JP2018005210A - エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法、並びに表示装置、情報機器及びエレクトロクロミック調光レンズ - Google Patents

エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法、並びに表示装置、情報機器及びエレクトロクロミック調光レンズ Download PDF

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高橋 裕幸
Hiroyuki Takahashi
裕幸 高橋
史育 金子
Fuminari Kaneko
史育 金子
満美子 井上
Mamiko Inoue
満美子 井上
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Abstract

【課題】本発明は、より低電圧で駆動でき、繰り返し駆動しても劣化着色を生じない良好な表示品質を有するエレクトロクロミック表示素子を提供することを目的とする。【解決手段】二つの電極3及び4と、この電極間に配置されたエレクトロクロミック層6と、前記二つの電極間に存在する電解質層5とを有するエレクトロクロミック表示素子であって、前記エレクトロクロミック層として、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体であるエレクトロクロミック層を有するエレクトロクロミック表示素子。【選択図】図1

Description

本発明は、エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法、並びに表示装置、情報機器及びエレクトロクロミック調光レンズに関する。
近年、紙に代わる情報媒体として、いわゆる電子ペーパーの開発が盛んに行われている。電子ペーパーに用いられる表示素子としては、反射型液晶を用いた表示素子、電気泳動を用いた表示素子、トナー泳動を用いた表示素子、エレクトロクロミック化合物を用いた表示素子(エレクトロクロミック表示素子)などが挙げられる。
前記エレクトロクロミック表示素子は、メモリ効果があること、低電圧で駆動できること、等の理由から、次世代の表示素子の有力候補であり、現在、材料開発からデバイス設計に至るまで、エレクトロクロミック表示素子に対する幅広い研究開発が行われている。
エレクトロクロミズム(electrochromism)現象とは、前記エレクトロクロミック化合物に電圧を印加することにより、前記エレクトロクロミック化合物が酸化還元反応を生じ、発色あるいは消色する可逆的な現象である。前記エレクトロクロミック表示素子は、前記エレクトロクロミック化合物の構造を変化させ、前記エレクトロクロミズム現象を利用することで、様々な種類の色を発色できる。
このため、前記エレクトロクロミック表示素子は、多色表示が可能な表示素子としても期待されており、種々の提案がなされている(例えば、特許文献1〜4参照)。
一方、エレクトロクロミック表示素子は、上述した電子ペーパーの他に調光レンズ、調光窓、防眩ミラー等の調光素子への応用も検討されている。例えば、一枚のレンズ上に薄膜調光機能を積層形成した、薄型軽量化が可能で、低コストで生産性に優れたエレクトロクロミック調光レンズが提案されている(特許文献5参照)。
上述の調光レンズ等の透過型の調光素子においては、素子としての高い透明性が、高い表示品質を得るために不可欠で重要な要素となる。また、電子ペーパー等の反射型の表示素子においても、反射層を除く構成要素が高い透明性を有することが、素子として高い表示品質を得る上で重要となる。
そしてこのエレクトロクロミック表示素子の透明性を損なうひとつの要素として、発色/消色の繰り返し駆動による劣化着色が挙げられる。
エレクトロクロミック表示素子は、発色/消色の多数回の繰り返し駆動により、素子を構成する一種あるいは複数種の要素が劣化した場合にその結果として、黄褐色の色相をもつ着色を生じることがあり、消色状態の本来の透明性が失われて、素子としての表示品質が損なわれてしまうことになる。そしてその劣化の程度は駆動による素子への負荷の大きさに依存し、印加電圧が高いほど劣化しやすいということが分かった。
本発明は、より低電圧で駆動でき、繰り返し駆動しても劣化着色を生じない良好な表示品質を有するエレクトロクロミック表示素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、繰り返し駆動しても劣化着色を生じない良好な表示品質を有するエレクトロクロミック表示素子を得るためには、より低電圧で駆動できることが必要となり、そのためには、電荷担体であるイオンが素子の各構成要素中を、特に酸化反応により発色する層中を移動しやすく、さらに酸化反応により発色する層とイオンとの接触面積が大きいことが必要となると考え、本発明に至った。
前記課題を解決するための手段としての本発明のエレクトロクロミック表示素子は、二つの電極と、この電極間に配置されたエレクトロクロミック層と、前記二つの電極間に存在する電解質層とを有するエレクトロクロミック表示素子であって、前記エレクトロクロミック層として、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体であるエレクトロクロミック層を有するエレクトロクロミック表示素子である。
本発明によると、低電圧で駆動でき、繰り返し駆動しても劣化着色を生じない良好な表示品質を有するエレクトロクロミック表示素子を提供することができる。
図1は、本発明のエレクトロクロミック表示素子の構造の一例を示す模式図である。 図2は、本発明のエレクトロクロミック表示素子の構造の一例を示す模式図である。 図3は、本発明の情報機器の一例を示す概略図である。 図4は、本発明のエレクトロクロミック調光レンズの一例を示す模式図である。 図5は、本発明のエレクトロクロミック調光レンズを用いた眼鏡の一例を示す概略図である。
(エレクトロクロミック表示素子)
本発明のエレクトロクロミック表示素子は、
二つの電極と、この電極間に配置されたエレクトロクロミック層と、前記二つの電極間に存在する電解質層とを有するエレクトロクロミック表示素子であって、
前記エレクトロクロミック層として、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体であるエレクトロクロミック層を有する。
本発明のエレクトロクロミック表示素子の実施形態としては、以下の第1の実施形態、及び第2の実施形態が挙げられる。
本発明のエレクトロクロミック表示素子は、第1の実施形態では、
表示基板と、
前記表示基板上に設けられた表示電極と、
前記表示電極に接するように設けられたエレクトロクロミック層と、
前記表示基板に対向して設けられた対向基板と、
前記対向基板の表示基板と対向する側に設けられた対向電極と、
前記対向電極に接するように設けられた劣化防止層と、
前記表示電極と前記対向電極との間に設けられた電解質層と、
を有し、
前記エレクトロクロミック層が、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体である。
前記エレクトロクロミック層と前記劣化防止層との間に白色反射層を有していても良く、更に必要に応じてその他の部材を有していてもよい。
本発明のエレクトロクロミック表示素子は、第2の実施形態では、
表示基板と、
前記表示基板上に設けられた表示電極と、
前記表示電極に接するように設けられた第1のエレクトロクロミック層と、
前記表示基板に対向して設けられた対向基板と、
前記対向基板の表示基板と対向する側に設けられた対向電極と、
前記対向電極に接するように設けられた第2のエレクトロクロミック層と、
前記表示電極と前記対向電極との間に設けられた電解質層と、
を有し、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
前記第1のエレクトロクロミック層が、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体であり、
前記第2のエレクトロクロミック層が、還元反応により発色するエレクトロクロミック化合物を含む。
従来技術におけるエレクトロクロミック表示素子は発消色の多数回の繰り返し駆動により、エレクトロクロミック表示素子を構成する一種又は複数種の要素が劣化した場合にその結果として、黄褐色の色相をもつ着色を生じることがあり、消色状態の本来の透明性が失われて、エレクトロクロミック表示素子としての表示品質が損なわれてしまうことになる。本発明者らは、その劣化の程度は駆動によるエレクトロクロミック表示素子への負荷の大きさに依存し、印加電圧が高いほど、劣化しやすいという知見を得て、この知見に基づいて、本発明のエレクトロクロミック表示素子を見出した。
前記エレクトロクロミック層を、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体とすることにより、電荷担体であるイオンが移動しやすくなることに加え、さらに酸化反応により発色する層とイオンとの接触面積が増える。エレクトロクロミック層がイオンが移動しやすい構造である場合は発消色しやすくなる。イオンが移動しやすいエレクトロクロミック層としては、エレクトロクロミック化合物以外の物質による多孔質構造の全表面にエレクトロクロミック化合物を付着させたものがあるが、エレクトロクロミック化合物自体で多孔質構造を形成することにより構造がシンプルで特性的にも優れる。
前記第1及び第2の実施形態に係るエレクトロクロミック表示素子によれば、繰り返し駆動しても劣化着色を生じない良好な表示品質を有するエレクトロクロミック表示素子を提供することができる。
前記第1及び第2の実施形態に係るエレクトロクロミック表示素子は、透過型表示素子及び反射型表示素子とすることができ、透過型表示素子においては透明性に優れた表示特性が得られ、反射型表示素子においては明るくクリアな表示特性が得られる。
[第1の実施形態のエレクトロクロミック表示素子]
第1の実施形態のエレクトロクロミック表示素子について図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態のエレクトロクロミック表示素子20の一例を示す概略図である。
図1に示すように、前記エレクトロクロミック表示素子20は、表示基板1及び表示電極3と、これらに対して間隔をおいて対向して設けられた対向基板2及び対向電極4と、両電極(表示電極と対向電極)間に電解質層5とを備えている。
前記表示電極3の表面には、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造のエレクトロクロミック層を有している。前記酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物としては、高い駆動耐久性、光耐久性を有する点から、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物が好ましい。
前記表示電極3の表面には、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物を含むエレクトロクロミック組成物を重合した重合物である多孔質構造のエレクトロクロミック層6が形成されることが好ましい。
前記エレクトロクロミック表示素子20では前記エレクトロクロミック層6は表示電極3表面で酸化還元反応により発消色する。対向電極4上には劣化防止層7が形成されている。
エレクトロクロミック表示素子を反射型表示素子とする場合には、白色反射層を設ける。
図1に示したエレクトロクロミック表示素子20においては劣化防止層7に接して白色反射層8を設けている。この白色反射層8はエレクトロクロミック層6に接して形成されていてもよい。
また、エレクトロクロミック表示素子を透過型表示素子とする場合には白色反射層8を設けなければよい。
本発明においては白色反射層を有する場合を反射型表示素子と称し、白色反射層を形成しない場合を透過型表示素子と称する場合がある。
なお、図1では白色反射層8が図示されているが、白色反射層8を有していなくても本発明に含まれるものである。
<表示基板>
表示基板1は、表示電極3、及びエレクトロクロミック層6を支持するための基板である。
表示基板1の材料としては、透光性を有する材料であることが好ましく、例えば、ガラス、プラスチックフィルムなどが挙げられる。
<表示電極>
表示電極3は、該電極と対向電極4との間に生じる電圧により、エレクトロクロミック層6を発色又は消色させる。エレクトロクロミック層6での発色は、表示電極3と対向電極4との間に生じるこれらの電圧の大きさによって定まるため、該電圧により、各エレクトロクロミック層の色の諧調は変化する。
表示電極3の材料としては、透光性を有する導電性材料であることが好ましい。例えば、スズがドープされた酸化インジウム(以下、ITO)、フッ素がドープされた酸化スズ(以下、FTO)、アンチモンがドープされた酸化スズ(以下、ATO)等の無機材料などが挙げられる。これらの中でも、InSnO、GaZnO、SnO、In23、ZnOが特に好ましい。
<対向基板>
対向基板2は、対向電極、及び劣化防止層7を支持するための基板である。
対向基板2の材料としては、透光性を有する材料であることが好ましく、例えば、ガラス、プラスチックフィルムなどが挙げられる。
<対向電極>
対向電極4は、表示電極3との間に生じる電圧に基づいて、エレクトロクロミック層6を発色あるいは消色させる。
対向電極4の材料としては、導電性を有する材料であれば特に制限はなく、透過型表示素子を構成する場合には、透光性を有する導電性材料として、例えば、ITO、FTO、酸化亜鉛などが挙げられる。また、反射型素子を構成する場合には、導電性金属材料として、例えば、亜鉛、白金、カーボンなどが挙げられる。
<エレクトロクロミック層>
エレクトロクロミック層6は、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体である。前記エレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体とは、エレクトロクロミック化合物により多孔質構造体が形成されていることをいい、多孔質構造体中には、その他の成分を含む場合も含む。
前記エレクトロクロミック層6は、より高い駆動耐久性、及び光耐久性の点から、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物を含むエレクトロクロミック組成物を重合した重合物を含有することが好ましい。前記エレクトロクロミック組成物は、前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物以外の他のラジカル重合性化合物及びフィラーを含有することが好ましく、重合開始剤を含有することがより好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
−トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物−
前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物は、表示電極3の表面において酸化還元反応を有するエレクトロクロミック機能を付与するために重要である。
前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物としては、下記一般式1で表される化合物が挙げられる。
[一般式1]
An−Bm
ただし、nは1又は2であり、n=2のときにはmは0であり、n=1のときmは0又は1である。A及びBの少なくとも1つはラジカル重合性官能基を有する。前記Aは下記一般式2で示される構造であり、R1からR15のいずれかの位置で前記Bと結合している。前記Bは下記一般式3で示される構造であり、R16からR21のいずれかの位置で前記Aと結合している。
Figure 2018005210
Figure 2018005210
ただし、前記一般式2及び3中、R1からR21は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記一価の有機基のうち少なくとも1つはラジカル重合性官能基である。
−一価の有機基−
前記一般式2及び前記一般式3における前記一価の有機基としては、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、アミド基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノカルボニル基、スルホン酸基、置換基を有していてもよいアルコキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、スルホンアミド基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノスルホニル基、アミノ基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよい複素環基などが挙げられる。
これらの中でも、安定動作及び光耐久性の点から、アルキル基、アルコキシ基、水素原子、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基が特に好ましい。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基などが挙げられる。
前記複素環基としては、例えば、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾールなどが挙げられる。
前記置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
−ラジカル重合性官能基−
前記ラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であればいずれでもよい。
前記ラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(i)で表される官能基が挙げられる。
Figure 2018005210
ただし、前記一般式(i)中、X1は、置換基を有してもよいアリーレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R100)−基〔R100は、水素、アルキル基、アラルキル基、アリール基を表す。〕、又は−S−基を表す。
前記一般式(i)のアリーレン基としては、例えば、置換基を有してもよいフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
前記アルケニレン基としては、例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記一般式(i)で表されるラジカル重合性官能基の具体例としては、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基などが挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(ii)で表される官能基が挙げられる。
Figure 2018005210
ただし、前記一般式(ii)中、Yは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR101基〔R101は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又はCONR102103(R102及びR103は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい。)〕を表す。また、X2は、前記一般式(i)のX1と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y及びX2の少なくともいずれか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、芳香族環である。
前記一般式(ii)のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などが挙げられる。
前記一般式(ii)で表されるラジカル重合性官能基の具体例としては、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基などが挙げられる。
なお、これらX1、X2、Yについての置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
前記ラジカル重合性官能基の中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物としては、以下の一般式(1−1)から(1−3)で表される化合物が好適に挙げられる。
Figure 2018005210
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Figure 2018005210
前記一般式(1−1)から(1−3)中、R27からR89は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記一価の有機基のうち少なくとも1つはラジカル重合性官能基である。
前記一価の有機基及び前記ラジカル重合性官能基としては、前記一般式(1)と同じものが挙げられる。
前記一般式(1)、及び前記一般式(1−1)から(1−3)で表される例示化合物としては、以下に示すものが挙げられる。前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2018005210
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−他のラジカル重合性化合物−
前記他のラジカル重合性化合物は、前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物とは異なり、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有する化合物である。
前記他のラジカル重合性化合物としては、例えば、1官能のラジカル重合性化合物、2官能のラジカル重合性化合物、3官能以上のラジカル重合性化合物、機能性モノマー、ラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらの中でも、2官能以上のラジカル重合性化合物が特に好ましい。
前記他のラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性官能基としては、前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性官能基と同様であり、これらの中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
前記1官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記2官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記において、EO変性はエチレンオキシ変性を指し、PO変性はプロピレンオキシ変性を指す。
前記機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報に記載のシロキサン繰り返し単位が20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物及び前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物の少なくともいずれか一方がラジカル重合性官能基を2つ以上有していることが、架橋物を形成する点から好ましい。
前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は、エレクトロクロミック化合物の全量に対して、10質量%以上100質量%以下が好ましく、30質量%以上90質量%以下がより好ましい。
前記含有量が、10質量%以上であると、エレクトロクロミック層のエレクトロクロミック機能が充分に発現でき、加電圧による繰り返しの使用で耐久性が良好であり、発色感度が良好である。
前記含有量が、100質量%でもエレクトロクロミック機能が可能であり、この場合、最も厚みに対する発色感度が高い。それに相反して電荷の授受に必要であるイオン液体との相溶性が低くなる場合があるため、加電圧による繰り返しの使用で耐久性の低下などによる電気特性の劣化が現れる虞がある。使用されるプロセスによって要求される電気特性が異なるため一概には言えないが、発色感度と繰り返し耐久性の両特性のバランスを考慮すると30質量%以上90質量%以下がより好ましい。
−重合開始剤−
前記エレクトロクロミック組成物は、前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物と、前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物との架橋反応を効率よく進行させるため、必要に応じて重合開始剤を含有することが好ましい。
前記重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられるが、重合効率の観点から光重合開始剤が好ましい。
前記熱重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤などが挙げられる。
その他の光重合開始剤としては、例えば、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、光重合促進効果を有するものを単独又は前記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記重合開始剤の含有量は、前記ラジカル重合性化合物の全量100質量部に対して、0.5質量部以上40質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましい。
−フィラー−
前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機フィラー、無機フィラーなどが挙げられる。
前記無機フィラーとしては、例えば、銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末;酸化ケイ素(シリカ)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性、安定性、及び表面処理の容易性などの点から、金属酸化物が好ましく、シリカ、アルミナ、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)が特に好ましい。
前記有機フィラーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリオレフィン、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂、脂肪酸等の低分子化合物、フタロシアニン等の顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性及び不溶性の点から、樹脂が好ましい。
前記フィラーの平均一次粒径は、1μm以下が好ましく、10nm以上1μm以下がより好ましい。前記フィラーの平均一次粒径が、1μm以下であると、粗大粒子が存在せず、得られる膜の表面状態が良好であり、表面平滑性に優れている。
前記フィラーの含有量は、前記ラジカル重合性化合物の全量100質量部に対して、0.3質量部以上1.5質量部以下が好ましく、0.6質量部以上0.9質量部以下がより好ましい。
前記含有量が、0.3質量部以上であると、フィラー添加効果が充分に得られ、製膜性が良好であり、1.5質量部以下であると、トリアリールアミン化合物の割合が適切であり作製したエレクトロクロミック表示素子の良好な電気化学特性が得られる。
前記エレクトロクロミック層の平均厚みは、0.1μm以上30μm以下が好ましく、0.4μm以上10μm以下がより好ましい。
前記多孔質構造のエレクトロクロミック層の形成方法としては、抽出法(エレクトロクロミック層の構成材料に他物質からなる粒子を混合、分散させてエレクトロクロミック層を形成した後で、エレクトロクロミック層の構成材料は溶解せず、前記粒子のみ溶解する溶剤を用いて前記粒子を溶解除去して多孔質構造を得る)を用いることができる。そのほか、エレクトロクロミック層を形成した後で加熱、脱気するなどして発泡させる発泡法、エレクトロクロミック層を形成した後で、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の形成方法を用いてもよいが、抽出法が好ましい。
抽出法においては、エレクトロクロミック層の構成材料に加える、他物質からなる粒子の粒径を選択することで所望の細孔径(空隙サイズ)の多孔質構造を得ることができる。非常に微小な、たとえばサブミクロンの粒径の粒子を用いることにより、そのサイズに対応したサブミクロンの細孔径の多孔質構造を得ることができる。前記他物質からなる粒子の粒径は、前記エレクトロクロミック層の厚みより小さいことが必要である。エレクトロクロミック層の平均厚みは上述したように0.1μm以上30μm以下が好ましく、0.4μm以上10μm以下がより好ましい。したがって多孔質構造の細孔径は、前述したように前記他物質からなる粒子の粒径に依存して決まるために、概ね30μm以下となるが、酸化反応により発色する層とイオンとの接触面積を十分に確保するためには前記多孔質構造の細孔径の平均値は5μm以下が好ましい。
前記細孔径を求める方法としては、前記多孔質構造のエレクトロクロミック層の断面をSEM観察して画像処理等によって細孔径(空隙サイズ)を測定する方法や、前記多孔質構造のエレクトロクロミック層への窒素ガスなどの吸着挙動を解析する方法などが挙げられるが、後者は試料の前処理や解析などに対する制約が多く、前者のほうが好ましい。
本発明では、SEM観察画像から得られる細孔の投影面積に等しい円の直径(円相当径)を細孔径とし、個数平均を求め細孔径の平均値とした。
前記エレクトロクロミック層の構成材料に加える、他物質からなる粒子としては、水溶性の材料からなる粒子を用いることができる。特に水溶性ポリマー粒子を用いることが好ましく、水溶性ポリマーの材料としては、ポリビニルアルコール系、ポリエステル系、ポリアクリル酸系、ポリエチレンオキシド系などを好適に用いることができる。
前記他物質からなる粒子の添加量(割合)は、所望する多孔質構造の空隙率に応じて設定すればよい。
形成された多孔質構造のエレクトロクロミック層の空隙率は以下のように求めることができる。
(空隙率)={1−(エレクトロクロミック層の実質量)/
[(エレクトロクロミック層の膜厚×面積)×(構成材料の比重)]}×100
前記多孔質構造の空隙率は10%から80%が好ましい。空隙率が10%以上であると電荷担体であるイオンの透過性が良好となり、また80%以下であると前記多孔質構造のエレクトロクロミック層の機械的強度が確保でき、表示素子として成立できる。
エレクトロクロミック層中に混合・分散させた水溶性ポリマー粒子を溶解除去するために用いる溶剤としては、水または水系の溶剤を用いることができ、これら溶剤を前記エレクトロクロミック層に、必要に応じて加熱しながら所定時間接触させることによって、前記エレクトロクロミック層中に分散された水溶性ポリマー粒子を溶解除去することができる。前記溶剤を前記エレクトロクロミック層に接触させる方法は浸漬法が好ましいが、これに限定されるものではなく、掛け流す方法を用いてもよい。
前記多孔質構造のエレクトロクロミック層の空隙率と細孔径にはそれぞれ好ましい範囲があることを前述した(空隙率:10%から80%、細孔径の平均値:5μm以下)が、両者が特定の範囲にある場合には、電荷担体であるイオンの透過性が良好になる効果と、酸化反応により発色する層とイオンとの接触の機会が十分に確保される効果が相乗的に作用して、表示素子の駆動電圧が効果的に低下して、繰り返し駆動等による負荷が低減して劣化が非常に少なくなる現象を見出した。前記両者の特定の範囲とは、多孔質構造のエレクトロクロミック層の空隙率が60%〜80%であり、かつ細孔径の平均値が0.5μm以下である。
<劣化防止層>
前記劣化防止層は、対向電極に接するように設けられている。
前記劣化防止層の役割は、エレクトロクロミック層と逆の化学反応をし、電荷のバランスをとって表示電極や対向電極が不可逆的な酸化還元反応により腐食や劣化することを抑制することである。なお、逆反応とは、劣化防止層が酸化還元する場合に加え、キャパシタとして作用することも含む。
前記劣化防止層の材料としては、表示電極及び対向電極の不可逆的な酸化還元反応による腐食を防止する役割を担う材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化アンチモン錫や酸化ニッケル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、又はそれらを複数含む導電性又は半導体性金属酸化物を用いることができる。
劣化防止層の平均厚みは、0.1μm以上30μm以下が好ましく、0.4μm以上10μm以下がより好ましい。
<電解質層>
電解質層5は、対向電極と、周りが壁部材で囲まれた表示電極との間に生じるスペースを充填する。電解質層5は、エレクトロクロミック層が電解質層中に含まれるように、該スペースを充填する。電解質層5は、表示電極と対向電極との間で電荷を移動させ、エレクトロクロミック層の発色又は消色を促す。
電解質材料としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩を用いることができる。具体的には、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3COO、KCl、NaClO3、NaClO4、NaCl、NaBF4、NaSCN、KBF4、KClO4、Mg(ClO4)2、Mg(BF4)2、N(C49)4ClO4などが挙げられる。
また、イオン液体も用いることができる。イオン液体としては、一般的に研究・報告されている物質ならばどのようなものでも構わない。特に有機のイオン液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造がある。
分子構造の例としては、カチオン成分としてN,N−ジメチルイミダゾール塩、N,N−メチルエチルイミダゾール塩、N,N−メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体、N,N−ジメチルピリジニウム塩、N,N−メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体など芳香族系の塩、又は、トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウムなど脂肪族4級アンモニウム系が挙げられる。
アニオン成分としては、大気中の安定性の面でフッ素を含んだ化合物がよく、BF4 、CF3SO3 、PF4 、(CF3SO2)2などが、また、ClO4 、B(CN)4 等が挙げられる。これらのカチオン成分とアニオン成分の組み合わせにより処方したイオン液体を用いることができる。
また、溶媒の例としては、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1、2−ジメトキシエタン、1、2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類やそれらの混合溶媒等を用いることができる。
前記電解質は低粘性の液体である必要はなく、ゲル状や高分子架橋型、液晶分散型などの様々な形態をとることが可能である。前記電解質はゲル状、固体状に形成することで、素子強度向上、信頼性向上などの利点が得られる。
固体化手法としては、電解質と溶媒をポリマー中に保持することが好ましい。これにより、高いイオン伝導度と固体強度が得られるためである。
更に、前記ポリマーとしては光硬化可能な樹脂が好ましい。熱重合や溶剤を蒸発させることにより薄膜化する方法に比べて、低温かつ短時間で素子を製造できるためである。
前記電解質層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm以上10μm以下が好ましい。
<白色反射層>
前記白色反射層は、エレクトロクロミック表示素子において、白色の反射率を向上させるためのものである。
前記白色反射層の材料としては、例えば、酸化チタン粒子が好適に用いられ、さらにバインダーとして水性ポリウレタン樹脂が好適に用いられる。前記酸化チタン粒子の体積平均粒径は、200nm以上3μm以下が好ましく、250nm以上2μm以下がより好ましい。
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護層、封止層、ハードコート層、反射防止層などが挙げられる。
[第2の実施形態のエレクトロクロミック表示素子]
図2は、第2の実施形態のエレクトロクロミック表示素子21の構造の一例を示す。
図2に示すように、前記エレクトロクロミック表示素子は、表示基板1及び表示電極3と、これらに対して間隔をおいて対向して設けられた対向基板2及び対向電極4と、両電極(表示電極3と対向電極4)間に電解質層5とを備えている。
前記表示電極3の表面には、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体である第1のエレクトロクロミック層を有している。前記表示電極3の表面には、本発明の前記トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物を含むエレクトロクロミック組成物を重合した重合物を含む多孔質構造体の第1のエレクトロクロミック層6を有していることが好ましい。
前記エレクトロクロミック表示素子21では前記第1のエレクトロクロミック層6は表示電極3表面で酸化反応により発色する。対向電極4上には還元反応により発色するエレクトロクロミック化合物を含む第2のエレクトロクロミック層9が形成されている。前記第2のエレクトロクロミック層9は対向電極4表面で還元反応により発色する。
第2の実施形態のエレクトロクロミック表示素子における表示基板、表示電極、対向基板、対向電極、電解質層、第1のエレクトロクロミック層の各構成要素は、第1の実施形態のエレクトロクロミック表示素子の表示基板、表示電極、対向基板、対向電極、電解質層、エレクトロクロミック層とほとんど同様であるので、異なる構成要素のみ説明する。
<第2のエレクトロクロミック層>
第2のエレクトロクロミック層9は、担持粒子膜が還元反応により発色するエレクトロクロミック化合物を担持していることが好ましい。担持粒子膜がエレクトロクロミック化合物の単分子を吸着させることで、大きな表面積を利用して、効率良くエレクトロクロミック化合物に電子を注入することができる。従って、エレクトロクロミック化合物の発色時の色濃度を高くし、発色及び消色の切り替え速度を高速にすることができる。
前記担持粒子膜を構成する担持粒子としては導電性微粒子又は半導体性微粒子が好適に用いられる。前記導電性微粒子及び半導体性微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属酸化物が好ましい。
前記金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケート等を主成分とする金属酸化物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、発色及び消色に関して速い応答速度が要求される場合には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム、及び酸化タングステンのいずれか、又はこれらの混合物を用いるのが好ましく、酸化チタンを用いると、応答速度に優れた表示が可能である。
前記導電性微粒子及び半導体性微粒子の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、単位体積当たりの表面積(比表面積)が大きい形状であることが好ましい。例えば、前記導電性微粒子及び半導体性微粒子がナノ粒子の集合体であるときは、大きな比表面積を有するため、より効率的にエレクトロクロミック化合物を担持することができる。
エレクトロクロミック化合物は、表示電極3と対向電極4との間に生じる電圧により、酸化還元反応を生じ、発色あるいは消色する(可逆反応)。
前記担持粒子の平均一次粒子径は、5nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上50nm以下がより好ましい。前記平均一次粒子径を5nm以上100nm以下とすることにより、第2のエレクトロクロミック層を透明な層とすることができる。これにより発色時には鮮やかな色が得られ、消色時には無色透明の状態が得られる。
前記還元反応により発色するエレクトロクロミック化合物としては、無機エレクトロクロミック化合物、及び有機エレクトロクロミック化合物のいずれを用いても構わない。
前記還元反応により発色するエレクトロクロミック化合物としては、例えば、色素系及びポリマー系のエレクトロクロミック化合物として、アゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、ジピリジン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、トリフェニルアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェニレンジアミン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、フタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、メタロセン系等の低分子系有機エレクトロクロミック化合物;ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、必要な駆動電圧を低めに抑えることができる点から、ビオロゲン系化合物、ジピリジン系化合物が好ましい。
前記第2のエレクトロクロミック層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500nm以上3μm以下が好ましい。
(エレクトロクロミック表示素子の製造方法)
本発明のエレクトロクロミック表示素子の製造方法は、第1の形態では、表示基板上に表示電極を形成する工程と、前記表示電極上に酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなるエレクトロクロミック層を形成する工程と、対向基板の表示基板と対向する側に対向電極を形成する工程と、前記対向電極上に劣化防止層を形成する工程と、前記表示電極と前記対向電極とを電解質層を介して貼合せる工程とを含み、前記エレクトロクロミック層を形成する工程が、水溶性ポリマー粒子を含有するエレクトロクロミック組成物を表示電極上に塗布し、重合させた後に前記水溶性ポリマー粒子を除去することにより多孔質構造体を形成する工程を含む。更に必要に応じてその他の工程を含むことができる。
本発明のエレクトロクロミック表示素子の製造方法は、第2の形態では、表示基板上に表示電極を形成する工程と、前記表示電極上に酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる第1のエレクトロクロミック層を形成する工程と、対向基板の表示基板と対向する側に対向電極を形成する工程と、前記対向電極上に還元反応により発色するエレクトロクロミック化合物を含む第2のエレクトロクロミック層を形成する工程と、前記表示電極と前記対向電極とを電解質層を介して貼合せる工程とを含み、前記第1のエレクトロクロミック層を形成する工程が、水溶性ポリマー粒子を含有するエレクトロクロミック組成物を表示電極上に塗布し、重合させた後に前記水溶性ポリマー粒子を除去することにより多孔質構造体を形成する工程を含む。更に必要に応じてその他の工程を含むことができる。
<表示電極形成工程>
前記表示基板(例えば、縦40mm×横40mmのガラス基板)上に、スパッタ法を用いて、例えば、膜厚が50〜300nm、表面抵抗が3〜200Ω/□のITO膜を成膜し、表示電極3を形成することができる。
成膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法等のその他の真空成膜法を適用することができる。
<(第1の)エレクトロクロミック層形成工程>
前記エレクトロクロミック層及び第1のエレクトロクロミック層を形成する工程は、水溶性ポリマー粒子を含有するエレクトロクロミック組成物を表示電極上に塗布し、重合させた後に前記水溶性ポリマー粒子を除去することにより多孔質構造体を形成する工程を含む。
例えば、前記表示電極上に、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物を含むエレクトロクロミック組成物に水溶性ポリマー粒子を所定量分散させてスピンコート法、スプレーコート法、ビードコート法、ブレードコート法や適当な印刷法などで塗布する。そして、塗布したエレクトロクロミック組成物に対し外部エネルギーを付与して架橋する。
前記外部エネルギーとしては、例えば、熱、光、放射線などが挙げられる。前記熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素等の気体、蒸気、又は各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行われる。前記加熱温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上170℃以下が好ましい。
前記光のエネルギーとしては、主に紫外光(UV)に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。UVの照射光量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mW/cm2以上15,000mW/cm2以下が好ましい。
前記架橋したエレクトロクロミック組成物は、必要に応じて加熱した状態の水または水系の溶剤に浸漬させて、内部に分散させた水溶性ポリマー粒子を溶解除去する。
<白色反射層形成工程>
反射型表示素子を作製する場合は、前記エレクトロクロミック層と劣化防止層との間に白色反射層を形成する。
例えば、酸化チタン粒子及び水性ポリウレタン樹脂の2,2,3,3−テトラフロロプロパノール(TFP)分散液を、エレクトロクロミック層上に、スピンコート法により塗布する。その後、120℃で10分間のアニール処理を行う。これにより、白色反射層を形成することができる。
<対向電極形成工程>
対向基板(例えば、縦40mm×横40mmのガラス基板)上に、スパッタ法を用いて、例えば、膜厚が50〜300nm、表面抵抗が3〜200Ω/□のITO膜を成膜し、対向電極を形成することができる。
成膜法としては、スパッタ法に限定されず、イオンプレーティング法等、その他の真空成膜法を適用することができる。
次に、対向電極上に劣化防止層又は第2のエレクトロクロミック層を形成する。
<劣化防止層形成工程>
対向電極上に、例えば、酸化アンチモン錫(ATO)の分散液をスピンコートして、120℃で10分間のアニール処理を行い、ATO膜を形成することができる。
<第2のエレクトロクロミック層形成工程>
まず、担持粒子、例えば、酸化チタンの分散液を、対向電極上に、スピンコート法により塗布する。その後、対向電極と担持粒子、及び担持粒子同士が部分的に接合するように、120℃で15分間のアニール処理を行う。これにより担持粒子膜を形成する。
その後、担持粒子膜上に、エレクトロクロミック化合物、例えば4,4’−(isooxazole−3,5−diyl)bis(1−(2−phosphonoethyl)pyridinium)bromideを1質量%含む2,2,3,3−テトラフロロプロパノール(TFP)溶液をスピンコート法により塗布し、120℃で10分間のアニール処理を行う。これより、酸化チタン粒子膜とエレクトロクロミック化合物からなる第2エレクトロクロミック層を形成することができる。
<貼合せ工程>
貼合せ工程をアルゴンガス置換されたグローブボックス内で行うことが好ましい。
劣化防止層又は第2エレクトロクロミック層までを形成した対向基板と、(第1)エレクトロクロミック層までを形成した表示基板、あるいは白色反射層までを形成した表示基板とを、対向電極と表示電極とが対面するように電解質層を挟んで貼り合せる。
具体的には、表示基板側あるいは対向基板側の一方に、例えば、体積平均粒径30μmの真球状樹脂ビーズを予め散布してから両基板を貼り合わせ、外周を部分的に接着した後、貼り合わせた対向基板側と表示基板側の隙間に電解質層の前駆体材料を注入する。その後、高圧水銀ランプにより、紫外光を、表示電極側から、2分間照射する。紫外光照射により、該前駆体材料を光重合相分離させることができるため、両基板の間に電解質層を形成することができる。なお、紫外光は、中心波長が365nm、強度が50mW/cm2のものを用いることができる。
前記電解質層の前駆体材料の調製方法の一例としては、まず、過塩素酸テトラブチルアンモニウム(Tetra Butyl Ammonium Perchlorate:TBAP)の炭酸プロピレン(propylene carbonate)溶液を、TBAPのモル濃度が、約20mol/Lとなるように調整する。その後、PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)用の液晶組成物、モノマー組成物、及び重合開始剤の混合物を、該溶液に混合する。その後、炭酸プロピレン溶液におけるTBAPのモル濃度が、約0.04mol/Lになるように再び調整する。その後、製造される電解質層の膜厚を規定するために、体積平均粒径30μmの真球状樹脂ビーズを0.2質量%濃度で、該炭酸プロピレン溶液に分散させる。このようにして、電解質層の前駆体材料とすることができる。
(表示装置)
本発明の表示装置は、本発明の前記エレクトロクロミック表示素子と、
表示データを格納するVRAM(第1の記憶手段)と、
前記表示データに基づいて前記エレクトロクロミック表示素子を制御する表示コントローラと、を備えてなり、更に必要に応じてその他の手段を備えてなる。
(情報機器)
本発明の情報機器は、本発明の前記表示装置と、前記表示装置に表示する情報を制御する制御装置とを備え、更に必要に応じてその他の手段を備えてなる。
以下、本発明の前記エレクトロクロミック表示素子を、電子書籍リーダに適用した場合について説明する。
なお、前記エレクトロクロミック表示素子は、電子書籍リーダに限定されず、例えば、電子広告、モバイルパソコン、携帯端末等、表示装置を備えたあらゆる情報機器に適用することができる。
図3は、電子書籍リーダ100の概略構造の一例を示している。
電子書籍リーダ100は、表示装置101、メインコントローラ102、ROM(第2の記憶手段)103、RAM(第3の記憶手段)104、フラッシュメモリ(第4の記憶手段)105、キャラクタジェネレータ106、インターフェース107を含む。また、表示装置101は、タッチパネル付きの表示パネル111、タッチパネルドライバ112、表示コントローラ113、VRAM(第1の記憶手段)114を含む。
なお、図3に示す構造では、表示装置101の外部にキャラクタジェネレータ106が備えられているが、表示装置101の内部にキャラクタジェネレータ106が備えられていてもよい。また、表示パネル111は、タッチパネルを備えていなくてもよい。他の入力手段がある場合は、他の入力手段を、表示パネル111に備えればよい。表示パネル111がタッチパネルを備えていない場合は、タッチパネルドライバ112は不要である。
なお、図3に示す矢印は、代表的な信号や情報の流れを表しており、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
タッチパネル付きの表示パネル111は、実施形態1に係るエレクトロクロミック表示素子及び駆動回路を含む。表示パネル111は、表示コントローラ113から出力される画素選択信号に基づいて、選択された画素に対応する駆動素子を駆動させ、選択された画素に、所定の電圧を印加する。なお、画素選択信号は、選択される画素の縦方向の位置と横方向の位置とを指定する信号である。また、表示パネル111は、表示コントローラ113から出力される色指定信号に基づいて、その指定色に応じて、対応する表示電極に所定の電圧を印加する。画素選択信号、色指定信号等の信号に基づいて、表示パネル111は、動画像又は静止画像等を表示する。
また、表示パネル111は、ユーザがタッチパネルをタッチした際、タッチ位置に基づく信号をタッチパネルドライバ112に出力する。
なお、表示パネル111は、本発明のエレクトロクロミック表示素子20を備えているため、低電圧で駆動でき、繰り返し駆動しても劣化着色を生じない良好な表示品質を実現することができる。実際、フルカラー画像の表示と消去とを交互に1,000回繰り返した後であっても、画像の表示状態には特別な変化は見られなかった。
また、表示パネル111は、発色又は消色の切り替えを高速に行うことができる。実際、駆動開始から画像取得までに要する時間、及び取得した画像を消去するまでに要する時間を測定すると、500m秒程度であった。
また、表示パネル111は、耐光性に優れているため、日光や室内光等の光に対する堅牢性が高く、長時間光が照射されても、視認性の高い画像表示を維持することができる。
実際、フルカラー画像を表示させた後、30分間程度静置しても、画像の見え方に変化はなく、画像のボケは認識できなかった。
VRAM(第1の記憶手段)114は、表示パネル111に動画像又は静止画像を表示するための表示データを格納する。該表示データは、表示パネル111に含まれる複数の画素に個別に対応している。従って、該表示データは、各々の画素に対応する表示色情報を含む。
表示コントローラ113は、所定のタイミング毎に、VRAM(第1の記憶手段)114に格納されている表示データを読み出し、該表示データに応じて、表示パネル111に含まれる複数の画素の表示色を個別に制御する。表示コントローラ113は、発色させる画素を特定するための画素選択信号と、色を特定するための色指定信号とを表示パネル111に出力する。
タッチパネルドライバ112は、表示パネル111上においてユーザがタッチした位置に対応する位置情報をメインコントローラ102に出力する。
メインコントローラ102は、ROM(第2の記憶手段)103に格納されているプログラムに従って、RAM(第3の記憶手段)104、フラッシュメモリ(第4の記憶手段)105、キャラクタジェネレータ106、インターフェース107、VRAM(第1の記憶手段)114等の各部を統括的に制御する。
例えば、ユーザによって電源がオンされると、メインコントローラ102は、初期メニュー画面データを、ROM(第2の記憶手段)103から読み出し、キャラクタジェネレータ106を参照して、該初期メニュー画面データをドットデータに変換し、該ドットデータを、VRAM(第1の記憶手段)114に転送する。これより、初期メニュー画面が、表示パネル111に表示される。この際、フラッシュメモリ105に格納されているコンテンツの一覧が、表示パネル111に表示される。表示パネル111上のメニューの1つが、ユーザによって選択され、その表示部分がタッチされると、メインコントローラ102は、タッチパネルドライバ112からの位置情報に基づいて、ユーザの選択内容を取得する。
ユーザがコンテンツを指定し、該コンテンツの閲覧を要求した場合には、メインコントローラ102は、該コンテンツの電子データをフラッシュメモリ(第4の記憶手段)105から読み出し、キャラクタジェネレータ106を参照して、該電子データをドットデータに変換し、該ドットデータを、VRAM(第1の記憶手段)114に転送する。
また、ユーザがインターネットを介したコンテンツの購入を要求した場合には、メインコントローラ102は、インターフェース107を介して所定の購入サイトに接続し、通常のブラウザとして機能する。該購入サイトからの情報が表示パネル111に表示され、ユーザがコンテンツを購入すると、該コンテンツの電子データがダウンロードされる。メインコントローラ102は、該コンテンツの電子データをフラッシュメモリ(第4の記憶手段)105に格納する。
ROM(第2の記憶手段)103は、メインコントローラ102にて解読可能なコードで記述された各種プログラム、及びプログラムの実行に必要な各種データを格納する。
RAM(第3の記憶手段)104は、作業用のメモリである。
フラッシュメモリ(第4の記憶手段)105は、コンテンツである書籍の電子データ等を格納する。
キャラクタジェネレータ106は、各種キャラクタデータに対応するドットデータを格納する。
インターフェース107は、外部機器との接続を制御する。前記インターフェース107は、メモリカード、パソコン、公衆回線を接続することが可能である。なお、パソコン及び公衆回線への接続は、有線、無線いずれも可能である。
前記電子書籍リーダ100によれば、タッチパネルに、本発明の前記エレクトロクロミック表示素子を適用しているため、低電圧で駆動でき、繰り返し駆動しても劣化着色を生じない良好な表示品質得られるとともに、反射型表示及び透過型表示どちらの場合であってもクリアな表示特性が得られる。
(エレクトロクロミック調光レンズ)
本発明のエレクトロクロミック調光レンズは、レンズと、前記レンズ上に積層された薄膜調光機能部と、を有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
前記薄膜調光機能部は、前記レンズ上に積層された第1の電極層と、前記第1の電極層上に積層された第1の電気活性層と、前記第1の電気活性層上に積層された絶縁性多孔質層と、前記絶縁性多孔質層上に積層された多孔質である第2の電極層と、前記第2の電極層と接して前記第2の電極層の上側と下側のいずれか一方又は双方に形成された第2の電気活性層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に充填され、かつ、前記第1の電気活性層及び前記第2の電気活性層と接するように設けられた電解質と、を有する。
前記第1の電気活性層と前記第2の電気活性層の一方が、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体のエレクトロクロミック層であり、他方が劣化防止層又は還元反応により発色するエレクトロクロミック層である。
本発明のエレクトロクロミック調光レンズは、繰り返し駆動による劣化着色もほとんど起こらない優れた表示特性を有する。
ここで、図4は、本発明のエレクトロクロミック調光レンズの一例を示す断面図である。
図4を参照するに、エレクトロクロミック調光レンズ110は、レンズ120と、レンズ120上に積層された薄膜調光機能部130とを有する。エレクトロクロミック調光レンズ110の平面形状は、例えば、丸型とすることができる。
薄膜調光機能部130は、第1の電極層131、エレクトロクロミック層132、絶縁性多孔質層133、第2の電極層134、劣化防止層135、及び保護層136が順次積層された構造を有し、エレクトロクロミック層132の発消色(調光)を行う部分である。なお、保護層136は、劣化防止層135の上面(レンズ120とは反対側の面)に形成されていればよく、必ずしも、第1の電極層131、エレクトロクロミック層132、絶縁性多孔質層133、第2の電極層134、及び劣化防止層135の夫々の側面に形成しなくてもよい。
エレクトロクロミック調光レンズ110において、レンズ120上には第1の電極層131が設けられ、第1の電極層131に接してエレクトロクロミック層132が設けられている。また、エレクトロクロミック層132上には、絶縁性多孔質層133を介して、第1の電極層131に対向するように第2の電極層134が設けられている。
絶縁性多孔質層133は、第1の電極層131と第2の電極層134とを絶縁するために設けられており、絶縁性多孔質層133は、絶縁性金属酸化物微粒子を含んでいる。第1の電極層131と第2の電極層134に挟まれた絶縁性多孔質層133には、電解質が充填されている。
第2の電極層134は、厚み方向に貫通する多数の貫通孔が形成された多孔質の電極層である。第2の電極層134の外側には劣化防止層135が設けられている。劣化防止層135も厚み方向に貫通する多数の貫通孔が形成された多孔質であり、電解質が充填されている。
エレクトロクロミック調光レンズ110において、第1の電極層131と第2の電極層134との間に電圧を印加することにより、エレクトロクロミック層132が電荷の授受により酸化還元反応して発消色する。
<エレクトロクロミック調光レンズの製造方法>
本発明に用いられるエレクトロクロミック調光レンズの製造方法は、レンズ120上に第1の電極層131及びエレクトロクロミック層132を順次積層する工程と、エレクトロクロミック層132上に絶縁性多孔質層133を介して第1の電極層131に対向するように貫通孔が形成された多孔質の電極層である第2の電極層134を積層する工程と、第2の電極層134上に貫通孔が形成された多孔質の劣化防止層135を積層する工程と、第1の電極層131と第2の電極層134に挟まれた絶縁性多孔質層133に、劣化防止層135及び第2の電極層134を介して、劣化防止層135及び第2の電極層134に形成された貫通孔から電解質を充填する工程と、劣化防止層135上に保護層136を形成する工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
ここで、劣化防止層135及び第2の電極層134に形成されたそれぞれの貫通孔は、エレクトロクロミック調光レンズ110の製造工程において、絶縁性多孔質層133等に電解質を充填する際の注入孔である。
このように、本発明のエレクトロクロミック調光レンズ110では、第1の電極層131と第2の電極層134に挟まれた絶縁性多孔質層133等に、劣化防止層135及び第2の電極層134に形成された貫通孔から電解質を充填することが可能である。
そのため、電解質を充填する前に、低抵抗な第2の電極層134を形成することが可能となり、エレクトロクロミック調光レンズ110の性能を向上できる。
また、第2の電極層134上に劣化防止層135を設けているため、繰り返し安定して動作するエレクトロクロミック調光レンズを実現できる。
なお、第2の電極層134に貫通孔が形成されているため、第2の電極層134の外側(対向する2つの電極層の外側)に第2の電極層134に接して劣化防止層135を形成できる。これは、第2の電極層134に形成された貫通孔を通してイオンが第2の電極層の表裏を移動できるためである。その結果、第2の電極層134の下層に劣化防止層135を形成する必要がないため、第2の電極層134を形成する際のスパッタ等によって、劣化防止層135がダメージを受けることを回避できる。
また、劣化防止層135を形成する場合、浸透性の絶縁性多孔質層133上と、第2の電極層134上に形成する場合とで、いずれか均質な劣化防止層135を形成できるプロセスを適宜選ぶことができる。あるいは、必要に応じて、劣化防止層135を第2の電極層134の上と下の両方に形成してもよい。
図4では、第1の電極層131に接してエレクトロクロミック層132を、第2の電極層134に接して劣化防止層135を形成しているが、これらは一方が酸化反応をする際に他方が還元反応をし、一方が還元反応をする際には他方が酸化反応をするという関係にある。そのため、形成される位置としては、逆であってもよい。つまり、第1の電極層131に接して劣化防止層135、第2の電極層134に接してエレクトロクロミック層132を形成してもよい。
また、第1の電極層131に接してエレクトロクロミック層132を形成し、第2の電極層134に接して第2の電極層134の上側と下側の双方に劣化防止層を形成してもよい。また、第1の電極層131に接して劣化防止層135を形成し、第2の電極層134に接して第2の電極層134の上側と下側の双方にエレクトロクロミック層132を形成してもよい。
なお、本発明では、劣化防止層及びエレクトロクロミック層を電気活性層と称する場合がある。即ち、本実施形態に係るエレクトロクロミック調光レンズ110において、薄膜調光機能部130は、レンズ120上に積層された第1の電極層131と、第1の電極層131上に積層された第1の電気活性層と、第1の電気活性層上に積層された絶縁性多孔質層133と、絶縁性多孔質層133上に積層された多孔質である第2の電極層134と、第2の電極層134と接して第2の電極層134の上側と下側のいずれか一方又は双方に形成された多孔質である第2の電気活性層と、を含み、第1の電気活性層と第2の電気活性層の一方が、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物を含む多孔質構造体のエレクトロクロミック層132であり、他方が劣化防止層135又は還元反応により発色するエレクトロクロミック化合物を含むエレクトロクロミック層である。
本発明のエレクトロクロミック調光レンズ110では、電解質注入後に塗布工程で保護層136を形成するため、2枚のレンズを貼り合わせる構成に対して厚みを薄くすることができ、また、質量も軽量化することが可能となり、コストも安くできる。
薄膜調光機能部130の平均厚みは、2μm以上200μm以下であることが好ましい。薄膜調光機能部130の厚みが200μm以下であると、丸型レンズの加工が容易に行え、レンズの光学特性等に影響が生じることがない。また、薄膜調光機能部130の厚みが2μm以上であると、良好な調光機能が得られる。
ここで、図5は、本発明のエレクトロクロミック調光レンズを用いた眼鏡の一例を示す斜視図である。図5を参照するに、エレクトロクロミック調光眼鏡150は、エレクトロクロミック調光レンズ151と、眼鏡フレーム152と、スイッチ153と、電源154とを有する。エレクトロクロミック調光レンズ151は、エレクトロクロミック調光レンズ110を所望の形状に加工したものである。
2つのエレクトロクロミック調光レンズ151は、眼鏡フレーム152に組み込まれている。眼鏡フレーム152には、スイッチ153及び電源154が設けられている。電源154は、スイッチ153を介して、配線により、第1の電極層131及び第2の電極層134と電気的に接続されている。スイッチ153を切り替えることにより、例えば、第1の電極層131と第2の電極層134との間にプラス電圧を印加する状態、マイナス電圧を印加する状態、電圧を印加しない状態の中から1つの状態を選択可能である。
スイッチ153としては、例えば、スライドスイッチやプッシュスイッチ等の任意のスイッチを用いることができる。ただし、少なくとも前記3つの状態を切り替え可能なスイッチにする。電源154としては、例えば、ボタン電池や太陽電池等の任意の直流電源を用いることができる。電源154は、第1の電極層131と第2の電極層134との間にプラスマイナス数V程度の電圧を印加可能である。
例えば、第1の電極層131と第2の電極層134との間にプラス電圧を印加することにより、2つのエレクトロクロミック調光レンズ151が所定の色に発色する。また、第1の電極層131と第2の電極層134との間にマイナス電圧を印加することにより、2つのエレクトロクロミック調光レンズ151が消色し透明となる。
ただし、エレクトロクロミック層132に使用する材料の特性により、第1の電極層131と第2の電極層134との間にマイナス電圧を印加することにより発色し、プラス電圧を印加することにより消色し透明となる場合もある。なお、一度発色した後は、第1の電極層131と第2の電極層134との間に電圧を印加しなくても発色は継続する。
以下、本発明のエレクトロクロミック調光レンズ110を構成する各構成要素の材料や成膜方法等について詳細に説明する。
<レンズ>
レンズ120の材料としては、眼鏡用レンズとして機能するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、透明性が高く、厚みが薄くて軽量なものが好ましい。また、熱履歴による膨張がなるべく小さい方が好ましく、ガラス転移点(Tg)が高い材料、線膨張係数が小さい材料が好ましい。
具体的には、ガラスの他に、特許庁の高屈折率メガネレンズに関する技術概要資料に記載されているようなものはいずれも使用でき、エピスルフィド系樹脂、チオウレタン系樹脂、メタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂等やそれらの混合物等が使用できる。また、必要に応じて、ハードコートや密着性を改善するためのプライマーを形成していてもよい。
なお、本発明において、レンズとは、度数(屈折率)の調整がされていないもの(単なるガラス板等)も含むものとする。
<第1の電極層、第2の電極層>
第1の電極層131及び第2の電極層134の材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、調光ガラスとして利用する場合は光の透過性を確保する必要があるため、透明かつ導電性に優れた透明導電性材料が用いられる。これにより、ガラスの透明性を得られると共に着色のコントラストをより高めることができる。
前記透明導電性材料としては、スズをドープした酸化インジウム(以下、ITOとする)、フッ素をドープした酸化スズ(以下、FTOとする)、アンチモンをドープした酸化スズ(以下、ATOとする)等の無機材料を用いることができる。特に、真空成膜により形成されたインジウム酸化物(以下、In酸化物とする)、スズ酸化物(以下、Sn酸化物とする)及び亜鉛酸化物(以下、Zn酸化物とする)のいずれか1つを含む無機材料を用いることが好ましい。
前記In酸化物、前記Sn酸化物、及び前記Zn酸化物は、スパッタ法により、容易に成膜が可能な材料であると共に、良好な透明性と電気伝導度が得られる材料である。これらの中でも、特に好ましい材料は、InSnO、GaZnO、SnO、In23、ZnOである。更には、透明性を有する銀、金、カーボンナノチューブ、金属酸化物等のネットワーク電極やこれらの複合層も有用である。なお、前記ネットワーク電極とは、カーボンナノチューブや他の高導電性の非透過性材料等を微細なネットワーク状に形成して透過率を持たせた電極である。
第1の電極層131及び第2の電極層134の各々の厚みは、エレクトロクロミック層132の酸化還元反応に必要な電気抵抗値が得られるように調整される。第1の電極層131及び第2の電極層134の材料としてITOを用いた場合、第1の電極層131及び第2の電極層134の各々の厚みは、50nm以上500nm以下であることが好ましい。
第1の電極層131及び第2の電極層134の各々の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。また、第1の電極層131及び第2の電極層134の各々の材料が塗布形成できるものであれば、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
第2の電極層134には、厚み方向に貫通する多数の微細な貫通孔が形成されている。例えば、以下に示す方法により、第2の電極層134に微細な貫通孔を設けることができる。即ち、第2の電極層134を形成する前に予め下地層として凹凸を持つ層を形成し、そのまま凹凸を有する第2の電極層134とする方法を用いることができる。
また、第2の電極層134を形成する前にマイクロピラー等の凸形状構造体を形成し、第2の電極層134を形成後に凸形状構造体を取り除く方法を用いてもよい。また、第2の電極層134を形成する前に発泡性の高分子重合体等を散布し、第2の電極層134を形成後に加熱や脱気する等の処理を施して発泡させる方法を用いてもよい。また、第2の電極層134に直接各種放射線を輻射して細孔を形成させる方法を用いてもよい。
更に、第2の電極層134に微細な貫通孔を形成する方法としては、コロイダルリソグラフィー法を用いてもよい。コロイダルリソグラフィー法は、以下のような方法である。即ち、第2の電極層134が積層される下層に微粒子を散布し、散布された微粒子をマスクとして微粒子が散布された面に真空成膜法等により第2の電極層134となる導電膜を形成する。その後、微粒子ごと導電膜を一部除去することでパターニングを行う方法である。
第2の電極層134に微細な貫通孔を形成する方法として、コロイダルリソグラフィー法の他に、フォトレジストやドライフィルム等を用いた一般的なリフトオフ法を用いてもよい。具体的には、まず所望のフォトレジストパターンを形成し、次いで第2の電極層134を形成し、その後フォトレジストパターンを除去することによってフォトレジストパターン上の不要な部分を除去して、第2の電極層134に微細な貫通孔を形成する方法である。
一般的なリフトオフ法により第2の電極層134に微細な貫通孔を形成する場合、光照射による下層へのダメージを回避するため、対象物への光照射面積が小さくて済むように、使用するフォトレジストはネガ型のものを使用することが好ましい。
ネガ型のフォトレジストとしては、例えば、ポリビニルシンナメート、スチリルピリジニウムホルマール化ポリビニルアルコール、グリコールメタクリレート/ポリビニルアルコール/開始剤、ポリグリシジルメタクリレート、ハロメチル化ポリスチレン、ジアゾレジン、ビスアジド/ジエン系ゴム、ポリヒドロキシスチレン/メラミン/光酸発生剤、メチル化メラミン樹脂、メチル化尿素樹脂等を挙げることができる。
更に、レーザ光を用いた加工装置により、第2の電極層134に微細な貫通孔を形成することも可能である。
第2の電極層134に設けられる微細な貫通孔の径は、10nm以上100μm以下であると好適である。貫通孔の径が10nm(0.01μm)以上の場合、電解質イオンの透過が良くなる。また、微細貫通孔の径が100μm以下の場合、目視できるレベル(通常のディスプレイでは1画素電極(1対向電極)レベルの大きさ)ではなく、微細な貫通孔直上の表示性能に不具合が生じることがない。
第2の電極層134に設けられる微細な貫通孔の第2の電極層134の表面積に対する孔面積の比(穴密度)は、適宜設定することができるが、例えば、0.01%以上40%以下とすることができる。穴密度が高すぎると、第2の電極層134の表面抵抗が大きくなるため、第2の電極層134がない領域面積が広くなることによるクロミック欠陥が出る不具合が生じる。また、穴密度が低すぎると電解質イオンの浸透性が悪くなるために、同様に駆動に問題が生じる不具合が生じる。
<エレクトロクロミック層(酸化反応により発色するエレクトロクロミック層)>
エレクトロクロミック層132は、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層であり、前記第1の実施形態のエレクトロクロミック表示素子のエレクトロクロミック層、又は前記第2の実施形態のエレクトロクロミック表示素子の第1のエレクトロクロミック層と同じ態様とすることができる。
<絶縁性多孔質層>
絶縁性多孔質層133は、第1の電極層131と第2の電極層134とが電気的に絶縁されるように隔離すると共に、電解質を保持する機能を有する。絶縁性多孔質層133の材料としては、多孔質であればよく、特に限定されるものではないが、絶縁性及び耐久性が高く成膜性に優れた有機材料や無機材料、及びそれらの複合体を用いることが好ましい。
絶縁性多孔質層133の形成方法としては、例えば、焼結法(高分子微粒子や無機粒子を、バインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)を用いることができる。絶縁性多孔質層133の形成方法として、例えば、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)等を用いてもよい。
絶縁性多孔質層133の形成方法として、高分子重合体等を加熱や脱気する等して発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の形成方法を用いてもよい。具体例としては、金属酸化物微粒子(SiO2粒子やAl23粒子等)とポリマー結着剤を含むポリマー混合粒子膜、多孔性有機膜(ポリウレタン樹脂やポリエチレン樹脂等)電極層134の表面抵抗が大きく失われ、表示不良の原因となる。
絶縁性多孔質層133の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm以上2μm以下が好ましい。
絶縁性多孔質層133は、無機膜と組み合わせて用いることが好ましい。これは絶縁性多孔質層133の表面に形成される第2の電極層134をスパッタ法により形成する際に、下層である絶縁性多孔質層133やエレクトロクロミック層132の有機物質へのダメージを低減させるためである。
前記無機膜としては、SiO2に加え、ZnSを含む材料を用いることが好ましい。ZnSは、スパッタ法によって、エレクトロクロミック層132等にダメージを与えることなく高速に成膜できる。更に、ZnSを主な成分として含む材料として、ZnS−SiO2、ZnS−SiC、ZnS−Si、ZnS−Ge等を用いてもよい。
ここで、ZnSの含有率は、絶縁層を形成した際の結晶性を良好に保つために、50mol%以上90mol%以下とすることが好ましい。従って、特に好ましい材料は、ZnS−SiO2(8/2(質量比))、ZnS−SiO2(7/3(質量比))、ZnS、ZnS−ZnO−In23−Ga23(60/23/10/7(質量比))である。絶縁性多孔質層133として前記のような材料を用いることにより、薄膜で良好な絶縁効果が得られ、膜強度低下や膜剥離を防止することができる。
<劣化防止層>
劣化防止層135の役割は、エレクトロクロミック層132と逆の化学反応をし、電荷のバランスをとって第1の電極層131や第2の電極層134が不可逆的な酸化還元反応により腐食や劣化することを抑制することである。その結果として、エレクトロクロミック調光レンズ110の繰り返し安定性を向上することである。なお、逆反応とは、劣化防止層が酸化還元する場合に加え、キャパシタとして作用することも含む。
劣化防止層135の材料は、第1の電極層131及び第2の電極層134の不可逆的な酸化還元反応による腐食を防止する役割を担う材料であれば特に限定されるものではない。劣化防止層135の材料として、例えば、酸化アンチモン錫や酸化ニッケル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、又はそれらを複数含む導電性又は半導体性金属酸化物を用いることができる。更に、劣化防止層の着色が問題にならない場合は、前記エレクトロクロミック材料と同じものを用いることができる。
劣化防止層135は、電解質の注入を阻害しない程度の多孔質薄膜から構成することができる。例えば酸化アンチモン錫や酸化ニッケル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等の導電性又は半導体性金属酸化物微粒子を、例えばアクリル系、アルキド系、イソシアネート系、ウレタン系、エポキシ系、フェノール系等のバインダにより第2の電極層134に固定化することで、電解質の浸透性と、劣化防止層としての機能を満たす、好適な多孔質薄膜を得ることができる。
劣化防止層135の材料として、電荷の授受に伴って透明状態を保持する材料を用いてもよい。例えば、ポリピロール系、ポリチオフェン系、ポリアニリン系、又はそれらの誘導体等の導電性高分子や、金属錯体と有機リガンドのハイブリッドポリマー、ラジカルポリマーなどが挙げられる。これらを用いる際は、電解質の注入を阻害しないように膜密度を調整するか、あるいはレーザ加工等により貫通孔を形成する必要がある。
エレクトロクロミック層132として、これらの材料を用い、劣化防止層135として、既述の導電性又は半導体性微粒子に担持した有機エレクトロクロミック化合物を用いてもよい。
劣化防止層135として、透明性の高いn型半導体性酸化物微粒子(n型半導体性金属酸化物)を用いることが好ましい。具体例としては、100nm以下の1次粒子径粒子からなる、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、又はそれらを複数含む化合物粒子、混合物を用いることができる。
このような形態において、特に好ましいエレクトロクロミック材料は、有機高分子材料である。塗布形成プロセス等により容易に成膜できると共に、分子構造により色の調整や制御が可能となる。これらの有機高分子材料例としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)系材料、ビス(ターピリジン)類と鉄イオンの錯形成ポリマーなどである。
劣化防止層135の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンレーティング法等を用いることができる。
劣化防止層135の材料が塗布形成できるものであれば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
<エレクトロクロミック層(還元反応により発色するエレクトロクロミック層)>
劣化防止層を形成せずに、還元反応により発色するエレクトロクロミック層135を形成する場合は、第2の実施形態のエレクトロクロミック表示素子における第2のエレクトロクロミック層と同じ態様とすることができる。
<電解質>
図4に示すエレクトロクロミック調光レンズ110では、電解質は、電解液として、劣化防止層135を介して、第2の電極層134に形成された微細な貫通孔から第1の電極層131と第2の電極層134との間に配置された絶縁性多孔質層133に充填される。つまり、電解質は、第1の電極層131と第2の電極層134との間に充填されてエレクトロクロミック層132と接し、かつ、第2の電極層134に形成された貫通孔を介して劣化防止層135と接するように設けられている。
前記電解質としては、第1の実施形態のエレクトロクロミック表示素子の電解質層に用いた電解質材料と同じ態様とすることができる。
<保護層>
保護層136の役割は、外的応力や洗浄工程の薬品から素子を守ることや、電解質の漏洩を防ぐこと、大気中の水分や酸素などエレクトロクロミック表示素子が安定的に動作するために不要なものの侵入を防ぐこと等である。同時に、レンズとしての機能を損なわないための透明性、表面の平滑性、屈折率、耐熱性、耐光性が求められる。
保護層136の厚みは、1μm以上200μm以下が好ましい。
保護層136の材料としては、紫外線硬化型や熱硬化型の樹脂を用いることができ、具体的には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などを用いることが好ましい。
保護層136の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、キャスト法等の各種成膜法などが挙げられる。
なお、エレクトロクロミック調光レンズ110は、保護層136に加え、キズがつかないためのハードコート層や、反射を抑制するための反射防止層を必要に応じて備えていることが好ましい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
以下のようにして、図1に示すような第1の実施形態のエレクトロクロミック表示素子を作製した。
<電解質組成物の調製>
以下に示す組成の電解質組成物を調製した。
・IRGACURE184(BASFジャパン株式会社製): 5質量部
・PEG400DA(日本化薬株式会社製): 100質量部
・1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(メルク社製):
50質量部
更に、電解質層厚を制御する目的で体積平均粒径30μmの樹脂ビーズスペーサー(積水化学工業株式会社製、ミクロパール GS−230)を0.2質量部加えて分散させた。以上により、電解質組成物を調製した。
<表示電極の形成>
表示基板としてのガラス基板(40mm×40mm)の表面全面にスパッタ法により平均厚み100nmのITO膜を形成し、表示電極3を作製した。この表示電極3の表面抵抗は約200Ω/□であった。
<酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の形成>
表示電極上に酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成するために、以下に示す組成のエレクトロクロミック組成物を調製した。
・1官能アクリレートを有するトリアリールアミン化合物
(下記構造式で表される前記例示化合物1): 50質量部
Figure 2018005210
・IRGACURE184(BASFジャパン株式会社製): 5質量部
・2官能アクリレートを有するポリエチレングリコールジアクリレート
(PEG400DA、日本化薬株式会社製): 50質量部
・メチルエチルケトン: 900質量部
・ポリビニルアルコール微粒子(平均粒径1.0μm): 20質量部
得られたエレクトロクロミック組成物を、前記表示電極上にスピンコート法により塗布し、得られた塗布膜を窒素雰囲気下でUV照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により10mW/cm2で60秒間照射し、平均厚み5μmの架橋したエレクトロクロミック層を形成し、60℃の水に10分間浸漬させた後、60℃の水ですすぎ流し、80℃のオーブンで10分間乾燥させた。
このエレクトロクロミック層を形成したITO形成基板の質量を量って、予め量っておいたITO形成基板の質量を差し引いてエレクトロクロミック層の正確な質量を求め、また触針式の膜厚計で膜厚を測定し、前記計算方法で空隙率を求めたところ、約50%であった。
また基板端部5mmの部分から上記エレクトロクロミック層を採取して断面をSEM観察し、画像処理により細孔径(空隙サイズ)の平均値を求めたところ、約0.9μmであった。
<白色反射層の形成>
前記エレクトロクロミック層上に、酸化チタン粒子(体積平均粒径:300nm)及び水性ポリウレタン樹脂のTFP分散液をスピンコートし、120℃で10分間のアニール処理により白色反射層を形成した。
<対向電極の形成>
対向基板としてのガラス基板(40mm×40mm)の表面全面にスパッタ法により平均厚み100nmのITO膜を形成し、表示電極を作製した。この表示電極の表面抵抗は約200Ω/□であった。
<劣化防止層の形成>
対向電極上に、劣化防止層として酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和タイタニウム株式会社製、体積平均粒子径:約20nm)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、平均厚み1.0μmの酸化チタン粒子膜からなるナノ構造半導体材料を形成した。
<貼り合わせ>
以下の工程はアルゴン置換したグローブボックス中で実施した。
形成した前記劣化防止層上に、調製した前記電解質組成物を50μL給液し、その上に形成した前記白色反射層が対向するように、かつ基板端部を5mmずらして表示基板を貼り合わせ(駆動のためのコンタクト部を確保するため)、UV(波長250nm)照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により10mW/cm2で60秒間照射して、前記電解質組成物を硬化させた。以上により、エレクトロクロミック表示素子を作製した。
次に、作製したエレクトロクロミック表示素子について、以下のようにして、「繰り返し駆動による劣化着色」を評価した。
<繰り返し駆動による劣化着色の評価方法>
発消色繰り返し駆動10,000回実施の前後に消色時のL*値を測定し、両者の差を劣化着色程度の指標とした。
前記L*値は、CIELAB表色系における明るさを表す特性値であり、ここではエレクトロクロミック表示素子の消色時の明るさ及び発色時の発色濃度の指標として用いた。
なお、L*値は自作の装置を用いて測定した。
※繰り返し駆動条件:(発色:定電流印加:−0.3mA/cm2、印加時間:1秒間)、(消色:定電流印加:0.3mA/cm2、印加時間:1秒間)を交互に繰り返して印加した。
※透過型のエレクトロクロミック表示素子については、標準白色板上に素子を密着させて置いた状態で反射測定した。反射型のエレクトロクロミック表示素子についてはそのまま反射測定した。
−繰り返し駆動による劣化着色−
得られたエレクトロクロミック表示素子に上述の駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は2.0Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.8であり、10,000回終了時の消色時のL*値は77.4であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は3.4と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例2)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例1において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層上に白色反射層を形成せずに、透過型の表示素子としたこと、および上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際にポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.7μmのものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミック表示素子を作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約55%、細孔径の平均値は約0.6μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.9Vであった。
開始直後の消色時のL*値は80.4であり、10,000回終了時の消色時のL*値は76.8であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は3.6と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例3)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例2において、対向電極上に劣化防止層を形成せずに、還元反応により発色するエレクトロクロミック層を以下のようにして形成した以外は、実施例2と同様にして、エレクトロクロミック表示素子を作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約55%、細孔径の平均値は約0.6μmであった。
−還元反応により発色するエレクトロクロミック層の形成−
対向電極上に、酸化チタンナノ粒子分散液としてSP210(昭和タイタニウム株式会社製)をスピンコート法により塗布し、120℃、15分間のアニール処理を行うことによって、酸化チタン粒子膜(平均厚み1.1μm)を形成した。前記酸化チタン粒子膜上に、エレクトロクロミック化合物である、「4,4’−(isooxazole−3,5−diyl)bis(1−(2−phosphonoethyl)pyridinium)bromide」を2質量%含む2,2,3,3−テトラフロロプロパノール(以下、「TFP」という)溶液をスピンコートし、120℃で10分間のアニール処理により、還元反応により発色するエレクトロクロミック層を形成した。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.9Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.3であり、10,000回終了時の消色時のL*値は76.8であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は3.5と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例4)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例3において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成するのに用いるエレクトロクロミック組成物の調製において、ポリビニルアルコール微粒子(平均粒径0.7μm)を30質量部用いること以外は実施例3と同様にしてエレクトロクロミック表示素子を作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約60%、細孔径の平均値は約0.6μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.8Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.4であり、10,000回終了時の消色時のL*値は77.5であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は2.9と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例5)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例4において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成するのに用いるエレクトロクロミック組成物の調製において、ポリビニルアルコール微粒子(平均粒径0.7μm)を40質量部用いること以外は実施例4と同様にしてエレクトロクロミック表示素子を作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約70%、細孔径の平均値は約0.6μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.75Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.5であり、10,000回終了時の消色時のL*値は77.7であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は2.8と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例6)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例5において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成するのに用いるエレクトロクロミック組成物の調製において、ポリビニルアルコール微粒子(平均粒径0.7μm)を50質量部用いること以外は実施例5と同様にしてエレクトロクロミック表示素子を作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約80%、細孔径の平均値は約0.6μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.7Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.9であり、10,000回終了時の消色時のL*値は78.2であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は2.7と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例7)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例4において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.6μmのものを用いたこと以外は、実施例4と同様にしてエレクトロクロミック表示素子を作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約60%、細孔径の平均値は約0.5μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.3Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.0であり、10,000回終了時の消色時のL*値は80.3であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は0.7と非常に小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例8)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例5において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.6μmのものを用いたこと以外は、実施例5と同様にしてエレクトロクロミック表示素子を作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約70%、細孔径の平均値は約0.5μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.2Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.8であり、10,000回終了時の消色時のL*値は80.2であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は0.6と非常に小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例9)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例6において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.6μmのものを用いたこと以外は、実施例6と同様にしてエレクトロクロミック表示素子を作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約80%、細孔径の平均値は約0.5μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.2Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.7であり、10,000回終了時の消色時のL*値は80.1であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は0.6と非常に小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例10)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例7において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.3μmのものを用いたこと以外は、実施例7と同様にしてエレクトロクロミック表示素子を作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約60%、細孔径の平均値は約0.2μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.2Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.1であり、10,000回終了時の消色時のL*値は80.5であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は0.6と非常に小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例11)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例8において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.3μmのものを用いたこと以外は、実施例8と同様にしてエレクトロクロミック表示素子を作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約70%、細孔径の平均値は約0.2μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.1Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.3であり、10,000回終了時の消色時のL*値は79.8であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は0.5と非常に小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例12)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例9において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.3μmのものを用いたこと以外は、実施例9と同様にしてエレクトロクロミック表示素子を作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約80%、細孔径の平均値は約0.2μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.1Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.6であり、10,000回終了時の消色時のL*値は80.1であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は0.5と非常に小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例13)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例3において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.6μmのものを用いたこと以外は、実施例3と同様にしてエレクトロクロミック表示素子を作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約55%、細孔径の平均値は約0.5μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.8Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.4であり、10,000回終了時の消色時のL*値は77.7であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は2.7と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例14)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例3において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.3μmのものを用いたこと以外は、実施例3と同様にしてエレクトロクロミック表示素子を作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約55%、細孔径の平均値は約0.2μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.7Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.2であり、10,000回終了時の消色時のL*値は78.2であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は2.0と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(比較例1)
<エレクトロクロミック表示素子の作製>
実施例3において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の形成を以下のように実施する以外は、実施例3と同様にして、エレクトロクロミック表示素子を作製した。
<酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の形成>
表示電極上に酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成するために、以下に示す組成のエレクトロクロミック組成物を調製した。
・1官能アクリレートを有するトリアリールアミン化合物
(下記構造式で表される前記例示化合物1): 50質量部
Figure 2018005210
・IRGACURE184(BASFジャパン株式会社製): 5質量部
・2官能アクリレートを有するポリエチレングリコールジアクリレート
(PEG400DA、日本化薬株式会社製): 50質量部
・メチルエチルケトン: 900質量部
得られたエレクトロクロミック組成物を、前記表示電極上にスピンコート法により塗布し、得られた塗布膜を窒素雰囲気下でUV照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により10mW/cm2で60秒間照射した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙はほとんど観察されなかった。また計算により求められた空隙率は約5%であった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は2.6Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.6であり、10,000回終了時の消色時のL*値は51.7であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は28.9と非常に大きく、実際に目視観察しても黄褐色の著しい劣化着色が見られた。
(実施例15)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
以下のようにして、図4に示すようなエレクトロクロミック調光レンズを作製した。
<第1の電極層、エレクトロクロミック層の形成>
まず、直径65mmのレンズを準備し、25mm×45mmの領域及び引き出し部分にメタルマスクを介してITO膜をスパッタ法により100nmの厚みに成膜して、第1の電極層131を形成した。
次に、このITO膜の上に、実施例2と同様にして酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約55%、細孔径の平均値は約0.6μmであった。
<絶縁性多孔質層、微細な貫通孔が形成された第2の電極層の形成>
続いて、エレクトロクロミック層132上に平均一次粒径20nmのSiO2微粒子分散液(シリカ固形分濃度24.8質量%、ポリビニルアルコール1.2質量%、水74質量%)をスピンコートし、絶縁性多孔質層133を形成した。形成した絶縁性多孔質層133の膜厚は約2μmであった。更に、平均一次粒径450nmのSiO2微粒子分散液(シリカ固形分濃度1質量%、2−プロパノール99質量%)をスピンコートし、微細貫通孔形成用マスク(コロイダルマスク)を形成した。
続いて、微細貫通孔形成用マスク上にZnS−SiO2(8/2(質量比))の無機絶縁層をスパッタ法により40nmの厚みで形成した。更に、無機絶縁層上にスパッタ法により約100nmのITO膜を、第1の電極層131で形成したITO膜と重なる25mm×45mmの領域、及び、第1の電極層131とは異なる領域にメタルマスクを介して形成し、第2の電極層134を作製した。なお、第1の電極層131とは異なる領域に形成したITO膜は第2の電極層134の引き出し部分である。
この後、2−プロパノール中で超音波照射を3分間行い、コロイダルマスクである450nmのSiO2微粒子の除去処理を行った。SEM観察により250nm程度の微細な貫通孔が形成された第2の電極層134が形成されていることを確認した。第2の電極層134のシート抵抗は約100Ω/□であった。
<劣化防止層の形成>
続いて、第2の電極層134上に、劣化防止層135として、酸化アンチモン錫粒子分散液をスピンコート法により塗布した。そして、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、平均厚み1.0μmの酸化アンチモン錫粒子膜からなるナノ構造半導体材料を形成した。
<電解質の充填>
電解質として過塩素酸テトラブチルアンモニウム、溶媒としてジメチルスルホキシド及びポリエチレングリコール(重量平均分子量:200)を、12対54対60の質量比で混合し、電解液とした。そして、劣化防止層135まで形成した調光レンズを1分間浸漬し、その後120℃のホットプレート上で1分間乾燥させることで電解質を充填させた。
<保護層の形成>
更に、紫外線硬化接着剤(SD−17、DIC株式会社製)をスピンコートし、紫外光照射により硬化させることで保護層136を約3μmの平均厚みに形成した。これにより、図4に示すエレクトロクロミック調光レンズを得た。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック調光レンズに実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は2.0Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.4であり、10,000回終了時の消色時のL*値は77.2であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は4.2と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例16)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
実施例15において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成するのに用いるエレクトロクロミック組成物の調製において、ポリビニルアルコール微粒子(平均粒径0.7μm)を30質量部用いること以外は実施例15と同様にしてエレクトロクロミック調光レンズを作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約60%、細孔径の平均値は約0.6μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック調光レンズに、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は2.0Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.9であり、10,000回終了時の消色時のL*値は77.8であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は3.1と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例17)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
実施例16において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成するのに用いるエレクトロクロミック組成物の調製において、ポリビニルアルコール微粒子(平均粒径0.7μm)を40質量部用いること以外は実施例16同様にしてエレクトロクロミック調光レンズを作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約70%、細孔径の平均値は約0.6μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック調光レンズに、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.9Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.0であり、10,000回終了時の消色時のL*値は78.0であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は3.0と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例18)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
実施例17において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成するのに用いるエレクトロクロミック組成物の調製において、ポリビニルアルコール微粒子(平均粒径0.7μm)を50質量部用いること以外は実施例17と同様にしてエレクトロクロミック調光レンズを作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約80%、細孔径の平均値は約0.6μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック調光レンズに、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.85Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.4であり、10,000回終了時の消色時のL*値は78.4であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は3.0と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例19)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
実施例16において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.6μmのものを用いたこと以外は、実施例16と同様にしてエレクトロクロミック調光レンズを作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約60%、細孔径の平均値は約0.5μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック調光レンズに、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.4Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.5であり、10,000回終了時の消色時のL*値は80.7であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は0.8と非常に小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例20)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
実施例17において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.6μmのものを用いたこと以外は、実施例17と同様にしてエレクトロクロミック調光レンズを作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約70%、細孔径の平均値は約0.5μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック調光レンズに、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.3Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.3であり、10,000回終了時の消色時のL*値は80.6であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は0.7と非常に小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例21)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
実施例18において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.6μmのものを用いたこと以外は、実施例18と同様にしてエレクトロクロミック調光レンズを作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約80%、細孔径の平均値は約0.5μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック調光レンズに、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.3Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.2であり、10,000回終了時の消色時のL*値は80.5であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は0.7と非常に小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例22)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
実施例19において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.3μmのものを用いたこと以外は、実施例19と同様にしてエレクトロクロミック調光レンズを作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約60%、細孔径の平均値は約0.2μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック調光レンズに、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.3Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.6であり、10,000回終了時の消色時のL*値は80.9であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は0.7と非常に小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例23)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
実施例20において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.3μmのものを用いたこと以外は、実施例20同様にしてエレクトロクロミック調光レンズを作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約70%、細孔径の平均値は約0.2μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック調光レンズに、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.2Vであった。開始直後の消色時のL*値は80.8であり、10,000回終了時の消色時のL*値は80.2であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は0.6と非常に小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例24)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
実施例21において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.3μmのものを用いたこと以外は、実施例21と同様にしてエレクトロクロミック調光レンズを作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約80%、細孔径の平均値は約0.2μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック調光レンズに、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.2Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.1であり、10,000回終了時の消色時のL*値は80.5であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は0.6と非常に小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例25)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
実施例15において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.6μmのものを用いたこと以外は、実施例15と同様にしてエレクトロクロミック調光レンズを作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約55%、細孔径の平均値は約0.5μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック調光レンズに、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は2.0Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.2であり、10,000回終了時の消色時のL*値は78.4であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は2.8と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例26)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
実施例15において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層を形成する際に、ポリビニルアルコール微粒子として平均粒径0.3μmのものを用いたこと以外は、実施例15と同様にしてエレクトロクロミック調光レンズを作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約55%、細孔径の平均値は約0.2μmであった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック調光レンズに、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.9Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.0であり、10,000回終了時の消色時のL*値は78.9であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は2.1と小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(実施例27)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
実施例24において、第2の電極上に劣化防止層を形成せずに、還元反応により発色するエレクトロクロミック層を以下のようにして形成した以外は、実施例24と同様にして、エレクトロクロミック調光レンズを作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙率は約80%、細孔径の平均値は約0.2μmであった。
−還元反応により発色するエレクトロクロミック層の形成−
第2の電極上に、酸化チタンナノ粒子分散液としてSP210(昭和タイタニウム株式会社製)をスピンコート法により塗布し、120℃、15分間のアニール処理を行うことによって、酸化チタン粒子膜(平均厚み1.1μm)を形成した。前記酸化チタン粒子膜上に、エレクトロクロミック化合物である、「4,4’−(isooxazole−3,5−diyl)bis(1−(2−phosphonoethyl)pyridinium)bromide」を2質量%含む2,2,3,3−テトラフロロプロパノール(以下、「TFP」という)溶液をスピンコートし、120℃で10分間のアニール処理により、還元反応により発色するエレクトロクロミック層を形成した。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック調光レンズに、実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色の繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は1.2Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.3であり、10,000回終了時の消色時のL*値は80.6であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は0.7と非常に小さく、実際に目視観察しても劣化着色はほとんど見られなかった。
(比較例2)
<エレクトロクロミック調光レンズの作製>
実施例15において、酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の形成を、比較例1と同様に行なう以外は実施例15と同様にして、エレクトロクロミック調光レンズを作製した。このとき上記酸化反応により発色するエレクトロクロミック層の空隙はほとんど観察されなかった。また計算により求められた空隙率は約5%であった。
<評価>
−繰り返し駆動による劣化着色−
作製したエレクトロクロミック表示素子に実施例1と同じ駆動条件で電流を印加して10,000回の発消色繰り返し駆動を実施した。発色時の電圧は2.9Vであった。開始直後の消色時のL*値は81.1であり、10,000回終了時の消色時のL*値は53.3であり、両者の差(劣化着色程度の指標)は27.8と非常に大きく、実際に目視観察しても黄褐色の著しい劣化着色が見られた。
1 表示基板
2 対向基板
3 表示電極
4 対向電極
5 電解質層
6 エレクトロクロミック層(第1のエレクトロクロミック層)
7 劣化防止層
8 白色反射層
9 第2のエレクトロクロミック層
20 エレクトロクロミック表示素子
21 エレクトロクロミック表示素子
100 情報機器(電子書籍リーダ)
101 表示装置
102 制御装置(メインコントローラ)
103 ROM(第2の記憶手段)
104 RAM(第3の記憶手段)
105 フラッシュメモリ(第4の記憶手段)
106 キャラクタジェネレータ
107 インターフェース
110 エレクトロクロミック調光レンズ
111 タッチパネル付きの表示パネル
112 タッチパネルドライバ
113 表示コントローラ
114 VRAM(第1の記憶手段)
120 レンズ
130 薄膜調光機能部
131 第1の電極層
132 エレクトロクロミック層
133 絶縁性多孔質層
134 第2の電極層
135 劣化防止層
136 保護層
150 エレクトロクロミック調光眼鏡
151 エレクトロクロミック調光レンズ
152 眼鏡フレーム
153 スイッチ
154 電源
特開2003−121883号公報 特開2006−106669号公報 特開2010−33016号公報 特開2012−137736号公報 特開2015−14743号公報

Claims (14)

  1. 二つの電極と、この電極間に配置されたエレクトロクロミック層と、前記二つの電極間に存在する電解質層とを有するエレクトロクロミック表示素子であって、前記エレクトロクロミック層として、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体であるエレクトロクロミック層を有するエレクトロクロミック表示素子。
  2. 表示基板と、前記表示基板上に設けられた表示電極と、前記表示電極に接するように設けられたエレクトロクロミック層と、前記表示基板に対向して設けられた対向基板と、前記対向基板の表示基板と対向する側に設けられた対向電極と、前記対向電極に接するように設けられた劣化防止層と、前記表示電極と前記対向電極との間に設けられた電解質層と、を有し、前記エレクトロクロミック層が、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる孔質構造体であるエレクトロクロミック表示素子。
  3. 前記エレクトロクロミック層と前記劣化防止層との間に白色反射層を有する請求項2に記載のエレクトロクロミック表示素子。
  4. 前記エレクトロクロミック層が、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物を含むエレクトロクロミック組成物を重合した重合物を含む請求項2または3に記載のエレクトロクロミック表示素子。
  5. 表示基板と、前記表示基板上に設けられた表示電極と、前記表示電極に接するように設けられた第1のエレクトロクロミック層と、前記表示基板に対向して設けられた対向基板と、前記対向基板の表示基板と対向する側に設けられた対向電極と、前記対向電極に接するように設けられた第2のエレクトロクロミック層と、前記表示電極と前記対向電極との間に設けられた電解質層と、を有し、前記第1のエレクトロクロミック層が、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体であり、前記第2のエレクトロクロミック層が、還元反応により発色するエレクトロクロミック化合物を含むエレクトロクロミック表示素子。
  6. 前記第1のエレクトロクロミック層が、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物を含むエレクトロクロミック組成物を重合した重合物を含む請求項5に記載のエレクトロクロミック表示素子。
  7. 前記酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体の空隙率が60%〜80%であり、かつ細孔径の平均値が0.5μm以下である請求項1から6のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示素子。
  8. 請求項2乃至4、及び7のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示素子の製造方法であって、表示基板上に表示電極を形成する工程と、前記表示電極上に酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなるエレクトロクロミック層を形成する工程と、対向基板の表示基板と対向する側に対向電極を形成する工程と、前記対向電極上に劣化防止層を形成する工程と、前記表示電極と前記対向電極とを電解質層を介して貼合せる工程とを含み、前記エレクトロクロミック層を形成する工程が、水溶性ポリマー粒子を含有するエレクトロクロミック組成物を表示電極上に塗布し、重合させた後に前記水溶性ポリマー粒子を除去することにより多孔質構造体を形成する工程を含むエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
  9. 請求項5乃至7のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示素子の製造方法であって、表示基板上に表示電極を形成する工程と、前記表示電極上に酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる第1のエレクトロクロミック層を形成する工程と、対向基板の表示基板と対向する側に対向電極を形成する工程と、前記対向電極上に還元反応により発色するエレクトロクロミック化合物を含む第2のエレクトロクロミック層を形成する工程と、前記表示電極と前記対向電極とを電解質層を介して貼合せる工程とを含み、前記第1のエレクトロクロミック層を形成する工程が、水溶性ポリマー粒子を含有するエレクトロクロミック組成物を表示電極上に塗布し、重合させた後に前記水溶性ポリマー粒子を除去することにより多孔質構造体を形成する工程を含むエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
  10. 請求項1から7のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示素子と、表示データを格納するVRAMと、前記表示データに基づいて前記エレクトロクロミック表示素子を制御する表示コントローラと、を備える表示装置。
  11. 請求項10に記載の表示装置と、前記表示装置に表示する情報を制御する制御装置と、を備える情報機器。
  12. レンズと、前記レンズ上に積層された薄膜調光機能部と、を有し、
    前記薄膜調光機能部が、前記レンズ上に積層された第1の電極層と、前記第1の電極層上に積層された第1の電気活性層と、前記第1の電気活性層上に積層された絶縁性多孔質層と、前記絶縁性多孔質層上に積層された多孔質である第2の電極層と、前記第2の電極層と接して前記第2の電極層の上側と下側のいずれか一方又は双方に形成された第2の電気活性層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に充填され、かつ、前記第1の電気活性層及び前記第2の電気活性層と接するように設けられた電解質と、を有し、
    前記第1の電気活性層と前記第2の電気活性層の一方が、酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体のエレクトロクロミック層であり、他方が劣化防止層又は還元反応により発色するエレクトロクロミック層であるエレクトロクロミック調光レンズ。
  13. 前記酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体のエレクトロクロミック層が、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物を含むエレクトロクロミック組成物を重合した重合物を含む請求項12に記載のエレクトロクロミック調光レンズ。
  14. 前記酸化反応により発色するエレクトロクロミック化合物からなる多孔質構造体の空隙率が60%〜80%であり、かつ細孔径の平均値が0.5μm以下である請求項12または13に記載のエレクトロクロミック調光レンズ。
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