JP5084005B2 - 脂肪族ポリエステル樹脂組成物及び脂肪族ポリエステル樹脂成形体並びに脂肪族ポリエステル樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

脂肪族ポリエステル樹脂組成物及び脂肪族ポリエステル樹脂成形体並びに脂肪族ポリエステル樹脂成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は脂肪族ポリエステル樹脂組成物及び脂肪族ポリエステル樹脂成形体並びに脂肪族ポリエステル樹脂成形体の製造方法に関する。近年、自然環境保護の見地から、自然環境中で分解する生分解性樹脂及びその成形体が求められ、なかでもポリ乳酸樹脂に代表される脂肪族ポリエステル樹脂及びその成形体が注目されている。しかし、脂肪族ポリエステル樹脂の多くは、本質的には結晶性樹脂であるが、結晶化が遅く、実際の成形では非晶性樹脂に近い挙動を示し、成形性や得られる成形体の物性に多くの難点を有する。かかる難点を改善するため、脂肪族ポリエステル樹脂は一般に、これに結晶核剤、更に要すれば合目的的に他の添加剤を加えた脂肪族ポリエステル樹脂組成物として調製され、成形に供されている。本発明は、かかる脂肪族ポリエステル樹脂組成物及び脂肪族ポリエステル樹脂成形体並びに脂肪族ポリエステル樹脂成形体の製造方法の改良に関する。
従来、前記のような脂肪族ポリエステル樹脂組成物としては、脂肪族ポリエステル樹脂に、結晶核剤として、1)脂肪族カルボン酸アミド類、脂肪族ビスカルボン酸アミド類、N−置換脂肪族カルボン酸ビスアミド類及びN−置換尿素類から選ばれるところの融点が40〜300℃の化合物(例えば特許文献1参照)、2)トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N’−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N’−ジシクロヘキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン等の芳香族アミド化合物(例えば特許文献2参照)、3)融点又は軟化点が80〜300℃であり且つ所定の溶融エントロピーを有する有機化合物(例えば特許文献3参照)、4)リン酸エステル金属塩及び塩基性無機アルミニウム化合物(例えば特許文献4参照)、5)p−トルエンスルホン酸及びその金属塩(例えば特許文献5及び6参照)、6)スルホイソフタル酸ナトリウム(例えば特許文献7参照)、7)タルク等の無機粒子(例えば特許文献8参照)等を含有させたものが知られている。
ところが、かかる従来の脂肪族ポリエステル樹脂組成物には、依然として結晶化が遅く、そのため比較的高温で長時間の成形を必要とし、それでもなお離型時に成形体が変形を起こし易く、また得られる成形体が物性に劣るという問題がある。
特開平9−278991号公報 特開平10−87975号公報 特開平11−5849号公報 特開2003−192883号公報 特開平8−120165号公報 特開平11−240962号公報 特開2003−240962号公報 特開平8−3432号公報
本発明が解決しようとする課題は、実用上汎用樹脂並みの成形条件で、離型時に変形を起こすことなく優れた物性の成形体を得ることができる脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びこれを用いた脂肪族ポリエステル樹脂成形体並びにその製造方法を提供する処にある。
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、脂肪族ポリエステル樹脂として特定のものを用い、また結晶核剤として特定の芳香族スルホン酸塩を特定の割合で含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物を用いることが正しく好適であることを見出した。
すなわち本発明は、脂肪族ポリエステル樹脂と結晶核剤とを含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物において、下記の脂肪族ポリエステル樹脂100重量部当たり、結晶核剤として少なくとも一つ以上の下記の化1で示される芳香族スルホン酸塩を0.01〜5重量部の割合で含有して成ることを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物に係る。
脂肪族ポリエステル樹脂:ポリ乳酸樹脂、ポリ乳酸系樹脂及びこれらの混合物から選ばれるもの
Figure 0005084005
化1において、
X:ベンゼンから3個の水素原子を除いた残基
,R:炭素数1〜6の炭化水素基
M:カリウム原子、ルビジウム原子、バリウム原子、ストロンチウム原子及びカルシウム原子から選ばれるもの
n:1又は2であって、Mがアルカリ金属原子の場合はn=1、Mがアルカリ土類金属原子の場合はn=2
また本発明は、前記の本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂組成物を溶融成形して得られる脂肪族ポリエステル樹脂成形体に係る。
更に本発明は、前記の本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂組成物を溶融し、示差走査熱量測定法による結晶化開始温度以下且つガラス転移温度以上の温度範囲に設定された金型に充填して、結晶化させながら成形する脂肪族ポリエステル樹脂成形体の製造方法に係る。
先ず、本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂組成物(以下単に本発明の組成物という)について説明する。本発明の組成物は、脂肪族ポリエステル樹脂と結晶核剤とを含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物であって、結晶核剤として少なくとも一つ以上の化1で示される芳香族スルホン酸を含有して成るものである。
化1で示される芳香族スルホン酸金属塩において、化1中のXはベンゼンから3個の水素原子を除いた残基である。また化1中のR,Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アリル基、シクロヘキセニル基等の炭素数1〜6の炭化水素基であるが、なかでも炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基が好ましい。
化1で示される芳香族スルホン酸金属塩において、化1中のMは、1)アルカリ金属原子としてカリウム原子、ルビジウム原子、2)アルカリ土類金属原子としてカルシウム原子、ストロンチウム原子、バリウム原子であるが、なかでもカリウム原子とバリウム原子が好ましい。
化1で示される芳香族スルホン酸金属塩において、スルホフタル酸ジアルキルのアルカリ金属塩の具体例としては、4−スルホフタル酸ジメチル=カリウム、4−スルホフタル酸ジエチル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−n−プロピル=カリウム、4−スルホフタル酸ジイソプロピル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−n−ブチル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−イソブチル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−t−ブチル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−2−メチルプロピル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−n−ペンチル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−3−メチルブチル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−2−メチルブチル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−2,2−ジメチルプロピル=カリウム、4−スルホフタル酸n−ヘキシル=プロピル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−2−メチルペンチル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−3−メチルペンチル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−4−メチルペンチル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−3,3−ジメチルブチル=カリウム、4−スルホフタル酸ジ−2,3−ジメチルブチル=カリウム、4−スルホフタル酸ジシクロヘキシル=カリウム等のスルホフタル酸ジアルキルのカリウム塩等が挙げられる。
化1で示される芳香族スルホン酸金属塩において、スルホイソフタル酸ジアルキルのアルカリ金属塩の具体例としては、5−スルホイソフタル酸ジメチル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジエチル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−n−プロピル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジイソプロピル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−n−ブチル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−イソブチル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−t−ブチル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−2−メチルプロピル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−n−ペンチル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−3−メチルブチル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−2−メチルブチル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−2,2−ジメチルプロピル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−2−メチルペンチル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−3−メチルペンチル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−4−メチルペンチル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−3,3−ジメチルブチル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジ−2,3−ジメチルブチル=カリウム、5−スルホイソフタル酸ジシクロヘキシル=カリウム等のスルホイソフタル酸ジアルキルのカリウム塩等が挙げられる。
化1で示される芳香族スルホン酸金属塩において、スルホテレフタル酸ジアルキルのアルカリ金属塩の具体例としては、スルホテレフタル酸ジメチル=カリウム、スルホテレフタル酸ジエチル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−n−プロピル=カリウム、スルホテレフタル酸ジイソプロピル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−n−ブチル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−イソブチル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−t−ブチル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−2−メチルプロピル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−n−ペンチル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−3−メチルブチル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−2−メチルブチル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−2,2−ジメチルプロピル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−n−ヘキシルプロピル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−2−メチルペンチル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−3−メチルペンチル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−4−メチルペンチル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−3,3−ジメチルブチル=カリウム、スルホテレフタル酸ジ−2,3−ジメチルブチル=カリウム、スルホテレフタル酸ジシクロヘキシル=カリウム等のスルホテレフタル酸ジアルキルのカリウム塩等が挙げられる。
化1で示される芳香族スルホン酸金属塩において、スルホフタル酸ジアルキルのアルカリ土類金属塩の具体例としては、ビス(4−スルホフタル酸ジメチル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジエチル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−n−プロピル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジイソプロピル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−n−ブチル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−イソブチル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−t−ブチル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−2−メチルプロピル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−n−ペンチル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−3−メチルブチル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−2−メチルブチル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−2,2−ジメチルプロピル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−2−メチルペンチル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−3−メチルペンチル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−4−メチルペンチル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−3,3−ジメチルブチル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−2,3−ジメチルブチル)=カルシウム、ビス(4−スルホフタル酸ジシクロヘキシル)=カルシウム等のスルホフタル酸ジアルキルのカルシウム塩、ビス(4−スルホフタル酸ジメチル)=バリウム、4−スルホフタル酸ジエチル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−n−プロピル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジイソプロピル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−n−ブチル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−イソブチル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−t−ブチル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−2−メチルプロピル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−n−ペンチル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−3−メチルブチル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−2−メチルブチル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−2,2−ジメチルプロピル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−2−メチルペンチル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−3−メチルペンチル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−4−メチルペンチル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−3,3−ジメチルブチル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジ−2,3−ジメチルブチル)=バリウム、ビス(4−スルホフタル酸ジシクロヘキシル)=バリウム等のスルホフタル酸ジアルキルのバリウム塩等のスルホフタル酸ジアルキルのバリウム塩等が挙げられる。
化1で示される芳香族スルホン酸金属塩において、スルホイソフタル酸ジアルキルのアルカリ土類金属塩の具体例としては、ビス(5−スルホイソフタル酸ジメチル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジエチル=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−n−プロピル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジイソプロピル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−n−ブチル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−イソブチル=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−t−ブチル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−2−メチルプロピル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−n−ペンチル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−3−メチルブチル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−2−メチルブチル=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−2,2−ジメチルプロピル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−2−メチルペンチル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−3−メチルペンチル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−4−メチルペンチル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−3,3−ジメチルブチル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−2,3−ジメチルブチル)=カルシウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジシクロヘキシル)=カルシウム等のスルホイソフタル酸ジアルキルのカルシウム塩、ビス(5−スルホイソフタル酸ジメチル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジエチル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−n−プロピル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジイソプロピル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−n−ブチル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−イソブチル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−t−ブチル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−2−メチルプロピル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−n−ペンチル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−3−メチルブチル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−2−メチルブチル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−2,2−ジメチルプロピル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−2−メチルペンチル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−3−メチルペンチル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−4−メチルペンチル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−3,3−ジメチルブチル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジ−2,3−ジメチルブチル)=バリウム、ビス(5−スルホイソフタル酸ジシクロヘキシル)=バリウム等のスルホイソフタル酸ジアルキルのバリウム塩等が挙げられる。
化1で示される芳香族スルホン酸金属塩において、スルホテレフタル酸ジアルキルのアルカリ土類金属塩の具体例としては、ビス(スルホテレフタル酸ジメチル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジエチル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−n−プロピル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジイソプロピル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−n−ブチル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−イソブチル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−t−ブチル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−2−メチルプロピル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−n−ペンチル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−3−メチルブチル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−2−メチルブチル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−2,2−ジメチルプロピル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−2−メチルペンチル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−3−メチルペンチル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−4−メチルペンチル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−3,3−ジメチルブチル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−2,3−ジメチルブチル)=カルシウム、ビス(スルホテレフタル酸ジシクロヘキシル)=カルシウム等のスルホテレフタル酸ジアルキルのカルシウム塩、ビス(スルホテレフタル酸ジメチル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジエチル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−n−プロピル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジイソプロピル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−n−ブチル=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−イソブチル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−t−ブチル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−2−メチルプロピル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−n−ペンチル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−3−メチルブチル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−2−メチルブチル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−2,2−ジメチルプロピル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−2−メチルペンチル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−3−メチルペンチル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−4−メチルペンチル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−3,3−ジメチルブチル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジ−2,3−ジメチルブチル)=バリウム、ビス(スルホテレフタル酸ジシクロヘキシル)=バリウム等のスルホテレフタル酸ジアルキルのバリウム塩等が挙げられる。
以上説明した化1で示される芳香族スルホン酸金属塩それ自体は、公知の方法で合成できる。これには例えば、特公昭34−10497号公報記載の方法が挙げられる。
本発明の組成物に用いる脂肪族ポリエステル樹脂としては、その結晶化を著しく向上する上で、1)乳酸及び/又は乳酸のラクチドから形成された構成単位を全構成単位中に90モル%以上、好ましくは95モル%以上有するポリ乳酸樹脂、2)乳酸及び/又は乳酸のラクチドから形成された構成単位を10モル%以上90モル%未満有するポリ乳酸系樹脂、及び3)これらの混合物が挙げられるが、なかでもポリ乳酸樹脂が好ましい。
かかるポリ乳酸樹脂は、L−乳酸から形成された構成単位/D−乳酸から形成された構成単位=100/0〜0/100(モル比)の割合で有するものであるが、高い融点のポリ乳酸樹脂を得る点からは、L−乳酸から形成された構成単位又はD−乳酸から形成された構成単位のいずれか一方の構成単位を全構成単位中に96モル%以上有するものが好ましく、98モル%以上有するものがより好ましい。
ポリ乳酸樹脂それ自体は、公知の方法で合成できる。これには例えば、特開平7−33861号公報、特開昭59−96123号公報、高分子討論会予稿集第44巻の3198−3199頁に記載されているような、1)乳酸を直接脱水縮合反応する方法、2)乳酸のラクチドを開環重合する方法等が挙げられる。前記1)の方法では、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はこれらの混合物のいずれの乳酸を用いてもよい。前記2)の方法では、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド又はこれら混合物のいずれのラクチドを用いてもよい。原料のラクチドの合成、精製及び重合方法にも、公知の方法を適用できる。これには例えば、米国特許4057537号明細書、公開欧州特許出願第261572号明細書、Polymer Bulletin,14,491−495(1985)、Macromol.Chem.,187,1611−1628(1986)等に記載されている方法が挙げられる。
また前記のポリ乳酸系樹脂としては、乳酸及び/又は乳酸のラクチドから形成された構成単位を全構成単位中に25モル%以上75モル%未満有するものが好ましく、なかでも乳酸及び/又は乳酸のラクチドから形成された構成単位/それ以外の構成単位=10/90〜90/10(重量比)の割合で有し、且つガラス転移温度が60℃以下のものがより好ましい。かかるポリ乳酸系樹脂は、特開2001−335623号公報に耐衝撃改良剤として記載されており、またPlamate PD150(大日本インキ化学工業社製の商品名)、Plamate PD350(大日本インキ化学工業社製の商品名)として市販されている。
本発明の組成物において、脂肪族ポリエステル樹脂として以上説明したポリ乳酸樹脂とポリ乳酸系樹脂とを混合して用いる場合、混合物中におけるポリ乳酸系樹脂の割合は、5〜50重量%とするのが好ましく、10〜40重量%とするのがより好ましい。ポリ乳酸系樹脂の割合が5重量%未満になると、耐衝撃性改良効果が低くなる傾向を示し、また50重量%を超えると耐熱性向上効果が低くなる傾向を示す。
本発明の組成物に用いる以上説明したような脂肪族ポリエステル樹脂は、その重量平均分子量(ゲルパーミエーショクロマトグラフ分析によるポリスチレン換算値、以下同じ)を、100000以上としたものが好ましく、120000以上としたものがより好ましく、150000〜400000としたものが特に好ましい。脂肪族ポリエステル樹脂の重量平均分子量が100000未満では得られる成形体の強度や弾性率等の機械特性が不充分となり易く、重量平均分子量が高くなるほどこのような機械的特性が向上する傾向を示す。また脂肪族ポリエステル樹脂の重量平均分子量が400000以下であると、成形に都合の良い流動性を示す。
本発明の組成物に用いる脂肪族ポリエステル樹脂は、これに含まれる残存モノマーを5000ppm以下としたものが好ましく、2000ppm以下としたものがより好ましく、1000ppm以下としたものが更に好ましく、500ppm以下としたものが特に好ましい。脂肪族ポリエステル樹脂中の残存モノマー量が5000ppmを超えると、残存モノマーが加水分解の触媒として機能するため、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、イソシアネート系化合物等の既知の加水分解抑制剤を添加してもその効果が充分に発揮されず、耐湿熱老化性及び耐熱性が不充分となり易い。また脂肪族ポリエステル樹脂中の残存モノマーが低くなるほど耐湿熱老化性及び耐熱性が向上する傾向を示す。
本発明の組成物において、結晶核剤としての化1で示される芳香族スルホン酸塩の含有割合は、脂肪族ポリエステル樹脂100重量部当たり、0.01〜5重量部とするが、0.1〜3重量部とするのが好ましい。いずれも、脂肪族ポリエステル樹脂に結晶核剤として化1で示される芳香族スルホン酸塩を添加する効果を充分に発揮させるためである。
脂肪族ポリエステル樹脂と結晶核剤とを含有し、且つ結晶核剤として少なくとも化1で示される芳香族スルホン酸塩を含有して成る本発明の組成物には、以上説明したように各種が含まれるが、なかでも本発明の組成物としては、示差走査熱量測定法による結晶化ピーク温度が100〜150であり、且つ結晶化熱量が20J/g以上であるものが好ましい。かかる本発明の組成物を用いると、成形を円滑に行なうことができ、また優れた物性の成形体を得ることができる。
本発明の組成物は、結晶核剤として、化1で示される芳香族スルホン酸塩と共に、前記した公知の有機系結晶核剤及び/又は無機系結晶核剤を含有することもできる。かかる有機系結晶核剤のなかでも脂肪族アミドや芳香族アミドが好ましく、その含有量は化1で示される芳香族スルホン酸塩の含有量と同等か又はそれ以下とするのが好ましい。また無機系結晶核剤のなかでもタルクが好ましく、その含有割合は、脂肪族ポリエステル樹脂100重量部当たり、1〜20重量部とするのが好ましい。
本発明の組成物は、合目的的に他の添加剤を含有することもできる。かかる他の添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、各種フィラー、帯電防止剤、離型剤、香料、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤等が挙げられる。
以上説明した本発明の組成物は、公知の方法で調製できる。これに例えば、1)粉末又はペレット状の脂肪族ポリエステル樹脂と結晶核剤と要すれば他の添加剤とを同時にドライブレンドした後、混練する方法、2)粉末又はペレット状の脂肪族ポリエステル樹脂と結晶核剤とをプリブレンドし、更に要すれば他の添加剤をドライブレンドした後、混練する方法等が挙げられる。かかるドライブレンドの装置としては、ミルロール、バンバリーミキサー、スーパーミキサー等が挙げられる。また混練機としては、単軸又は二軸押出機等が挙げられる。混練機の混練温度は、通常120〜220℃程度とする。脂肪族ポリエステルの重合段階で、結晶核剤や要すれば他の添加剤を加えることもでき、また結晶核剤や要すれば他の添加剤を高濃度で含有するマスターバッチを作製しておき、これを脂肪族ポリエステル樹脂に加えることもできる。
次に、本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂成形体(以下単に本発明の成形体という)について説明する。本発明の成形体は、以上説明した本発明の組成物を溶融成形して得られるものである。なかでも示差走査熱量測定法による絶対結晶化度が30%以上のものが好ましく、40%以上のものがより好ましく、50%以上のものが特に好ましい。また示差走査熱量測定法による相対結晶化度が80%以上のものが好ましく、90%以上のものがより好ましい。絶対結晶化度及び相対結晶化度が上記下限未満では、水の進入や拡散による加水分解を充分に防止し難く、湿熱条件下や熱処理時における劣化を充分に抑制し難い傾向を示す。
最後に、本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂成形体の製造方法(以下、単に本発明の製造方法という)について説明する。本発明の製造方法は、以上説明した本発明の組成物を溶融し、示差走査熱量測定法による結晶化開始温度以下且つガラス転移温度以上の温度範囲に設定された金型に充填して、結晶化させながら成形する方法である。なかでも、本発明の組成物を溶融し、示差走査熱量測定法による結晶化開始温度以下であって結晶化終了温度以上且つガラス転移温度以上の温度範囲に設定された金型に充填し、結晶化させながら成形する方法が好ましい。通常、本発明の組成物は、170〜220℃で溶融させる。また溶融した本発明の組成物を成形機の金型に圧入しつつ充填し、結晶化させて離型するまでの時間すなわち成形時間は、実用上120秒以内が好ましく、60秒以内がより好ましい。成形機の金型の温度を前記の温度範囲とするために必要な本発明の組成物の結晶化開始温度、ガラス転移温度、結晶化終了温度は、予め示差走査熱量測定法により求めることができる。成形機の金型を前記の温度範囲に設定しておけば、溶融した本発明の組成物を容易に結晶化させることができ、また寸法精度のよい成形体を得ることができる。
本発明の製造方法で得られた成形体はこれを更に熱処理することもできる。その熱処理温度は、前記の結晶化開始温度以下且つガラス転移温度以上の温度範囲とするのが好ましく、更に結晶化終了温度以上の温度範囲とするのがより好ましい。また熱処理時間は5〜2000秒とするのが好ましい。かかる熱処理により、成形条件によって結晶化度に及ぶ影響を緩和でき、成形体の品質を安定化できる。熱処理時の加熱手段としては、電気式ヒーター、高周波加熱等いずれの方法を用いてもよい。
本発明の製造方法には、射出成形に限らず、一般のプラスチックと同様の押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形等の成形を適用できる。
本発明の製造方法により得られる成形体は、バンパー、ラジエターグリル、サイドモール、ガーニッシュ、ホイールカバー、エアロパーツ、インストルメントパネル、ドアトリム、シートファブリック、ドアハンドル、フロアマット等の自動車用部品、家電製品のハウジング、製品包装用フィルム、防水シート、各種容器、ボトル等として有用である。
本発明の組成物を用いると、実用上汎用樹脂並みの成形条件で、例えば成形サイクルで、離型時に変形を起こすことなく、優れた物性の成形体を得ることができる。
本発明の組成物の実施形態としては、下記の1)〜7)が挙げられる。
1)ポリ乳酸樹脂100重量部当たり、結晶核剤として5−スルホイソフタル酸ジメチル=バリウムを0.1重量部の割合で含有して成る、示差走査熱量測定法による結晶化ピーク温度が130.0℃且つ結晶化熱量が43.8J/gの脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
2)ポリ乳酸樹脂100重量部当たり、結晶核剤として5−スルホイソフタル酸ジメチル=バリウムを1重量部の割合で含有して成る、示差走査熱量測定法による結晶化ピーク温度が132.2℃且つ結晶化熱量が42.6J/gの脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
3)ポリ乳酸樹脂100重量部当たり、結晶核剤として5−スルホイソフタル酸ジメチル=バリウムを2重量部の割合で含有して成る、示差走査熱量測定法による結晶化ピーク温度が133.9℃且つ結晶化熱量が43.1J/gの脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
4)ポリ乳酸樹脂100重量部当たり、結晶核剤として5−スルホイソフタル酸ジメチル=バリウムを1重量部及びエチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドを1重量部の割合で含有して成る、示差走査熱量測定法による結晶化ピーク温度が129.6℃且つ結晶化熱量が42.8J/gの脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
5)ポリ乳酸樹脂100重量部当たり、結晶核剤として5−スルホイソフタル酸ジメチル=バリウムを1重量部、酸化防止剤を0.1重量部、加水分解抑制剤を1重量部の割合で含有して成る、示差走査熱量測定法による結晶化ピーク温度が127.0℃且つ結晶化熱量が35.8J/gの脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
6)ポリ乳酸樹脂/ポリ乳酸系樹脂=85/15(重量比)の混合物100重量部当たり、結晶核剤として5−スルホイソフタル酸ジメチル=バリウムを1重量部の割合で含有して成る、示差走査熱量測定法による結晶化ピーク温度が127.1℃且つ結晶化熱量が36.7J/gの脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
7)ポリ乳酸樹脂/ポリ乳酸系樹脂=85/15(重量比)の混合物100重量部当たり、結晶核剤として5−スルホイソフタル酸ジメチル=バリウムを1重量部及びタルクを11重量部、酸化防止剤を0.1重量部、加水分解抑制剤を1重量部の割合で含有して成る、示差走査熱量測定法による結晶化ピーク温度が122.1℃且つ結晶化熱量が31.6J/gの脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
本発明の成形体の実施形態としては下記の8)が挙げられる。
8)前記1)〜7)のうちでいずれかの脂肪族ポリエステル樹脂組成物を溶融成形して得られる、示差走査熱量測定法による絶対結晶化度が40%以上且つ相対結晶化度が80%以上の脂肪族ポリエステル樹脂成形体。
本発明の製造方法の実施形態としては下記の9)が挙げられる。
9)前記1)〜7)のうちでいずれかの脂肪族ポリエステル樹脂組成物を溶融し、示差走査熱量測定法による結晶化開始温度以下且つガラス転移温度以上の温度範囲に設定された金型に充填して、結晶化させながら成形する脂肪族ポリエステル樹脂成形体の製造方法。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は重量部を、また%は重量%を意味する。
試験区分1(脂肪族ポリエステル樹脂組成物の調製)
・実施例1(脂肪族ポリエステル樹脂組成物P−1の調製)
ポリ乳酸樹脂(トヨタ自動車製の商品名#5400:重量平均分子量160000)100部及びスルホイソフタル酸ジメチル=バリウム0.05部を、ブレンダーを用いてドライブレンドして混合材料を得た。この混合材料をホッパーに投入し、210℃に設定された二軸混練押出機にて窒素雰囲気下、平均滞留時間4分間として溶融混合し、口金よりストランド状に押出し、水で急冷してストランドを得た。このストランドをストランドカッターで切断して、ペレット状の脂肪族ポリエステル樹脂組成物(P−1)を調製した。
・実施例2〜19及び比較例1〜5(脂肪族ポリエステル樹脂組成物P−2〜P−19及びR−1〜R−5の調製)
脂肪族ポリエステル樹脂組成物P−1の調製と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物P−2〜P−19及びR−1〜R−5を調製した。内容を表1にまとめて示した。



































Figure 0005084005
表1において、
L−1:ポリ乳酸樹脂(トヨタ自動車社製の商品名#5400、重量平均分子量160000、残存モノマー量3300ppm)
L−2:ポリ乳酸樹脂(トヨタ自動車社製の商品名#5000、重量平均分子量200000、残存モノマー量2300ppm)
L−3:ポリ乳酸系樹脂(大日本インキ化学工業社製の商品名PlamatePD150、重量平均分子量165000)
C−1:化1で示される結晶核剤(竹本油脂社製の商品名TLA−114:5−スルホイソフタル酸ジメチル=バリウム)
C−2:化1で示される結晶核剤(竹本油脂社製の商品名TLA−115:5−スルホイソフタル酸ジメチル=カルシウム)
C−3:化1で示される結晶核剤(竹本油脂社製の商品名TLA−134:5−スルホイソフタル酸ジメチル=ストロンチウム)
C−4:化1で示される結晶核剤(竹本油脂社製の商品名TLA−140:5−スルホイソフタル酸ジメチル=カリウム)
C−5:化1で示される結晶核剤(竹本油脂社製の商品名TLA−141:5−スルホイソフタル酸ジメチル=ルビジウム)
D−1:アミド系結晶核剤(日本化成社製の商品名スリパックスH:エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド)
D−2:スルホン酸系結晶核剤(竹本油脂社製の商品名デリオンHS:5−スルホイソフタル酸ナトリウム)
D−3:タルク系結晶核剤(日本タルク社製の商品名MicroAce P−6、平均粒子径4μm)
D−4:酸化防止剤(チバスペシャリティーケミカル社製の商品名IRGANOX1076)
D−5:加水分解抑制剤(日清紡社製の商品名カルボジライトHMV−8CA)
試験区分2(脂肪族ポリエステル樹脂組成物の評価)
試験区分1で調製したペレット状の脂肪族ポリエステル樹脂組成物を100℃で2時間除湿乾燥し、絶乾状態にした後、試料を採取して、下記の示差走査熱量計の条件によりガラス転移温度、結晶化開始温度、結晶化ピーク温度、結晶化熱量を求めた。結果を表2にまとめて示した。
・示差走査熱量計の条件
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製のDiamond DSC)を用いて、試料10mgをアルミニウムセルに充填し、50℃/分で室温から210℃まで昇温後、5分間保持した後、20℃/分の降温速度で測定した。
























Figure 0005084005
表2において、
*1:今回の示差走査熱量計の条件では、数値が測定できなかった。
試験区分3(脂肪族ポリエステル樹脂成形体の製造及び評価)
・実施例20〜42及び比較例6〜18
試験区分1で調製したペレット状の脂肪族ポリエステル樹脂組成物を100℃で2時間除湿乾燥し、絶乾状態にした後、表3に記載の成形条件にて射出成形し、ISO物性評価用試験片を得た。成形後、試験片を金型から離型するときの状態を離型変形として下記の基準で評価した。また得られた試験片を用いて、曲げ試験、荷重たわみ温度及び結晶化度をそれぞれ下記の条件で測定した。結果を表3にまとめて示した。
・離型変形
成形後、試験片を金型から離型するときの試料片の金型への付着の状態及び試験片の変形の状態を目視により下記の基準で評価した。
◎:金型付着がなく、変形もない
○:金型へやや貼りつき気味であるが、変形はない
△:金型へ貼りつき気味であって、明らかに変形がある
×:金型へ貼りつき離型が困難で、大きな変形がある
・曲げ試験
ISO178に準拠して測定した。
・荷重たわみ温度
ISO75−2B法フラットワイズ法における荷重たわみ温度の試験方法に準拠して測定した。荷重たわみ温度は、加熱浴槽中の試験片に0.45MPaの曲げ応力を加えながら、一定速度で伝熱媒体を昇温させ、試験片が規定のたわみ量に達した時の伝熱媒体の温度である。
・結晶化度(絶対結晶化度及び相対結晶化度)
試験片から約10mgの試料を採取してアルミニウムセルに入れ、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製の商品名DaiamondDSC)を用いてヘリウムガス雰囲気下に下記の熱量測定条件で結晶融解のピーク温度(Tm℃)、結晶化による発熱量(ΔHc1)、結晶融解による吸熱量(ΔHm1)、結晶融解による吸熱量(ΔHm2)を測定した。以上で得られた測定値を用いて下記の数1により絶対結晶化度を算出し、また下記の数2により相対結晶化度を算出した。
・・熱量測定条件
1)予備測定として30℃→250℃、昇温速度5℃/minで結晶融解のピーク温度(Tm℃)を求める。得られた(Tm+30)℃を(T)℃とする。
2)30℃→(T)℃、昇温速度5℃/min途中で現れる結晶化による発熱量(ΔHc1)と結晶融解による吸熱量(ΔHm1)を測定する。
3)(T)℃で5分間保持する。
4)(T)℃→30℃、降温速度5℃/minで降温する。
5)30℃で5分保持する。
6)30℃→(T)℃、昇温速度5℃/min途中で現れる結晶融解による吸熱量(ΔHm2)を測定する。
Figure 0005084005
Figure 0005084005
数1及び数2において、
数1中の数値93は、公知文献で知られているポリ乳酸が100%結晶化した場合の結晶融解熱量(93J/g)を意味する。数1中のaは、本発明の組成物における脂肪族ポリエステルの重量分率(重量%)を意味する。さらにΔHc1、ΔHm1、ΔHm2は絶対値であり、それらの単位はJ/gである。
尚、ΔHc1、ΔHm1、ΔHm2を求めるにあたり、融解吸熱ピークが脂肪族ポリエステル以外の成分に由来することが明らかな場合は可能な限り除外する。





Figure 0005084005
表3において、
成形条件の時間:成形機の金型に脂肪族ポリエステル樹脂組成物を圧入充填してから、結晶化させて離型するまでの時間(成形サイクル)
*2:成形体が変形して測定することができなかった。
表1〜3からも明らかなように、本発明の組成物を用いると、実用上汎用樹脂並みの成形条件で、例えば成形サイクルで、離型時に変形を起こすことなく、優れた物性の成形体を得ることができる。

Claims (6)

  1. 脂肪族ポリエステル樹脂と結晶核剤とを含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物において、下記の脂肪族ポリエステル樹脂100重量部当たり、結晶核剤として少なくとも一つ以上の下記の化1で示される芳香族スルホン酸塩を0.01〜5重量部の割合で含有して成ることを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
    脂肪族ポリエステル樹脂:ポリ乳酸樹脂、ポリ乳酸系樹脂及びこれらの混合物から選ばれるもの
    Figure 0005084005
    (化1において、
    X:ベンゼンから3個の水素原子を除いた残基
    ,R:炭素数1〜6の炭化水素基
    M:カリウム原子、ルビジウム原子、バリウム原子、ストロンチウム原子及びカルシウム原子から選ばれるもの
    n:1又は2であって、Mがアルカリ金属原子の場合はn=1、Mがアルカリ土類金属原子の場合はn=2)
  2. 化1で示される芳香族スルホン酸塩が、化1中のMがカリウム原子又はバリウム原子である場合のものである請求項1記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
  3. 示差走査熱量測定法による結晶化ピーク温度が100〜150℃且つ結晶化熱量が20J/g以上である請求項1又は2記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか一つの項記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物を溶融成形して得られる脂肪族ポリエステル樹脂成形体。
  5. 示差走査熱量測定法による絶対結晶化度が30%以上且つ相対結晶化度が80%以上である請求項記載の脂肪族ポリエステル樹脂成形体。
  6. 請求項1〜のいずれか一つの項記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物を溶融し、示差走査熱量測定法による結晶化開始温度以下且つガラス転移温度以上の温度範囲に設定された金型に充填して、結晶化させながら成形する脂肪族ポリエステル樹脂成形体の製造方法。
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