以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本発明の実施形態である車両用空気吹き出し装置10は、車両50(図2を参照)の車室内に、空調装置20からの空調風を吹き出すための装置である。車両用空気吹き出し装置10の説明に先立ち、図1を参照しながら空調装置20の構成について説明する。尚、以下では、上、下、右、左、前、後と単に記載するものは、車両50を基準とした上、下、右、左、前、後をいう。
空調装置20は、車室内の前席の前方に配置されたインストルメントパネル1(図1では不図示。図2を参照)の内部に配置されている。空調装置20は、外殻を構成する空調ケース21を有する。この空調ケース21は、空調対象空間である車室内へ空気を導く空気通路を構成している。空調ケース21の空気流れ最上流部には、車室内空気(内気)を吸入する内気吸入口22と車室外空気(外気)を吸入する外気吸入口23とが形成されると共に、各吸入口22、23を選択的に開閉する吸入口開閉ドア24が設けられている。これら内気吸入口22、外気吸入口23、および吸入口開閉ドア24は、空調ケース21内への吸入空気を内気および外気に切り替える内外気切替手段を構成している。尚、吸入口開閉ドア24は、不図示の制御装置から出力される駆動信号により、その作動が制御される。
吸入口開閉ドア24の空気流れ下流側には、車室内へ空気を送風する送風手段としての送風機25が配置されている。送風機25は、遠心ファン25aと、ファンモータ25bとを有している。ファンモータ25bは、制御装置から出力される駆動信号により、その作動が制御される。
送風機25の空気流れ下流側には、送風機25により送風された空調風を冷却する蒸発器26が配置されている。蒸発器26は、その内部を流通する冷媒と空調風とを熱交換させる熱交換器であり、図示しない圧縮機、凝縮器、膨張弁等と共に蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成するものである。
蒸発器26の空気流れ下流側には、蒸発器26にて冷却された空気を加熱するヒータコア27が配置されている。本実施形態のヒータコア27は、車両エンジンの冷却水を熱源として空気を加熱する熱交換器である。また、蒸発器26の空気流れ下流側には、蒸発器26通過後の空気を、ヒータコア27を迂回して流す冷風バイパス通路28が形成されている。
ここで、ヒータコア27および冷風バイパス通路28の空気流れ下流側にて混合される空調風の温度は、ヒータコア27を通過する空調風および冷風バイパス通路28を通過する空調風の風量割合によって変化する。
このため、蒸発器26の空気流れ下流側であって、ヒータコア27および冷風バイパス通路28の入口側には、エアミックスドア29が配置されている。このエアミックスドア29は、ヒータコア27および冷風バイパス通路28へ流入する冷風の風量割合を連続的に変化させるもので、蒸発器26およびヒータコア27と共に温度調整手段として機能する。エアミックスドア29は、制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御される。
空調ケース21の空調風流れ最下流部には、デフロスタ/フェイス開口部30およびフット開口部31が設けられている。デフロスタ/フェイス開口部30は、車両用空気吹き出し装置10を介して、インストルメントパネル1の上面1aに連通している。尚、図1においては、車両用空気吹き出し装置10の形状を簡略化して直線状に描いているが、実際の形状(図2を参照)はこれとは異なる。フット開口部31は、フットダクト32を介して、フット吹出口33に連通している。
そして、上記各開口部30、31の空気流れ上流側には、デフロスタ/フェイス開口部30を開閉するデフロスタ/フェイスドア34、フット開口部31を開閉するフットドア35が配置されている。デフロスタ/フェイスドア34およびフットドア35は、車室内への空気の吹出状態を切り替える吹出モードドアである。
図2乃至5を参照しながら、車両用空気吹き出し装置10の構成について説明する。車両用空気吹き出し装置10は、空調装置20の空調ケース21から出た空調風を車室内に導く装置である。このため、図2に示されるように、車両用空気吹き出し装置10は、空調ケース21と、インストルメントパネル1の上面1aとの間を繋いでいる。尚、本実施形態に係る車両用空気吹き出し装置10と同様の構成のものは、一般に「ハイブリッドデフ装置」とも称される。
車両用空気吹き出し装置10は、インストルメントパネル1の内側に配置され、デフロスタ/フェイス開口部30と連通することで、デフロスタ/フェイス開口部30から吹き出た空調風を車室内に導くようになっている。
車両用空気吹き出し装置10は、主ケーシング11、フラップ12、10個のルーバ261a〜270a、及び駆動機構14を有している。尚、図2乃至4においては、10個のルーバ261a〜270aのうちルーバ261aのみが図示されている。
主ケーシング11は、デフロスタ/フェイス開口部30から出た空調風を車室内に導く案内流路Xを囲むダクトである。つまり、主ケーシング11は、空気の流路である案内流路Xを区画する流路壁となっている。案内流路Xには、フラップ12、ルーバ261a〜270a等も配置される。主ケーシング11は、空気の入口、すなわち空調装置20から空気が流入する部分である入口部111と、空気の出口、すなわち車室内に空気が噴き出る部分である出口部112とを有している。入口部111は、デフロスタ/フェイス開口部30に接続されている。出口部112には、車室内に空気を吹き出すための開口OPが形成されている。
出口部112の開口OPは、車幅方向に細長く延びた形状の開口であり、運転席の正面および助手席の正面にわたって形成されている。尚、開口OPの車幅方向長さおよび上面1aにおける配置場所は任意に変更可能である。
本実施形態では、インストルメントパネル1の内側に設置された他の機器(不図示)との干渉を避けるために、空調装置20の位置は、出口部112に対して後方側にオフセットした位置となっている。このため、入口部111から空気が流入する方向に沿って見たときにおいて、出口部112は、入口部111の位置に対して前方側にずれた位置に設けられている。尚、ここでいう「ずれた位置」とは、入口部111から案内流路Xに流入した空気が、その流れ方向を途中で変えない限り到達し得ないような出口部112の位置のことを言う。
主ケーシング11の内部に形成された案内流路Xは、その全体が屈曲した流路となっている。空調装置20のデフロスタ/フェイス開口部30から出た空調風は、上方側に向かって主ケーシング11の内部に流入した後、車両50の前方側に向かってその流れ方向を変える。更にその後、下流側に行くに従って流れ方向を上方側に向けて変化させて行き、最終的には上方側に向かいながら出口部112に到達する。
図2に示されるように、主ケーシング11のうち下方側の部分、具体的には、屈曲した案内流路Xの外周側を区画している部分において、主ケーシング11の内壁の一部が階段状となっている。それぞれの段差部分(空気の流れ方向に対して垂直な部分)には衝突面115a、115b、115cが形成されている。
このような衝突面115a、115b、115cは、案内流路Xを区画する壁面の一部を内側に向けて突出させたもの、ということもできる。このため、衝突面115a、115b、115cのそれぞれは、案内流路Xを空気が流れる方向に対して概ね垂直な面となっている。衝突面115a、115b、115cは、空気の流れ方向に沿って、上流側からこの順に並ぶように配置されている。衝突面115a、115b、115cが形成されていることによる効果については、後に説明する。
主ケーシング11のうち上方側の部分は、コアンダ壁113、前側壁114を備えた筒形状となっている。図3に示されるように、コアンダ壁113は、上方に延びるにつれて緩やかに車両後方側に曲がるコアンダ面113aを、案内流路X側に形成する壁である。
本実施形態では、空調装置20からの空調風を車室内に供給するためのモードとして、デフロストモードと、循環風モードと、フェイスモードと、フットモードとが用意されている。デフロストモードは、開口OPから吹き出された空調風を上方のフロントガラス2(図2を参照)に向かわせて、フロントガラスの曇りを晴らすモードである。循環風モードは、例えば乗員の頭上の空間を通過するような方向に向けて開口OPから空調風を吹き出して、空調風を車室内で循環させるモードである。フェイスモードは、開口OPから吹き出された空調風を乗員の上半身に向かわせるモードである。フットモードは、フット吹出口33から吹き出された空調風を乗員の足元に向かわせるモードである。
上記のように、フットモード以外のモードでは、空調装置20からの空調風はいずれも出口部112の開口OPから車室内に吹き出される。車両用空気吹き出し装置10は、主ケーシング11の内部に配置されたフラップ12の角度を調整することにより、開口OPから吹き出された空気の方向を各モードに合わせて変化させる。
フラップ12は、案内流路Xに配置される羽形状の部材である。駆動機構14がこのフラップ12を駆動してフラップ12の傾斜角を変化させることで、デフロストモードとデフロストモード以外のモードとを切り替えることができる。ここでいう「デフロストモード以外のモード」とは、本実施形態においては循環風モードとフェイスモードのことである。
フラップ12は、2枚の板部材を有している。それら板部材の各々は、主ケーシング11の内部の案内流路Xにおいて、フラップシャフト227の長手方向の殆どの部分から、フラップシャフト227の回転中心から離れるように、延びている。これら2枚の板部材は、フラップシャフト227に固定され、フラップシャフト227を中心として互いに対称的に延びている。このように構成されたフラップ12は、フラップシャフト227と同軸かつ一体的に左右方向を軸として回転する。フラップシャフト227は、その両端が回転自在な状態で軸支された棒形状の部材である。
フェイスモードにおいては、図3に示されるように、フラップ12の板部材が延びる方向が、鉛直方向に対して60度を成すような状態とされる。このとき、フラップ12とコアンダ壁113との間に形成される流路が狭くなるので、当該流路を通過する空気の流速は大きくなる。つまり、コアンダ壁113の内面、すなわちコアンダ面113aに沿って高速気流が形成された状態となる。
本発明者らが行った検証によれば、壁面に沿って流れる空気の流速が大きくなる程、当該空気の流れ方向が壁面に沿って変化する傾向は強くなることが判っている。つまり、空気の流速が大きくなる程、所謂コアンダ効果が生じやすくなる。このため、図3に示されるような高速気流が形成された状態においては、主ケーシング11の内部(案内流路X)を上方に向かって流れる空気の多くはコアンダ面113aに沿ってその流れ方向を変化させ、乗員側、すなわち車両50の後方側に向かって吹き出されることとなる。このように、コアンダ面113aは、吹き出される空気の少なくとも一部を、コアンダ効果により車両50の後方側に向かうよう案内するものとして機能する。
デフロストモードにおいては、図4に示されるように、フラップ12の板部材が延びる方向が、鉛直方向に対して45度を成すような状態とされる。このとき、フラップ12とコアンダ壁113との間に形成される流路が広くなるので、当該流路を通過する空気の流速は小さくなる。つまり、図3に示されるような高速気流は形成されず、コアンダ面113aに沿って流れる空気の流速が小さくなる。
その結果、図4に示される状態においては、主ケーシング11の内部(案内流路X)を上方に向かって流れる空気は、コアンダ面113aに沿ってその流れ方向を殆ど変化させることなく、上方側に向かって、すなわちフロントガラス2に向かって吹き出されることとなる。
循環風モードにおいては、フラップ12の板部材が延びる方向が鉛直方向に対してなす角度は、45度よりも大きく且つ60度よりも小さな角度となるように調整される。
図5を参照しながら、ルーバ261a〜270aの構成について説明する。ルーバ261a〜270aは、案内流路Xのうちフラップ12よりも上流側となる位置において、開口OPの延びる方向に沿って一例に並んで配置されている。ルーバ261a〜270aは、出口部112から吹き出される空気の、左右方向における広がりを調整するための機構である。
ルーバ261a〜270aのそれぞれは、2枚の平板部材を有している。それら板部材の各々は、主ケーシング11の内部の案内流路Xにおいて、ルーバシャフト261〜270の長手方向の殆どの部分から、ルーバシャフト261〜270の回転中心から離れるように、延びている。また、これら2枚の板部材は、ルーバシャフト261〜270に固定され、ルーバシャフト261〜270を中心として互いに対称的に延びている。このように構成されたルーバ261a〜270aは、ルーバシャフト261〜270と同軸かつ一体的に前後方向を軸として回転する。
図5に示される状態においては、ルーバ261a〜270aのそれぞれの傾斜角度は、吹き出される空気が左右方向に広がるような角度となっている。駆動機構14により、ルーバ261a〜270aのそれぞれの角度を個別に変化させることが可能となっている。このようなルーバ261a等の角度調整を実現するための具体的な構成については図示を省略するが、例えばルーバ毎に個別のモータを設けたり、ギヤの減速比をルーバ毎に異ならせたりする等、既知の構成を組み合わせることにより実現可能である。
図6を参照しながら、主ケーシング11の内部における空気の流れについて説明する。図6においては、当該空気の流れが矢印AR1等により示されている。図6においては、フラップ12及びルーバ261a〜270aの図示が省略されている。
入口部111から案内流路X内に流入した空気は、矢印AR1で示されるように、車両の前方側に向かって流れる。その後は、既に述べたように、空気は下流側に行くに従って流れ方向を上方側に向けて変化させて行き、最終的には上方側に向かいながら出口部112に到達する。
案内流路Xは、その全体が屈曲した流路として形成されている。案内流路Xを流れた空気が出口部112から吹き出される際においては、上記屈曲の影響により、空気の吹き出し方向が車両前方側に向かって傾斜してしまう傾向がある。つまり、空気の吹き出し方向が、屈曲した流路の外周側となる方向に偏ってしまう傾向がある。図6においては、このような空気の流れが点線の矢印AR7で示されている。このように、空気の吹き出し方向が偏ってしまうと、フラップ12やルーバ261a〜270aによる吹き出し方向の調整がうまくいかず、設計通りの位置に空気が吹き出されない可能性がある。
そこで、本実施形態では、案内流路Xの途中に衝突面115a、115b、115cを形成することで、上記のような吹き出し方向の偏りを抑制している。本実施形態では、主ケーシング11の壁面に沿って流れている一部の空気は衝突面115aに衝突して、その流れ方向を変化させる。具体的には、壁面(主ケーシング11の内面)から離れて上方側、すなわち出口部112側に向かうようにその流れ方向を変化させる。図6では、このような空気の流れが矢印AR2で示されている。
その下流側においても同様に、主ケーシング11の壁面に沿って流れている一部の空気は衝突面115bに衝突して、その流れ方向を変化させる。ここでも、空気は壁面から離れて上方側、すなわち出口部112側に向かうようにその流れ方向を変化させる。図6では、このような空気の流れが矢印AR3で示されている。
その更に下流側においても同様であって、主ケーシング11の壁面に沿って流れている一部の空気は衝突面115cに衝突して、その流れ方向を変化させる。ここでも、空気は壁面から離れて上方側、すなわち出口部112側に向かうようにその流れ方向を変化させる。図6では、このような空気の流れが矢印AR4で示されている。
空気の一部は、衝突面115cよりも更に前方側に向かって進み、前方側端部の壁面に沿って上昇する。図6では、このような空気の流れが矢印AR5で示されている。
以上のように、本実施形態では、屈曲形成された流路である案内流路Xの途中において、衝突面115a、115b、115cのそれぞれによって空気の流れ方向が上方側へと変更される。その結果、フラップ12やルーバ261a〜270aの影響が仮に無いものとしたときには、出口部112を通過する際における空気の流れ方向は、(矢印AR7で示されるものとは異なり)開口OPに対して概ね垂直な方向となる。図6では、このような空気の流れが矢印AR6で示されている。このように、衝突面115a、115b、115cは「方向変更部」として機能する。
案内流路Xが屈曲していることの影響が低減され、開口OPに対して概ね垂直な方向に沿って空気が流れるので、フラップ12やルーバ261a〜270aによる吹き出し方向の調整を適切に行うことが可能となる。
本実施形態では、衝突面115a、115b、115cのそれぞれの突出量(段差の高さともいえる)のうち、衝突面115aの突出量が最も大きくなっており、衝突面115cの突出力が最も小さくなっている。つまり、空気の流れに沿って下流側に行くほど、衝突面の突出量が小さくなるように構成されている。
このため、風量及び風速が比較的大きな上流側においては大きな衝突面115aによって空気の流れ方向が変更され、風量及び風速が比較的小さな下流側においては小さな衝突面115cによって空気の流れ方向が変更される。その結果、壁面に沿って流れる空気と、衝突面115aにより流れ方向を変化させる空気とのバランスが、案内流路Xの各部において適切に維持される。
図6では、コアンダ面113aの上流側端部(下端部)の位置が点線DL1で示されている。本実施形態では、3つの方向変更部のうち最も上流側に形成されている衝突面115aが、前後方向において点線DL1よりも車両50の後方側となる位置に形成されている。このため、衝突面115aに衝突した空気は、衝突面115aから上方側に向かって進行した後、主ケーシング11の天井面117に衝突することとなる。本発明者らが行った検証によれば、コアンダ面113aに到達する前において一部の空気を天井面117に衝突させれば、その下流側のコアンダ面113aに沿った空気の流量が十分に確保されるという知見が得られている。
また、図6では、開口OPの前方側端部の位置が点線DL2で示されている。本実施形態では、3つの方向変更部のうち最も下流側に形成されている衝突面115cが、前後方向において点線DL2よりも車両50の前方側、すなわち開口OPよりも前方側となる位置に形成されている。このため、衝突面115cに衝突した空気は、衝突面115cから上方側に向かって進行した後、主ケーシング11の天井面118に対して概ね垂直に衝突することとなる。本発明者らが行った検証によれば、天井面118のうち広い範囲に空気を垂直に衝突させると、空気の流れ方向が滑らかに変化し、その際におけるエネルギーロスが少なくなるという知見が得られている。その結果、下流側における空気の流れ方向の偏りを更に抑制することができる。
以上のように、本実施形態では、コアンダ面113aや開口OPに対する衝突面115a等の位置を適切に調整することで、空気の流れ方向の偏りを更に抑制し、フラップ12やルーバ261a〜270aによる吹き出し方向の調整をより適切に行えるような構成となっている。
図7を参照しながら、車両用空気吹き出し装置10の変形例について説明する。この変形例では、空調装置20の位置が、出口部112に対して左側にオフセットした位置となっている。このため、入口部111から空気が流入する方向に沿って見たときにおいて、出口部112は、入口部111の位置に対して右側にずれた位置に設けられている。また、主ケーシング11の内部に形成された案内流路Xは、その全体が屈曲した流路となっている。空調装置20のデフロスタ/フェイス開口部30から出た空調風は、上方側に向かって主ケーシング11の内部に流入した後、車両50の右側に向かってその流れ方向を変える。更にその後、下流側に行くに従って流れ方向を上方側に向けて変化させて行き、最終的には上方側に向かいながら出口部112に到達する。
図7に示されるように、主ケーシング11のうち下方側の部分、具体的には、屈曲した案内流路Xの外周側を区画している部分において、主ケーシング11の内壁の一部が階段状となっている。それぞれの段差部分(空気の流れ方向に対して垂直な部分)には衝突面116a、116b、116cが形成されている。
このような衝突面116a、116b、116cは、案内流路Xを区画する壁面の一部を内側に向けて突出させたもの、ということもできる。このため、衝突面115a、115b、115cのそれぞれは、案内流路Xを空気が流れる方向に対して概ね垂直な面となっている。衝突面116a、116b、116cは、空気の流れ方向に沿って、上流側からこの順に並ぶように配置されている。
図7においては、当該空気の流れが矢印AR11等により示されている。この変形例においても、主ケーシング11の内部にはフラップ12及びルーバ261a〜270aが配置されているのであるが、図7においてはこれらの図示が省略されている。
入口部111から案内流路X内に流入した空気は、矢印AR11で示されるように、車両の右側に向かって流れる。その後は、既に述べたように、空気は下流側に行くに従って流れ方向を上方側に向けて変化させて行き、最終的には上方側に向かいながら出口部112に到達する。
案内流路Xは、その全体が屈曲した流路として形成されている。案内流路Xを流れた空気が出口部112から吹き出される際においては、上記屈曲の影響により、空気の吹き出し方向が車両右側に向かって傾斜してしまう傾向がある。つまり、空気の吹き出し方向が、屈曲した流路の外周側となる方向に偏ってしまう傾向がある。図7においては、このような空気の流れが点線の矢印AR17で示されている。このように、空気の吹き出し方向が偏ってしまうと、フラップ12やルーバ261a〜270aによる吹き出し方向の調整がうまくいかず、設計通りの位置に空気が吹き出されない可能性がある。
そこで、この変形例では、案内流路Xの途中に衝突面116a、116b、116cを形成することで、上記のような吹き出し方向の偏りを抑制している。この変形例では、主ケーシング11の壁面に沿って流れている一部の空気は衝突面116aに衝突して、その流れ方向を変化させる。具体的には、壁面(主ケーシング11の内面)から離れて上方側、すなわち出口部112側に向かうようにその流れ方向を変化させる。図7では、このような空気の流れが矢印AR12で示されている。
その下流側においても同様に、主ケーシング11の壁面に沿って流れている一部の空気は衝突面116bに衝突して、その流れ方向を変化させる。ここでも、空気は壁面から離れて上方側、すなわち出口部112側に向かうようにその流れ方向を変化させる。図7では、このような空気の流れが矢印AR13で示されている。
その更に下流側においても同様であって、主ケーシング11の壁面に沿って流れている一部の空気は衝突面116cに衝突して、その流れ方向を変化させる。ここでも、空気は壁面から離れて上方側、すなわち出口部112側に向かうようにその流れ方向を変化させる。図7では、このような空気の流れが矢印AR14で示されている。
空気の一部は、衝突面116cよりも更に右側に向かって進み、右側端部の壁面に沿って上昇する。図7では、このような空気の流れが矢印AR15で示されている。
以上のように、この変形例では、屈曲形成された流路である案内流路Xの途中において、衝突面116a、116b、116cのそれぞれによって空気の流れ方向が上方側へと変更される。その結果、フラップ12やルーバ261a〜270aの影響が仮に無いものとしたときには、出口部112を通過する際における空気の流れ方向は、(矢印AR17で示されるものとは異なり)開口OPに対して概ね垂直な方向となる。図7では、このような空気の流れが矢印AR16で示されている。このように、衝突面116a、116b、116cは「方向変更部」として機能する。
この変形例においても、案内流路Xが屈曲していることの影響が低減され、開口OPに対して概ね垂直な方向に沿って空気が流れるので、フラップ12やルーバ261a〜270aによる吹き出し方向の調整を適切に行うことが可能となる。
この変形例では、衝突面116a、116b、116cのそれぞれの突出量(段差の高さともいえる)のうち、衝突面116aの突出量が最も大きくなっており、衝突面116cの突出力が最も小さくなっている。つまり、空気の流れに沿って下流側に行くほど、衝突面の突出量が小さくなるように構成されている。
このため、風量及び風速が比較的大きな上流側においては大きな衝突面116aによって空気の流れ方向が変更され、風量及び風速が比較的小さな下流側においては小さな衝突面116cによって空気の流れ方向が変更される。その結果、壁面に沿って流れる空気と、衝突面116aにより流れ方向を変化させる空気とのバランスが、案内流路Xの各部において適切に維持される。
以上の説明においては、図7の構成は、図6等に示される本実施形態の変形例として説明した。しかしながら、図7の構成は図6の構成に替えて実施してもよいのであるが、図6の構成と共に実施することもできる。
つまり、空調装置20(及び入口部111)の位置が、例えば出口部112に対して左側にオフセットし且つ後方側にもオフセットした位置となっている場合において、主ケーシング11が、図6の衝突面115a、115b、115cと、図7の衝突面116a、116b、116cと、の全てを有しているような構成としてもよい。
以上においては、主ケーシング11の一部を階段状とすることによって衝突面115a,115b,115c,116a,116b,116cを形成し、これらを方向変更部として機能させる構成について説明した。しかしながら、方向変更部は、上記以外の態様により構成されていてもよい。例えば、主ケーシング11とは別の部材を方向変更部として案内流路X内に配置し、当該部材によって空気の流れ方向を入口部111へと変化させるような態様としてもよい。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。