以下、本発明に係るリジッドダンプトラックのサスペンション装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
−第1の実施の形態−
図1は、第1の実施の形態に係るダンプトラックの側面図である。なお、説明の便宜上、図示するように、ダンプトラックの前後、左右および上下方向を規定する。ダンプトラックは、鉱山等で採掘した砕石物等を運搬するリジッドフレーム式の超大型リジッドダンプトラックである。ダンプトラックは、本体となる車体フレーム(以下、単にフレーム2と記す)と、フレーム2の前部に設けられたキャブ(運転室)10と、砕石物等の積荷7を載せる荷台(ベッセル)1と、荷台1を上下方向に回動(起伏動)させる荷台駆動用の油圧シリンダであるホイストシリンダ3とを備えている。
フレーム2と荷台1はホイストシリンダ3とヒンジピン4で連結されている。ホイストシリンダ3を伸縮動作させることにより、荷台1がフレーム2に対してヒンジピン4を支点に上下方向に回動動作し、積荷7を放土することができる。キャブ10には、運転者が着座する運転席、エンジンを始動するためのイグニッションスイッチ、アクセルペダル、ブレーキペダル、操舵用のステアリングホイール(いずれも図示せず)等が設けられている。
図2は第1の実施の形態に係るダンプトラックを上方から見た平面図であり、図3は第1の実施の形態に係るダンプトラックを後方から見た背面図である。なお、図2では、わかりやすくするために、フレーム2と足回り(車輪を支持する装置)の部品のみを示している。
図2に示すように、ダンプトラックは、2本の前輪5a,5bと4本の後輪6a,6b,6c,6dを備え、後輪6a,6b,6c,6dが駆動輪、前輪5a,5bが従動輪として構成されている。前輪5a,5bは、運転者によって操舵(ステアリング操作)される操舵輪を構成する。前輪5a,5bおよび後輪6a,6b,6c,6dの外径寸法は、たとえば、2〜4mに及ぶ。
左の前輪5aには、前輪5aの車輪速を検出する車輪速センサ39aが設けられている。右の前輪5bには、前輪5bの車輪速を検出する車輪速センサ39bが設けられている。車輪速センサ39a,39bは、後述するコントローラ32に接続され、コントローラ32に前輪5a,5bの車輪速に相当する信号を出力する。
図1に示すように、ダンプトラックは、フレーム2の前側に一対のサスペンションシリンダ(以下、フロントサスペンションシリンダ8と記す)が設けられ、フレーム2の後側に一対のサスペンションシリンダ(以下、リアサスペンションシリンダ9a,9b)が設けられている。
フロントサスペンションシリンダ8は、左右の前輪5a,5bを独立して上下させることができる独立懸架式のサスペンションシリンダである。左右一対のフロントサスペンションシリンダ8は、左右の前輪5a,5bを支持する左側ロアアーム12aおよび右側ロアアーム12b(図2参照)のそれぞれに連結され、車体の前部側を左右の前輪上で懸架しつつ、車体の上下方向の振動を緩衝する。
リアサスペンションシリンダ9a,9bは車軸懸架式のサスペンションシリンダである。図3に示すように、左右一対のリアサスペンションシリンダ9a,9bは、後輪6a〜6dを支持するリジッドアクスル13に連結されている。左右のリアサスペンションシリンダ9a,9b間には、左右連動可変剛性装置17が配設されている。左右連動可変剛性装置17の詳細な説明については、後述する。
リジッドアクスル13は、後輪側の車軸を構成する筒状体であり、内部に後輪6a〜6dと一体に回転する車輪取付筒(車輪用のハブ)が配設されている。図2に示すように、リジッドアクスル13は、前端部に設けられた球面ジョイント38を中心に、フレーム2に対して揺動する。後輪6a〜6dは、リジッドアクスル13内に設けられた電動モータ(不図示)により駆動されて、球面ジョイント38を介してフレーム2に駆動力および制動力を伝達する。
図3に示すように、フレーム2とリジッドアクスル13とはラテラルリンク16で接続され、リジッドアクスル13の横方向移動はラテラルリンク16で規制される。リアサスペンションシリンダ9a,9bは、リジッドアクスル13の上下方向移動の規制だけでなく、リジッドアクスル13のロール回転移動の規制も行い、スタビライザーとしての役割も担う。
ダンプトラックは、運搬可能な積荷重量が車両本体の重量よりも重い仕様であることが多い。ダンプトラックは、空荷時の車体重量と積荷時の車体重量とで、2倍程度〜2.5倍程度異なる。ダンプトラックは、たとえば、積荷7が積載されていない空荷時には200トン程度、運搬対象物が最大(上限)まで積載された積荷時には500トン程度の重量となる。
このように、ダンプトラックでは、空荷時と積荷時とで車体重量が大きく異なる。このため、サスペンションシリンダ8,9a,9bは空荷時、積荷時の両方の状態において、路面の凹凸を乗り越える際のタイヤ荷重の緩衝機能、運転者の乗り心地向上のための制振機能、および旋回時のロールを抑えるなどの操作性の基準を満たす必要がある。そこで、本実施の形態では、フロントサスペンションシリンダ8およびリアサスペンションシリンダ9a,9bとして、シリンダ内にガスと圧縮性オイルとを封入し、非線形ばね特性を持たせたハイドロニューマチック式のサスペンションシリンダを採用している。
図4は、比較例に係るダンプトラックの背面図である。比較例に係るダンプトラックのリアサスペンションシリンダ9a,9b内には、ガスと圧縮性オイルが封入され、シリンダ内外へガスおよび圧縮性オイルの出入りが無い構成とされている。すなわち、比較例に係るダンプトラックは、後述する本実施の形態の左右連動可変剛性装置17(図3参照)が設けられていない点が、本実施の形態と異なっている。
比較例では、リアサスペンションシリンダ9a,9bのばね特性が、ガス圧、および圧縮性オイルの注入量の設定でのみ決定されている。たとえば、積荷状態での旋回動作時(ロール時)における車体の安定性の向上を図るために、リアサスペンションシリンダ9a,9bに硬いばね特性を付与している場合について説明する。
鉱山用のダンプトラックが走行する作業現場は、通常、凹凸状のオフロードである。このため、ダンプトラックが、たとえば1mほど(車輪の外径寸法の1/4程度)の段差を乗り越えることも少なくはない。図4に示すように、比較例に係るダンプトラックの右側の後輪6c,6dが段差に乗り上げると、硬いばね特性のリアサスペンションシリンダ9a,9bを介し、フレーム2に対して、ロール軸まわりに大きく捩じる力(捩じり力)が作用し、車体を構成する部材が損傷するおそれが生じる。このため、大きな捩じり力に起因した損傷を防止するために、比較例では、車体を構成する部材に高い剛性を持たせる必要が生じ、重量化、高コスト化を招くおそれがある。
本実施の形態では、ダンプトラックの左右の車輪の一方が段差を乗り越える際に、左右連動可変剛性装置17により、リアサスペンションシリンダ9a,9bのばね特性を変更して、フレーム2に大きな捩じり力が作用することを防止する。以下、詳細に説明する。
図5は第1の実施の形態に係る後輪側のサスペンション装置の構成を示す図であり、図6はリアサスペンションシリンダの内部構造を示す模式図である。本実施の形態に係るサスペンション装置は、左右一対のリアサスペンションシリンダ9a,9b間に設けられた左右連動可変剛性装置17により、左右一対のリアサスペンションシリンダ9a,9bのそれぞれのばね定数が調整される構成とされている。
図6に示すように、リアサスペンションシリンダ9a,9bは、円筒状のチューブ99と、チューブ99内に配置されるピストン98と、一端側がピストン98に固着され、他端側がチューブ99外に突出したロッド97とにより構成されている。ロッド97およびピストン98は、チューブ99内をチューブ99の中心軸方向に沿って移動する。ピストン98によって、チューブ99内の空間は、ボトム室(メインチャンバ)91とロッド室(サブチャンバ)90とに区画されている。
ピストン98およびロッド97は、それぞれ円筒状とされ、中心軸方向に延在する内部空間が形成され、ボトム室91と連通している。ロッド97には、ロッド97の内部空間とロッド室90とを常時連通した状態に保つ絞り孔35が穿設されている。つまり、ロッド室90とボトム室91とは、絞り孔35を介して連通されている。
図3に示すように、サスペンションシリンダ9a,9bは、チューブ99が上側に位置し、ロッド97が下側に位置するように、チューブ99の上端部がフレーム2のマウント2mに取り付けられ、ロッド97の下端部がリジッドアクスル13のブラケット13bに取り付けられている。
図6に示すサスペンションシリンダ9a,9bには、ガスと圧縮性オイル(以下、単にオイルと記す)とが仕切りなく封入されている。サスペンションシリンダ9a,9bは、外力を受けるとガスおよびオイルが圧縮される2重ばね構造になっている。なお、積荷時には、サスペンションシリンダ9a,9b内の圧力が空荷時に比べて高くなり、ガスのほとんどがオイルに溶け込んだ状態となる。
ダンプトラック(車両)が凹凸のある走行面を走行している際、車両の振動に伴ってロッド97がチューブ99に対して上下方向に伸縮すると、ボトム室91およびロッド室90の容積がそれぞれ変化する。ロッド97の伸縮動作に応じてオイルが絞り孔35を通過する際、圧力損失が発生し、絞り孔35の開口面積に応じた絞り作用が生じ、振動緩衝用の減衰力が発生する。
図5に示すように、サスペンション装置は、左右一対のサスペンションシリンダ9a,9bと、左右連動可変剛性装置17と、左右一対のアキュムレータ60a,60bと、コントローラ32とを備えている。左右連動可変剛性装置17は、蓄圧弁61、放圧弁62、パイロット圧遮断弁25、左右強制放圧弁63a,63b、および、逆止弁64a,64b,65a,65b,66a,66b,67a,67bを含む。
以下の説明では、左の後輪6a,6b側に位置するリアサスペンションシリンダ9aを「左サスペンションシリンダ9a」とも称し、右の後輪6c,6d側に位置するリアサスペンションシリンダ9bを「右サスペンションシリンダ9b」とも称する。また、左サスペンションシリンダ9aに接続される左サスペンションシリンダ専用のアキュムレータ60aを「左アキュムレータ60a」とも称し、右サスペンションシリンダ9bに接続される右サスペンションシリンダ専用のアキュムレータ60bを「右アキュムレータ60b」とも称する。
図5に示すように、ボトム室91を構成するチューブ99の上端部には、注入ポート92および排油ポート93が設けられている。左サスペンションシリンダ9aの排油ポート93は、排出側逆止弁66aを介して、蓄圧弁61に接続されている。排出側逆止弁66aは、左サスペンションシリンダ9aから蓄圧弁61へのオイルの流れを許容し、蓄圧弁61から左サスペンションシリンダ9aへのオイルの流れを阻止する。排出側逆止弁66aと蓄圧弁61との間の油路には、蓄圧弁61の左パイロット油室81aに接続されるパイロット管路61a、および、放圧弁62の左パイロット油室86aに接続されるパイロット管路62aが、それぞれ接続されている。
右サスペンションシリンダ9bの排油ポート93は、排出側逆止弁66bを介して、蓄圧弁61に接続されている。排出側逆止弁66bは、右サスペンションシリンダ9bから蓄圧弁61へのオイルの流れを許容し、蓄圧弁61から右サスペンションシリンダ9bへのオイルの流れを阻止する。排出側逆止弁66bと蓄圧弁61との間の油路には、蓄圧弁61の右パイロット油室81bに接続されるパイロット管路61b、および、放圧弁62の右パイロット油室86bに接続されるパイロット管路62bが、それぞれ接続されている。
パイロット管路61a,61bには、パイロット圧遮断弁25が設けられている。パイロット圧遮断弁25は、コントローラ32から出力される制御信号(ソレノイドへの励磁電流)に応じて、閉位置(C)と開位置(D)との間で切り換えられる電磁切換弁である。パイロット圧遮断弁25は、コントローラ32からON信号が出力されると、ソレノイドが励磁されて開位置(D)に切り換えられ、コントローラ32からOFF信号が出力されると、ソレノイドが消磁されてばね力により閉位置(C)に切り換えられる。
パイロット圧遮断弁25が開位置(D)に切り換えられている場合、左サスペンションシリンダ9aと蓄圧弁61の左パイロット油室81aとが連通され、右サスペンションシリンダ9bと蓄圧弁61の右パイロット油室81bとが連通される。これにより、左右サスペンションシリンダ9a,9bのボトム室91の圧力(以下、メインチャンバ圧とも記す)が、パイロット圧として蓄圧弁61の左右パイロット油室81a,81bに導かれる。このため、蓄圧弁61は、左サスペンションシリンダ9aと右サスペンションシリンダ9bのメインチャンバ圧の差圧に応じてスプール24aが移動する。
パイロット圧遮断弁25が閉位置(C)に切り換えられると、左サスペンションシリンダ9aと蓄圧弁61の左パイロット油室81aとが遮断され、右サスペンションシリンダ9bと蓄圧弁61の右パイロット油室81bとが遮断される。なお、詳細は後述するが、本実施の形態では、パイロット圧遮断弁25が閉位置(C)に切り換えられると、蓄圧弁61の左パイロット油室81aと右パイロット油室81bとが第1連通路91a,93bおよび第2連通路91b,93aを介して連通し、蓄圧弁61が中立位置(N1)に復帰する構成とされている(図15参照)。
蓄圧弁61は、左サスペンションシリンダ9aと右サスペンションシリンダ9bの差圧によって、中立位置(N1)と、切換位置(X1)と、切換位置(Y1)との間で切り換えられる油圧パイロット式の3位置切換弁である。スプール24aが中立位置(N1)にあるときには、左サスペンションシリンダ9aと左アキュムレータ60aとが遮断され、かつ、右サスペンションシリンダ9bと右アキュムレータ60bとが遮断される。左サスペンションシリンダ9aの圧力が右サスペンションシリンダ9bの圧力よりも高くなり、差圧が所定値よりも大きくなると、スプール24aが切換位置(X1)に切り換わる。スプール24aが切換位置(X1)にあるときには、左サスペンションシリンダ9aと左アキュムレータ60aとが連通され、右サスペンションシリンダ9bと右アキュムレータ60bとが遮断される。右サスペンションシリンダ9bの圧力が左サスペンションシリンダ9aの圧力よりも高くなり、差圧が所定値よりも大きくなると、スプール24aが切換位置(Y1)に切り換わる。スプール24aが切換位置(Y1)にあるときには、右サスペンションシリンダ9bと右アキュムレータ60bとが連通され、左サスペンションシリンダ9aと左アキュムレータ60aとが遮断される。
蓄圧弁61は、蓄圧側逆止弁64aを介して左アキュムレータ60aに接続されている。蓄圧側逆止弁64aは、蓄圧弁61から左アキュムレータ60aへのオイルの流れを許容し、左アキュムレータ60aから蓄圧弁61へのオイルの流れを阻止する。蓄圧弁61は、蓄圧側逆止弁64bを介して右アキュムレータ60bに接続されている。蓄圧側逆止弁64bは、蓄圧弁61から右アキュムレータ60bへのオイルの流れを許容し、右アキュムレータ60bから蓄圧弁61へのオイルの流れを阻止する。
左アキュムレータ60aは、放圧側逆止弁65aを介して放圧弁62と左強制放圧弁63aに並列に接続されている。放圧弁62が設けられる放圧油路70aおよび左強制放圧弁63aが設けられる放圧油路70bは、放圧弁62および左強制放圧弁63aの下流側で合流し、合流油路が注入側逆止弁67aを介して左サスペンションシリンダ9aの注入ポート92に接続されている。
右アキュムレータ60bは、放圧側逆止弁65bを介して放圧弁62と右強制放圧弁63bに並列に接続されている。放圧弁62が設けられる放圧油路71aおよび右強制放圧弁63bが設けられる放圧油路71bは、放圧弁62および右強制放圧弁63bの下流側で合流し、合流油路が注入側逆止弁67bを介して右サスペンションシリンダ9bの注入ポート92に接続されている。
放圧側逆止弁65aおよび注入側逆止弁67aは、左アキュムレータ60aから左サスペンションシリンダ9aへのオイルの流れを許容し、左サスペンションシリンダ9aから左アキュムレータ60aへのオイルの流れを阻止する。放圧側逆止弁65bおよび注入側逆止弁67bは、右アキュムレータ60bから右サスペンションシリンダ9bへのオイルの流れを許容し、右サスペンションシリンダ9bから右アキュムレータ60bへのオイルの流れを阻止する。
放圧弁62は、左サスペンションシリンダ9aと右サスペンションシリンダ9bの差圧によって、中立位置(N2)と、切換位置(X2)と、切換位置(Y2)との間で切り換えられる油圧パイロット式の3位置切換弁である。スプール24bが中立位置(N2)にあるときには、左サスペンションシリンダ9aと左アキュムレータ60aとが遮断され、かつ、右サスペンションシリンダ9bと右アキュムレータ60bとが遮断される。左サスペンションシリンダ9aの圧力が右サスペンションシリンダ9bの圧力よりも高くなり、差圧が所定値よりも大きくなると、スプール24bが切換位置(X2)に切り換わる。スプール24bが切換位置(X2)にあるときには、右サスペンションシリンダ9bと右アキュムレータ60bとが連通され、左サスペンションシリンダ9aと左アキュムレータ60aとが遮断される。右サスペンションシリンダ9bの圧力が左サスペンションシリンダ9aの圧力よりも高くなり、差圧が所定値よりも大きくなると、スプール24bが切換位置(Y2)に切り換わる。スプール24bが切換位置(Y2)にあるときには、左サスペンションシリンダ9aと左アキュムレータ60aとが連通され、右サスペンションシリンダ9bと右アキュムレータ60bとが遮断される。
左右強制放圧弁63a,63bは、コントローラ32から出力される制御信号(ソレノイドへの励磁電流)に応じて、開位置(E)と閉位置(F)との間で切り換えられる電磁切換弁である。左右強制放圧弁63a,63bは、コントローラ32からON信号が出力されると、ソレノイドが励磁されて閉位置(F)に切り換えられ、コントローラ32からOFF信号が出力されると、ソレノイドが消磁されてばね力により開位置(E)に切り換えられる。
図7は、図6のVII−VII線断面回路図である。蓄圧弁61は、蓄圧弁ブロック61Kに設けられ、放圧弁62は放圧弁ブロック62Kに設けられ、左右強制放圧弁63a,63bは強制放圧弁ブロック63Kに設けられている。左右連動可変剛性装置17を構成する蓄圧弁ブロック61K、放圧弁ブロック62K、および強制放圧弁ブロック63Kは、互いに重なるように、ダンプトラックの前後方向に配列され、上部逆止弁ブロック69U、下部逆止弁ブロック69L、上部エルボ68U、および、下部エルボ68Lに連結され、一体となっている。
上部逆止弁ブロック69Uは、排出側逆止弁66a,66b、および注入側逆止弁67a,67bを備えている。下部逆止弁ブロック69Lは、蓄圧側逆止弁64a,64b、放圧側逆止弁65a,65bを備えている。このように、本実施の形態では、左右連動可変剛性装置17を構成する各種弁がコンパクトにまとめられているので、フレーム2への取付け作業性がよい。
図8は、蓄圧弁61と、パイロット圧遮断弁25の断面を模式的に示す図である。図8では、左サスペンションシリンダ9aのメインチャンバ圧と右サスペンションシリンダ9bのメインチャンバ圧とが平衡であるときの状態、すなわちスプール24aが中立位置(N1)にある状態(図5参照)を示している。図5の油圧回路図で示した蓄圧弁61とパイロット圧遮断弁25は、図8に示すように、蓄圧弁ブロック61Kに一体的に設けられている。以下、蓄圧弁61とパイロット圧遮断弁25の構成について、詳細に説明する。説明の便宜上、図示するように左右方向を規定する。
図8に示すように、蓄圧弁61は、蓄圧弁ブロック61Kのケーシング80に対して左右方向に移動するスプール24aと、スプール24aの左側に設けられる左パイロット油室81aと、スプール24aの右側に設けられる右パイロット油室81bとを備えている。左パイロット油室81aおよび右パイロット油室81bのそれぞれには、スプール24aを軸方向中心の中立位置に向けて付勢するスプリング(圧縮コイルばね)26が配設されている。
ケーシング80には、左サスペンションシリンダ9aと左アキュムレータ60aとを接続する油路であるメイン配管40a、および、右サスペンションシリンダ9bと右アキュムレータ60bとを接続する油路であるメイン配管40bが設けられている。スプール24aは、メイン配管40a,40bを横切るように設けられており、スプール24aの左右方向の移動量に応じて、メイン配管40a,40bの開口面積が変化する。
スプール24aは、中央のランド部240と、ランド部240の左右両側に設けられる一対の小径部241と、一対の小径部241のそれぞれの端部に設けられる受圧部242a,242bとを備えている。ランド部240は、メイン配管40a,40bを塞ぐ部分であり、ランド部240の軸方向長さは、メイン配管40aおよびメイン配管40bの双方を閉塞可能な長さとされている。小径部241の外径寸法は、ランド部240の外径寸法よりも小さい。小径部241がメイン配管40a,40bに位置すると、メイン配管40a,40bにおけるスプール24aの上流側と下流側とが連通される。
受圧部242aは左パイロット油室81aの圧力が作用する受圧面と、後述の逆止弁51aaの入口の開閉を切り換える開閉側面とを有している。受圧部242bは右パイロット油室81bの圧力が作用する受圧面と、後述の逆止弁51baの入口の開閉を切り換える開閉側面とを有している。受圧部242a,242bの受圧面には、スプリング26が嵌合される嵌合凹部が形成されている。
パイロット圧遮断弁25は、左遮断スプール25aと、右遮断スプール25bとを備えている。左遮断スプール25aおよび右遮断スプール25bは、それぞれスプール駆動用のばね50と、ソレノイド29とを備えている。
メイン配管40aからはパイロット管路61aが分岐しており、パイロット管路61aは左パイロット油室81aに接続されている。パイロット管路61aには、左遮断スプール25aが配置されており、メイン配管40aと左パイロット油室81aとは、左遮断スプール25aの切換動作に応じて、連通または遮断される。メイン配管40bからはパイロット管路61bが分岐しており、パイロット管路61bは右パイロット油室81bに接続されている。パイロット管路61bには、右遮断スプール25bが配置されており、メイン配管40bと右パイロット油室81bとは、右遮断スプール25bの切換動作に応じて、連通または遮断される。
左パイロット油室81aと右パイロット油室81bとは、第1連通路91a,93bおよび第2連通路91b,93aのそれぞれにより接続されている。
第1連通路91aは、左パイロット油室81aの出口ポート90aと、右パイロット油室81bの入口ポート92bとを接続している。左パイロット油室81aと出口ポート90aとの間には、左パイロット油室81aから右パイロット油室81bへのオイルの流れを許容し、右パイロット油室81bから左パイロット油室81aへのオイルの流れを阻止する逆止弁51aaが設けられている。第1連通路93bは、右パイロット油室81bの入口ポート92bと、右パイロット油室81bとを接続している。第1連通路93bには、入口ポート92bから右パイロット油室81bへのオイルの流れを許容し、右パイロット油室81bから入口ポート92bへのオイルの流れを阻止する逆止弁51bbが設けられている。第1連通路93bには、右遮断スプール25bが配置されており、入口ポート92bと右パイロット油室81bとは、右遮断スプール25bの切換動作に応じて、連通または遮断される。
第2連通路91bは、右パイロット油室81bの出口ポート90bと、左パイロット油室81aの入口ポート92aとを接続している。右パイロット油室81bと出口ポート90bとの間には、右パイロット油室81bから左パイロット油室81aへのオイルの流れを許容し、左パイロット油室81aから右パイロット油室81bへのオイルの流れを阻止する逆止弁51baが設けられている。第2連通路93aは、左パイロット油室81aの入口ポート92aと、左パイロット油室81aとを接続している。第2連通路93aには、入口ポート92aから左パイロット油室81aへのオイルの流れを許容し、左パイロット油室81aから入口ポート92aへのオイルの流れを阻止する逆止弁51abが設けられている。第2連通路93aには、左遮断スプール25aが配置されており、入口ポート92aと左パイロット油室81aとは、左遮断スプール25aの切換動作に応じて、連通または遮断される。
図8に示すように、左右サスペンションシリンダ9a,9bのメインチャンバ圧(ボトム室91の圧力)が平衡状態のときには、スプール24aは中立位置に配置されているので、左右サスペンションシリンダ9a,9bから左右アキュムレータ60a,60bへのオイルの流れは遮断されている。
左右サスペンションシリンダ9a,9bのメインチャンバ圧に差が生じると、メイン配管40aあるいはメイン配管40bが開く方向に、スプール24aがスライド移動する。
図9は、蓄圧開始閾値ΔP1の決定方法について説明する図である。スプール24aが開位置に切り換えられる差圧、すなわちアキュムレータの蓄圧が開始する差圧である蓄圧開始閾値ΔP1は、以下の式(1)により表される。蓄圧開始閾値ΔP1は差圧の上限値でもある。
ΔP1=F1/S1=2・k1・z1/S1 ・・・(1)
ここで、F1はスプール24aに加わる力、S1はスプール24aの受圧面積(すなわち受圧部242a,242bの受圧面の面積)、k1はスプリング26のばね定数、z1は開弁するまでの必要スプール移動量である。
図10は、放圧弁62の断面を模式的に示す図である。図10では、左サスペンションシリンダ9aのメインチャンバ圧と右サスペンションシリンダ9bのメインチャンバ圧とが平衡であるときの状態、すなわち中立位置(N2)の状態(図5参照)を示している。以下、放圧弁62の構成について、詳細に説明する。説明の便宜上、図示するように左右方向を規定する。
図10に示すように、放圧弁62は、放圧弁ブロック62Kのケーシング85に対して左右方向に移動するスプール24bと、スプール24bの左側に設けられる左パイロット油室86aと、スプール24bの右側に設けられる右パイロット油室86bとを備えている。左パイロット油室86aおよび右パイロット油室86bのそれぞれには、スプール24bを軸方向中心の中立位置に向けて付勢するスプリング(圧縮コイルばね)27が配設されている。
ケーシング85には、左アキュムレータ60aと左サスペンションシリンダ9aとを接続する油路であるメイン配管41a、および、右アキュムレータ60bと右サスペンションシリンダ9bとを接続する油路であるメイン配管41bが設けられている。スプール24bは、メイン配管41a,41bを横切るように設けられており、スプール24bの左右方向の移動量に応じて、メイン配管41a,41bの開口面積が変化する。
スプール24bは、中央の小径部246と、小径部246の左右両側に設けられる一対のランド部245a,245bとを備えている。ランド部245a,245bは、メイン配管41a,41bを塞ぐ部分である。小径部246の外径寸法は、ランド部245a,245bの外径寸法よりも小さい。小径部245がメイン配管41a,41bに位置したとき、メイン配管41a,41bにおけるスプール24bの上流側と下流側とが連通される。
ランド部245aは左パイロット油室86aの圧力が作用する受圧面を備えている。ランド部245bは右パイロット油室86bの圧力が作用する受圧面を備えている。ランド部245a,245bの受圧面には、スプリング27が嵌合される嵌合凹部が形成されている。
図10に示すように、左右サスペンションシリンダ9a,9bのメインチャンバ圧(ボトム室91の圧力)が平衡状態のときには、スプール24bは中立位置に配置されているので、左右アキュムレータ60a,60bから左右サスペンションシリンダ9a,9bへのオイルの流れは遮断されている。
左右サスペンションシリンダ9a,9bのメインチャンバ圧に差が生じると、メイン配管41aあるいはメイン配管41bが開く方向に、スプール24bがスライド移動する。
スプール24bが開位置に切り換えられる差圧、すなわちアキュムレータの放圧が開始する差圧である放圧開始閾値ΔP2は、以下の式(2)により表される。
ΔP2=F2/S2=2・k2・z2/S2 ・・・(2)
ここで、F2はスプール24bに加わる力、S2はスプール24bの受圧面積(すなわちランド部245a,245bの受圧面の面積)、k2はスプリング27のばね定数、z2は開弁するまでの必要スプール移動量である。
左右アキュムレータ60a,60bは残圧を少なくしておき、蓄圧の準備をしておくことで、ダンプトラックの走行中に突然発生する急な段差によるショックを緩和することができる。放圧開始閾値ΔP2は小さくするほど、放圧する機会を増やすことができるので、本実施の形態では、放圧開始閾値ΔP2を蓄圧開始閾値ΔP1に比べて十分に小さくなるように、放圧開始閾値ΔP2を設定した。つまり、放圧開始閾値ΔP2と蓄圧開始閾値ΔP1の大小関係は、放圧開始閾値ΔP2≪蓄圧開始閾値ΔP1となる。このため、蓄圧弁61よりも放圧弁62が頻繁に開閉を繰り返す。
図5に示すように、コントローラ32には、ステアリングホイール34の操舵角(操作量および操作方向)を検出する角度センサ33、および左右アキュムレータ60a,60bを放圧させるための放圧指令を出力する強制放圧スイッチ36が接続され、角度センサ33からの検出信号および強制放圧スイッチ36からの放圧指令が入力される。運転者により強制放圧スイッチ36がON操作された場合には、強制放圧スイッチ36からコントローラ32に放圧指令信号が出力され、運転者により強制放圧スイッチ36がOFF操作された場合には、強制放圧スイッチ36からコントローラ32に放圧指令信号は出力されない。
コントローラ32は、CPUやROM,RAM等の記憶装置、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。コントローラ32は、旋回動作判定部32aと、強制放圧条件判定部32bと、弁制御部32cとを機能的に備えている。旋回動作判定部32aは、角度センサ33で検出された操舵角に基づいて、ダンプトラックが旋回動作中であるか否かを判定する。旋回動作判定部32aは、操舵角の絶対値|θ|が閾値θ0未満である場合(|θ|<θ0)には、ダンプトラックは旋回動作中でないと判定し、操舵角の絶対値|θ|が閾値θ0以上である場合(|θ|≧θ0)には、ダンプトラックは旋回動作中であると判定する。閾値θ0は、ダンプトラックが旋回動作中であるか否かを判定するために用いられるものであり、予めコントローラ32の記憶装置に記憶されている。
弁制御部32cは、旋回動作判定部32aでダンプトラックが旋回動作中であると判定された場合、パイロット圧遮断弁25のソレノイドにOFF信号を出力する。弁制御部32cは、旋回動作判定部32aでダンプトラックが旋回動作中でないと判定された場合、パイロット圧遮断弁25のソレノイドにON信号を出力する。
強制放圧条件判定部32bは、強制放圧スイッチ36の放圧指令信号に基づいて、強制放圧条件が成立したか否かを判定する。強制放圧条件判定部32bは、強制放圧スイッチ36がON操作されている場合、強制放圧条件が成立したと判定し、強制放圧スイッチ36がOFF操作されている場合、強制放圧条件が成立していないと判定する。
弁制御部32cは、強制放圧条件判定部32bで強制放圧条件が成立していると判定されると、左右強制放圧弁63a,63bのソレノイドにOFF信号を出力する。弁制御部32cは、強制放圧条件判定部32bで強制放圧条件が成立していないと判定されると、左右強制放圧弁63a,63bのソレノイドにON信号を出力する。
図11(a)はコントローラ32によるパイロット圧遮断弁25の切換制御の処理内容を示すフローチャートであり、図11(b)はコントローラ32による左右強制放圧弁63a,63bの切換制御の処理内容を示すフローチャートである。図11(a)および図11(b)のフローチャートに示す処理は、図示しないイグニッションスイッチのONにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、イグニッションスイッチがONされると、エンジンコントローラ(不図示)によりエンジン(不図示)が起動する。
図11(a)を参照してパイロット圧遮断弁25の切換制御処理について説明する。ステップS100において、コントローラ32は、角度センサ33で検出されたステアリングホイール34の操舵角の情報を取得して、ステップS110へ進む。
ステップS110において、コントローラ32は、ステップS100で取得したステアリングホイール34の操舵角の絶対値|θ|に基づいて、ダンプトラックが旋回動作中であるか否かを判定する。ステップS110で肯定判定されるとステップS120へ進み、ステップS110で否定判定されるとステップS130へ進む。
ステップS120において、コントローラ32は、パイロット圧遮断弁25にOFF信号を出力し、パイロット圧遮断弁25を閉位置(C)に切り換えて、図11(a)のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS130において、コントローラ32は、パイロット圧遮断弁25にON信号を出力し、パイロット圧遮断弁25を開位置(D)に切り換えて、図11(a)のフローチャートに示す処理を終了する。
図11(b)を参照して左右強制放圧弁63a,63bの切換制御処理について説明する。ステップS200において、コントローラ32は、強制放圧スイッチ36の操作情報(放圧指令信号)を取得して、ステップS210へ進む。
ステップS210において、コントローラ32は、ステップS200で取得した操作情報(放圧指令信号)に基づいて、強制放圧条件が成立しているか否かを判定する。ステップS210で肯定判定されるとステップS220へ進み、ステップS210で否定判定されるとステップS240へ進む。
ステップS220において、コントローラ32は、パイロット圧遮断弁25にOFF信号を出力し、パイロット圧遮断弁25を閉位置(C)に切り換えて、ステップS230へ進む。ステップS230において、コントローラ32は、左右強制放圧弁63a,63bにOFF信号を出力し、左右強制放圧弁63a,63bを開位置(E)に切り換えて、図11(b)のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS240において、コントローラ32は、左右強制放圧弁63a,63bにON信号を出力し、左右強制放圧弁63a,63bを閉位置(F)に切り換えて、図11(b)のフローチャートに示す処理を終了する。
なお、イグニッションスイッチがオフされると、エンジンは停止され、左右強制放圧弁63a,63bおよびパイロット圧遮断弁25のソレノイドへの通電がされなくなるので、左右強制放圧弁63a,63bは開位置(F)に切り換えられ、パイロット圧遮断弁25は閉位置(C)に切り換えられる。
本実施の形態の動作をまとめると次のようになる。運転者がイグニッションスイッチをONすると、エンジンが始動する。運転者は、予め強制放圧スイッチ36をOFF操作しておく。これにより、左右強制放圧弁63a,63bは閉位置(F)に切り換えられ、パイロット圧遮断弁25は開位置(D)に切り換えられる(ステップS200→S210でNo→S240)。
運転者がステアリングホイール34やアクセルペダル(不図示)、ブレーキペダル(不図示)などの操作部材を操作することで、ダンプトラックが走行を行う。走行中にステアリングホイール34による旋回操作がなされると、ステアリングホイール34の操作方向および操舵角に応じて前輪5a,5bが転舵し、ダンプトラックが旋回走行を行う。ダンプトラックによる旋回動作が行われると、パイロット圧遮断弁25は閉位置(C)に切り換えられる(ステップS100→S110でYes→S120)。
つまり、旋回動作中は、左右サスペンションシリンダ9a,9bから左右アキュムレータ60a,60bにオイルが排出されて、左右アキュムレータ60a,60bが蓄圧されることはなく、左右サスペンションシリンダ9a,9bの差圧に応じた放圧のみが許容される。このように、旋回動作中は、パイロット圧遮断弁25が閉位置(C)にあるので、パイロット圧遮断弁25が開位置(D)にあるときに比べて、左右サスペンションシリンダ9a,9bのばね定数が大きくなっている、すなわち硬い特性となっている。これにより、ロール角度が増加することを防ぎ、旋回動作における車体の安定性を確保することができる。
運転者が旋回操作を終了し、ダンプトラックを直進走行させると、パイロット圧遮断弁25は開位置(D)に切り換えられて、蓄圧が可能な待機状態となる(ステップS100→S110でNo→S130)。
図12は右後輪6c,6dが段差に乗り上げた状態を示すダンプトラックの背面図である。図13は右後輪6c,6dが段差に乗り上げたときの蓄圧弁61およびパイロット圧遮断弁25の動作を説明する図であり、図14は右後輪6c,6dが段差に乗り上げたときの放圧弁62の動作を説明する図である。
図12に示すように、走行中に右後輪6c,6dが段差に乗り上げると、瞬間的に右サスペンションシリンダ9bに大きな圧縮力が作用する。右サスペンションシリンダ9bに軸方向の圧縮力が作用し、右サスペンションシリンダ9bのメインチャンバ圧(ボトム室91の圧力)が上昇すると、右サスペンションシリンダ9bが左サスペンションシリンダ9aに比べて高圧の状態となる。なお、左サスペンションシリンダ9aには軸方向の引張力が作用し、左サスペンションシリンダ9aが伸長する。
図5に示すように、左サスペンションシリンダ9aと右サスペンションシリンダ9bのメインチャンバ圧に差が生じ、差圧ΔPが蓄圧開始閾値ΔP1および放圧開始閾値ΔP2を超えると、蓄圧弁61が切換位置(Y1)に切り換えられ、放圧弁62が切換位置(Y2)に切り換えられる。
右サスペンションシリンダ9bのメインチャンバ圧は、図13に示すように、パイロット管路61bを介して右パイロット油室81bに位置する受圧部242bの受圧面に作用する。これにより、スプール24aが左方向に移動し、閉じられていたメイン配管40bが開いて(図5の切換位置(Y1)参照)、右サスペンションシリンダ9bのオイルが、逆止弁66b、蓄圧弁61、および逆止弁64bを介して、図5に示す右アキュムレータ60bに供給される。右アキュムレータ60bが蓄圧されるとともに、右サスペンションシリンダ9bのメインチャンバ圧が低下するので、右サスペンションシリンダ9bのばね定数が小さくなる。すなわち右サスペンションシリンダ9bの剛性が低くなる(軟らかい特性となる)。
右サスペンションシリンダ9bのメインチャンバ圧は、図14に示すように、パイロット管路62bを介してパイロット油室86bに位置するランド部245bの受圧面に作用する。これにより、スプール24bが左方向に移動し、閉じられていたメイン配管41aが開いて(図5の切換位置(Y2)参照)、左アキュムレータ60a内のオイルが、逆止弁65a、放圧弁62、および逆止弁67aを介して左サスペンションシリンダ9aに供給される。左アキュムレータ60aが放圧されるとともに、左サスペンションシリンダ9aのメインチャンバ圧が増加するので、左サスペンションシリンダ9aのばね定数が大きくなる。すなわち左サスペンションシリンダ9aの剛性が高くなる(硬い特性となる)。
したがって、本実施の形態では、走行中に右後輪6c,6dが段差に乗り上げられると、右サスペンションシリンダ9bが軟らかい特性へ変化し、左サスペンションシリンダ9aが硬い特性へと変化する。その結果、図12に示すように、段差乗り上げ時に、右サスペンションシリンダ9bが十分に収縮することで、衝撃が効果的に吸収され、左サスペンションシリンダ9aは伸びた状態で保持される。これにより、フレーム2を略水平状態に保つことができるので、荷台1の荷重は左右均等にフレーム2に伝わり、良好なバランス状態を維持することができる。
図5に示すように、右アキュムレータ60bへの蓄圧、および、左アキュムレータ60aからの放圧により、左サスペンションシリンダ9aと右サスペンションシリンダ9bとの差圧ΔPが小さくなり、差圧ΔPが蓄圧開始閾値ΔP1以下になると、蓄圧弁61のスプール24aが中立位置(N1)に戻る。これにより、図8に示すように、メイン配管41a,41bが遮断された閉状態となり、蓄圧が終了する。なお、右アキュムレータ60bの圧力と、右サスペンションシリンダ9bの圧力とが等しくなった場合も蓄圧が終了する。
図5に示すように、左アキュムレータ60aからの放圧により、左サスペンションシリンダ9aと右サスペンションシリンダ9bとの差圧ΔPがさらに小さくなり、差圧ΔPが放圧開始閾値ΔP2以下になると、放圧弁62のスプール24bが中立位置(N2)に戻る。これにより、図10に示すように、メイン配管41a,41bが遮断された閉状態となり、放圧が終了する。なお、左アキュムレータ60aの圧力と、左サスペンションシリンダ9aの圧力とが等しくなった場合も放圧が終了する。
左右サスペンションシリンダ9a,9bの差圧ΔPが小さくなると、左右サスペンションシリンダ9a,9bから略同等の力がフレーム2に作用するので、ロール軸まわりにフレーム2を大きく捩じる力の発生を抑えることができ、車体を構成する部材の損傷を防止することができる。
図12に示すように、右後輪6c,6dが段差に乗り上げた直後に、運転者により旋回操作がなされた場合の蓄圧弁61の挙動について説明する。右後輪6c,6dが段差に乗り上げて、右サスペンションシリンダ9bが左サスペンションシリンダ9aに比べて高圧の状態になり、左サスペンションシリンダ9aと右サスペンションシリンダ9bとの差圧ΔPが蓄圧開始閾値ΔP1を超えると、右アキュムレータ60bによる蓄圧が開始される。
ここで、左サスペンションシリンダ9aと右サスペンションシリンダ9bとの差圧ΔPが蓄圧開始閾値ΔP1以下になる前に、運転者により旋回操作がなされ、コントローラ32により旋回動作中であることが判定されると、図5に示すパイロット圧遮断弁25が閉位置(C)に切り換えられる。図15は、蓄圧弁61の中立復帰動作について説明する図である。本実施の形態では、パイロット圧遮断弁25が閉位置(C)に切り換えられたとき、図15に示すように、左遮断スプール25aによって、パイロット管路61aが閉じられるとともに第2連通路93aが開かれる。また、右遮断スプール25bによって、パイロット管路61bが閉じられるとともに第1連通路93bが開かれる。
第1連通路93bおよび第2連通路93aが開かれることにより、左パイロット油室81aと右パイロット油室81bとが連通する。その結果、左パイロット油室81aおよび右パイロット油室81bのうち、圧力の高い右パイロット油室81bの圧油が逆止弁51ba、第2連通路91b、逆止弁51abを介して、圧力の低い左パイロット油室81aへと流れ、スプール24aが中立位置に向かって移動する。スプール24aが中立位置まで移動すると、受圧部242bの開閉側面が逆止弁51baの入口を閉じる(図8参照)。これにより、左右パイロット油室間の圧油の移動が停止するので、スプール24aが中立位置で停止し、中立復帰が完了する。
なお、本実施の形態では、左右サスペンションシリンダ9a,9bのばね定数(剛性設定値)に変化がないように、基本的に左サスペンションシリンダ9aと右サスペンションシリンダ9bの圧油が混ざらないようにしているが、上述の中立復帰の際に限って、ごくわずかに圧油が混ざることになる。しかしながら、圧油の移動量は、スプール24aが中立位置に戻る分のわずかな量であるため、左右サスペンションシリンダ9a,9bのばね定数(剛性設定値)の変化は小さく、問題となることはない。
サスペンション装置の硬さの初期設定は、イグニッションスイッチをOFFして、エンジン、モータ等を停止させた状態で、オイルを注入することで行う。初期設定が完了した後、イグニッションスイッチをONして、試運転を行う。試運転において、左右アキュムレータ60a,60bの圧力と、左右サスペンションシリンダ9a,9bの圧力とが等しくなった状態において、サスペンション装置の硬さが不十分の場合には、サスペンションシリンダ9a,9b内にオイルを追加で注入し、硬さを上げて、任意の硬さに調整する。
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)サスペンション装置は、左サスペンションシリンダ9aと右サスペンションシリンダ9bの差圧ΔPによって切り換わる蓄圧弁61および放圧弁62を備えている。蓄圧弁61は、左サスペンションシリンダ9aおよび右サスペンションシリンダ9bのうち、圧力の高いサスペンションシリンダと、該サスペンションシリンダに接続されるアキュムレータとを連通し、左サスペンションシリンダ9aおよび右サスペンションシリンダ9bのうち、圧力の低いサスペンションシリンダと、該サスペンションシリンダに接続されるアキュムレータとを遮断する切換位置(X1,Y1)を有している。放圧弁62は、左サスペンションシリンダ9aおよび右サスペンションシリンダ9bのうち、圧力の低いサスペンションシリンダと、該サスペンションシリンダに接続されるアキュムレータとを連通し、左サスペンションシリンダ9aおよび右サスペンションシリンダ9bのうち、圧力の高いサスペンションシリンダと、該サスペンションシリンダに接続されるアキュムレータとを遮断する切換位置(X2,Y2)を有している。
これにより、左右の車輪の一方が段差を乗り上げた際に、段差に乗り上げた車輪側に位置するサスペンションシリンダのばね定数を一時的に小さくすることができる(軟らかい特性へと変更できる)ので、衝撃を効果的に吸収することができる。さらに、段差に乗り上げていない車輪側に位置するサスペンションシリンダのばね定数を一時的に大きくすることができる(硬い特性へと変更できる)ので、伸長した状態のサスペンションシリンダを収縮しにくくすることができる。つまり、路面に対する左右サスペンションシリンダ9a,9bの追従性能を向上して、乗り心地性を向上することができる。
左右の車輪の一方が段差を乗り上げると、圧力の高いサスペンションシリンダに対応するアキュムレータは蓄圧され、圧力の低いサスペンションシリンダに対応するアキュムレータは放圧され、左右サスペンションシリンダの差圧ΔPが小さくなる。その結果、左右サスペンションシリンダ9a,9bの圧力差に起因して、左右サスペンションシリンダ9a,9bからフレーム2に入力される捩じり力を低減することができる。このため、上述した比較例では、大きな捩じり力に起因した損傷を防止するために車体を構成する部材に高い剛性を持たせる必要が生じるおそれがあったが、本実施の形態では高い剛性を持たせる必要が無い。その結果、本実施の形態では、車両の軽量化、低コスト化を図ることができる。
さらに、フレーム2は略水平状態に保たれるので、荷台1からの荷重も左右均等にフレーム2に伝わり、良好なバランス状態を維持することができる。
(2)上述したように、本実施の形態に係るサスペンション装置は、左右の車輪の一方が段差に乗り上げると、左右サスペンションシリンダ9a,9bに差圧ΔPが生じ、高圧側のサスペンションシリンダを軟化させることができる。しかし、この機能を有効にしたまま、ダンプトラックの旋回動作を行ってしまうと、平地であっても旋回外側のサスペンションシリンダが旋回内側のサスペンションシリンダに比べて高圧になり、収縮量が増加してしまう結果、車体ロール角度が大きくなってしまう。
そこで、本実施の形態では、上述したように、コントローラ32は、ダンプトラックが旋回動作中でないと判定された場合、パイロット圧遮断弁25を制御して、左サスペンションシリンダ9aと左パイロット油室81aとを連通し、かつ、右サスペンションシリンダ9bと右パイロット油室81bとを連通する(開位置(D)への切換制御)。コントローラ32は、ダンプトラックが旋回動作中であると判定された場合、パイロット圧遮断弁25を制御して、左サスペンションシリンダ9aと左パイロット油室81aとを遮断し、かつ、右サスペンションシリンダ9bと右パイロット油室81bとを遮断する(閉位置(C)への切換制御)。これにより、旋回動作におけるロール角度の増加を防ぎ、車体の安定性を確保することができる。
(3)コントローラ32は、角度センサ33で検出された操舵角が予め定められた閾値よりも大きい場合、ダンプトラックが旋回動作中であると判定する。操舵角を検出する角度センサ33は、通常、ダンプトラックに設けられているので、旋回動作を判定するための専用のセンサを設ける必要がない。
(4)サスペンション装置は、左パイロット油室81aの圧力が右パイロット油室81bの圧力よりも高いときに、左パイロット油室81aのオイルを右パイロット油室81bに供給する第1連通路91a,93bを備えている。サスペンション装置は、右パイロット油室81bの圧力が左パイロット油室81aの圧力よりも高いときに、右パイロット油室81bのオイルを左パイロット油室81aに供給する第2連通路91b,93aを備えている。
第1連通路93bには、第1連通路93bを開閉する右遮断スプール25bが設けられ、第2連通路93aには、第2連通路93aを開閉する左遮断スプール25aが設けられている。コントローラ32は、ダンプトラックが旋回動作中でないと判定された場合、第1連通路93bおよび第2連通路93aを閉じるように左右遮断スプール25a,25bを制御し、ダンプトラックが旋回動作中であると判定された場合、第1連通路93bおよび第2連通路93aを開くように左右遮断スプール25a,25bを制御する。スプール24aが中立位置(N1)にあるときには、スプール24aの受圧部242a,242bによって第1連通路91aおよび第2連通路91bのそれぞれが閉じられる。
このような構成とすることで、左右サスペンションシリンダ9a,9bに蓄圧開始閾値ΔP1よりも大きい差圧ΔPが発生している状態で、ダンプトラックが旋回動作したときに、蓄圧弁61のスプール24aを中立位置(N1)に復帰させることができる。これにより、旋回動作時におけるサスペンションシリンダのばね特性を維持させておくことができるので、旋回動作における車体の安定性を確保することができる。
(5)左強制放圧弁63aは、左アキュムレータ60aの圧力が左サスペンションシリンダ9aの圧力よりも高いときに、左アキュムレータ60aのオイルを左サスペンションシリンダ9aに供給する放圧油路70bに設けられ、放圧油路70bを開閉する。右強制放圧弁63bは、右アキュムレータ60bの圧力が右サスペンションシリンダ9bの圧力よりも高いときに、右アキュムレータ60bのオイルを右サスペンションシリンダ9bに供給する放圧油路71bに設けられ、放圧油路71bを開閉する。コントローラ32は、強制放圧スイッチ36から放圧指令が出力されると、左サスペンションシリンダ9aと左パイロット油室81aとを遮断し、かつ、右サスペンションシリンダ9bと右パイロット油室81bとを遮断するように、パイロット圧遮断弁25を制御し、かつ、放圧油路71aおよび放圧油路71bを開くように、左強制放圧弁63aおよび右強制放圧弁63bを制御する。
これにより、左右アキュムレータ60a,60bを強制的に放圧させて、左右サスペンションシリンダ9a,9bを初期状態に復帰させることができる。蓄圧弁61も中立位置(N1)に復帰させることができる。
(6)左右強制放圧弁63a,63bは、ソレノイドが消磁しているときには、開位置(E)に切り換えられる電磁切換弁である。パイロット圧遮断弁25は、ソレノイドが消磁しているときには、閉位置(C)に切り換えられる電磁切換弁である。このため、運転者がイグニッションスイッチをオフにして、エンジンを停止すると、上記(5)と同様に、蓄圧を禁止して、左右アキュムレータ60a,60bを強制的に放圧させることで、左右サスペンションシリンダ9a,9bを初期状態に復帰させることができる。蓄圧弁61も中立位置(N1)に復帰させることができる。エンジンを停止した後の無人状態において、サスペンション装置を通常に近い状態にすることができるので、無人状態時の安全性を確保することができる。
−第2の実施の形態−
図16および図17を参照して、第2の実施の形態に係るリジッドダンプトラックのサスペンション装置について説明する。図16は第2の実施の形態に係るコントローラ232の機能ブロック図である。図中、第1の実施の形態と同一または相当部分には同一符号を付し、相違点について主に説明する。
第1の実施の形態では、コントローラ32の旋回動作判定部32aが、角度センサ33で検出された操舵角の絶対値|θ|が予め定められた閾値θ0よりも大きい場合に、ダンプトラックが旋回動作中であると判定した例について説明した。これに対して、第2の実施の形態では、コントローラ232の旋回動作判定部232aが、車輪速センサ39a,39bで検出された左右の車輪速の差ΔVが予め定められた閾値ΔV0よりも大きい場合に、ダンプトラックが旋回動作中であると判定する。
第2の実施の形態に係るダンプトラックは、第1の実施の形態のダンプトラックと同様の構成を有している。第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第2の実施の形態に係るコントローラ232が、第1の実施の形態の旋回動作判定部32aに代えて、旋回動作判定部232aを機能的に備えている点である。
旋回動作判定部232aは、車輪速センサ39aで検出された左の前輪5aの車輪速VLと、車輪速センサ39bで検出された右の前輪5bの車輪速VRとの差(絶対値)ΔVを演算する(ΔV=|VR−VL|)。旋回動作判定部232aは、左右の車輪速の差ΔVに基づいて、ダンプトラックが旋回動作中であるか否かを判定する。
旋回動作判定部232aは、左右の車輪速の差ΔVが閾値ΔV0未満である場合(ΔV<V0)には、ダンプトラックは旋回動作中でないと判定し、左右の車輪速の差ΔVが閾値Δ0以上である場合(ΔV≧V0)には、ダンプトラックは旋回動作中であると判定する。閾値Δ0は、ダンプトラックが旋回動作中であるか否かを判定するために用いられるものであり、予めコントローラ232の記憶装置に記憶されている。
弁制御部32cは、第1の実施の形態と同様に、旋回動作判定部232aでダンプトラックが旋回動作中であると判定された場合、パイロット圧遮断弁25のソレノイドにOFF信号を出力する。弁制御部32cは、旋回動作判定部232aでダンプトラックが旋回動作中でないと判定された場合、パイロット圧遮断弁25のソレノイドにON信号を出力する。
図17は第2の実施の形態に係るコントローラ232によるパイロット圧遮断弁25の切換制御の処理内容を示すフローチャートである。図17は、第1の実施の形態で説明した図11(a)に相当する。図17は、図11(a)のフローチャートのステップS100およびステップS110に代えて、ステップS300,S305,S310を追加したフローチャートである。図17のフローチャートに示す処理は、図示しないイグニッションスイッチのONにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。
第2の実施の形態では、イグニッションスイッチがONされ、初期設定が行われると、ステップS300において、コントローラ232は、車輪速センサ39a,39bで検出された左右の車輪速の情報を取得して、ステップS305へ進む。
ステップS305において、コントローラ232は、ステップS300で取得した左右の車輪速の差ΔVを演算して、ステップS310へ進む。ステップS310において、コントローラ232は、ステップS305で演算した左右の車輪速の差ΔVに基づいて、旋回動作中であるか否かを判定する。ステップS310で肯定判定されるとステップS120へ進み、ステップS310で否定判定されるとステップS130へ進む。
このような第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
第1の実施の形態では、ステアリングホイール34の操舵角を検出する角度センサ33を設け、角度センサ33で検出された操舵角に基づいて、ダンプトラックが旋回動作中であるか否かを判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、操舵装置を構成する前輪の車軸の車輪操舵角を検出し、車輪操舵角に基づいて、旋回動作がなされているか否かを判定してもよい。
(変形例2)
上述した実施の形態では、ダンプトラックにおける後部のサスペンション装置(リアサスペンションシリンダを含むサスペンション装置)に本発明を適用する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ダンプトラックにおける前部のサスペンション装置(フロントサスペンションシリンダを含むサスペンション装置)に本発明を適用してもよいし、前部および後部のサスペンション装置の双方に本発明を適用してもよい。
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。