JP2017041496A - 半導体装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 封止材に発生するクラックや剥離を自己修復可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】 半導体素子6と、前記半導体素子の一方の面に接合された絶縁基板4と、前記半導体素子の他方の面に接合された外部回路との接続用プリント基板9とを含む部材を、封止材20で封止してなる半導体装置100であって、前記封止材20が、第1熱硬化性樹脂21と、第2熱硬化性樹脂前駆物質を内包するマイクロカプセル粒子22とを含んでなる、半導体装置100。
【選択図】 図1

Description

本発明は、半導体装置に関する。特には、クラックや剥離が生じても、自己修復することが可能な封止材を備える半導体装置に関する。
従来、一般的に用いられているSi(シリコン)半導体素子を用いた半導体装置では、エポキシ樹脂やシリコーンゲルにより、封止を行い、絶縁性を確保していた。一方、SiCやGaNはSiに比べて優れた電気的特性を有しているため、近年、実用化に向けて研究開発が進められており、将来的には、半導体素子が、SiからSiCやGaNに置き換わることが想定されている。SiCやGaNにより構成される半導体素子は、Si半導体素子に比べて、高温での動作特性が優れている。特にSiCは、300℃まで動作可能とも言われている。
半導体素子にSiCを用いた場合、半導体素子の電流密度を高めることができるが、半導体素子を高電流密度にすると発熱量が増大し、半導体素子の温度が高温になる。このため、使用される封止材の耐熱性能を高める必要性が出てくる。従来技術による一般的なシリコーンゲルを封止材として用いた場合、175℃以上の高温、酸素雰囲気下ではシリコーンゲルが酸化劣化することによりクラックが生じる場合がある。また、一般的なエポキシ樹脂を封止材として用いた場合も同様に、樹脂が酸化劣化し、クラックが発生する問題が生じる場合がある。
一般的なプラスチック材のクラックに対する自己修復方法が知られている。例えば、特許文献1は、接着剤を封入したカプセル体を複数埋め込んだ繊維強化プラスチックを開示している。また、特許文献2は、積層構造体の層間に接着剤を充填したカプセルを含んだ積層構造体を開示している。
特開平8−52810号公報 特開平7−40491号公報
半導体装置においては、エポキシ樹脂などの封止材にクラックが発生した場合、クラックが進展していき、最終的には、絶縁を有する必要がある部位までクラックや剥離が起こるという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。本発明者らは、半導体の封止材として、クラック等が発生した場合に自己修復性機能を備える樹脂を用いることに想到し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、一実施形態によれば、半導体装置であって、半導体素子と、前記半導体素子の一方の面に接合された絶縁基板と、前記半導体素子の他方の面に接合された外部回路との接続用プリント基板とを含む部材を、封止材で封止してなり、前記封止材が、第1熱硬化性樹脂と、第2熱硬化性樹脂前駆物質を内包するマイクロカプセル粒子とを含んでなる。
前記半導体装置において、前記マイクロカプセル粒子の平均粒子径が、1〜500μmであることが好ましい。
前記半導体装置において、前記マイクロカプセル粒子が、前記封止材の質量に対し、0.1〜10質量%で含まれることが好ましい。
前記半導体装置において、前記マイクロカプセル粒子が、異なる第2熱硬化性樹脂前駆物質を内包する、異なる複数種のマイクロカプセル粒子を含むことが好ましい。
前記マイクロカプセル粒子が、前記第2熱硬化性樹脂前駆物質を含むコア部と、該コア部を被覆するシェル部とを含んでなることが好ましい。
前記半導体装置において、前記マイクロカプセル粒子の前記シェル部が、前記コア部に接する第1皮膜と、該第1皮膜を被覆し、セラミクスもしくは樹脂を含む第2皮膜との少なくとも二層を含んでなることが好ましい。
前記半導体装置において、前記マイクロカプセル粒子が、シームレスカプセルを備えることが好ましい。
前記半導体装置において、前記第2熱硬化性樹脂前駆物質から生成する第2熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、あるいはこれらのシリコーン変性樹脂から選択される1以上の樹脂であることが好ましい。
前記半導体装置において、前記第2熱硬化性樹脂が、シリコーン変性エポキシ樹脂であり、前記マイクロカプセル粒子が、シリコーン変性剤を内包するマイクロカプセル粒子と、エポキシ樹脂主剤を内包するマイクロカプセル粒子と、硬化剤を内包するマイクロカプセル粒子とを、別個に含むことが好ましい。
前記半導体装置において、前記第2熱硬化性樹脂の弾性率が、前記第1熱硬化性樹脂の弾性率よりも低いことが好ましい。
前記半導体装置において、前記第2熱硬化性樹脂前駆物質から、第2熱硬化性樹脂を生成する反応が、触媒及び/または熱による反応であることが好ましい。
前記半導体装置において、前記絶縁基板周辺における前記マイクロカプセル粒子の存在密度が、前記半導体素子周辺における前記マイクロカプセル粒子の存在密度よりも大きいことが好ましい。
本発明に係る半導体装置によれば、封止材にクラックが発生したとしても、封止材を構成する熱硬化性樹脂中に含まれているマイクロカプセル粒子が割れ、内包される成分により、クラック・剥離を補修することができる。マイクロカプセル粒子に内包される成分が液体であるため、粒子から流れ出したとき、クラックの先端部分を補強することができ、特にクラックが生じやすい基板周囲を補修して絶縁破壊を防止し、長寿命化が期待できる。したがって、本発明に係る半導体装置は、製品寿命が向上し、信頼性が高いものとなっている。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体モジュールの断面構造を示す概念図である。 図2は、第2熱硬化性樹脂前駆物質を内包するマイクロカプセル粒子の断面構造を示す概念図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る半導体モジュールにおける、クラックの自己修復を模式的に示す図である。
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
本発明は、一実施形態によれば、半導体装置であって、半導体素子と、前記半導体素子の一方の面に接合された絶縁基板と、前記半導体素子の他方の面に接合された外部回路との接続用プリント基板とを含む部材を、封止材で封止してなり、前記封止材が、第1熱硬化性樹脂と、第2熱硬化性樹脂前駆物質を内包するマイクロカプセル粒子とを含んでなる。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の一例である、半導体モジュールの断面構造を模式的に示す図である。半導体モジュール100においては、絶縁層1の一方の面である下面に略直方体状の第1銅ブロック2、他方の面である上面に略直方体状の第2銅ブロック3が配置されて絶縁基板4を構成する。絶縁基板4の第2銅ブロック3側の面である上面には、導電接合層5を介して、SiCパワー半導体素子6が複数個搭載され取り付けられている。さらにSiCパワー半導体素子6の上面には、導電接合層7によりインプラントピン8を備えたインプラント方式プリント基板9が取り付けられている。インプラント方式プリント基板9の上面と、第2銅ブロック3の上面には、それぞれ、外部接続端子10が取り付けられ、半導体モジュール100の外部との電気的接続が可能に構成されている。そして、これらの部材は、封止材20からなる封止層により封止されている。封止材20は、第1熱可塑性樹脂21と、第2熱硬化性樹脂前駆物質を内包するマイクロカプセル粒子22とから構成され、加熱硬化されている。封止材20には、半導体モジュール100を図示しない冷却器に取り付けるためのボルトの挿入孔である取り付け金具12が埋め込まれている。なお、本明細書において、上面、下面とは、説明の目的で、図中の上下を指す相対的な用語であって、半導体装置の使用態様等との関係で上下を限定するものではない。
第1熱硬化性樹脂21は、半導体封止樹脂に通常用いられる熱硬化性樹脂であってよく、半導体装置の製造時に加熱硬化される樹脂成分である。この樹脂成分を、製造時に加熱硬化されないで、マイクロカプセル粒子22内に前駆物質として保持される熱硬化性樹脂と区別するために、第1熱硬化性樹脂と指称する。特には、硬化後のガラス転移温度が半導体素子6の最大動作温度以上、好ましくは、硬化後のガラス転移温度が200℃以上の熱硬化性樹脂が好ましい。第1熱硬化性樹脂21の例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂から選択される1以上の樹脂が挙げられるが、これらには限定されない。特には、耐熱性と取扱い性の観点から、第1熱硬化性樹脂21として、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
第1熱硬化性樹脂21をエポキシ樹脂とする場合、エポキシ樹脂主剤としては、環状脂肪族系エポキシ樹脂を用いることが好ましいが、これには限定されない。硬化剤は、酸無水物系硬化剤を用いる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、およびそれらの異性体、変成体が挙げられるが、これらには限定されない。また、酸無水物系硬化剤は、これらのうち1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を混合して用いることができる。
硬化剤に加えて、任意成分として、硬化助剤を添加してもよい。硬化反応を制御するためである。硬化助剤の具体例としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン類、トリフェニルフォスフィン等の芳香族フォスフィン類、三フッ化ホウ素モノエチルアミン等のルイス酸、ホウ酸エステル、有機金属化合物、有機酸金属塩等が挙げられるが、これらには限定されない。
第2熱硬化性樹脂前駆物質を内包するマイクロカプセル粒子22は、本発明において、自己修復機能を担う粒子であって、液体もしくは流体状の第2熱硬化性樹脂前駆物質を内包するマイクロカプセルである。半導体装置の製造時に加熱硬化される第1熱硬化性樹脂と区別するために、半導体装置の製造時には、マイクロカプセル粒子22内に前駆物質として保持され、クラック発生時に前駆物質が反応してできる熱硬化性樹脂を、第2熱硬化性樹脂と指称する。ここで、樹脂前駆物質とは、未硬化の樹脂のモノマー、ダイマーあるいはオリゴマーなどをいい、好ましくは、マイクロカプセル粒子内で硬化せずに、液状で安定に存在しうる分子をいう。また、本発明に係る第2熱硬化性樹脂前駆物質には、上記に加え、第2熱硬化性樹脂の重合反応に使用され得る任意の物質、例えば、硬化助剤、触媒、重合開始剤、溶媒、難燃剤、酸化防止剤、顔料などをも含むものとする。
図2は、マイクロカプセル粒子22の一例を模式的に示す図である。マイクロカプセル粒子22は、少なくともコア部221とシェル部222の二層から構成され、内側のコア部221が液状の第2熱硬化性樹脂前駆物質からなる。外側のシェル部222は、液状の樹脂前駆物質を内包して、好ましくは液状の第2熱硬化性樹脂前駆物質を安定に保護し、かつ、第1熱硬化性樹脂21と接着性が高い皮膜であることが好ましい。このようなマイクロカプセル粒子は、例えば、液状の第2熱硬化性樹脂前駆物質をゼラチン、カラギーナン、アラビアゴム、アルギン酸塩などの皮膜で被覆したシームレスカプセルであってもよい。あるいは、図示はしないが、マイクロカプセル粒子は、液状の第2熱硬化性樹脂前駆物質を含んでなるコア部に接する第1皮膜と、該第1皮膜を被覆する第2皮膜であって、セラミクスもしくは樹脂を含んでなる第2皮膜との少なくとも二層を含んでなるシェル部とを備える、三層以上の構造のものであってもよい。三層以上の構造の場合でも、予め前述のような、定形状のシームレスカプセルを形成し、その外側を、セラミクスもしくは樹脂の皮膜で覆うことで、マイクロカプセル粒子の作製がより容易となる。また、セラミクスもしくは樹脂の皮膜は、比較的硬い外殻となるため、クラック発生時に、よりマイクロカプセル粒子22が割れやすく、内部の第2熱硬化性樹脂前駆物質を放出しやすくすることができる。図2に示すマイクロカプセル粒子22は、略球状であり、これは、第1熱硬化性樹脂の粘性を向上させない観点から好ましいが、マイクロカプセル粒子の形状は特には限定されない。
マイクロカプセル粒子の調製は、例えば、相分離法などを用いて液状の第2熱硬化性樹脂前駆物質を膜で包み、マイクロカプセル化を行うことにより実施することができる。その他にも、種々の従来技術に基づき、当業者であれば、マイクロカプセル粒子を適宜製造することができ、その粒径サイズや、シェル部の部材を変更することもできる。あるいは、例えば、エポキシ樹脂を封入したマイクロカプセルは市販されているものを用いることもできる。
マイクロカプセル粒子22の平均粒径は、1〜500μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましく、30〜80μmであることがさらに好ましい。本明細書において、粒子の平均粒径とはレーザー回折散乱法で測定した値をいうものとする。平均粒径が500μmより大きいと、マイクロカプセル粒子22の製造過程で、粒子が割れやすくなる場合がある。一方、平均粒径が1μmより小さいマイクロカプセル粒子22は、製造が困難な場合がある。なお、「マイクロカプセル」という用語は、広義に解釈するものとし、1μm未満のナノオーダーの粒子や、1000μmを超えるミリオーダーの粒子が混在している場合もある。封止材20中のマイクロカプセル粒子22の含有量は、封止材20を構成する成分全体の総質量を100%として、0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜6質量%であることがより好ましい。第1熱硬化性樹脂21の特性を変更せず、かつ、マイクロカプセル粒子22による自己修復効果を得るためである。マイクロカプセル粒子22が、異なる前駆物質を内包する複数種類のマイクロカプセル粒子を含む場合は、その総量が、上記範囲内であることが好ましい。
マイクロカプセル粒子22は、半導体モジュール100の製造時には、破壊されることなく第2熱硬化性樹脂前駆物質を内包して安定して存在し、封止材20にクラックが生じた際に、割れて、内包する前駆物質を放出するように機能することが好ましい。そして、半導体モジュール100の使用下で、複数の異なる内包物が反応して第2熱硬化性樹脂を生成し、クラックあるいは剥離部分に流入し、隙間を埋めることができる。したがって、マイクロカプセル粒子22に内包される前駆物質、その種類、及び量比は、マイクロカプセル粒子22が割れた後に、所定の前駆物質から、所定の第2熱硬化性樹脂を生成するように当業者が設計することができる。また、半導体モジュール100の使用条件下で、第2熱硬化性樹脂を生成する重合反応が適切に進行するように、例えば、マイクロカプセル粒子22に内包可能な化学物質や、クラック発生により周囲から供給され得る酸素などの触媒により、あるいは熱により促進される反応を想定し、所定の前駆物質を選択することが好ましい。
本発明において、クラックを修復するのに有用な第2熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂から選択される1以上の樹脂が挙げられるが、これらには限定されない。また、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂は、高い接着性を有する点で有利である。
第2熱硬化性樹脂は、特には第1熱硬化性樹脂と比較して、その弾性率(ヤング率)が低いものであることが好ましい。クラックに入り込んで硬化した第2熱硬化性樹脂の弾性率が低いと、クラック先端部分が低弾性となり、応力を緩和することで、クラックの伸展を抑制することができるという利点が得られる。具体的には、第2熱硬化性樹脂としてシリコーン樹脂を用いることができ、あるいは、第1熱硬化性樹脂を構成する特定の樹脂に対して、シリコーン変性した熱硬化性樹脂を第2熱硬化性樹脂として用いることが好ましい。例えば、第1熱硬化性樹脂をエポキシ樹脂とした場合に、第2熱硬化性樹脂をシリコーン変性エポキシ樹脂とすることができる。シリコーン変性エポキシ樹脂は、通常のエポキシ樹脂主剤、硬化剤に加え、変性剤として、シリコーンモノマーを混合して反応させることで得ることができる。また、シリコーン変性した熱硬化性樹脂以外を用いる場合、第2熱硬化性樹脂として脂環式や鎖状骨格を持つ樹脂を用いることで、第1熱硬化性樹脂より低弾性とすることが好ましい。なお、従来用いられているような接着剤を充填したカプセルを用いてクラックの進展を抑えようとしても半導体装置自身のひずみを抑えることができず、最終的には、半導体装置が壊れてしまい自己修復が出来ない。これは、通常の熱硬化性封止材料の弾性率が10〜20GPaであるのに対し、従来の接着剤の弾性率が1GPa未満と低すぎるためである。
マイクロカプセル粒子22は、第2熱硬化性樹脂を生成するのに必要な物質である、1以上の第2熱硬化性樹脂前駆物質を、それぞれ異なるカプセルに封入した、1以上のマイクロカプセル粒子を含むことが好ましい。そして、粒子自体の大きさは同一であってもよく、異なっていてもよいが、1以上の前駆物質が、全体として所望の当量比を達成するように、マイクロカプセル粒子の個数比や、大きさの比率を調整することが好ましい。したがって、例えば、第2熱硬化性樹脂をシリコーン変性エポキシ樹脂とする場合、シリコーンを封入したマイクロカプセル粒子、エポキシ樹脂主剤を封入したマイクロカプセル粒子、硬化剤を封入したマイクロカプセル粒子、硬化助剤を封入したマイクロカプセル粒子を、別個に調製することができる。
封止材には、無機充填剤をさらに含むことが好ましい。封止材のガラス転移温度を上げ、耐熱性を付与するためである。無機充填剤は、半導体封止樹脂に通常添加されるものであれば特には限定されないが、平均粒径が、1〜100nm、好ましくは、5〜50nmの、いわゆる、ナノフィラーや、平均粒径が、10〜100μm、好ましくは、50〜80μmの、いわゆる、マイクロフィラーを用いることが好ましい。樹脂の耐熱性を高めるためである。本明細書において、平均粒径とはレーザー回折散乱法で測定した値をいうものとする。無機充填剤を構成する化合物は、SiO、BN、Al、AlN及びSiからなる群から選択される1つ以上であってよいが、これらには限定されない。ナノフィラーの添加量は、封止材の総質量を100%としたときに、0.1〜25質量%とすることが好ましく、1〜15質量%とすることがさらに好ましい。耐熱特性と粘度特性の観点からである。一方、マイクロフィラーの添加量は、フィラーを含む封止材の総質量を100%としたときに、50〜80質量%とすることが好ましい。ナノフィラーとマイクロフィラーを適宜混合することもできる。
さらに、任意選択的な成分として、半導体封止用樹脂に通常添加される添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば、難燃剤、樹脂を着色するための顔料、耐クラック性を向上するための可塑剤やシリコンエラストマーが挙げられるが、これらには限定されない。これらの任意成分の添加量は、半導体装置の仕様に応じて、当業者が適宜決定することができる。
図1に示す半導体モジュール100の封止層において、封止材20中に、マイクロカプセル粒子22が均一に存在してもよく、所定の箇所に多く存在しても良い。ある態様によれば、前記絶縁基板4周辺における前記マイクロカプセル粒子22の存在密度が、前記半導体素子6周辺における前記マイクロカプセル粒子22の存在密度よりも大きい場合がある。絶縁基板4の周縁部、特に角部に、半導体装置の製造時に応力が集中しやすいため、これらの部位がクラック発生の起点になる場合が多いためである。
次に、図1に示す半導体モジュール100を、その製造方法の観点から説明する。SiCパワー半導体モジュール100の製造方法は、主として、絶縁基板4、半導体素子6、並びにプリント基板9が接合された部材を組み立てる工程と、前記部材を樹脂封止する工程とから構成される。
絶縁基板4、半導体素子6、並びにプリント基板9が接合された部材を組み立てる工程は、絶縁層1の両面に第1銅ブロック2と第2銅ブロック3を熱圧着してなる絶縁基板4を形成する工程と、絶縁基板4の一方の面に、導電接合層a5により1以上のSiCパワー半導体素子6を搭載する工程と、SiCパワー半導体素子6の絶縁基板4とは反対側の面に、導電接合層b7により、インプラントピン8を有するインプラント方式のプリント基板9を取り付ける工程と、前記第2銅ブロック3及び前記プリント基板9に外部接続端子10を接続する工程とを含む。
このような組み立て工程及び使用する部材の仕様等については、従来技術に開示される、通常の方法に従ってよい。例えば、出願人による、特開2013-004729号公報や、特開2012-191010号公報において説明した、樹脂封止以外の各工程を適用することができる。
封止材20は、必要に応じてマイクロカプセル粒子22を別途調製した後、第1熱硬化性樹脂21の前駆物質と、マイクロカプセル粒子22と、任意選択的に無機充填剤と、その他の添加剤を混合し、封止材20の硬化前組成物を得る。次いで、通常の条件で減圧脱泡した硬化前組成物を適用し、トランスファー成形、液状トランスファー成形、ポッティング、射出成型等の成形法により、所定の形状に成形することができる。封止層中で、マイクロカプセル粒子22の存在密度の分布を持たせる場合には、例えば、マイクロカプセル粒子22の含有量の異なる複数の封止材の未硬化組成物を調製し、段階的に封止することもできる。次いで、取り付け金具12を挿入するための孔を封止材に形成し、封止材20の硬化後に孔に取り付け金具12を挿入する工程により、半導体モジュール100を得ることができる。
次に、本実施形態に係る半導体装置の、自己修復メカニズムについて、図3を参照して説明する。図3(a)は、経時使用により、絶縁基板4の角部を起点として、封止材20に、クラック30が発生した半導体モジュール101を示す。クラック30の発生は、一般に、絶縁基板4の辺縁部から生じる場合が多い。この際、クラック30の発生部位に位置するマイクロカプセル粒子22は、そのシェル部222が接着している第1熱硬化性樹脂21に引っ張られて破壊され、内包する樹脂前駆物質221が流出する。図は簡略化のため、1つのマイクロカプセル粒子22が、クラック30発生部位に位置しているが、実際には、クラックに沿って存在する複数のマイクロカプセル粒子22が、略同時に破壊され、樹脂前駆物質がクラックに沿って拡がる。実施態様により、異なる種類の樹脂前駆物質を内包した複数種のマイクロカプセル粒子が破壊され、あるいは、触媒などの物質を内包したマイクロカプセル粒子が同時に破壊されることで、それらの物質が混合され、重合反応を起こす。
図3(b)は、クラックが修復された半導体モジュール102を模式的に示す図である。クラックの隙間に、第2熱硬化性樹脂22’が生成する。半導体モジュール101においては、特に、その作動中、半導体素子の発熱により、封止材も、80〜150℃といった高温条件となりうる。この条件下で、マイクロカプセル粒子22が割れると、流出する前駆物質間の反応が促進される。
従来の半導体モジュールにおいて、クラックの発生は、図3(a)に示す態様と同様に、封止材の上面、すなわち、絶縁基板4と反対側の面から、絶縁基板の周縁部に向かって、略垂直な方向に生じる場合が多いことがわかっている。本発明において、マイクロカプセル粒子22に、液状の樹脂前駆物質を内包することで、樹脂前駆物質がクラックに沿って流動し、絶縁破壊による問題が生じやすい基板周辺のクラックや剥離を補修することで、絶縁性を確保することができる。
図1に示す本発明の実施例に係る半導体モジュールを製造する。絶縁基板4、半導体素子6、並びにプリント基板9が接合された部材は、上記実施形態における半導体モジュールの製造方法にしたがって組み立てる。
封止材は、第1熱硬化性樹脂と、第2熱硬化性樹脂前駆体を内包するマイクロカプセル粒子と、マイクロフィラーを含むものを調製する。第1熱硬化性樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、酸無水物系硬化剤とを当量になるように混合し、硬化助剤を混合する。第2熱硬化性樹脂前駆体を内包するマイクロカプセル粒子としては、ゼラチンでシェル部を形成し、エポキシ樹脂主剤(三菱化学製、エポキシ樹脂871)を内包した主剤マイクロカプセル粒子と、ゼラチンでシェル部を形成し、酸無水物系硬化剤(三菱化学製、YH306)を内包した硬化剤マイクロカプセル粒子と、硬化助剤を内包した硬化助剤マイクロカプセル粒子を、相分離法により調製する。いずれのマイクロカプセル粒子も、平均粒径を50μmとし、マイクロカプセル粒子の個数比で、内包された主剤、硬化剤が概ね当量比になるように、かつ、硬化助剤が上記質量%となるように調整する。そして、3種類のマイクロカプセル粒子が、封止材の総質量の、5質量%となるように混合する。マイクロフィラーは、平均粒径が70μmのSiOを、封止材の総質量の70質量%となるように混合する。これらをすべて混合し、スターラー等で撹拌して、封止材の硬化前組成物を得る。
この硬化前組成物を、予め40℃〜80℃に加温して樹脂の粘度を低下させた後、加温状態を継続しながら0.1Torr(13.33Pa)の真空状態下に10分間置くことで1次脱泡を行う。次いで、シリンダー容器に注入し、注型により、前述の接合部材を封止する。注型時に巻き込んだ気泡を除去するため、注型後にも1次脱泡と同様の工程で2次脱泡を行う。加熱硬化は、100℃で1時間、180℃で1時間とする。これにより、実施例の半導体モジュールを製造する。
次いで、第2熱硬化性樹脂前駆体を内包するマイクロカプセル粒子を混合しない以外は、上記実施例と同様にして、比較例の半導体モジュールを製造する。
得られた実施例及び比較例の半導体モジュールの信頼性を評価するために、ヒートサイクル試験を実施する。ヒートサイクルは、−40℃で30分保持、高温側は150℃で30分保持を1サイクルとする。比較例の半導体モジュールでは、200サイクル後に絶縁破壊が生じるが、実施例の半導体モジュールでは1000サイクル後にも絶縁破壊は生じない。1000サイクル後の実施例の半導体モジュールについて、断面を顕微鏡観察すると、絶縁基板周囲おいて、クラックの痕跡が見られるものの、マイクロカプセル粒子が割れて、クラックを埋め、絶縁破壊から保護していることがわかる。
本発明に係る半導体装置は、熱硬化性樹脂により封止される半導体パワーモジュールにおいて有用である。
1 絶縁層
2 第1銅ブロック
3 第2銅ブロック
4 絶縁基板
5 導電接合層
6 SiC半導体素子
7 導電接合層
8 インプラントピン
9 インプラント方式プリント基板
12 取り付け金具
20 封止材
21 第1熱硬化性樹脂
22 マイクロカプセル粒子
22’ 第2熱硬化性樹脂
30 クラック
100 半導体モジュール(半導体装置)

Claims (12)

  1. 半導体素子と、前記半導体素子の一方の面に接合された絶縁基板と、前記半導体素子の他方の面に接合された外部回路との接続用プリント基板とを含む部材を、封止材で封止してなる半導体装置であって、
    前記封止材が、第1熱硬化性樹脂と、第2熱硬化性樹脂前駆物質を内包するマイクロカプセル粒子とを含んでなる、半導体装置。
  2. 前記第2熱硬化性樹脂の弾性率が、前記第1熱硬化性樹脂の弾性率よりも低い、請求項1に記載の半導体装置。
  3. 前記マイクロカプセル粒子が、異なる第2熱硬化性樹脂前駆物質を内包する、異なる複数種のマイクロカプセル粒子を含む、請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
  4. 前記第2熱硬化性樹脂前駆物質から生成する第2熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、あるいはこれらのシリコーン変性樹脂から選択される1以上の樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
  5. 前記第2熱硬化性樹脂が、シリコーン変性エポキシ樹脂であり、前記マイクロカプセル粒子が、シリコーン変性剤を内包するマイクロカプセル粒子と、エポキシ樹脂主剤を内包するマイクロカプセル粒子と、硬化剤を内包するマイクロカプセル粒子とを、別個に含む、請求項4に記載の半導体装置。
  6. 前記マイクロカプセル粒子が、前記第2熱硬化性樹脂前駆物質を含むコア部と、該コア部を被覆するシェル部とを含んでなる、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置。
  7. 前記マイクロカプセル粒子の前記シェル部が、前記コア部に接する第1皮膜と、該第1皮膜を被覆し、セラミクスもしくは樹脂を含む第2皮膜との少なくとも二層を含んでなる、請求項6に記載の半導体装置。
  8. 前記マイクロカプセル粒子が、シームレスカプセルを含んでなる、請求項6または7に記載の半導体装置。
  9. 前記第2熱硬化性樹脂前駆物質から、第2熱硬化性樹脂を生成する反応が、触媒及び/または熱による反応である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体装置。
  10. 前記絶縁基板周辺における前記マイクロカプセル粒子の存在密度が、前記半導体素子周辺における前記マイクロカプセル粒子の存在密度よりも大きい、請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体装置。
  11. 前記マイクロカプセル粒子の平均粒子径が、1〜500μmである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体装置。
  12. 前記マイクロカプセル粒子が、前記封止材の質量に対し、0.1〜10質量%で含まれる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の半導体装置。
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