JP2017043702A - 硬化性樹脂組成物、硬化物、光学部材、レンズ及びカメラモジュール - Google Patents

硬化性樹脂組成物、硬化物、光学部材、レンズ及びカメラモジュール Download PDF

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Abstract

【課題】得られる硬化物が高い透明性、高い屈折率及び高いガラス転移点を有し、リフロー処理による黄変が少ない硬化性樹脂組成物を提供する。【解決手段】特定の構造を有するフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート(A)、前記(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリル系重合性単量体(B)、23℃で液体の有機硫黄化合物(C)、23℃で液体のホスファイト化合物(D)、および重合開始剤(E)を含有する硬化性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、硬化性樹脂組成物、硬化物、光学部材、レンズ及びカメラモジュールに関する。
近年、カメラモジュールの表面実装化を達成するために、耐リフロー性を有する樹脂製レンズの検討が行われている。耐リフロー性を有する高屈折率レンズ材料の1つとして、フルオレン系ジ(メタ)アクリレートを含有する硬化性組成物が検討されている。
例えば、特許文献1には、フルオレン系ジ(メタ)アクリレート、ビフェニル骨格を有する(メタ)アクリレート、チオエーテル化合物および光重合開始剤を含有する感光性組成物が、撮像素子用のレンズ材料として有用であることが開示されている。特許文献1によれば、該組成物を光硬化した成形品は、リフロー処理を実施した後も高い透過率を維持できるとしている。
特許文献2には、フルオレン系ジ(メタ)アクリレート、ビニル基および(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも1つ有し、フルオレン環を有さない化合物、チオール化合物およびラジカル重合開始剤を含有する硬化性組成物が、撮像用レンズなどの光学部材の材料として好適であることが開示されている。特許文献2によれば、該硬化性組成物を硬化して得られる硬化樹脂は、リフロー方式によるハンダ付け等の高温条件下においても黄変しにくいとしている。
特開2013−241554号公報 国際公開第2012/020659号
しかしながら、特許文献1および2に記載の材料は、リフロー処理によって生じる黄変の抑制が不十分であるため、更なる改善が求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、得られる硬化物が高い透明性、高い屈折率及び高いガラス転移点を有し、リフロー処理による黄変が少ない硬化性樹脂組成物とその硬化物、その硬化物を含むレンズ等の光学部材、並びに該レンズを含むカメラモジュールを提供することを目的とする。
本発明は以下の[1]〜[6]である。
[1]下記式(1)で示されるフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート(A)、前記(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリル系重合性単量体(B)、23℃で液体の有機硫黄化合物(C)、23℃で液体のホスファイト化合物(D)、および重合開始剤(E)を含有する硬化性樹脂組成物。
Figure 2017043702
(式(1)中、R1、R2、R3およびR4は各々独立に、水素原子またはメチル基であり、mは0〜5の整数を示し、nは0〜5の整数を示す。)。
[2]前記(メタ)アクリレート(A)と前記(メタ)アクリル系重合性単量体(B)の総量100質量%に対して、前記(メタ)アクリレート(A)が55〜95質量%、前記(メタ)アクリル系重合性単量体(B)が5〜45質量%である[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[3][1]または[2]に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
[4][3]に記載の硬化物を含む光学部材。
[5][3]に記載の硬化物を含むレンズ。
[6][5]に記載のレンズを含むカメラモジュール。
本発明によれば、得られる硬化物が高い透明性、高い屈折率及び高いガラス転移点を有し、リフロー処理による黄変が少ない硬化性樹脂組成物とその硬化物、その硬化物を含むレンズ等の光学部材、並びに該レンズを含むカメラモジュールを提供できる。
本発明に係るカメラモジュールの一実施形態を示す断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの総称である。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称であり、CH2=C(R)−C(=O)−(Rは水素原子またはメチル基を示す。]で表される。
[硬化性樹脂組成物]
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、下記式(1)で示されるフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート(A)(以下、(A)成分とも記す。)、前記(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリル系重合性単量体(B)(以下、(B)成分とも記す。)、23℃で液体の有機硫黄化合物(C)(以下、(C)成分とも記す。)、23℃で液体のホスファイト化合物(D)(以下、(D)成分とも記す。)、および重合開始剤(E)(以下、(E)成分とも記す。)を含有する。
Figure 2017043702
前記式(1)中、R1、R2、R3およびR4は各々独立に、水素原子またはメチル基であり、mは0〜5の整数を示し、nは0〜5の整数を示す。
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、さらに、その他のラジカル重合性単量体成分などを含有してもよい。
((A)成分)
(A)成分は、前記式(1)で示されるフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートであり、ラジカル重合性単量体である。(A)成分は、硬化物の屈折率やガラス転移点を高め、リフロー処理による黄変を少なくすることができる。
前記式(1)において、R1、R2、R3およびR4は各々独立に、水素原子またはメチル基である。硬化物の耐熱安定性が高まる観点から、R1及びR4は水素原子が好ましい。また、硬化物の屈折率がより高まる観点から、R2及びR3は水素原子が好ましい。すなわち、R1からR4は全て水素原子であることが好ましい。
前記式(1)において、mは0〜5の整数を示し、nは0〜5の整数を示す。m及びnがそれぞれ5以下の整数であることにより、硬化物の屈折率やガラス転移点が高くなる。硬化性樹脂組成物の粘度が成形に適した値となり、成形性が向上することから、m及びnはそれぞれ0〜4の整数が好ましく、それぞれ1〜3の整数がより好ましく、それぞれ1〜2の整数がさらに好ましい。
(A)成分としては市販品を用いることができる。例えば、R1、R2、R3およびR4がいずれも水素原子であり、m及びnがいずれも1の化合物である、オグソールEA−0200(商品名、大阪ガスケミカル株式会社社製)、NKエステルA−BPEF(商品名、新中村化学工業株式会社製)などが挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
(A)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の総量100質量%に対して、55〜95質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましく、65〜85質量%であることがさらに好ましく、65〜80質量%であることが特に好ましい。(A)成分の含有量が55質量%以上であることにより、硬化物の屈折率及びガラス転移点を高くすることができる。また、リフロー処理による黄変を少なくすることができる。また、(A)成分の含有量が95質量%以下であることにより、硬化性樹脂組成物の粘度を低くすることができる。
((B)成分)
(B)成分は、前記(A)成分以外の(メタ)アクリル系重合性単量体であり、ラジカル重合性単量体である。(B)成分は、硬化性樹脂組成物を成形に適した粘度とすることができる。
(B)成分としては、前記(A)成分以外の、単官能の(メタ)アクリルモノマー、多官能の(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。
単官能の(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル等のカルボキシル基を含有する(メタ)アクリルモノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を含有する(メタ)アクリルモノマー;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、(1−ナフチル)メチル(メタ)アクリレート等の芳香環構造を含有する(メタ)アクリルモノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のヘテロ環構造を含有する(メタ)アクリルモノマー;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイルモルフォリンなどが挙げられる。これらの単官能の(メタ)アクリルモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多官能の(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能の(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能の(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能の(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能の(メタ)アクリルモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、硬化性樹脂組成物の粘度が成形に適した値となり、成形性が向上することから、単官能の(メタ)アクリルモノマーが好ましい。また、硬化物の屈折率を高くできる点から、芳香環構造を含有する単官能の(メタ)アクリルモノマーがより好ましい。さらに、ガラス転移点を高くできる点から、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
(B)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の総量100質量%に対して、5〜45質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、15〜35質量%であることがさらに好ましく、20〜35質量%であることが特に好ましい。(B)成分の含有量が5質量%以上であることにより、(A)成分の含有量が少なくなるため、硬化性樹脂組成物の粘度を低くすることができる。また、(B)成分の含有量が45質量%以下であることにより、(A)成分の含有量を多くすることができるため、硬化物の屈折率及びガラス転移点を高くすることができる。
((C)成分)
(C)成分は、23℃で液体の有機硫黄化合物である。(C)成分は、硬化物のリフロー処理による黄変を少なくすることができる。また、(C)成分は23℃で液体であることにより、(A)成分および(B)成分との相溶性が良好となり、硬化物の透明性を向上させることができる。なお、有機硫黄化合物が23℃で、流動性を有し、外観が透明である場合、液体であると判断する。
(C)成分としては、例えば、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジペンチルスルフィド、ジヘキシルスルフィド、チオジプロピオン酸ジトリデシル、ビス[3−(ドデシルチオ)プロパン酸]チオビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−5−メチル−4,1−フェニレン]などのスルフィド化合物;ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、ジブチルジスルフィド、ジペンチルジスルフィド、ジヘキシルジスルフィドなどのジスルフィド化合物;1−ブタンチオール、1−ペンタンチオール、1−ヘキサンチオール、1−ヘプタンチオール、1−オクタンチオール、1−ノナンチオール、1−デカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール等、分子中に1つのチオール基を有する単官能チオール化合物;1,4−ビス(3−メルカプトプロピオニルオキシ)ブタン、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、トリス−[(3−メルカプトブチリルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)等、分子中に複数のチオール基を有する多官能チオール化合物等が挙げられる。これらの(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、硬化物のガラス転移点を高くできることから、スルフィド化合物又は多官能チオール化合物が好ましい。また、硬化物の透明性を向上させることができることから、スルフィド化合物がより好ましい。さらに、硬化物のリフロー処理による黄変を特に少なくすることができることから、ジヘキシルスルフィド又はチオジプロピオン酸ジトリデシルがさらに好ましい。
(C)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の総量100質量部に対して、0.05〜5質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部であることがより好ましく、0.2〜2質量部であることがさらに好ましく、0.5〜1.5質量部であることが特に好ましい。(C)成分の含有量が0.05質量部以上であることにより、硬化物のリフロー処理による黄変を少なくすることができる。また、(C)成分の含有量が5質量部以下であることにより、硬化物の屈折率及びガラス転移点を高くすることができる。
((D)成分)
(D)成分は、23℃で液体のホスファイト化合物である。(D)成分は、硬化物のリフロー処理による黄変を少なくすることができる。また、(D)成分は23℃で液体であることにより、(A)成分および(B)成分との相溶性が良好となり、硬化物の透明性を向上させることができる。なお、ホスファイト化合物が23℃で流動性を有し、外観が透明である場合、液体であると判断する。
(D)成分としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラ(C12〜15アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト等の芳香環構造を有するホスファイト化合物;トリエチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2−エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の芳香環構造を有さないホスファイト化合物が挙げられる。これらの(D)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、硬化物のリフロー処理による黄変を特に少なくすることができることから、芳香環構造を有さないホスファイト化合物が好ましい。また、硬化物の透明性を向上させることができることから、アルキル基の炭素数の合計が15〜45である、芳香環構造を有さないアルキル基を有するホスファイト化合物がより好ましい。さらに、硬化物のガラス転移点を高くすることができることから、トリデシルホスファイトがさらに好ましい。
(D)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の総量100質量部に対して、0.05〜5質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部であることがより好ましく、0.2〜2質量部であることがさらに好ましく、0.5〜1.5質量部であることが特に好ましい。(D)成分の含有量が0.05質量部以上であることにより、硬化物のリフロー処理による黄変を少なくすることができる。また、(D)成分の含有量が5質量部以下であることにより、硬化物の屈折率及びガラス転移点を高くすることができる。
((E)成分)
(E)成分としてはラジカル重合開始剤が挙げられ、例えば光重合開始剤、熱重合開始剤、レドックス重合に用いられる過酸化物などが挙げられる。(E)成分の種類は重合方法に応じて適宜選択することができる。
光重合開始剤は光重合に用いられるラジカル重合開始剤である。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン型化合物;t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン等のアントラキノン型化合物;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン等のアルキルフェノン型化合物;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン型化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド型化合物;フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等のフェニルグリオキシレート型化合物などが挙げられる。これらの中でも、硬化物の着色を抑制できる点で、アルキルフェノン型化合物が好ましく、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンがより好ましい。また、硬化物の内部まで十分に硬化されやすくなる点で、アシルフォスフィンオキサイド型化合物が好ましく、硬化物の着色を抑制できる点で、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドがより好ましい。これらの光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱重合開始剤は熱重合に用いられるラジカル重合開始剤である。熱重合開始剤としては例えば有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール;1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等のパーオキシエステルなどが挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリック酸、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライドなどが挙げられる。
これらの熱重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱重合開始剤としては、硬化物に気泡が生じにくい点で、有機過酸化物が好ましい。硬化性樹脂組成物の硬化時間とポットライフとのバランスを考慮すると、有機過酸化物の10時間半減期温度は35〜80℃が好ましく、より好ましくは40〜75℃であり、さらに好ましくは45〜70℃である。10時間半減期温度が35℃以上であれば、常温で硬化性樹脂組成物がゲル化しにくくなり、ポットライフが良好となる。一方、10時間半減期温度が80℃以下であれば、硬化性樹脂組成物の硬化時間を短縮できる。このような有機過酸化物としては、例えば1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどが挙げられる。1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの市販品としては、例えばパーオクタO(商品名、日油株式会社製、10時間半減期温度:65.3℃)等が挙げられる。t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの市販品としては、例えばパーブチルO(商品名、日油株式会社製、10時間半減期温度:72.1℃)等が挙げられる。ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートの市販品としては、例えばパーロイルTCP(商品名、日油株式会社製、10時間半減期温度:40.8℃)等が挙げられる。
レドックス重合に用いられる過酸化物としては、例えばジベンゾイルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。これらの過酸化物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、レドックス重合には、通常、レドックス系重合開始剤が用いられる。レドックス系重合開始剤は、過酸化物と還元剤とを併用した重合開始剤である。上述した過酸化物をレドックス系重合開始剤として使用する場合、還元剤との組み合わせの一例は以下の通りである。
(1)ジベンゾイルパーオキサイド(過酸化物)と、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン等の芳香族3級アミン類(還元剤)との組み合わせ。
(2)ハイドロパーオキサイド(過酸化物)と金属石鹸類(還元剤)との組み合わせ。
(3)ハイドロパーオキサイド(過酸化物)とチオ尿素類(還元剤)との組み合わせ。
(E)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の総量100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましく、0.1〜4質量部であることがさらに好ましく、0.2〜3質量部であることが特に好ましい。(E)成分の含有量が0.01質量部以上であることにより、硬化性樹脂組成物の硬化性が向上し、ガラス転移点の高い硬化物が得られやすい。また、(E)成分の含有量が10質量部以下であることにより、硬化物のリフロー処理による黄変を少なくすることができる。
(その他のラジカル重合性単量体成分)
その他のラジカル重合性単量体成分は、前記(A)成分および前記(B)成分以外のラジカル重合性単量体である。硬化性樹脂組成物がその他のラジカル重合性単量体成分を含有することで粘度をより調整しやすくなる。加えて、硬化物のガラス転移点もより向上しやすくなる。
その他のラジカル重合性単量体成分としては、例えば(メタ)アクリルモノマー以外のビニル基含有モノマー(以下、その他のビニル基含有モノマーと示す。)、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン化合物などが挙げられる。
その他のビニル基含有モノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー;アクリロニトリル等のシアン化ビニル系モノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーなどが挙げられる。これらのその他のビニル基含有モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン化合物は、例えば分子内にラジカル重合性基を1つ有するトリアルコキシシラン化合物を含むアルコキシシラン化合物を縮合反応することで得られる。ラジカル重合性基を1つ有するトリアルコキシシラン化合物としては、例えば3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシランなどが挙げられる。(B)成分との相溶性や共重合性に優れる観点から、ラジカル重合性基としては(メタ)アクリロイル基が好ましい。また、ラジカル重合性基を分子内に1つ有するトリアルコキシシラン化合物としては、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン化合物の市販品としては、例えば、AC−SQTA−100、AC−SQSI−20、MAC−SQTM−100、MAC−SQSI−20(以上商品名、東亞合成株式会社製)などが挙げられる。
これらのラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他のラジカル重合性単量体成分の含有量は、硬化性樹脂組成物に含まれるラジカル重合性単量体成分の総量100質量%中、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。上述したように、硬化性樹脂組成物がその他のラジカル重合性単量体成分を含有することで、粘度や硬化物のガラス転移点を調整しやすくなるが、その他のラジカル重合性単量体成分の含有量が多くなるほど硬化物の屈折率が低下する傾向にある。その他のラジカル重合性単量体成分の含有量が、ラジカル重合性単量体成分の総量100質量%中、15質量%以下であれば、硬化物の屈折率を維持しつつ、ガラス転移点を高めたり、硬化性樹脂組成物の粘度を成形に適した値に調整したりしやすくなる。
(他の成分)
硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、前記(A)〜(E)成分、及び前記その他のラジカル重合性単量体成分以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えばアクリル系重合体、ゴム、フェノール系酸化防止剤、シリカ粒子、ジルコニア、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、揺変剤、重合禁止剤、離型剤、充填剤、蛍光体、顔料等が挙げられる。これらの他の成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(硬化性樹脂組成物の製造方法)
硬化性樹脂組成物を製造する方法としては、例えば前記(A)〜(E)成分と、必要に応じて、前記その他のラジカル重合性単量体成分、前記他の成分とを常温で撹拌混合する方法、これらを加熱混合する方法などが挙げられる。
前記(E)成分として熱重合開始剤を用いる場合には、硬化性樹脂組成物の安定性の点から、前記(A)〜(D)成分と、必要に応じて、前記その他のラジカル重合性単量体成分、前記他の成分とを加熱混合した後に冷却し、常温で前記(E)成分を加えて撹拌混合し、硬化性樹脂組成物を得る方法が好ましい。
加熱混合により硬化性樹脂組成物を製造する場合には、相溶性が良好となり、より均一に混合できる観点から、40〜100℃の加熱下で混合することが好ましい。また、同様の観点から、混合の攪拌時間は0.1〜5時間であることが好ましい。
(硬化性樹脂組成物の粘度)
硬化性樹脂組成物の粘度は、100〜50,000mPa・sが好ましく、より好ましくは200〜40,000mPa・sであり、さらに好ましくは500〜30,000mPa・sである。硬化性樹脂組成物の粘度が上記範囲内であれば、良好な成形性が得られる。特に、硬化性樹脂組成物の粘度が100mPa・s以上であれば、ディスペンサや金型からの樹脂漏れを抑制できる。また、該粘度が50,000mPa・s以下であれば、金型への浸入性や移液時の作業性が良好になる。なお、該粘度は、23℃においてB型粘度計を用いて得られる測定値である。
(作用効果)
以上説明した本発明に係る硬化性樹脂組成物は、前記(A)〜(E)成分を含む。したがって、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、成形性に適した粘度を有する。また、本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いることにより、透明性、屈折率及びガラス転移点が高く、リフロー処理による黄変が少ない硬化物が得られる。
[硬化物]
本発明に係る硬化物は、上述した本発明に係る硬化性樹脂組成物の硬化物である。
硬化物を得る方法としては、例えば、本発明に係る硬化性樹脂組成物を所定の形状としておき、これを硬化させて所定の形状を有する硬化物を得る方法が挙げられる。このようにして所定の形状を有する硬化物を得る方式としては、例えば、硬化性樹脂組成物を塗工するコーティング方式、ポッティング成形方式、キャスティング成形方式、プリンティング成形方式、液体樹脂射出成形方式(LIM方式)、トランスファー成形方式などが挙げられる。
また、硬化性樹脂組成物を硬化する方法としては、硬化性樹脂組成物に含まれる(E)成分の種類に応じて、光重合、熱重合及びレドックス重合のいずれかの方法を採用できる。
光重合で硬化性樹脂組成物を硬化して硬化物を得る場合、硬化性樹脂組成物に照射する光の波長は特に制限されないが、波長が200〜400nmの紫外線を照射することが好ましい。紫外線の光源の具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、UV−LEDランプなどが挙げられる。
硬化性樹脂組成物を光重合した後には、アフターキュアーをさらに行うことが好ましい。これにより、硬化物中に残存する未反応の(メタ)アクリロイル基の量を減少させることができ、硬化物の強度をより高めることができる。アフターキュアーの条件としては、70〜150℃で0.1〜24時間が好ましく、80〜130℃で0.2〜10時間がより好ましい。
熱重合で硬化性樹脂組成物を硬化して硬化物を得る場合、硬化条件は特に限定されないが、着色が抑制された硬化物が得られやすくなる観点から、硬化温度は40〜200℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
LIM方式やトランスファー成形方式などのように、予め加熱された型に硬化性樹脂組成物を注入して成形する場合の硬化時間(加熱時間)は、硬化温度によっても異なるが、例えば硬化温度が100℃の場合、1〜180秒が好ましく、1〜120秒がより好ましく、1〜60秒がさらに好ましい。一方、キャスティング成形方式のように常温の型に硬化性樹脂組成物を注入後、加熱する場合の硬化時間は、硬化温度によっても異なるが、例えば硬化温度が70℃の場合、5分〜5時間が好ましく、10分〜3時間がより好ましい。
硬化性樹脂組成物を熱重合した後には、アフターキュアーをさらに行うことが好ましい。アフターキュアーの条件としては、50〜150℃で0.1〜10時間が好ましく、70〜130℃で0.2〜5時間がより好ましい。
レドックス重合により硬化性樹脂組成物を硬化して硬化物を得る場合、レドックス系重合開始剤を用いることで、5〜40℃の常温で硬化することができる。得られる硬化物中に残存する未反応の(メタ)アクリロイル基の量を減少させることができ、硬化物の強度をより高めることができる点から、硬化温度は15〜40℃が好ましい。
また、硬化性樹脂組成物がゲル化しにくく、安定的に取り扱える点から、予め還元剤を硬化性樹脂組成物に溶解させておき、これに過酸化物を追加する手順で硬化を実施する方法が好ましい。
(硬化物の透明性)
硬化物の透明性について、硬化物の厚さが1mmの場合、全光線透過率が80%以上、ヘーズが2%以下であることが好ましく、全光線透過率が85%以上、ヘーズが1.5%以下であることがより好ましく、全光線透過率が90%以上、ヘーズが1%以下であることがさらに好ましい。なお、全光線透過率及びヘーズは後述する方法により測定される値である。
(硬化物の屈折率)
硬化物の屈折率について、25℃におけるナトリウムD線(589nm)での測定値が、1.600以上であることが好ましく、1.605以上であることがより好ましく、1.610以上であることがさらに好ましい。硬化物の屈折率が1.600以上であれば、光学部材に適用した場合に多様な光学設計が可能となり、様々な用途へ適用できる。なお、屈折率は後述する方法により測定される値である。
(硬化物のガラス転移点)
硬化物のガラス転移点は、90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。硬化物のガラス転移点が90℃以上であれば、85℃、85%RHの標準的な高温高湿試験環境においても硬化物の形状が安定するため(すなわち、変形しにくいため)、光学部材に適用した場合に光学部材としての信頼性が向上する。なお、本発明において、「硬化物のガラス転移点」とは、動的粘弾性測定装置にて硬化物の動的粘弾性及び損失正接を測定し、損失正接(tanδ)が最大値を示す温度である。具体的には、硬化物のガラス転移点は後述する方法により測定される値である。
[光学部材]
本発明に係る光学部材は、本発明に係る硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。例えば、該光学部材は、該硬化物を成形して作製される。該成形は、硬化性樹脂組成物を硬化した後に行ってもよく、硬化と同時に行ってもよい。成形方法としては、コーティング方式、ポッティング成形方式、キャスティング成形方式、プリンティング成形方式、LIM方式、トランスファー成形方式などが挙げられる。成形時の硬化方法は、光学部材の透明性が良好となる点で、光重合、熱重合が好ましい。
光学部材としては、例えば、発光ダイオードモジュール、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、カメラ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)デバイス、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル、電子ペーパー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、プロジェクター等に使用されるフィルム、シート、レンズ、光導波路、封止材、充填材、接着剤、反射材、粘着剤、波長変換材などが挙げられる。本発明に係る光学部材は、高い透明性、高い屈折率及び高いガラス転移点を有するため、カメラレンズ等のレンズとして特に有用である。また、リフロー処理による黄変が少ないため、リフロー工程を通過するレンズなどの光学部材としても有用である。
[レンズ]
本発明に係るレンズは、本発明に係る硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。該レンズは、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ等の電子機器、自動車のバックカメラ、ドライブレコーダー、運転支援システム等に備え付けられるカメラモジュール等に用いられる。
本発明に係るレンズは、本発明に係る硬化物からなる成形品であってもよいが、平面ガラス、曲面ガラス又はガラスウエハー等の透明基材と、該透明基材の片面又は両面上に形成された本発明に係る硬化物と、からなるハイブリッドレンズであってもよい。
レンズの成形方法としては、上下型で硬化性樹脂組成物を挟み込んだ後、加熱または光照射により、樹脂を硬化することでレンズを得るキャスティング方式などが挙げられる。キャスティング方式としては、レンズ個片を1点ずつ成形する方法や、複数のレンズ形状が転写されたウエハーを成形した後、レンズ個片を切り出すウエハーレベル方式などが挙げられる。
[カメラモジュール]
本発明に係るカメラモジュールは、本発明に係るレンズを含む。
図1に、本発明に係るカメラモジュールの一例の断面図を示す。図1に示されるカメラモジュール100は、本発明に係るレンズであるカメラレンズ1a、1b及び赤外線カットフィルター5を備えるレンズホルダー2と、センサーチップ4及びボンディングワイヤ6a、6bを備える基板3とを具備する。基板3上に、レンズホルダー2が積層されている。なお、図1に示されるカメラモジュール100が備えるカメラレンズは2枚であるが、カメラレンズは1枚であってもよいし、3枚以上であってもよい。レンズが複数枚の場合、ガラス製のカメラレンズが混在していてもよい。
また、その他の構成のカメラモジュールとしては、ウエハー上に形成された、レンズとイメージセンサーウエハーとの接着積層体をダイシングするウエハーレベル方式によって形成されるカメラモジュールが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例中の「部」は「質量部」を意味する。また、実施例及び比較例における全光線透過率、ヘーズ、屈折率、ガラス転移点、耐熱黄変性は以下の方法で測定した。
<全光線透過率およびヘーズの測定>
直径約50mm×厚さ約1mmの硬化物の全光線透過率およびヘーズを、ヘーズメーター(商品名:HM−150型、村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。
<屈折率の測定>
厚さ約100μmの硬化物の屈折率(ナトリウムD線(589nm)、25℃)を、多波長アッベ屈折計(商品名:DR−M2、株式会社アタゴ製)により測定した。なお、測定中間液として、イオウヨウ化メチレン(株式会社アタゴ製)を用いた。
<ガラス転移点の測定>
約4mm×35mm×厚さ1mmの硬化物の動的粘弾性及び損失正接を測定し、損失正接(tanδ)が最大値を示す温度を、該硬化物のガラス転移点とした。測定には、動的粘弾性測定装置(商品名:RSA−II、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いた。測定条件は引っ張りモードとした。測定周波数は10Hzとした。
<耐熱黄変性の評価>
直径約50mm×厚さ約1mmの硬化物を、リフロー処理の最大温度である260℃で30分間保管する耐熱試験を実施した後、分光測色計(商品名:CM−5、コニカミノルタ社製)により、該硬化物のb値を測定した。測定タイプは透過測定を選択した。該b値により耐熱黄変性を評価した。
[実施例1]
<硬化性樹脂組成物の調製>
冷却器を備えた反応容器に、(A)成分としてNKエステルA−BPEF(商品名、新中村化学工業株式会社製、前記式(1)において、R1、R2、R3およびR4の全てが水素原子であり、n及びmがいずれも1である化合物)70部と、(B)成分としてベンジルメタクリレート(商品名:アクリエステルBZ、三菱レイヨン製)15部、およびオルトフェニルフェノキシエチルアクリレート(商品名:MIRAMER M1142、MIWON社製)15部と、(C)成分としてチオジプロピオン酸ジトリデシル(商品名:アデカスタブAO−503、ADEKA製、23℃で液体)1部と、(D)成分としてトリデシルホスファイト(商品名:アデカスタブ3010、ADEKA製、23℃で液体)1部と、(E)成分として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:IRGACURE184、BASF社製)2部とを加えた。これを70℃で2時間撹拌することで、硬化性樹脂組成物を得た。
<硬化物の作製>
得られた硬化性樹脂組成物を、厚さ1mmのシリコーンシートをガスケットとして、2枚のガラス板で挟み込み、高圧水銀灯で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射した後、100℃で30分間加熱した。冷却後、板ガラスを除去し、全光線透過率およびヘーズの測定、並びに耐熱黄変性の評価に用いる、直径約50mm、厚さ約1mmの硬化物を得た。同様の方法により、約4mm×35mmの長方形状を切り抜いた厚さ1mmのシリコーンシートをガスケットとして用いることで、ガラス転移点の測定に用いる約4mm×35mm×厚さ1mmの硬化物を得た。また、同様の方法により、厚さ約100μmのポリエステルテープを用いることで、屈折率の測定に用いる厚さ約100μmの硬化物を得た。
得られた硬化物を用い、前記方法により全光線透過率、ヘーズ、屈折率、ガラス転移点及び耐熱黄変性を評価した。結果を表1に示す。なお、表1における各成分の単位は「部」である。
[実施例2〜15、比較例1〜4]
表1に記載の配合組成に変更した以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物を調製し、硬化物を作製し、評価した。結果を表1に示す。
Figure 2017043702
・A−BPEF:前記式(1)において、R1、R2、R3及びR4の全てが水素原子であり、m及びnがいずれも1である化合物(商品名:NKエステルA−BPEF、新中村化学工業社製)
・BZMA:ベンジルメタクリレート(商品名:アクリエステルBZ、三菱レイヨン社製)
・MIRAMER M1142:オルトフェニルフェノキシエチルアクリレート(商品名:MIRAMER M1142、MIWON社製)
・アデカスタブAO−503:チオジプロピオン酸ジトリデシル(商品名:アデカスタブAO−503、ADEKA社製、23℃で液体)
・1−デカンチオール(商品名:1−デカンチオール、東京化成社製、23℃で液体)
・SFI−6R:ジヘキシルスルフィド(商品名:SFI−6R、大八化学工業社製、23℃で液体)
・カレンズMT PE1:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(商品名:カレンズMT PE1、昭和電工社製、23℃で液体)
・アデカスタブ3010:トリデシルホスファイト(商品名:アデカスタブ3010、ADEKA社製、23℃で液体)
・JP−308E:トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト(商品名:JP−308E、城北化学工業社製、23℃で液体)
・JP−318−O:トリオレイルホスファイト(商品名:JP−318−O、城北化学工業社製、23℃で液体)
・アデカスタブC:ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト(商品名:アデカスタブC、ADEKA社製、23℃で液体)
・JP−218−OR:ジオレイルハイドロゲンホスファイト(商品名:JP−218−OR、城北化学工業社製、23℃で液体)
・IRGACURE184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:IRGACURE184、BASF社製)
・LUCIRIN TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名:LUCIRIN TPO、BASF社製)
・SUMILIZER GP:6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(商品名:SUMILIZER GP、住友化学社製、23℃で固体)。
表1より、各実施例で得られた硬化性樹脂組成物を用いて作製された硬化物は、高い透明性、屈折率およびガラス転移点を有し、耐熱試験での黄変が十分に小さかった。一方、(C)成分又は(D)成分を含有しない比較例1〜3では、耐熱試験で大きく着色した。また、23℃で固体であるホスファイト化合物を含有する比較例3および4では、硬化物の透明性が不十分であった。
100 カメラモジュール
1a、1b カメラレンズ
2 レンズホルダー
3 基板
4 センサーチップ
5 赤外線カットフィルター
6a、6b ボンディングワイヤ

Claims (6)

  1. 下記式(1)で示されるフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート(A)、前記(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリル系重合性単量体(B)、23℃で液体の有機硫黄化合物(C)、23℃で液体のホスファイト化合物(D)、および重合開始剤(E)を含有する硬化性樹脂組成物。
    Figure 2017043702
    (式(1)中、R1、R2、R3およびR4は各々独立に、水素原子またはメチル基であり、mは0〜5の整数を示し、nは0〜5の整数を示す。)
  2. 前記(メタ)アクリレート(A)と前記(メタ)アクリル系重合性単量体(B)の総量100質量%に対して、前記(メタ)アクリレート(A)が55〜95質量%、前記(メタ)アクリル系重合性単量体(B)が5〜45質量%である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
  4. 請求項3に記載の硬化物を含む光学部材。
  5. 請求項3に記載の硬化物を含むレンズ。
  6. 請求項5に記載のレンズを含むカメラモジュール。
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