレクトロクロミック層13が設けられている。さらに、第1のエレクトロクロミック層13に接して第3の電極層14、第3の電極層に接して、第2のエレクトロクロミック層15が設けられている。また、第2の基板(支持体)19には第2の電極層17が設けられ、電解質層16を介して、第2のエレクトロクロミック層15と第2の電極層17が対向している。
なお、便宜上、第1の電極層12と第2の電極層17、第3の電極層14の各々において、互いに対向する面を内面と称し、各々の内面とは反対側の面を外面と称する。本実施の形態では、第1の電極層12の内面は第1のエレクトロクロミック層13と接しており、第1の電極層12の外面は第1の基板11と接している。また、第2の電極層17の内面は電解質層16と接しており、第2の電極層17の外面は第2の基板(支持体)19と接している。
エレクトロクロミック装置10において、第1の電極層12と第3の電極層14は導通している。これにより、第1の電極層12及び/又は第3の電極層14と、第2の電極層17との間に電圧を印加することにより、第1のエレクトロクロミック層13及び第2のエレクトロクロミック層17が電荷の授受により酸化還元反応して発消色する。
このとき、第3の電極層14及び第2のエレクトロクロミック層17は電解質層16のイオンが透過するように、イオン透過性を有することが必要である。イオン透過性を有することにより、電解質層16のイオンがこれらの層を透過することができ、エレクトロクロミック層への電荷授受を行うことができる。イオン透過性を付与する手法は特に制限されるわけではないが、第3の電極層14、第2のエレクトロクロミック層17を粒子状又は島状の層にしたり、貫通孔を有する層にしたりすること等により行うことができる。
上述したように、本実施形態のエレクトロクロミック装置10においては、エレクトロクロミック層として第1のエレクトロクロミック層13及び第2のエレクトロクロミック層15の2つが設けられている。また、第1のエレクトロクロミック層を介して第1の電極層12と第3の電極層14が導通している。そのため、第1の電極層12と第3の電極層14のいずれか一方又は両方と、第2の電極層17との間に電圧を印加することで、第1のエレクトロクロミック層13と第2のエレクトロクロミック層17を同時に発消色させることができる。これにより、エレクトロクロミック層の色濃度を大きくすることができ、高いコントラストを得ることができる。
これに加えて、エレクトロクロミック層が2つあることで、電解質層16のイオンがエレクトロクロミック層に接触する界面を広くすることができ、エレクトロクロミック層への電荷授受を向上させることができる。そのため、エレクトロクロミック装置のコントラスト性能を向上させることができる。
なお、上述したように、第1の電極層12と第3の電極層14は第1のエレクトロクロミック層13に形成した導通部22により導通している。導通させるには、例えば、第1のエレクトロクロミック層13に貫通孔(導通部22)を形成し、第1の電極層12と第3の電極層14を接触させることで、両電極層を導通させることができる。特に、第1のエレクトロクロミック層13の厚さが5μm以下であれば、製膜時に貫通孔(ピンホール)が形成されやすく、これを利用すれば第3の電極層14の形成時に容易に導通部22を形成することができる。
なお、第1のエレクトロクロミック層13の導電性が高い場合は、膜厚を調整することで導通を得ることが可能である。電極間の電気抵抗は10kΩ以下であることが好ましい。
本実施形態において、第3の電極層14には、厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されていることが好ましい。これにより、電解質層16を形成する電解液やエレクトロクロミック層を形成するエレクトロクロミック材料を充填する際の注入孔の役割を果たすことができる。
第3の電極層14に貫通孔を形成する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、以下に示す方法を挙げることができる。また、第1のエレクトロクロミック層13、第2の電極層17に貫通孔を形成する場合も同様の方法が適用できる。
その方法としては、第3の電極層14を形成する前に予め下地層として凹凸を持つ層を形成し、そのまま凹凸を有する第2の電極層14とする方法を用いることができる。
また、第3の電極層14を形成する前にマイクロピラー等の凸形状構造体を形成し、第3の電極層14を形成後に凸形状構造体を取り除く方法を用いてもよい。また、第3の電極層14を形成する前に発泡性の高分子重合体等を散布し、第3の電極層14を形成後に加熱や脱気する等の処理を施して発泡させる方法を用いてもよい。また、第3の電極層14に直接各種放射線を輻射して細孔を形成させる方法を用いてもよい。
特に貫通孔を形成する方法としては、コロイダルリソグラフィー法が好ましい。コロイダルリソグラフィー法は、第3の電極層14が積層される下層に微粒子を散布し、散布された微粒子をマスクとして微粒子が散布された面に真空成膜法等により第3の電極層14となる導電膜を形成し、その後、微粒子ごと導電膜を除去することでパターニングを行う方法である。
前記コロイダルリソグラフィー法により、第3の電極層14に微細な貫通孔を容易に形成できる。特に、散布する微粒子の直径を第3の電極層14の膜厚以上とすることにより、第3の電極層14に容易に貫通孔を形成できる。また、散布する微粒子分散物の濃度や微粒子の粒子径を変えることで容易に微細な貫通孔の密度や面積を調節できる。
さらに、微粒子分散物の散布方法によりコロイダルマスクの面内均一性を容易に高めることができるため、第2のエレクトロクロミック層15の発消色濃度の面内均一性を高め、表示性能を向上させることが可能となる。以下、コロイダルリソグラフィー法の具体的な内容について説明する。
コロイダルリソグラフィーに用いるコロイダルマスクとなる微粒子の材質については、第3の電極層14に微細な貫通孔を形成することが可能であれば何を用いても構わないが、例えば、SiO微粒子等が経済的に優位である。また、コロイダルマスク散布時に用いる分散物は分散性のよいものが好ましく、例えば、コロイダルマスクとなる微粒子としてSiO微粒子を用いる場合は水系の分散物を用いることができる。
ただし、第1のエレクトロクロミック層13等のコロイダルマスクの下層にダメージを与えるおそれがある場合は、コロイダルマスクとなる微粒子として非水系溶媒に分散するように表面処理したSiO微粒子を用いることが好ましい。この場合には、コロイダルマスク散布時に用いる分散物として非水系の分散物を用いることができる。
コロイダルマスクとなる微粒子の粒子径(直径)については、微細な貫通孔を形成する第3の電極層14の膜厚以上であることが好ましい。コロイダルマスクは、超音波照射法やテープピーリング法等により除去できるが、下層にダメージの少ない方法を選択することが好ましい。また、コロイダルマスクの他の除去方式として、微粒子等の吹付けによるドライ洗浄も可能である。
テープピーリング法を用いてコロイダルマスクを除去する場合、一般的なテープにおける粘着層の厚さは1μm以上となっておりコロイダルマスクが埋没してしまう場合が多い。この場合、第3の電極層14の表面に粘着層が接触してしまうため、糊残りの少ないテープを使用することが好ましい。超音波照射法を用いてコロイダルマスクを除去する場合、浸漬する溶媒については既に形成している各機能層にダメージの少ない溶媒を用いることが好ましい。
さらに、第3の電極層14に微細な貫通孔を形成する方法として、コロイダルリソグラフィー法の他に、フォトレジストやドライフィルム等を用いた一般的なリフトオフ法を用いても良い。具体的には、まず所望のフォトレジストパターンを形成し、次いで第3の電極層14を形成し、その後フォトレジストパターンを除去することによってフォトレジストパターン上の不要な部分を除去して、第3の電極層14に微細な貫通孔を形成する方法である。
一般的なリフトオフ法により、第3の電極層14に微細な貫通孔を形成する場合、光照射による下層へのダメージを回避するため、対象物への光照射面積が小さくて済むように、使用するフォトレジストはネガ型のものを使用することが好ましい。
ネガ型のフォトレジストとしては、例えば、ポリビニルシンナメート、スチリルピリジニウムホルマール化ポリビニルアルコール、グリコールメタクリレート/ポリビニルアルコール/開始剤、ポリグリシジルメタクリレート、ハロメチル化ポリスチレン、ジアゾレジン、ビスアジド/ジエン系ゴム、ポリヒドロキシスチレン/メラミン/光酸発生剤、メチル化メラミン樹脂、メチル化尿素樹脂等を挙げることができる。
さらに、レーザー光を用いた加工装置により、貫通孔を形成することも可能である。一般的にレーザー加工を用いた場合は、形成される孔径が15μm以上になる。
第3の電極層14に設けられる微細な貫通孔の径は、10nm以上100μm以下であると好適である。貫通孔の径が10nm(0.01μm)よりも小さい場合、電解質イオンの透過が悪くなる不具合が生じる。また、微細貫通孔の径が100μmよりも大きい場合、目視できるレベル(通常のディスプレイでは1画素電極レベルの大きさ)であり、微細な貫通孔直上の表示性能に不具合が生じることになる。
第3の電極層14に設けられる微細な貫通孔の第3の電極層14の表面積に対する孔面積の比(穴密度)は、適宜設定することができるが、例えば0.01〜40%程度とすることができる。穴密度が高すぎると、第3の電極層14の表面抵抗が大きくなるため、第3の電極層14がない領域面積が広くなることによるクロミック欠陥が出る不具合が生じる。また、穴密度が低すぎると電解質イオンの浸透性が悪くなるために、同様に駆動に問題が生じる不具合が生じる。
以下、第1の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置10を構成する各構成要素について詳説する。
[第1の基板11、第2の基板19]
第1の基板11及び第2の基板19は、各構成層(第1の電極層12、第1のエレクトロクロミック層13、第3の電極層14、第2のエレクトロクロミック層15、電解質層16、第2の電極層17、及び保護層18を支持する機能を有する。
第1の基板11及び第2の基板19としては、これらの各層を支持できれば、周知の有機材料や無機材料をそのまま用いることができる。
具体例としては、第1の基板11、第2の基板19として、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、フロートガラス、ソーダ石灰ガラス等のガラス基板を用いることができる。また、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂基板を用いてもよい。さらに、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属基板を用いてもよい。
なお、エレクトロクロミック装置10が調光フィルターのような光学素子の場合は、第1の基板11、第2の基板19は透明であることが好ましく、第2の電極層17側から視認する反射型表示装置である場合は、第1の基板11の透明性は不要である。
また、第1の基板11、第2の基板19として導電性金属材料を用いる場合は、第1の基板11、第2の基板19が第1の電極層12及び/又は第2の電極層17を兼ねることもできる。また、第1の基板11、第2の基板19の表面に、水蒸気バリア性・ガスバリア性・視認性を高めるために透明絶縁層・反射防止層等がコーティングされていてもよい。
[第1の電極層12、第2の電極層17、第3の電極層14]
第1の電極層12及び第2の電極層17、第3の電極層14の材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、調光ガラスとして利用する場合は光の透過性を確保する必要がある。この場合は、透明かつ導電性に優れた透明導電性材料が用いられることが好ましい。これにより、ガラスの透明性を得られると共に着色のコントラストをより高めることができる。
透明導電性材料としては、スズをドープした酸化インジウム(以下、ITOとする)、フッ素をドープした酸化スズ(以下、FTOとする)、アンチモンをドープした酸化スズ(以下、ATOとする)等の無機材料を用いることができる。特に、真空成膜により形成されたインジウム酸化物(以下、In酸化物とする)、スズ酸化物(以下、Sn酸化物とする)又は亜鉛酸化物(以下、Zn酸化物とする)のいずれか1つを含む無機材料を用いることが好ましい。
In酸化物、Sn酸化物、及びZn酸化物は、スパッタ法、真空蒸着法により、容易に成膜が可能な材料であると共に、良好な透明性と電気伝導度が得られる材料である。また、特に好ましい材料は、InSnO、GaZnO、SnO、In、ZnOである。さらには、透明性を有する銀、金、カーボンナノチューブ、金属酸化物等のネットワーク電極やこれらの複合層も有用である。なお、ネットワーク電極とは、カーボンナノチューブや他の高導電性の非透過性材料等を微細なネットワーク状に形成して透過率を持たせた電極である。
第1の電極層12、第2の電極層17、第3の電極層14の各々の膜厚は、第1のエレクトロクロミック層13及び第2のエレクトロクロミック層15の酸化還元反応に必要な電気抵抗値が得られるように調整される。第1の電極層12、第2の電極層17、第3の電極層14の膜厚は、例えば50〜500nmが好ましい。
また、調光ミラーとして利用する場合には、第1の電極層12及び第2の電極層17のいずれかが反射機能を有する構造が好ましく、その場合には第1の電極層12及び第2の電極層17の材料として金属材料を含むことができる。金属材料としては、例えばPt、Ag、Au、Cr、ロジウム、及びこれらの合金、又は、これらの積層構成等を用いることができる。
第1の電極層12、第2の電極層17及び第3の電極層14の各々の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。また、第1の電極層12、第2の電極層17及び第3の電極層14の各々の材料が塗布形成できるものであれば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
[第1のエレクトロクロミック層13、第2のエレクトロクロミック層15]
第1のエレクトロクロミック層13、第2のエレクトロクロミック層15は、エレクトロクロミック材料を含んだ層であり、エレクトロクロミック材料としては、無機エレクトロクロミック化合物、有機エレクトロクロミック化合物のいずれを用いても構わない。また、エレクトロクロミズムを示すことで知られる導電性高分子を用いてもよい。なお、以下、第1のエレクトロクロミック層13、第2のエレクトロクロミック層15をエレクトロクロミック層13、15と表記することがある。
無機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、金属錯体系や金属酸化物系のエレクトロクロミック化合物としては、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化インジウム、酸化イリジウム、酸化ニッケル、プルシアンブルー等の無機系エレクトロクロミック化合物を用いることができる。
また、有機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、ビオロゲン、希土類フタロシアニン、スチリル等が挙げられる。また、導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン又はこれらの誘導体等が挙げられる。
また、エレクトロクロミック層13、15としては、導電性又は半導体性微粒子に有機エレクトロクロミック化合物を担持した構造を用いることが特に好ましい。具体的には、電極表面に粒径5nm〜50nm程度の微粒子を結着し、その微粒子の表面にホスホン酸やカルボキシル基、シラノール基等の極性基を有する有機エレクトロクロミック化合物を吸着した構造が好ましい。
本構造は、微粒子の大きな表面効果を利用して、効率よく有機エレクトロクロミック化合物に電子が注入されるため、従来のエレクトロクロミック表示素子と比較して高速応答が可能となる。さらに、微粒子を用いることで表示層として透明な膜を形成することができるため、エレクトロクロミック色素の高い発色濃度を得ることができる。また、エレクトロクロミック層をイオン透過性にすることが容易である。
また、導電性又は半導体性微粒子には、複数種類の有機エレクトロクロミック化合物を担持することもできる。
具体的には、ポリマー系、色素系のエレクトロクロミック化合物として、アゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、ジピリジン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、トリフェニルアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェニレンジアミン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、フタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、メタロセン系等の低分子系有機エレクトロクロミック化合物、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性高分子化合物を用いることができる。
上記中、発消色電位が低く良好な色値を示すビオロゲン系化合物又はジピリジン系化合物を含むことが特に好ましい。例えば、下記一般式(1)で表されるジピリジン系化合物を含むことが好ましい。
なお、上記一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1から8のアルキル基、又はアリール基を表し、R1又はR2の少なくとも一方は、COOH、PO(OH)、Si(OC2k+1(ただし、kは、1〜20を表す)から選ばれる置換基を有することが好ましい。
上記一般式(1)において、Xは一価のアニオンを表す。前記一価のアニオンとしては、カチオン部と安定に対をなすものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、Brイオン(Br)、Clイオン(Cl)、ClOイオン(ClO )、PFイオン(PF )、BFイオン(BF )などが挙げられる。
また、上記一般式(1)中、n、m、lは0、1、又は2を表す。A、B、Cは各々独立に置換基を有してもよい炭素数1から20のアルキル基、アリール基又は複素環基を表す。
前記エレクトロクロミック化合物を担持する導電性又は半導体性微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属酸化物を用いることが好ましい。具体的な材料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケート等を主成分とする金属酸化物を用いることができる。
また、これらの金属酸化物は、単独で用いてもよく、2種以上が混合され用いてもよい。電気伝導性等の電気的特性や光学的性質等の物理的特性を鑑みるに、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化タングステンから選ばれる一種、若しくはそれらの混合物が用いられたとき、発消色の応答速度に優れた色表示が可能である。とりわけ、酸化チタンが用いられたとき、より発消色の応答速度に優れた色表示が可能である。
また、導電性又は半導体性微粒子の形状は、特に限定されるものではないが、エレクトロクロミック化合物を効率よく担持するために、単位体積当たりの表面積(以下比表面積)が大きい形状が用いられる。例えば、微粒子が、ナノ粒子の集合体であるときは、大きな比表面積を有するため、より効率的にエレクトロクロミック化合物が担持され、発消色の表示コントラスト比が優れる。
エレクトロクロミック層13、15の膜厚は0.2〜5.0μmが好ましい。エレクトロクロミック層13、15の膜厚が0.2μmよりも小さい場合、発色濃度を得にくくなる。また、エレクトロクロミック層13、15の膜厚が5.0μmより大きい場合、製造コストが増大すると共に、着色によって視認性が低下しやすい。
また、エレクトロクロミック層13、15と導電性又は半導体性微粒子層は真空製膜により形成することも可能であるが、生産性の点で粒子分散ペーストとして塗布形成することが好ましい。
さらに、上述したように、第2のエレクトロクロミック層17は第3の電極層14と同様に、電解質層16のイオンが透過するように、イオン透過性を有することが必要である。イオン透過性を有することにより、電解質層16のイオンがこれらの層を透過することができ、エレクトロクロミック層への電荷授受を行うことができる。イオン透過性を付与する手法は特に制限されるわけではないが、粒子状又は島状の層にしたり、貫通孔を有する層にしたりすること等により行うことができる。
第1のエレクトロクロミック層13と第2のエレクトロクロミック層15の材料は、同一でも良いし、異なっていても良いが、同一材料であることが好ましい。酸化還元電位が異なる材料を用いると、より安定(低電位)な材料に電荷が移りやすいため、経時で色が変化しやすい不具合が生じるためである。
[電解質層16]
本実施の形態では、電解質層16は、溶媒に溶解した電解質又はイオン液体を含有する層であり、イオンを保持する機能を有する。またギャップ剤として金属酸化物粒子などの絶縁性粒子を混合すること、さらに白色粒子を混合することで白色層の機能を付与することもできる。また、電解質層16は液もれの懸念から光又は熱硬化樹脂を混合し、固体化させることが好ましい。
電解質の材料としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩を用いることができる。具体的には、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BF等を用いることができる。
特に好ましい電解質はイオン性液体である。イオン性液体としては、特に制限されるわけではなく、公知のものを用いることができる。特に有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造がある。分子構造の例としては、カチオン成分としてN,N−ジメチルイミダゾール塩、N,N−メチルエチルイミダゾール塩、N,N−メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体、N,N−ジメチルピリジニウム塩、N,N−メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体など芳香族系の塩、又は、トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウムなど脂肪族4級アンモニウム系が挙げられる。
アニオン成分としては大気中の安定性の面でフッ素やCNを含んだ化合物がよく、BF 、CFSO 、PF 、(CFSO、B(CN) 等が挙げられる。これらのカチオン成分とアニオン成分の組み合わせにより処方したイオン性液体を用いることができる。
また、溶媒の例としては、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1、2−ジメトキシエタン、1、2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類やそれらの混合溶媒等を用いることができる。
硬化樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などの一般的な材料を挙げることができるが、電解質との相溶性が高い材料が望ましい。このような構造としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエチレングリコールの誘導体が好ましい。また、硬化樹脂としては、光硬化可能な樹脂を用いることが好ましい。熱重合や、溶剤を蒸発させることにより薄膜化する方法に比べて、低温かつ短時間で素子を製造できるためである。
混合する粒子としては、多孔質層を形成して電解質を保持することができる材料であれば特に限定されるものではないが、エレクトロクロミック反応の安定性、視認性の点から、絶縁性、透明性、耐久性が高い材料が好ましい。具体的な材料としては、シリコン、アルミ、チタン、亜鉛、錫、などの酸化物又は硫化物、及びそれらの混合物を挙げることができる。粒子の大きさは10nm〜10μmが好ましい。白色層とする場合は屈折率が高く、散乱反射が得やすい粒子径(200nm〜300nm程度)の材料を選択する。特に好ましい材料は酸化チタンを含有した材料などである。
[保護層18]
保護層18は、第1の基板11、第2の基板19以外の表面部分を覆うように形成されている。保護層18は、例えば、紫外線硬化性や熱硬化性の絶縁性樹脂等を、エレクトロクロミック装置10の側面に塗布し、その後硬化させることにより形成できる。また、硬化樹脂と無機材料の積層保護層とすることがさらに好ましい。無機材料との積層構造にすることで、酸素や水に対するバリア性が向上する。無機材料としては、絶縁性、透明性、耐久性が高い材料が好ましく、具体的な材料としては、シリコン、アルミ、チタン、亜鉛、錫、などの酸化物又は硫化物、及びそれらの混合物を挙げることができる。これらの膜はスパッタや蒸着などの真空製膜プロセスで容易に形成することができる。
保護層18の膜厚は、0.5〜10μmが好ましい。なお、図1のようにエレクトロクロミック装置10の側面に形成される場合、各層の厚み方向に対して垂直な方向が膜厚として考慮される。
[本実施の形態に係るエレクトロクロミック装置の製造方法]
本実施の形態に係るエレクトロクロミック装置10の製造方法について説明する。
第1の基板11上に第1の電極層12及び第1のエレクトロクロミック層13を順次形成する工程と、第1のエレクトロクロミック層13上に、イオン透過性を有する第3の電極層14及び第2のエレクトロクロミック層15を順次形成する工程と、第2の基板19上に第2の電極層17を形成する工程と、第2のエレクトロクロミック層15上に、少なくとも紫外線硬化剤を有する電解液を滴下し、第2のエレクトロクロミック層15と第2の電極層17とが対向するように前記第1の基板と前記第2の基板を貼り合せる工程と、紫外線を照射し、電解質層16を形成する工程とを有する。
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは層構成の異なるエレクトロクロミック装置を例示する。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
図2は、第2の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置を例示する断面図である。図2を参照するに、第2の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置20は、電解質層16と第2の電極層17に接して、劣化防止層21が形成されている点が、第1の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置10(図1参照)と相違する。
本実施の形態では、第2の電極層17の電気化学反応による劣化を防止するために、劣化防止層21が形成される。これにより、第2の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置では、第1の実施の形態の効果に加えて、さらに繰り返し特性に優れたエレクトロクロミック装置が提供できる。以下、エレクトロクロミック装置20を構成する劣化防止層21について詳説する。
[劣化防止層21]
劣化防止層21の役割としては、第1のエレクトロクロミック層13及び第2のエレクトロクロミック層15と逆の化学反応をすることが挙げられる。これにより、電荷のバランスがとられ、第2の電極層17が不可逆的な酸化還元反応をすることによる腐食や劣化を抑制し、結果としてエレクトロクロミック装置20の繰り返し駆動の安定性を向上させることができる。なお、逆の化学反応には、劣化防止層21が酸化還元する場合に加え、キャパシタとして作用することも含まれる。
劣化防止層21の材料は、第1の電極層12及び第2の電極層17の不可逆的な酸化還元反応による腐食を防止する役割を担う材料であれば特に限定されるものではない。劣化防止層21の材料として、例えば、酸化アンチモン錫や酸化ニッケル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、又はそれらを複数含む導電性又は半導体性金属酸化物を用いることができる。さらに、劣化防止層21の着色が問題にならない場合は、前述のエレクトロクロミック材料と同じものを用いることができる。
特に、透明性が要求されるレンズのような光学素子としてエレクトロクロミック装置を作製する場合は、劣化防止層21として、透明性の高い材料を用いる必要がある。このような材料としては、n型半導体性酸化物微粒子(n型半導体性金属酸化物)を用いることが好ましい。具体例としては、100nm以下の1次粒子径粒子からなる、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、又はそれらを複数含む化合物粒子、混合物等が挙げられる。
一方、劣化防止層21として、透明性の高いp型半導体性層の材料例としては、ニトロキシルラジカル(NOラジカル)を有する有機材料などであり、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)の誘導体又は誘導体のポリマー材料などが挙げられる。
なお、劣化防止層21を特別に形成することなく、電解質層16に劣化防止層用材料を混合し、電解質層16に劣化防止機能を付与することもできる。その場合の層構成は図1と同様になる。
劣化防止層21の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンレーティング法等を用いることができる。また、劣化防止層21の材料が塗布形成できるものであれば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
劣化防止層21が形成される箇所としては、第1〜第3の電極層のうち、第1のエレクトロクロミック層13及び第2のエレクトロクロミック層15のどちらにも接していない電極層と接する箇所であり、かつ電解質層16と接する箇所に形成される。そのため、本実施の形態では、第2の電極層17の内面に接して劣化防止層21が形成されている。
また、第1のエレクトロクロミック層13、第2のエレクトロクロミック層15及び劣化防止層21のうち、少なくとも一つは、半導体性の金属酸化物微粒子(半導体性金属酸化物微粒子)を含むことが好ましい。なお、半導体性金属酸化物微粒子は上述のものを用いることができる。
[本実施の形態に係るエレクトロクロミック装置の製造方法]
本実施の形態に係るエレクトロクロミック装置20の製造方法について説明する。
第1の基板11上に第1の電極層12及び第1のエレクトロクロミック層13を順次形成する工程と、第1のエレクトロクロミック層13上に、イオン透過性を有する第3の電極層14及び第2のエレクトロクロミック層15を順次形成する工程と、第2の基板19上に第2の電極層17を形成する工程と、第2のエレクトロクロミック層15上に、少なくとも紫外線硬化剤を有する電解液を滴下し、第2のエレクトロクロミック層15と第2の電極層17とが対向するように前記第1の基板と前記第2の基板を貼り合せる工程と、紫外線を照射し、電解質層16を形成する工程とを有することを特徴とする。さらに本実施の形態においては、第2の電極層17に接するように劣化防止層21を形成する工程を有している。
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態では、第2の実施の形態とは層構成の異なるエレクトロクロミック装置を例示する。なお、第3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
図3は、第3の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置を例示する断面図である。図3を参照するに、第3の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置30は、第2の基板(支持体)19が用いられておらず、保護層18がエレクトロクロミック装置30の表面に形成されている点が、第2の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置20(図2参照)と相違する。
第3の実施形態では支持体が1つであり、貼り合せプロセスなしでエレクトロクロミック装置を作製することができる。これにより、曲面など多様な部位に装置形成することが可能になるため適用範囲が広がると共に、片側の支持体が不要となるため生産性に優れ、かつ大型のエレクトロクロミック装置を提供することができる。
[本実施の形態に係るエレクトロクロミック装置の製造方法]
本実施の形態に係るエレクトロクロミック装置30の製造方法について説明する。
第1の基板(支持体)11上に第1の電極層12及び第1のエレクトロクロミック層13を順次形成する工程と、第1のエレクトロクロミック層13上に、イオン透過性を有する第3の電極層14及び第2のエレクトロクロミック層15を順次形成する工程と、第2のエレクトロクロミック層15上に絶縁性材料からなる多孔質層を形成する工程と、前記多孔質層上に第2の電極層17を形成する工程と、第2の電極層17の上方から、少なくとも紫外線硬化剤を有する電解液を滴下する工程と、紫外線を照射し、前記多孔質層を電解質が充填された電解質層16にする工程と、第2の電極層17上に保護層18を形成する工程とを有することを特徴とする。さらに本実施の形態においては、第2の電極層17に接するように劣化防止層21を形成する工程を有している。
なお、本実施の形態では、第2のエレクトロクロミック層15上に第2の電極層17及び劣化防止層21が順次形成されている。一方、後述する第4の実施の形態では、第2の電極層17及び劣化防止層21が逆順に形成されている。
第3の実施形態では第2の電極層17又は劣化防止層21の上方から電解質層16を注入するため、第2の電極層17及び劣化防止層21はイオン透過性であることが好ましい。イオン透過性を有する層の形成方法は第3の電極層14、第2のエレクトロクロミック層と同様の形成方法が採用できる。
また、第2の電極層17に貫通孔が形成されていることが好ましい。これにより、電解質層16を形成する電解液やエレクトロクロミック層を形成するエレクトロクロミック材料を充填する際の注入孔の役割を果たすことができる。
エレクトロクロミック装置を例えば電子調光フィルターとして用いる場合、レンズなどの曲面形状への対応が要求されるが、2枚の支持体を貼り合せるプロセスでは、曲面形状への形成が容易ではない。そのため、本実施の形態によれば、曲面など多様な部位に装置を形成することが可能であり、片側の支持体が不要となり、上記のような効果が得られることになる。
[絶縁性多孔質層]
絶縁性多孔質層は、絶縁性材料からなる多孔質層である。
絶縁性多孔質層の役割としては、電解液を担持し、第2の電極層17と第3の電極層14が短絡しないようにギャップを形成するための層である。
絶縁性材料としては、絶縁性の金属酸化物、金属硫化物等を用いることができ、特に限定されない。
前記多孔質層としては、孔径は2μm以下が好ましく、孔密度は20%以上が好ましい。このような多孔質層は絶縁性微粒子で膜形成することにより容易に作製できる。
なお、絶縁性多孔質層は、電解質が充填されて電解質層16となるため、図示は省略されている。
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態では、第3の実施の形態とは層構成の異なるエレクトロクロミック装置を例示する。なお、第4の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
図4は、第3の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置を例示する断面図である。図4を参照するに、第4の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置40は、劣化防止層21が第2の電極層17の外面に形成されている点が、第3の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置30(図3参照)と相違する。
第4の実施形態では劣化防止層21がイオン透過性の第2の電極層17を通して電解質層16に接触しているため、劣化防止層21を第2の電極層17の外面に形成しても同様に動作させることができる。そのため、上部に積層される材料のプロセス耐性に優れた配置をとることができ、生産性が向上できる。特に、PET基板のようなプラスチックを支持基板として採用する場合は、低温プロセスである塗布形成プロセスが一般的に採用される。その場合は生産性の点で塗布液に対する耐性が必要となるため、有用である。
<第5の実施の形態>
第5の実施の形態では、第4の実施の形態とは層構成の異なるエレクトロクロミック装置を例示する。なお、第5の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
図5は、第5の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置を例示する断面図である。図5を参照するに、第5の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置50は、エレクトロクロミック層と劣化防止層が逆転して形成されている点が、第4の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置40(図4参照)と相違する。
第5の実施の形態では第1のエレクトロクロミック層13及び第2のエレクトロクロミック層15がイオン透過性の第2の電極層17及び第3の電極層14を通して電解質層16に接触しているため、エレクトロクロミック層と劣化防止層の配置を逆転しても同様に動作させることができる。そのため、上部に積層される材料のプロセス耐性に優れた配置をとることができ、生産性が向上できる。特に、PET基板のようなプラスチックを支持基板として採用する場合は、低温プロセスである塗布形成プロセスが一般的に採用される。その場合は生産性の点で塗布液に対する耐性が必要となるため、有用である。
上述したように、本発明において、第1のエレクトロクロミック層13と接し、かつ支持体11側の電極層と、第2のエレクトロクロミック層15と接し、かつ支持体11側の電極層とが導通していることが必要である。本実施形態においては、第1のエレクトロクロミック層13と接し、かつ支持体11側の電極層、すなわち第2の電極層17と、第2のエレクトロクロミック層15と接し、かつ支持体11側の電極層、すなわち第3の電極層14とが導通している。なお、上述したように、2つの電極層を導通させるには、例えば第1のエレクトロクロミック層13に貫通孔を形成し、第2の電極層17と第3の電極層14を接触させることで、両電極層を導通させることができる。
<第6の実施の形態>
第6の実施の形態では、第4の実施の形態とは層構成の異なるエレクトロクロミック装置を例示する。なお、第6の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
図6は、第6の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置を例示する断面図である。図6を参照するに、第6の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置60は、第1の基板(支持体)11が支持体110に置換された点が、第4の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置40(図4参照)と相違する。
本実施の形態における支持体110は、光学レンズ基板である。支持体110は各層を形成する面が曲面となっているため、従来のように電解液を挟んで2枚の支持体を貼り合わせる方法では、各層の形成は極めて困難である。一方、本実施の形態では、既に説明した貼合せプロセスを有しない製造方法により、支持体の層形成面が曲面である場合も、支持体の層形成面が平面である場合と同様に各層を積層形成できる。なお、支持体110は、メガネ等であっても構わない。
このように、第6の実施の形態に係るエレクトロクロミック装置では、第1の実施の形態の効果に加えて、さらに以下の効果を奏する。すなわち、各層を形成する面が曲面である支持体を用いることができるため、支持体として光学レンズやメガネ等の曲面を有する光学素子を選定できる。光学レンズやメガネ等の光学素子を用いることにより、容易に調光可能なエレクトロクロミック装置(電気的に調光可能な光学デバイス)を実現できる。
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて説明する。なお、本発明はここに例示される実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、図2に示すエレクトロクロミック装置20を作製する例を示す。なお、実施例1で作製したエレクトロクロミック装置は、調光ガラス装置として使用できる。
(第1の電極層12、エレクトロクロミック層の形成)
まず、第1の基板(支持体)11として40mm×40mm、厚さ0.7mmのガラス基板を準備し、ガラス基板上に、30mm×30mmの領域及び引き出し部分35にメタルマスクを介してITO膜をスパッタ法により約100nmの厚さに製膜して、第1の電極層12を形成した。第1の電極層12のシート抵抗は約50Ω/□であった。
次に、このITO膜の表面に酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和タイタニウム社製、平均粒子径:約20nm)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、約1.0μmの酸化チタン粒子膜からなるナノ構造半導体材料を形成した。
続いて、エレクトロクロミック化合物として、下記構造式(1)で表される化合物を1.5wt%含む2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液をスピンコート法により塗布した後、120℃×10分間アニール処理を行うことにより、酸化チタン粒子膜に担持(吸着)させて、第1のエレクトロクロミック層13を形成した。第1のエレクトロクロミック層13の表面をSEM観察したところ、1μm程度のピンホールが数点確認された。
(微細な貫通孔が形成された第3の電極層14の形成)
続いて、第1のエレクトロクロミック層13上に平均一次粒径450nmのSiO微粒子分散液(シリカ固形分濃度1重量%、2−プロパノール99重量%)をスピンコートし、微細貫通孔形成用マスク(コロイダルマスク)を形成した。
続いて、この上にスパッタ法により約100nmのITO膜を、第1の電極層12で形成したITO膜と重なる30mm×30mmの領域、及び、第1の電極層12とは異なる領域にメタルマスクを介して形成し、第3の電極層14を作製した。なお、第1の電極層12とは異なる領域に形成したITO膜は第3の電極層14の引き出し部分35である。
この後、2−プロパノール中で超音波照射を3分間行い、コロイダルマスクである450nmのSiO微粒子の除去処理を行った。SEM観察により250nm程度の微細な貫通孔が形成された第3の電極層14が形成されていることを確認した。第3の電極層14のシート抵抗は約200Ω/□であった。また、第1の電極層12と第3の電極層14の電極間抵抗は1kΩ以下であった。
さらに第3の電極層14の上に、第1のエレクトロクロミック層と同じ条件で第2のエレクトロクロミック層15を形成した。
(第2の電極層17、劣化防止層21の形成)
続いて、第2の基板(支持体)19として40mm×40mm、厚さ0.7mmのガラス基板を準備し、ガラス基板上に、20mm×20mmの領域及び引き出し部分35にメタルマスクを介してITO膜をスパッタ法により約100nmの厚さに製膜して、第2の電極層17を形成した。第2の電極層17のシート抵抗は約50Ω/□であった。
この第2の電極層17上に、ATO(アンチモンドープした酸化錫)ナノ粒子の分散液として平均粒子径約20nmの粒子5wt%と、結着剤としてウレタン系ポリマーを1wt%含む2,2,3,3−テトラフロロプロパノール分散液をスピンコート法により塗布した後、120℃×10分間アニール処理を行うことにより、約1.0μmのATO粒子膜及びナノ構造半導体材料からなる劣化防止層21を形成した。
(電解質の充填と貼り合せ)
電解質として過塩素酸リチウム、溶媒としてポリエチレングリコール(分子量:200)及び炭酸プロピレン、紫外線硬化剤としてウレタン接着剤(商品名:3301、ヘンケル社製)を1.4:6:8:10で混合して溶液を電解液として、第1の基板11表面の第2のエレクトロクロミック層15上に滴下し、第2の基板19の劣化防止層21表面と貼り合せ、第2の基板19の外面からUV光を照射して電解質層16を硬化させた。
(保護層18の形成)
さらに、紫外線硬化接着剤(商品名:KAYARAD FM400、日本化薬社製)を側面に塗布し、UV光を照射して保護層18を約3μmの厚さに形成した。これにより、図2に示すエレクトロクロミック装置20を得た。各電極層の形成領域を図7に示す。
(発消色駆動)
作製したエレクトロクロミック装置20の発消色を確認した。具体的には、第1の電極層12の引き出し部分35と第2の電極層17の引き出し部分35との間に、−3Vの電圧を1秒間印加させたところ、第1の電極層12と第2の電極層17の重なった部分に、上記構造式(1)のエレクトロクロミック化合物に由来するマゼンタ色の発色が確認された。このとき、エレクトロクロミック装置20の550nmの透過率が70%から20%に低下した。
さらに、第1の電極層12の引き出し部分35と第2の電極層17の引き出し部分35との間に、+3Vの電圧を1秒間印加させたところ、第1の電極層12と第2の電極層17の重なった部分の色素が消色し、透明になることが確認された。
[実施例2]
(エレクトロクロミック装置の作製)
実施例2では、実施例1において、第1のエレクトロクロミック層13を形成した後、YAGレーザー3倍波(355nm)加工機を用い、第1のエレクトロクロミック層13において、孔径30μmの貫通孔を5mm間隔で形成したこと以外は、実施例1と同様にしてエレクトロクロミック装置20を作製した。第3の電極層14の製膜後の第1の電極層12と第3の電極層14の電極間抵抗は500Ω以下であった。
(発消色駆動)
作製したエレクトロクロミック装置20の発消色を確認した。具体的には、第1の電極層12の引き出し部分35と第2の電極層17の引き出し部分35との間に、−3Vの電圧を1秒間印加させたところ、第1の電極層12と第2の電極層17の重なった部分に、上記構造式(1)のエレクトロクロミック化合物に由来するマゼンタ色の発色が確認された。このとき、エレクトロクロミック装置20の550nmの透過率が70%から15%に低下した。
さらに、第1の電極層12の引き出し部分35と第2の電極層17の引き出し部分35との間に、+3Vの電圧を1秒間印加させたところ、第1の電極層12と第2の電極層17の重なった部分の色素が消色し、透明になることが確認された。
[実施例3]
実施例3では、図4に示すエレクトロクロミック装置40を作製する例を示す。なお、実施例4で作製したエレクトロクロミック装置は、調光ガラス装置として使用できる。
(エレクトロクロミック装置の作製)
まず、第1の基板(支持体)11として40mm×40mm、厚さ0.7mmのガラス基板を準備し、ガラス基板上に、30mm×30mmの領域及び引き出し部分35にメタルマスクを介してITO膜をスパッタ法により約100nmの厚さに製膜して、第1の電極層12を形成した。第1の電極層12のシート抵抗は約50Ω/□であった。
次に、このITO膜の表面に酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和タイタニウム社製、平均粒子径:約20nm)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、約1.0μmの酸化チタン粒子膜からなるナノ構造半導体材料を形成した。
続いて、エレクトロクロミック化合物として、上記構造式(1)で表される化合物を1.5wt%含む2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液をスピンコート法により塗布した後、120℃×10分間アニール処理を行うことにより、酸化チタン粒子膜に担持(吸着)させて、第1のエレクトロクロミック層13を形成した。第1のエレクトロクロミック層13の表面をSEM観察したところ、1μm程度のピンホールが数点確認された。
(微細な貫通孔が形成された第3の電極層14の形成)
続いて、第1のエレクトロクロミック層13上に平均一次粒径450nmのSiO微粒子分散液(シリカ固形分濃度1重量%、2−プロパノール99重量%)をスピンコートし、微細貫通孔形成用マスク(コロイダルマスク)を形成した。
続いて、この上にスパッタ法により約100nmのITO膜を、第1の電極層12で形成したITO膜と重なる30mm×30mmの領域、及び、第1の電極層12とは異なる領域にメタルマスクを介して形成し、第3の電極層14を作製した。なお、第1の電極層12とは異なる領域に形成したITO膜は第3の電極層14の引き出し部分35である。
この後、2−プロパノール中で超音波照射を3分間行い、コロイダルマスクである450nmのSiO微粒子の除去処理を行った。SEM観察により250nm程度の微細な貫通孔が数か所形成された第3の電極層14が形成されていることを確認した。第3の電極層14のシート抵抗は約200Ω/□であった。また、第1の電極層12と第3の電極層の電極間抵抗は1kΩ以下であった。
さらに第3の電極層14の上に、第1のエレクトロクロミック層13と同じ条件で第2のエレクトロクロミック層15を形成した。
(絶縁性多孔質層、微細な貫通孔が形成された第2の電極層17、劣化防止層21の形成)
続いて、第2のエレクトロクロミック層の上に平均一次粒径20nmのSiO微粒子分散液(シリカ固形分濃度24.8重量%、ポリビニルアルコール1.2重量%、水74重量%)をスピンコートし、絶縁性多孔質層を形成した。形成した絶縁性多孔質層の膜厚は約2μmであった。さらに、平均一次粒径450nmのSiO微粒子分散液(シリカ固形分濃度1重量%、2−プロパノール99重量%)をスピンコートし、微細貫通孔形成用マスク(コロイダルマスク)を形成した。
さらに微細貫通孔形成用マスク上にスパッタ法により約100nmのITO膜を、第1の電極層12で形成したITO膜と重なる20mm×20mmの領域、及び、第1の電極層12とは異なる領域にメタルマスクを介して形成し、第2の電極層17を作製した。なお、第1の電極層12とは異なる領域に形成したITO膜は第2の電極層17の引き出し部分35である。
この後、2−プロパノール中で超音波照射を3分間行い、コロイダルマスクである450nmのSiO微粒子の除去処理を行った。SEM観察により250nm程度の微細な貫通孔が数か所形成された第2の電極層17が形成されていることを確認した。第2の電極層17のシート抵抗は約150Ω/□であった。
この第2の電極層17上に、ATO(アンチモンドープした酸化錫)ナノ粒子の分散液として平均粒子径約20nmの粒子5wt%と、結着剤としてウレタン系ポリマーを1wt%含む2,2,3,3−テトラフロロプロパノール分散液をスピンコート法により塗布した後、120℃×10分間アニール処理を行うことにより、約1.0μmのATO粒子膜及びナノ構造半導体材料からなる劣化防止層21を形成した。
(電解質の充填)
電解質として過塩素酸リチウム、溶媒としてポリエチレングリコール(分子量:200)及び炭酸プロピレン、紫外線硬化剤としてウレタン接着剤(商品名:3301、ヘンケル社製)を1.4:6:8:10で混合して溶液を電解液として、微細な貫通孔が形成された第2の電極層17の表面にスピンコートした後、120℃のホットプレート上で1分間乾燥させることで電解質を前記絶縁性多孔質層に充填させた。
(保護層の形成)
さらに、紫外線硬化接着剤(商品名:ノプコ134、サンノプコ社製)をスピンコートし、UV光を照射して保護層18を約3μmの厚さに形成した。同様に前記絶縁性多孔質層を電解質層16にし、電解質層16を形成した。これにより、図4に示すエレクトロクロミック装置40を得た。各電極層の形成領域を図7に示す。
(発消色駆動)
作製したエレクトロクロミック装置40の発消色を確認した。具体的には、第1の電極層12の引き出し部分35と第2の電極層17の引き出し部分35との間に、−4Vの電圧を1秒間印加させたところ、第1の電極層12と第2の電極層17の重なった部分に、上記構造式(1)のエレクトロクロミック化合物に由来するマゼンタ色の発色が確認された。このとき、エレクトロクロミック装置20の550nmの透過率が70%から20%に低下した。
さらに、第1の電極層12の引き出し部分35と第2の電極層17の引き出し部分35との間に、+4Vの電圧を1秒間印加させたところ、第1の電極層12と第2の電極層17の重なった部分の色素が消色し、透明になることが確認された。
[比較例1]
(エレクトロクロミック装置の作製)
実施例3において、第3の電極層14及び第2のエレクトロクロミック層15を形成しなかったこと以外は実施例3と同様にして比較例のエレクトロクロミック装置を作製した。
(発消色駆動)
作製したエレクトロクロミック装置の発消色を確認した。具体的には、第1の電極層12の引き出し部分35と第2の電極層17の引き出し部分35との間に、−4Vの電圧を1秒間印加させたところ、第1の電極層12と第2の電極層17の重なった部分に、上記構造式(1)のエレクトロクロミック化合物に由来するマゼンタ色の発色が確認された。このとき、比較例1で作製したエレクトロクロミック装置の550nmの透過率が73%から35%に低下した。
さらに、第1の電極層12の引き出し部分35と第2の電極層17の引き出し部分35との間に、+4Vの電圧を1秒間印加させたところ、第1の電極層12と第2の電極層17の重なった部分の色素が消色し、透明になることが確認された。発色時のコントラストは本発明の実施例に劣る結果であった。
10、20、30、40、50、60 エレクトロクロミック装置
11 第1の基板
12 第1の電極層
13 第1のエレクトロクロミック層
14 第3の電極層
15 第2のエレクトロクロミック層
16 電解質層
17 第2の電極層
19 第2の基板
21 劣化防止層
22 導通部
31 第1の電極層の形成領域
32 第2の電極層の形成領域
33 第3の電極層の形成領域
34 エレクトロクロミック反応領域
35 引き出し部分
110 支持体
特開2010−033016号公報

Claims (9)

  1. 支持体と、
    前記支持体上に形成された第1の電極層と、
    前記第1の電極層に対向するように形成された第2の電極層と、
    前記第1の電極層又は第2の電極層に接するように形成された第1のエレクトロクロミック層と、
    前記第1のエレクトロクロミック層に接するように形成された第3の電極層と、
    前記第3の電極層に接するように形成された第2のエレクトロクロミック層と、
    前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に形成された電解質層とを備え、
    前記第3の電極層及び前記第2のエレクトロクロミック層がイオン透過性を有し、
    前記第1のエレクトロクロミック層が接する前記第1の電極層又は第2の電極層と、前記第2のエレクトロクロミック層が接する前記第3の電極層とが導通していることを特徴とするエレクトロクロミック装置。
  2. 前記第3の電極層に貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
  3. 前記第1乃至第3の電極層のうち、前記第1のエレクトロクロミック層及び前記第2のエレクトロクロミック層のどちらにも接していない電極層は、当該電極層に接するように劣化防止層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック装置。
  4. 前記第2の電極層に貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
  5. 前記第1のエレクトロクロミック層、第2のエレクトロクロミック層及び劣化防止層のうち、少なくとも一つは、半導体性金属酸化物微粒子を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載のエレクトロクロミック装置。
  6. 前記支持体が、光学素子であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
  7. 第1の基板上に第1の電極層及び第1のエレクトロクロミック層を順次形成する工程と、
    前記第1のエレクトロクロミック層上に、イオン透過性を有する第3の電極層及び第2のエレクトロクロミック層を順次形成する工程と、
    第2の基板上に第2の電極層を形成する工程と、
    前記第2のエレクトロクロミック層上に、少なくとも紫外線硬化剤を有する電解液を滴下し、前記第2のエレクトロクロミック層と前記第2の電極層とが対向するように前記第1の基板と前記第2の基板を貼り合せる工程と、
    紫外線を照射し、電解質層を形成する工程とを有することを特徴とするエレクトロクロミック装置の製造方法。
  8. 支持体上に第1の電極層及び第1のエレクトロクロミック層を順次形成する工程と、
    前記第1のエレクトロクロミック層上に、イオン透過性を有する第3の電極層及び第2のエレクトロクロミック層を順次形成する工程と、
    前記第2のエレクトロクロミック層上に絶縁性材料からなる多孔質層を形成する工程と、
    前記多孔質層上に第2の電極層を形成する工程と、
    前記第2の電極層の上方から、少なくとも紫外線硬化剤を有する電解液を滴下する工程と、
    紫外線を照射し、前記多孔質層を電解質層にする工程と、
    前記第2の電極層上に保護層を形成する工程とを有することを特徴とするエレクトロクロミック装置の製造方法。
  9. 前記第2の電極層に接するように劣化防止層を形成する工程を有することを特徴とする請求項7又は8に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
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