JP3817602B2 - ノンフライ乾燥食品及びこれを含む乾燥食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、小片の植物・果実のノンフライ乾燥食品であって、軽快なサクサクした食感(つまり軽快なサクサク感)を有する新しい形態の乾燥食品に関する。また、上記のノンフライ乾燥食品を含む、全体として軽快なサクサク感を有する新しい形態の乾燥食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
乾燥食品として、果実・野菜チップ等のスナック食品が公知であり、一般にこれらは、スライスした原料に熱風乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥等の乾燥処理を施して製造されている。しかし、このようにして製造される乾燥食品は、食感が硬すぎ、また乾燥時に褐変したり、保存時に吸湿及び吸湿により糖分が再結晶化する等の問題を有していた。
【0003】
先行技術の特開平11−269003号公報には、活物体内水分の20%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上がα,α−トレハロースで置換された安定性に優れる乾燥植物体が記載されている。段落番号
【0047】〜【0056】実施例6及び7には、蒸煮した輪切りニンジンを、30〜60℃のα,α−トレハロース水溶液に浸漬した後、送風乾燥機で40℃で乾燥する乾燥輪切りニンジンスナックの製法が記載されている。上記の方法により、活物体内水分を部分的にα,α−トレハロースで置換し、安定性に優れた乾燥植物体を得るものである。段落番号
【0063】の実施例10には、スライスしたきゅうりを0.3%重曹(アルカリ)水溶液中で80℃、3分間茹でて液切りした後、α,α−トレハロース水溶液に浸漬し、乾燥する技術も記載されている。
【0004】
また、特開平2000−50817号公報には、原料を高温、高濃度のα,α−トレハロース水溶液を用いて、加熱、脱水することを特徴とするノンフライ調理法が提案されている。一般の油で揚げる(フライ)方法では、原料に含まれる水分は、高温の脂質にさらされて、その一部又は大半は水蒸気として失われ、結果として得られるフライ食品は、脱水、濃縮されると同時に、水分に代わって、大量の脂質を取り込むことになる(段落番号
【0002】)。上記先行技術のメカニズムは、熱媒体として、脂質に代替して高温、高濃度のα,α−トレハロース水溶液を用いて、原料を加熱、脱水することにより風味良好なノンフライ食品を調理するものである(段落番号【0009】)。また、ノンフライ食品を乾燥することが記載されている(段落番号【0029】)。
これらの先行技術は、原料をα,α−トレハロース溶液中に浸漬処理した後乾燥して果実・野菜チップ等の乾燥食品を得ることにより、乾燥食品の食感等の改善を図るものであるが、何れの場合も、得られる乾燥食品が組織が密で硬い食感のものになる傾向がある。また、先行技術は、得られた製品をスナック食品としたり、他の食品の材料とするものである。
【0005】
一方、これらの先行技術とは別に、コーンフレーク、グラノーラ、シリアル等に果実、野菜の乾燥粒片状物を混合した乾燥食品が上市されており、牛乳をかけて食する形態も提案されている。しかしながら、野菜や果実の乾燥粒片状物の使用量が少量のため、全体としての食感や風味はコーンフレーク等の域をでないものになっている。
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来にない軽快なサクサク感を提供することのできるノンフライ乾燥食品を提供することにある。
本発明の他の目的は、牛乳をかけて食べる乾燥食品を提供することにあり、牛乳をかけて食べるときに、従来にない軽快なサクサク感を提供することのできる乾燥食品を提供することにある。
本発明の更なる目的は、牛乳をかけて食べるときに、軽快なサクサク感と適度な酸味を提供することのできる乾燥食品を提供することにある。
本発明の更なる目的は、林檎及び/又はニンジンの乾燥食品に従来にない軽快なサクサク感を提供することのできるノンフライ乾燥食品及びこれを含む牛乳をかけて食べる乾燥食品を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
また、上記の課題は、果実類、野菜類を小さく切断した原料小片を90℃以下の温度のトレハロースの溶液に浸漬した後に80〜100℃の雰囲気下で乾燥することにより、物性条件として、1)破断強度が300〜2000gであり、2)電子顕微鏡でみた場合に表面組織の断片の大きさが平均径100μm以上となる表面組織を有し、3)下記のトレハロースの置換率が1〜20%であり、かつ、4)比重が1以下である、以上の1)〜4)の物性条件を満たすノンフライ乾燥食品を製造すること特徴とする上記食品の製造方法、ここに、置換率(%)=[{(ノンフライ乾燥食品の乾燥重量)−(原料小片の乾燥重量)}÷(原料小片に含まれる水分重量)]×100、を提供することによって達成される。
【0007】
また、上記の課題は、本発明の他の観点によれば、果実類、野菜類を小さく切断した原料小片を90℃以下の温度のトレハロースの溶液に浸漬した後に70〜120℃の雰囲気下で乾燥することにより、前記の物性条件を満たすと共に、比重が1以下であるノンフライ乾燥食品を製造すること特徴とする上記食品の製造方法、を提供することによって達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
ノンフライ乾燥食品
先ず、果実、野菜を切断してなる小片であるノンフライ乾燥食品について説明する。尚、以下小片のノンフライ乾燥食品のことを乾燥小片という場合があり、この乾燥小片には、乾燥スライス片を含む。乾燥食品は、果実類、根菜類、野菜類、茸類等を原料とする果実類、野菜類の乾燥物である。原料の果実、野菜の種類に特に制限はない。果実、野菜は単品あるいは任意の組合せで用い得る。
【0009】
乾燥小片の好適な原料としては、大別して以下の2種類のものが挙げられる。(第1群の原料)
ペクチン質を多く含み、内部に気泡を抱く多孔状となっていない組織の果実、野菜、例えば、根菜類である。特に人参、大根が適し、他にゴボウ、レンコン等も使用できる。
(第2群の原料)
内部に気泡を抱く多孔状組織の果実、野菜、特に、林檎、梨である。
以上の原料の他に利用できる果実、野菜としては、イチゴ、ブドウ、バナナ、キウイ、マンゴ、パパイヤ、ベリー類、ピーチ、カボチャ、アスパラガス、キャベツ、グリーンピース、豆類が挙げられる。
【0010】
乾燥小片の製法
乾燥小片は、如何なる手段で調製されたものであってもよいが、ノンフライ品、つまり減圧フライ品等で油を用いて乾燥処理されたものでないことが望ましい。特に、ノンオイルで糖含有溶液に浸漬後、熱風乾燥等により乾燥処理したものが望ましい。これらノンフライの乾燥物は、減圧フライ品等に比べてより爽やかな風味を有し、サクサクした食感を保持できるため、これを含むことでより爽やかな風味と軽快なサクサク感を有する乾燥食品を得ることができるためである。
【0011】
以下にノンフライによる乾燥小片の製法について2つ例を挙げる。
(第1例)
原料を、糖類を含有するアルカリ溶液中で浸漬処理した後、熱風乾燥等により乾燥処理する。あるいは、原料をアルカリ溶液中で浸漬処理した後、更に糖類を含有する溶液中で浸漬処理し、同様に乾燥処理する。
これらの方法では、アルカリで原料の細胞組織を軟化し、糖類を細胞組織内に浸透させ、このように処理を施した原料を乾燥処理することで、サクサクとした求める食感と、乾燥時の褐変防止及び乾燥後の品質保持(即ち、吸湿防止、吸湿による糖分の再結晶化防止等)を達成することが可能となる。これらの方法は特に前記第1群の原料より乾燥物を得る場合に適する。
【0012】
具体的には、浸漬溶液は、糖類の濃度が乾燥重量で20〜60質量%(以下%と略称する)、好ましくは30〜40%で、pHが7.5〜10、好ましくは8〜9のものとするのが望ましい。原料をアルカリ溶液中で浸漬処理した後、糖類を含有する溶液中で浸漬処理する場合は、各々の溶液が上記の条件を満たすようにすればよい。
糖類の濃度が上記の数値範囲を下回る場合には、糖類を原料の組織内に十分に浸透できず、食感改善、褐変防止及び品質保持の効果が十分に達成されない場合があり、一方、数値範囲を上回る場合には、乾燥物の食感が硬すぎたり、変形したりする場合がある。よって、上記範囲の濃度により、食感改善、褐変防止及び品質保持の効果に優れた乾燥物を得ることができる。なお、トレハロースの場合の濃度は、浸漬溶液に占めるトレハロースの2水和物としての割合をいう。また、濃度には原料中に分布する糖類は含まない。
更に、pHが上記の数値範囲を下回る場合には、原料の細胞組織を軟化する作用が不十分になり、乾燥物の食感が硬くなる場合があり、一方、数値範囲を上回る場合には、乾燥物の食味品質を損なう場合があり、上記範囲でサクサクとした食感、褐変防止及び品質保持の効果に優れた乾燥物を得ることができる。アルカリ物質は上記浸漬溶液の所望のpHが達成される量用いればよく、通常溶液中に乾燥重量で0.1〜0.5%程度含めばよい。
【0013】
浸漬処理の際における浸漬溶液の温度は限定されないが、60〜120℃、好ましくは80〜100℃にして実施するのがよい。溶液の温度が60℃に満たない場合には、アルカリの作用が不十分で、糖類を原料の組織内に十分に浸透できず、乾燥物の食感改善、褐変防止及び品質保持の効果が十分に達成されない場合がある。一方、120℃を超える場合には、原料の組織が崩れやすくなる場合がある。よって、上記範囲の液温により、食感改善、褐変防止及び品質保持の効果に優れた乾燥食品を得ることができる。
原料と浸漬溶液との重量比率は、前者1に対して後者1.6以上、好ましくは2.5〜5とするのが、原料に糖類及びアルカリを作用させる上で望ましい。
【0014】
また、浸漬処理は、60分間〜24時間、好ましくは120〜240分間が行うのがよい。処理時間が上記の数値範囲を下回る場合には、糖類の作用が不十分になり、食感、褐変防止及び品質保持の効果が充分に得られない場合があり、上回る場合には、乾燥物の組織と食感品質を損なう場合がある。したがって、上記の範囲の時間により、食感改善、褐変防止及び品質保持の効果に優れた乾燥物を得ることができる。
【0015】
浸漬処理は、液温90〜120℃の浸漬溶液中で1〜10分間行った後、更に液温4〜90℃の浸漬溶液中で1〜30分間行うことで実施することができる。原料をアルカリ溶液中で浸漬処理した後、糖類を含有する溶液中で浸漬処理する場合は、アルカリ処理を上記前段の条件で、糖浸漬処理を後段の条件で実施すればよい。
これらによると、浸漬処理の当初、原料をアルカリ及び加熱の作用で軟化し、以降この状態で原料に糖類を作用せしめて、所望の食感改善、褐変防止及び品質保持の効果を得ることができる。つまり、原料が過加熱で軟化しすぎることを回避しながら、所望のアルカリ及び糖類の作用を効果的に達することができる。上記の温度条件は、例えば、前段の浸漬処理を煮炊き釜等で原料を浸漬溶液中で煮込んで実施した後、後段の浸漬処理を釜の加熱を停止して保持することで実施すればよい。
【0016】
以上の浸漬処理を施した場合に、乾燥食品における糖類の置換率つまり、原料の内部水分が糖類に置換する率が1〜30%、好ましくは10〜30%、より好ましくは15〜25%になるようにすることが望ましい。これは糖類を原料の細胞組織内に適度に浸透させた状態で、この状態の原料を乾燥することで所望の食感改善、褐変防止及び品質保持の効果を得ることができる。上記置換率(%)は、[{(ノンフライ乾燥食品の乾燥重量)−(原料小片の乾燥重量)}÷(原料小片に含まれる水分重量)]×100により求められるもので、特開平11−269003号公報の段落番号
【0052】〜【0053】に記載と同様の算定法に基づく。なお、上記先行技術において、段落番号【0056】の実験記号6では置換率が約21%となり、この場合は総合評価が不良とされているが、本発明では寧ろこの程度の置換率で良品が得られる。
【0017】
次に、浸漬処理した原料を水切りし、熱風乾燥等で乾燥処理する。乾燥処理は70〜120℃、好ましくは80〜100℃の雰囲気下で行うとよい。
乾燥処理の雰囲気温度が70℃を下回る場合には、乾燥が不十分となり、乾燥物のサクサクとした食感及び保存性が十分に達成されない場合があり、一方、120℃を上回る場合には、乾燥物の食感が硬くなったり、褐変や焦げ等が生じる場合がある。したがって、上記範囲の温度条件により乾燥処理することで、サクサクとした食感を有し、乾燥時に褐変等がなく、保存性に優れた乾燥物を得ることが可能となる。乾燥処理は60〜300分間、好ましくは120〜180分間行うのがよく、数値範囲の上限下限の意義は温度条件の場合と同様である。装置としては熱風乾燥機等適宜のものを使用できる。
【0018】
同時に、乾燥処理は、原料の水分が0.1〜5%、好ましくは0.1〜3%になるまで行うのがよい。水分が5%を超える場合には、乾燥が不十分になり、乾燥食品の軽快なサクサク感及び保存性が十分に達成されない場合がある。水分5%以下に乾燥することで、乾燥食品の所望の食感及び保存性の改善効果が得られる。乾燥食品は最終的に小片状とするが、以上の調製方法に付す当初に原料の段階で小片状としてもよく、乾燥処理後に小片状としてもよい。
【0019】
以上の方法において用いる糖類としては、種類を問わず、トレハロース、砂糖、ブドウ糖、麦芽糖が挙げられ、他の還元糖やソルビトール等の糖アルコールも含まれる。トレハロースについては、結合様式によって、α,α−、α,β−、β,β−の3種類の異性体があり、結晶形態は、水和物結晶や無水和物結晶の存在が認められている。本発明では、トレハロースのうち、とりわけ、α,α−トレハロースが好適である。α,α−トレハロースは、グルコースが2個、α,α−1,1で結合した非還元性の安定な糖質である。本発明に使用するα,α−トレハロースの由来は問わない。例えば、特開平7−246097号公報に記載されている酵母から抽出して得られるα,α−トレハロース、特開昭58−216695号公報に記載されているマルトースからホスホリラーゼ法により得られるα,α−トレハロース、特開平7−170977号公報、特開平7−213283号公報等に記載されている澱粉から酵素糖化法を用いて得られるα,α−トレハロースなど、各種のα,α−トレハロースが適宜採用できる。市販の高純度含水結晶トレハロース、高純度無水結晶トレハロースなどを使用することもできる。例えば、株式会社林原商事が販売している高純度含水結晶トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)を使用することも有利に実施できる。以後、特に断りがない限り、前記3種類のトレハロースの異性体を単にトレハロースと略称する。
また、アルカリ物質は、溶液のpHをアルカリにする物質であれば何れでもよく、具体的には、クエン酸3ナトリウム、重曹、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムが挙げられ、これらは、任意に組合せて使用することができ、成分そのものとして、また天然物等として使用できる。
【0020】
乾燥小片の製法
(第2例)
ノンフライによる乾燥小片の製法のもう一つの例としては、原料を、原料中の気泡が残る状態で糖類を含有する溶液中に浸漬処理した後乾燥処理する。
原料を細胞組織の内部に含まれる気泡が残る状態(組織内部の気泡が抜けない状態)で糖類を含有する溶液中で浸漬処理して、原料の組織内に気泡が残る状態で糖類を浸透させ、この状態で乾燥することで、相対的に比重が軽く、サクサクとした求める食感と、乾燥時の褐変防止及び乾燥後の品質保持(即ち、吸湿防止、吸湿による糖分の再結晶化防止)を達成した乾燥物を調製することが可能となる。この方法は特に前記第2群の原料(例えば、林檎)より乾燥食品を得る場合に適する。
【0021】
浸漬溶液の糖類の濃度は、第1例と同様の観点から同様に設定すればよい。浸漬溶液には特にビタミンCを含むことが望ましく、ビタミンCの濃度は、乾燥重量で0.1〜5%、好ましくは0.3〜0.8%がよい。ビタミンCの作用は、浸漬処理時の原料の褐変を防止する点にある。ビタミンCの濃度が0.1%を下回る場合には、浸漬時の原料の褐変を防止する効果が十分に達成されない場合があり、一方、5%を上回る場合には、乾燥食品の食味に影響する場合がある。よって、上記範囲の濃度により、浸漬時原料に糖類を作用させる間の、原料の褐変防止を図ることができる。
【0022】
浸漬処理は、浸漬溶液の温度を90℃以下、好ましくは60℃以下にして実施するとよい。溶液の温度が90℃を超える場合には、糖類を含有する溶液が原料の細胞組織内に過度に浸透し、組織内の気泡が抜けることで、乾燥食品の食感が硬すぎたり、飴状になって歯に付着しやすくなる場合がある。よって、上記範囲の液温により、食感改善、褐変防止及び品質保持の効果に優れた乾燥物を得ることが可能となる。浸漬溶液の温度を4℃以上とするのが凍結防止等の点で好ましい。
【0023】
浸漬処理は、10分間〜24時間、好ましくは60〜300分間が行うのがよい。処理時間が10分間を下回る場合には、糖類の作用が不十分になり、食感、褐変防止及び品質保持の効果が充分に得られない場合があり、24時間を超える場合には、乾燥食品の組織と食感品質を損なう場合がある。したがって、上記の範囲の浸漬処理時間により、食感改善、褐変防止及び品質保持の効果に優れた乾燥食品を得ることが可能となる。
【0024】
以上の浸漬処理を施した場合に、原料の内部水分が糖類に置換する率が1〜30%、好ましくは1〜20%、より好ましくは5〜15%となることが望ましい。これは、細胞組織内に適度に気泡が残り、糖類を適度に浸透させた状態で、この状態の原料を乾燥することで所望の食感改善、褐変防止及び品質保持の効果を得ることができる。上記置換率は、第1例のものと同じものである。
【0025】
浸漬処理した原料を第1例と同様に水切りし、乾燥処理する。乾燥処理の条件は第1例の場合と同様である。
以上、ノンフライによる乾燥小片の製法例を2つ示したが、これらに限定されず他の製法により乾燥小片を調製してもよい。他の調製方法としては、フリーズドライや、糖液に漬けた後天日や乾燥機で乾燥する方法(製品はドライフルーツ等といわれる)が挙げられる。
【0026】
乾燥小片の物質的な特性
次に、乾燥小片の物質的な特性について説明する。
乾燥小片は、厚さ5mm以下、好ましくは0.2〜2mmのスライス品であることが好ましい。厚さが5mmを超えると、食感がやや硬めになりやすく、0.2mmに満たないと食した際の存在感に欠けやすいからである。上記の範囲の厚さによれば、乾燥食品の組織との相関でより軽快なサクサク感を達成できる。また、乾燥スライス片は5〜30mm角程度の面をもつのが、同様に食感の点からよく、見た目の存在感があることからも望ましい。尚、厚さと面の大きさは乾燥状態のものである。乾燥小片は、口に入れることができる程度の小さな塊又は片であればよく、その形状は薄片のスライス形状に限らず任意でり、例えばダイス形状、バー形状を含み、一般的には、一片の長さが2〜30mm程度の長さ寸法を有するのが好ましい。
【0027】
また、乾燥小片の好適な破断強度及び比重としては、大別して以下の2つのものが挙げられる。
先ず、乾燥小片は破断強度300〜2000g、好ましくは300〜1500g、更に好ましくは500〜1000gのものであることが望ましい。上記の数値で現される硬さを有する組織の乾燥小片は、軽快なサクサク感を有するものとなる。尚、破断強度が300gに満たないと、乾燥小片の食感が脆く存在感のないものとなりやすく、逆に2000gを超えると、食感がやや硬めになりやすい。上記範囲の破断強度により、硬すぎず軽快なサクサク感を有する乾燥小片が得られる。上記の破断強度は、特に前記第1群の原料より得た乾燥物の場合に適し、特に根菜類、特にニンジン、大根に適する。
【0028】
次に、乾燥小片は破断強度300〜2000g、好ましくは500〜800gで、かつ比重1以下、好ましくは0.5〜0.8のものであることが望ましい。
破断強度の数値の根拠は、前記
【0027】の場合と同様である。尚、破断強度が300gに満たないと、乾燥小片の食感が脆く存在感のないものとなりやすく、逆に2000gを超えると、食感がやや硬めになりやすい。比重については、1を超えると、食感がやや硬めになりやすい。上記範囲の破断強度と比重により、硬すぎず軽快なサクサク感を有する乾燥小片が得られる。上記の破断強度と比重は、特に前記第2群の原料より得た乾燥小片の場合に適し、特に林檎、梨に適する。
【0029】
本発明において、破断強度とは次の方法により測定された値を指す。
即ち、レオメーター(Sun Scientific社製)の測定装置を使用して、厚さ2mmの乾燥小片(10〜10mm角程度の面をもつ試料片)を検出部台座の上に平面的に載置し、検出部台座をピッチ2mm/secで上方に変位させ、ナイフエッジ型プランジャーに試料片が当接後、試料片が破断するまでの最大荷重量を検出した値とする。
【0030】
乾燥小片は、電子顕微鏡でみた場合に表面組織の断片の大きさが平均径100μm程度以上、好ましくは150〜300μm程度となる表面組織を有するものであることが望ましい。上記のように、電子顕微鏡でみた場合に表面組織の断片が一定の大きさで認められるような物質的な特性を有する乾燥小片は、軽快なサクサク感を提供し得るものとなる。
乾燥小片の表面組織を電子顕微鏡でみる場合には、乾燥小片を金でコーティングし、これを電子顕微鏡で倍率75倍程度で見る。この場合に、乾燥小片の表面組織にはクレーター状の断片が認められ、その径の大きさの平均を測定すればよい。
【0031】
また、乾燥小片は、種々の風味のものに調製することが可能で、乾燥小片の風味に基づいて全体としての風味が調製された乾燥食品を得ることが可能となる。特に、乾燥小片を甘味や酸味を有するものとすることにより、爽やかでマイルドな風味の乾燥食品を得ることができ、牛乳をかけて食する場合に好適な乾燥食品となる。また、乾燥小片を塩味や酸味を有するものとすることにより、さっぱりとした風味のおつまみ用等の乾燥食品を得ることができる。
【0032】
他の食品の乾燥小片(本発明の乾燥小片と組み合せる乾燥食品)
本発明で上記の果実、野菜の乾燥小片と混合して使用する他の食品の乾燥小片としては、食品の種類を問わず、例えば、穀粉や澱粉生地を膨化させたパフ、シリアル、グラノーラ、穀物の乾燥物、チョコレート、ビスケット等の菓子類、魚介類、肉類の乾燥物等からなる食品が挙げられる。これらの乾燥小片の形状と大きさは、果実、野菜の乾燥小片の場合と同様のものとすればよい。乾燥小片を適宜風味付けし得ることは勿論である。乾燥食品に軽快なサクサク感を達成する上で、パフ、シリアル、グラノーラ、穀物の乾燥小片及び菓子類から選ばれた1つ以上を含むとよい。
【0033】
本発明の乾燥小片を含んでなる乾燥食品
本発明の乾燥食品は、以上の果実、野菜の乾燥小片の集合物からなるか、あるいは、該果実、野菜の乾燥小片の集合物15%以上と他の食品の乾燥小片の集合物とを含んで、果実、野菜の乾燥小片の食感に基づいて全体として軽快なサクサク感と特有の風味を有するように調製されたものである。通常以上の乾燥小片を混合状態とするとよい。
乾燥食品をより軽快なサクサク感と特有の風味を有するように、また、新しい形態や風味を有するように調製するための具体的な手段として、以下の1.〜5.のものが挙げられる。
【0034】
1.果実、野菜の乾燥小片の含有量
果実、野菜の乾燥小片の集合物を、乾燥食品中に15質量%以上、好ましくは40〜90質量%含む。果実、野菜の乾燥小片は特有の食感と風味を有し、これを上記範囲の量含むことで、乾燥食品をより軽快なサクサク感と特有の風味を有し、果実、野菜の乾燥小片で特徴づけられた新しい形態や風味のものにすることができる。乾燥小片の含量が15質量%を下回ると、食感と風味の改善効果が不十分となりやすく、果実、野菜の乾燥小片の見た目の存在感が乏しく、形態面の特長もでにくい。果実、野菜の乾燥小片単品で乾燥食品を構成することもできる。
更に、前記第1群の原料を用いて第1例の製法で得られた乾燥小片及び/又は第2群の原料を用いて第2例の製法で得られた乾燥小片の最終の乾燥食品に占める割合を50質量%以上、好ましくは70質量%以上とすれば、乾燥食品により軽快なサクサク感を達成できる。果実、野菜の乾燥小片及び他の食品の乾燥小片を含む場合に、他の食品の乾燥小片は、40質量%以下、好ましくは10〜40質量%含むと同様に食感と形態や風味の面からよい。
【0035】
2.風味の調整
果実、野菜の乾燥小片と他の食品の乾燥小片との組合せを以下のものとする。即ち、甘味や酸味付けした果実、野菜の乾燥小片と、同様に味付けした穀粉や澱粉生地を膨化させたパフ、シリアル、グラノーラ、穀物の乾燥物及び菓子類から選ばれた1つ以上等の乾燥小片との組合せが挙げられる。これによれば、軽快なサクサク感を有し、かつ爽やかでマイルドな風味(さっぱりとした酸味と甘味のバランスのとれた風味)の乾燥食品を得ることができ、牛乳をかけて食する場合に好適なものとなる。別に、塩味や酸味付けした果実、野菜の乾燥小片と、同様に味付けした穀粉や澱粉生地を膨化させたパフ、魚介類、肉類の乾燥物、シリアル、グラノーラ、穀物の乾燥物及び菓子類から選ばれた1つ以上等の乾燥小片との組合せが挙げられる。これによれば、軽快なサクサク感を有し、かつさっぱりとした風味のおつまみ用等の乾燥食品を得ることができる。
【0036】
3.酸味度
乾燥食品を、乾燥食品3質量部に対して水20質量部をかけ、これらをミキサーで粉砕した場合の粉砕物のpHが4〜5となるように調製する。つまり、このように調製した乾燥食品は、牛乳等をかけて食する場合等に、爽やかな酸味を有するものとなる
【0037】
4.喫食形態
乾燥食品を牛乳等をかけて食するためのものとする。果実、野菜の乾燥小片で食感や風味を特徴付けられた乾燥食品に牛乳をかけて食すれば、新しい形態の食品となる。上記2.の甘味や酸味付けした乾燥食品がこの用途に適する。本発明では、乾燥食品を牛乳等をかけて食する場合に、直ぐ食べると乾燥食品の軽快なサクサク感が供され、しばらくしてから食べると果実、野菜のソフトな食感が供されるという形態もとり得る。特に、前記第1群の原料を用いて第1例の製法で得られた果実、野菜の乾燥小片及び/又は第2群の原料を用いて第2例の製法で得られた乾燥小片を含むことで、このような性能をより適切に達成できる。
【0038】
5.健康度
果実、野菜の乾燥小片として、多種類、即ち、例えば5種類以上の果実類、野菜類を含むことで健康感をもたせる。即ち、多種類の果実類、野菜類によりビタミン等の栄養価のバランスのとれた乾燥食品を供することができ、牛乳等をかけて食する場合には更に斬新な形態となる。
【0039】
なお、本発明の乾燥食品には他の食品を含むこともでき、調味料、香料等を含んだり、乾燥した調味ソースの材料を含み、牛乳等をかけた場合にこれらが希釈されるようにすることもできる。また、乾燥食品をカップ容器に入れた形態とすることができ、牛乳等をかけて食したり、適当な一食分の栄養価が供される形態等としてもよい。
上記のものは、例示に過ぎず、本発明の技術思想に沿って種々応用変更ができることはいうまでもない。また、下記の実施例にも限定されない。
【0040】
【実施例】
実施例1
(乾燥スライスニンジン)
水洗し、へたを除いて約10mm×約10mm×厚さ約2mm程度の薄片にスライスしたニンジン150gを、液温100℃のトレハロース40%及び重曹0.15%を含有するpH約8.2のアルカリ水溶液500g中で6分間煮込み釜で煮込んで浸漬処理した。煮込み後釜の火を止めて10分間保持し浸漬処理を続けた。この場合に、アルカリ溶液の液温は煮込みの間95〜105℃で、保持の間70〜90℃であった。浸漬処理後のスライスニンジンを水切りし、熱風乾燥機に入れ、100℃の雰囲気下150分間、原料の水分約2%になるまで熱風乾燥して乾燥スライスニンジンを製造した。
この乾燥スライスニンジンは、硬すぎず軽快なサクサク感を有し、熱風乾燥しても褐変がなく、保存時に吸湿及び吸湿により糖分が再結晶化することがなく品質保持に優れたもので、以下の性能を有していた。
外形 約10mm×約10mm×厚さ約2mm
破断強度 923g
原料水分のトレハロースへの置換率 約16%
水分 約2%
【0041】
(乾燥スライス林檎)
水洗し、へたと皮と芯を除いて約10mm×約10mm×厚さ約2mm程度にスライスした林檎150gを、液温60℃のトレハロース40%及びビタミンC0.6%を含有する浸漬溶液500g中で60分間浸漬した。処理後の林檎を水切りし、熱風乾燥機に入れ、100℃の雰囲気下150分間、原料の水分約0.5%になるまで熱風乾燥して乾燥スライス林檎を製造した。
この乾燥スライス林檎は、多孔質で硬すぎず軽快なサクサク感を有し、熱風乾燥しても褐変がなく、保存時に吸湿及び吸湿により糖分が再結晶化することがなく品質保持に優れたもので、以下の性能を有していた。
外形 約10mm×約10mm×厚さ約2mm
破断強度 622g
比重 0.71
原料水分のトレハロースへの置換率 約10%
水分 約0.5%
【0042】
他の食品の乾燥小片
(フリーズドライのイチゴ、バナナ、キウイ)
常法によってフリーズドライした各々5mm角のダイス状のイチゴ、バナナ、キウイを得た。
(穀粉を膨化させたパフ)
各々粉体の大麦4質量部、キビ2質量部、コーン4質量部、砂糖1質量部を常法によってエクストルーダーでパフ化して、径5mm程度の略球形状のパフを得た。
【0043】
乾燥食品
上記のようにして得たスライスニンジン約5g、乾燥スライス林檎約10g、イチゴ2g、バナナ2g、キウイ2g及びパフ約9gを混合し、カップ容器に収容してカップ容器入りの乾燥食品を製造した。
この乾燥食品は、保存時に乾燥スライスのニンジン及び林檎が褐変する、糖分が再結晶化する等の劣化が見られなかった。また、乾燥食品に牛乳をかけて食すると、スライスニンジンとスライス林檎に基づいて全体としてサクサクした食感を有すると共に、甘味と酸味のある爽やかでマイルドな風味のものであった。な
お、前記段落
【0036】記載の方法、つまりこの乾燥食品3質量部に対して水20質量部をかけ、これらをミキサーで粉砕した場合の粉砕物のpHは約4.5であった。
【0044】
比較例1
(乾燥スライスニンジン)
浸漬処理を浸漬溶液に重曹を含まず、液温を60℃として240分間行う以外は、実施例1の場合と同様にして乾燥スライスニンジンを製造した。
この乾燥スライスニンジンは、組織が密で食感が硬いもので、以下の性能を有していた。
外形 約10mm×約10mm×厚さ約2mm
破断強度 2043g
原料水分のトレハロースへの置換率 約30%
(乾燥スライス林檎)
浸漬処理を浸漬溶液の液温を100℃として5分間処理した後、更に80℃で180分間行う以外は、実施例1の場合と同様にして乾燥スライス林檎を製造した。
この乾燥スライス林檎は、組織が密で食感が硬いもので、以下の性能を有していた。
外形 約10mm×約10mm×厚さ約2mm
破断強度 2800g
比重 1.22
原料水分のトレハロースへの置換率 約30%
尚、比較例における上記の乾燥スライスニンジン及び乾燥スライス林檎は、特開平11−269003号公報に記載の発明で推奨された原料水分のトレハロースへの置換率を達成するべく調製したものである。
【0045】
図1〜4は、比較例と対比した実施例のニンジン及び林檎のスライス片の乾燥食品の表面組織を示す電子顕微鏡写真である。これらの図面中、図1、2は実施例に関するものであり、図1は実施例1のニンジンスライス片、図2は林檎スライス片を示し、図3、4は比較例に関するものであり、図3は比較例1のニンジンスライス片、図2は林檎スライス片を示すものである。これらの図面から理解できるように、実施例のニンジン及び林檎のスライス片は共に比較例のものと対比して、組織断片がより大きくクレーター状に認められ(表面組織の断片の平均径約100μm以上)、表面組織が疎であり、乾燥スライス片の組織がより疎な多孔質となっていて、これにより軽快なサクサク感を提供しているものと推察できる。一方、比較例のスライス片では、表面組織の断片が平均径50μm程度に満たないクレーター状の輪郭として認められ、乾燥スライス片の組織が密なため食感が硬いものとなっているものと推察できる。
電子顕微鏡による評価は、前記段落
【0030】記載の方法、つまり乾燥小片を金でコーティングし、これを電子顕微鏡で倍率75倍程度で見て、乾燥小片の表面組織におけるクレーター状の断片の径の大きさの平均を測定することによって行った。
【0046】
乾燥食品
上記のようにして得た乾燥スライスニンジン及び乾燥スライス林檎を使用する以外は、実施例1の場合と同様にして乾燥食品を製造した。
この乾燥食品は、乾燥食品に牛乳をかけて食すると、スライスニンジンとスライス林檎の食感が硬く感じられ、全体としてサクサクした食感が実施例1のものに比べて不足し、口溶けが悪く、甘味と酸味のある爽やかでマイルドな風味を感じ難いものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた本発明の乾燥スライスニンジンの表面組織の電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1で得られた本発明の乾燥スライス林檎の表面組織の電子顕微鏡写真である。
【図3】比較例1で得られた先行技術の乾燥スライスニンジンの表面組織の電子顕微鏡写真である。
【図4】比較例1で得られた先行技術の乾燥スライス林檎の表面組織の電子顕微鏡写真である。
Claims (5)
- 果実類、野菜類を小さく切断した原料小片を90℃以下の温度のトレハロースの溶液に浸漬した後に80〜100℃の雰囲気下で乾燥することにより、
物性条件として、1)破断強度が300〜2000gであり、2)電子顕微鏡でみた場合に表面組織の断片の大きさが平均径100μm以上となる表面組織を有し、3)下記のトレハロースの置換率が1〜20%であり、かつ、4)比重が1以下である、以上の1)〜4)の物性条件を満たすノンフライ乾燥食品を製造すること特徴とする上記食品の製造方法。
ここに、置換率(%)=[{(ノンフライ乾燥食品の乾燥重量)−(原料小片の乾燥重量)}÷(原料小片に含まれる水分重量)]×100 - 前記トレハロースの溶液にビタミンCを含む、請求項1に記載のノンフライ乾燥食品の製造方法。
- 浸漬処理を60〜300分間行う請求項1又は2に記載のノンフライ乾燥食品の製造方法。
- トレハロースの置換率が5〜15%である請求項1〜3の何れか1項に記載のノンフライ乾燥食品の製造方法。
- 前記果実類が林檎である請求項1〜4の何れか1項に記載のノンフライ乾燥食品の製造方法。
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