以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基及び炭素原子数6以上14以下のアリール基について説明する。
ハロゲン原子は、例えば、フッ素(フルオロ基)、塩素(クロロ基)又は臭素(ブロモ基)である。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換の炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基又はヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換の炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基又はヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、例えば、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合二環炭化水素基又は素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合三環炭化水素基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基又はフェナントリル基が挙げられる。
<第一実施形態:電子写真感光体>
第一実施形態は、電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。本実施形態に係る感光体は、単層型感光体であってもよく、積層型感光体であってもよい。
本実施形態の感光体によれば、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生の抑制と電気特性の向上とを両立させることができる。その理由は、以下のように推測される。
第一に、本実施形態の感光体の感光層は、疎水基がパーフルオロアルキル基であるノニオン性の界面活性剤を含有している。例えば、感光体が記録媒体である紙と接触しながら紙に画像が形成される場合、感光体の表面に紙に由来する紙粉が付着することがある。感光体の表面に紙粉が付着すると、形成される画像に黒点のような画像不良が発生する。しかし、本実施形態の感光体の感光層にはパーフルオロアルキル基を有するノニオン性の界面活性剤が含有されているため、感光層の表面の分子と、紙粉中の分子との間に働くファンデルワールス力(引力)を低下できると考えられる。これにより、感光層の表面に紙粉が付着し難くなる。その結果、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を抑制することができる。
第二に、本実施形態の感光体の感光層は、既に述べたように疎水基がパーフルオロアルキル基であるノニオン性の界面活性剤を含有している。例えば、画像形成において感光体が記録媒体である紙と接触する場合、紙の中に存在する紙粉成分が感光体との接触により負極性を帯びることがある。しかし、本実施形態の感光体は、パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤を含有する。パーフルオロアルキル基中のフッ素原子は、電気陰性度が高い。そのため、本実施形態の感光体と紙粉が接触した場合、紙粉が正極性を帯びる傾向がある。これにより、電子写真プロセスの帯電工程で例えば正極性に帯電された感光体表面と、正極性を帯びる紙粉とが反発する。これにより、感光層の表面に紙粉が付着し難くなる。その結果、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を抑制することができる。
第三に、本実施形態の感光体の感光層において、界面活性剤の含有量は100.00質量部のバインダー樹脂に対して0.10質量部以上3.00質量部以下である。界面活性剤の含有量が100.00質量部のバインダー樹脂に対して0.10質量部以上であることにより、既に述べた界面活性剤による画像不良の発生の抑制効果が得られ易い。また、界面活性剤の含有量が100.00質量部のバインダー樹脂に対して3.00質量部以下であることにより、感光体の感度電位の絶対値を小さくすることができ、感光体の電気特性を向上させることができる。
<1.単層型感光体>
以下、図1を参照して、感光体1が単層型感光体である場合について説明する。図1は、本実施形態に係る感光体1の一例である単層型感光体を示す概略断面図である。
図1(a)に示すように、感光体1としての単層型感光体は、例えば、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光体1が単層型感光体である場合、感光層3は単層型感光層3cである。図1(a)に示すように、導電性基体2上に、単層型感光層3cが直接設けられてもよい。
また、図1(b)に示すように、感光体1としての単層型感光体は、導電性基体2と、単層型感光層3cと、中間層(下引き層)4とを備えていてもよい。中間層4は、例えば、導電性基体2と単層型感光層3cとの間に設けられる。なお、単層型感光層3c上に保護層(不図示)が設けられてもよい。
単層型感光層3cの厚さは、単層型感光層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。単層型感光層3cの厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
感光層3が単層型感光層3cである場合、感光層3としての単層型感光層3cは、界面活性剤とバインダー樹脂とを含有する。単層型感光層3cは、界面活性剤及びバインダー樹脂に加えて、電荷発生剤と正孔輸送剤と電子輸送剤とを更に含有してもよい。単層型感光層3cは、必要に応じて、各種添加剤を更に含有してもよい。界面活性剤、バインダー樹脂、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤及び各種添加剤については後述する。
<2.積層型感光体>
以下、図2を参照して、感光体1が積層型感光体である場合について説明する。図2は、本実施形態に係る感光体1の別の例である積層型感光体を示す概略断面図である。
図2(a)に示すように、感光体1としての積層型感光体は、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光体1としての積層型感光体には、感光層3として、電荷発生層3aと電荷輸送層3bとが備えられる。
図2(a)に示すように、導電性基体2上に、感光層3が直接設けられてもよい。或いは、図2(b)に示すように、導電性基体2と感光層3との間に中間層(下引き層)4が設けられてもよい。なお、感光層3上に保護層(不図示)が設けられていてもよい。
電荷発生層3a及び電荷輸送層3bの厚さは、それぞれの層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。電荷発生層3aの厚さは、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。電荷輸送層3bの厚さは、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
感光層3として、電荷発生層3a及び電荷輸送層3bが備えられる場合、電荷輸送層3bは、界面活性剤とバインダー樹脂とを含有する。電荷輸送層3bは、正孔輸送剤を含有してもよい。電荷輸送層3bは、必要に応じて、電子アクセプター化合物及び各種添加剤を更に含有してもよい。界面活性剤、バインダー樹脂、正孔輸送剤、電子アクセプター化合物及び各種添加剤については後述する。
感光層3のうちの電荷発生層3aは、例えば、電荷発生剤を含有する。電荷発生層3aは、電荷発生層3a用バインダー樹脂(以下「ベース樹脂」と記載することがある)を含有してもよい。電荷発生層3aは、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。電荷発生剤、ベース樹脂及び各種添加剤については後述する。
紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を抑制するためには、界面活性剤が含有される感光層3(例えば、単層型感光層3c又は電荷輸送層3b)が、感光体1の最表面層として配置されることが好ましい。
以上、図1及び図2を参照して、感光体である単層型感光体及び積層型感光体の構造について説明した。次に、感光体である単層型感光体及び積層型感光体に共通する要素について説明する。
<3.導電性基体>
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で形成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼又は真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体の形状は、第二実施形態で後述する画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、プレート状、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
<4.感光層>
本実施形態の感光体は、感光層を備える。感光層の下記数式(1)で表される炭酸カルシウム残留率Rは、30%以下であることが好ましい。炭酸カルシウムは紙粉の主成分である。感光層の炭酸カルシウム残留率Rを30%以下に調整することにより、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を抑制することができる。
R=100×A2/A1・・・(1)
数式(1)中、A1は第一比率を表す。第一比率は、感光層の表面の総面積に対する、炭酸カルシウムが付着した感光層の表面の面積の比率である。第一比率は、感光層の表面1cm2あたり0.75mgの量の炭酸カルシウムを、感光層の表面に付着させた後に測定される。数式(1)中、A2は第二比率を表す。第二比率は、感光層の表面の総面積に対する、炭酸カルシウムが残存した感光層の表面の面積の比率である。第二比率は、炭酸カルシウムを付着させた感光層に対して、遠心分離機を用いて12000Gの遠心力を3分間付与した後に測定される。感光層の炭酸カルシウム残留率Rは、例えば実施例で述べる方法で測定される。実施例で述べる方法における単層型感光層が感光層に相当する。
紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を抑制するためには、感光層の炭酸カルシウム残留率Rは、0%より大きく30%以下であることがより好ましく、10%以上20%以下であることが更に好ましく、10%以上17%以下であることが特に好ましい。感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層の炭酸カルシウム残留率Rがこのような範囲内であることが好ましい。感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層の炭酸カルシウム残留率Rがこのような範囲内であることが好ましい。
また、感光体の最表面層の炭酸カルシウム残留率Rが30%以下であることが好ましく、0%より大きく30%以下であることがより好ましく、10%以上20%以下であることが更に好ましく、10%以上17%以下であることが特に好ましい。画像形成時に紙粉と直接接触する最表面層の炭酸カルシウム残留率Rが、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生の抑制に影響を与え易いためである。
次に、感光層に含有される成分について説明する。
<4−1.電荷発生剤>
感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層は、例えば電荷発生剤を含有する。感光体が積層型感光体である場合、電荷発生層は、例えば電荷発生剤を含有する。
電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料又はキナクリドン系顔料が挙げられる。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、化学式(C−1)で表される無金属フタロシアニン又は金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、化学式(C−2)で表されるチタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン又はクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、Y型、V型又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下「X型無金属フタロシアニン」と記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型又はY型結晶(以下「α型、β型又はY型チタニルフタロシアニン」と記載することがある)が挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンのV型結晶が挙げられる。クロロガリウムフタロシアニンの結晶としては、クロロガリウムフタロシアニンのII型結晶が挙げられる。波長領域700nm以上で高い量子収率を有することから、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが好ましく、X型無金属フタロシアニンがより好ましい。
所望の領域に吸収波長を有する電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上の電荷発生剤を組み合わせて用いてもよい。更に、例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。そのため、例えば、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニンが特に好ましい。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下程度の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。
感光体が積層型感光体である場合、電荷発生剤の含有量は、電荷発生層に含有されるベース樹脂100質量部に対して、5質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、30質量部以上500質量部以下であることがより好ましい。
感光体が単層型感光体である場合、電荷発生剤の含有量は、単層型感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
<4−2.界面活性剤>
感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層が界面活性剤を含有する。感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層が界面活性剤を含有する。本実施形態のトナーに含有される界面活性剤の疎水基は、パーフルオロアルキル基である。本実施形態のトナーに含有される界面活性剤は、ノニオン性を有する。界面活性剤においては、疎水基と親水基とが直接的に又は間接的に結合している。
本実施形態のトナーに含有される界面活性剤の疎水基は、直鎖状のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を抑制し、電気特性を向上させるためには、界面活性剤の疎水基は下記一般式(I)で表されるパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。
一般式(I)中、nは1以上20以下の整数を表す。nは5以上15以下の整数を表すことが好ましい。
界面活性剤の疎水基は、直鎖状のパーフルオロウンデシル基であることが特に好ましい。疎水基が直鎖状のパーフルオロウンデシル基である場合、一般式(I)中のnは10を表す。界面活性剤が直鎖状のパーフルオロウンデシル基を有することにより、感光層の炭酸カルシウム残留率Rを所望の値に調整し易くなる。その結果、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を特に抑制することができる。
界面活性剤の全体の分子構造は、疎水基がパーフルオロアルキル基でありノニオン性である限り、特に限定されない。界面活性剤の分子構造としては、例えば、エチレンオキサイド付加物、重合体又はエチレンオキサイド付加物以外のオリゴマー(例えば、親水基を含有するオリゴマー又は親水基と紫外線反応性の基とを含有するオリゴマー)が挙げられる。紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生の抑制と電気特性の向上とを両立させ易くするためには、界面活性剤(界面活性剤の分子構造)は、エチレンオキサイド付加物又は重合体であることが好ましい。
界面活性剤がエチレンオキサイド付加物である場合、界面活性剤の親水基は、一般式「−(O−CH2−CH2)m−OH」で表される。一般式中mはエチレンオキサイドの平均付加モル数を表す。エチレンオキサイドの平均付加モル数は5以上50以下であることが好ましい。エチレンオキサイドの平均付加モル数が5以上であると、界面活性剤の親水基の親水性を向上させ易い。エチレンオキサイドの平均付加モル数が50以下であると、界面活性剤の親水基の親水性が高くなり過ぎない。
界面活性剤の分子構造が重合体である場合、界面活性剤の親水基と疎水基とはエステル結合により結合されることが好ましい。
界面活性剤全体の分子構造は、上述した疎水基及び親水基以外の部位を更に含んでいてもよい。そのような部位としては、例えば、炭素原子数5以上30以下の炭化水素基が挙げられ、より具体的には炭素原子数5以上30以下のアルキル基が挙げられる。炭素原子数5以上30以下の炭化水素基は、疎水性を有していてもよい。また、0.5質量%の濃度の界面活性剤の酢酸エチル溶液の表面張力は、18.0mN/m以上24.0mN/mであることが好ましい。
界面活性剤の含有量は、100.00質量部のバインダー樹脂に対して、0.10質量部以上3.00質量部以下である。既に述べたように、界面活性剤の含有量が100.00質量部のバインダー樹脂に対して0.10質量部以上であると、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を好適に抑制することができる。界面活性剤の含有量が100.00質量部のバインダー樹脂に対して3.00質量部以下であると、感光体の電気特性を向上させることができる。
感光層の炭酸カルシウム残留率Rを所望の値に調整し易いことから、界面活性剤の含有量は、100.00質量部のバインダー樹脂に対して、0.50質量部以上3.00質量部以下であることが好ましく、1.00質量部以上3.00質量部以下であることがより好ましい。感光体が単層型感光体である場合、界面活性剤の含有量は、単層型感光層に含有されるバインダー樹脂100.00質量部に対して上述のような範囲内であることが好ましい。感光体が積層型感光体である場合、界面活性剤の含有量は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂100.00質量部に対して上述のような範囲内であることが好ましい。
<4−3.バインダー樹脂>
感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層はバインダー樹脂を含有する。感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層はバインダー樹脂を含有する。
バインダー樹脂は、感光体に適用できるバインダー樹脂である限り、特に限定されない。バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂又はポリエステル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂又はその他架橋性の熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート(エポキシ化合物のアクリル酸付加物)又はウレタン−アクリレート(ウレタン化合物のアクリル酸付加物)が挙げられる。バインダー樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのバインダー樹脂の中では、感光層(単層型感光層又は電荷輸送層)の炭酸カルシウム残留率Rを所望の値に調整し、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を抑制し易いことから、ポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂は、加工性、機械的特性、光学的特性及び耐摩耗性のバランスに優れるという利点も有する。ポリカーボネート樹脂の例としては、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールZC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールB型ポリカーボネート樹脂又はビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂の具体例としては、下記化学式(R−1)で表される繰り返し単位から形成される樹脂が挙げられる。
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、20,000以上であることが好ましく、20,000以上52,500以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が20,000以上であると、感光体の耐摩耗性を向上させ易い。バインダー樹脂の粘度平均分子量が52,500以下であると、感光層の形成時にバインダー樹脂が溶剤に溶解し易くなり、単層型感光層用塗布液又は電荷輸送層用塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、単層型感光層又は電荷輸送層を形成し易くなる。
<4−4.正孔輸送剤>
感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層は、例えば正孔輸送剤を含有する。感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層は、例えば正孔輸送剤を含有する。
正孔輸送剤は、感光体用の正孔輸送剤である限り、特に限定されない。正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体又はジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物又はトリアゾール系化合物が挙げられる。正孔輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
正孔輸送剤としては、下記一般式(II)で表される化合物が好ましい。パーフルオロアルキル基を有するノニオン性の界面活性剤と一般式(II)で表される化合物とを組み合わせて使用することにより、感光体の電気特性を一層向上させることができる。
一般式(II)中、R1〜R6は、各々独立して、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。R1、R2及びR3のうちの1つ以上は、アルキル基又はアルコキシ基である。つまり、R1、R2及びR3の全てが水素原子となることはない。R4、R5及びR6のうちの1つ以上は、アルキル基又はアルコキシ基である。つまり、R4、R5及びR6の全てが水素原子となることはない。
一般式(II)中、R1〜R6は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表すことが好ましく、メチル基又はメトキシ基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが特に好ましい。R1、R2及びR3のうちの1つ以上が、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基であることが好ましく、メチル基又はメトキシ基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。R4、R5及びR6のうちの1つ以上が、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基であることが好ましく、メチル基又はメトキシ基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、化学式(H−1)で表される化合物(以下、化合物(H−1)と記載することがある)が挙げられる。
感光体が積層型感光体である場合、正孔輸送剤の含有量は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層に含有される正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
<4−5.電子輸送剤及び電子アクセプター化合物>
感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層は、必要に応じて、電子アクセプター化合物を含有してもよい。これにより、正孔輸送剤の正孔輸送能を向上させ易くなる。一方、感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層は、必要に応じて、電子輸送剤を含有してもよい。これにより、単層型感光層は電子を輸送することができ、単層型感光層にバイポーラー(両極性)の特性を付与し易くなる。
電子輸送剤又は電子アクセプター化合物の例としては、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸又はジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物又はジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。電子輸送剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。電子アクセプター化合物も、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電子輸送剤及び電子アクセプター化合物の具体例としては、一般式(III)で表される化合物が挙げられる。
一般式(III)中、R7及びR8は、各々独立して、水素原子、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を表す。一般式(III)中、R9は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子(好ましくはクロロ基)、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を表す。
一般式(III)中、R7〜R9で表されるアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上5以下のアルキル基がより好ましく、メチル基、1,1−ジメチルプロピル基又はtert−ブチル基が更に好ましく、tert−ブチル基が特に好ましい。アルキル基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を更に有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、又はシアノ基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。置換基としての炭素原子数6以上14以下のアリール基が更に有する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数2以上7以下のアルカノイル基(カルボニル基に炭素原子数1以上6以下のアルキル基が結合した基)、ベンゾイル基、フェノキシ基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基(カルボニル基に炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が結合した基)、又はフェノキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(III)中、R7〜R9で表されるアルケニル基は、例えば、直鎖状又は分枝鎖状で非置換の炭素原子数2以上6以下のアルケニル基である。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、例えば、1個以上3個以下の二重結合を有する。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基の例としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ペンタジエニル基、ヘキセニル基、又はヘキサジエニル基が挙げられる。アルケニル基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、又はシアノ基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
一般式(III)中、R7〜R9で表されるアルコキシ基としては、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。アルコキシ基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、又はシアノ基が挙げられる。置換基として好ましくは、フェニル基である。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
一般式(III)中、R7〜R9で表されるアルコキシカルボニル基は、例えば、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基である。炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基は、カルボニル基に直鎖状又は分枝鎖状で非置換の炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が結合した基である。アルコキシカルボニル基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、又はシアノ基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
一般式(III)中、R7〜R9で表されるアリール基としては、炭素原子数6以上14以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数2以上7以下のアルカノイル基(カルボニル基に炭素原子数1以上6以下のアルキル基が結合した基)、ベンゾイル基、フェノキシ基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基(カルボニル基に炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が結合した基)、フェノキシカルボニル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、又はビフェニル基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
一般式(III)中、R7〜R9で表される複素環基は、例えば、N、S、及びOからなる群より選択される1以上のヘテロ原子を含む5員又は6員の単環の複素環基;このような単環同士が縮合した複素環基;又は、このような単環と、5員又は6員の炭化水素環とが縮合した複素環基である。複素環基が縮合環である場合、縮合環に含まれる環の数は3以下であることが好ましい。複素環基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数2以上7以下のアルカノイル基(カルボニル基に炭素原子数1以上6以下のアルキル基が結合した基)、ベンゾイル基、フェノキシ基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基(カルボニル基に炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が結合した基)、又はフェノキシカルボニル基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
一般式(III)で表される化合物の具体例としては、化学式(E−1)で表される化合物(以下、化合物(E−1)と記載することがある)が挙げられる。
感光体が積層型感光体である場合、電子アクセプター化合物の含有量は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
感光体が単層型感光体である場合、電子輸送剤の含有量は、単層型感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
<4−6.ベース樹脂>
感光体が積層型感光体である場合、電荷発生層は、ベース樹脂を含有する。ベース樹脂は、感光体に適用できるベース樹脂である限り、特に制限されない。ベース樹脂の例は、上述のバインダー樹脂の例と同様である。ベース樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電荷発生層に含有されるベース樹脂は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂とは異なることが好ましい。積層型感光体の製造では、例えば、導電性基体上に電荷発生層が形成され、電荷発生層上に電荷輸送層が形成される。その際に、電荷発生層上に、電荷輸送層用塗布液が塗布される。そのため、電荷発生層は、電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが好ましいからである。
<4−7.添加剤>
感光体の感光層(電荷発生層、電荷輸送層又は単層型感光層)は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、可塑剤、増感剤又はレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール(例えば、ジ(tert−ブチル)p−クレゾール)、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン若しくはこれらの誘導体、有機硫黄化合物又は有機燐化合物が挙げられる。
<5.中間層>
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ又は酸化亜鉛)の粒子又は非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤は、感光層の添加剤と同様である。
<6.感光体の製造方法>
感光体が積層型感光体である場合、積層型感光体は、例えば、以下のように製造される。まず、電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液を調製する。電荷発生層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、電荷発生層を形成する。続いて、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布し、乾燥することによって、電荷輸送層を形成する。これにより、積層型感光体が製造される。
電荷発生層用塗布液は、電荷発生剤及び必要に応じて添加される成分(例えば、ベース樹脂及び各種添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。電荷輸送層用塗布液は、界面活性剤、バインダー樹脂及び必要に応じて添加される成分(例えば、正孔輸送剤、電子アクセプター化合物及び各種添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。
次に、感光体が単層型感光体である場合、単層型感光体は、例えば、以下のように製造される。単層型感光体は、単層型感光層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって製造される。単層型感光層用塗布液は、界面活性剤、バインダー樹脂及び必要に応じて添加される成分(例えば、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤及び各種添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより製造される。
塗布液(電荷発生層用塗布液、電荷輸送層用塗布液又は単層型感光層用塗布液)に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール)、脂肪族炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散機を用いることができる。
塗布液(電荷発生層用塗布液、電荷輸送層用塗布液又は単層型感光層用塗布液)を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法又はバーコート法が挙げられる。
塗布液(電荷発生層用塗布液、電荷輸送層用塗布液又は単層型感光層用塗布液)を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
以上、本実施形態に係る感光体について説明した。本実施形態の感光体によれば、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生の抑制と電気特性の向上とを両立させることができる。
<第二実施形態:画像形成装置>
第二実施形態は、画像形成装置に関する。以下、図3を参照して、本実施形態に係る画像形成装置6について説明する。図3は、画像形成装置6の構成の一例を示す概略図である。
画像形成装置6は、第一実施形態で述べた感光体1と、帯電部27と、露光部28と、現像部29と、転写部26とを備える。帯電部27は感光体1の表面を帯電する。露光部28は、帯電された感光体1の表面を露光して、感光体1の表面に静電潜像を形成する。現像部29は、静電潜像をトナー像として現像する。転写部26(例えば、転写ローラー41)は、感光体1から記録媒体(例えば紙)Pへトナー像を転写する。
画像形成装置6は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置6は、例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。異なる色のトナーによる各色のトナー像を形成するために、画像形成装置6は、タンデム方式のカラー画像形成装置であってもよい。
以下、タンデム方式のカラー画像形成装置を例に挙げて、画像形成装置6を説明する。画像形成装置6は、所定方向に並設された複数の感光体1と、複数の現像部29とを備える。複数の現像部29は各々、感光体1に対向して配置される。現像部29は、トナーを担持して搬送し、対応する感光体1の表面にトナーを供給する。
図3に示すように、画像形成装置6は、箱型の機器筺体7を更に備える。機器筺体7内には、給紙部8、画像形成部9及び定着部10が設けられる。給紙部8は、記録媒体Pを給紙する。画像形成部9は、給紙部8から給紙された記録媒体Pを搬送しながら、記録媒体Pに画像データに基づくトナー像を転写する。定着部10は、画像形成部9で記録媒体P上に転写された未定着のトナー像を、記録媒体Pに定着させる。更に、機器筺体7の上面には、排紙部11が設けられる。排紙部11は、定着部10で定着処理された記録媒体Pを排紙する。
給紙部8には、給紙カセット12、第一ピックアップローラー13、複数の給紙ローラー14及びレジストローラー対17が備えられる。給紙カセット12は、機器筺体7から挿脱可能に設けられる。給紙カセット12には、各種サイズの記録媒体Pが貯留される。第一ピックアップローラー13は、給紙カセット12の左上方位置に設けられる。第一ピックアップローラー13は、給紙カセット12に貯留されている記録媒体Pを1枚ずつ取り出す。複数の給紙ローラー14は、第一ピックアップローラー13によって取り出された記録媒体Pを搬送する。レジストローラー対17は、複数の給紙ローラー14によって搬送された記録媒体Pを、一時待機させた後に、所定のタイミングで画像形成部9に供給する。
また、給紙部8は、手差しトレイ(不図示)と、第二ピックアップローラー(不図示)とを更に備えてもよい。手差しトレイは、機器筺体7の左側面に取り付けられる。第二ピックアップローラーは、手差しトレイに載置された記録媒体Pを取り出す。第二ピックアップローラーによって取り出された記録媒体Pは、複数の給紙ローラー14によって搬送され、レジストローラー対17によって、所定のタイミングで画像形成部9に供給される。
画像形成部9には、画像形成ユニット19及び転写ベルト40が備えられる。画像形成ユニット19には、ブラック画像形成ユニット22、シアン画像形成ユニット23、マゼンタ画像形成ユニット24及びイエロー画像形成ユニット25が備えられる。ブラック画像形成ユニット22を基準として転写ベルト40の回転方向の上流側(図3では左側)から下流側に向けて、ブラック画像形成ユニット22、シアン画像形成ユニット23、マゼンタ画像形成ユニット24及びイエロー画像形成ユニット25が順に備えられている。ブラック画像形成ユニット22、シアン画像形成ユニット23、マゼンタ画像形成ユニット24及びイエロー画像形成ユニット25の各々の中央位置に、感光体1が備えられている。感光体1は、矢符(反時計回り)方向に回転可能に備えられている。そして、各感光体1の周囲には、帯電部27、露光部28、現像部29及び転写部26が、帯電部27を基準として各感光体1の回転方向の上流側から順に配置されている。
感光体1の回転方向における帯電部27の上流側には、クリーニング装置(不図示)及び除電器(不図示)の一方又は両方が設けられてもよい。クリーニング装置及び除電器は各々、記録媒体Pへのトナー像の転写が終了した後、感光体1の周面を清掃及び除電する。クリーニング装置及び除電器によって清掃及び除電された感光体1の周面は、帯電部27へ送られ、新たに帯電処理される。画像形成装置6がクリーニング装置及び除電器を備える場合、各感光体1の回転方向の上流側から帯電部27を基準として、帯電部27、露光部28、現像部29、転写部26、クリーニング装置及び除電器の順で配置される。
既に述べたように、帯電部27は、感光体1の表面(周面)を帯電する。帯電部27の帯電極性は、特に限定されない。感光体1が感光層3(図1参照)として単層型感光層3c(図1参照)を備える単層型感光体である場合、感度特性を向上させるためには、帯電部27は感光体1の表面を正極性に帯電することが好ましい。感光体1が感光層3(図2参照)として電荷発生層3a(図2参照)と電荷輸送層3b(図2参照)を備える積層型感光体である場合、感度特性を向上させるためには、帯電部27は感光体1の表面を負極性に帯電することが好ましい。
帯電部27は、非接触方式であってもよいし、接触方式であってもよい。非接触方式の帯電部27は、感光体1と接触することなく電圧を印加する。非接触方式の帯電部27としては、例えば、コロナ放電式の帯電装置が挙げられ、より具体的には、コロトロン帯電器又はスコロトロン帯電器が挙げられる。接触方式の帯電部27は、感光体1と接触して電圧を印加する。接触方式の帯電部27としては、例えば、接触(近接)放電式の帯電器が挙げられ、より具体的には、帯電ローラー又は帯電ブラシが挙げられる。帯電部27としては、例帯電ローラーが好ましい。
帯電ローラーとしては、例えば、感光体1と接触したまま、感光体1の回転に従動して回転する帯電ローラーが挙げられる。帯電ローラーは、例えば、少なくとも表面部が樹脂で形成される。具体的には、帯電ローラーは、回転可能に軸支された芯金と、芯金上に形成された樹脂層と、芯金に電圧を印加する電圧印加部とを備える。このような帯電ローラーを備えた帯電部27は、電圧印加部が芯金に電圧を印加することによって、樹脂層を介して接触する感光体1の表面を帯電させる。
帯電ローラーの樹脂層を形成する樹脂は、感光体1の表面を良好に帯電できる限り特に限定されない。樹脂層を形成する樹脂の具体例としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂又はシリコーン変性樹脂が挙げられる。樹脂層には、無機充填材を含有させてもよい。
画像形成装置6が接触方式の帯電部27を備える場合、帯電部27から発生する活性ガス(例えば、オゾン又は窒素酸化物)の排出を抑えることができると考えられる。その結果、活性ガスによる感光層3の劣化が抑制されるとともに、オフィス環境に配慮した設計が達成できると考えられる。
帯電部27が印加する電圧は、特に限定されない。帯電部27が印加する電圧の例としては、交流電圧、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧又は直流電圧が挙げられる。なかでも、帯電部27は直流電圧のみを印加することが好ましい。直流電圧のみを印加する帯電部27は、交流電圧を印加する帯電部27又は直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を印加する帯電部27と比較して、以下に示す優位性がある。帯電部27が直流電圧のみを印加すると、感光体1に印加される電圧値が一定であるため、感光体1の表面を一様に一定電位まで帯電させ易い。また、帯電部27が直流電圧のみを印加すると、感光層3の磨耗量が減少する傾向がある。その結果、好適な画像を形成することができると考えられる。
帯電部27が感光体1に印加する電圧は、1000V以上2000V以下であることが好ましく、1200V以上1800V以下であることがより好ましく、1400V以上1600V以下であることが特に好ましい。
露光部28としては、例えば、露光装置が挙げられ、より具体的には、レーザー走査ユニットが挙げられる。露光部28は、帯電された感光体1の表面を露光して、感光体1の表面に静電潜像を形成する。具体的には、露光部28は、帯電部27によって均一に帯電された感光体1の周面に、パーソナルコンピューターのような上位装置から入力された画像データに基づくレーザー光を照射する。これにより、感光体1の周面に、画像データに基づく静電潜像が形成される。
現像部29は、静電潜像をトナー像として現像する。具体的には、現像部29は、静電潜像が形成された感光体1の周面にトナーを供給し、画像データに基づくトナー像を形成する。現像部29としては、例えば、現像装置が挙げられる。
現像部29は、感光体1と接触しながら静電潜像をトナー像として現像することができる。すなわち、本実施形態に係る画像形成装置6は、いわゆる接触現像方式を採用できる。
現像部29は、感光体1の表面を清掃することができる。すなわち、本実施形態に係る画像形成装置6は、いわゆるクリーナーレス方式を採用できる。現像部29は、感光体1の表面に付着した成分(以下、付着成分と記載することがある)を除去することができる。付着成分としては、例えば、トナー成分(具体的には、トナー又はトナーから脱離した外添剤等)又は非トナー成分(具体的には、記録媒体Pに由来する紙粉等)が挙げられる。
このような接触現像方式及びクリーナーレス方式の一方又は両方を採用する画像形成装置6は、通常、現像時に現像部29(例えば、現像ローラー)と感光体1との周速差によって付着成分を除去するため、紙粉の付着により引き起こされる画像不良が発生し易い。しかし、本実施形態の画像形成装置6は、上述のように紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を抑制可能な感光体1を備える。このため、本実施形態に係る画像形成装置6は、接触現像方式及びクリーナーレス方式の一方又は両方を採用したとしても、感光体1の紙粉の付着により引き起こされる画像不良を抑制することができる。
現像部29が感光体1の表面を効率的に清掃するためには、下記条件(a)を満たすことが好ましい。現像部29が感光体1の表面を効率的に清掃するためには、条件(a)に加えて、下記条件(b)を満たすことが好ましい。
条件(a):接触現像方式を採用し、感光体1と現像部29との間に周速差が設けられる。
条件(b):感光体1の表面電位の絶対値と、現像バイアスの電位の絶対値との差が以下の数式(b−1)及び数式(b−2)を満たす。
0(V)<現像バイアスの電位の絶対値(V)<感光体1の未露光領域の表面電位の絶対値(V)・・・(b−1)
現像バイアスの電位の絶対値(V)>感光体1の露光領域の表面電位の絶対値(V)>0(V)・・・(b−2)
条件(a)に示す接触現像方式を採用し、感光体1と現像部29との間に周速差が設けられていると、感光体1の表面は現像部29と接触し、感光体1の表面の付着成分が現像部29との摩擦により除去される。
感光体1の回転速度(周速)VPは、120mm/秒以上350mm/秒以下であることが好ましい。現像部29の回転速度(周速)VDは、133mm/秒以上700mm/秒以下であることが好ましい。また、感光体1の回転速度VPと現像部29の回転速度VDとの比率は、数式(a−1)を満たすことが好ましい。なお、この比率VP/VDが1以外である場合、感光体1と現像部29との間に周速差が設けられていることを示す。
0.5≦VP/VD≦0.8・・・(a−1)
条件(b)の数式(b−1)は、露光部28により露光されなかった感光体1の未露光領域の表面電位に関する。条件(b)の数式(b−2)は、露光部28により露光された感光体1の露光領域の表面電位に関する。なお、感光体1の未露光領域の表面電位及び露光領域の表面電位は、転写部26がトナー像を感光体1から記録媒体Pへ転写した後、帯電部27が次周回の感光体1の表面を帯電する前に測定される。条件(b)に関し、感光体1が単層型感光体である場合、例えばトナーの帯電極性は正極性であり、現像方式は反転現像方式である。感光体1が単層型感光体である場合、現像バイアスの電位、感光体1の未露光領域の表面電位、及び感光体1の露光領域の表面電位は何れも、例えば正の値とすることができる。感光体1が積層型感光体である場合、例えばトナーの帯電極性は負極性であり、現像方式は反転現像方式である。感光体1が積層型感光体である場合、現像バイアスの電位、感光体1の未露光領域の表面電位、及び感光体1の露光領域の表面電位は何れも、例えば負の値とすることができる。
条件(b)に示す現像バイアスの電位の絶対値と、感光体1の表面電位の絶対値との間に差を設けると、未露光領域では、感光体1の表面電位(帯電電位)の絶対値と現像バイアスの電位の絶対値とが数式(b−1)を満たすため、残留したトナー(以下、残留トナーと記載することがある)と感光体1の未露光領域との間に作用する静電的斥力が、残留トナーと現像部29との間に作用する静電的斥力に比べ大きくなる。このため、感光体1の未露光領域の残留トナーは、感光体1の表面から現像部29へと移動し、回収される。
条件(b)に示す現像バイアスの電位の絶対値と、感光体1の表面電位の絶対値との間に差を設けると、露光領域では、感光体1の表面電位(感度電位)の絶対値と現像バイアスの電位の絶対値とが数式(b−2)を満たすため、残留トナーと感光体1の露光領域との間に作用する静電的斥力が、トナーと現像部29との間に作用する静電的斥力に比べ小さくなる。このため、感光体1の露光領域の残留トナーは、感光体1の露光領域に保持される。感光体1の露光領域に保持されたトナーは、そのまま画像形成に使用される。
現像バイアスの電位の絶対値は、例えば、250V以上400V以下である。感光体1の帯電電位の絶対値は、例えば、450V以上900V以下である。感光体1の感度電位の絶対値は、例えば、50V以上200V以下である。現像バイアスの電位の絶対値と、感光体1の帯電電位の絶対値との差は、例えば、100V以上700V以下である。現像バイアスの電位の絶対値と、感光体1の感度電位の絶対値との差は、例えば、150V以上300V以下である。ここで、電位差は、差の絶対値を示す。感光体1が単層型感光体である場合、このような電位差を設けるための条件としては、例えば、現像バイアスの電位を+330Vに、感光体1の帯電電位を+600Vに、感光体1の感度電位を+100Vに設定することが挙げられる。
転写部26(例えば、転写ローラー41)は、感光体1の表面に形成されたトナー像を、感光体1から記録媒体(例えば紙)Pへ転写する。トナー像を転写するときに、感光体1は記録媒体Pと接触している。すなわち、本実施形態に係る画像形成装置6は、いわゆる直接転写方式を採用している。通常、直接転写方式を採用する画像形成装置は、転写時に感光体1と記録媒体Pとが接触することから、記録媒体Pに由来する紙粉が感光体1に付着し易い。しかし、本実施形態の画像形成装置6は、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を抑制できる感光体1を備えている。このため、本実施形態に係る画像形成装置6は、直接転写方式を採用したとしても、感光体1の紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を抑制することができる。
転写ベルト40は、無端状でベルト状の回転体である。転写ベルト40は、駆動ローラー30、従動ローラー31、バックアップローラー32及び複数の転写ローラー41に架け渡されている。各感光体1の周面が転写ベルト40の表面(接触面)に当接するように、転写ベルト40は配置される。転写ベルト40は、各感光体1に対向して配置される各転写ローラー41によって、感光体1に押圧される。押圧された状態で、転写ベルト40は、複数のローラー30、31、32及び41によって無端回転する。駆動ローラー30は、ステッピングモーターのような駆動源によって回転駆動し、転写ベルト40を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー31、バックアップローラー32及び転写ローラー41は、回転自在に設けられる。駆動ローラー30による転写ベルト40の無端回転に伴って、従動ローラー31、バックアップローラー32及び複数の転写ローラー41は従動回転する。これらのローラー31、32、41は、従動回転するとともに、転写ベルト40を支持する。レジストローラー対17から供給された記録媒体Pは、吸着ローラー42によって転写ベルト40上に吸着される。転写ベルト40上に吸着された記録媒体Pは、転写ベルト40の回転に伴い、各感光体1と対応する転写ローラー41との間を通過する。
具体的には、各転写ローラー41は、転写バイアス(具体的には、トナーの帯電極性と逆極性のバイアス)を、転写ベルト40上に吸着された記録媒体Pに印加する。これにより、感光体1上に形成されたトナー像は、各感光体1と対応する転写ローラー41との間で、記録媒体Pに転写される。トナー像が転写されるときに、既に述べたように、感光体1は記録媒体Pと接触している。転写ベルト40は、駆動ローラー30の駆動により矢符(時計回り)方向に周回する。これに伴い、転写ベルト40上に吸着された記録媒体Pは、各感光体1と対応する転写ローラー41との間を順次通過する。通過する際に、各感光体1上に形成された対応する色のトナー像が、重ね塗り状態で順次記録媒体Pに転写される。
定着部10は、記録媒体Pに転写された未定着トナー像を定着させる。定着部10は、加熱ローラー34と、加圧ローラー35とを備えている。加熱ローラー34は、通電発熱体により加熱される。加圧ローラー35は、加熱ローラー34に対向配置され、加圧ローラー35の周面が加熱ローラー34の周面に押圧される。
トナー像が定着された記録媒体Pは、複数の搬送ローラー36によって搬送され、排紙部11から排出される。排紙部11は、機器筺体7の頂部が凹没されることによって形成される。凹没した凹部の底部に、排紙された記録媒体Pを受ける排紙トレイ37が設けられる。
以上、図3を参照して本実施形態に係る画像形成装置を説明した。本実施形態に係る画像形成装置は、第一実施形態に係る感光体を備えている。感光体1によれば、第一実施形態で述べたように、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生の抑制と電気特性の向上とを両立させることができる。そのため、本実施形態に係る画像形成装置によれば、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を抑制することができる。また、本実施形態に係る画像形成装置よれば、電気特性の低下により引き起こされる画像不良の発生も抑制できると考えられる。
<第三実施形態:プロセスカートリッジ>
第三実施形態は、プロセスカートリッジに関する。以下、図3を引き続き参照して、本実施形態のプロセスカートリッジを説明する。本実施形態のプロセスカートリッジは、第二実施形態で述べた、ブラック画像形成ユニット22、シアン画像形成ユニット23、マゼンタ画像形成ユニット24又はイエロー画像形成ユニット25に相当する。プロセスカートリッジは、例えば、ユニット化された第一実施形態に係る感光体1を備える。プロセスカートリッジには、例えば、感光体1に加えて、第二実施形態で述べた、帯電部27、露光部28、現像部29及び転写部26からなる群より選択される少なくとも1つをユニット化した構成が採用される。プロセスカートリッジは、第二実施形態に係る画像形成装置6に対して着脱自在に設計されてもよい。
以上、図3を参照して、本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明した。本実施形態に係るプロセスカートリッジは、第一実施形態に係る感光体を備えている。感光体は、第一実施形態で述べたように、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生の抑制と電気特性の向上とを両立させることができる。そのため、本実施形態に係るプロセスカートリッジによれば、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生を抑制することができる。また、本実施形態に係るプロセスカートリッジによれば、電気特性の低下により引き起こされる画像不良の発生も抑制できると考えられる。更に、このようなプロセスカートリッジは取り扱いが容易であるため、感光体の感度特性等が劣化した場合に、感光体を含めて、容易かつ迅速に交換することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
<1.単層型感光体の材料>
単層型感光体の単層型感光層を形成するための材料として、以下の界面活性剤、電荷発生剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤を準備した。
(界面活性剤)
界面活性剤として、以下に示す界面活性剤(S651)、(S611)、(S420)、(212P)、(215M)及び(222F)を準備した。
界面活性剤(S651)は、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS−651」であった。この界面活性剤は、重合体であり、疎水基として直鎖状のパーフルオロウンデシル基を有する、ノニオン性のフッ素含有界面活性剤であった。この界面活性剤(0.5質量%)の酢酸エチル溶液の表面張力は23.0mN/mであった。
界面活性剤(S611)は、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS−611」であった。この界面活性剤は、重合体であり、疎水基として直鎖状のパーフルオロウンデシル基を有する、ノニオン性のフッ素含有界面活性剤であった。この界面活性剤(0.5質量%)の酢酸エチル溶液の表面張力は18.4mN/mであった。
界面活性剤(S420)は、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS−420」であった。この界面活性剤は、疎水基として直鎖状のパーフルオロウンデシル基を有する、ノニオン性のフッ素含有界面活性剤であった。この界面活性剤は、エチレンオキサイド付加物であった。この界面活性剤(0.5質量%)の酢酸エチル溶液の表面張力は23.1mN/mであった。
界面活性剤(212P)は、株式会社ネオス製「フタージェント212P」であった。この界面活性剤は、ノニオン性であり、疎水基として下記化学式(A)で表される化合物由来の基を有していた。この界面活性剤の疎水基は、二重結合を有する分岐鎖状のフルオロアルケニル基であった。この界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテルであり、エチレンオキサイドの平均付加モル数は12であった。
界面活性剤(215M)は、株式会社ネオス製「フタージェント215M」であった。この界面活性剤は、ノニオン性であり、疎水基として下記化学式(A)で表される化合物由来の基を有していた。この界面活性剤の疎水基は、二重結合を有する分岐鎖状のフルオロアルケニル基であった。この界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテルであり、エチレンオキサイドの平均付加モル数は15であった。
界面活性剤(222F)は、株式会社ネオス製「フタージェント222F」であった。この界面活性剤は、ノニオン性であり、疎水基として下記化学式(A)で表される化合物由来の基を有していた。この界面活性剤の疎水基は、二重結合を有する分岐鎖状のフルオロアルケニル基であった。この界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテルであり、エチレンオキサイドの平均付加モル数は22であった。
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、化合物(C−1X)を準備した。化合物(C−1X)は、実施形態で述べた化学式(C−1)で表される無金属フタロシアニンであった。また、化合物(C−1X)の結晶構造はX型であった。
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(H−1)を準備した。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として、樹脂(R−1a)を準備した。樹脂(R−1a)は、実施形態で述べた化学式(R−1)で表される繰り返し単位から形成されるポリカーボネート樹脂(ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂)であった。樹脂(R−1a)の粘度平均分子量は、30000であった。
(電子輸送剤)
電子輸送剤として、実施形態で述べた化合物(E−1)を準備した。
<2.単層型感光体の製造>
準備した感光層を形成するための材料を用いて、単層型感光体(P−1)〜(P−22)を製造した。
<2−1.単層型感光体(P−2)の製造>
容器内に、界面活性剤(S651)0.10質量部と、電荷発生剤としての化合物(C−1X)3.00質量部と、正孔輸送剤としての化合物(H−1)70.00質量部と、電子輸送剤としての化合物(E−1)30.00質量部と、バインダー樹脂としての樹脂(R−1a)100.00質量部と、溶剤としてのテトラヒドロフラン250.00質量部とを投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて12時間混合して、溶剤に材料を分散させた。これにより、単層型感光層用塗布液を得た。単層型感光層用塗布液を、導電性基体(アルミニウム製ドラム)上に、ディップコート法を用いて塗布した。塗布した単層型感光層用塗布液を、120℃で60分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、単層型感光層(膜厚30μm)を形成した。その結果、単層型感光体(P−2)を得た。
<2−2.単層型感光体(P−1)及び(P−3)〜(P−22)の製造>
以下の点を変更した以外は、単層型感光体(P−2)の製造と同様の方法で、単層型感光体(P−1)及び(P−3)〜(P−22)を製造した。界面活性剤の種類及び含有量(添加量)を、単層型感光体(P−2)の製造における界面活性剤(S651)0.10質量部から、表1に示す界面活性剤の種類及び含有量(添加量)に変更した。
<3.炭酸カルシウム残留率Rの測定>
得られた単層型感光体(P−1)〜(P−22)の各々に対して、感光層(単層型感光層)の炭酸カルシウム残留率Rを測定した。各単層型感光体の製造に使用した単層型感光層用塗布液を、導電性基体(アルミニウム製プレート、縦40mm×横30mm×厚さ2mm)上に、ディップコート法を用いて塗布した。塗布した単層型感光層用塗布液を、120℃で40分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、単層型感光層(膜厚30μm)を形成した。
続いて、形成された単層型感光層の炭酸カルシウム残留率Rを測定した。炭酸カルシウム残留率Rの測定は、温度23℃且つ湿度50%RH(相対湿度)の環境下で行った。
まず、形成された単層型感光層の表面に9.00mgの炭酸カルシウムを付着させた。これは、単層型感光層の表面1cm2あたり0.75mgの量の炭酸カルシウムに相当していた。続いて、炭酸カルシウムを付着させた単層型感光層の表面を、光学顕微鏡(株式会社ニコン製「セナーK・K」)を用いて500倍の倍率で観察し、観察画像を得た。得られた観察画像(後述する遠心分離前であって2値化処理前の単層型感光層の表面の観察画像)の一例を、図4(a)に示す。得られた観察画像を構成する画素は、各々、0以上255以下の輝度値を有していた。画像解析ソフトウェア(Image J)を用いて、観察画像に対して輝度値50を閾値とした2値化処理を行った。閾値未満の輝度値を有する画素は、炭酸カルシウムが付着した領域に対応する。一方、閾値以上の輝度値を有する画素は、炭酸カルシウムが付着していない領域に対応する。2値化処理された画像(後述する遠心分離前であって2値化処理後の単層型感光層の表面の観察画像)の一例を、図4(b)に示す。図4(b)中、白色で示される部分が、閾値未満の輝度値を有する画素であり、炭酸カルシウムが付着した領域に対応する。
2値化処理により、炭酸カルシウムが付着した領域の面積(A1c)と、炭酸カルシウムが付着していない領域の面積(A1n)とを測定した。得られたA1c及びA1nから、下記数式(1−1)に従って、単層型感光層の表面の総面積に対する、炭酸カルシウムが付着した単層型感光層の表面の面積の比率(A1)を算出した。
A1(%)=100×A1c/(A1c+A1n)・・・(1−1)
続いて、炭酸カルシウムを付着させた単層型感光層を備える導電性基体を、遠心分離機(株式会社久保田製作所製「マイクロ冷却遠心機3740」、恒温仕様)にセットした。そして、遠心分離機を用いて、単層型感光層に対して遠心力12000Gが付与される条件で、セットされた導電性基体を3分間回転させた。遠心力付与後(回転後)に、遠心分離機から導電性基体を取り出した。取り出された導電性基体に備えられる単層型感光層に対して、上述のA1c及びA1nの測定と同様の方法で、顕微鏡観察及び2値化処理を行った。遠心分離後であって2値化処理前の単層型感光層の表面の観察画像の一例を、図5(a)に示す。遠心分離後であって2値化処理後の単層型感光層の表面の観察画像の一例を、図5(b)に示す。図5(b)中、白色で示される部分が、閾値未満の輝度値を有する画素であり、炭酸カルシウムが残存した領域に対応する。
2値化処理により、遠心力付与後に炭酸カルシウムが残存した領域の面積(A2c)と、遠心力付与後に炭酸カルシウムが残存していない領域の面積(A2n)とを測定した。得られたA2c及びA2nから、下記数式(1−2)に従って、単層型感光層の表面の総面積に対する炭酸カルシウムが残存した感光層の表面の面積の比率(A2)を算出した。
A2(%)=100×A2c/(A2c+A2n)・・・(1−2)
以上のようにして算出されたA1及びA2から、下記数式(1)に従って、炭酸カルシウム残留率Rを算出した。測定された炭酸カルシウム残留率Rを表1に示す。
R(%)=100×A2/A1・・・(1)
<4.画像特性の評価>
得られた単層型感光体(P−1)〜(P−22)の各々に対して、画像特性を評価した。画像特性の評価は、温度35℃、湿度85%RH(相対湿度)の環境下で行った。評価機として、画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「モノクロプリンターFS−1300D」の改造機)を用いた。この画像形成装置は、接触現像方式、直接転写方式及びクリーナーレス方式を採用する。この画像形成装置では、帯電部として帯電ローラーが備えられている。記録媒体として、京セラドキュメントソリューションズ株式会社販売「京セラドキュメントソリューションズブランド紙VM−A4」(A4サイズ)を使用した。評価機による評価には、一成分現像剤(試作品)を使用した。
評価機を用いて、単層型感光体の回転速度168mm/秒の条件で、20000枚の記録媒体に画像I(印字率1%の画像)を連続して印刷した。続いて、1枚の記録媒体に画像II(白紙画像、縦210mm×横297mm、A4サイズ)を印刷した。画像IIが形成された記録媒体を肉眼で観察し、形成画像における画像不良の有無を観察した。画像不良として、白紙画像内に現れる黒点の数を数えた。感光体に紙粉が付着すると、白紙画像内に黒点が現れる傾向がある。白紙画像内に現れる黒点の数を表1に示す。黒点の数が少ないほど、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生が抑制されていることを示す。
<5.電気特性の評価>
得られた単層型感光体(P−1)〜(P−22)の各々に対して、電気特性を評価した。電気特性の評価は、温度23℃及び湿度50%RH(相対湿度)の環境下で行った。まず、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、単層型感光体の表面を正極性に帯電させた。帯電直後の単層型感光体の表面電位を測定した。測定された単層型感光体の表面電位を、初期電位(V0、単位+V)とした。次いで、バンドパスフィルターを用いて、ハロゲンランプの白色光から単色光(波長780nm、半値幅20nm、光エネルギー1.5μJ/cm2)を取り出した。取り出された単色光を、単層型感光体の表面に照射した。照射が終了してから0.5秒経過した時の単層型感光体の表面電位を測定した。測定された表面電位を、感度電位(VL、単位+V)とした。測定された単層型感光体の初期電位(V0)及び感度電位(VL)を表1に示す。なお、感度電位(VL)の絶対値が小さいほど、単層型感光体の電気特性が良好であることを示す。
表1中、「残留率R」は数式(1)で表される単層型感光層の炭酸カルシウム残留率Rを示す。表1中、「V0」及び「VL」は単層型感光体の初期電位及び感度電位を示す。
単層型感光体(P−2)〜(P−5)、(P−8)〜(P−11)及び(P−14)〜(P−17)の単層型感光層は、界面活性剤とバインダー樹脂とを含有していた。界面活性剤の含有量は、100.00質量部のバインダー樹脂に対して、0.10質量部以上3.00質量部以下であった。界面活性剤の疎水基は、パーフルオロアルキル基であった。界面活性剤は、ノニオン性を有していた。そのため、表1から明らかなように、これらの単層型感光体では、黒点の発生が5個以下であり、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生が抑制されていた。また、これらの単層型感光体は、感度電位(VL)が+120V以下であり、電気特性に優れていた。
単層型感光体(P−1)、(P−7)及び(P−13)の単層型感光層では、界面活性剤の含有量が100.00質量部のバインダー樹脂に対して0.10質量部未満であった。そのため、表1から明らかなように、これらの単層型感光体では、紙粉の付着により引き起こされる画像不良(黒点)が多数発生し、画像特性が劣っていた。
単層型感光体(P−6)、(P−12)及び(P−18)の単層型感光層では、界面活性剤の含有量が100.00質量部のバインダー樹脂に対して3.00質量部を超えていた。そのため、表1から明らかなように、これらの単層型感光体では、感度電位(VL)の絶対値が大きく、電気特性が劣っていた。
単層型感光体(P−19)の単層型感光層は、界面活性剤を含有していなかった。そのため、表1から明らかなように、この単層型感光体では、紙粉の付着により引き起こされる画像不良(黒点)が多数発生し、画像特性が劣っていた。
単層型感光体(P−20)〜(P−22)の単層型感光層に含有される界面活性剤の疎水基は、フルオロアルケニル基であり、パーフルオロアルキル基ではなかった。そのため、表1から明らかなように、これらの単層型感光体では、紙粉の付着により引き起こされる画像不良(黒点)が多数発生し、画像特性が劣っていた。更に単層型感光体(P−22)では、感度電位(VL)の絶対値が大きく、電気特性も劣っていた。
以上のことから、本発明の感光体によれば、紙粉の付着により引き起こされる画像不良の発生の抑制と電気特性の向上とが両立できることが示された。