JP2017108634A - ノンフライ乾燥野菜とその製造方法及びこれを含む乾燥食品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 焦げ付きや褐変の問題が起こらない食感に優れたノンフライの乾燥野菜の製造方法、ならびに当該ノンフライ乾燥野菜を含有する乾燥食品を提供すること。
【解決手段】 厚さ3mm以下にスライスした野菜を、糖の溶液に浸漬し、
次いで、浸漬後の前記野菜に対し、
温度条件が10℃以上〜90℃未満であって、
野菜の水分が10質量%以上〜30質量%以下の範囲となるように調整する一次乾燥工程と、
温度条件が90℃以上〜180℃以下であって、
野菜の水分が10質量%未満となるように調整する二次乾燥工程と、
からなる温度条件の異なる二段階の送風乾燥処理を施すことを特徴とする、
ノンフライ乾燥野菜の製造方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、スライスした野菜を糖の溶液に浸漬した後、温度条件の異なる二段階の加熱乾燥を行って得られる品質の改善されたノンフライ乾燥野菜の製造方法、及び前記製造方法により得られる品質が改善されたノンフライ乾燥野菜を含む乾燥食品に関するものである。
一般に、果実類や野菜類をスライスし、熱風乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、バキュームフライなどの乾燥処理を行い、乾燥食品を製造することは広く知られている。
このようにして製造される乾燥食品は、食感が硬すぎることや、工程中の過度の加熱による焦げ付きや褐変などが課題として指摘されており、比較的低温、例えば100℃以下での乾燥条件などを採用することにより、褐変の問題を回避してきた。しかしながら、緩やかな乾燥は、果実や野菜類の組織をより密にし、その食感を著しく硬化させてしまう問題点は依然として残っており、これら問題点を解決するために、種々の技術が開示されている。
特許第3817602号明細書(特許文献1参照)には、根菜類を5mm以下、好ましくは0.2〜2mmの範囲においてスライスした野菜片を、pHが7.5〜10のアルカリ条件に調整された20〜60質量%の糖質溶液へ浸漬し、これを70〜120℃の範囲において、熱風乾燥することにより食感(軽快なサクサク感)に優れたノンフライ乾燥食品を提供されることが記載されている。
しかしながら、本先行技術文献においては、上記温度帯(70〜120℃)で、重曹を用いない場合、食感が硬くなることが記載されている。また、重曹を用いた場合であっても、120℃以上の温度である場合には、やはり食感が硬くなることや、焦げつきが起こること、意図しない褐変が起こる事が課題として記載されている。
また、重曹のかわりにビタミンCを用いることで、同様の条件下で、褐変の抑制された優れた乾燥野菜が得られることも、記載されている。
上記条件を用いてさらに、糖質溶液の糖質の種類を、焦げ付きや褐変の生じにくい非還元糖である、トレハロースに限定して、目標とする品質を達成し得ている。
特開2000−210042号公報(特許文献2参照)には、良好な多孔質乾燥食品の製造のために、炭酸水素ナトリウムなどの膨張剤と糖類を必要とし、糖類は、乳糖やトレハロースなどの反応性の低い糖を選択することが良いことが記載されている。さらには、酸化防止剤としてビタミンEや、凝集防止剤として油脂が必要であることも開示されている。以上、食感の改善のためには膨張剤の発生するガスの効果が必須であること、また、焦げ付きや褐変、乾燥時の物品同士の付着防止のためには、ビタミンEや油脂が必要であることが示されている。
また、従来の熱風乾燥法により得られる乾燥野菜は、糖類を加えることにより、乾燥工程中に組織が縮んで密となること、また、スナック菓子として利用するには、食感が硬いことが課題として記載されている。
特開平7−250615号公報(特許文献3参照)には、乾燥原料を浸漬する糖液として、ショ糖ステアリン酸エステルの水溶液を利用した乾燥野菜の製造方法が開示されている。この方法は、重曹のような添加材を必要としないが、糖質の種類の選択が制限されるという課題があった。
これら列挙した先行技術においては、焦げ付きや褐変などの問題を回避しつつ、食感を改善する方法として一定の効果が認められ、湯戻しして使用する事が前提となるスープなどの具材としてなどの特定の用途には、十分な品質であるものの、そのまま乾燥食品を食するような商品形態への利用のための品質としては、未だ食感が悪く、問題の改善が十分とはいえない状況であった。
これらは、依然として低温での長時間での乾燥条件を採用していること、重曹などのアルカリ処理により組織の軟化が生じて乾燥時間が遅延すること等、に起因していると推測され、現在まで、これらの課題を効果的に解決する方法は見出されていない。
特に、米飯を調味するためのふりかけ用の素材などとしては、より食感のよい乾燥食品が望まれている。
特許第3817602号明細書 特開2000−210042号公報 特開平7−250615号公報
本発明は、上記の現状に鑑み、焦げ付きや褐変の問題が起こらない食感に優れたノンフライの乾燥野菜の製造方法、ならびに前記製造方法により得られるノンフライ乾燥野菜を含有する乾燥食品を提供することを目的とするものである。
そこで、上記課題を解決すべく、本願発明者らは鋭意研究を重ねた結果、従来、焦げ付きや褐変の問題が起こりやすいとされていた高温条件、たとえば130℃以上の条件においても、原料素材の厚みを3mm以下とすること、さらには乾燥処理を温度条件の異なる二段階の工程に分けて実施することで、重曹等のアルカリ剤や、ビタミンC、ビタミンE等の酸化防止剤や、組織を軟化させる膨張剤、および原料の乾燥中の結着を抑制する油脂等の添加物を添加することなく、かつ、原料を浸漬させる糖の選択性が広く、乾燥物の焦げ付きや褐変、結着の問題が生じにくく、乾燥物の硬化のない、従来よりも食感や色調に優れた乾燥野菜の製造方法を見出し、この知見に基いて本発明に至ったものである。
すなわち、本発明は、以下の(1)から(13)に関する。
(1)厚さ3mm以下にスライスした野菜を、糖の溶液に浸漬し、
次いで、浸漬後の前記野菜に対し、
10℃以上〜180℃以下の範囲において、
温度条件の異なる二段階の送風乾燥処理を施すことを特徴とする、
ノンフライ乾燥野菜の製造方法。
(2)前記二段階の送風乾燥処理が、
温度条件が10℃以上〜90℃未満であって、
野菜の水分が10質量%以上〜30質量%以下の範囲となるように調整する一次乾燥工程と、
温度条件が90℃以上〜180℃以下であって、
野菜の水分が10質量%未満となるように調整する二次乾燥工程と、
からなることを特徴とする、
前記(1)に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
(3)前記野菜が、根菜及び/あるいは果菜であることを特徴とする、
前記(1)または(2)に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
(4)前記糖が、単糖、二糖及び三糖からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする、
前記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
(5)前記二次乾燥工程の温度条件が、90℃以上〜150℃未満の範囲であり、且つ、
前記糖が、グルコース、フルクトース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、セロビオース及びマルトトリオースからなる還元糖の群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、
前記(2)乃至(4)のいずれか1項に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
(6)前記二次乾燥工程の温度条件が、120℃以上〜180℃以下の範囲であり、且つ、
前記糖が、非還元糖であることを特徴とする、
前記(2)乃至(4)のいずれか1項に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
(7)前記非還元糖が、
スクロース、トレハロース、スクラロース、マルチトール、ラクチトール、ラフィノース、トレハロサミン、セロビオン酸及びラクトビオン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、
前記(6)に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
(8)前記ノンフライ乾燥野菜が、
食感、色調が改善されたノンフライ乾燥野菜であることを特徴とする、
前記(1)乃至(7)のいずれか1項に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
(9)前記食感、色調が改善されたノンフライ乾燥野菜が、
ユニバーサルデザインフード製品試験法に準じた方法によって測定して得られる歪率あたりの荷重(荷重(N)/歪率(%))が20以上〜30以下の範囲であって、且つ、
クリープメーターを用いて測定した破断強度が1N以上〜5N以下の範囲であることを特徴とする、
前記(8)に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
(10)ノンフライ乾燥野菜であって、
ユニバーサルデザインフード製品試験法に準じた方法によって測定して得られる歪率あたりの荷重(荷重(N)/歪率(%))が20以上〜30以下の範囲であって、
クリープメーターを用いて測定した破断強度が1N以上〜5N以下の範囲であって、且つ、
褐変が少なく、原料本来の自然な色調を有していることを特徴とする、
食感、色調が改善されたノンフライ乾燥野菜。
(11)前記(10)に記載のノンフライ乾燥野菜を含有することを特徴とする、
食感、色調が改善された乾燥食品。
(12)前記乾燥食品が、
米飯用のふりかけ、おむすびの素、混ぜご飯の素、炊き込みご飯の素、パスタ用のふりかけ、又はサラダ用のふりかけであることを特徴とする、
前記(11)に記載の食感、色調が改善された乾燥食品。
(13)前記乾燥食品が、
ユニバーサルデザインフード製品試験法に準じた方法によって得られる歪率あたりの荷重(荷重(N)/歪率(%))が、20以上〜30以下の範囲であって、且つ、
褐変が少なく、原料本来の自然な色調を有していることを特徴とする、
前記(11)または(12)に記載の食感、色調が改善された乾燥食品。
本発明によれば、糖以外の添加物を必要とせず、焦げ付きや褐変の問題が低減され、食感が改善された、特定の温度範囲および特定の乾燥条件によるノンフライ乾燥野菜の製造方法、前記製造方法により得られる品質が改善されたノンフライ乾燥野菜、およびこれを含有する食感が改善された乾燥食品が得られる。
本発明に係るノンフライ乾燥野菜の製造方法は、厚さ3mm以下にスライスした野菜を、糖の溶液に浸漬し、次いで、浸漬後の前記野菜に対し、10℃以上〜180℃以下の範囲において、温度条件の異なる二段階の乾燥処理を施すことを特徴とするものである。
本発明について、以下詳細に説明する。
本発明に係るノンフライ乾燥野菜の製造方法は、原料とする野菜をスライスする〔スライス工程〕、スライスした野菜を予め糖を溶解させた溶液中に浸漬する〔浸漬工程〕、及び、浸漬後に十分水切りを行った野菜に対し、温度条件の異なる二段階の送風乾燥処理を施す〔乾燥工程〕を含む。
〔スライス工程〕
本発明において原料として採用される「野菜」は、サツマイモ、ジャガイモ、ニンジン、ダイコン、ゴボウ、ショウガ、ヤマイモ、レンコン、ワサビ、サトイモ、タマネギ、カブ等の根菜、もしくは、カボチャ、パプリカ、ピーマン、トマト、ナス、キュウリ、トウガラシ、ズッキーニ、ニガウリ、トウガン、オクラ等の果菜を用いる事が好ましく、特に、組織が硬く密であったり、原料本来の色調の変化が著しく、通常の乾燥方法では乾燥し難かったり、食感や色調を損ない易いという理由から、サツマイモ、ニンジン、カボチャ、パプリカを採用することがより好ましい。
前記野菜は、1種のみ用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
前記野菜は、生のものを用いてもよいし、冷凍状態のものやその解凍物、下茹でしたものであっても用いることができる。また、予め水で洗浄して用いてもよい。
さらに、前記野菜は、厚さが3mm以下のスライスとされていることが必要であり、0.2mm以上〜2mm以下の範囲であることがさらに好ましい。スライス厚が3.0mmを超える場合には、さくっとした食感が得られないので好ましくない。
また、前記野菜は、スライス面が繊維方向に対して平行となるようにスライスされていることが好ましく、具体的には、サツマイモであれば縦方向へ、ジャガイモであれば横方向へ、ニンジンであれば横方向へ、パプリカであれば縦方向へ、それぞれスライスされていることが好ましい。
ここで、前記野菜をスライスする手段としては、前記した範囲の厚さにスライスできるものであれば特に限定されない。
このようにしてスライスされた野菜片は、そのままの形状で次の浸漬工程に用いても良いし、さらに細断したものや、割れたものを用いても良い。
本工程において得られる野菜片の大きさは特に限定されないが、一辺の大きさが2mm以上〜30mm以下とするのが好ましく、5mm以上〜20mm以下とするのがより好ましい。
〔浸漬工程〕
浸漬工程においては、糖の溶液を用いて原料野菜を浸漬することが必須要件である。
本発明において採用する「糖」は、特にその種類を限定されず、糖アルコールや糖酸などを用いることもできる。
本工程においては、原料野菜内の水分と糖溶液が十分に置換されることが必要であるため、比較的分子量が小さく、水への溶解度が高い糖を選択することが好ましく、具体的には、三糖以下のオリゴ糖ないし単糖を選択することが好ましい。
以上の要件および入手容易性、経済的な側面も鑑みて、本発明の糖としては、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、スクラロース、マルチトール、ラクチトール、ラフィノース、トレハロサミン、セロビオン酸、ラクトビオン酸、アラビノース、キシロース、ガラクトース、マンノース、セロビオース、マルトトリオース等を用いることがさらに好ましい。
なお、これらの糖は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
また、本発明の糖は、次の乾燥工程のうち、前記野菜の水分を10質量%未満にまで調整する二次乾燥工程における温度条件も考慮して選択する事が好ましい。
たとえば、前記二次乾燥工程の温度条件が90℃以上〜150℃未満の範囲である場合においては、糖の種類は特に限定されないが、前記二次乾燥工程の温度条件が150℃以上〜180℃以下の範囲である場合においては、褐変などの着色性や、焦げに伴う苦味の観点から、還元糖以外の糖を選択することが好ましい。還元糖は、150℃以上で処理することにより、褐変や焦げによる風味変化などが生じるためである。
ここで「還元糖」とは、分子の末端に還元基であるアルデヒド基またはケト基を有するために還元性を示す糖であり、例えばグルコース、フルクトース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、セロビオース、マルトトリオースなどが挙げられる。
上記において「還元糖以外の糖」としては、例えば非還元糖が挙げられる。
「非還元糖」とは、分子の末端に還元基であるアルデヒド基またはケト基を有さないために還元性を示さない糖であり、例えばスクロース、トレハロース、スクラロース、マルチトール、ラクチトール、ラフィノース、トレハロサミン、セロビオン酸、ラクトビオン酸などが挙げられる。
なお、非還元糖は反応性が低く、高温での乾燥処理にも耐えうるため、乾燥工程での温度条件にかかわらず選択することができる。しかし、後述するように、非還元糖を用いる場合は、高温で短時間処理した方がより好ましい食感の乾燥野菜が得られることから、前記二次乾燥工程における温度条件を120℃以上〜180℃以下の範囲とする事が好ましい。
本工程において、前記糖は水に溶解して水溶液とし、これに前記原料野菜を浸漬する。
ここで、溶液中の糖濃度は、糖の溶解度や浸漬温度により適宜選択すれば良いが、5〜40質量%の範囲であることが好ましく、特に20質量%程度であることが好ましい。
また、浸漬条件は、温度が60℃以上〜98℃以下、時間は3分間以上〜30分間以下の範囲とする事が好ましく、90℃程度、5分間以上〜10分間以下とすることがより好ましい。
〔乾燥工程〕
乾燥工程においては、10℃以上〜180℃以下の範囲において、温度条件の異なる二段階の送風乾燥処理を組み合わせて行うことが必須である。
つまり、本発明の乾燥工程は、浸漬後に十分水切りを行った原料野菜に対し、比較的低温で送風乾燥処理を行うことで、野菜の水分が10質量%以上〜30質量%以下の範囲になるように調整する〔一次乾燥工程〕と;前記一次乾燥工程後の原料野菜に対し、比較的高温で送風乾燥処理を行うことで、野菜の水分が10質量%未満の範囲になるように調整する〔二次乾燥工程〕と;からなる。
前記〔一次乾燥工程〕においては、温度条件が10℃以上〜90℃未満であることが好ましく、50℃以上〜70℃以下程度であることがより好ましい。
本工程における温度条件が10℃未満である場合には、長時間送風を続けても原料野菜の水分が10質量%以上〜30質量%以下まで低下しないため、好ましくない。一方、本工程における温度条件が90℃以上である場合には、加熱による褐変や風味の変化が生じ、ぱりっとした食感が得られないため、好ましくない。
本工程の処理時間は、原料野菜の水分が10質量%以上〜30質量%以下の範囲になるまでとすればよく、特に限定されないが、例えば10分間以上〜36時間以下程度とすることができる。
前記〔二次乾燥工程〕においては、温度条件が90℃以上〜180℃以下であることが好ましく、130℃程度であることがより好ましい。
本工程における温度条件が90℃未満である場合には、ぱりっとした食感及びさくっとした食感が得られず、風味の点でも満足いく品質が得られないため、好ましくない。一方、本工程における温度条件が180℃を超える場合には、加熱による褐変や風味の変化が生じ、食感の点でも満足いく品質が得られないため、好ましくない。
本工程の処理時間は、原料野菜の水分が10質量%未満になるまでとすればよく、温度条件に応じて適宜設定することができる。
なお、〔二次乾燥工程〕における温度条件は、前記〔浸漬工程〕で用いる糖の種類に応じて選択することもできる。
すなわち、糖として還元糖を選択する場合には、褐変などの着色性や、焦げに伴う苦味の観点から、本工程の温度を90℃以上〜150℃未満の範囲とする事が好ましい。
一方、糖として前記した非還元糖を選択する場合には、高温で短時間処理した方がより好ましい食感となることから、本工程の温度を120℃以上〜180℃以下の範囲とする事が好ましく、150℃以上〜180℃以下の範囲とする事がより好ましい。
本発明においては、以上の方法でノンフライ乾燥野菜を製造することによって、通常の送風乾燥では、硬くなりすぎたり、湯戻りも遅かったり、色調が著しく変化するという課題や、添加物を必要とする課題や、凍結乾燥では製造コストが著しく高いという課題、および真空乾燥では油が必要であったり、色調が著しく変化するという種々の課題を伴うことなく、食感、特に咀嚼時の「ぱりっとした」食感や「さくっとした」食感、及び原料本来の自然な色調を有したままの、品質が大幅に向上されたノンフライ乾燥野菜を提供することができる。
尚、本発明において「ぱりっとした」食感は、前歯による噛み砕き様態に相当するクリープメーターによる破断強度を指標として、従来公知の方法により客観的に評価することができる。
すなわち、本発明のノンフライ乾燥野菜が上記の「ぱりっとした」食感を有していることは、クリープメーターを用いて測定した破断強度(楔型のプランジャーで押し切る時の荷重)が1N以上〜5N以下の範囲であることにより評価することができる。
一方、本発明における「さくっとした」食感は、主に奥歯による噛み砕き様態に起因する食感であって、クリープメーターでの評価は妥当でなく、また適切な他の評価方法も知られていなかった。
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ね、ユニバーサルデザインフード製品試験法(かたさ)を基礎として、この様態に相当する乾燥食品の食感の測定に適した方法を新たに開発したので、本発明のノンフライ乾燥野菜が上記の「さくっとした」食感を有していることは、当該方法により評価を行った。
具体的には、従来のユニバーサルデザイン製品試験法(かたさ)は、測定機器として、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な装置を用い、試料を直径40mmの容器に高さ15mmとなるように充填し、直径20mmの平型プランジャーで、圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mm、20℃±2℃の条件下で測定するものである。これは基本的には「やわらかい水分を含む食べ物を想定した試験」であって、乾燥食品を対象としていないが、奥歯による噛み砕き様態を客観的に反映できる測定方法として応用できることが想定されたことから、次の3点、
(1)砕いた乾燥サンプルを測定するものとしたこと、
(2)本来のユニバーサルデザイン製品試験法は2度連続で測定するが、乾燥サンプルであるため1度の測定としたこと、
(3)結果の解析は、奥歯で噛む事を想定した時間当たりの歪率(%)あたりの荷重(N)の値として評価すること、
を改変点として上記試験法を改変し、本発明の「さくっとした」食感の客観的評価に用いることとした。
尚、本改変法と官能評価による奥歯による噛み砕き様態の評価結果に相関があることは、予備試験により確認済みである。
すなわち、本発明における「ユニバーサルデザイン製品試験法の改変法」とは、
測定機器として、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な装置を用い、
前記ノンフライ乾燥野菜を直径約10mm以下の大きさに砕き、
直径40mmの容器に高さ15mmとなるように充填し、
直径20mmの平型プランジャーで圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mm、20℃±2℃の条件下で押しつぶすときの「歪率(%)あたりの荷重(N)(単位:荷重(N)/歪率(%))」を測定する方法である。
本発明のノンフライ乾燥野菜が上記の「さくっとした」食感を有していることは、上記のユニバーサルデザイン製品試験法の改変法を用いて測定した「歪率(%)あたりの荷重(N)(単位:荷重(N)/歪率(%))」の値が20以上〜30以下の範囲であることにより評価することができる。
尚、本発明において「原料本来の自然な色調を有している」とは、加熱による褐変の度合いが少ないことを指し、黄色味を表すb値の乾燥処理前後の差を指標として、従来公知の方法により客観的に評価することができる。
すなわち、本発明のノンフライ乾燥野菜が「原料本来の自然な色調を有している」ことは、乾燥処理前後のb値の差が10以内であることにより評価することができる。
ここで、「乾燥処理前後のb値の差」は、乾燥処理前のb値から乾燥処理後のb値を差し引くことにより求めることができる。
これらの方法により評価し比較した結果、他の従来の乾燥方法に対して、本発明によるノンフライ乾燥野菜が、「ぱりっとした」食感及び「さくっとした」食感について優れており、かつ、原料本来の自然な色調を有していることが客観的にも示された。
さらに、上記食感及び色調が改善されたノンフライ乾燥野菜を含有させることで、食感及び色調が大幅に改善された前記ノンフライ乾燥野菜を含有する乾燥食品を提供することができる。
本発明のノンフライ乾燥野菜を含有する乾燥食品としては、特に種類は限定されないが、たとえば、米飯用のふりかけ、おむすびの素、混ぜご飯の素、炊き込みご飯の素、パスタ用のふりかけ、サラダ用のふりかけなどの、湯戻しせずそのまま食する形態の乾燥食品が好適である。
上記の乾燥食品は、本発明の食感、色調が改善されたノンフライ乾燥野菜を含んでいることから、本発明のノンフライ乾燥野菜と同様に優れた食感と原料本来の自然な色調を有している。
上記の乾燥食品が持つ優れた食感のうち、「さくっとした」食感については、本発明のノンフライ乾燥野菜と同様に、上記のユニバーサルデザイン製品試験法の改変法を用いて測定した「歪率(%)あたりの荷重(N)(単位:荷重(N)/歪率(%))」の値が20以上〜30以下の範囲であることにより、客観的に評価することができる。
しかし、「ぱりっとした」食感については、乾燥食品全体においては、乾燥野菜を含む素材全体が細かな素材が混合されたものとなるため、上記のクリープメーターを用いた測定は不可能である。
以下に、本発明を実施例等により説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
[評価試験1]『好ましい一次乾燥処理条件の範囲の検証』
この評価試験1は、糖の加熱褐色により色調が著しく変化するなどの種々の課題を伴うことなく、食感、特に咀嚼時に「ぱりっとした」り「さくっとした」食感や、原料本来の自然な色調を有したままの、品質が大幅に改善されたノンフライ乾燥野菜を提供するための、温度条件の異なる二段階の送風乾燥処理の内、一段階目の送風乾燥処理条件の範囲の検証を目的として行った。
ここでは、原料に生のサツマイモを選択し、これを0.7mmの厚さにスライス(輪切り)したものを用いた。さらに、前記スライスしたサツマイモ片の糖浸漬条件としては、20質量%のショ糖水溶液を用い、90℃で10分間処理したものを用いた。これを表1のように一次乾燥処理工程の温度条件を変えて、乾燥野菜を調製した。
一次乾燥工程の処理時間は、原料の水分が10質量%以上〜30質量%以下になるまでとした。
尚、二次乾燥工程の温度条件は、130℃に固定した。二次乾燥工程の処理時間は、原料の水分が10質量%未満になるまでとした。
乾燥野菜の官能評価は、N=5名にて実施した。なお、各評価項目は、次の基準により判断・評価した。結果を表1に示す。
「外観」
◎:原料本来の自然な色調である
○:加熱に伴う褐変による色調の変化はやや認められるものの、原料本来の自然な色調と対比して違和感はない
△:加熱に伴う褐変による色調の変化が認められ、原料本来の自然な色調がやや失われている
×:加熱に伴う著しい焦げ付きが認められ、原料本来の自然な色調が失われている
「ぱりっとした食感」
◎:適度な歯応えがあって好適である
○:歯応えがあって好適である
△:やや硬く、食するには抵抗がある
×:硬すぎて食することが困難である
「さくっとした食感」
◎:咀嚼時に適度な崩壊性の持続があり好適である
○:咀嚼時の崩壊性に違和感がなく好適である
△:咀嚼時の崩壊性が速く、ややもろく感じられる
×:咀嚼時の崩壊性が著しく、もろすぎる
「風味」
◎:原料本来の自然で豊かな風味が感じられる
○:加熱に伴う風味の変化を感じるが、原料本来の自然な風味は十分に感じられる
△:加熱に伴う焦げた風味を強く感じ、原料本来の自然な風味がやや失われている
×:加熱に伴う焦げた風味が強すぎて、原料本来の自然な風味を感じられない
Figure 2017108634
表1に示す通り、一次乾燥工程の温度条件が5℃では、乾燥時間を長くしても水分が10〜30質量%まで低下せず、二次乾燥工程は行えなかった。
また、一次乾燥工程の温度条件が100℃では、やや褐変が生じるとともに、硬くもろい食感となった。風味も焦げ感を有し、原料本来の自然な風味を感じられないものとなった。
一次乾燥工程の温度条件が10℃〜90℃未満の範囲である場合は、外観、食感および風味の優れた乾燥野菜が調製できた。特に、50〜70℃において、より好ましい品質の乾燥野菜が調製できた。
[評価試験2]『好ましい二次乾燥処理条件の範囲の検証』
この評価試験2は、糖の加熱褐色により色調が著しく変化するなどの種々の課題を伴うことなく、食感、特に咀嚼時に「ぱりっとした」り「さくっとした」食感や、原料本来の自然な色調を有したままの、品質が大幅に改善されたノンフライ乾燥野菜を提供するための、温度条件の異なる二段階の送風乾燥処理の内、二段階目の送風乾燥処理条件の範囲の検証を目的として行った。
ここでは、評価試験1の結果から、一次乾燥工程の処理条件を70℃、30分間とし、それ以外の条件は評価試験1と同様とした。これを表2のように二次乾燥工程の温度条件を変えて、乾燥野菜を調製した。尚、二次乾燥工程の処理時間は、原料の水分が10質量%未満になるまでとした。
乾燥野菜の官能評価は、評価試験1と同様に行った。結果を表2に示す。
Figure 2017108634
表2に示す通り、二次乾燥工程の温度条件が70℃では、食感や風味の点において、満足した品質が得られなかった。また、二次乾燥工程の温度条件が200℃では、著しい色調の褐変や焦げ風味が生じるとともに、硬くもろい食感となった。
二次乾燥工程の温度条件が90℃以上〜180℃以下の範囲である場合は、外観、食感および風味の優れた乾燥野菜が調製できた。特に、110℃以上〜150℃以下の範囲において、より好ましい品質の乾燥野菜が調製できた。
[評価試験3]『好ましい糖浸漬条件の範囲の検証』
この評価試験3は、糖の加熱褐色により色調が著しく変化するなどの種々の課題を伴うことなく、食感、特に咀嚼時に「ぱりっとした」り「さくっとした」食感や、原料本来の自然な色調を有したままの、品質が大幅に改善されたノンフライ乾燥野菜を提供するための、温度条件の異なる二段階の送風乾燥処理の前工程である、糖浸漬処理条件の範囲の検証を目的として行った。
ここでは、評価試験1の結果から、一次乾燥工程の処理条件を70℃、30分間とし、評価試験2の結果から、二次乾燥工程の処理条件を130℃、10分間とし、それ以外の条件は評価試験1と同様とした。これを表3のように糖浸漬工程の処理条件を変えて、乾燥野菜を調製した。
乾燥野菜の官能評価は、評価試験1と同様に行った。結果を表3に示す。
Figure 2017108634
表3に示す通り、糖浸漬工程の処理条件が50℃、30分間では、食感や風味の点において、満足した品質が得られなかった。
また、糖浸漬工程の処理条件が90℃、20分間では、許容範囲ではあるものの、色調がやや褐色を帯びる傾向が認められた。
以上から、糖浸漬工程の処理条件は、温度条件が60℃以上〜98℃(沸騰)以下の範囲であって、浸漬時間が30分間以内であり、より好ましくは、90℃で5〜10分間程度であることが分かった。
[評価試験4]『好ましい原料のスライス厚の条件の範囲の検証』
この評価試験4は、糖の加熱褐色により色調が著しく変化するなどの種々の課題を伴うことなく、食感、特に咀嚼時に「ぱりっとした」り「さくっとした」食感や、原料由来の自然な色調を有したままの、品質が大幅に改善されたノンフライ乾燥野菜を提供するための、原料のスライス厚の範囲の検証を目的として行った。
ここでは、評価試験1の結果から、一次乾燥工程の温度条件を70℃とし、評価試験2の結果から、二次乾燥工程の温度条件を130℃とした。尚、各処理時間は、一次乾燥工程では、野菜の水分が10質量%以上〜30質量%以下の範囲にまで達する時間、二次乾燥工程では、野菜の水分が10質量%未満にまで達する時間とした。
また、評価試験3の結果から、糖浸漬工程の処理条件を90℃、5分間とした。それ以外の条件は評価試験1と同様とした。これを表4のように原料のスライス厚を変えて、乾燥野菜を調製した。
乾燥野品の官能評価は、評価試験1と同様に行った。結果を表4に示す。
Figure 2017108634
表4に示す通り、スライス厚が4.0mmの場合は、原料の中心部にややもっちりとした食感が残り、さくっとした食感が得られなかった。
以上から、原料のスライス厚の条件は、3.0mm以下であり、より好ましくは0.2mm以上〜2.0mm以下であることが分かった。
[評価試験5]『好ましい糖の種類と二次乾燥工程の温度条件の範囲の検証』
この評価試験5は、糖の加熱褐色により色調が著しく変化するなどの種々の課題を伴うことなく、食感、特に咀嚼時に「ぱりっとした」り「さくっとした」食感や、原料本来の自然な色調を有したままの、品質が大幅に改善されたノンフライ乾燥野菜を提供するための、適用できる糖の種類と二次乾燥工程の温度条件の範囲の検証を目的として行った。
評価試験1〜4においては、糖の種類として、非還元糖である「ショ糖」を用いたが、その他の糖の種類及びその場合に適した二次乾燥工程の温度条件について検証した。
ここでは、評価試験1の結果から、一次乾燥工程の処理条件を70℃、30分間とし、評価試験3の結果から、糖浸漬工程の処理条件を90℃、5分間とし、評価試験4の結果から、原料のスライス厚を0.7mmとした。それ以外の条件は評価試験1と同様とした。これを表5のように二次乾燥工程の温度条件を、90℃又は130℃又は170℃の3温度で行い、乾燥野菜を調製した。
乾燥野菜の官能評価は、評価試験1と同様に行った(総合評価のみを示す)。結果を表5に示す。
Figure 2017108634
表5に示す通り、糖浸漬工程における糖の種類が、還元糖であるグルコース、フルクトース、マンノース、マルトースの場合は、170℃の高温条件下では褐変及び焦げに伴う苦味が生じ、130℃以下の低温条件下で長時間処理した場合のほうが、より好ましい食感となることが分かった。
一方で、非還元糖であるショ糖、トレハロース、スクラロースの場合は、170℃の高温条件下で短時間処理した場合のほうが、より好ましい食感となることが分かった。
従って、評価試験2の結果も考慮すると、還元糖を使用する場合は、二次乾燥工程の温度条件を90℃以上〜150℃以下の範囲とすることが好適であり、非還元糖を使用する場合は、120℃以上〜180℃以下の範囲とすることが好適であることが分かった。
[評価試験6]『他の原料への適用及びスライスの方法の検証』
この評価試験6は、糖の加熱褐色により色調が著しく変化するなどの種々の課題を伴うことなく、食感、特に咀嚼時に「ぱりっとした」り「さくっとした」食感や、原料本来の自然な色調を有したままの、品質が大幅に改善されたノンフライ乾燥野菜を提供するための、適用できる原料の種類とスライスの方法についての検証を目的として行った。
評価試験1〜5においては原料としてサツマイモを用いたが、その他の原料への適用の可能性および、スライスの方法による品質の差異について検証した。
ここでは、評価試験1の結果から、一次乾燥工程の処理条件を70℃、30分間とし、評価試験2の結果から、二次乾燥工程の処理条件を130℃、10分間とし、評価試験3の結果から、糖浸漬工程の処理条件を90℃、5分間とし、評価試験4の結果から、原料のスライス厚を0.7mmとし、評価試験5の結果から、糖の種類として20質量%グルコース水溶液を用いた。それ以外の条件は評価試験1と同様とした。これを表6のように原料野菜の種類および原料野菜のスライス方法を変えて(繊維方向に平行か垂直か)、乾燥野菜を調製した。
乾燥野菜の官能評価は、評価試験1と同様に行った(総合評価のみを示す)。結果を表6に示す。
Figure 2017108634
表6に示す通り、サツマイモのみならず、カボチャ、ニンジン、パプリカにおいて、外観、食感および風味の優れた乾燥野菜が調製できた。特に、原料をスライスする際に、スライス面がそれぞれの野菜の繊維方向に平行になるように調整すると、より良好な食感を有する乾燥野菜が調製できることが分かった。
尚、記載しないが、葉物などの本来柔軟な組織からなる野菜類は乾燥による萎縮度が大きく、本発明には適さないことが分かっている。以上から、本発明における使用原料としては、根菜や果菜が適していることが分かる。
[評価試験7]『客観的指標による、他の乾燥方法による乾燥野菜と本発明の乾燥野菜との品質の比較』
この評価試験7では、本発明の乾燥野菜の製造方法が他の乾燥方法と比べて色調および食感においてどの程度優れているかについて検証を行った。
尚、本試験において使用した乾燥野菜の比較原料としては、特に硬さの点で特に課題の残されていた、サツマイモの各処理物を用いた。
試験例1の乾燥野菜としては、評価試験6の「試験1」(繊維平行にスライス)(表6参照)と同様にして調製したものを用いた。比較例1〜4の乾燥野菜は、乾燥処理を表7に示す方法で行ったこと以外は、試験例1と同様にして調製した。
尚、乾燥野菜の官能評価は、評価試験1と同様に行った。結果(総合評価のみ)を表7に示す。
また、客観的指標による食感の評価は、以下の2種類の方法によって行った。
(1)破断強度:前歯で噛み切るときの力に相当する「ぱりっとした食感」
破断強度の測定は、クリープメーター(山電社製RE2−3305C)により、乾燥野菜を楔型のプランジャーを用いて押し切るときの荷重(N)を測定した。測定は3回行い、平均値を表7に示す。
(2)ユニバーサルデザインフード試験改変法:奥歯で噛み潰すときの力に相当する「さくっとした食感」
ユニバーサルデザインフード製品試験法(かたさ)を乾燥食品の食感の測定に適した方法に改変した測定方法により、以下の様にして平型のプランジャーで押しつぶすときの「歪率あたりの荷重(荷重(N)/歪率(%))」を測定した。
すなわち、測定機器としてSHIMADZU製EZ−SXを用い、乾燥野菜を直径約10mm以下の大きさに砕き、直径40mmの容器に高さ15mmとなるように充填し、直径20mmの平型プランジャーを用いて、圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mm、20℃±2℃の条件下で測定し、「歪率あたりの荷重(荷重(N)/歪率(%))」を得た。測定は3回行い、平均値を表7に示す。
また、客観的指標による色調(褐変の度合い)の評価は、乾燥処理前後の「b値(黄色味)」を測定することによって行った。
すなわち、褐変の度合いを表す「b値(黄色味)」は、サカタインクスエンジニアリング製ハンター色差計フォトボルト577を用い測定した。測定は3回行い、処理前後の平均値の差(「乾燥処理前」の値から「乾燥処理後」の値を引いたもの)を表7に示す。
Figure 2017108634
表7に示す通り、実施例1の乾燥野菜は、官能評価において高い評価を得た上に、破断強度が1N以上〜5N以下の範囲であり、ユニバーサルデザイン製品試験改変法による歪率(%)あたりの荷重(N)が20以上〜30以下(荷重(N)/歪率(%))の範囲であり、乾燥処理前後のb値の差が10以内であることから、客観的指標によっても「ぱりっとした」食感と「さくっとした」食感、並びに、「原料本来の自然な」色調を有していることが分かった。
したがって、本発明の二段階乾燥工程からなる製造方法によって得られる乾燥野菜の品質は、従来の熱風乾燥方法(比較例1)に比べて、「色調」および「食感」についての官能評価結果のみならず、客観的指標によってもその優れた「食感」改善効果が明確であることが示された。
また、フリーズドライ(比較例2)に比べて、製造コストの点で、また、油脂を使用するバキュームフライ(比較例3)及び揚げ(比較例4)に比べて、低カロリーである点並びに食感に優れ、色調の変化が小さい点で、本発明の二段階乾燥工程からなる乾燥野菜の製造方法は、優れた製造方法であることが分かる。
[評価試験8]『本発明の乾燥野菜を含有する乾燥食品の品質改善効果の検証』
この評価試験8は、本発明の乾燥野菜を含有する乾燥食品の品質改善効果の検証を目的に行った。尚、本試験において使用した乾燥野菜の比較原料としては、特に硬さの点で特に課題の残されていたサツマイモ、及びカボチャの各処理物を用いた。
試験例1の乾燥野菜としては、評価試験6の「試験1」及び「試験2」(繊維平行にスライス)(表6参照)と同様にして調製したものを用いた。比較例1〜4の乾燥野菜は、乾燥処理を表8に示す方法で行ったこと以外は、試験例1と同様にして調製した。
乾燥食品の代表例として、表8に示す処方にて、米飯用の野菜ふりかけを調製した。
乾燥食品の官能評価は、米飯にふりかけて食すことにより、N=5名で次の基準にて判断・評価した。結果を表8に示す。
また、客観的指標による「さくっとした食感」の評価は、評価試験7と同様にして行った。測定は3回行い、平均値を表8に示す。
「乾燥食品の官能評価における評価基準」
◎:乾燥野菜の「色調」、「食感(適度に「ぱりっと」「さくっと」した)」、「風味(本来の自然な風味を有する)」に優れ、乾燥食品全体として、好ましい「食感」と「風味」を有し、おいしく食することができる
○:乾燥野菜の「色調」、「食感(適度に「ぱりっと」「さくっと」した)」、「風味(本来の自然な風味を有する)」に違和感がなく、乾燥食品全体として、違和感のない「食感」と「風味」を有し、普通に食することができる
△:乾燥野菜の「色調」、「食感(適度に「ぱりっと」「さくっと」した)」、「風味(本来の自然な風味を有する)」に違和感があり、乾燥食品全体として、やや違和感がある「食感」と「風味」を有し、ややおいしさに劣る。
×:乾燥野菜の「色調」、「食感(適度に「ぱりっと」「さくっと」した)」、「風味(本来の自然な風味を有する)」に劣り、乾燥食品全体として、好ましくない「食感」と「風味」を有し、おいしく食することができない。
Figure 2017108634
表8に示す通り、従来の熱風乾燥方法(比較例1)や、バキュームフライ(比較例3)及び揚げ(比較例4)による乾燥方法によって得られた乾燥野菜を含む乾燥食品(野菜ふりかけ)の品質は、乾燥野菜が硬すぎて違和感があるとともに、口腔内で崩れにくく、米飯とともに食するには明らかな食べにくさを感じるものであった。また、色調についても、野菜にしてはやや褐色を呈し、見映えの新鮮さに劣るものであり、野菜本来のおいしさを想起させるものではなく、実際の風味も原料本来の自然な風味を十分に保っているものではなかった。
これに対して、本発明の二段階乾燥工程からなる製造方法によって得られた乾燥野菜を含む乾燥食品(野菜ふりかけ)の品質は、ぱりっとした食感とさくっとした食感のバランスが良く、口腔内での崩壊性も適度で、米飯とともに食したときに心地よい食感を有するものであった。また、色調は原料野菜とほとんど変わらず、野菜本来のおいしさを想起することができるものであり、実際の風味も原料本来の自然な風味が十分に感じられるものであった。
尚、真空乾燥法(比較例2)によって得られた乾燥野菜を含む乾燥食品(野菜ふりかけ)は、色調および実際の風味は本発明の乾燥野菜を含むものと同等であったが、ややぱりっとした食感が弱く、口腔内での崩壊性がやや強すぎ、米飯とともに食する際にやや物足りなさを感じるものであった。また、真空乾燥方法によってえられる乾燥野菜はコストが高く、ふりかけのような低価格の商品への適用にあたっては、添加量を少なくすることなどの調整が必要となり、商品の魅力が乏しくなることが推測される。
以上から、本発明の二段階乾燥工程からなる製造方法によって得られた乾燥野菜を含む乾燥食品は、ふりかけのみならず、他の乾燥食品(例えばおむすびの素、混ぜご飯の素、炊き込みご飯の素)においても、他の乾燥方法に比べて優れた品質の乾燥食品を得ることのできる方法であることが分かる。
本発明によれば、糖以外の添加物を必要とせず、焦げ付きや褐変といった問題がなく、しかも優れた食感を有する、品質が大幅に改善されたノンフライ乾燥野菜を提供することができる。
従って、本発明は、食品産業において、有効に貢献することができる。

Claims (13)

  1. 厚さ3mm以下にスライスした野菜を、糖の溶液に浸漬し、
    次いで、浸漬後の前記野菜に対し、
    10℃以上〜180℃以下の範囲において、
    温度条件の異なる二段階の送風乾燥処理を施すことを特徴とする、
    ノンフライ乾燥野菜の製造方法。
  2. 前記二段階の送風乾燥処理が、
    温度条件が10℃以上〜90℃未満であって、
    野菜の水分が10質量%以上〜30質量%以下の範囲となるように調整する一次乾燥工程と、
    温度条件が90℃以上〜180℃以下であって、
    野菜の水分が10質量%未満となるように調整する二次乾燥工程と、
    からなることを特徴とする、
    請求項1に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
  3. 前記野菜が、根菜及び/あるいは果菜であることを特徴とする、
    請求項1または2に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
  4. 前記糖が、単糖、二糖及び三糖からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする、
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
  5. 前記二次乾燥工程の温度条件が、90℃以上〜150℃未満の範囲であり、且つ、
    前記糖が、グルコース、フルクトース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、セロビオース及びマルトトリオースからなる還元糖の群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、
    請求項2乃至4のいずれか1項に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
  6. 前記二次乾燥工程の温度条件が、120℃以上〜180℃以下の範囲であり、且つ、
    前記糖が、非還元糖であることを特徴とする、
    請求項2乃至4のいずれか1項に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
  7. 前記非還元糖が、
    スクロース、トレハロース、スクラロース、マルチトール、ラクチトール、ラフィノース、トレハロサミン、セロビオン酸及びラクトビオン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、
    請求項6に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
  8. 前記ノンフライ乾燥野菜が、
    食感、色調が改善されたノンフライ乾燥野菜であることを特徴とする、
    請求項1乃至7のいずれか1項に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
  9. 前記食感、色調が改善されたノンフライ乾燥野菜が、
    ユニバーサルデザインフード製品試験法に準じた方法によって測定して得られる歪率あたりの荷重(荷重(N)/歪率(%))が20以上〜30以下の範囲であって、且つ、
    クリープメーターを用いて測定した破断強度が1N以上〜5N以下の範囲であることを特徴とする、
    請求項8に記載のノンフライ乾燥野菜の製造方法。
  10. ノンフライ乾燥野菜であって、
    ユニバーサルデザインフード製品試験法に準じた方法によって測定して得られる歪率あたりの荷重(荷重(N)/歪率(%))が20以上〜30以下の範囲であって、
    クリープメーターを用いて測定した破断強度が1N以上〜5N以下の範囲であって、且つ、
    褐変が少なく、原料本来の自然な色調を有していることを特徴とする、
    食感、色調が改善されたノンフライ乾燥野菜。
  11. 請求項10に記載のノンフライ乾燥野菜を含有することを特徴とする、
    食感、色調が改善された乾燥食品。
  12. 前記乾燥食品が、
    米飯用のふりかけ、おむすびの素、混ぜご飯の素、炊き込みご飯の素、パスタ用のふりかけ、又はサラダ用のふりかけであることを特徴とする、
    請求項11に記載の食感、色調が改善された乾燥食品。
  13. 前記乾燥食品が、
    ユニバーサルデザインフード製品試験法に準じた方法によって得られる歪率あたりの荷重(荷重(N)/歪率(%))が、20以上〜30以下の範囲であって、且つ、
    褐変が少なく、原料本来の自然な色調を有していることを特徴とする、
    請求項11または12に記載の食感、色調が改善された乾燥食品。
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