以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態による表面実装型のコモンモードフィルタ1の外観構造を示す略斜視図である。なお、本実施形態では、図1に示すように、後述する一対の鍔部11b,11cの対向方向をy方向、後述する上面11bs,11csの面内でy方向と垂直な方向をx方向、x方向とy方向の両方に垂直な方向をz方向と称する。
図1に示すように、コモンモードフィルタ1は、ドラムコア11と、ドラムコア11に取り付けられた板状コア12と、ドラムコア11に巻回されたワイヤW1,W2(第1及び第2のワイヤ)とを備えて構成される。ドラムコア11は、断面が矩形である棒状の巻芯部11aと、巻芯部11aの両端に設けられた鍔部11b,11cとを備え、これらが一体化された構造を有している。板状コア12は、鍔部11b,11cの下面(上面11bs,11csの反対側の面)と固着している。コモンモードフィルタ1は、ドラムコア11の鍔部11b,11cの上面11bs,11csを回路基板に対向させた状態で表面実装される。
ドラムコア11及び板状コア12は、比較的透磁率の高い磁性材料、例えばNi−Zn系フェライトやMn−Zn系フェライトの焼結体によって構成される。なお、Mn−Zn系フェライトなどの透磁率の高い磁性材料は、固有抵抗が低く導電性を有しているのが通常である。
鍔部11bの上面11bsには2つの端子電極E1,E2が形成されており、鍔部11cの上面11csには2つの端子電極E3,E4が形成されている。端子電極E1,E2は、x方向の一端側からこの順で配置される。同様に、端子電極E3,E4も、x方向の一端側からこの順で配置される。端子電極E1〜E4には、ワイヤW1,W2の各端部が熱圧着により継線される。
ワイヤW1,W2は被覆導線であり、巻芯部11aに互いに同一の巻回方向で巻回されてコイル導体を構成する。ワイヤW1,W2のターン数も互いに同一である。本実施形態では、ワイヤW1,W2は単層のバイファイラ巻きによって巻回される。また、巻芯部11aの中ほどに位置する隣接ターン間にスペースが設けられ、これによってスペースエリアS1が構成される。この点については、後ほど再度詳しく説明する。スペースエリアS1以外の部分は、隣接ターン同士が密着して巻回されている。ワイヤW1の一端(鍔部11b側の端部)W1a,他端(鍔部11c側の端部)W1bはそれぞれ端子電極E1,E3に継線される。また、ワイヤW2の一端(鍔部11b側の端部)W2a,他端(鍔部11c側の端部)W2bはそれぞれ端子電極E2,E4に継線される。
図2は、コモンモードフィルタ1の基本的な電気回路図である。
図2に示すように、コモンモードフィルタ1は、端子電極E1とE3の間に接続されるインダクタ10aと、端子電極E2とE4の間に接続されるインダクタ10bとが、互いに磁気結合した構成を有している。インダクタ10a,10bは、それぞれワイヤW1,W2によって構成される。この構成により、端子電極E1,E2を入力端、端子電極E3,E4を出力端とした場合、入力端から入力されたディファレンシャル信号は、コモンモードフィルタ1によってほとんど影響を受けず、出力端から出力される。一方、入力端から入力されたコモンモードノイズは、コモンモードフィルタ1によって大きく減衰し、出力端へはほとんど出力されないこととなる。
ここで、コモンモードフィルタは一般に、コモンモードフィルタの入力端に入力されたディファレンシャル信号の一部を、コモンモードノイズに変換して出力端から出力してしまう、という性質を有している。この性質はもちろん望ましいものではないので、コモンモードノイズに変換されるディファレンシャル信号の割合(上述したモード変換特性Scd)をある程度以下の値に抑えることが必要とされる。また、これとは別に、コモンモードフィルタには、できるだけ巻回数を多くすることが必要とされる。小さなサイズで必要なインダクタンスを得るためである。本実施形態によるコモンモードフィルタ1では、ワイヤW1,W2の位置関係をその巻回方向の略中間地点で逆転させて異ターン間容量の偏りを解消することにより、上記課題を解決している。以下、詳しく説明する。
図3は、図2に示したコモンモードフィルタ1のより詳細な等価回路図である。
図3(a)に示すように、コモンモードフィルタ1は、本来のインダクタンスLのほか、インダクタンスLと並列な抵抗R0及びキャパシタンスC0を有している。さらに、ワイヤW1,W2による一対のインダクタンスL、L間にまたがって発生する分布容量C1を有している。図3(b)は、図3(a)のコモンモードフィルタ1を説明の便宜上2つのブロックに分割したものであり、分割されたインダクタンスはそれぞれL/2となる。また、並列抵抗はR0/2となり、並列キャパシタンスは2C0となる。
図4は、一対のワイヤ間の分布容量について説明するための模式図である。
図4(a)に示すように、例えばバイファイラ巻きされる一対のワイヤの同一ターン間には分布容量C1が発生しており、隣接ターン間の間隔dが広い場合にはそれらの間の分布容量は発生しない。一方、図4(b)に示すように、隣接ターン間の間隔dが狭い場合には隣接ターン間に跨って分布する分布容量(異ターン間容量)C2が発生する。すなわち、一対のワイヤ間には分布容量C1,C2の両方が発生する。
図5は、コモンモードフィルタの分布容量の発生モデルを示す等価回路図である。
図5(a)に示すように、通常のバイファイラ巻きが施された一対のワイヤW1,W2からなるコモンモードフィルタにおいて、一対のコイル(インダクタンスL)をその中間位置で2分割した場合、各コイルは2つのインダクタンスL/2の直列接続となる。そして一対のコイルには同一ターン間の分布容量C1と隣接ターン間の分布容量C2が発生する(図4参照)。ここで分布容量C2は、コイルの分割に合わせて、一方のブロックの分布容量C21と他方のブロックの分布容量C22とに分けることができ、これらの分布容量C21、C22は共にワイヤW2側のコイルと並列に発生し、これによりワイヤW2によるLC回路の共振点だけが変化し、モード変換特性Scdも大きくなる。
一方、図5(b)に示すように、バイファイラ巻きが施された一対のワイヤW1,W2の巻き順を中間位置で逆転させた場合、一方のブロックの分布容量C21はワイヤW1側のコイルと並列に発生し、他方のブロックの分布容量C22はワイヤW2側のコイルと並列に発生する。これにより、ワイヤW1によるLC回路の共振点とワイヤW2によるLC回路の共振点の両方が変化するが、2つの共振点のバランスは変化しない。したがって、Scdを低減することができる。また、隣接ターン間の間隔dを狭くできるので、ターン数を増やしてインダクタンスを高くすることもできる。隣接ターン間の間隔dを狭くして隣接ターン間の分布容量C2が発生しても、上記のようにScdを低減することができるからである。
なお、以上の説明は2つのワイヤがバイファイラ巻きである場合の説明であるが、レイヤ巻きの場合も同様である。次に、コモンモードフィルタ1の構造について詳細に説明する。
図6は、コモンモードフィルタ1の巻線構造を模式的に示す断面図である。なお、この図は模式図であって、その形状、構造、各ターンの位置等は、実際のものとは微妙に異なっている。
図6に示すように、コモンモードフィルタ1は、ドラムコア11の巻芯部11aにバイファイラ巻きにより巻回された一対のワイヤW1,W2を備えている。バイファイラ巻きとは、第1及び第2のワイヤW1,W2を1本ずつ交互に配置する巻き方のことであり、1次・2次の密な結合が必要な場合に好ましく用いられる。
第1のワイヤW1は、巻芯部11aの長手方向の一端から他端に向かって順に巻回されて第1のコイルを構成しており、第2のワイヤW2は第1のワイヤW1と平行な状態のまま巻芯部11aの長手方向の一端から他端に向かって順に巻回されて第1のコイルと磁気結合する第2のコイルを構成している。第1及び第2のコイルの巻回方向は同じであるので、第1のコイルに流れる電流により発生する磁束の向きと、2のコイルに流れる電流により発生する磁束の向きが同じになり、全体の磁束は強まる。以上の構成により、第1及び第2のコイルはコモンモードフィルタを構成している。
第1のワイヤW1と第2のワイヤW2は実質的に同じターン数であり、ともに偶数ターンであることが好ましい。本実施形態のワイヤW1,W2はともに6ターンである。なお、インダクタンスを高めるためにはターン数はできるだけ多い方がよい。
一対のワイヤW1,W2は、巻芯部11aの長手方向の一端側に位置する第1の巻回エリアAR1内に設けられた第1の巻線ブロックBK1と、巻芯部11aの長手方向の他端側に位置する第2の巻回エリアAR2内に設けられた第2の巻線ブロックBK2を構成している。第1の巻回エリアAR1と第2の巻回エリアAR2との間にはスペースエリアS1が設けられており、第1の巻線ブロックBK1と第2の巻線ブロックBK2はスペースエリアS1によって分割されている。
第1の巻線ブロックBK1は、第1の巻回エリアAR1に第1のターン数m1=3で巻回された第1のワイヤW1からなる第1の巻線パターンWP1と、第1の巻回エリアAR1に同じく第1のターン数m1=3で巻回された第2のワイヤW2からなる第3の巻線パターンWP3との組み合わせで構成されている。また、第2の巻線ブロックBK2は、第2の巻回エリアAR2に第2のターン数m2=3で巻回された第1のワイヤW1からなる第2の巻線パターンWP2と、第2の巻回エリアAR2に同じく第2のターン数m2=3で巻回された第2のワイヤW2からなる第4の巻線パターンWP4との組み合わせで構成されている。すなわち、第1及び第2のワイヤW1,W2の第1〜第3ターンは第1の巻線ブロックBK1を構成しており、第1及び第2のワイヤW1,W2の第4〜第6ターンは第2の巻線ブロックBK2を構成している。
図示のように、第1の巻線ブロックBK1内のワイヤW1,W2の同一ターンは左側及び右側にそれぞれ位置し、この位置関係を維持しながら密に巻回されているが、第2の巻線ブロックBK2においては位置関係が逆転し、ワイヤW1,W2の同一ターンどうしが右側及び左側にそれぞれ位置し、この位置関係を維持しながら密に巻回されている。
すなわち、第1の巻線ブロックBK1を構成する第1のワイヤW1の第1、第2及び第3ターンの巻芯軸方向の位置はそれぞれ、第2のワイヤW2の第1、第2及び第3ターンの左側(巻芯部11aの一端寄り)であるのに対し、第2の巻線ブロックBK2を構成する第1のワイヤW1の第4、第5及び第6ターンの巻芯軸方向の位置はそれぞれ、第2のワイヤW2の第4、第5及び第6ターンの右側(巻芯部11aの他端寄り)である。
上記のように第1及び第2のワイヤW1,W2の位置関係を逆転させるためには、第1の巻回エリアAR1から第2の巻回エリアAR2に移る途中で両ワイヤW1,W2をクロスさせる必要がある。上記のスペースエリアS1は、ワイヤW1,W2をクロスさせるエリアとして用いられる。また、このように第1及び第2のワイヤW1,W2を互いにクロスさせた場合、ワイヤW1,W2の終端部の位置関係が始端部と比べて逆転してしまい、そのままでは対応する端子電極E3,E4(図1参照)に接続できない場合が生ずる。このような場合、ワイヤW1,W2の終端部を再びクロスさせて、端子電極E1,E2にそれぞれ接続されるワイヤW1,W2の始端部の位置関係と同じ(平行)にすればよい。この点は、以下に示す他の実施の形態でも同様である。
そして本実施形態においては、第1の巻回エリア内AR1の第2のワイヤW2の第n1ターン(n1は1以上m1−1以下の任意の数)と第1のワイヤW1の第n1+1ターンとの間の第1の線間距離D1は、第1のワイヤW1の第n1ターンと第2のワイヤW2の第n1+1ターンとの間の第2の線間距離D2よりも短い。また、第2の巻回エリアAR2内の第1のワイヤW1の第n2ターン(n2はm1+1以上m1+m2−1以下の任意の数)と第2のワイヤW2の第n2+1ターンとの間の第3の線間距離D3は、第2のワイヤW2の第n2ターンと第1のワイヤW1の第n2+1ターンとの間の第4の線間距離D4よりも短い。尚、「線間距離」とは平行な2本のワイヤの中心間距離(ピッチ)をいう。線間距離D1及びD3は、第1及び第2のワイヤW1,W2の同一ターンにおける線間距離に等しい。
例えば、第1の巻回エリアAR1において、第2のワイヤW2の第1ターンは第1のワイヤW1の第2ターンに接しているが、第1のワイヤW1の第1ターンは第2のワイヤW2の第2ターンに接していない。そのため、第2のワイヤW2の第1ターンと第1のワイヤW1の第2ターンとの間の第1の線間距離D1は、第1のワイヤW1の第1ターンと第2のワイヤW2の第2ターンとの間の第2の線間距離D2よりも短い。そしてこのような関係は、ワイヤW1,W2の第2−第3ターン間においても成立する。
一方、第2の巻回エリアAR2において、第1のワイヤW1の第4ターンは第2のワイヤW2の第5ターンに接しているが、第2のワイヤW2の第4ターンは第1のワイヤW1の第5ターンに接していない。そのため、第1のワイヤW1の第4ターンと第2のワイヤW2の第5ターンとの間の第3の線間距離D3は、第2のワイヤW2の第4ターンと第1のワイヤW1の第5ターンとの間の第4の線間距離D4よりも短い。そしてこのような関係は、ワイヤW1,W2の第5−第6ターン間においても成立する。
このように、第1の巻回エリアAR1では、第2のワイヤW2の第n1ターンと第1のワイヤW1の第n1+1ターンとの容量結合が強くなり、分布容量C21が大きくなる。一方、第2の巻回エリアAR2では、第1のワイヤW1の第n2ターンと第2のワイヤW2の第n2+1ターンとの容量結合が強くなり、分布容量C22が大きくなる。つまり、異なるターン間に跨って発生する分布容量(異ターン間容量)がワイヤW1,W2の両方に対して均一に発生するため、ワイヤW1,W2のインピーダンスのアンバランスを抑えることができる。したがって、モード変換特性Scdを低減することができ、高品質なコモンモードフィルタを実現することができる。
図7は、本発明の第2の実施の形態によるコモンモードフィルタ2の巻線構造を模式的に示す断面図である。また、図8は、コモンモードフィルタ2の巻線構造を説明するための模式図である。
図7に示すように、コモンモードフィルタ2は、ドラムコア11の巻芯部11aに2層レイヤ巻きにより巻回された一対のワイヤW1,W2を備えている。第1のワイヤW1は、巻芯部11aの長手方向の一端から他端に向かって順に巻回されて第1のコイルを構成しており、第2のワイヤW2もまた、巻芯部11aの一端から他端に向かって順に巻回されて第1のコイルと磁気結合する第2のコイルを構成している。第1及び第2のコイルの巻回方向は同じであるので、第1のコイルに流れる電流により発生する磁束の向きと、第2のコイルに流れる電流により発生する磁束の向きが同じになり、全体の磁束は強まる。以上の構成により、第1及び第2のコイルはコモンモードフィルタを構成している。
第1及び第2のワイヤW1,W2は実質的に同じターン数であり、ともに偶数ターンであることが好ましい。本実施形態のワイヤW1,W2はともに8ターンである。なお、インダクタンスを高めるためにはターン数はできるだけ多いがよい。
一対のワイヤW1,W2は、巻芯部11aの長手方向の一端側に位置する第1の巻回エリアAR1内に設けられた第1の巻線ブロックBK1と、巻芯部11aの長手方向の他端側に位置する第2の巻回エリアAR2内に設けられた第2の巻線ブロックBK2を構成している。第1の巻回エリアAR1と第2の巻回エリアAR2との間にはスペースエリアS1が設けられており、第1の巻線ブロックBK1と第2の巻線ブロックBK2はスペースエリアS1によって分割されている。
第1の巻線ブロックBK1は、第1の巻回エリアAR1に第1のターン数m1=4で巻回された第1のワイヤW1からなる第1の巻線パターンWP1と、第1の巻回エリアAR1に同じく第1のターン数m1=4で巻回された第2のワイヤW2からなる第3の巻線パターンWP3との組み合わせで構成されている。また、第2の巻線ブロックBK2は、第2の巻回エリアAR2に第2のターン数m2=4で巻回された第1のワイヤW1からなる第2の巻線パターンWP2と、第2の巻回エリアAR2に同じく第2のターン数m2=4で巻回された第2のワイヤW2からなる第4の巻線パターンWP4との組み合わせで構成されている。すなわち、第1及び第2のワイヤW1,W2の第1〜第4ターンは第1の巻線ブロックBK1を構成しており、第1及び第2のワイヤW1,W2の第5〜第8ターンは第2の巻線ブロックBK2を構成している。
第1の巻線ブロックBK1において、第1のワイヤW1の第1〜第4ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回された1層目の巻線層を構成しており、線間に隙間なく密に巻回されている。第2のワイヤW2の第1〜第3ターンは、1層目の巻線層に重ねて巻回された2層目の巻線層を構成しており、特に第1のワイヤW1の線間の谷間に嵌り込みながら巻回されている。例えば第2のワイヤW2の第1ターンは第1のワイヤW1の第1ターンと第2ターンとの間の谷間に位置し、第2ターンは第1のワイヤW1の第2ターンと第3ターンとの間の谷間に位置し、第3ターンは第1のワイヤW1の第3ターンと第4ターンとの間の谷間に位置する。このように、第2のワイヤW2の各ターンの軸方向(巻芯部11aの長手方向)の位置は、第1のワイヤW1の同一ターンの位置と一致しない。
第2のワイヤW2の第4ターン及び第5ターンは2層目に巻ききれない余剰ターンであり、巻芯部11aの表面に直接巻回されて1層目の巻線層を構成している。第2のワイヤW2の第4ターンは、第1のワイヤW1の第4ターンの隣に接して巻回されており、第1の巻線ブロックBK1の一部をなしている。第2のワイヤW2の第5ターンは、第1のワイヤW1の第5ターンの隣に接して巻回されており、第2の巻線ブロックBK2の一部をなしている。
第2のワイヤW2の第4ターンと第5ターンは本来2層目に形成されることが理想である。しかし、2層目の各ターンを1層目の隣接ターン間の谷間に配置させる場合、第2のワイヤW2の余剰ターンを支持する第1のワイヤW1の2ターン分のうちの片方が欠けることになるため、2層目のポジションを維持することができない。そのため、現実的な構造として、第4及び第5ターンについては最初から巻崩れた状態を採用している。
第2の巻線ブロックBK2において、第1のワイヤW1の第5〜第8ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回された1層目の巻線層を構成しており、線間に隙間なく密に巻回されている。第2のワイヤW2の第6〜第8ターンは、1層目の巻線層に重ねて巻回された2層目の巻線層を構成しており、特に第1のワイヤW1の線間の谷間に嵌り込みながら巻回されている。例えば第2のワイヤW2の第6ターンは第1のワイヤW1の第5ターンと第6ターンとの間の谷間に位置し、第7ターンは第1のワイヤW1の第6ターンと第7ターンとの間の谷間に位置し、第8ターンは第1のワイヤW1の第7ターンと第8ターンとの間の谷間に位置する。すなわち、第2のワイヤW2の各ターンの軸方向(巻芯部11aの長手方向)の位置は、第1のワイヤW1の同一ターンの位置と一致しない。
図示のように、第1の巻線ブロックBK1内の第1及び第2のワイヤW1,W2の同一ターンは左側及び右側にそれぞれ位置し、この位置関係を維持しながら密に巻回されているが、第2の巻線ブロックBK2においては位置関係が逆転し、第1及び第2のワイヤW1,W2の同一ターンどうしが右側及び左側にそれぞれ位置し、この位置関係を維持しながら密に巻回されている。
すなわち、第1の巻線ブロックBK1を構成する第1のワイヤW1の第1、第2、第3及び第4ターンの巻芯軸方向の位置はそれぞれ、第2のワイヤW2の第1、第2、第3及び第4ターンの左側(巻芯部11aの一端寄り)であるのに対し、第2の巻線ブロックBK2を構成する第1のワイヤW1の第5、第6、第7及び第8ターンの巻芯軸方向の位置はそれぞれ、第2のワイヤW2の第5、第6、第7及び第8ターンの右側(巻芯部11aの他端寄り)である。
上記のように第1及び第2のワイヤW1,W2の位置関係を逆転させるためには、第1の巻回エリアAR1から第2の巻回エリアAR2に移る途中で両ワイヤW1,W2をクロスさせる必要がある。上記のスペースエリアS1は、ワイヤW1,W2をクロスさせるエリアとして用いられる。
また、本実施形態においては、第1の巻回エリア内AR1の第2のワイヤW2の第n1ターン(n1は1以上m1−1以下の任意の数)と第1のワイヤW1の第n1+1ターンとの間の第1の線間距離D1は、第1のワイヤW1の第n1ターンと第2のワイヤW2の第n1+1ターンとの間の第2の線間距離D2よりも短い。また、第2の巻回エリアAR2内の第1のワイヤW1の第n2ターン(n2はm1+1以上m1+m2−1以下の任意の数)と第2のワイヤW2の第n2+1ターンとの間の第3の線間距離D3は、第2のワイヤW2の第n2ターンと第1のワイヤW1の第n2+1ターンとの間の第4の線間距離D4よりも短い。
例えば図8(a)に示すように、第1の巻回エリアAR1において、第2のワイヤW2の第1ターンは第1のワイヤW1の第2ターンに接しているが、第1のワイヤW1の第1ターンは第2のワイヤW2の第2ターンに接していない。そのため、第2のワイヤW2の第1ターンと第1のワイヤW1の第2ターンとの間の第1の線間距離D1は、第1のワイヤW1の第1ターンと第2のワイヤW2の第2ターンとの間の第2の線間距離D2よりも短い。そしてこのような関係は、図8(b),(c)に示すように、ワイヤW1,W2の第2−第3ターン間や第3−第4ターン間においても成立する。
一方、図8(a)に示すように、第2の巻回エリアAR2において、第1のワイヤW1の第5ターンは第2のワイヤW2の第6ターンに接しているが、第2のワイヤW2の第5ターンは第1のワイヤW1の第6ターンに接していない。そのため、第1のワイヤW1の第5ターンと第2のワイヤW2の第6ターンとの間の第3の線間距離D3は、第2のワイヤW2の第5ターンと第1のワイヤW1の第6ターンとの間の第4の線間距離D4よりも短い。そしてこのような関係は、図8(b),(c)に示すように、ワイヤW1,W2の第6−第7ターン間や第7−第8ターン間においても成立する。
その結果、図8(d)に示すように、第1の巻回エリアAR1では、第2のワイヤW2の第n1ターンと第1のワイヤW1の第n1+1ターンとの容量結合が強くなり、分布容量C21が大きくなる。一方、第2の巻回エリアAR2では、第1のワイヤW1の第n2ターンと第2のワイヤW2の第n2+1ターンとの容量結合が強くなり、分布容量C22が大きくなる。つまり、異なるターン間に跨って発生する分布容量(異ターン間容量)がワイヤW1,W2の両方に対して均一に発生するため、ワイヤW1,W2のインピーダンスのアンバランスを抑えることができる。したがって、モード変換特性Scdを低減することができ、高品質なコモンモードフィルタを実現することができる。
上記第2の実施の形態においては、1層目の巻線層の上に重ねて巻回されるべき第2のワイヤの余剰ターンが第1及び第2の巻線ブロック間のスペースエリアS1側(内側)に落ち込んでいるが、巻芯部の両端側(外側)に落ち込んでいてもよい。
図9は、本発明の第3の実施の形態によるコモンモードフィルタ3の巻線構造を模式的に示す断面図である。また、図10は、コモンモードフィルタ3の巻線構造を説明するための模式図である。
図9に示すように、コモンモードフィルタ3の特徴は、第2のワイヤW2が巻芯部11aの表面に直接巻回された1層目の巻線層を構成しており、第1のワイヤW1が1層目の巻線層に重ねて巻回されて2層目の巻線層を構成しているが、1層目の巻線層に重ねて巻き切れない第1のワイヤW1の余剰ターンは、巻芯部11aの両端側に落ち込んでいることを特徴としている。第2の実施の形態と同様、m1=m2=4である。なお、第2の実施の形態と比べて第1及び第2のワイヤW1,W2の上下位置を逆転させたのは、最終的な線間距離D1〜D4の関係を第2の実施の形態と一致させるためであり、発明の説明の便宜のためである。第1のワイヤと第2のワイヤとの関係は相対的なものであって、例えば第1及び第2のワイヤの上下位置を第2の実施の形態と同じにした場合には後述する線間距離D1〜D4の関係が逆になるが、本発明が本質的に変わることはない。
第1の巻線ブロックBK1において、第2のワイヤW2の第1〜第4ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回された1層目の巻線層を構成しており、線間に隙間なく密に巻回されている。第1のワイヤW1の第2〜第4ターンは、1層目の巻線層に重ねて巻回された2層目の巻線層を構成しており、特に第2のワイヤW2の線間の谷間に嵌り込みながら巻回されている。例えば第1のワイヤW1の第2ターンは第2のワイヤW2の第1ターンと第2ターンとの間の谷間に位置し、第3ターンは第2のワイヤW2の第2ターンと第3ターンとの間の谷間に位置し、第4ターンは第2のワイヤW2の第3ターンと第4ターンとの間の谷間に位置する。すなわち、第1のワイヤW1の各ターンの軸方向(巻芯部11aの長手方向)の位置は、第2のワイヤW2の同一ターンの位置と一致しない。
第1のワイヤW1の第1ターン及び第8ターンは2層目に巻ききれない余剰ターンであり、巻芯部11aの表面に直接巻回されて1層目の巻線層を構成している。第1のワイヤW1の第1ターンは、第2のワイヤW2の第1ターンの隣に接して巻回されており、第1の巻線ブロックBK1の一部をなしている。第1のワイヤW1の第8ターンは、第2のワイヤW2の第8ターンの隣に接して巻回されており、第2の巻線ブロックBK2の一部をなしている。
第1のワイヤW1の第1ターンと第8ターンは本来2層目に形成されることが理想である。しかし、2層目の各ターンを1層目の隣接ターン間の谷間に配置させる場合、第1のワイヤW1の余剰ターンを支持する第2のワイヤW2の2ターン分のうちの片方が欠けることになるため、2層目のポジションを維持することができない。そのため、現実的な構造として、第1及び第8ターンについては最初から巻崩れた状態を採用している。
第2の巻線ブロックBK2において、第2のワイヤW2の第5〜第8ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回された1層目の巻線層を構成しており、線間に隙間なく密に巻回されている。第1のワイヤW1の第5〜第7ターンは、1層目の巻線層に重ねて巻回された2層目の巻線層を構成しており、特に第2のワイヤW2の線間の谷間に嵌り込みながら巻回されている。詳細には、第1のワイヤW1の第5ターンは第2のワイヤW2の第5ターンと第6ターンとの間の谷間に位置し、第6ターンは第2のワイヤW2の第6ターンと第7ターンとの間の谷間に位置し、第7ターンは第2のワイヤW2の第7ターンと第8ターンとの間の谷間に位置する。このように、第1のワイヤW1の各ターンの軸方向(巻芯部11aの長手方向)の位置は、第2のワイヤW2の同一ターンの位置と一致しない。
図示のように、第1の巻線ブロックBK1内の第1及び第2のワイヤW1,W2の同一ターンは左側及び右側にそれぞれ位置し、この位置関係を維持しながら密に巻回されているが、第2の巻線ブロックBK2においては位置関係が逆転し、第1及び第2のワイヤW1,W2の同一ターンどうしが右側及び左側にそれぞれ位置し、この位置関係を維持しながら密に巻回されている。
すなわち、第1の巻線ブロックBK1を構成する第1のワイヤW1の第1、第2、第3及び第4ターンの巻芯軸方向の位置はそれぞれ、第2のワイヤW2の第1、第2、第3及び第4ターンの左側(巻芯部11aの一端寄り)であるのに対し、第2の巻線ブロックBK2を構成する第1のワイヤW1の第5、第6、第7及び第8ターンの巻芯軸方向の位置はそれぞれ、第2のワイヤW2の第5、第6、第7及び第8ターンの右側(巻芯部11aの他端寄り)である。
上記のように第1及び第2のワイヤW1,W2の位置関係を逆転させるためには、第1の巻回エリアAR1から第2の巻回エリアAR2に移る途中で両ワイヤW1,W2をクロスさせる必要がある。上記のスペースエリアS1は、ワイヤW1,W2をクロスさせるエリアとして用いられる。
また、本実施形態においては、第1の巻回エリア内AR1の第2のワイヤW2の第n1ターン(n1は1以上m1−1以下の任意の数)と第1のワイヤW1の第n1+1ターンとの間の第1の線間距離D1は、第1のワイヤW1の第n1ターンと第2のワイヤW2の第n1+1ターンとの間の第2の線間距離D2よりも短い。また、第2の巻回エリアAR2内の第1のワイヤW1の第n2ターン(n2はm1+1以上m1+m2−1以下の任意の数)と第2のワイヤW2の第n2+1ターンとの間の第3の線間距離D3は、第2のワイヤW2の第n2ターンと第1のワイヤW1の第n2+1ターンとの間の第4の線間距離D4よりも短い。
例えば図10(a)に示すように、第1の巻回エリアAR1において、第2のワイヤW2の第1ターンは第1のワイヤW1の第2ターンに接しているが、第1のワイヤW1の第1ターンは第2のワイヤW2の第2ターンに接していない。そのため、第2のワイヤW2の第1ターンと第1のワイヤW1の第2ターンとの間の第1の線間距離D1は、第1のワイヤW1の第1ターンと第2のワイヤW2の第2ターンとの間の第2の線間距離D2よりも短い。そしてこのような関係は、図10(b),(c)に示すように、ワイヤW1,W2の第2−第3ターン間や第3−第4ターン間においても成立する。
一方、図10(a)に示すように、第2の巻回エリアAR2において、第1のワイヤW1の第5ターンは第2のワイヤW2の第6ターンに接しているが、第2のワイヤW2の第5ターンは第2のワイヤW2の第6ターンに接していない。そのため、第1のワイヤW1の第5ターンと第2のワイヤW2の第6ターンとの間の第3の線間距離D3は、第2のワイヤW2の第5ターンと第1のワイヤW1の第6ターンとの間の第4の線間距離D4よりも短い。そしてこのような関係は、図10(b),(c)に示すように、ワイヤW1,W2の第6−第7ターン間や第7−第8ターン間においても成立する。
その結果、図10(d)に示すように、第1の巻回エリアAR1では、第2のワイヤW2の第n1ターンと第1のワイヤW1の第n1+1ターンとの容量結合が強くなり、分布容量C21が大きくなる。一方、第2の巻回エリアAR2では、第1のワイヤW1の第n2ターンと第2のワイヤW2の第n2+1ターンとの容量結合が強くなり、分布容量C22が大きくなる。つまり、異なるターン間に跨って発生する分布容量(異ターン間容量)がワイヤW1,W2の両方に対して均一に発生するため、ワイヤW1,W2のインピーダンスのアンバランスを抑えることができる。したがって、モード変換特性Scdを低減することができ、高品質なコモンモードフィルタを実現することができる。
上記第1〜第3の実施の形態によるコモンモードフィルタ1〜3は、ワイヤW1,W2の位置関係を含めた第1の巻線ブロックBK1の巻線構造と第2の巻線ブロックBK2の巻線構造とが境界線Bに対して実質的に左右対称であるが、以下に示すように、本発明においてワイヤW1,W2の位置関係を含めた巻線構造の対称性は要求されない。
図11は、本発明の第4の実施の形態によるコモンモードフィルタ4の巻線構造を示す断面図である。また、図12は、コモンモードフィルタ4の巻線構造を説明するための模式図である。
図11に示すように、コモンモードフィルタ4の特徴は、第1の巻線ブロックBK1の1層目及び2層目に第1及び第2のワイヤW1,W2をそれぞれ用い、第2の巻線ブロックBK2の1層目及び2層目に第2及び第1のワイヤW2,W1をそれぞれ用い、第2の巻線ブロックBK2では第1の巻線ブロックBK1のワイヤW1,W2の位置関係を上下反転させる点にある。また、第1及び第2の巻線ブロックBK1,BK2ともに2層目のワイヤの最終ターンを余剰ターンとして巻芯部11aの表面に落ち込ませている。つまり、第2の実施の形態によるコモンモードフィルタ2の第1の巻線ブロックBK1と、第3の実施の形態によるコモンモードフィルタ3の第2の巻線ブロックBK2とを組み合わせた巻線構造を有することを特徴としている。本実施形態においても、m1=m2=4である。
第1の巻回エリアAR1と第2の巻回エリアAR2との間にはスペースエリアS1が設けられており、第1の巻線ブロックBK1と第2の巻線ブロックBK2はスペースエリアS1によって分割されている。
第1の巻線ブロックBK1において、第1のワイヤW1の第1〜第4ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回された1層目の巻線層を構成しており、線間に隙間なく密に巻回されている。第2のワイヤW2の第1〜第3ターンは、1層目の巻線層に重ねて巻回された2層目の巻線層を構成しており、特に第1のワイヤW1の線間の谷間に嵌り込みながら巻回されている。例えば第2のワイヤW2の第1ターンは第1のワイヤW1の第1ターンと第2ターンとの間の谷間に位置し、第2ターンは第1のワイヤW1の第2ターンと第3ターンとの間の谷間に位置し、第3ターンは第1のワイヤW1の第3ターンと第4ターンとの間の谷間に位置する。このように、第2のワイヤW2の各ターンの軸方向(巻芯部11aの長手方向)の位置は、第1のワイヤW1の同一ターンの位置と一致しない。
第2のワイヤW2の第4ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回されて1層目の巻線層を構成している。第2のワイヤW2の第4ターンは、第1のワイヤW1の第4ターンの隣に接して巻回されており、第1の巻線ブロックBK1の一部をなしている。
第1のワイヤW1の第8ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回されて1層目の巻線層を構成している。第1のワイヤW1の第8ターンは、第2のワイヤW2の第8ターンの隣に接して巻回されており、第2の巻線ブロックBK2の一部をなしている。
第2のワイヤW2の第4ターンと第1のワイヤW1の第8ターンは本来2層目に形成されることが理想である。しかし、2層目の各ターンを1層目の隣接ターン間の谷間に配置させる場合、2層目の1ターン分が余剰ターンとなり、余剰ターンについてはこれを支持する1層目の2ターン分のうちの片方が欠けることになるため、2層目のポジションを維持することができない。そのため、現実的な構造として、第4及び第5ターンについては最初から巻崩れた状態を採用している。
第2の巻線ブロックBK2において、第2のワイヤW2の第5〜第8ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回された1層目の巻線層を構成しており、線間に隙間なく密に巻回されている。第1のワイヤW1の第5〜第7ターンは、1層目の巻線層に重ねて巻回された2層目の巻線層を構成しており、特に第2のワイヤW2の線間の谷間に嵌り込みながら巻回されている。例えば第1のワイヤW1の第5ターンは第2のワイヤW2の第5ターンと第6ターンとの間の谷間に位置し、第6ターンは第2のワイヤW2の第6ターンと第7ターンとの間の谷間に位置し、第7ターンは第2のワイヤW2の第7ターンと第8ターンとの間の谷間に位置する。このように、第1のワイヤW1の各ターンの軸方向(巻芯部11aの長手方向)の位置は、第2のワイヤW2の同一ターンの位置と一致しない。
図示のように、第1の巻線ブロックBK1内の第1及び第2のワイヤW1,W2の同一ターンは左側及び右側にそれぞれ位置し、この位置関係を維持しながら密に巻回されているが、第2の巻線ブロックBK2においては位置関係が逆転し、第1及び第2のワイヤW1,W2の同一ターンどうしが右側及び左側にそれぞれ位置し、この位置関係を維持しながら密に巻回されている。
すなわち、第1の巻線ブロックBK1を構成する第1のワイヤW1の第1、第2、第3及び第4ターンの巻芯軸方向の位置はそれぞれ、第2のワイヤW2の第1、第2、第3及び第4ターンの左側(巻芯部11aの一端寄り)であるのに対し、第2の巻線ブロックBK2を構成する第1のワイヤW1の第5、第6、第7及び第8ターンの巻芯軸方向の位置はそれぞれ、第2のワイヤW2の第5、第6、第7及び第8ターンの右側(巻芯部11aの他端寄り)である。
上記のように第1及び第2のワイヤW1,W2の位置関係を逆転させるためには、第1の巻回エリアAR1から第2の巻回エリアAR2に移る途中で両ワイヤW1,W2をクロスさせる必要がある。上記のスペースエリアS1は、ワイヤW1,W2をクロスさせるエリアとして用いられる。
そして本実施形態においては、第1の巻回エリア内AR1の第2のワイヤW2の第n1ターン(n1は1以上m1−1以下の任意の数)と第1のワイヤW1の第n1+1ターンとの間の第1の線間距離D1は、第1のワイヤW1の第n1ターンと第2のワイヤW2の第n1+1ターンとの間の第2の線間距離D2よりも短い。また、第2の巻回エリアAR2内の第1のワイヤW1の第n2ターン(n2はm1+1以上m1+m2−1以下の任意の数)と第2のワイヤW2の第n2+1ターンとの間の第3の線間距離D3は、第2のワイヤW2の第n2ターンと第1のワイヤW1の第n2+1ターンとの間の第4の線間距離D4よりも短い。
例えば図12(a)に示すように、第1の巻回エリアAR1において、第2のワイヤW2の第1ターンは第1のワイヤW1の第2ターンに接しているが、第1のワイヤW1の第1ターンは第2のワイヤW2の第2ターンに接していない。そのため、第2のワイヤW2の第1ターンと第1のワイヤW1の第2ターンとの間の第1の線間距離D1は、第1のワイヤW1の第1ターンと第2のワイヤW2の第2ターンとの間の第2の線間距離D2よりも短い。そしてこのような関係は、図12(b),(c)に示すように、ワイヤW1,W2の第2−第3ターン間や第3−第4ターン間においても成立する。
一方、図12(a)に示すように、第2の巻回エリアAR2において、第1のワイヤW1の第5ターンは第2のワイヤW2の第6ターンに接しているが、第2のワイヤW2の第5ターンは第1のワイヤW1の第6ターンに接していない。そのため、第1のワイヤW1の第5ターンと第2のワイヤW2の第6ターンとの間の第3の線間距離D3は、第2のワイヤW2の第5ターンと第1のワイヤW1の第6ターンとの間の第4の線間距離D4よりも短い。そしてこのような関係は、図12(b),(c)に示すように、ワイヤW1,W2の第6−第7ターン間や第7−第8ターン間においても成立する。
その結果、図12(d)に示すように、第1の巻回エリアAR1では、第2のワイヤW2の第n1ターンと第1のワイヤW1の第n1+1ターンとの容量結合が強くなり、分布容量C21が大きくなる。一方、第2の巻回エリアAR2では、第1のワイヤW1の第n2ターンと第2のワイヤW2の第n2+1ターンとの容量結合が強くなり、分布容量C22が大きくなる。つまり、異なるターン間に跨って発生する分布容量(異ターン間容量)がワイヤW1,W2の両方に対して均一に発生するため、ワイヤW1,W2のインピーダンスのアンバランスを抑えることができる。したがって、モード変換特性Scdを低減することができ、高品質なコモンモードフィルタを実現することができる。
図13は、本発明の第5の実施の形態によるコモンモードフィルタ5の巻線構造を模式的に示す断面図である。また、図14は、コモンモードフィルタ5の巻線構造を説明するための模式図である。
図13に示すように、コモンモードフィルタ5の特徴は、第1の巻線ブロックBK1の1層目及び2層目に第2及び第1のワイヤW2,W1をそれぞれ用い、第2の巻線ブロックBK2の1層目及び2層目に第1及び第2のワイヤW1,W2をそれぞれ用い、第2の巻線ブロックBK2では第1の巻線ブロックBK1のワイヤW1,W2の位置関係を上下反転させる点にある。また、第1及び第2の巻線ブロックBK1,BK2ともに2層目のワイヤの開始ターンを余剰ターンとして巻芯部11aの表面に落ち込ませている。つまり、第3の実施の形態によるコモンモードフィルタ3の第1の巻線ブロックBK1と、第2の実施の形態によるコモンモードフィルタ2の第2の巻線ブロックBK2とを組み合わせた巻線構造を有することを特徴としている。本実施形態においても、m1=m2=4である。
第1の巻回エリアAR1と第2の巻回エリアAR2との間にはスペースエリアS1が設けられており、第1の巻線ブロックBK1と第2の巻線ブロックBK2はスペースエリアS1によって分割されている。
第1の巻線ブロックBK1において、第2のワイヤW2の第1〜第4ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回された1層目の巻線層を構成しており、線間に隙間なく密に巻回されている。第1のワイヤW1の第2〜第4ターンは、1層目の巻線層に重ねて巻回された2層目の巻線層を構成しており、特に第1のワイヤW1の線間の谷間に嵌り込みながら巻回されている。例えば第1のワイヤW1の第2ターンは第2のワイヤW2の第1ターンと第2ターンとの間の谷間に位置し、第3ターンは第2のワイヤW2の第2ターンと第3ターンとの間の谷間に位置し、第4ターンは第2のワイヤW2の第3ターンと第4ターンとの間の谷間に位置する。このように、第2のワイヤW2の各ターンの軸方向(巻芯部11aの長手方向)の位置は、第1のワイヤW1の同一ターンの位置と一致しない。
第1のワイヤW1の第1ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回されて1層目の巻線層を構成している。第1のワイヤW1の第1ターンは、第1の巻線ブロックBK1を構成する第2のワイヤW2の第1ターンの隣に接して巻回されており、第1の巻線ブロックBK1の一部をなしている。
第2のワイヤW2の第5ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回されて1層目の巻線層を構成している。第2のワイヤW2の第5ターンは、第2の巻線ブロックBK2を構成する第1のワイヤW1の第5ターンの隣に接して巻回されており、第2の巻線ブロックBK2の一部をなしている。
第1のワイヤW1の第1ターンと第2のワイヤW2の第5ターンは本来2層目に形成されることが理想である。しかし、2層目の各ターンを1層目の隣接ターン間の谷間に配置させる場合、2層目の1ターン分が余剰ターンとなり、余剰ターンについてはこれを支持する1層目の2ターン分のうちの片方が欠けることになるため、2層目のポジションを維持することができない。そのため、現実的な構造として、第4及び第5ターンについては最初から巻崩れた状態を採用している。
第2の巻線ブロックBK2において、第1のワイヤW1の第5〜第8ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回された1層目の巻線層を構成しており、線間に隙間なく密に巻回されている。第2のワイヤW2の第6〜第8ターンは、1層目の巻線層に重ねて巻回された2層目の巻線層を構成しており、特に第1のワイヤW1の線間の谷間に嵌り込みながら巻回されている。例えば第2のワイヤW2の第6ターンは第1のワイヤW1の第5ターンと第6ターンとの間の谷間に位置し、第7ターンは第1のワイヤW1の第6ターンと第7ターンとの間の谷間に位置し、第8ターンは第1のワイヤW1の第7ターンと第8ターンとの間の谷間に位置する。このように、第1のワイヤW1の各ターンの軸方向(巻芯部11aの長手方向)の位置は、第2のワイヤW2の同一ターンの位置と一致しない。
図示のように、第1の巻線ブロックBK1内の第1及び第2のワイヤW1,W2の同一ターンは左側及び右側にそれぞれ位置し、この位置関係を維持しながら密に巻回されているが、第2の巻線ブロックBK2においては位置関係が逆転し、第1及び第2のワイヤW1,W2の同一ターンどうしが右側及び左側にそれぞれ位置し、この位置関係を維持しながら密に巻回されている。
すなわち、第1の巻線ブロックBK1を構成する第1のワイヤW1の第1、第2、第3及び第4ターンの巻芯軸方向の位置はそれぞれ、第2のワイヤW2の第1、第2、第3及び第4ターンの左側(巻芯部11aの一端寄り)であるのに対し、第2の巻線ブロックBK2を構成する第1のワイヤW1の第5、第6、第7及び第8ターンの巻芯軸方向の位置はそれぞれ、第2のワイヤW2の第5、第6、第7及び第8ターンの右側(巻芯部11aの他端寄り)である。
上記のように第1及び第2のワイヤW1,W2の位置関係を逆転させるためには、第1の巻回エリアAR1から第2の巻回エリアAR2に移る途中で両ワイヤW1,W2をクロスさせる必要がある。上記のスペースエリアS1は、ワイヤW1,W2をクロスさせるエリアとして用いられる。
そして本実施形態においては、第1の巻回エリア内AR1の第2のワイヤW2の第n1ターン(n1は1以上m1−1以下の任意の数)と第1のワイヤW1の第n1+1ターンとの間の第1の線間距離D1は、第1のワイヤW1の第n1ターンと第2のワイヤW2の第n1+1ターンとの間の第2の線間距離D2よりも短い。また、第2の巻回エリアAR2内の第1のワイヤW1の第n2ターン(n2はm1+1以上m1+m2−1以下の任意の数)と第2のワイヤW2の第n2+1ターンとの間の第3の線間距離D3は、第2のワイヤW2の第n2ターンと第1のワイヤW1の第n2+1ターンとの間の第4の線間距離D4よりも短い。
例えば図14(a)に示すように、第1の巻回エリアAR1において、第2のワイヤW2の第1ターンは第1のワイヤW1の第2ターンに接しているが、第1のワイヤW1の第1ターンは第2のワイヤW2の第2ターンに接していない。そのため、第2のワイヤW2の第1ターンと第1のワイヤW1の第2ターンとの間の第1の線間距離D1は、第1のワイヤW1の第1ターンと第2のワイヤW2の第2ターンとの間の第2の線間距離D2よりも短い。そしてこのような関係は、図14(b),(c)に示すように、ワイヤW1,W2の第2−第3ターン間や第3−第4ターン間においても成立する。
一方、図14(a)に示すように、第2の巻回エリアAR2において、第1のワイヤW1の第5ターンは第2のワイヤW2の第6ターンに接しているが、第2のワイヤW2の第5ターンは第1のワイヤW1の第6ターンに接していない。そのため、第1のワイヤW1の第5ターンと第2のワイヤW2の第6ターンとの間の第3の線間距離D3は、第2のワイヤW2の第5ターンと第1のワイヤW1の第6ターンとの間の第4の線間距離D4よりも短い。そしてこのような関係は、図14(b),(c)に示すように、ワイヤW1,W2の第6−第7ターン間や第7−第8ターン間においても成立する。
その結果、図14(d)に示すように、第1の巻回エリアAR1では、第2のワイヤW2の第n1ターンと第1のワイヤW1の第n1+1ターンとの容量結合が強くなり、分布容量C21が大きくなる。一方、第2の巻回エリアAR2では、第1のワイヤW1の第n2ターンと第2のワイヤW2の第n2+1ターンとの容量結合が強くなり、分布容量C22が大きくなる。つまり、異なるターン間に跨って発生する分布容量(異ターン間容量)がワイヤW1,W2の両方に対して均一に発生するため、ワイヤW1,W2のインピーダンスのアンバランスを抑えることができる。したがって、モード変換特性Scdを低減することができ、高品質なコモンモードフィルタを実現することができる。
図15は、本発明の第6の実施の形態によるコモンモードフィルタ6の巻線構造を模式的に示す断面図である。
図15に示すコモンモードフィルタ6は、第2の実施の形態によるコモンモードフィルタ2の変形例であって、第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数が奇数ターン(ここでは9ターン)であることを特徴としている。そのため、第1の巻線ブロックBK1は、第1の巻回エリアAR1に第1のターン数m1=4で巻回された第1のワイヤW1からなる第1の巻線パターンと、第1の巻回エリアAR1に同じく第1のターン数m1=4で巻回された第2のワイヤW2からなる第3の巻線パターンとの組み合わせで構成されている。また、第2の巻線ブロックBK2は、第2の巻回エリアAR2に第2のターン数m2=5で巻回された第1のワイヤW1からなる第2の巻線パターンと、第2の巻回エリアAR2に同じく第2のターン数m2=5で巻回された第2のワイヤW2からなる第4の巻線パターンとの組み合わせで構成されている。
本実施形態においては、第2の巻線ブロックBK2のほうが1ターン多いので、第1の実施の形態に比べて異ターン間容量のバランスは少し悪い。しかしながら、従来のまったくバランスを取らない巻線構造に比べると、異ターン間容量のバランスを大幅に向上させることができ、その効果は顕著である。特に、ワイヤW1,W2のターン数が大きくなればなるほど異ターン間容量のバランス効果が大きくなるので1ターン差の影響は希釈されてほとんど無視できる。
第1の巻線ブロックBK1における第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数m1と第2の巻線ブロックBK2における第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数m2との差|m1−m2|は、第1のワイヤW1(又は第2のワイヤW2)の全ターン数の1/4以下であることが好ましい。例えば、第1及び第2のワイヤW1,W2の全ターン数(m1+m2)がともに10ターンであるとき、上記ターン数の差(|m1−m2|)は2.5ターン以下(厳密には2ターン以下)であることが好ましい。ターン数の差がワイヤの全ターン数の1/4を超える場合には、その影響を無視することが出来なくなり、ノイズ低減効果が不十分となるが、1/4以下である場合には両方の巻線のインピーダンスのアンバランスが比較的小さく、実用上問題ないからである。
さらに、上記ターン数の差(|m1−m2|)は、第1のワイヤW1(又は第2のワイヤW2)の全ターン数によらず、2ターン以下であることがより好ましく、1ターン以下が特に好ましい。意図的にターン数の差を設けようとしなければ、ほとんどの場合、ターン数の差を多くとも2ターン以内、通常は1ターン以内に収めることができると考えられ、この範囲内であればインピーダンスのアンバランスの影響が非常に小さく、ターン数の差がない場合とほとんど変わらないからである。
なお、本実施形態は、第2の実施の形態によるコモンモードフィルタ2の第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数を奇数ターンにした場合の変形例であるが、第3〜第5の実施の形態によるコモンモードフィルタ3〜5において第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数を奇数ターンとしても構わない。
図16は、本発明の第7の実施の形態によるコモンモードフィルタ7の巻線構造を模式的に示す断面図である。
図16に示すように、コモンモードフィルタ7の特徴は、第1の巻線ブロックBK1よりも巻芯部の長手方向の中央寄りに配置された第3の巻線ブロックBK3と、第2の巻線ブロックBK2よりも巻芯部の長手方向の中央寄りに配置された第4の巻線ブロックBK4とをさらに備え、第3及び第4の巻線ブロックBK3,BK4が単層バイファイラ巻き構造を有し、第1の巻線ブロックBK1と第3の巻線ブロックBK3は第1のサブスペースによって分割されており、第2の巻線ブロックBK2と第4の巻線ブロックBK4は第2のサブスペースによって分割されている点にある。以下、詳細に説明する。
本実施形態によるコモンモードフィルタ7は、上述した各実施形態と同様、ドラムコア11の巻芯部11aに巻回された一対のワイヤW1,W2を備えている。第1のワイヤW1は、巻芯部11aの長手方向の一端から他端に向かって順に巻回されて第1のコイルを構成しており、第2のワイヤW2もまた、巻芯部11aの一端から他端に向かって順に巻回されて第1のコイルと磁気結合する第2のコイルを構成している。第1及び第2のコイルの巻回方向は同じであるので、第1のコイルに流れる電流により発生する磁束の向きと、第2のコイルに流れる電流により発生する磁束の向きが同じになり、全体の磁束は強まる。以上の構成により、第1及び第2のコイルはコモンモードフィルタを構成している。
第1及び第2のワイヤW1,W2は実質的に同じターン数であり、ともに偶数ターンであることが好ましい。本実施形態のワイヤW1,W2はともに12ターンである。なお、インダクタンスを高めるためにはターン数はできるだけ多いほうがよい。
一対のワイヤW1,W2は、巻芯部11aの長手方向の一端側に位置する第1の巻回エリアAR1内に設けられた第1の巻線ブロックBK1と、同じく第1の巻線エリアAR1内に設けられた第3の巻線ブロックBK3と、巻芯部11aの長手方向の他端側に位置する第2の巻回エリアAR2内に設けられた第2の巻線ブロックBK2と、同じく第2の巻線エリアAR2内に設けられた第4の巻線ブロックBK4を構成している。
本実施形態において、第1及び第2の巻線ブロックBK1,BK2をそれぞれ構成する第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数はともに4ターンであり、第3及び第4の巻線ブロックBK3,BK4をそれぞれ構成する第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数はともに2ターンである。
第1の巻線ブロックBK1は第3の巻線ブロックBK3よりも巻芯部11aの長手方向の一端側に位置し、第3の巻線ブロックBK3は第1の巻線ブロックBK1よりも巻芯部11aの中央側に位置している。同様に、第2の巻線ブロックBK2は第4の巻線ブロックBK4よりも巻芯部11aの長手方向の他端側に位置し、第4の巻線ブロックBK4は第2の巻線ブロックBK2よりも巻芯部11aの中央側に位置している。第1の巻線ブロックBK1、第3の巻線ブロックBK3、第4の巻線ブロックBK4、及び第2の巻線ブロックBK2は、巻芯部11aの一端から他端に向かってこの順で設けられている。
第1の巻回エリアAR1と第2の巻回エリアAR2との間にはスペースエリアS1が設けられており、第1及び第2の巻回エリアAR1、AR2間で互いに隣接する第3及び第4の巻線ブロックBK3,BK4はスペースエリアS1によって分割されている。さらに、第1の巻回エリアAR1内において、第1の巻線ブロックBK1と第3の巻線ブロックBK3との間には第1のサブスペースSS1が設けられており、両者は第1のサブスペースSS1によって分割されている。同様に、第2の巻回エリアAR2内において、第2の巻線ブロックBK2と第4の巻線ブロックBK4との間には第2のサブスペースSS2が設けられており、両者は第2のサブスペースSS2によって分割されている。
第1の巻線ブロックBK1は、第1の巻回エリアAR1にターン数m11=4で巻回された第1のワイヤW1からなる巻回パターンと、第1の巻回エリアAR1に同じくターン数m11=4で巻回された第2のワイヤW2からなる巻回パターンとの組み合わせで構成されている。
第1の巻線ブロックBK1を構成する第1のワイヤW1の第1〜第4ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回された1層目の巻線層を構成しており、線間に隙間なく密に巻回されている。第2のワイヤW2の第1〜第3ターンは、1層目の巻線層に重ねて巻回された2層目の巻線層を構成しており、特に第1のワイヤW1の線間の谷間に嵌まり込みながら巻回されている。第2のワイヤW2の第4ターンは、2層目に巻ききれない余剰ターンであり、巻芯部11aの表面に直接巻回されて1層目の巻線層を構成している。第2のワイヤW2の第4ターンは、第1のワイヤW1の第4ターンの隣に接して巻回されており、第1の巻線ブロックBK1の一部をなしている。
第2の巻線ブロックBK2は、第2の巻回エリアAR2にターン数m21=4で巻回された第1のワイヤW1からなる巻回パターンと、第2の巻回エリアAR2に同じくターン数m21=4で巻回された第2のワイヤW2からなる巻回パターンとの組み合わせで構成されている。
第2の巻線ブロックBK2を構成する第1のワイヤW1の第9〜第12ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回された1層目の巻線層を構成しており、線間に隙間なく密に巻回されている。第2のワイヤW2の第10〜第12ターンは、1層目の巻線層に重ねて巻回された2層目の巻線層を構成しており、特に第1のワイヤW1の線間の谷間に嵌まり込みながら巻回されている。第2のワイヤW2の第9ターンは、2層目に巻ききれない余剰ターンであり、巻芯部11aの表面に直接巻回されて1層目の巻線層を構成している。第2のワイヤW2の第9ターンは、第1のワイヤW1の第9ターンの隣に接して巻回されており、第2の巻線ブロックBK2の一部をなしている。
第2のワイヤW2の第4ターンと第9ターンは本来2層目に形成されることが理想である。しかし、2層目の各ターンを1層目の隣接ターンの谷間に配置する場合、第2のワイヤW2の余剰ターンを支持する第1のワイヤW1の2ターン分のうちの片方が欠けることになるため、2層目のポジションを維持することができない。そのため、現実的な構造として、第4及び第9ターンについては最初から巻崩れた状態を採用している。
本実施形態による第1及び第2の巻線ブロックBK1,BK2の巻線構造は、図7に示した2層レイヤ巻き構造であるが、図9、図11、あるいは図13に示した他の2層レイヤ巻構造を採用することも可能である。
次に、第3及び第4の巻線ブロックBK3,BK4について説明する。
本実施形態において、第1及び第2の巻線ブロックBK1,BK2が2層レイヤ巻きからなるのに対し、第3及び第4の巻線ブロックBK3,BK4は、単層のバイファイラ巻きからなる。そして第1の巻線ブロックBK1と第3の巻線ブロックBK3は第1のサブスペースSS1によって分割されており、第2の巻線ブロックと第4の巻線ブロックBK4も第2のサブスペースSS2によって分割されている。
第3の巻線ブロックBK3は、第1の巻回エリアAR1においてターン数m12=2で巻回された第1のワイヤW1からなる巻線パターンと、第1の巻回エリアAR1に同じくターン数m12=2で巻回された第2のワイヤW2からなる巻線パターンとの組み合わせで構成される。第3の巻線ブロックBK3を構成する第1及び第2のワイヤW1,W2の第5及び第6ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回された単層のバイファイラ巻きを構成しており、線間に隙間なく密に巻回されている。
第4の巻線ブロックBK4は、第2の巻回エリアAR2においてターン数m22=2で巻回された第1のワイヤW1と、第2の巻回エリアAR2に同じくターン数m22=2で巻回された第2のワイヤW2との組み合わせで構成される。第4の巻線ブロックBK4を構成する第1及び第2のワイヤW1,W2の第7及び第8ターンは、巻芯部11aの表面に直接巻回された単層のバイファイラ巻きを構成しており、線間に隙間なく密に巻回されている。
したがって図示のように、第1のワイヤW1は、第1の巻回エリアAR1において第1のターン数m1(m1=m11+m12)からなる第1の巻線パターンWP1を構成すると共に、第2の巻回エリアAR2において第2のターン数m2(m2=m21+m22)からなる第2の巻回パターンWP2を構成している。同様に、第2のワイヤW2は、第1の巻回エリアAR1において第1のターン数m1からなる第3の巻線パターンWP3を構成すると共に、第2の巻回エリアAR2において第2のターン数m2からなる第4の巻回パターンWP4を構成している。
本実施形態においても、第1及び第3の巻線ブロックBK1,BK3内の第1及び第2のワイヤW1,W2の同一ターンは左側及び右側にそれぞれ位置し、この位置関係を維持しながら密に巻回されている。第4及び第2の巻線ブロックBK4,BK2においてはこの位置関係が逆転し、第1及び第2のワイヤW1,W2の同一ターンどうしが右側及び左側にそれぞれ位置し、この関係を維持しながら密に巻回されている。
すなわち、第1の巻線ブロックBK1を構成する第1のワイヤW1の第1、第2、第3及び第4ターンの巻芯軸方向の位置はそれぞれ、第2のワイヤW2の第1、第2、第3及び第4ターンの左側(巻芯部11aの一端寄り)である。第1のワイヤW1の第5、第6ターンの巻芯軸方向の位置もそれぞれ、第2のワイヤW2の第5、第6ターンの左側である。
これに対し、第2の巻線ブロックBK2を構成する第1のワイヤW1の第9、第10、第11及び第12ターンの巻き芯軸方向の位置はそれぞれ、第2のワイヤW2の第9、第10、第11及び第12ターンの右側(巻芯部11aの他端寄り)である。第1のワイヤW1の第7、第8ターンの巻芯軸方向の位置もそれぞれ、第2のワイヤW2の第7、第8ターンの右側である。
上記のように第1及び第2のワイヤW1,W2の位置関係を逆転させるためには、第1の巻回エリアAR1から第2の巻回エリアAR2に移る途中で両ワイヤW1,W2をクロスさせる必要がある。上記のスペースエリアS1は、ワイヤW1,W2をクロスさせるエリアとして用いられる。
また、本実施形態においては、第1の巻回エリアAR1内の第2のワイヤW2の第n1ターン(n1は1以上m1−1以下の任意の数)と第1のワイヤW1の第n1+1ターンとの間の第1の線間距離D1は、第1のワイヤW1の第n1ターンと第2のワイヤW2の第n1+1ターンとの間の第2の線間距離D2よりも短い。この関係は、第1の巻線ブロックBK1においてだけでなく第3の巻線ブロックBK3や両ブロックの境界においても成立する。また、第2の巻回エリアAR2内の第1のワイヤW1の第n2ターン(n2はm1+1以上m1+m2−1以下の任意の数)と第2のワイヤW2の第n2+1ターンとの間の第3の線間距離D3は、第2のワイヤW2の第n2ターンと第1のワイヤW1の第n2+1ターンとの間の第4の線間距離D4よりも短い。この関係は、第2の巻線ブロックBK2においてだけでなく第4の巻線ブロックBK4や両ブロックの境界においても成立する。
このように、本実施形態においても、第1の巻回エリアAR1では、第2のワイヤW2の第n1ターンと第1のワイヤW1の第n1+1ターンとの容量結合が強くなり、分布容量C21が大きくなるのに対し、第2の巻回エリアAR2では、第1のワイヤW1の第n2ターンと第2のワイヤW2の第n2+1ターンとの容量結合が強くなり、分布容量C22が大きくなる。つまり、異ターン間に跨って発生する分布容量(異ターン間容量)がワイヤW1,W2の両方に対して均一に発生するため、ワイヤW1,W2のインピーダンスのアンバランスを抑えることができる。したがって、モード変換特性Scdを低減することができ、高品質なコモンモードフィルタを実現することができる。
さらに本実施形態においては、第1の巻線ブロックBK1から第2の巻線ブロックBK2に切り替えるためにワイヤW1,W2をクロスさせる際、2層レイヤ巻きを単層巻きに一度変換し、2層レイヤ巻きと単層巻きとの間にサブスペースを設け、これにより第1の巻線ブロックBK1と第2の巻線ブロックBK2との間に複数のスペースを小刻みに設けているので、第1及び第2の巻回エリアAR1,AR2の境界でワイヤW1,W2をクロスさせる際、クロス前のターンからクロス後のターンまでの移動距離を短くすることができる。すなわち、第1の巻回エリアAR1と第2の巻回エリアAR2との間のスペースエリアS1の幅を狭くすることができ、ワイヤの巻回作業時においてワイヤW1,W2をクロスさせた直後のターンの巻き始め位置のバラつきを小さくすることができる。これにより、ワイヤの巻回作業が容易になるだけでなく、コモンモードフィルタの特性のバラつきを低減することができる。
図17は、本発明の第8の実施の形態によるコモンモードフィルタ8の巻線構造を模式的に示す断面図である。
図17に示すように、コモンモードフィルタ8の特徴は、図17のコモンモードフィルタ7の第3の巻線ブロックBK3の隣接ターン間に第3のサブスペースSS3を設け、第4の巻線ブロックBK4の隣接ターン間に第4のサブスペースSS4を設けた点にある。本実施形態の場合、巻線ブロックBK3,BK4内における隣接ターンの境界位置はそれぞれ1か所しかないため、第3及び第4のサブスペースSS3,SS4も一つずつしかないが、第3及び第4の巻線ブロックBK3,BK4のターン数が多い場合には複数の隣接ターンの境界位置の各々に第3及び第4のサブスペースSS3,SS4を設けるようにしてもよい。
このように、本実施形態においては、単層巻きの隣接ターン間にサブスペースを設け、これにより第1の巻線ブロックBK1と第2の巻線ブロックBK2との間にさらに多数のスペースを小刻みに設けているので、第1及び第2の巻回エリアAR1,AR2の境界でワイヤW1,W2をクロスさせる際、クロス前のターンからクロス後のターンまでの移動距離をさらに短くすることができる。すなわち、第1の巻回エリアAR1と第2の巻回エリアAR2との間のスペースエリアS1の幅を狭くすることができ、ワイヤの巻回作業時においてワイヤW1,W2をクロスさせた直後のターンの巻き始め位置のバラつきをさらに小さくすることができる。これにより、ワイヤの巻回作業が容易になるだけでなく、コモンモードフィルタの特性のバラつきを低減することができる。
図18は、本発明の第9の実施の形態によるコモンモードフィルタ9の巻線構造を模式的に示す断面図である。
図18に示すように、コモンモードフィルタ9は、第2の実施の形態によるコモンモードフィルタ2の応用例であって、図に示した第1及び第2の巻線ブロックBK1,BK2の組み合わせを単位巻線構造Uとし、この単位巻線構造Uを巻芯部11a上に複数(ここでは2つ)設けた点にある。本実施形態では2つの単位巻線構造U1,U2を有しており、第1及び第2のワイヤW1,W2による巻線構造は4つの巻線ブロックに分割されている。第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数が非常に多い場合(例えば80ターン)においてそれらを細かく分割した場合(例えば20ターン×4)には、粗く分割する場合(例えば40ターン×2)よりも異ターン間容量のバランスを高めることができる。したがって、モード変換特性Scdを低減することができ、高品質なコモンモードフィルタを実現することができる。
なお、本実施形態は、第2の実施の形態によるコモンモードフィルタ2の応用例であるが、第1、第3〜第8の実施の形態によるコモンモードフィルタ1,3〜8の応用例としてもよく、さらにこれらを適宜組み合わせたものであってもよい。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
例えば、上記実施の形態においては、一対のワイヤが巻回されるコアとしてドラムコアを用いているが、本発明におけるコアはドラムコアに限定されず、一対のワイヤに対する巻芯部を有するものであればどのような形状のコアであってもかまわない。巻芯部の断面形状についても矩形であることは必須でなく、六角形、八角形、円形、楕円形などであっても構わない。また、各ワイヤのターン数は上記実施の形態よりも多くてもかまわない。例えば、レイヤ巻きで30〜50ターンとし、インダクタンスが200〜400μH程度となるようにしてもよいし、バイファイラ巻きで15〜25ターンとし、インダクタンスが100〜200μHとなるようにしてもよい。
また、上記実施の形態においては、第1及び第2のワイヤW1,W2をスペースエリアS1内でクロスさせているが、ワイヤW1,W2がクロスする地点はスペースエリアS1内に限定されず、例えばスペースエリアS1から第2の巻回エリアAR2に移ったワイヤW1,W2を巻芯部11aに巻回する直前にクロスさせてもよい。さらに、ワイヤW1,W2のクロスが可能であればスペースエリアS1を省略することも可能である。
また、上記実施の形態においては、第1の巻回エリアにおける第1及び第2のワイヤW1,W2の第1のターン数m1を正の整数(4ターン、6ターン等)とし、同様に前記第2の巻回エリアにおける第1及び第2のワイヤW1,W2の第2のターン数m2を正の整数としているが、必ずしも正の整数である必要はなく、正数であれば何ターンであってもよい。したがって、例えば4.5ターンのような中途半端なターン数であってもかまわない。