JP2017078162A - ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物 - Google Patents

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嘉則 長谷川
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Abstract

【課題】低温領域での結晶化に優れるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物、及び、該樹脂組成物を含む成形体に関すること。【解決手段】(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂、(B)一般式(1)で表される化合物、及び(C)結晶核剤を含有してなるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物であって、前記(B)一般式(1)で表される化合物の含有量が(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して6質量部以上40質量部以下、前記(C)結晶核剤の含有量が(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下である、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。(式中、A1及びA2は、それぞれ独立して、炭素数4以上18以下のアルキル基又は炭素数7以上18以下のアラルキル基を示し、nは0又は1であり、Xは、−SO2−、−O−、−CR1R2−、−S−のいずれかを示し、ここでR1及びR2は、それぞれ独立して、H又は炭素数4以下のアルキル基であり、R3及びR4は、それぞれ独立して、−O−、−CO−、−CH2−のいずれかを示す)【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に関する。更に詳しくは、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等に好適に使用し得るポリエチレンテレフタレート樹脂組成物、及び該組成物の成形体に関する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、通常、他のプラスチック樹脂の射出成形に用いられる金型温度領域(80℃程度)では、結晶化速度が不十分であるため、機械的物性、寸法安定性、形状安定性が劣るものであり、実用に耐え得るような成形品を得ることは困難であった。
この課題に対して、120〜150℃の高温金型を用いることでPETの結晶化を促進する手法が検討されていたが、経済性や汎用性という点で課題があった。
そこで、低温金型でのPETの結晶化を実現するために、結晶核剤を添加する方法が従来から検討されている。例えば、特許文献1ではタルクを代表とする無機粒子からなる結晶核剤を0.1〜3重量%配合したり、特許文献2では有機カルボン酸のアルカリ金属塩を配合することで結晶化速度が向上している。
また、特許文献3では、結晶核剤と特定のエーテル化合物を組み合わせることでPETの結晶化速度を向上させ、80℃金型での射出成形品において高温雰囲気下で保持した際の熱収縮率を抑制している。特許文献4では、無機化合物、カルボキシル基の金属塩を有する有機化合物/高分子化合物から選ばれる少なくとも一種の結晶核剤と、特定のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加重合物とを配合することでPETの結晶化速度を向上させている。
一方で、特許文献5では、樹脂の重合度を低下させないで溶融粘度を低下させる溶融粘度低下剤(減粘剤)として、PETとの高い相溶性を示し、かつ混練時に揮発しない特定のビスフェノール化合物を用いている。
特公昭44−7542号公報 特公昭48−4097号公報 特開昭58−93752号公報 特開昭59−206458号公報 特開平3−223382号公報
しかしながら、特許文献1〜4の技術に拠ると、80℃金型における射出成形体の結晶化はまだ不十分であり、低温金型における更なる結晶化促進技術が望まれる。また、特許文献5で開示されたビスフェノール化合物は、低温時での結晶化速度を向上させることは知られていなかった。
上記を鑑みて、本発明は、低温領域での結晶化に優れるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物、及び、該樹脂組成物を含む成形体に関する。
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、PETに対し、結晶核剤と特定の可塑剤とを組み合わせて添加することで、特に低温領域でのPETの結晶化速度を向上させ、80℃金型を用いた短時間の成形サイクルにおいて十分結晶化が進行した射出成形品を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記〔1〕〜〔3〕に関する。
〔1〕 (A)ポリエチレンテレフタレート樹脂、(B)一般式(1)で表される化合物、及び(C)結晶核剤を含有してなるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物であって、
前記(B)一般式(1)で表される化合物の含有量が(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して6質量部以上40質量部以下、前記(C)結晶核剤の含有量が(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下である、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
Figure 2017078162
(式中、A及びAは、それぞれ独立して、炭素数4以上18以下のアルキル基又は炭素数7以上18以下のアラルキル基を示し、nは0又は1であり、Xは、−SO−、−O−、−CR−、−S−のいずれかを示し、ここでR及びRは、それぞれ独立して、H又は炭素数4以下のアルキル基であり、R及びRは、それぞれ独立して、−O−、−CO−、−CH−のいずれかを示す)
〔2〕 (A)ポリエチレンテレフタレート樹脂、(B)前述の一般式(1)で表される化合物、並びに(C)タルク及びマイカから選ばれる1種又は2種、を含有してなるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物であって、
前記(B)一般式(1)で表される化合物の含有量が(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して6質量部以上40質量部以下、前記(C)タルク及びマイカから選ばれる1種又は2種の含有量が(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1質量部以上50質量部以下である、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
〔3〕 前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を含む成形体。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、低温領域での結晶化速度に優れ、かつ、耐ブリード性が良好であり、成形性に優れるという優れた効果を奏するものである。
図1は、実施例においてシート中の結晶部の割合を求める際に用いた検量線を示す。
〔ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物〕
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂に対して、(B)後述の一般式(1)で表される化合物及び(C)結晶核剤を、それぞれ特定量含有することを特徴とする。
一般に、高分子の結晶化は、結晶核の形成と結晶の成長という2段階に亘って進行するものであり、温度が低いと結晶成長が律速になり、温度が高いと核形成が律速になることが知られている。従来、結晶核剤を添加すると結晶核の形成が向上するものの、低温領域での結晶の成長が不十分であるため添加効果が十分には得られなかった。これに対して本発明においては、特定構造の化合物を併用することで、結晶核の形成とともに結晶の成長も促進され、結晶化速度が飛躍的に向上することが判明した。これは、高分子と特定の化合物とがその構造に基づく良好な親和性により相互作用することで、高分子鎖間の相互作用が緩和され、分子鎖同士の間隔が広がって分子の運動性が向上するために、結晶の成長も向上するからであると考えられる。そして、前記した化合物は高温での耐熱性に優れることから、融点が260℃程度のポリエチレンテレフタレートの溶融混練が高温で行なわれても、前記化合物の効果が十分に奏され、また耐ブリード性にも優れたものとなる。また、ポリエチレンテレフタレートはエステル系の樹脂であるため、加水分解やエステル交換による反応が生じやすいが、前記化合物がエステル結合や加水分解を促しにくい官能基を有することから、ポリエチレンテレフタレートの重合度の低下が抑制され、得られる樹脂組成物が安定であると考えられる。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。
[(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂]
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)は、テレフタル酸とエチレングリコールから構成される高分子化合物を含むものであれば特に限定はない。公知の方法に従って合成したものであっても、市販品でもよい。
本発明においては、一般式(1)で表される化合物による反応が生じにくいことから、樹脂組成物中のポリエチレンテレフタレート樹脂の重量平均分子量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形体の機械物性を向上させる観点から、好ましくは10000以上、より好ましくは15000以上であり、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の成形時の流動性を向上させる観点から、好ましくは40000以下、より好ましくは35000以下である。なお、本明細書において、重量平均分子量は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量は、樹脂物性を向上させる観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物中、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。また、結晶化速度の観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
[(B)可塑剤]
本発明では、可塑剤として、下記一般式(1)で表される化合物を用いる。
Figure 2017078162
(式中、A及びAは、それぞれ独立して、炭素数4以上18以下のアルキル基又は炭素数7以上18以下のアラルキル基を示し、nは0又は1であり、Xは、−SO−、−O−、−CR−、−S−のいずれかを示し、ここでR及びRは、それぞれ独立して、H又は炭素数4以下のアルキル基であり、R及びRは、それぞれ独立して、−O−、−CO−、−CH−のいずれかを示す)
一般式(1)におけるA及びAは、それぞれ独立して、炭素数4以上18以下のアルキル基又は炭素数7以上18以下のアラルキル基を示す。
炭素数4以上18以下のアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキル基の炭素数は、4以上18以下であるが、結晶化速度向上の観点から、好ましくは6以上であり、耐ブリード性の観点から、好ましくは15以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。具体的には、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が例示される。
炭素数7以上18以下のアラルキル基は、結晶化速度向上の観点から、炭素数が好ましくは8以上であり、また、耐ブリード性の観点から、好ましくは15以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基等が例示される。
なお、前記アルキル基及びアラルキル基は、置換基を有するものであってもよく、例えば、置換基を含めた官能基全体の総炭素数が前記範囲内となるものが好ましい。置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1〜6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1〜6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1〜6のジアルキルアミノ基が挙げられる。
一般式(1)におけるnは0又は1である。
一般式(1)におけるXは、−SO−、−O−、−CR−、−S−のいずれかを示し、好ましくは、−SO−、−O−である。ここでR及びRは、それぞれ独立して、H又は炭素数4以下のアルキル基である。炭素数4以下のアルキル基としては、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示される。
一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して、−O−、−CO−、−CH−のいずれかを示す。
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
Figure 2017078162
一般式(1)で表される化合物は、前記構造を有するものであれば特に限定はなく、公知の方法に従って調製することができる。例えば、4,4’−スルホニルジフェノール等の芳香族グリコールに対し、アルカリ触媒下で、炭素数4以上18以下のハロゲン化アルキル又は炭素数7以上18以下のハロゲン化アリールアルキルを反応させればよい。また、市販品を用いてもよい。
一般式(1)で表される化合物の分子量は、耐熱性の観点から、好ましくは300以上、より好ましくは350以上、更に好ましくは400以上、更に好ましくは450以上であり、ポリエチレンテレフタレート樹脂のガラス転移点低下効果の観点から、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下、更に好ましくは600以下、更に好ましくは500以下である。なお、本明細書において、可塑剤の分子量は、構成原子の原子量に基づいて算出することができる。
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記一般式(1)で表される化合物以外の他の可塑剤を併用することができる。
前記一般式(1)で表される化合物の含有量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、6質量部以上40質量部以下であるが、結晶化速度の観点から、好ましくは11質量部以上、より好ましくは15質量部以上であり、耐ブリード性の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。
また、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、結晶化速度の観点から、好ましくは6質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは14質量%以上であり、耐ブリード性の観点から、好ましくは28質量%以下、より好ましくは23質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは18質量%以下である。
[(C)結晶核剤]
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、結晶化速度を向上させる観点から、前記成分以外に、結晶核剤を用いる。
結晶核剤としては、無機系結晶核剤、有機系結晶核剤が挙げられる。
無機系結晶核剤としては、タルク、マイカ、アルミニウムシリケート、アルミニウムカルシウムシリケート、金属酸化物などの無機粉末等を用いることができる。
有機系結晶核剤としては、有機カルボン酸アルカリ金属塩、有機系含窒素化合物、フェニルホスホン酸亜鉛塩等を用いることができる。有機カルボン酸アルカリ金属塩としては安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、オクタコサン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、モンタン酸ナトリウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートが挙げられる。有機含窒素化合物としては、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビス12-ヒドロキシステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等のカルボン酸アミドの他、アデカ社製アデカスタブNA−05(商品名)が挙げられる。
これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、結晶化速度の観点から、有機系結晶核剤が好ましく、安息香酸ナトリウム、テレフタル酸モノメチルナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、有機系含窒素化合物、フェニルホスホン酸亜鉛塩がより好ましく、安息香酸ナトリウム、有機系含窒素化合物が更に好ましい。
結晶核剤の含有量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下であるが、結晶化速度の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、成形性の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下、より更に好ましくは1.0質量部以下、更に好ましくは0.8質量部以下である。
また、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物中の結晶核剤の含有量は、結晶化速度の観点から、好ましくは0.04質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.25質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、成形性の観点から、好ましくは8質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは1.2質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。
また、一般式(1)で表される化合物と結晶核剤の含有質量比(一般式(1)で表される化合物/結晶核剤)は、結晶化速度の観点から、3以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上が更に好ましく、20以上が更に好ましく、30以上が更に好ましく、同様の観点から70以下が好ましく、60以下がより好ましく、50が更に好ましい。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、前記以外の他の成分として、加水分解抑制剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を含有することも可能である。
なお、本発明においては、前記した一般式(1)で表される化合物や結晶核剤として記載した成分を、他の成分として用いることを妨げるものではない。即ち、一般式(1)で表される化合物と結晶核剤をそれぞれ特定量で含有するのであれば、結晶核剤として使用可能であるタルクやマイカを、例えば、無機充填剤として更に含有する態様は、本発明に含まれる。よって、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の一態様として、
(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂、(B)一般式(1)で表される化合物、並びに(C)タルク及びマイカから選ばれる1種又は2種、を含有してなるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物であって、前記(B)一般式(1)で表される化合物の含有量が(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して6質量部以上40質量部以下、前記(C)タルク及びマイカから選ばれる1種又は2種の含有量が(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1質量部以上50質量部以下である、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を挙げることができる。この場合、(C)成分は、ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下の結晶核剤を含むものとされる。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、前記成分(A)、(B)、及び(C)を含有するものであれば特に限定なく調製することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、一般式(1)で表される化合物、及び結晶核剤、さらに必要により、他の添加剤を含有する原料を、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練して調製することができる。原料は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後に、溶融混練に供することも可能である。なお、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を調製する際にポリエチレンテレフタレート樹脂の可塑性を促進させるため、超臨界ガスを存在させて溶融混合させてもよい。溶融混練後は、公知の方法に従って、溶融混練物を乾燥させてもよい。
溶融混練温度は、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の成形性及び劣化防止を向上する観点から、好ましくは220℃以上、より好ましくは225℃以上、更に好ましくは230℃以上であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下、更に好ましくは280℃以下である。溶融混練時間は、溶融混練温度、混練機の種類によって一概には決定できないが、15秒間以上900秒間以下が好ましい。
かくして得られた本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、ガラス転移温度(Tg)が、結晶化速度および成形性の観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下である。なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、後述の実施例に記載の方法に従って、求めることができる。
また、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、結晶飽和したポリエチレンテレフタレート樹脂に対する相対結晶化度が、成形性の観点から、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。なお、本明細書において、相対結晶化度が80%以上であれば結晶性が高いことを意味する。相対結晶化度に関しては後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、耐熱性が高く、かつ、約80℃以下の低温領域においても優れた結晶化速度を有することから、射出成形、押出成形、熱成形等の様々な成形加工方法を用いることにより、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等に好適に用いることができる。よって、本発明はまた、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を含む成形体を提供する。
例えば、射出成形により本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を含有する成形体を製造する場合、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを射出成形機に充填して、金型内に注入して成型することにより得られる。
射出成形としては、公知の射出成形機を用いることができる。例えば、シリンダーとその内部に挿通されたスクリューを主な構成要素として有するもの〔J75E−D、J110AD−180H(日本製鋼所社製)等〕が挙げられる。なお、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の原料をシリンダーに供給してそのまま溶融混練してもよいが、結晶化速度の観点から、予め溶融混練したものを射出成形機に充填することが好ましい。
シリンダーの設定温度は、作業性の観点から、220℃以上が好ましく、230℃以上がより好ましい。また、290℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましく、270℃以下が更に好ましく、260℃以下が更に好ましい。溶融混練機を使用する場合には、溶融混練する際の混練機のシリンダーの設定温度を意味する。なお、シリンダーはヒーターを具備しており、それにより温度調整が行なわれる。ヒーターの個数は機種によって異なり一概には決定されないが、前記設定温度に調整されるヒーターは、少なくとも、溶融混練物排出口側(ノズル先端側)に存在するものが好ましい。
金型温度としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の結晶化速度向上及び作業性向上の観点から、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下が更に好ましい。また20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましい。金型内での保持時間は、金型の温度によって一概には決定できないが、成形体の生産性を向上させる観点から、5〜100秒が好ましい。
かくして得られた本発明の射出成形体は、耐熱性、機械的強度に優れることから、各種用途、例えば、日用品、化粧品、家電製品などの包装材として、ブリスターパックやトレイ、お弁当の蓋等の食品容器、工業部品の輸送や保護に用いる工業用トレイ等に好適に用いることができる。よって、本発明はまた、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形してなる射出成形体を提供する。
本発明の射出成形体は、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形したものであればよく、公知の方法に従って調製することができる。詳細は、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の項を参照することができる。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。例中の部は、特記しない限り質量部である。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「常温(室温)」とは25℃を示す。
〔可塑剤の製造例1〕(化合物1)BPS−C8(4,4’−ジオクチルエーテルジフェニルスルホン化合物)
3L容の4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に4,4’−スルホニルジフェノール(和光純薬工業社製)594g(2.37モル)、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド(和光純薬工業社製)153g(0.474モル)、及び1−ブロモオクタン(和光純薬工業社製)961g(4.98モル)を加え、常圧、窒素雰囲気下、80℃まで昇温し、48%水酸化カリウム水溶液831g(7.11モル)をゆっくり滴下した。その後、反応溶液を95℃まで昇温し、5時間加熱撹拌した後、放冷して析出した固体をクロロホルムに溶解させ、水で洗浄した。洗浄水のpHが7〜8になることを確認してから、クロロホルム溶液に吸着材としてキョーワード(登録商標)600S(協和化学工業社製)11g加えて撹拌後、濾過した。濾液にヘキサンを加えて再結晶を行い、白色結晶(化合物1)を得た。
〔可塑剤の製造例2〕(化合物2)BPS−C4(4,4’−ジブチルエーテルジフェニルスルホン化合物)
500mL容の4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に4,4’−スルホニルジフェノール 60g(0.24モル)、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド 15.5g(0.048モル)、及び1−ブロモブタン(和光純薬工業社製)69g(0.50モル)を加え、常圧、窒素雰囲気下、80℃まで昇温し、48%水酸化カリウム水溶液84.4g(0.72モル)をゆっくり滴下した。その後、反応溶液を95℃まで昇温し、5時間加熱撹拌した後、放冷して析出した固体をクロロホルムに溶解させ、水で洗浄した。洗浄水のpHが7〜8になることを確認してから、クロロホルム溶液に吸着材としてキョーワード(登録商標)600S 1.2gを加えて撹拌後、濾過した。濾液にヘキサンを加えて再結晶を行い、白色結晶(化合物2)を得た。
〔可塑剤の製造例3〕(化合物3)BPS−C12(4,4’−ジドデシルエーテルジフェニルスルホン化合物)
500mL容の4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に4,4’−スルホニルジフェノール 60g(0.24モル)、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド 15.5g(0.048モル)、及び1−ブロモドデカン(東京化成工業社製)126g(0.50モル)を加え、常圧、窒素雰囲気下、80℃まで昇温し、48%水酸化カリウム水溶液84.4g(0.72モル)をゆっくり滴下した。その後、反応溶液を95℃まで昇温し、7時間加熱撹拌した後、放冷して析出した固体をクロロホルムに溶解させ、水で洗浄した。洗浄水のpHが7〜8になることを確認してから、クロロホルム溶液に吸着材としてキョーワード(登録商標)600S 1.2g加えて撹拌後、濾過した。濾液にヘキサンを加えて再結晶を行い、白色結晶(化合物3)を得た。
〔可塑剤の製造例4〕(化合物4)BKO−C7(4,4’−ジヘプチルケトンジフェニルエーテル化合物)
100mL容の3ツ口フラスコ(温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)にジフェニルエーテル(和光純薬工業社製)5.1g(30ミリモル)、触媒として水酸化アルミニウム(無水)(和光純薬工業社製)12g(90ミリモル)、ジクロロメタン超脱水(和光純薬工業社製)40mLを加え、常圧、窒素雰囲気下、0℃に冷却して15分撹拌した。塩化オクタノイル(和光純薬工業社製)10.7g(66ミリモル)のジクロロメタン溶液10mLを0℃で滴下し、20分撹拌後、室温に昇温して16時間撹拌した。反応終了後、混合物を氷水120mLに注ぎ、ジクロロメタン120mLを加えて撹拌後、ジクロロメタン100mLで2回抽出した。有機相をまとめて、水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を濾別して溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をクロロホルムに溶解させ、ヘキサンを加えて再結晶を行い、白色結晶(化合物4)を得た。
〔可塑剤の製造例5〕(化合物5)BPS−Bn(4,4’−ジベンジルエーテルジフェニルスルホン化合物)
500mL容の4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に4,4’−スルホニルジフェノール 60g(0.24モル)、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド 15.5g(0.048モル)、及びベンジルブロミド(和光純薬工業社製)86.2g(0.50モル)を加え、常圧、窒素雰囲気下、80℃まで昇温し、48%水酸化カリウム水溶液84.4g(0.72モル)をゆっくり滴下した。その後、反応溶液を100℃まで昇温し、5時間加熱撹拌した後、放冷して析出した固体をクロロホルムに溶解させ、水で洗浄した。洗浄水のpHが7〜8になることを確認してから、クロロホルム溶液に吸着材としてキョーワード(登録商標)600S 1.2g加えて撹拌後、濾過した。濾液にヘキサンを加えて再結晶を行い、白色結晶(化合物5)を得た。
〔可塑剤の製造例6〕(化合物6)BKS−C7(4,4’−ジヘプチルケトンジフェニルスルホン化合物)
500mL容の4ツ口フラスコ(温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)にジフェニルスルフィド(和光純薬工業社製)38.1g(0.20モル)、触媒として水酸化アルミニウム(無水)66.7g(0.5モル)、ジクロロメタン超脱水250mLを加え、常圧、窒素雰囲気下、0℃に冷却して15分撹拌した。塩化オクタノイル 73.2g(0.45モル)のジクロロメタン溶液50mLを0℃で滴下し、20分撹拌後、室温に昇温して16時間撹拌した。反応終了後、混合物を0℃の1N塩酸450mLに注ぎ、ジクロロメタン100mLを加えて抽出した。有機相をまとめて、水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を濾別して溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をクロロホルムに溶解させ、ヘキサンを加えて再沈殿を行い、白色結晶(4,4’−ジヘプチルケトンジフェニルスルフィド化合物)を得た。
続いて、2L容の4ツ口フラスコ(温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に、上記で得られた4,4’−ジヘプチルケトンジフェニルスルフィド(合成品)40.0g(0.091モル)、酢酸(和光純薬工業社製)500mLを加え、80℃に昇温し、撹拌した。30%過酸化水素水(和光純薬工業社製)75g(0.66モル)を滴下し、105℃まで昇温し、1時間還流してスルフィドを酸化した。反応終了後、混合物を室温まで放冷し、生じた白色固体を濾別、ケークをイオン交換水、エタノールで洗浄した。得られた粗生成物を酢酸エチルで再結晶し、白色固体(化合物6)を得た。
〔可塑剤の製造例7〕(化合物7)BPS−2EH(4,4’−〔ジ(2−エチルヘキシル)エーテル〕ジフェニルスルホン化合物)
2L容の4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に、4,4’−スルホニルジフェノール 120g(0.48モル)、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド 31g(0.096モル)、及び1−ブロモ2−エチルヘキサン(東京化成工業社製)193g(1.0モル)を加え、常圧、窒素雰囲気下、80℃まで昇温し、48%水酸化カリウム水溶液80.8g(1.44モル)をゆっくり滴下した。その後、反応溶液を91℃まで昇温し、5時間加熱撹拌した後、放冷して得られた黄色粘性液体をクロロホルムで希釈し、水で洗浄した。洗浄水のpHが7〜8になることを確認してから、クロロホルム溶液に吸着材としてキョーワード(登録商標)600S 2.4g加えて撹拌後、濾過した。濾液を濃縮後、ヘキサンで希釈し、さらに水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を濾別して溶媒を減圧留去し、薄黄色粘性液体(化合物7)を得た。
実施例及び比較例で用いた原料は以下の通りである。なお、可塑剤の分子量は、NMRにより化合物を同定した後、原子組成に基づいて算出したものである。
〔PET樹脂〕
PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂(UNIPET RT‐553C、日本ユニペット社製、非強化)
〔可塑剤〕
BPS−C8:可塑剤の製造例1で調製した化合物、分子量474.7
BPS−C4:可塑剤の製造例2で調製した化合物、分子量362.5
BPS−C12:可塑剤の製造例3で調製した化合物、分子量586.9
BKO−C7:可塑剤の製造例4で調製した化合物、分子量422.6
BPS−Bn:可塑剤の製造例5で調製した化合物、分子量430.1
BKS−C7:可塑剤の製造例6で調製した化合物、分子量470.7
BPS−2EH:可塑剤の製造例7で調製した化合物、分子量474.7
〔結晶核剤〕
安息香酸ナトリウム:和光純薬工業社製
NA−05(有機系含窒素化合物):ADEKA社製
タルク:日本タルク社製、MICROACE P−6
実施例1〜15、比較例1〜5
280℃に加熱したホットプレート上にアルミカップを置き、表1〜4に示された組成となる量の(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂、(B)一般式(1)で示される化合物、(C)結晶核剤を、それぞれアルミカップに入れ、スパーテルを用いて10分間混練し、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物(以下、単にPET樹脂組成物と記載する)を得た。得られたPET樹脂組成物について、後述する方法で、相対結晶化度、半結晶化時間、ガラス転移温度、分子量、相溶性を測定/評価した。結果を表1〜4に示す。
実施例16、比較例6
表5に示された組成となる量の(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂、(B)一般式(1)で示される化合物、(C)結晶核剤を、それぞれ同方向噛み合型二軸押出機(日本製鋼所社製 TEX−28V)を用いて280℃で溶融混練し、ストランドカットを行い、PET樹脂組成物のペレットを得た。なお、得られたペレットは、110℃で7時間除湿乾燥し、水分量を50ppm以下とした。得られたPET樹脂組成物(ペレット)について、後述する方法で、相対結晶化度、半結晶化時間、ガラス転移温度、分子量、成形性、相溶性を測定/評価した。結果を表5に示す。
実施例17〜18
表6に示された原料を用いる以外は、実施例1と同様にして、PET樹脂組成物を得た。得られたPET樹脂組成物について、後述する方法で、相対結晶化度、半結晶化時間、ガラス転移温度、分子量、相溶性を測定/評価した。結果を表6に示す。
[相対結晶化度測定]
得られた樹脂組成物を東洋精機製作所製オートプレス成形機及びハンドプレス成形機を用い、厚さ0.4mmのプレスシートを作製した。作製には、2枚の金属板(フェロ板)にユーピレックス(登録商標)−25S(宇部興産)を敷き、厚さ0.4mmの金属製スペーサー及び所定量(約2g)のサンプルをはさみ、まず280℃、0.5MPaで1分間溶融、さらに20MPaで1分間溶融圧縮した。その後、直ちにハンドプレスを用い、80℃、1MPaで30秒間保持させて作製した。
得られたプレスシート、及び、後述の方法により得られた実施例17、比較例6のPET樹脂組成物の射出成形体を、ミニブレンダー(MB−2、大阪ケミカル社製)を用いて1分間粉砕した。その後、広角X線装置MiniFlexII(Rigaku社製)を用いて、5〜40°(Scan rate:20°/min)の範囲で測定し、下記式によりサンプル中の結晶部の割合を算出した。
結晶部の割合={(22.5°の値)−(18.7°の値)}/(22.5°の値)×100
別途、検量線(図1)を引き、先ほど求めた結晶部の割合より相対結晶化度を算出した(100%で結晶シートと同等、0%で非晶シート)。
[半結晶化時間測定]
示差走査熱量分析装置「DSC8500」(PerkinElmer社製)を用いて、下記測定条件にて定義されるPET樹脂組成物の半結晶化時間を求めた。
測定条件:PerkinElmer社製スタンダードアルミパンに試料約8mgを測り取り、作製したアルミパンをDSC8500にセットし、25℃から280℃まで15℃/minで昇温した後に、280℃で2分間保持する。その後280℃から200℃まで750℃/minで冷却し、得られた結晶化による発熱ピークより、50%結晶化が進行する面積を算出し、その時間を半結晶化時間と定義して算出した。
なお、本発明においては、測定の都合上、低温領域に達する前に結晶化が完了してしまい、評価ができなかったため、参考値として200℃における半結晶化時間を求め、結晶化評価の指標の一つとして測定した。
[ガラス転移温度測定]
示差走査熱量分析装置「DSC8500」(PerkinElmer社製)を用いて、下記測定条件にて測定される2ndRUNの変曲点をガラス転移温度(Tg)とした。
測定条件:PerkinElmer社製スタンダードアルミパンに試料約8mgを測り取り、作製したアルミパンをDSC8500にセットし、25℃から280℃まで15℃/minで昇温した後に、280℃で2分間保持する(1stRUN)。その後280℃から25℃まで750℃/minで冷却した後に、25℃から280℃まで15℃/minの速度で昇温する(2ndRUN)。
なお、本発明においては、Tgの低下はPETの分子運動性向上による結晶化(結晶成長速度向上)評価の指標の一つとして測定した。
[耐ブリード性評価]
上記条件で測定した樹脂組成物のガラス転移温度が可塑剤の添加前に比べて低下している場合、PET樹脂に対して可塑剤が相溶していると判断し、ガラス転移温度が低下しなくなった可塑剤の質量部数をPET樹脂に対する可塑剤の相溶限界と定めた。下記の判断基準でPET樹脂に対する可塑剤の相溶性の評価を行った。ABCの順で相溶性が良くて耐ブリード性に優れており、相溶性が悪化すると樹脂組成物の物性低下の原因となり得る。
A:ガラス転移温度が低下し、可塑剤が完全に相溶してブリードアウトしていない。
B:ガラス転移温度が低下しなくなってから、10質量部以内の可塑剤を添加。一部非相溶のブリードアウトした可塑剤がある。
C:ガラス転移温度が低下しなくなってから、10質量部より多くの可塑剤を添加。非相溶のブリードアウトした可塑剤が多い。
[分子量測定]
PET樹脂組成物0.6mgをHFIP(1,1,1,3,3,3−Hexafluoro−2−propanol 和光純薬製)2gに1晩溶解させ、下記条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。
測定装置:HLC−8320GPC(TOSOH製)
溶離液:HFIP/0.5mMトリフルオロ酢酸ナトリウム
流量:0.2mL/min
測定温度:40℃
分析カラム:TSK−Gel Super AWM−H(TOSOH製)
検量線:ShodexSTANDARD M−75
ポリメチルメタクリレート(PMMA)
[射出成形の成形性評価]
PET樹脂組成物(ペレット)を、射出成形機(日本製鋼所社製 J110AD−180H、シリンダー温度設定6箇所)を用いて射出成形した。シリンダー温度はノズル先端を245〜270℃、先端側から2ユニット目から5ユニット目までを260〜275℃、残りの1ユニットを220〜230℃、ホッパー下を45℃に設定した。金型温度は80℃に設定し、平板試験片(127mm×12.7mm×1.6mm)を成形し、PET樹脂組成物の成形体を得た。その際の射出成形体の様子を観察し、下記の判断基準で成形性の評価を行った。ABCの順で成形性が優れていることを示す。
A:金型から離形時に成形体が変形することなく、金型の可動側から取り出せる。
B:金型から離形時に成形体がわずかに変形、あるいは成形体が金型の固定側に残る。
C:金型から離形時に成形体が大きく変形し、成形体が金型の固定側に残る。
Figure 2017078162
Figure 2017078162
Figure 2017078162
Figure 2017078162
Figure 2017078162
Figure 2017078162
表1〜6における相対結晶化度測定の評価より、PETに対し、結晶核剤(安息香酸Na、NA−05、タルク)と特定の可塑剤(BPS−C8、BPS−C4、BPS−C12、BKO−C7、BPS−Bn、BKS−C7、BPS−2EH)を併用することで、低温領域(80℃)におけるPETの溶融結晶化速度が向上した。また、結晶核剤と可塑剤の組み合わせによる結晶化速度向上効果は、特に可塑剤を11質量部以上添加すると顕著に表れ、例えば、表5から明らかなように、20質量部添加した際に相対結晶化度が100%のPETを80℃の低温金型で射出成形することができた。この効果は結晶核剤を添加することで、結晶核の生成速度が速まったのに加えて、特定の可塑剤を添加することによる樹脂組成物のTgが低下したことに起因すると考えられる。Tgが低下したのに伴い、結晶成長律速の低温領域における結晶化速度が向上した。
以上より、可塑剤が樹脂組成物のTgを低下させるためには、樹脂に対して相溶性が良く、分子量がおよそ1000以下の比較的低分子量のものが好ましいことが示唆される。しかし、分子量が低すぎても好ましくなく、PETの混練温度(280℃)で揮発しない、高耐熱性も必須であることも分かる。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、低温の金型を用いた射出成形においても良好な成形体を提供することが可能なことから、日用雑貨品、家電部品、家電部品用梱包資材、自動車部品等の様々な工業用途に好適に使用することができる。

Claims (8)

  1. (A)ポリエチレンテレフタレート樹脂、(B)一般式(1)で表される化合物、及び(C)結晶核剤を含有してなるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物であって、
    前記(B)一般式(1)で表される化合物の含有量が(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して6質量部以上40質量部以下、前記(C)結晶核剤の含有量が(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下である、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
    Figure 2017078162
    (式中、A及びAは、それぞれ独立して、炭素数4以上18以下のアルキル基又は炭素数7以上18以下のアラルキル基を示し、nは0又は1であり、Xは、−SO−、−O−、−CR−、−S−のいずれかを示し、ここでR及びRは、それぞれ独立して、H又は炭素数4以下のアルキル基であり、R及びRは、それぞれ独立して、−O−、−CO−、−CH−のいずれかを示す)
  2. (B)一般式(1)で表される化合物の含有量が、(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、11質量部以上30質量部以下である、請求項1記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
  3. ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)が20℃以上70℃以下である、請求項1又は2に記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
  4. 結晶飽和したポリエチレンテレフタレート樹脂に対する相対結晶化度が80%以上である、請求項1〜3いずれかに記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
  5. (B)一般式(1)で表される化合物の分子量が300以上1000以下である、請求項1〜4いずれかに記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
  6. 射出成形用である、請求項1〜5いずれかに記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
  7. (A)ポリエチレンテレフタレート樹脂、(B)一般式(1)で表される化合物、並びに(C)タルク及びマイカから選ばれる1種又は2種、を含有してなるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物であって、
    前記(B)一般式(1)で表される化合物の含有量が(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して6質量部以上40質量部以下、前記(C)タルク及びマイカから選ばれる1種又は2種の含有量が(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1質量部以上50質量部以下である、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
    Figure 2017078162
    (式中、A及びAは、それぞれ独立して、炭素数4以上18以下のアルキル基又は炭素数7以上18以下のアラルキル基を示し、nは0又は1であり、Xは、−SO−、−O−、−CR−、−S−のいずれかを示し、ここでR及びRは、それぞれ独立して、H又は炭素数4以下のアルキル基であり、R及びRは、それぞれ独立して、−O−、−CO−、−CH−のいずれかを示す)
  8. 請求項1〜7いずれかに記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を含む成形体。
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