JP2017056522A - 研削ホイール及び研削方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂や金属等の被加工物の薄化を良好に行うことができ、研削砥石の形状悪化時に短時間で容易に研削性能を回復すること。【解決手段】研削ホイール(40)が、回転スピンドルに固定されるホイール基台(41)と、ホイール基台に固定された複数の研削砥石(50)と、研削砥石に研削水を供給する複数の研削水供給口(46)とを備え、複数の研削砥石が、研削ホイールから外方に向かって広がるように傾斜したセグメント砥石であり、ホイール基台に対して所定の間隔で環状に装着されており、複数の研削水供給口が、ホイール基台の内周壁において各研削砥石に対応して、各研削砥石と回転軸心とを結んだ線上に形成される構成にした。【選択図】図3
Description
本発明は、樹脂基板等の被加工物を研削する研削ホイール及び研削方法に関する。
通常、樹脂や金属等の靱性材料は、バイト切削装置において平坦化や薄化等の切削が実施される(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のバイト切削装置では、鉛直軸回りに回転するスピンドルのマウントにホイール基台が取り付けられ、ホイール基台の外周部分の一部にダイヤモンド刃や超鋼バイト等のバイト工具が固定されている。そして、バイト工具がスピンドルの鉛直軸回りに回転されることで、チャックテーブル上に保持された被加工物としての靱性材料がバイト工具の鋭角な切削刃によって削り取られて平坦化又は薄化される。
特許文献1に記載のバイト切削装置の研削ホイールでは、加工枚数を重ねていくとバイト工具の鋭角な切削刃の形状が徐々に崩れて加工品質が悪化してしまうため、定期的にバイト工具の形状修正を行う必要があった。しかしながら、ダイヤモンド刃や超鋼バイト等のバイト工具の形状修正には放電加工等の特殊な加工が必要であり、形状修正用の別の設備や多大な時間を要するという問題があった。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、切削刃として用いられる研削砥石を短時間で容易に形状修正することができる研削ホイール及び研削方法を提供することを目的とする。
本発明の研削ホイールは、樹脂基板を研削する研削ホイールであって、回転スピンドルに固定される固定部と自由端部とを有するホイール基台と、該自由端部に固定された複数の研削砥石と、該研削砥石に研削水を供給する研削水供給口と、から構成され、該研削砥石は、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドで結合したセグメント砥石であり、該自由端部側から下方に向かって外周端面が回転方向外側に広がるように傾斜した形状に形成され、該ホイール基台の該自由端部に所定の間隔で環状に複数装着され、該ホイール基台の内周壁には、各研削砥石に対応して、各研削砥石と回転軸心とを結んだ線上の各研削砥石近傍に複数の研削水供給口が形成されていること、を特徴とする。
この構成によれば、樹脂基板の表面に対して複数の研削砥石の外周端面のなす角度が鋭角に形成されており、複数の研削砥石が切削刃のように使用される。研削砥石の傾斜した外周端面を樹脂基板に作用させながら樹脂基板を研削することで、樹脂基板の薄化を良好に行うことができる。このとき、複数の研削砥石で樹脂基板が絶え間なく研削されるため、研削屑が細かくなって装置内に研削屑が詰まることがなく、排水トラブルを回避することができる。また、研削砥石の形状が悪化しても、ドレッサーボードによって研削砥石を形状修正することができる。よって、形状修正用の設備を新たに設けることなく短時間で容易に研削砥石を形状修正することができるため経済的である。さらに、各研削砥石に対して研削水供給口から研削水が供給されるため、研削中に各研削砥石で発生する摩擦熱が効果的に冷却される。
本発明の研削方法は、靱性材基板を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された靱性材基板を研削する上記の研削ホイールを回転可能に保持する回転スピンドルを備えた研削手段と、該研削手段と該チャックテーブルとを相対的に研削送り方向に接近及び離間させる研削送り手段と、該研削手段と該チャックテーブルとを相対的に該チャックテーブルの径方向に移動させる進退手段と、を備えた研削装置において該研削ホイールを使用して靱性材基板を研削する研削方法であって、回転する該研削ホイールを、該チャックテーブル上に保持した靱性材基板に対して相対的に水平移動させるクリープフィード研削によって靱性材基板を研削することを特徴とする。
本発明によれば、外周端面を傾斜させた複数の研削砥石で樹脂基板を研削することで、大きな研削屑を出すことなく樹脂基板を良好に薄化することができる。また、研削砥石の形状悪化時には短時間で容易に研削砥石を形状修正することができ、各研削砥石に対して研削水供給口から研削水が供給されることで、各研削砥石で発生する摩擦熱を効果的に冷却することができる。
以下、添付図面を参照して、本実施の形態の研削装置について説明する。図1は、本実施の形態の研削装置の斜視図である。図2は、本実施の形態の研削装置による研削加工を示す斜視図である。なお、本実施の形態の研削装置は、図1に示すように研削加工専用の装置構成に限定されず、例えば、研削加工、研磨加工、洗浄加工等の一連の加工が全自動で実施されるフルオートタイプの加工装置に組み込まれてもよい。
図1に示すように、研削装置1は、樹脂基板Wを保持したチャックテーブル15を低速でX軸方向に加工送りしながら、研削砥石50によって樹脂基板Wの上面をクリープフィード研削するように構成されている。また、研削装置1のチャックテーブル15には、樹脂基板Wの代わりに、定期的に整形ドレス及び目立てドレス用のドレッサーボードDが保持され、ドレッサーボードDがクリープフィード研削されることで研削砥石50がドレス加工される。なお、本実施の形態では、被加工物として樹脂基板Wを例示するが、被加工物は金属基板等の他の靱性材料で形成された靱性材基板でもよい。
研削装置1の基台10の上面には、X軸方向に延在する矩形状の開口が形成され、この開口はチャックテーブル15と共に移動可能な移動板16及び蛇腹状の防水カバー17により覆われている。防水カバー17の下方には、チャックテーブル15を径方向(X軸方向)に移動させるボールねじ式の進退手段20が設けられている。チャックテーブル15の表面には、多孔質のポーラス材によって樹脂基板Wを吸着する保持面18が形成されている。保持面18は、チャックテーブル15内の流路を通じて吸引源(不図示)に接続されており、保持面18に生じる負圧によって樹脂基板Wが吸引保持される。
基台10上のコラム11には、研削手段30をチャックテーブル15に対して研削送り方向(Z軸方向)に接近及び離間させる研削送り手段25が設けられている。研削送り手段25は、コラム11に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール26と、一対のガイドレール26にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル27とを有している。Z軸テーブル27の背面側には図示しないナット部が形成され、これらナット部にボールネジ28が螺合されている。ボールネジ28の一端部に連結された駆動モータ29によりボールネジ28が回転駆動されることで、研削手段30がガイドレール26に沿ってZ軸方向に移動される。
研削手段30は、ハウジング31を介してZ軸テーブル27の前面に取り付けられており、円筒状の回転スピンドル32の下端にマウント33を設けて構成されている。回転スピンドル32にはフランジ34が設けられ、フランジ34を介してハウジング31に研削手段30が支持される。マウント33の下面には、複数の研削砥石50が環状に配置された研削ホイール40が保持されている。各研削砥石50は、例えば、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドで結合したセグメント砥石で構成される。なお、研削ホイール40及び研削砥石50の詳細構成については後述する。
図2に示すように、このように構成された研削装置1では、回転スピンドル32によって研削ホイール40がZ軸回りに回転されながら、研削手段30がチャックテーブル15に近づけられる。そして、樹脂基板Wに向けて研削水が供給され、複数の研削砥石50が樹脂基板Wに回転接触されることで、各研削砥石50と樹脂基板Wとが相対的に摺動されて樹脂基板Wが研削される。この複数の研削砥石50によって樹脂基板Wが研削された状態で、チャックテーブル15がX軸方向に低速で水平移動されることで、研削砥石50によって樹脂基板Wがクリープフィード研削される。
ところで、一般に靱性材料の樹脂基板Wは、ダイヤモンド刃や超鋼バイト等のバイト工具で切削加工することが好ましいが、バイト工具が摩耗すると形状修正するのに時間や専用の設備が必要になる。このため、本実施の形態の研削ホイール40では、研削砥石50にバイト工具のような切削刃を形成することで、樹脂基板Wを薄化し易くしている。また、研削砥石50が摩耗した場合には、樹脂基板Wの代わりにドレッサーボードD(図1参照)をチャックテーブル15に保持させることで、研削装置1での研削砥石50の形状修正を可能にしている。
また、従来のバイト切削装置のバイト工具を用いた切削加工では、マウントの外周に固定された単一のバイト工具で樹脂基板Wが切削され、加工屑がシート状になって排水トラブルを起こす可能性がある。このため、本実施の形態の研削ホイール40では、複数の研削砥石50によって絶え間なく樹脂基板Wを研削して研削屑を細かくしている。さらに、本実施の形態の研削ホイール40では、各研削砥石50に対応した位置に、研削砥石50に研削水を供給する研削水供給口46(図3B参照)を形成して、研削砥石50による研削時に発生する摩擦熱を効果的に冷却するようにしている。
以下、図3を参照して、研削ホイールについて説明する。図3は、本実施の形態の研削ホイールの斜視図である。図4は、比較例の研削ホイールの斜視図である。なお、図3Aは研削ホイールを斜め上方から見た斜視図、図3Bは研削ホイールを背面側から見た斜視図を示している。
図3Aに示すように、研削ホイール40は、リング状のホイール基台41に複数の研削砥石50を設けて構成される。ホイール基台41の上面はマウント33を介して回転スピンドル32(図2参照)に固定される固定部42になっており、ホイール基台41の下面は自由端部43になっている。自由端部43には複数の研削砥石50が所定の間隔で環状に装着されている。各研削砥石50は、側面視略平行四辺形のセグメント砥石で構成されている。この場合、各研削砥石50の外周側の外周端面54が、ホイール基台41の自由端部43から下方に向かって回転方向外側、すなわちホイール基台41の側面から外方に広がる(張り出す)ように傾斜している。
また、各研削砥石50は、上記したようにダイヤモンド砥粒をメタルボンドで結合(焼結)して形成されている。メタルボンドで結合した研削砥石50は硬度が高く、研削砥石50をバイト切削的に使用して樹脂基板Wを加工しても形状が維持し易い。また、一般的な研削砥石と同じように、チャックテーブル15(図1参照)上のドレッサーボードD(図1参照)を用いて形状修正することが可能になっている。なお、本実施の形態では、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドで結合した研削砥石50を例示したが、加工中に研削砥石50の形状が維持できるのであれば、研削砥石50はレジンボンドやビトリファイドボンド等の他のボンド剤や他の砥粒で構成されていてもよい。
図3Bに示すように、ホイール基台41には、複数の研削砥石50が所定の間隔を空けて環状に並んでいる。各研削砥石50の横幅51は、一般的な研削砥石よりも幅が狭く形成されており、例えば、隣接する研削砥石50同士の間隔よりも狭く形成されている。このため、各研削砥石50と樹脂基板W(図1参照)の接触面積が小さくなって摩擦熱が低減されると共に、研削水で冷却し易くなっている。また、研削砥石50の横幅51が小さくなった分だけ、ホイール基台41に多数の研削砥石50が配置される。多数の研削砥石50によって樹脂基板Wを研削することで、樹脂基板Wの研削屑を細かくすることができる。
また、ホイール基台41の内周壁45には、各研削砥石50に対応して、各研削砥石50と回転軸心とを結んだ線L上で、各研削砥石50の近傍に複数の研削水供給口46が形成されている。すなわち、ホイール基台41の外周壁47に固定された各研削砥石50の横幅方向の中心位置P1と、ホイール基台41の内周壁45に形成された各研削水供給口46の中心位置P2とが、回転軸心から径方向に延びる線L上に位置している。このため、研削水供給口46から供給された研削水が、研削時の遠心力を受けて研削砥石50に向かって流れるため、研削砥石50を良好に冷却することができる。
これに対し、図4に示すような、比較例のホイール基台61の内周壁65には、各研削砥石68と回転軸心とを結んだ線L上から外れた位置に、複数の研削水供給口66が形成されている。すなわち、ホイール基台61の外周壁67に固定された各研削砥石68の横幅方向の中心位置P1と、ホイール基台61の内周壁65に形成された各研削水供給口66の中心位置P2とが周方向に位置ズレしている。このため、研削水供給口66から供給された研削水が、研削時の遠心力を受けて隣り合う研削砥石68の間から出ていくため、研削水が研削砥石68に十分に当たらず、研削砥石68を良好に冷却することができない。
比較例の研削ホイール60を用いて樹脂基板Wを研削し続けると、樹脂基板Wの研削時の摩擦熱によって、樹脂基板Wの一部が溶けて研削砥石68に付着してしまう。この場合、研削砥石68に付着した樹脂69が研削時に悪影響を及ぼして、研削後の樹脂基板Wの外観を悪化させてしまう。このように、多数の研削砥石68を用いて樹脂基板Wを研削する場合には、研削砥石68の横幅63を狭くして冷却したとしても、研削砥石68と回転軸心とを結ぶ線L上に研削水供給口66がなければ、研削水によって研削砥石68を十分に冷却することができない。
なお、本件発明者が、本実施の形態の研削ホイール40の研削砥石50に対して一つ置きに研削水供給口46を形成して樹脂基板Wを研削したところ、研削砥石50に樹脂の付着が見られなかった。これは、研削水供給口46から研削砥石50に研削水が当たることで、研削水供給口46に対応していない隣の研削砥石50に研削水が向かう流れが作られたからだと考えられる。したがって、研削砥石50に対応して、研削砥石50と回転軸心とを結んだ線L上で、研削砥石50の近傍に複数の研削水供給口46が形成されていれば、必ずしも全ての研削砥石50に対応して研削水供給口46が形成される必要はない。
次に、図5から図7を参照して、研削ホイールを用いた研削加工について説明する。図5は、本実施の形態の研削砥石による研削加工の説明図である。図6は、本実施の形態の研削砥石の形状変化の説明図である。図7は、樹脂基板の研削屑を示す写真である。なお、図5Aは本実施の形態の研削ホイールを用いた研削加工、図5Bは他の比較例の研削ホイールを用いた研削加工を示している。図7Aは多数の研削砥石による樹脂基板の研削屑、図7Bは単一の研削砥石による樹脂基板の研削屑を示している。
図5Aに示すように、樹脂基板Wの表面に対して研削砥石50の外周端面54のなす角度が鋭角になるように、外周端面54と底面52との角部53が形成されている。クリープフィード研削では、この研削砥石50が回転スピンドル32(図2参照)の回転軸を中心に周回され、研削砥石50に対してチャックテーブル15(図1参照)上の樹脂基板WがX軸方向に水平移動される。そして、研削砥石50の回転方向前方側の側面55(図3A参照)と外周端面54によって樹脂基板Wが周方向(紙面奥方)に削られつつ、X軸方向に掘り進められることで樹脂基板Wが研削される。
このとき、研削砥石50の外周端面54が傾斜しているため、樹脂基板Wの研削時に研削砥石50に生じる研削抵抗が小さくなっている。すなわち、傾斜した外周端面54に対する垂直方向に反力が作用するため、研削砥石50に対する反力の水平方向(X軸方向)成分が小さくなる。このため、研削後の樹脂基板Wの被研削面は、摩擦によって白化せずに良好な外観性が得られる。このように、研削砥石50の底面52に対して鋭角に外周端面54が傾斜することで、研削砥石50をバイト切削的に使用して樹脂基板Wを良好に研削することが可能になっている。
一方、図5Bに示すように、他の比較例の側面視長方形の研削砥石70は、外周端面71と底面72のなす角が直角であり、本実施の形態の研削砥石50のように鋭角に形成されていない。このため、比較例の研削砥石70では、外周端面71に対して水平方向(X軸方向)に大きな反力が作用し、樹脂基板Wの研削時に研削砥石70に生じる研削抵抗が大きくなる。このため、研削後の樹脂基板Wの被研削面が摩擦によって部分的に白化して、被研削面に濃い濃淡が生じて外観性が悪くなる。このように、他の比較例の研削砥石70では、樹脂基板Wを良好に研削することができない。
また、図6の図示左側に示すように、本実施の形態の研削砥石50は、外周端面54と底面52との角部53が鋭角に形成されている。この外周端面54と底面52の角部53が樹脂基板Wの研削に寄与しているため、図6の図示中央に示すように、経時的な摩耗によって研削砥石50の形状が崩れ始め、角部53から稜線が無くなって丸みを帯びてしまう。この場合、図5の図示右側に示すように、樹脂基板Wの代わりに研削砥石50でドレッサーボードDをクリープフィード研削することで研削砥石50が底面52側から削り取られる。これにより、外周端面54と底面52との角部53が鋭角に形状修正される。
このように、本実施の形態に係る研削ホイール40(図3参照)では、全ての研削砥石50をドレッサーボードDによって一度に形状修正することができる。よって、バイト工具の形状修正のような特別な設備が不要であり、短時間で形状修正することができる。なお、ドレッサーボードDは、グリーンカーバイト(GC)系、ホワイトアランダム(WA)系の砥粒をレジンボンド等のボンド剤で円板状に固めて成形されている。ドレッサーボードDに研削砥石50を切り込ませることで、研削砥石50に対する整形ドレスや目立てドレスが実施される。また、ドレッサーボードDは、チャックテーブル15(図1参照)に保持させ易いように樹脂基板Wと略同径に形成されている。
続いて、樹脂基板Wの研削屑について説明する。図7Aに示すように、本件発明者が複数の研削砥石50(図3A参照)を備えた研削ホイール40(図3A参照)で樹脂基板Wを研削したところ、粉状の研削屑が得られた。これは、複数の研削砥石50が間を空けずに樹脂基板Wを研削し続けるからであると考えられる。よって、粉状の研削屑が研削装置1(図1参照)内に詰まることがなく、排水トラブルが生じることがない。これに対し、図7Bに示すように、本件発明者が単一の研削砥石50を備えた研削ホイール(不図示)で樹脂基板Wを研削したところ、シート状の研削屑が確認された。このように、複数の研削砥石50で研削することで研削屑が細かくなっている。
図8を参照して研削動作及びドレス加工について説明する。図8は、本実施の形態の研削動作及びドレス加工の説明図である。図8A及び図8Bは樹脂基板に対する研削動作を示し、図8C及び図8Dは研削砥石に対するドレス加工を示している。なお、図8に示す研削動作及びドレス加工は一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
図8Aに示すように、樹脂基板Wがチャックテーブル15の中心に保持されており、研削砥石50が樹脂基板Wの外縁よりも外側に位置付けられる。回転スピンドル32の回転軸を中心として研削砥石50が高速で周回されながら所定の切り込み深さまで降ろされ、研削砥石50に対してチャックテーブル15が相対的に水平移動される。これにより、複数の研削手段30によって樹脂基板Wの一端56側から他端57側に向かってクリープフィード研削が開始される。クリープフィード研削では、X軸方向に送られながら、研削砥石50の回転方向前方側の側面55と外周端面54によって樹脂基板Wの表面が円弧状に削り取られる。
このとき、図8Bに示すように、研削砥石50の外周端面54が底面52に対して鋭角に傾斜しているため、樹脂基板WがX軸方向に送られる際に樹脂基板Wに対して角部53が進み易くなっている。このため、樹脂基板Wの研削時の研削砥石50の研削抵抗が小さくなり、樹脂基板Wの被研削面の色に濃い濃淡が生じて外観性が悪化することがない。また、複数の研削砥石50によって樹脂基板Wが研削されるため、研削屑が粉状になって装置内の排水口に研削屑が堆積することがない。さらに、各研削砥石50に対応して研削水供給口46(図3参照)が形成されているため、研削中の研削砥石50による摩擦熱を抑えることができる。
図8Cに示すように、樹脂基板Wのクリープフィード研削によって各研削砥石50の角部53(図8D参照)が摩耗すると、樹脂基板Wの代わりにドレッサーボードDがチャックテーブル15上に保持される。また、樹脂基板Wと同様にドレッサーボードDに対してクリープフィード研削が、ドレッサーボードDの一端58側から他端59側に向かって開始される。クリープフィード研削では、複数の研削砥石50がドレッサーボードDに押し当てられながら、ドレッサーボードDがX軸方向に加工送りされ、全ての研削砥石50がドレッサーボードDによって一度にドレスされる。
図8Dに示すように、ドレッサーボードDによって研削砥石50の底面52がドレスされることで、各研削砥石50の外周端面54と底面52との角部53から丸みが取り除かれる。これにより、全ての研削砥石50の外周端面54と底面52との角部が鋭角に形状修正され、各研削砥石50の研削性能が回復される。このように、研削砥石50をバイト工具のような形状にしたことで、バイト工具のように樹脂基板Wに対する研削性能を高めると共に、ドレッサーボードDによって形状修正を容易にしている。
(実験例)
以下、実験例について説明する。実験例では、研削砥石の刃幅及び個数を変えた研削ホイールを用いて評価ワークを研削し、評価ワークの研削面の状態を確認した。研削砥石の個数は刃幅を変化させた場合であっても、評価ワークとの接触面積が同等になるように設定した。研削ホイールとしては、ホイール径200mmのホイール基台に同一粒径のメタルボンド砥石を装着したものを用い、評価ワークとしては、130×130mmの樹脂基板を用いた。また、加工条件としては下記の加工条件で実施した。
スピンドル回転数:6000[rpm]
送り速度:10[mm/sec]
加工枚数:10[枚]
以下、実験例について説明する。実験例では、研削砥石の刃幅及び個数を変えた研削ホイールを用いて評価ワークを研削し、評価ワークの研削面の状態を確認した。研削砥石の個数は刃幅を変化させた場合であっても、評価ワークとの接触面積が同等になるように設定した。研削ホイールとしては、ホイール径200mmのホイール基台に同一粒径のメタルボンド砥石を装着したものを用い、評価ワークとしては、130×130mmの樹脂基板を用いた。また、加工条件としては下記の加工条件で実施した。
スピンドル回転数:6000[rpm]
送り速度:10[mm/sec]
加工枚数:10[枚]
この結果、下記表1に示すような結果が得られた。
No.1は、研削砥石の刃先の外周端面のみが研削に寄与しており、樹脂基板に若干粗い研削面が確認された。No.9は研削力が不足しており、樹脂基板に粗い研削面が確認された。No.2−8は樹脂基板に良好な研削面が確認された。このため、研削砥石の刃幅は3−8[mm]が好ましく、さらに4−6[mm]が好ましい。言い換えれば、図9に示すように、ホイール基台41の中心O(回転中心)から研削砥石50の刃幅方向の両端A、Bを結ぶ直線OA、OBがなす角度θの範囲は、1.7°−4.6°であることが好ましく、さらに2.3°−3.4°がさらに好ましい。このとき、刃幅は、ホイール基台41の外周縁弧から刃(セグメント)の外周縁が突出せず、研削力も十分な幅となる。なお、ホイール基台41のホイール径を200mmから100mmや300mmに変更した場合、これに比例して最良となる刃幅が変化した。また、刃幅は研削結果に寄与するが、刃数については増加させると砥石のライフが向上し、研削屑が細かくなる傾向が見られた。
以上のように、本実施の形態に係る研削ホイール40では、樹脂基板Wの表面に対して複数の研削砥石50の外周端面54のなす角度が鋭角に形成されており、複数の研削砥石50が切削刃のように使用される。研削砥石50の傾斜した外周端面54を樹脂基板Wに作用させながら樹脂基板Wを研削することで、樹脂基板Wの薄化を良好に行うことができる。このとき、複数の研削砥石50で樹脂基板Wが絶え間なく研削されるため、研削屑が細かくなって装置内に研削屑が詰まることがなく、排水トラブルを回避することができる。また、研削砥石50の形状が悪化しても、ドレッサーボードDによって研削砥石50を形状修正することができる。よって、形状修正用の設備を新たに設けることなく短時間で容易に研削砥石50を形状修正することができるため経済的である。さらに、各研削砥石50に対して研削水供給口46から研削水が供給されるため、研削中に各研削砥石50で発生する摩擦熱が効果的に冷却される。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
例えば、上記した実施の形態において、複数の研削砥石50が側面視略平行四辺形のセグメント砥石で構成されたが、この構成に限定されない。各研削砥石50は、ホイール基台41の自由端部43から下方に向かって回転方向外側に広がる(張り出す)ような外周端面54を有していればよく、例えば、研削砥石50が側面視略台形のセグメント砥石で構成されていてもよい。
また、上記した実施の形態において、研削送り手段25は、チャックテーブル15に対して研削手段30を動かして、チャックテーブル15と研削手段30とを研削送り方向に接近及び離間させる構成にしたが、この構成に限定されない。研削送り手段25は、研削手段30とチャックテーブル15とを相対的に研削送り方向に接近及び離間させる構成であればよく、例えば、研削手段30に対してチャックテーブル15を動かして、チャックテーブル15と研削手段30とを研削送り方向に接近及び離間させてもよい。
また、上記した実施の形態において、進退手段20は、研削手段30に対してチャックテーブル15を径方向に動かす構成にしたが、この構成に限定されない。進退手段20は、研削手段30とチャックテーブル15とを相対的にチャックテーブル15の径方向に移動させる構成であればよく、例えば、チャックテーブル15に対して研削手段30をチャックテーブル15の径方向に移動させてもよい。
また、上記した実施の形態において、研削ホイール40がクリープフィード研削に使用される構成について説明したが、この構成に限定されない。研削ホイール40がインフィード研削に使用されてもよい。
以上説明したように、本発明は、切削刃として用いられる研削砥石を短時間で容易に形状修正することができるという効果を有し、特に樹脂や金属等の靱性材で形成された被加工物を研削する研削方法に有用である。
1 研削装置
15 チャックテーブル
20 進退手段
25 研削送り手段
30 研削手段
32 回転スピンドル
40 研削ホイール
41 ホイール基台
42 固定部
43 自由端部
45 内周壁
46 研削水供給口
50 研削砥石
54 外周端面
W 樹脂基板(靱性材基板)
15 チャックテーブル
20 進退手段
25 研削送り手段
30 研削手段
32 回転スピンドル
40 研削ホイール
41 ホイール基台
42 固定部
43 自由端部
45 内周壁
46 研削水供給口
50 研削砥石
54 外周端面
W 樹脂基板(靱性材基板)
Claims (2)
- 樹脂基板を研削する研削ホイールであって、
回転スピンドルに固定される固定部と自由端部とを有するホイール基台と、該自由端部に固定された複数の研削砥石と、該研削砥石に研削水を供給する研削水供給口と、から構成され、
該研削砥石は、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドで結合したセグメント砥石であり、該自由端部側から下方に向かって外周端面が回転方向外側に広がるように傾斜した形状に形成され、該ホイール基台の該自由端部に所定の間隔で環状に複数装着され、
該ホイール基台の内周壁には、各研削砥石に対応して、各研削砥石と回転軸心とを結んだ線上の各研削砥石近傍に複数の研削水供給口が形成されていること、を特徴とする研削ホイール。 - 靱性材基板を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された靱性材基板を研削する請求項1記載の研削ホイールを回転可能に保持する回転スピンドルを備えた研削手段と、該研削手段と該チャックテーブルとを相対的に研削送り方向に接近及び離間させる研削送り手段と、該研削手段と該チャックテーブルとを相対的に該チャックテーブルの径方向に移動させる進退手段と、を備えた研削装置において該研削ホイールを使用して靱性材基板を研削する研削方法であって、
回転する該研削ホイールを、該チャックテーブル上に保持した靱性材基板に対して相対的に水平移動させるクリープフィード研削によって靱性材基板を研削することを特徴とする研削方法。
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