JP7305164B2 - 素焼きチップスの製造方法 - Google Patents
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Description
このようにして製造される乾燥食品は、食感が硬すぎることや、工程中の過度の加熱による焦げ付きや褐変などが課題として指摘されており、比較的低温、例えば100℃以下での乾燥条件などを採用することにより、褐変の問題を回避してきた。しかしながら、緩やかな乾燥は、果実や野菜類の組織をより密にし、その食感を著しく硬化させてしまう問題点は依然として残っており、これら問題点を解決するために、種々の技術が開示されている。
本発明に係る素焼きチップスの製造方法は、図1に示すように、あらかじめ加工条件を原材料ごとに設定する段階<野菜(a)または果実(b)>と、野菜または果実からなる原材料をスライス手段を用いて厚さ1.5~5.0mmにスライスし〔スライス工程〕、直径3mm以内のピンを多数植設した孔開け手段を用いて所定間隔でスライスした野菜または果実に孔開けし〔孔開け工程〕、必要に応じてブランチング(下茹で)する工程と、10分~24時間乾燥手段を用いて低温乾燥し〔低温乾燥工程〕、その後65℃~250℃の温度範囲において5分~90分間加熱する〔加熱工程〕を含む。
本発明において原料として採用される「野菜」は、サツマイモ、ジャガイモ、ニンジン、ダイコン、ゴボウ、ショウガ、ヤマイモ、レンコン、ワサビ、サトイモ、タマネギ、カブ、ビーツ、ヤーコン、キクイモ等の根菜、もしくは、トウモロコシ、カボチャ、パプリカ、ピーマン、トマト、ナス、キュウリ、トウガラシ、ズッキーニ、ニガウリ、トウガン、オクラ等の果菜を用いる事が好ましい。
また「果実」は、オレンジやグレープフルーツその他各種の柑橘類、メロン、イチゴなど草本性の果実や、スイカ、リンゴ、バナナ、パイナップル、柿、マンゴー、パパイヤ、モモ、イチジク、プラム、その他の孔開け加工等に耐え得られる果実を使用することができる。なお、孔開け加工は果実の密度が高い場合には必要であるが、密度が低かったり、隙間のたくさんある果実においては不要とすることができる。
前記野菜または果実は、生のものを用いてもよいし、冷凍状態のものやその解凍物、下茹でしたものであっても用いることができる。また、予め水で洗浄して用いてもよい。
ここで、前記野菜または果実をスライスする手段としては、前記した範囲の厚さにスライスできるものであれば特に限定されない。
孔開け工程においては、直径3mm以内のピンを多数植設した孔開け手段を用いて所定間隔で孔開けする。この孔開け手段としては、図2に示すように、ハウジング11内に設置され、直径3mm以内のピン13を下向きに多数植設した昇降可能な基盤12と、その下部に配設され、前記ピンの挿通孔15を備えた保持板14と、その下部に配設されたスライスした野菜または果実17を搭載できる支持板16とを備えている。
次いで、基盤12を引き上げると、図4に示すように保持板14の挿通孔15から前記ピン13が引き抜かれる際にスライスした野菜または果実17は前記保持板14に係合する。
最後に、図5に示すようにスライスした野菜または果実17は前記保持板14によって前記ピン13から引き抜かれて前記支持板16上に落下する。
なお、当該孔開け工程において、前記野菜または果実に多数の小孔が形成されることにより前記野菜または果実の繊維が切断される。そのため、加熱工程において前記野菜または果実の全体にまんべんなく加熱処理が施され、「ぱりっとした」食感及び「さくっとした」食感が得られるようになるのである。
孔開け工程の後には、必要に応じてスライスした野菜または果実をブランチング(下茹で)する。
その上で、低温乾燥工程においては、10℃~90℃の温度範囲において10分~24時間乾燥手段を用いて低温乾燥する。この低温乾燥処理を行うことで、スライスした果実の水分が10質量%以上~30質量%以下の範囲になるように調整する。
なお、野菜は表面の水気とり程度なので、下茹で後とほぼ同水分値であれば特に低温乾燥は不要である。
本工程における温度条件が10℃未満である場合には、長時間送風を続けても原材料の水分が10質量%以上~30質量%以下まで低下しないため、好ましくない。一方、本工程における温度条件が90℃以上である場合には、加熱による褐変や風味の変化が生じ、ぱりっとした食感が得られないため、好ましくない。
本工程の処理時間は、原材料の野菜または果実の水分が10質量%以上~30質量%以下の範囲になるまでとすればよく、特に限定されないが、例えば10分間~24時間程度とすることができる。
このような低温乾燥に際しては、乾燥装置を用いて行うことができる。
図6(a),(b)において、加熱装置21は投入側のコンベア上に操作パネル22を備え、また加熱装置21側面に設けた扉23には確認窓24が設置されている。25はコンベアネットである。
なお、図6の例では、加熱エア噴射型のコンベア式加熱装置からなる加熱手段について説明したが、図7に示すようなバッチ式加熱装置からなる加熱手段を用いてもよいことは勿論である。図7において、31はスライスした野菜または果実を搭載する複数の棚32を内蔵した加熱装置本体、33は各種の制御条件を入力する制御盤である。
本工程における温度条件は、野菜は表記通りの加熱温度で良いが、フルーツは90℃以下で焼く。一方、本工程における温度条件が250℃を超える場合には、加熱による褐変や風味の変化が生じ、食感の点でも満足いく品質が得られないため、好ましくない。
本工程の処理時間は、原材料の野菜または果実の水分が10質量%未満になるまでとすればよく、温度条件に応じて適宜設定することができる。
すなわち、本発明の素焼きした乾燥野菜または果実が「原料本来の自然な色調を有している」ことは、乾燥処理前後のb*値の差が10以内であることにより評価することができる。
ここで、「乾燥処理前後のb*値の差」は、乾燥処理前のb*値から乾燥処理後のb*値を差し引くことにより求めることができる。
低温乾燥工程の処理時間は、原料の水分が10質量%~30質量%の範囲になるまでとした。
なお、低温乾燥からそのまま加熱工程に移行させ、加熱工程の温度条件のスタート温度は90℃とし、最終的には50℃まで降温させた。加熱工程の処理時間は、原料の水分が10質量%未満になるまでとし、実施例とした。
実施例1:低温乾燥工程における原料の水分 15重量%
加熱工程における原料の水分 5重量%
実施例2:低温乾燥工程における原料の水分 20重量%
加熱工程における原料の水分 7重量%
実施例3:低温乾燥工程における原料の水分 25重量%
加熱工程における原料の水分 9重量%
比較例1:低温乾燥工程における原料の水分 5重量%
加熱工程における原料の水分 3重量%
比較例2:低温乾燥工程における原料の水分 35重量%
加熱工程における原料の水分 15重量%
比較例3:低温乾燥工程における原料の水分 40重量%
加熱工程における原料の水分 12重量%
乾燥野菜の官能評価は、N=5名にて実施した。なお、各評価項目は、次の基準により判断・評価した。
◎:原料本来の自然な色調である
○:加熱に伴う褐変による色調の変化はやや認められるものの、原料本来の自然な色調と対比して違和感はない
△:加熱に伴う褐変による色調の変化が認められ、原料本来の自然な色調がやや失われている
×:加熱に伴う著しい焦げ付きが認められ、原料本来の自然な色調が失われている
◎:適度な歯応えがあって好適である
○:歯応えがあって好適である
△:やや硬く、食するには抵抗がある
×:硬すぎて食することが困難である
◎:咀嚼時に適度な崩壊性の持続があり好適である
○:咀嚼時の崩壊性に違和感がなく好適である
△:咀嚼時の崩壊性が速く、ややもろく感じられる
×:咀嚼時の崩壊性が著しく、もろすぎる
◎:原料本来の自然で豊かな風味が感じられる
○:加熱に伴う風味の変化を感じるが、原料本来の自然な風味は十分に感じられる
△:加熱に伴う焦げた風味を強く感じ、原料本来の自然な風味がやや失われている
×:加熱に伴う焦げた風味が強すぎて、原料本来の自然な風味を感じられない
表1に示す通り、一次乾燥工程の温度条件が5℃では、あまりにも時間がかかり過ぎて実用的ではなかった。
また、低温乾燥工程の温度条件が95℃では、やや褐変が生じるとともに、硬くもろい食感となった。風味も焦げ感を有し、野菜ないし果実本来の自然な風味を感じられないものとなった。
低温乾燥工程の温度条件が10℃~90℃の温度範囲である場合は、外観、食感および風味の優れた乾燥野菜が調製できた。特に、25℃~55℃において、より好ましい品質の野菜ないし果実の素焼きチップスが調製できた。
以上から、原材料のスライス厚の条件は、4.0mm以下であり、より好ましくは2.0mm~3.0mmの範囲であることが分かった。
したがって、本発明は、食品産業において、有効に貢献することができる。
12 基盤
13 ピン
14 保持板
15 挿通孔
16 支持板
17 スライスした野菜または果実
21 加熱装置
22 操作パネル
23 扉
24 確認窓
25 コンベアネット
31 加熱装置本体
32 棚
33 制御盤
Claims (1)
- 野菜又は果実に糖質を全く加えることなく、かつ野菜又は果実を全く糖質液に浸漬することなく下記の(a)~(d)の工程を経る素焼きチップスの製造方法。
(a)野菜または果実からなる原材料をスライス手段を用いて厚さ1.5~5.0mmにスライスする工程
(b)直径3mm以内のピンを多数植設した孔開け手段を用いて所定間隔で孔開けする工程であって、前記孔開け手段が、直径3mm以内のピンを下向きに多数植設した昇降可能な基盤と、その下部に配設され、前記ピンの挿通孔を備えた保持板と、その下部に配設されたスライスした野菜または果実を搭載できる支持板とを有するもの
(c)25℃~55℃の温度範囲において10分~24時間乾燥手段を用いて低温乾燥する工程であって、前記低温乾燥する工程が、温度範囲が25℃~55℃であって、野菜または果実の水分が10~30質量%の範囲となるように調整するもの
(d)65℃~250℃の温度範囲において加熱エア噴射型のコンベア式またはバッチ式の加熱手段を用いて5分~90分間加熱する工程であって、前記加熱する工程が、温度範囲が65℃~250℃であって、野菜または果実の水分が10質量%未満となるように調整するもの
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