JP2017078691A - 形状測定装置の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】測定子とワークとが接触した状態から測定子をワークから離間させるリトラクション時に、測定子とワークとの接触の有無を監視する。リトラクション時に測定子とワークとの接触を検知した場合には、測定子がワークに接触しない位置にプローブを移動させ、リカバリー処理を実行する。リトラクション開始点におけるワーク表面上の点Psfと、前記測定子と前記ワークとの接触点Pcoと、の距離をLmとするとき、測定子の直径dを考慮して、(Lm−d)に係数k(0<k<1)を乗算した値を適正リトラクション量Lrとする。リトラクションの開始点からリトラクションの方向に適正リトラクション量Lrだけ移動した点をリトラクション停止点Prとし、測定子をリトラクション停止点Prに移動させる。
【選択図】図10
Description
ここでは、多項式として三次関数を用い、PCC曲線群(ParametricCubicCurves)とする。このPCC曲線を元にワークを測定する経路を生成する。さらに、PCC曲線を分割して分割PCC曲線群とする。
分割PCC曲線群から速度曲線を算出してプローブの移動速度(移動ベクトル)を算出する。(例えば分割PCC曲線群の各セグメントの曲率などに基づいてプローブの移動速度(移動ベクトル)を設定する。)このように算出された移動速度に基づいてプローブを移動させ、被測定物の表面に倣って測定子を移動させる(パッシブ設計値倣い測定)。
プローブをワークから離間させる動作をリトラクションと称する。
リトラクション長LRは、指定リトラクション長LRとして予め与えられている。例えば、指定リトラクション長LRは4mmというように与えられる。
指定リトラクション長LRは、次の移動を行うにあたってプローブとワークとの安全が確保できる程度には十分な離間量になっていなければならない。その一方、リトラクション時にプローブがワークに接触するほどに大きな値になっていてもいけない。指定リトラクション長LRが大きすぎると、リトラクション時にワークの対向面にプローブが接触する可能性がある。
指定リトラクション長LRが適切かどうかは、例えば、ワークの設計データ(例えばCADデータ)に基づいて確認することができる。
この原因の一つとして、設計値と実際のワークとの間に誤差があることが挙げられる。
リトラクション時にワークとプローブとが接触した場合、プローブおよびワークが破損しないように、接触を検知した時点で即時に緊急停止し、ユーザに異常発生を報知するようにしていた。
しかし、このような緊急停止がしばしば発生すると、測定効率が低下してしまう。
緊急停止が発生すると、ユーザがマニュアルでエラーを解除し、さらに、プローブを安全な位置に退避させるという作業が必要になる。これにはかなりの専門技量も要求される。
先端に測定子を有するプローブと、前記プローブを移動させる移動機構と、を備え、前記測定子とワークの表面との接触を検知して前記ワークの形状を測定する形状測定装置の制御方法であって、
前記測定子と前記ワークとが接触した状態から前記測定子を前記ワークから離間させるリトラクションを実行させるにあたって、
最終指令位置Pnと最終指令位置Pnに対応する最終位置決め点Pn'とのズレ量Lsを求め、
前記ズレ量Lsと予め指定された指定リトラクション長LRとを対比し、
Ls<β・LRを満たす場合には前記指定リトラクション長LRでリトラクションを実行し、
Ls<β・LRを満たさない場合には、前記指定リトラクション長LRよりも短い値に設定されたエラー回避用リトラクション長Lr'によりリトラクションを実行する
ことを特徴とする。
βは、0<β<1である。
エラー回避用リトラクション長Lr'によりリトラクションを実行した後、前記プローブとワークとの接触を検知した場合には、前記最終位置決め点Pn'に戻る
ことが好ましい。
前記最終位置決め点Pn'に戻り、さらに、前記エラー回避用リトラクション長Lr'よりも短くしたリトラクション長Lr'によりリトラクションを実行する
ことが好ましい。
前記エラー回避用リトラクション長Lr'でリトラクションを実行する際のリトラクションの方向は、プローブのセンサ出力に基づいて求められる被測定面の法線方向である
ことが好ましい。
前記エラー回避用リトラクション長Lr'は、0.1mmから0.5mmの範囲から選択される値である
ことが好ましい。
より好ましくは、前記エラー回避用リトラクション長Lr'は、0.1mmから0.3mmの範囲から選択される値とすることが好ましい。
先端に測定子を有するプローブと、前記プローブを移動させる移動機構と、を備え、前記測定子とワークの表面との接触を検知して前記ワークの形状を測定する形状測定装置の制御方法であって、
前記測定子と前記ワークとが接触した状態から前記測定子を前記ワークから離間させるリトラクション時に、前記測定子と前記ワークとの接触の有無を監視し、
前記リトラクション時に前記測定子と前記ワークとの接触を検知した場合には、前記測定子が前記ワークに接触しない位置に前記プローブを移動させる
ことを特徴とする。
前記リトラクション時に前記測定子と前記ワークとの接触を検知した場合には、この前記測定子と前記ワークとの接触点Pcoの座標をサンプリングする
ことが好ましい。
リトラクション開始点におけるワーク表面上の点Psfと、前記測定子と前記ワークとの接触点Pcoと、の距離Lmを求め、
この距離Lmと前記測定子の径とに基づいて適正リトラクション量Lrを設定し、
リトラクションの開始点からリトラクションの方向に前記適正リトラクション量Lrだけ移動した点をリトラクション停止点Prとし、
前記測定子を前記リトラクション停止点Prに移動させる
ことが好ましい。
前記適正リトラクション量Lrは、前記測定子の直径をdとし、1未満の正の整数である所定の係数k(0<k<1)を用い、
Lr=(Lm−d)×k
とする
ことが好ましい。
前記形状測定装置の制御方法をコンピュータに実行させる。
この形状測定装置の制御プログラムは、コンピュータ読取可能な不揮発性記録媒体に記録して配布するようにしてもよい。
(第1実施形態)
図1は、形状測定システム100の全体構成を示す図である。
形状測定システム100の基本的な構成は既に知られたものであるが、簡単に説明しておく。
形状測定システム100は、三次元測定機200と、三次元測定機200の駆動を制御するモーションコントローラ300と、モーションコントローラ300を制御すると共に必要なデータ処理を実行するホストコンピュータ500と、を備える。
図2は、モーションコントローラ300およびホストコンピュータ500の機能ブロック図である。
モーションコントローラ300は、PCC取得部310と、カウンタ部320と、経路算出部330と、駆動制御部340と、を備える。
ホストコンピュータ500は、CPU511(CentralProcessingUnit)やメモリ等を備えて構成され、モーションコントローラ300を介して三次元測定機200を制御する。
ホストコンピュータ500は、さらに、記憶部520と、形状解析部530と、を備える。
記憶部520は、被測定物(ワーク)Wの形状に関する設計データ(CADデータやNURBSデータ等)、測定で得られた測定データ、および、測定動作全体を制御する測定制御プログラムを格納する。
順を追って測定動作を説明する。
本実施形態は、エラーを自動修正する機能が付いた設計値倣い測定であり、「エラー修正付き設計値倣い測定」と称することにする。
本実施形態の手順を図3に示し、順を追って説明する。
図3は、エラー修正付き設計値倣い測定の動作を説明するための全体フローチャートである。
準備工程(ST100)はホストコンピュータ500により実行される。
(フローチャートのボックスに"H"と記したのはホストコンピュータ500によって実行されると解釈されたい。
"H"を付していないボックスはモーションコントローラ300によって実行されると解釈されたい。)
図4に、準備工程(ST100)の手順を示した。
ユーザは、測定対象となるワークを定盤210上に設置するとともに、このワークの設計データを記憶部520に格納しておく。ワークの設計データは"オリジナルデータ"として記憶部520に格納される(ST101)。
オリジナルデータは例えばCADデータ(例えばNURBSデータ)である。
まず、CADデータ(例えばNURBSデータ)を点群のデータに変換する。
各点のデータは、座標値(x、y、z)と法線方向(P、Q、R)とを組み合わせたデータである。(つまり、(x、y、z、P、Q、R)である。)
各点の座標値を法線方向に所定量だけオフセットする。
(所定量とは、具体的には、測定子半径r―押込み量Epである。)このようにして求めた点群データをPCC曲線群に変換する。PCC曲線群をさらに複数の点でセグメント(分割PCC曲線)に分割する。
ここまでの処理はホストコンピュータ500内で演算処理される。
このようにして生成されたPCC曲線はモーションコントローラ300に送られ、PCC取得部310に一旦格納される。
ここでは、アクティブ設計値倣い測定が選択されているので、アクティブ設計値倣い測定のための経路を生成する。
(ちなみに、アクティブ設計値倣い測定とパッシブ設計値倣い測定とでは、生成される経路は同じである。)
そして、経路算出部330は、分割PCC曲線の曲率等に応じてプローブ230の移動速度を設定し、PCC曲線上の各点における移動方向および移動速さ(速度ベクトル)を決定する。
この移動ベクトルに従ってプローブ230を移動させれば設計値倣い測定が実現される。
そして、速度ベクトルと押込み修正ベクトルと軌道修正ベクトルとを合成した合成速度ベクトルを生成する。
駆動制御部340は、合成速度ベクトルに従って三次元測定機200に駆動信号を与える。
これにより、三次元測定機200は、ワークをアクティブ設計値倣い測定で測定する。
図6に、細い孔を持つワークWをアクティブ設計値倣い測定で測定する様子を示す。
図6においては、設計データの通りにワークWが加工されているとする。
設計値倣い測定の経路(PCC曲線)は、設計データを元にして、設計データに所定のオフセットを加味したものになる。(アクティブ)設計値倣い測定を行うと、経路(PCC曲線)上の補間点(i)から次の補間点(i+1)へ測定子232が移動するように三次元測定機200が駆動制御される。
このとき、点Pnの地点でプローブ230がワークから離間するリトラクションを行う。
図6ではワークが設計データ通りに加工されている。
したがって、リトラクション時にプローブ230(測定子232)がプローブ230(測定子232)とワークとが接触するおそれはない。
ここで、図6中、LRは、設計値に基づくリトラクション経路でリトラクションを行うときのリトラクション長である。
これを指令リトラクション長LRとする。
工作機械の精度の高低により、実際に出来上がったワークは設計データから多少ずれるのはやむ得ないことである。
この場合でも、(アクティブ)設計値倣い測定の経路は設計データを元にして生成される。
アクティブ設計値倣い測定では、押込み量Epを一定とする軌道修正により、測定子232がワーク表面に沿って倣い移動する。
したがって、図7(図8)のように設計データと実際のワークとの間にズレがあってもプローブ230は倣い測定を継続する。
点Pn'は、押し込み量Epを一定にすべく点Pnを軌道修正した点に相当する。
点Pn'に到達したら、リトラクションを行う。
このとき、指定リトラクション長LRでリトラクションを行うと、プローブ230(測定子232)とワークとが接触してしまう場合がある(ST120:YES)。
このようなエラーが発生した場合、設計値倣い測定自体が不能となって三次元測定機200は動作を停止する。
すなわち、図7(図8)のように設計値とワークとのズレがあると、パッシブ設計値倣い測定ではプローブ230(測定子232)が細孔の奥まで入ることがない。
設計値倣い測定の経路と実際の測定子232の位置とのズレを軌道誤差ΔLと称する。
軌道誤差ΔLの許容値は、例えば、1.5mm程度に設定される。
軌道誤差ΔLが1.5mmを超えてしまっていると、アクティブ設計値倣い測定といえども軌道修正不可能となり、アクティブ設計値倣い測定自体がエラーとなる。
この場合、エラーにより、三次元測定機200は動作を停止する。
アクティブ設計値倣い測定により、設計データからのズレが大きいワークであってもエラー無しで倣い測定を継続できるようになった。
これ自体はユーザにとって便利になったと言えるが、パッシブ設計値倣い測定では極まれにしか起こり得なかったリトラクション時の接触がしばしば生じる可能性がでてきたわけである。
しかも、細い孔のなかでプローブが停止した場合、マニュアルでの復帰は若干の困難を伴うかもしれない。孔の中は直接目視できないことも有り得る。
モーションコントローラ300は、リトラクション時にプローブ230(測定子232)がワークに接触したことを検知した場合、すぐにプローブ230の移動を停止させる(ST130)。すなわち、リトラクション時にプローブ230が押し込まれたことを検知したら、三次元測定機200の動作を一時停止させる。
図9は、リカバリー処理(ST150)の動作手順を示すフローチャートである。
リカバリー処理にあたって、モーションコントローラ300は、まず、リカバリー処理に移行したことをホストコンピュータ500に通知する(ST151)。ホストコンピュータ500は、リカバリー処理に移行したことをユーザに通知する(例えばディスプレイに表示する)とともに、測定データの記録等の測定動作を一時待機状態にする。
この距離Lmは、例えば細孔の幅に相当する。
測定子232の径dを考慮にいれると、リトラクション開始点(Pn´)からワークとの接触点(Pco)に達するまでの最大可動距離はLm−d(dは測定子直径)となる(ST154)。つまり、この最大可動距離(Lm−d)未満であれば、ワークと接触せずにリトラクションできるはずである。
適正リトラクション量Lrは、最大可動距離Lm−dに1未満の係数k(0<k<1)を乗算することによって求められる。
ここでは、一例として、k=0.5とする。
このようにして求まった適正リトラクション量Lrの範囲内であれば、測定子232とワークとが接触せずにリトラクションできることになる。
倣い測定中の所定押込み量を0.3mmに設定したとすると、点Pn´の位置でプローブ230はワークに向けて0.3mm押し込まれていることになる。
ただし、測定子中心の座標値(Pn´)は、三次元測定機200の各エンコーダ出力とプローブセンサ出力との和に基づいて求められ、測定子232がワークに接触している間は同一の座標値となる。三次元測定機200がプローブ230をワークに押し込んだ分だけプローブセンサは押込み量を出力するのであるから、差し引きゼロである。
三次元測定機200がプローブ230のバックを開始させたとしても、押込み分(0.3mm)を戻している間は、測定子232の移動はない(測定子中心も不動)。測定子232が移動しないのであるから、この間に測定子232がワークと意図しない衝突をするなどということもない。
プローブ230の押込みがゼロになると、測定子232がワークから離れ始める。
リトラクション停止点Prは、リトラクション開始点(Pn')からリトラクションの方向に適正リトラクション量Lrを加算した位置である。
これにより、プローブ230(測定子232)とワークとの接触状態が解消され、リカバリーに成功したことになる。
この情報を元に細孔の位置を形状解析によって補正しておく。
このように補正した設計データをモーションコントローラ300(PCC取得部310)に戻せば、ワークに接触しない移動経路が得られるであろう。
したがって、このあと(リトラクション停止点Pr後の測定)の適切な経路を生成でき、このあとの倣い測定を継続できることはもちろんである。
また、同じ設計データを元にして同じ工作機械で加工したワーク(製品)であれば、二個目以降は設計値倣い測定でエラー無く測定できると期待できる。
(1)アクティブ設計値倣い測定は、設計データからのズレがやや大きいワークに対しても設計値倣い測定ができるので、測定効率の点で多大な利点がある。例えば、パッシブ設計値倣い測定は、設計データからのズレが大きいワークには適用できない。また、自律倣い測定では時間がかかる。ただ、設計データからのズレがやや大きいワークに対してアクティブ設計値倣い測定を行うと、リトラクション時に予期しない接触が発生することがある。リトラクション時の接触で逐一エラー終了していては、測定効率を特長としているアクティブ設計値倣い測定の効果がかなり減殺されてしまう。
この点、本実施形態では、リトラクション時の接触を自動的にリカバーするリカバリーモードを有し、リカバリー処理によって自動復帰できる。このことは、アクティブ設計値倣い測定の利便性をさらに向上させ、測定の高速化、測定作業の簡易化、効率化など種々の格別な効果に繋がる。
この点、本実施形態では、接触点Pcoの座標を正確に求め(ST152)、これを記録することとした(ST158)。これにより、ユーザのマニュアル操作はほぼ不要となり、測定作業が格段に簡便になる。
上記実施形態では、リトラクション量として、Lr=(Lm−d)×k、を例示した。
プローブ(測定子)がワークに衝突しない範囲でリトラクションできればよいので、この他にもリトラクション量の設定方法は考えられ得る。
例えば、(1)Lr=Lm×k'とし、このとき、k'を0.1や0.2程度の小さい値に設定してもよい。
Lmから測定子の径dを引いておかなくても、k'を小さくしておけば、適正なリトラクション量を設定できると考えられる。
あるいは、(2)Lr=Lm−d−α (0.5mm<α<2.0mm)、とする考え方もある。ワークから距離αだけ離れていれば安全なリトラクションが可能と考えられる。
なお、Lr(=Lm−d−α)からリトラクション停止点Prを求めたときに、リトラクション停止点Prがワークの内部に入ってしまうような場合はエラー終了してもよいし、αをより小さい値に再設定してもよいだろう。
次に本発明の第2実施形態を説明する。
上記第1実施形態においては、指定された通りにリトラクション動作を行ってみて、リトラクション時にプローブとワークとが接触したら復帰処理(リカバリー処理)を行うというものであった。
これに対し、第2実施形態では、できる限りリトラクション時にプローブとワークとが接触(衝突)しないように配慮している点に特徴を有する。
第2実施形態は、エラー回避機能がついた設計値倣い測定であり、「エラー回避機能付き設計値倣い測定」と称することにする。
以下、順に説明する。
まず、倣い測定に必要な準備を行う(準備工程ST200)。
準備工程ST200は図13のフローチャートに示す通り、基本的には第1実施形態と同様であり、ステップごとの詳しい説明は割愛する。
第2実施形態にあっては、図14の選択画面においてエラー回避モードを選択する(ST203)。
アクティブ設計値倣い測定も第1実施形態で説明したので重複する説明は割愛する。
図15は、設計データ通りに加工された細孔をアクティブ設計値倣い測定で測定する様子である。
ここで、細孔の幅が8mmであり、測定子232の直径が4mmであるとする。
図16は、設計データから若干ズレたワークをアクティブ設計値倣い測定で測定する様子である。
設計データの孔が8mmだとして、実際のワークでは孔の側面が0.5mm程度ずつ内側にズレてしまっており、孔が約7mm程度になっているとする。
図17については後述する。
(アクティブ)設計値倣い測定を行うと、経路(PCC曲線)上の補間点(i)から次の補間点(i+1)へ測定子232が移動するように三次元測定機200が駆動制御される。
いま、図15(図16)中の点Pnが細孔部分の測定の最終指令位置であるとする。
モーションコントローラ300は、移動指令がその測定箇所の最終指令位置Pnに達したか否かを判断する(ST220)。
(「移動指令がその測定箇所の最終指令位置Pnに達したか否か」というのは、別の言葉でいうと、動作指令がリトラクション動作の1つ手前に達したどうか、ということである。)
アクティブ設計値倣い測定をONにしているので、最終指令位置Pnへの移動指令(速度ベクトル)に押込み修正ベクトルと軌道修正ベクトルとが加わり、自動的に最終指令位置Pnに対応するワーク表面上の点Pn'にプローブ230が位置決め制御される(図16参照)。
(Pn'は測定子中心の座標値(Pn´)を表わすとする。
(三次元測定機200がプローブ230をワークに押し込んだ分だけプローブセンサは押込み量を出力するのであるから、差し引きゼロである。)
なお、図15では、設計データと実際のワークとにズレがないので、最終指令位置Pnが最終位置Pn'に一致していると解釈されたい。
Ls=|Pn−Pn'|
ここではLRに所定の係数βを乗じて、Lsとβ・LRとの大きさを対比する。
例として、βは0.5であるとする。
例えば、孔幅8mm、測定子232の直径が4mmなので、指定リトラクション長LRが2mmに設定されているとする。
図15を参照していただいて、測定子232が実線(測定子が孔の側面に当接している)から破線で示した位置に指定リトラクション長LR(2mm)だけリトラクションすると、測定子232の中心座標Ppは孔の真ん中にくる。
なお、リトラクションの方向Drは、プローブ230のセンサ出力から求められる。つまり、プローブ230のセンサ出力に基づいて点Psfにおける測定面の法線方向は分かる。この法線方向がリトラクションの方向Drとして設定される。
図15では、リトラクション後、測定子232の外面と孔の側面と間には約2mmのギャップがある。
(ここでは、測定子232は、測定面からも対向面からも2mm離間している。)
約2mmのギャップがあれば、この後、次の移動先に移動する際にプローブ230(測定子232)とワーク(孔)とが接触(衝突)する可能性は低い。
つまり、指定リトラクション長LR(=2mm)でリトラクションを行えばよい。
そして、次に測定すべき箇所があれば(ST280:NO)、アクティブ設計値倣い測定を継続する(ST210)。
図16では、実際のワークが設計データからズレており、孔の側面が0.5mm程度ずつ内側にズレている。
アクティブ設計値倣い測定であるから実際のワークが設計データからズレていても倣い測定が可能であり、最終指令位置Pnへの移動指令(速度ベクトル)に押込み修正ベクトルと軌道修正ベクトルとが加わり、自動的に最終指令位置Pnに対応するワーク表面上の点Pn'にプローブが位置決め制御される(図16参照)。
Ls=|Pn−Pn'|
ここでは、Ls≒0.5mmである。
安全判定条件(Ls<β・LR)を満たしているので(ST250:YES)、設定された通りのリトラクションを行う(ST270)。
つまり、指定リトラクション長LR(=2mm)でリトラクションを行えばよい。
一般的にズレ(Ls)の方向が面に垂直とは限らないのであるから、孔幅が2×Lsだけ狭くなるというのは考え得る最悪のケースである。
図16のように設計データと実際のワークとがズレている場合であっても、指定リトラクション長LRに比べてズレ量Lsが十分に小さければ指定リトラクション長LRで安全にリトラクションできると考えてよいであろう。
図17では、実際のワークが設計データからズレていて、孔の側面が1.2mm程度ずつ内側にズレてしまっているとする。
アクティブ設計値倣い測定であるから実際のワークが設計データからズレていても倣い測定が可能である。
軌道誤差ΔLの許容値は例えば1.5mm程度まで許容できるから、前記1.2mm程度の加工誤差であればアクティブ設計値倣い測定による軌道修正で倣い測定が可能である。
最終指令位置Pnと最終位置Pn'とのズレ量Lsを求める(ST240)。
Ls=|Pn−Pn'|
ここでは、Ls≒1.2mmである。
この場合、設定された通りのリトラクション長LRでリトラクションを行うと測定子232が対向面に衝突する可能性がでてくる。
仮に、指定リトラクション長LR(=2mm)でリトラクションしたとすると、測定子232の直径4mmにリトラクション長LR(=2mm)が加算されると6mmに達する。
押し込み量が0.3mmに達するまではエラー信号がでないとして、ギャップ5.6mmに押し込みの余裕0.3mmを見込んでも、やはり、測定子が対向面に基準押込み量(0.3mm)を超えて押し込まれてしまうことになる。
リトラクション時の移動速度が速いと、基準押込み量(0.3mm)を超えて対向面に衝突してしまうことになる。
エラー回避モードが選択されている場合には(ST251:YES)、エラー回避処理(ST300)に移行することになるが、エラー回避処理(ST300)に移行する前に、モーションコントローラ300はエラー回避処理に移行したことをホストコンピュータ500に通知する(ST252)。
ホストコンピュータ500は、エラー回避処理に移行したことをユーザに通知する(例えばディスプレイに表示する)とともに、測定データの記録等の測定動作を一時待機状態にする。
この最終位置Pn'は、指定リトラクション長LRでリトラクションできない点を意味する。
ホストコンピュータ500は、この最終位置Pn'の座標値を記録しておき、二個目以降のワークについては設計値倣い測定でエラー無く測定できるように設計データの補正および指定リトラクション長LRの再設定をしておく。
図19は、エラー回避処理(ST300)の具体的手順を説明するためのフローチャートである。
まず、リトラクション長をエラー回避処理用に予め設定された短い長さに設定変更する(ST301)。
ここでは、エラー回避用リトラクション長Lr'として1.7mmが予め設定されているとする。これは、指定リトラクション長LRよりも0.3mm短い値である。
また、後の処理のため、エラー回避用リトラクション長を用いたリトラクションの回数を記憶しておく。
ここでは、一回目のトライであるから,パラメータjを1に初期化する(ST303)。
直径4mmの測定子を1.7mmリトラクションしようとすると、1.6mmリトラクションした時点で測定子が対向面に接触し、さらに、プローブが0.1mm対向面に押し込まれることになる。
ちなみに、もし指定リトラクション長LRである2.0mmでリトラクションを行っていたとすると、プローブが0.4mm対向面に押し込まれていたことになる。
つまり、指定リトラクション長LR(=2.0mm)のままだと、基準押込み量(=0.3mm)を超えてプローブが対向面に押し込まれていた可能性があるわけであり、この点、エラー回避用の短いリトラクション長Lr'(=1.7mm)に設定変更していた意味がある。
対向面に過大な押込み量で衝突する可能性は低くなるが、やはり、今回のように、測定子が対向面に接触する可能性がある。
パラメータjが5以下であれば(ST308:YES)、記憶していた座標値Pn'を読み出し、この座標値Pn'に戻る。
そして、パラメータjに"1"を加算したのち(ST311)、再設定したリトラクション長Lr'(=1.4)でリトラクションを実行する(ST312)。
今度は、対向面に接触せずにリトラクションすることに成功した(ST306:NO)。
したがって、この後、ST280(図12)に戻って、全測定が終了するまでメインのフロー(ST210−ST280)を継続すればよい。すなわち、次の測定箇所があれば、リトラクション後の位置(Pr2)から次の移動先に移動すればよい。
したがって、パラメータjが5に達したら(ST308:NO)、モーションコントローラ300からホストコンピュータ500にエラー通知を行い(ST313)、その後、終了する。
エラー回避モードが選択されていない状態でズレ量Lsがβ・LR以上(ST250:NO)になってしまう場合も有り得る。
この場合、エラー終了してしまってもよいが、ユーザに再度選択のチャンスを与えてもよい。
この場合、次のようなエラー処理(ST260)を実行する。
図22にエラー処理(ST260)の手順を示す。
モーションコントローラ300は、ホストコンピュータ500に対してエラーを通知する(ST261)。
つまり、エラー回避モードの選択がない状態でズレ量Lsが指定リトラクション長LRに比してある程度の大きさになっている(ST250:NO)ことをホストコンピュータ500に通知する。
ホストコンピュータ500は、エラー通知を受けると、エラー表示を行う(例えばディスプレイに表示する)。
このとき、合わせて、ホストコンピュータ500は図14に示したような選択画面をディスプレイに表示し、エラー回避モードのON/OFFをユーザに選択させる。
この場合、先に説明したエラー回避処理(図19)が実行される。
(このあとは、ユーザの判断でマニュアル操作が行われることになる。)
本第2実施形態では、最終指令位置Pnと最終指令位置Pnに対応する最終位置決め点Pn'とのズレ量Lsを求めている。
このズレ量Lsが大きいと、設計値とワークとのズレが大きいということであるので、指定リトラクション長LRでリトラクションすると、予期せず対向面に衝突するおそれがでてくる。
この点、第2実施形態では、ズレ量Lsと指定リトラクション長LRとを対比し、指定リトラクション長LRがズレ量Lsよりも(十分に)大きいか否か、すなわち、安全にリトラクションできるか否かを判定することとしている。そして、指定リトラクション長LRで安全にリトラクションできないと判断される場合には、短めに設定されたエラー回避用リトラクション長Lr'でリトラクションを実行する。
したがって、指定リトラクション長LRでリトラクションして対向面に衝突するというような事態を極力避けることができる。これにより、プローブの負担が軽減すると期待できる。
設計値からのズレがやや大きいワークをアクティブ制御倣い測定しても、リトラクション時にエラー中断することはなく、測定効率の向上に繋がる。
上記第2実施形態では、安全判定条件(Ls<β・LR)を満たしていない場合(ST250:NO)、徐々にリトラクション長Lr'を短くしていくとした。
この点、変形例2としては、図23に示すフローチャートのように、エラー回避用のリトラクション長Lr'を極めて短い値、例えば、0.1mmに設定するようにしてもよい(ST301A)。このように極めて短いリトラクション長Lr'(=0.1mm)であれば、リトラクション時にプローブが対向面に接触するという事態は確実に回避できる。
もし、リトラクション長LRが短か過ぎてプローブとワークとが十分な離間距離をもっていないと、次の移動先Pkに移動する際にプローブとワークとが接触するおそれがある(図24中の経路R1を参照)。
一方、プローブとワークとが十分な離間距離をもっていれば、次の移動先Pkに移動する際にプローブとワークとが接触するといった可能性は低くなるのであり(図24中の経路R2)、したがって、指定リトラクション長LRとしては、安全を確保できる十分な離間距離として設定されている必要がある。
短いリトラクション長Lr'に設定変更するのは、安全判定条件(Ls<β・LR)を満たしていない場合(ST250:NO)のようなエラー回避の特例に留めておくのが適切である。
なお、エラー回避用のリトラクション長Lr'は0.1mmに限定されるものではなく、例えば、0.1mm〜0.5mm、より好ましくは、0.1mm〜0.3mmの範囲から選択される適切な値とすればよい。
上記実施形態では、アクティブ設計値倣い測定を中心に説明したが、"アクティブ設計値倣い測定"を"ポイント測定"に読み替えてもよい。
すなわち、本発明はポイント測定にも適用できる。ポイント測定(あるいはタッチ測定ともいう)自体は、よく知られているものである。ポイント測定では、一旦、プローブ230をワークから離間させる。そして、プローブ230(測定子232)をワークに接近させ、押し込み量が所定値(例えば0.3mm)になったところで座標値を取り込む、といった測定方式である。ある一つの測定点(ポイント)から次の測定点(ポイント)に移動するのにリトラクションが必要であるから、本発明が有効となる。
220…移動機構、221…Yスライダ、222…Xスライダ、223…Z軸コラム、224…Zスピンドル、
230…プローブ、231…スタイラス、232…測定子、233…支持部、
300…モーションコントローラ、310…PCC取得部、320…カウンタ部、330…経路算出部、340…駆動制御部、
400…手動コントローラ、
500…ホストコンピュータ、520…記憶部、530…形状解析部。
オリジナルデータは例えばCADデータ(例えばNURBSデータ)である。
まず、CADデータ(例えばNURBSデータ)を点群のデータに変換する。
各点のデータは、座標値(x、y、z)と法線方向(P、Q、R)とを組み合わせたデータである。(つまり、(x、y、z、P、Q、R)である。)
各点の座標値を法線方向に所定量だけオフセットする。
(所定量とは、具体的には、測定子半径r―基準押込み量E0である。)このようにして求めた点群データをPCC曲線群に変換する。PCC曲線群をさらに複数の点でセグメント(分割PCC曲線)に分割する。
ここまでの処理はホストコンピュータ500内で演算処理される。
このようにして生成されたPCC曲線はモーションコントローラ300に送られ、PCC取得部310に一旦格納される。
Claims (10)
- 先端に測定子を有するプローブと、前記プローブを移動させる移動機構と、を備え、前記測定子とワークの表面との接触を検知して前記ワークの形状を測定する形状測定装置の制御方法であって、
前記測定子と前記ワークとが接触した状態から前記測定子を前記ワークから離間させるリトラクションを実行させるにあたって、
最終指令位置Pnと最終指令位置Pnに対応する最終位置決め点Pn'とのズレ量Lsを求め、
前記ズレ量Lsと予め指定された指定リトラクション長LRとを対比し、
Ls<β・LRを満たす場合には前記指定リトラクション長LRでリトラクションを実行し、
Ls<β・LRを満たさない場合には、前記指定リトラクション長LRよりも短い値に設定されたエラー回避用リトラクション長Lr'によりリトラクションを実行する
ことを特徴とする形状測定装置の制御方法。
βは、0<β<1である。 - 請求項1に記載の形状測定装置の制御方法において、
エラー回避用リトラクション長Lr'によりリトラクションを実行した後、前記プローブとワークとの接触を検知した場合には、前記最終位置決め点Pn'に戻る
ことを特徴とする形状測定装置の制御方法。 - 請求項2に記載の形状測定装置の制御方法において、
前記最終位置決め点Pn'に戻り、さらに、前記エラー回避用リトラクション長Lr'よりも短くしたリトラクション長Lr'によりリトラクションを実行する
ことを特徴とする形状測定装置の制御方法。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の形状測定装置の制御方法において、
前記エラー回避用リトラクション長Lr'でリトラクションを実行する際のリトラクションの方向は、プローブのセンサ出力に基づいて求められる被測定面の法線方向である
ことを特徴とする形状測定装置の制御方法。 - 請求項1に記載の形状測定装置の制御方法において、
前記エラー回避用リトラクション長Lr'は、0.1mmから0.5mmの範囲から選択される値である
ことを特徴とする形状測定装置の制御方法。 - 先端に測定子を有するプローブと、前記プローブを移動させる移動機構と、を備え、前記測定子とワークの表面との接触を検知して前記ワークの形状を測定する形状測定装置の制御方法であって、
前記測定子と前記ワークとが接触した状態から前記測定子を前記ワークから離間させるリトラクション時に、前記測定子と前記ワークとの接触の有無を監視し、
前記リトラクション時に前記測定子と前記ワークとの接触を検知した場合には、前記測定子が前記ワークに接触しない位置に前記プローブを移動させる
ことを特徴とする形状測定装置の制御方法。 - 請求項6に記載の形状測定装置の制御方法において、
前記リトラクション時に前記測定子と前記ワークとの接触を検知した場合には、この前記測定子と前記ワークとの接触点Pcoの座標をサンプリングする
ことを特徴とする形状測定装置の制御方法。 - 請求項7に記載の形状測定装置の制御方法において、
リトラクション開始点におけるワーク表面上の点Psfと、前記測定子と前記ワークとの接触点Pcoと、の距離Lmを求め、
この距離Lmと前記測定子の径とに基づいて適正リトラクション量Lrを設定し、
リトラクションの開始点からリトラクションの方向に前記適正リトラクション量Lrだけ移動した点をリトラクション停止点Prとし、
前記測定子を前記リトラクション停止点Prに移動させる
ことを特徴とする形状測定装置の制御方法。 - 請求項8に記載の形状測定装置の制御方法において、
前記適正リトラクション量Lrは、前記測定子の直径をdとし、1未満の正の整数である所定の係数k(0<k<1)を用い、
Lr=(Lm−d)×k
とする
ことを特徴とする形状測定装置の制御方法。 - 請求項1から請求項9のいずれかに記載の形状測定装置の制御方法をコンピュータに実行させる形状測定装置の制御プログラム。
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