以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態による表面実装型のコモンモードフィルタ1の外観構造を示す略斜視図である。なお、本実施の形態では、図1に示すように、後述する一対の鍔部11b,11cの対向方向をy方向、後述する上面11bs,11csの面内でy方向と垂直な方向をx方向、x方向とy方向の両方に垂直な方向をz方向と称する。
図1に示すように、コモンモードフィルタ1は、ドラムコア11と、ドラムコア11に取り付けられた板状コア12と、ドラムコア11に巻回されたワイヤW1,W2(第1及び第2のワイヤ)とを備えて構成される。ドラムコア11は、断面が矩形である棒状の巻芯部11aと、巻芯部11aの両端に設けられた鍔部11b,11cとを備え、これらが一体化された構造を有している。板状コア12は、鍔部11b,11cの下面(上面11bs,11csの反対側の面)と固着している。コモンモードフィルタ1は、ドラムコア11の鍔部11b,11cの上面11bs,11csを回路基板に対向させた状態で表面実装される。
ドラムコア11及び板状コア12は、比較的透磁率の高い磁性材料、例えばNi−Zn系フェライトやMn−Zn系フェライトの焼結体によって構成される。なお、Mn−Zn系フェライトなどの透磁率の高い磁性材料は、固有抵抗が低く導電性を有しているのが通常である。
鍔部11bの上面11bsには2つの端子電極E1,E2が形成されており、鍔部11cの上面11csには2つの端子電極E3,E4が形成されている。端子電極E1,E2は、x方向の一端側からこの順で配置される。同様に、端子電極E3,E4も、x方向の一端側からこの順で配置される。端子電極E1〜E4には、ワイヤW1,W2の各端部が熱圧着により継線される。
ワイヤW1,W2は被覆導線であり、巻芯部11aに互いに同一の巻回方向で巻回されてコイル導体を構成する。ワイヤW1,W2のターン数も互いに同一である。本実施の形態では、ワイヤW1,W2は2層構造のレイヤ巻きによって巻回される。また、巻芯部11aの中ほどに位置する隣接ターン間にスペースが設けられ、これによってスペースエリアS1が構成される。この点については、後ほど再度詳しく説明する。スペースエリアS1以外の部分は、隣接ターン同士が密着して巻回されている。ワイヤW1の一端(鍔部11b側の端部)W1a,他端(鍔部11c側の端部)W1bはそれぞれ端子電極E1,E3に継線される。また、ワイヤW2の一端(鍔部11b側の端部)W2a,他端(鍔部11c側の端部)W2bはそれぞれ端子電極E2,E4に継線される。
図2は、コモンモードフィルタ1の基本的な電気回路図である。
図2に示すように、コモンモードフィルタ1は、端子電極E1とE3の間に接続されるインダクタ10aと、端子電極E2とE4の間に接続されるインダクタ10bとが、互いに磁気結合した構成を有している。インダクタ10a,10bは、それぞれワイヤW1,W2によって構成される。この構成により、端子電極E1,E2を入力端、端子電極E3,E4を出力端とした場合、入力端から入力されたディファレンシャル信号は、コモンモードフィルタ1によってほとんど影響を受けず、出力端から出力される。一方、入力端から入力されたコモンモードノイズは、コモンモードフィルタ1によって大きく減衰し、出力端へはほとんど出力されないこととなる。
ここで、コモンモードフィルタは一般に、コモンモードフィルタの入力端に入力されたディファレンシャル信号の一部を、コモンモードノイズに変換して出力端から出力してしまう、という性質を有している。この性質はもちろん望ましいものではないので、コモンモードノイズに変換されるディファレンシャル信号の割合(上述したモード変換特性Scd)をある程度以下の値に抑えることが必要とされる。また、これとは別に、コモンモードフィルタには、できるだけ巻回数を多くすることが必要とされる。小さなサイズで必要なインダクタンスを得るためである。本実施の形態によるコモンモードフィルタ1では、ワイヤW1,W2の位置関係を含めた巻線構造を左右対称にして異ターン間容量の影響を低減することにより、上記課題を解決している。以下、詳しく説明する。
図3は、図2に示したコモンモードフィルタ1のより詳細な等価回路図である。
図3(a)に示すように、コモンモードフィルタ1は、本来のインダクタンスLのほか、インダクタンスLと並列な抵抗R0及びキャパシタンスC0を有している。さらに、ワイヤW1,W2による一対のインダクタンスL、L間にまたがって発生する分布容量C1を有している。図3(b)は、図3(a)のコモンモードフィルタ1を説明の便宜上2つのブロックに分割したものであり、分割されたインダクタンスはそれぞれL/2となる。また、並列抵抗はR0/2となり、並列キャパシタンスは2C0となる。
図4は、一対のワイヤ間の分布容量について説明するための模式図である。
図4(a)に示すように、例えばバイファイラ巻きされる一対のワイヤの同一ターン間には分布容量C1が発生しており、隣接ターン間の間隔dが広い場合にはそれらの間の分布容量は発生しない。一方、図4(b)に示すように、隣接ターン間の間隔dが狭い場合には隣接ターン間に跨って分布する分布容量(異ターン間容量)C2が発生する。すなわち、一対のワイヤ間には分布容量C1,C2の両方が発生する。
図5は、コモンモードフィルタの分布容量の発生モデルを示す等価回路図である。
図5(a)に示すように、通常のバイファイラ巻きが施された一対のワイヤW1,W2からなるコモンモードフィルタにおいて、一対のコイル(インダクタンスL)をその中間位置で2分割した場合、各コイルは2つのインダクタンスL/2の直列接続となる。そして一対のコイルには同一ターン間の分布容量C1と隣接ターン間の分布容量C2が発生する(図4参照)。ここで分布容量C2は、コイルの分割に合わせて、一方のブロックの分布容量C21と他方のブロックの分布容量C22とに分けることができ、これらの分布容量C21、C22は共にワイヤW2側のコイルと並列に発生し、これによりワイヤW2によるLC回路の共振点だけが変化し、その結果Scdも大きくなる。
一方、図5(b)に示すように、バイファイラ巻きが施された一対のワイヤW1,W2の巻き順を中間位置で逆転させて、ワイヤの位置関係を含めた巻線構造を左右対称とした場合、一方のブロックの分布容量C21はワイヤW1側のコイルと並列に発生し、他方のブロックの分布容量C22はワイヤW2側のコイルと並列に発生する。これにより、ワイヤW1によるLC回路の共振点とワイヤW2によるLC回路の共振点の両方が変化するが、2つの共振点のバランスは変化しない。したがって、Scdを低減することができる。また、隣接ターン間の間隔dを狭くできるので、ターン数を増やしてインダクタンスを高くすることもできる。隣接ターン間の間隔dを狭くして隣接ターン間の分布容量C2が発生しても、上記のようにScdを低減することができるからである。
なお、以上の説明は2つのワイヤがバイファイラ巻きである場合の説明であるが、レイヤ巻きの場合も同様である。次に、コモンモードフィルタ1の構造について詳細に説明する。
図6は、コモンモードフィルタ1の詳細な構成を示す略平面図である。また、図7は、図6に示すコモンモードフィルタ1の略断面図であり、(a)はA1−A1'線に沿った断面図、(b)はA2−A2'線に沿った断面図である。
図6及び図7に示すように、コモンモードフィルタ1は、ドラムコア11の巻芯部11aにいわゆるレイヤ巻きにより巻回された一対のワイヤW1,W2を備えている。第1のワイヤW1は、巻芯部11aの表面に直接巻回されて1層目の巻線層(第1層)を構成しており、第2のワイヤW2は、一部を除き、第1層の外側に重ねて巻回された2層目の巻線層(第2層)を構成している。第1のワイヤW1と第2のワイヤW2は実質的に同じターン数(ここでは12ターン)である。
一対のワイヤW1,W2による巻線構造は、巻芯部11aの長手方向の一端側に位置する第1の巻回エリアAR1に設けられた第1の巻線ブロックBK1と、巻芯部11aの長手方向の他端側に位置する第2の巻回エリアAR2に設けられた第2の巻線ブロックBK2を構成している。第1のワイヤW1の第1〜第6ターン(複数の第1の巻線パターン)並びに第2のワイヤW2の第1〜第6ターン(複数の第3の巻線パターン)は、第1の巻線ブロックBK1を構成しており、第1のワイヤW1の第7〜第12ターン(複数の第2の巻線パターン)並びに第2のワイヤW2の第7〜第12ターン(複数の第4の巻線パターン)は第2の巻線ブロックBK2を構成している。
第1のワイヤW1は、巻芯部11aの一端から他端に向かって順に巻回されている。特に、第1及び第2の巻回エリアAR1,AR2内において、第1のワイヤW1は線間に隙間なく密に巻回されている。一方、第1の巻回エリアAR1と第2の巻回エリアAR2との間に位置するスペースエリアS1において、第1の巻線ブロックBK1と第2の巻線ブロックBK1との間にはスペースが設けられている。すなわち、ワイヤW1の第1〜第6ターンは密に巻回され、第6ターンと第7ターンとの間にはスペースが設けられ、第7〜第12ターンは再び密に巻回される。
第2のワイヤW2もまた、巻芯部11aの一端から他端に向かって順に巻回されているが、第1のワイヤW1の線間に形成される谷間に嵌り込みながら巻回される。すなわち、第2のワイヤW2はそれと同一ターンの第1のワイヤW1の真上には配置されず、巻芯部11aの長手方向の位置は互いに一致していない。第2のワイヤW2の第1ターンは第1のワイヤW1の第1ターンと第2ターンの間の谷間に位置し、第5ターンまでは第1のワイヤW1による巻線層の上に重ねて巻回される。
第2のワイヤW2の第6ターンは第1の巻線ブロックBK1と第2の巻線ブロックBK2との間のスペースに落ち込んで巻芯部11aの表面に接しており、2層目ではなく1層目の一部をなしている。第7ターンも第6ターンと同様である。第2のワイヤW2の第6ターンと第7ターンは本来2層目に形成されることが理想であるが、第1のワイヤW1の第6ターンと第7ターンとの間にスペースを設けた場合、第2のワイヤW2を支持する第1のワイヤW1の2ターン分のうちの片方が欠けることになるため、2層目のポジションを維持することができない。そのため、現実的な構造として、第6及び第7ターンについては最初から巻き崩れた状態を採用している。
第2のワイヤW2の第8〜第12ターンは再び第1のワイヤW1の線間に形成される谷間に嵌り込みながら巻回される。第2のワイヤW2の第8ターンは第1のワイヤW1の第7ターンと第8ターンの間の谷間に位置し、第12ターンまで第1のワイヤW1による巻線層の上に重ねて巻回される。
以上は12ターンの場合であるが、これを一般化すると次のようになる。第1及び第2の巻回エリアAR1,AR2における第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数をいずれもn(nは正の整数)とするとき、第1の巻回エリアAR1の第1層には、nターンの第1のワイヤW1(第1の巻線パターン)と1ターンの第2のワイヤW2(第3の巻線パターン)がそれぞれ巻回され、また第1の巻回エリアAR1の第2層には、n−1ターンの第2のワイヤ(第3の巻線パターン)が巻回される。同様に、第2の巻回エリアAR2の第1層には、nターンの第1のワイヤW1(第2の巻線パターン)と1ターンの第2のワイヤW2(第4の巻線パターン)がそれぞれ巻回され、また第2の巻回エリアAR2の第2層には、n−1ターンの第2のワイヤW2(第4の巻線パターン)が巻回される。
図示のように、第1の巻線ブロックBK1の巻線構造と第2の巻線ブロックBK2の巻線構造は境界線Bに対して互いに対称形(左右対称)である。特に、第1の巻線ブロックBK1内のワイヤW1,W2の位置関係と第2の巻線ブロックBK2内のワイヤW1,W2の位置関係は左右対称である。ただし、第1の巻線ブロックBK1内及び第2の巻線ブロックBK2内にける第1及び第2のワイヤW1,W2の位置関係は左右対称ではない。
例えば、第1の巻線ブロックBK1の第1のワイヤW1の第1〜第6ターンと対称関係にあるのは、第2の巻線ブロックBK2の第1のワイヤW1の第12〜第7ターンであり、ともに第1のワイヤW1である。また、第1の巻線ブロックBK1の第2のワイヤW2の第1〜第5ターンと対称関係にあるのは、第2の巻線ブロックBK2の第2のワイヤW2の第12〜第8ターンであり、ともに第2のワイヤW2である。さらに、第1の巻線ブロックBK1の第1のワイヤW1の第6ターンと対称関係にあるのは、第2の巻線ブロックBK2の第1のワイヤW1の第7ターンであり、ともに第1のワイヤW1である。なお、巻き始めや巻終わりの位置においては対称性がどうしても崩れるが、このようなわずかな対称性のずれは許容範囲である。
このように、第1及び第2のワイヤW1,W2による巻線構造がワイヤの位置関係を含めて左右対称となる場合には、異なるターン間に跨って発生する分布容量(異ターン間容量)がワイヤW1,W2の両方に均一に発生するため、ワイヤW1,W2のインピーダンスのアンバランスを抑えることができる。したがって、Scd(ディファレンシャル信号成分がコモンモードに変換されてしまうことによるノイズ)を低減することができ、高品質なコモンモードフィルタを実現することができる。
さらに、本実施の形態のように、第1のブロックと第2のブロックとの間にスペースを設ける場合には、左右対称な巻線構造を容易に実現でき、異ターン間容量の影響を十分に低減することができる。したがって、Scdを十分に低減することができ、高品質なコモンモードフィルタを実現することができる。
上記実施の形態においては、左右の対称性が完全である場合を挙げたが、必ずしも完全に対称である必要はなく、一部に非対称な部分が含まれていてもよい。
図8は、本発明の第2の実施の形態によるコモンモードフィルタ2の構成を示す略断面図である。
図8に示すように、コモンモードフィルタ2の特徴は、第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数が13ターン(奇数ターン)であり、巻線構造の対称性が巻芯部11aの長手方向の一方の端部で崩れている点にある。第1〜第12ターンまでは第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、第12ターンに続いて第13ターンが設けられており、ワイヤW1の第13ターン(第5の巻線パターン)並びに第2のワイヤW2の第13ターン(第6の巻線パターン)は、第3の巻回エリアAR3に設けられた第3の巻線ブロックBK3を構成している。
第2及び第3の巻線ブロックBK2,BK3を一つの巻線ブロックBK4として見た場合、第1の巻線ブロックBK1と第4の巻線ブロックBK4との間に厳密な対称性は存在しない。第1及び第2のワイヤW1,W2を13ターンとする場合には、均等に分けることができない。しかし、本実施の形態では、左側6ターンと右側7ターンとに分けて、右側の7ターンのうちの6ターンと左側の6ターンとが左右対称な関係を有している。第1の巻線ブロックBK1内の第1〜第6ターンと第2の巻線ブロックBK2の第7〜第12ターンとの間で対称性が確保されており、非対称部分である第3の巻線ブロックBK3のターン数が比較的少ないので、非対称部分の影響を大きく受けることなく、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
第1及び第2のワイヤW1,W2による巻線構造が第1及び第2の巻線ブロックに対して非対称な第3の巻線ブロックをさらに含む場合、第3の巻線ブロックBK3における第1及び第2のワイヤW1,W2(第5,第6の巻線パターン)のターン数はそれぞれ、第1及び第2の巻線ブロックBK1,BK2の各々における第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数の半分以下であることが好ましい。例えば図示のように、第1及び第2の巻線ブロックBK1,BK2におけるワイヤW1,W2のターン数がともに6ターンである場合、第3の巻線ブロックBK3におけるワイヤW1,W2のターン数はそれぞれ3ターン以下であることが好ましい。非対称部分のターン数が対称部分のターン数の半分を超える場合には、その影響を無視することが出来なくなり、ノイズ低減効果が不十分となるが、半分以下である場合には両方の巻線のインピーダンスのアンバランスが比較的小さく、実用上問題ないからである。
第3の巻線ブロックBK3における第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数は共に、第1及び第2の巻線ブロックBK1,BK2内のワイヤのターン数によらず、2ターン以下であることが特に好ましい。意図的に非対称にしようとしなければ、ほとんどの場合、非対称部分のターン数を2ターン以内に収めることができると考えられ、この範囲内であればインピーダンスのアンバランスの影響が非常に小さく、非対称部分がない場合とほとんど変わらないからである。
図9は、本発明の第3の実施の形態によるコモンモードフィルタ3の構成を示す略断面図である。
図9に示すように、コモンモードフィルタ3の特徴は、第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数が13ターン(奇数ターン)であり、巻線構造の対称性が巻芯部11aの長手方向の中央部で崩れている点にある。第1及び第2のワイヤW1,W2の第1〜第6ターンは第1の実施の形態と同じである。第2のワイヤW2の第6ターンの隣には第1のワイヤW1の第7ターン(第5の巻線パターン)が巻回されており、第1のワイヤW1の第7ターンの隣には第2のワイヤW2の第7ターン(第6の巻線パターン)が巻回されている。第1及び第2のワイヤW1,W2の第7ターンは共に1層目に設けられており、第3の巻回エリアAR3に設けられた第3の巻線ブロックBK3を構成している。その後、第1及び第2のワイヤW1,W2の第8〜第13ターンは、第1の実施の形態における第7〜第12ターンと同様に巻回される。
第1の巻線ブロックBK1と第3の巻線ブロックBK3の第1のワイヤW1の第7ターンとを一つの巻線ブロックBK4とし、第2の巻線ブロックBK2と第3の巻線ブロックBK3の第2のワイヤW2の第7ターンとをもう一つの巻線ブロックBK5として見た場合、第4の巻線ブロックBK4と第5の巻線ブロックBK5との間に厳密な対称性は存在しない。しかし、第1の巻線ブロックBK1内の第1〜第6ターンと第2の巻線ブロックBK2の第7〜第12ターンとの間で対称性が確保されており、非対称部分である第3の巻線ブロックBK3のターン数が比較的少ないので、第2の実施の形態と同様、非対称部分の影響を大きく受けることなく、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
なお、本実施の形態では、第1の巻線ブロックBK1と第2の巻線ブロックBK2との間にスペースを設けていないが、第1の実施の形態のようにスペースを設けることも可能である。第1の巻線ブロックBK1と第2の巻線ブロックBK2との間にスペースを設ける場合には、左右対称な巻線構造を容易に実現でき、異ターン間容量の影響を十分に低減することができる。したがって、Scdを十分に低減することができ、高品質なコモンモードフィルタを実現することができる。
図10は、本発明の第4の実施の形態によるコモンモードフィルタ4の構成を示す略平面図である。また、図11は、図10に示すコモンモードフィルタ4の略断面図であり、(a)はA1−A1'線に沿った断面図、(b)はA2−A2'線に沿った断面図である。
図10及び図11に示すように、コモンモードフィルタ4の特徴は、第2のワイヤW2の2層目から1層目への落ち込み部分が、巻芯部11aの長手方向の中央部ではなく両端部に設けられている点にある。
第1のワイヤW1は、巻芯部11aの一端から他端に向かって順に巻回されている。特に、第1のワイヤW1の第1〜第12ターンは線間に隙間なく密に巻回されており、第6ターンと第7ターンとの間のスペースは設けられていない。すなわち、第1の巻線ブロックBK1と第2の巻線ブロックBK2との間において線間のスペースは設けられていない。
第2のワイヤW2もまた、巻芯部11aの一端から他端に向かって順に巻回されているが、第1のワイヤW1の線間に形成される谷間に嵌り込みながら巻回される。第2のワイヤW2の第1ターンと第12ターンは1層目に落ち込んで巻芯部11aの表面に接しており、2層目ではなく1層目の一部をなしている。
第2のワイヤW2の第2ターンは第1のワイヤW1の第1ターンと第2ターンとの間の谷間に位置し、第6ターンまでは第1のワイヤW1による巻線層の上に重ねて密に巻回される。第6ターンは第1のワイヤの第5ターンと第6ターンと間の谷間に位置する。
第7ターンは次の巻回位置(谷間)を1つ飛ばして配置され、第1のワイヤW1の第7ターンと第8ターンとの間の谷間に位置し、第11ターンまでは第1のワイヤW1の線間に形成される谷間に嵌り込みながら巻回される。最終ターンである第12ターンは、第1ターンと同様、1層目に落ち込んで巻芯部11aの表面に接しており、2層目ではなく1層目の一部をなしている。
図示のように、第1の巻線ブロックBK1の巻線構造と第2の巻線ブロックBK2の巻線構造は境界線Bに対して互いに対称形(左右対称)である。特に、第1の巻線ブロックBK1内のワイヤW1,W2の位置関係と第2の巻線ブロックBK2内のワイヤW1,W2の位置関係は左右対称である。ただし、第1の巻線ブロックBK1内及び第2の巻線ブロックBK2内における第1及び第2のワイヤW1,W2の位置関係は左右対称ではない
例えば、第1の巻線ブロックBK1の第2のワイヤW2の第1ターンと対称関係にあるのは、第2の巻線ブロックBK2の第2のワイヤW2の第12ターンであり、ともに第2のワイヤW2である。また、第1の巻線ブロックBK1の第1のワイヤW1の第1〜第6ターンと対称関係にあるのは、第2の巻線ブロックBK2の第1のワイヤW1の第12〜第7ターンであり、ともに第1のワイヤW1である。さらに、第1の巻線ブロックBK1の第2のワイヤW2の第2〜6ターンと対称関係にあるのは、第2の巻線ブロックBK2の第2のワイヤW2の第11〜7ターンであり、ともに第2のワイヤW2である。なお、巻き始めや巻終わりの位置においては対称性がどうしても崩れるが、このようなわずかな対称性のずれは許容範囲である。
このように、第1及び第2のワイヤW1,W2による巻線構造がワイヤの位置関係を含めて左右対称となる場合には、異ターン間容量がワイヤW1,W2の両方に均一に発生するため、ワイヤW1,W2のインピーダンスのアンバランスを抑えることができる。したがって、第1の実施の形態と同様、Scdを低減することができ、高品質なコモンモードフィルタを実現することができる。
図12は、本発明の第5の実施の形態によるコモンモードフィルタ5の構成を示す略平面図である。また、図13は、図12に示すコモンモードフィルタ5の略断面図であり、(a)はA1−A1'線に沿った断面図、(b)はA2−A2'線に沿った断面図である。
図12及び図13に示すように、コモンモードフィルタ5の特徴は、一対の巻線がいわゆるバイファイラ巻きにより巻回されている点にある。バイファイラ巻きとは、第1及び第2のワイヤW1,W2を1本ずつ交互に配置する巻き方のことであり、1次・2次の密な結合が必要な場合に好ましく用いられる。第1のワイヤW1と第2のワイヤW2は互いに平行な状態のまま巻芯部11aの長手方向に巻回されて1層目の巻線層を構成している。第1のワイヤW1と第2のワイヤW2は実質的に同じターン数(ここでは6ターン)である。
一対のワイヤW1,W2による巻線構造は、巻芯部11aの長手方向の一端側に設けられた第1の巻線ブロックBK1と、巻芯部11aの長手方向の他端側に設けられた第2の巻線ブロックBK2を有している。第1及び第2のワイヤW1,W2の第1〜第3ターンは第1の巻線ブロックBK1を構成しており、第1及び第2のワイヤW1,W2の第4〜第6ターンは第2の巻線ブロックBK2を構成している。
第1ブロック(第1〜第3ターン)においては、第1のワイヤW1が左側、第2のワイヤW2が右側に位置し、この順で線間に隙間なく密に巻回されているが、第2ブロック(第4〜第6ターン)においては位置関係が逆転し、第2のワイヤW2が左側、第1のワイヤW1が右側に位置し、この順で線間に隙間なく密に巻回されている。
図示のように、第1の巻線ブロックBK1の巻線構造と第2の巻線ブロックBK2の巻線構造は境界線Bに対して互いに対称形(左右対称)である。特に、第1の巻線ブロックBK1内のワイヤW1,W2の位置関係と第2の巻線ブロックBK2内のワイヤW1,W2の位置関係は左右対称である。ただし、第1の巻線ブロックBK1内及び第2の巻線ブロックBK2内における第1及び第2のワイヤW1,W2の位置関係は左右対称ではない。
例えば、第1の巻線ブロックBK1の第1のワイヤW1の第1、第2、及び第3ターンと対称関係にあるのは、第2の巻線ブロックBK2の第1のワイヤW1の第6、第5、及び第4ターンであり、ともに第1のワイヤW1である。また、第1の巻線ブロックBK1の第2のワイヤW2の第1、第2、及び第3ターンと対称関係にあるのは、第2の巻線ブロックBK2の第2のワイヤW2の第6、第5、及び第4ターンであり、ともに第2のワイヤW2である。なお、巻き始めや巻終わりの位置においては対称性がどうしても崩れるが、このようなわずかな対称性のずれは許容範囲である。
このように、第1及び第2のワイヤW1,W2による巻線構造がワイヤの位置関係を含めて左右対称となる場合には、異ターン間容量がワイヤW1,W2の両方に対して均一に発生するため、ワイヤW1,W2のインピーダンスのアンバランスを抑えることができる。したがって、Scdを低減することができ、高品質なコモンモードフィルタを実現することができる。
さらに、本実施の形態のように、第1のブロックと第2のブロックとの間にスペースが設けられている場合には、左右対称構造による効果をより大きくすることができ、Scdを十分に低減することができる。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
例えば、上記実施の形態においては、一対のワイヤが巻回されるコアとしてドラムコアを用いているが、本発明におけるコアはドラムコアに限定されず、一対のワイヤに対する巻芯部を有するものであればどのような形状のコアであってもかまわない。また、各ワイヤのターン数(巻回数)は上記実施の形態よりも多くてもかまわない。例えば、レイヤ巻きで30〜50ターンとし、インダクタンスが200〜400μH程度となるようにしてもよいし、バイファイラ巻きで15〜25ターンとし、インダクタンスが100〜200μHとなるようにしてもよい。