JP2017100553A - 車両用空気吹き出し装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】コアンダ効果を向上させることのできる車両用空気吹き出し装置を提供する。【解決手段】車両用空気吹き出し装置10は、車両用空調装置20から吹き出される空調風を吹出口を介して車室内に導く通風路Xと、通風路X内に配置されるフラップ12とを備えている。フラップ12は、デフロストモードから別モードに切り替える際、フラップ12と後方側通風部分X1の流路断面積をデフロストモードのときよりも狭くすることにより、後方側通風部分X1を流れる気流の流速をデフロストモードのときよりも速くさせる。通風路Xの後方側通風部分X1側の壁面には、湾曲面11fが形成されている。湾曲面11fは、湾曲面11fに沿って流れる気流の流速が遅い領域ほど、湾曲面11fの曲率半径が大きくなるように形成されている。【選択図】図4

Description

本発明は、車両用空気吹き出し装置に関する。
特許文献1には、車両用空調装置により生成される空調風を車室内に導く車両用空気吹き出し装置が開示されている。空調風は、車室内を空調するための空気風である。この車両用空気吹き出し装置は、通風路を内部に有するケーシングと、通風路に配置されるフラップとを備えている。通風路は、インストルメントパネルの上面に形成された吹出口を介して空調風を車室内に導く通路である。通風路は、車両の上下方向に延びるように形成されている。吹出口は、インストルメントパネルの上面のフロントガラス側に設けられている。通風路におけるフラップが配置される通風部分は、フラップにより、車両後方側に位置する後方側通風部分と、車両前方側に位置する前方側通風部分とに区画されている。後方側通風部分の壁面は、ケーシングに形成された湾曲面を介してインストルメントパネルの上面に滑らかに繋がっている。フラップは、車両前後方向にスライド移動可能となっている。
特許文献1に記載の車両用空気吹き出し装置では、フラップを車両前後方向に移動させることにより、デフロストモードと、フェイスモードとを切り替え可能となっている。デフロストモードは、空調風をフロントガラスに吹き出すモードである。フェイスモードは、車両乗員の顔に向けて空調風を吹き出すモードである。
具体的には、特許文献1に記載の車両用空気吹き出し装置は、車両用空調装置の吹き出しモードがデフロストモードに設定されている場合、フラップを車両前方に移動させることにより、前方側通風部分の流路断面積を後方側通風部分の流路断面積よりも小さくする。これにより、前方側通風部分の気流の流速が後方側通風部分の気流の流速よりも速くなるため、高速の気流が前方側通風部分に沿って上向きに流れる。その結果、空調風をフロントガラスに向かって吹き出すことができる。
また、特許文献1に記載の車両用空気吹き出し装置は、車両用空調装置の吹き出しモードがフェイスモードに設定されている場合、フラップを車両後方側に移動させることにより、後方側通風部分の流路断面積を前方側通風部分の流路断面積よりも小さくする。これにより、後方側通風部分の気流の流速が前方側通風部分の気流の流速よりも速くなるため、高速の気流が後方側通風部分を流れる。この高速の気流は、コアンダ効果により湾曲面に沿って流れることで、車両後方側に曲げられる。その結果、車両乗員の顔に向けて空調風を吹き出すことができる。
特開2014−210564号公報
ところで、特許文献1に記載の車両用空気吹き出し装置の湾曲面は、一定の曲率半径を有している。曲率半径は、予め実験等により、コアンダ効果を発揮することのできる理想的な値に設定される。
一方、実際の車両では、デザイン性の観点から、様々な意匠面が存在する。そのため、特許文献1に記載の車両用空気吹き出し装置を実際の車両に搭載する際、車両のデザインに適合させて湾曲面の形状を変更せざるを得ない状況がある。このような状況において、デザイン性を優先して湾曲面を変更すると、湾曲面の曲率半径が理想的な値からずれる可能性がある。湾曲面の曲率半径が理想値からずれると、フェイスモードのときに、湾曲面でコアンダ効果を十分に発揮できないおそれがある。この場合、後方側通風部分を通過した気流を車両後方側に曲げることができないため、車両乗員に向けて空調風を吹き出せないおそれがある。
本発明は、このような課題に鑑みたものであり、その目的は、コアンダ効果を向上させることのできる車両用空気吹き出し装置を提供することである。
上記課題を解決する車両用空気吹き出し装置(10)は、車両用空調装置(20)から吹き出される空調風を吹出口を介して車室内に導く通風路(X)と、通風路内に配置されるフラップ(12)と、を備えている。空調風を吹出口(11a)を介してフロントガラス(2)に吹き出すモードをデフロストモードとし、デフロストモードとは異なる態様で空調風を吹き出すモードを別モードとするとき、フラップは、デフロストモードから別モードに切り替える際、フラップと通風路の内壁面(11g)との間に形成される通風部分(X1)の流路断面積をデフロストモードのときよりも狭くすることにより、通風部分を流れる気流の流速をデフロストモードのときよりも速くさせる。通風路の吹出口における通風部分側の壁面には、別モードの際に通風部分から吹き出される気流をコアンダ効果により沿わせて曲げる湾曲面が形成されている。湾曲面は、湾曲面に沿って流れる気流の流速が遅い領域ほど、湾曲面の曲率半径が大きくなるように形成されている。
湾曲面に沿って気流が流れる場合、湾曲面の曲率半径が小さくなるほど、湾曲面から気流が剥離し易くなる。また、気流の流速が遅いほど、湾曲面から気流が剥離し易くなる。よって、気流の流速に対して湾曲面の曲率半径が逆の相関となるように設定されていれば、湾曲面から気流が剥離し難くなる。具体的には、気流の流速が遅い領域ほど、湾曲面の曲率半径を大きくすれば、湾曲面から気流が剥離し難くなる。よって、上記構成のように、通風部分を通過した気流の流速の変化に合わせて、湾曲面に沿って流れる気流の流速が遅い領域ほど、湾曲面の曲率半径を大きくすれば、湾曲面の曲率半径が一定の場合と比較すると、湾曲面から気流が剥離し難くなる。結果として、湾曲面の曲率半径が一定の場合と比較すると、コアンダ効果を向上させることができる。
本発明によれば、コアンダ効果を向上させることのできる車両用空気吹き出し装置を提供することができる。
実施形態の車両用空気吹き出し装置の断面構造を車両用空調装置の断面構造と共に示す断面図である。 実施形態の車両用空調装置の構造を模式的に示す模式図である。 実施形態の車両用空気吹き出し装置を吹出口側から見た平面構造を示す平面図である。 実施形態の車両用空気吹き出し装置におけるデフロストモード時のフラップ周辺の拡大断面構造を示す断面図である。 実施形態の車両用空気吹き出し装置におけるフェイスモード時のフラップ周辺の拡大断面構造を示す断面図である。 実施形態の車両用空気吹き出し装置における湾曲面上の位置と気流の流速との関係を示すグラフである。 実施形態の車両用空気吹き出し装置における湾曲面上の位置と湾曲面の曲率半径との関係を示すグラフである。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1に示されるように、車両用空気吹き出し装置10は、車両に搭載され、車両用空調装置20の空調ケース21から吹き出される空調風を吹出口11aを介して車室内に導く装置である。なお、本実施形態に係る車両用空気吹き出し装置10と同様の構成のものは、一般に「ハイブリッドデフ装置」とも呼ばれる。
車両用空調装置20は、車室内の前席の前方に配置されたインストルメントパネル1の内部に配置されている。図2に示されるように、車両用空調装置20は、外殻を構成する空調ケース21を有している。この空調ケース21は、空調対象空間である車室内へ空気を導く空気通路を構成している。空調ケース21の空気流れ最上流部には、車室内空気(内気)を吸入する内気吸入口22と車室外空気(外気)を吸入する外気吸入口23とが形成されると共に、各吸入口22、23を選択的に開閉する吸入口開閉ドア24が設けられている。これら内気吸入口22、外気吸入口23、及び吸入口開閉ドア24は、空調ケース21内への吸入空気を内気及び外気に切り替える内外気切替手段を構成している。なお、吸入口開閉ドア24は、図示しない制御装置から出力される制御信号により、その作動が制御される。吸入口開閉ドア24の空気流れ下流側には、車室内へ空気を送風する送風手段としての送風機25が配置されている。
送風機25の空気流れ下流側には、送風機25により送風された空調風を冷却する蒸発器26が配置されている。蒸発器26は、その内部を流通する冷媒と空調風とを熱交換させる熱交換器であり、図示しない圧縮機、凝縮器、膨張弁等と共に蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成するものである。
蒸発器26の空気流れ下流側には、蒸発器26にて冷却された空気を加熱するヒータコア27が配置されている。本実施形態のヒータコア27は、車両エンジンの冷却水を熱源として空気を加熱する熱交換器である。また、蒸発器26の空気流れ下流側には、蒸発器26通過後の空気を、ヒータコア27を迂回して流す冷風バイパス通路28が形成されている。
ここで、ヒータコア27及び冷風バイパス通路28の空気流れ下流側にて混合される空調風の温度は、ヒータコア27を通過する空調風及び冷風バイパス通路28を通過する空調風の風量割合によって変化する。
このため、蒸発器26の空気流れ下流側であって、ヒータコア27及び冷風バイパス通路28の入口側には、エアミックスドア29が配置されている。このエアミックスドア29は、ヒータコア27及び冷風バイパス通路28へ流入する冷風の風量割合を連続的に変化させるもので、蒸発器26及びヒータコア27と共に温度調整手段として機能する。エアミックスドア29は、制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御される。
空調ケース21の空調風流れ最下流部には、デフロスタ/フェイス開口部30及びフット開口部31が設けられている。デフロスタ/フェイス開口部30は、車両用空気吹き出し装置10を介して、インストルメントパネル1の上面1aに設けられた吹出口11aに連通している。吹出口11aは、インストルメントパネル1の上面1aにおいて車両上方に向けて開口している。フット開口部31は、フットダクト32を介して、フット吹出口33に連通している。
そして、上記各開口部30、31の空気流れ上流側には、デフロスタ/フェイス開口部30を開閉するデフロスタ/フェイスドア34と、フット開口部31を開閉するフットドア35とが配置されている。デフロスタ/フェイスドア34及びフットドア35は、車室内への空気の吹出状態を切り替える吹出モードドアである。
図1に示されるように、車両用空気吹き出し装置10は、インストルメントパネル1内に配置され、デフロスタ/フェイス開口部30と連通することで、デフロスタ/フェイス開口部30から吹き出された空調風を車室内に導くようになっている。
次に、車両用空気吹き出し装置10の構成について説明する。車両用空気吹き出し装置10は、主ケーシング11と、フラップ12と、複数のルーバ13と、駆動機構14とを有している。なお、図1及び図3〜図5では、車両に固定された上下、左右、前後方向との対応関係を示している。以下では、上、下、右、左、前、後と単に記載するものは、車両を基準とした上、下、右、左、前、後をいう。
主ケーシング11は、デフロスタ/フェイス開口部30から吹き出された空調風を吹出口11aを介して車室内に導く通風路Xを囲むダクトである。通風路Xは、車両上下方向に延びるように形成されている。この主ケーシング11によって囲まれる通風路Xには、フラップ12、複数のルーバ13等が配置されている。
図3及び図4に示されるように、主ケーシング11は、後側壁11b、前側壁11c、左側壁11d、右側壁11eを備えた無底筒形状の部材である。後側壁11bは、上下方向に平行な内壁面11gと、内壁面11gからインストルメントパネル1の上面1aに滑らかに繋がる湾曲面11fとを有している。湾曲面11fは、上方に延びるにつれて緩やかに車両後方側に曲がっている。なお、図中の符号T1は、湾曲面11fにおける内壁面11g側のR止まり、すなわち気流の上流側のR止まりを示す。なお、R止まりとは、湾曲面と平面との境界部分を示す。また、符号T2は、インストルメントパネル1の上面1a側のR止まり、すなわち下流側のR止まりを示す。以下では、R止まりT1を「上流側R止まり」と称し、R止まりT2を「下流側R止まり」と称する。図1に示されるように、主ケーシング11の下方端は、上述のデフロスタ/フェイス開口部30と接続され、上方端は吹出口11aとなっている。
吹出口11aは、デフロストモード、及びフェイスモードの2つの吹出モードにおいて主ケーシング11から導かれた空調風を吹き出す吹出口である。ここで、デフロストモードは、空調風を吹出口11aを介してフロントガラス2に吹き出し、フロントガラス2の曇りを晴らす吹出モードである。フェイスモードは、前席乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出モードである。フェイスモードは、デフロストモードとは異なる態様で空調風を吹き出す別モードの一例にも相当する。
吹出口11aは、車幅方向に細長く延びた形状であり、運転席の正面及び助手席の正面にわたって配置されている。なお、吹出口11aの車幅方向長さ及び上面1aにおける配置場所は任意に変更可能である。
フラップ12は、通風路Xに配置される羽形状の部材である。駆動機構14がこのフラップ12を駆動してフラップ12の傾き角(姿勢の一例に相当する)を変化させることで、デフロストモードとフェイスモードを切り替えることができる。
図3に示されるように、フラップ12は、2枚の板部材を有し、それら板部材の各々は、フラップシャフト15に固定され、フラップシャフト15を中心として互いに対称的に延びている。これら2枚の板部材は、主ケーシング11の内部の通風路Xにおいて、フラップシャフト15の長手方向の殆どの部分から、フラップシャフト15の回転中心から離れるように、延びている。このように構成されたフラップ12は、フラップシャフト15と同軸かつ一体的に左右方向を軸として回転する。
フラップシャフト15は、主ケーシング11を左右方向に真っ直ぐ貫通する位置に配置され、一端が主ケーシング11の右側壁11eに軸支され、他端が駆動機構14に連結される棒形状の部材である。このフラップシャフト15は、両端の間の部分で左側壁11dに軸支されている。また、フラップシャフト15は、駆動機構14から伝達される動力に基づき回転する。
複数のルーバ13は、通風路Xにおいて吹出口11aの長手方向に一列に並んで配置され、吹出口11aの長手方向における空調風の送風量分布を調整するために駆動機構14によって駆動される。なお、本実施形態では、複数のルーバ13の並び方向は、車両左右方向と一致する。
図4に示されるように、各ルーバ13は、2枚の平板部材を有し、それら板部材の各々は、複数のルーバ13にそれぞれ対応するルーバシャフト16に固定され、ルーバシャフト16を中心として互いに対称的に延びている。図3に示されるように、これら2枚の板部材は、主ケーシング11の内部の通風路Xにおいて、ルーバシャフト16の長手方向の殆どの部分から、ルーバシャフト16の回転中心から離れるように、延びている。このように構成された各ルーバ13は、ルーバシャフト16と同軸かつ一体的に前後方向を軸として回転する。
ルーバシャフト16の各々は、前後方向に真っ直ぐ延びる棒形状の部材である。また、ルーバシャフト16は、それぞれ前端側が主ケーシング11の前側壁11cを貫通して前側壁11cに軸支されると共に、後端が後側壁11bの内壁面11gの部分に軸支される。そして、ルーバシャフト16の各々は、フラップシャフト15及びフラップ12よりも下方に位置する。ルーバシャフト16は、駆動機構14から伝達される動力に基づき回転する。なお、後側壁11bの湾曲面11fがルーバシャフト16の後端の部分まで延びている場合、ルーバシャフト16の後端は、後側壁11bの湾曲面11fの部分に軸支されていてもよい。
次に、車両用空気吹き出し装置10の動作について説明する。
デフロストモード時には、駆動機構14は、ルーバシャフト16を回転させてルーバ13の回転角度を調整することにより、吹出口11aから車室内に導かれる空調風の車両左右方向の広がりを調整する。
また、デフロストモード時には、駆動機構14は、図4に示されるように、フラップ12が上下方向に対して45°だけ傾いた状態となるようにフラップシャフト15を回転させる。すなわち、フラップ12は、フラップシャフト15の回転中心から、上下方向に対して、左側からみて時計回りに45°の傾斜角度で延びている。
このようなデフロストモード時には、空調ケース21のデフロスタ/フェイス開口部30から車両用空気吹き出し装置10の通風路Xに入った空調風はルーバ13を通過してフラップ12へと導かれ、フラップ12の横を通過する。デフロストモード時は、後述するフェイスモード時と比べて、フラップ12と通風路Xの後方側の内壁面11gとの間に形成される後方側通風部分X1の流路断面積が広くなる。したがって、後方側通風部分X1に高速の気流が十分形成されず、前側壁11cに沿って上向きに流れる。この結果、車両用空調装置20で温度調整された空調風は、吹出口11aからフロントガラス2に向かって吹き出される。これにより、フロントガラス2の曇りを解消することができる。
一方、フェイスモード時には、駆動機構14は、ルーバシャフト16を回転させてルーバ13の回転角度を調整することにより、吹出口11aから車室内に導かれる空調風の車両左右方向の広がりを調整する。
また、フェイスモード時には、駆動機構14は、図5に示されるように、フラップ12が上下方向に対して60°だけ傾いた状態となるようにフラップシャフト15を回転させる。すなわち、フラップ12は、フラップシャフト15の回転中心から、上下方向に対して、左側からみて時計回りに60°の傾斜角度で延びている。
このようなフェイスモード時には、空調ケース21のデフロスタ/フェイス開口部30から車両用空気吹き出し装置10の通風路Xに入った空調風はルーバ13を通過してフラップ12の横を通過する。フェイスモード時は、デフロストモード時と比べて、後方側通風部分X1の流路断面積が狭くなる。したがって、後方側通風部分X1を流れる気流の流速をデフロストモードよりも速くさせることができる。これにより、後方側通風部分X1に高速の気流が形成されると共に、フラップ12と通風路Xの前方側の内壁面11hとの間に形成される前方側通風部分X2に低速の気流が形成される。
高速の気流となった空調風は、コアンダ効果によって湾曲面11f及びインストルメントパネル1の上面1aに沿って流れることで、車両後方側に曲げられる。この結果、車両用空調装置20で温度調整された空調風(例えば冷風)は、吹出口11aから乗員の上半身に向かって吹き出される。
ところで、実際の車両では、デザイン性の観点から湾曲面11fの形状を変更せざるを得ない状況がある。このような状況では、湾曲面11fの理想的な形状からずれると、フェイスモード時に湾曲面11fでコアンダ効果を十分に発揮できないおそれがある。この場合、後方側通風部分X1を通過した気流を車両後方側に曲げることができないため、乗員に向けて空調風を吹き出せないおそれがある。
そこで、本実施形態の車両用空気吹き出し装置10では、後方側通風部分X1を通過した気流の流速に合わせて湾曲面11fの曲率半径を変化させることにより、コアンダ効果を向上させている。
次に、湾曲面11fの形状について詳しく説明する。
コアンダ効果を発揮するためには、湾曲面11fから気流が剥離しないことが条件となる。ここで、湾曲面11fに沿って気流が流れる場合、湾曲面11fの曲率半径が小さくなるほど、湾曲面11fから気流が剥離し易くなる。また、気流の流速が遅いほど、湾曲面11fから気流が剥離し易くなる。よって、気流の流速に対して湾曲面11fの曲率半径が逆の相関となるように設定すれば、湾曲面11fから気流が剥離し難くなる。
具体的には、湾曲面11fから気流が剥離しない湾曲面11fの代表長さを「L」とすると、代表長さLは、臨界レイノルズ数Reを用いた次式f1で表すことができる。但し、「ν」は空気の動粘性係数を示し、「v」は気流の流速を示す。
L=Re・ν/v (f1)
ここで、湾曲面11fの代表長さLとして湾曲面11fの曲率半径rminを用いると、式f1を次式f2のように変形することができる。
min=Re・ν/v (f2)
この式f2から得られる「rmin」が、湾曲面11fから気流が剥離しない湾曲面11fの曲率半径の下限値となる。すなわち、湾曲面11fの実際の曲率半径rが、式f2から得られる曲率半径の下限値rmin以上であれば、湾曲面11fから気流が剥離しない、すなわちコアンダ効果を得られることになる。
一方、後方側通風部分X1を通過した気流の流速vは、下流側に向かうほど遅くなる。具体的には、湾曲面11fの曲率半径rが一定値である場合、湾曲面11f上の位置θに応じて気流の流速vは図6に示されるように変化する。なお、湾曲面11f上の位置θは、図5に示されるように、湾曲面11fの上流側R止まりT1の位置を「0°」とし、湾曲面11fの下流側R止まりT2の位置を「90°」とした際の回転角度に対する位置である。図6に示されるように、気流の流速vは、上流側R止まりT1から下流側R止まりT2に向かうほど、すなわち気流の下流に向かうほど遅くなる。
ここで、式(f2)において空気の動粘性係数νは定数であるため、臨界レイノルズ数Reとして実験等で得られる一定の値を用いると、気流の流速vと曲率半径の下限値rminとの乗算値は一定値となる。したがって、気流の流速vが遅くなるほど、曲率半径の下限値rminが大きくなる。よって、湾曲面11f上の位置θと曲率半径の下限値rminとの関係は図7に示されるようになる。すなわち、曲率半径の下限値rminは、上流側R止まりT1から下流側R止まりT2に向かうほど大きくなる。なお、図7における「r1」は、下流側R止まりT2における湾曲面11fの曲率半径を示している。
よって、湾曲面11fの曲率半径rを、図7に示される曲率半径の下限値rminに対して次式f3を満たすように設定すれば、湾曲面11fから気流が剥離しない、すなわちコアンダ効果を得ることができる。
min≦r<r1 (f3)
なお、図7には、式f3を満たす領域が点ハッチングの領域で示されている。
以上の原理に鑑み、本実施形態の車両用空気吹き出し装置10では、図5に示されるように、湾曲面11fが、式f3を満たしつつ、上流側R止まりT1の位置から下流側R止まりT2の位置に向かうほど、曲率半径rが徐々に大きくなるように形成されている。なお、図5には、曲率半径rが一定値である場合の湾曲面11fの形状が参考例として二点鎖線で示されている。
以上説明した本実施形態の車両用空気吹き出し装置10によれば、以下の(1)〜(3)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)通風路Xの吹出口11aにおける後方側通風部分X1の内壁面には、フェイスモード時に後方側通風部分X1から吹き出される気流をコアンダ効果により沿わせて曲げる湾曲面11fが形成されている。湾曲面11fは、湾曲面11fに沿って流れる気流の流速が遅い領域ほど、湾曲面11fの曲率半径rが大きくなるように形成されている。これにより、湾曲面11fの曲率半径rが一定の場合と比較すると、湾曲面11fから気流が剥離し難くなる。結果として、湾曲面11fの曲率半径rが一定の場合と比較すると、コアンダ効果を向上させることができる。
(2)湾曲面11fは、気流の上流側から下流側に向かうほど、湾曲面11fの曲率半径rが大きくなるように形成されている。これにより、湾曲面11fから気流が剥離し難くなるため、コアンダ効果を向上させることができる。
(3)湾曲面11fの曲率半径rは、湾曲面11fから気流が剥離しない湾曲面11fの曲率半径の下限値rmin、及び湾曲面11fの下流側R止まりT2における曲率半径r1に基づいて、式f3を満たすように設定されている。また、曲率半径の下限値rminは、式f2に基づいて設定されている。これにより、湾曲面11fから気流が剥離し難くなるように湾曲面11fの曲率半径rを設定することができる。
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・車両用空気吹き出し装置10の構造は適宜変更可能である。例えば車両用空気吹き出し装置10は、ルーバ13が設けられていない構造であってもよい。
・湾曲面11fの曲率半径rは、図5に示される形状を満たすように設定されている場合に限らない。湾曲面11fの曲率半径rは、式f3を満たすように設定されていれば、適宜変更可能である。
・デフロストモードとは異なる態様で空調風を吹き出す別モードは、フェイスモードに限らず、任意の吹き出しモードを採用することができる。この種の別モードとしては、例えば前席乗員の上半身から若干ずれた位置に向けて空気を吹き出すモード等がある。
・本発明は上記の具体例に限定されるものではない。すなわち、上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
X:通風路
X1:通風部分
2:フロントガラス
10:車両用空気吹き出し装置
11a:吹出口
11g:内壁面
12:フラップ
20:車両用空調装置

Claims (4)

  1. 車両用空調装置(20)から吹き出される空調風を吹出口を介して車室内に導く通風路(X)と、
    前記通風路内に配置されるフラップ(12)と、を備え、
    前記空調風を前記吹出口(11a)を介してフロントガラス(2)に吹き出すモードをデフロストモードとし、前記デフロストモードとは異なる態様で空調風を吹き出すモードを別モードとするとき、
    前記フラップは、前記デフロストモードから前記別モードに切り替える際、前記フラップと前記通風路の内壁面(11g)との間に形成される通風部分(X1)の流路断面積を前記デフロストモードのときよりも狭くすることにより、前記通風部分を流れる気流の流速を前記デフロストモードのときよりも速くさせ、
    前記通風路の前記吹出口における前記通風部分側の内壁面には、前記別モードの際に前記通風部分から吹き出される気流をコアンダ効果により沿わせて曲げる湾曲面(11f)が形成され、
    前記湾曲面は、前記湾曲面に沿って流れる気流の流速が遅い領域ほど、前記湾曲面の曲率半径が大きくなるように形成されている
    車両用空気吹き出し装置。
  2. 前記湾曲面は、気流の上流側から下流側に向かうほど、前記湾曲面の曲率半径が大きくなるように形成されている
    請求項1に記載の車両用空気吹き出し装置。
  3. 臨界レイノルズ数をRe、空気の動粘性係数をν、気流の流速をvとするとき、前記曲率半径の下限値rminが次式、
    min=Re・ν/v
    に基づいて設定され、
    前記湾曲面の気流の下流側R止まりにおける曲率半径をr1とするとき、前記曲率半径rが次式、
    min≦r<r1
    を満たすように設定されている
    請求項1又は2に記載の車両用空気吹き出し装置。
  4. 前記湾曲面に沿って流れる気流が前記湾曲面から剥離しない前記曲率半径の下限値をrmin、前記湾曲面における気流の下流側R止まりにおける曲率半径をr1とするとき、前記曲率半径rが次式、
    min≦r<r1
    を満たすように設定されている
    請求項1又は2に記載の車両用空気吹き出し装置。
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