JP2017038574A - 水中油型乳化物 - Google Patents

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Yoshiko Watanabe
由子 渡邉
裕美 大西
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裕美 大西
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Shinichiro Tanaka
伸一郎 田中
絵梨子 内藤
Eriko Naito
絵梨子 内藤
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Abstract

【課題】耐酸性、耐熱性、乳化安定性に優れながら、飲食品中に含有されても良好な味を呈する水中油型乳化物を提供することを課題とする。【解決手段】植物油脂、トリプシン処理により得られたタンパク質分解物及び乳化剤を含有する水中油型乳化物であって、該タンパク質分解物が、分子量分布において、タンパク質分解物に由来する全ての分子のピーク面積の総和に対する、分子量1000〜5000Daの分子のピーク面積の総和が30〜80%であることを特徴とする、水中油型乳化物。【選択図】なし

Description

本発明は、植物油脂を用いて製造される水中油型乳化物に関し、より具体的にはトリプシン処理して得られる特定のタンパク質分解物を含有するものに関する。
油脂を含有する飲食物、例えばコーヒークリームやホイップクリームは、牛乳や生クリーム、全脂粉乳等の乳製品と乳化剤等を組み合わせて製造され、水中油型乳化物として提供されている。
乳製品には乳タンパク質が含まれており、乳タンパク質を加熱すると熱変性により、凝集・沈殿が生じる。これはホエイタンパク質におけるβ-ラクトグロブリンの遊離SH基が
、カゼインミセル表面に存在するκ-カゼインの遊離SH基と分子間ジスルフィド結合によ
り複合体を形成することに起因している。また、ホエイタンパク質のβ-ラクトグロブリ
ンが分子内又は分子間でジスルフィド結合することも要因として挙げられる。
また、乳タンパク質はpH低下により等電点に達すると凝集・沈殿が生じる。このメカニズムは、乳タンパク質が等電点に達する、すなわち正の荷電と負の荷電が等しいとき、タンパク質粒子の周りには荷電が無くなり粒子の分散性が低下するためである。また、この時に、溶解度が最も小さい性質を示すことにより、凝集が起こりやすく、粒子径が大きくなり沈殿しやすくなるものと考えられる。
水中油型乳化物を含む食品の乳化安定性については、乳製品中のタンパク質や乳化剤の界面における作用が影響していることも知られている。食品に用いられる水中油型乳化物においては、粒子径が異なる粒子が広く分布し、長期保存時にオストワルドライプニングが生じ、粗大粒子が形成されることにより、その結果、乳化破壊など不安定化の原因となる。特に、この傾向は食品用乳化剤のみを用いた場合、界面の吸脱着に伴う、油脂の移動を引き起こすため発生しやすい。
一方、カゼインなどの乳タンパク質は、油脂を加えて乳化すると、油滴の表面にタンパク質が吸着して、安定なエマルジョンが形成されることが知られている。つまりタンパク質はある条件下では、乳化剤として機能することを示している。
しかしながら、他の乳化剤と共存させたとき、油滴への吸着能の高さから、乳化剤とタンパク質の競合が生じ、乳化を不安定化させることが知られている。油滴への吸着、すなわちタンパク質-脂質(油滴)相互作用は、タンパク質によって特異性・選択性があり、個
々のタンパク質の構造的要因が深く関与している。このように界面に強く吸着するタンパク質は、pHや熱の影響を受けやすく、食品に用いた場合の共存成分や殺菌過程において、乳化が不安定化する問題があった。
そこで、乳タンパク質を酵素分解してペプチドにすることで、タンパク質と比較して分子の自由度を増加させ、ジスルフィド結合が生じる頻度を低下させることにより、乳タンパク質の熱変性による凝集・沈殿を抑制することが行われている。
また、乳タンパク質固有の等電点をペプチド固有の等電点として、広範囲に分散させることにより、静電的反発が生じて分散性が向上する。更に低分子化することで溶解性が向上することにより、pHや熱に対する安定性が向上し、結果、耐酸性や耐熱性を付与することが可能となる。
例えば、特許文献1や特許文献2では、乳タンパク質を酵素分解して、乳タンパク質分解物とすることで、耐熱性や耐酸性を付与する技術が提案されている。また、乳タンパク質分解物を用いた水中油型乳化組成物として、生クリームに精製ホエイタンパク質加水分解物及び乳化剤を配合し、均質化した生クリーム乳化物(特許文献3)、酸性下でも良好なホイップ機能を有し、風味良好な水中油型乳化物及び水中油型気泡含有乳化物が開示されている(特許文献4)。
しかしながら、酵素種や基質、反応条件の組み合わせにより、様々なタンパク質分解物が得られるが、条件によっては苦味や渋味が発生し、食品そのものに異味を与えることが課題となっている。
一方、近年では乳原料の高騰を受けて、生クリームや牛乳を植物油脂で代替した植脂乳化物の開発が望まれており、更に健康志向の時代の流れを受け、トランス脂肪酸や脂肪酸鎖長16以上の飽和脂肪酸が少ない又は含まないような植物油脂を用いた水中油型乳化物が求められている。
特開平1−23867号公報 特開昭63−068041号公報 特開平7−79699号公報 国際公開WO2012/115144号パンフレット
本発明は、耐酸性、耐熱性、乳化安定性に優れながら、飲食品中に含有されても良好な味を呈する水中油型乳化物を提供することを課題とする。
本発明者らは、乳化安定性の観点から、ペプチドまで分解してタンパク質の一次構造を変化させ、更に分子量分布を制御することにより、乳化剤とタンパク質の競合を抑えることができるのではないかと推測し、検討を行った。その結果、分子量分布を制御することにより、乳化剤とタンパク質分解物それぞれの油滴への安定な吸着が可能となり、良好な乳化安定性を有する水中油型乳化物が得られることを見出した。
さらに、得られたタンパク質分解物のうち、特定の分子量分布を有するものを使用することにより、味や保存安定性の点においても上記課題を解決できることがわかり、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、植物油脂、トリプシン処理により得られたタンパク質分解物及び乳化剤を含有する水中油型乳化物であって、該タンパク質分解物が、分子量分布において、タンパク質分解物に由来する全ての分子(タンパク質、ペプチド及びアミノ酸)のピーク面積の総和に対する、分子量1000〜5000Daの分子のピーク面積の総和が30〜80%である水中油型乳化物に存する。
本発明の別の一形態は、上記水中油型乳化物において、タンパク質分解物がホエイタンパク質分解物である水中油型乳化物に存する。
本発明の別の一形態は、上記水中油型乳化物において、植物油脂が、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ゴマ油、落花
生油、ひまわり油、サフラワー油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、マカデミア種子油、ツバキ種子油、茶実油及びそれらの加工油脂から選ばれる一種または二種以上の植物油脂である水中油型乳化物に存する。
本発明の別の一形態は、上記水中油型乳化物において、植物油脂が、中鎖脂肪酸トリグリセリドである、水中油型乳化物に存する。
本発明の別の一形態は、上記水中油型乳化物において、乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステルである水中油型乳化物に存する。
本発明の別の一形態は、上記水中油型乳化物を含有することを特徴とする、飲食品に存する。
本発明の別の一形態は、流動食である上記飲食品に存する。
本発明の別の一形態は、コーヒー飲料である上記飲食品に存する。
本発明の別の一形態は、植物油脂、トリプシン処理により得られたタンパク質分解物、乳化剤及び水性媒体を混合する工程を含み、タンパク質分解物が、分子量分布において、タンパク質分解物に由来する全ての分子(タンパク質、ペプチド及びアミノ酸)のピーク面積の総和に対する、分子量1000〜5000Daの分子のピーク面積の総和が30〜80%であることを特徴とする、水中油型乳化物の製造方法に存する。
本発明の別の一形態は、上記水中油型乳化物の製造方法において、分子量分布が、サイズ排除クロマトグラフィー分析によるものである水中油型乳化物の製造方法に存する。
本発明の水中油型乳化物は、耐酸性及び耐熱性に優れることから、酸性下での処理及びレトルト処理やその他厳しい加熱処理を行う飲食品に用いられる水中油型乳化物として、又は乳製品代替物として、広範囲な食品分野に適用できる。また、本発明の水中油型乳化物は、乳化安定性に優れ、かつ、風味が良好である。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
本発明は、植物油脂、トリプシン処理により得られたタンパク質分解物及び乳化剤を含む水中油型乳化物であって、該タンパク質分解物が、分子量分布において、タンパク質分解物に由来する全ての分子(タンパク質、ペプチド及びアミノ酸)のピーク面積の総和に対する、分子量1000〜5000Daの分子のピーク面積の総和が30〜80%であることを特徴とする。
1.植物油脂
まず、植物油脂について説明する。植物油脂は特に制限されるものではないが、食用として一般的に使用されるものであればよく、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ゴマ油、落花生油、ひまわり油、サフラワー油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、マカデミア種子油、ツバキ種子油、茶実油などが挙げられる。また、植物油脂として、前記の植物油脂の液状または固体状物を精製や脱臭、分別、硬化、エステル交換といった油脂加工した加工油脂、更にこれらの油脂を分別して得られる液体油を使用することができる。前記加工油脂としては、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、硬化ヤシ油、硬化パーム核油などの硬化油脂が挙げられる。中でも、植物油脂としてはMCTが好ましい。また、これら油脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
本発明で用いる植物油脂は、融点が低く常温で液体の油脂が好ましく、このうち特にト
リグリセリド分子に結合している全脂肪酸に占める炭素数が12以下の脂肪酸の割合が50質量%以上であるものが好ましい。
また、本発明で用いる植物油脂は、沃素価が通常30.0以下、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは3.0以下、最も好ましくは1.0以下であることが、殺菌や高温保存時の酸化臭がなく、良好な風味となるため好適である。
本発明で用いる植物油脂は、酸価が通常1.0以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下、最も好ましくは0.1以下であることが、酸化臭などの不快な風味が低減され、良好な風味となるため好適である。
本発明で用いる植物油脂は、過酸化物価が通常0.2以下、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下、最も好ましくは、0.01以下であることが、殺菌や保存時の酸化臭がなく、良好な風味となるため好適である。
尚、植物油脂を2種以上組み合わせて用いる場合、上記各物性は、2種以上を混合した後の油脂の値である。
水中油型乳化物中の植物油脂の含有量は、通常5質量%以上、好ましくは20質量%以上、通常60質量%以下、好ましくは50質量%以下である。この範囲であることにより、乳化安定性が良好であり、食用に好適である。
2.タンパク質分解物
次にタンパク質分解物について説明する。本発明で用いられるタンパク質分解物は、タンパク質をトリプシン処理して得られるものであるが、このタンパク質としては特に制限されるものではなく、食用として一般的に使用されるものであり、酵素処理等により、本発明の特定の分子量分布を達成することができるものであればよい。
タンパク質としては、例えば、カゼインナトリウム、乳清タンパク質、脱脂粉乳、乳タンパク質濃縮物、アルブミン、ゼラチン、大豆タンパク質などの各種動物および植物由来のタンパク質などが挙げられるが、乳由来のタンパク質(乳タンパク質)が好ましく、中でも乳清タンパク質が好ましい。乳清タンパク質としては、ホエイタンパク質が挙げられ、具体的にはチーズホエイ、酸ホエイ及びそれらの濃縮物または分離物(例えば、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質分離物(WPI))が挙げられる。また、これらタンパク質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
タンパク質としては、β-ラクトグロブリン含量が全タンパク質の70質量%以上であ
るものが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以下であることが好ましい。この範囲であることにより、乳化安定性が良好である。
本発明では、これらタンパク質をトリプシン処理して得られるものを使用する。トリプシン処理の方法は特に限定されるものではないが、例えば以下の様な方法で行う。
まず、タンパク質を水に溶解または分散して、タンパク質を含有する水溶液を調製する。この水溶液中のタンパク質の含有量は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下が好ましい。また、この水溶液のpHは7〜8であることが好ましい。
前記調製した水溶液にトリプシンを添加して酵素処理を行う。添加量は、タンパク質に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。酵素反応は、好ましくは40〜
60℃で通常30分以上、好ましくは1時間以上、通常6時間以下、好ましくは3時間以下で行う。その後、例えば、85℃で10分間加熱することなどにより、酵素を失活させる。
この酵素処理後の水溶液を、凍結乾燥させることにより、粉末状のタンパク質分解物を得る。
本発明ではこのタンパク質分解物として、分子量分布において、タンパク質分解物に由来する全ての分子(タンパク質、ペプチド及びアミノ酸)のピーク面積の総和に対する、分子量1000〜5000Daの分子のピーク面積の総和が30〜80%であるものを使用する。タンパク質分解物の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC:Size Exclusion Chromatography)法により、タンパク質分解物の分析を行い、タンパク質・ペプチド標品より得られた較正曲線から求める。
分子量1000〜5000Daの分子のピーク面積の総和は、タンパク質分解物に由来する全ての分子のピーク面積の総和に対して30〜80%であればよいが、好ましくは40〜70%、より好ましくは50〜70%である。この範囲であることにより、耐酸性、耐熱性、乳化安定性に優れながら、飲食品中に含有されても良好な味を呈する水中油型乳化物を提供することができる。
また、該タンパク質分解物の分子量分布において、5000Daを超える分子のピーク面積の総和は5〜40%が好ましく、10〜30%がより好ましく、20〜30%が特に好
ましい。さらに、1000Da未満の分子のピーク面積の総和は0〜40%が好ましく、0〜30%がより好ましく、0〜20%が特に好ましい。
本発明の水中油型乳化物中におけるタンパク質分解物の含有量は0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい。
3.乳化剤
乳化剤について説明するが、乳化剤としては食用として一般に使用されるものであればよい。例えば、レシチン、リゾレシチン、モノグリセリンコハク酸脂肪酸エステル、モノグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルなどのモノグリセリン有機酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、サポニン、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウムなどが挙げられ、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、モノグリセリンコハク酸脂肪酸エステルが好ましく、ショ糖脂肪酸エステルがより好ましい。
該ショ糖脂肪酸エステルとしては、構成する脂肪酸の炭素数が16〜18のショ糖脂肪酸エステルが好ましく、構成する脂肪酸の組成において30質量%以上が炭素鎖数16であるショ糖脂肪酸エステルがより好ましく、50質量%以上が炭素鎖数16であるショ糖脂肪酸エステルがさらに好ましい。また、ショ糖脂肪酸エステルとしては、モノエステル含量が通常30質量%以上、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、通常90質量%以下であることが、飲食品中における菌に対する有効性が高いため好適である。
乳化剤のHLBは、2以上18以下であることが好ましく、4以上16以下であることがより好ましい。
これらの乳化剤は1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
水中油型乳化物中における乳化剤の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、3質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。
4.その他添加物
本発明の水中油型乳化物中には、植物油脂、トリプシン処理により得られたタンパク質分解物、乳化剤の他、水等の水性媒体、必要に応じて各種添加剤等が含まれていてもよく、例えば、添加剤等としては水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、クエン酸塩、リン酸塩、重曹などのpH調整剤などが挙げられる。
5.水中油型乳化物の製造
本発明の水中油型乳化物は、植物油脂、上記トリプシン処理により得られたタンパク質分解物、乳化剤及び水性媒体を混合して製造する。水中油型乳化物の製造は、常法に基づいて行うことができる。
具体的には、例えば、水(水相)にタンパク質分解物及び乳化剤を溶解または分散させた後、予め30〜80℃程度に加温した植物油脂(油相)を添加する。この分散液を30〜80℃程度に保温しながらホモジナイザー等を用いて均質化処理を行うことにより水中油型乳化物を得る。pH調整をする場合は、タンパク質分解物等を含有する水相にクエン酸などを添加する。水中油型乳化物のpHは、通常8.0〜3.0、好ましくは7.0〜5.0程度である。
6.用途
本発明の水中油型乳化物の用途は特に限定されるものではないが、飲食品に好適であり、耐酸性及び耐熱性、乳化安定性を有するため殺菌処理、レトルト処理、高温加熱処理、酸味系原料を添加した飲食品に好適であり、また、耐酸性及び乳化安定性を有し、風味も良好であり、タンパク源としての使用も可能であるため、流動食としても好適である。
飲食品として具体的には、コーヒー飲料、紅茶飲料、ココア飲料、チョコレート飲料、果汁含有乳飲料、スープなどの油脂含有飲食品、低pH処理及び高温加熱処理される調理食品、レトルト食品、フルーツ等の酸味原料を添加したホイップクリームやムースのようなデザート類、流動化されたチーズ・ヨーグルト、マヨネーズやドレッシングといったタレ・ソース類、コーヒー用クリームなどが挙げられる。
本発明の水中油型乳化物を飲食品に用いる場合、その使用量は従来の水中油型乳化物に準ずることができ、飲食品への添加方法も従来の水中油型乳化物に準ずることができる。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定)
タンパク質分解物のSEC測定は以下の通り行った。
具体的には、15mlのプラスチック遠沈管(IWAKI社製)にサンプル(タンパク質分解
物) 10mgを採取し、SEC移動相溶液10mlをホールピペットで採取して添加し
た後、ボルテックスミキサーで振とう溶解させた。ディスポフィルター(親水性PTFE 0.2
μm)でこの溶液の不溶物をろ過し、このサンプルのSEC測定を行った。
尚、以下のタンパク質・ペプチド標品を用いて、較正曲線を作成した。
Figure 2017038574
また、SEC測定の分析条件は以下の通りとした。
<SEC分析条件>
装置:東ソー社製、HPLCシステム(8020シリーズ)
カラム:TSKgel G2000SWXL (東ソー社製) 300mm×7.8mm i.d
移動相溶液:0.1%TFA + 30%アセトニトリル
流速:1.0ml/min
カラム温度:35℃
検出器:UV 215nm
試料濃度:1mg/ml (Mobile Phase)
注入量:10μL
(実施例1)
水にホエイタンパク質分離物(WPI9410、Hilmar社製)を溶解し、4質量%の濃度のタン
パク質水溶液を得た。タンパク質水溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.0に調整した後、トリプシン(Tripsin from poricine pancreas、SIGMA社製)をホエ
イタンパク質の質量の0.2質量%となるように添加し、60℃で3時間酵素反応を行った。この水溶液に対し、85℃で10分間加熱処理を行い酵素を失活させた後、水溶液を冷却し、凍結乾燥させ、粉末状のタンパク質分解物(ホエイタンパク質加水分解物)を得た。
このタンパク質分解物の分子量分布をSECにより測定したところ、タンパク質分解物に由来する全ての分子のピーク面積の総和に対する、分子量1000〜5000Daの分子のピーク面積の総和が63%であった。また、同様に、分解前のホエイタンパク質の分子量分布を測定したところ、分子量1000〜5000Daの分子のピーク面積の総和が4%であった。得られたタンパク質分解物は苦味がほとんどなく良好な風味を呈していた。
得られたタンパク質分解物1.5質量%及びショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガ
ーエステルP-1670、三菱化学フーズ社製)0.5質量%を脱塩水53質量%に溶解し、こ
れに予め65℃に加温した植物油脂(MCT:スコレー64G)を45質量%添加した。この溶液を65℃に保温しながら、ホモジナイザーを用いて6000rpmで1分間、更に12000rpmで5分間の均質化を行い水中油型乳化物を得た。pHを測定したところ、pH7であった。
得られた水中油型乳化物について、粒子径測定及び外観観察を行った(初期)。外観観
察により、目視で分離の程度を観察して評価した。分離なしを−、分離の程度が小さいものを+、分離の程度が大きいものを++とした。
60℃で1週間及び10℃で2週間後の水中油型乳化物について、上記と同様にして粒子径測定及び外観観察を行い、保存安定性を評価した。
結果を表2に示す。
(比較例1)
水中油型乳化物を調製するに当たり、タンパク質分解物を使用せず、ホエイタンパク質分離物(WPI9410、Hilmar社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして水中油型乳化物
を調製した。
この水中油型乳化物について、実施例1と同様にして、粒子径測定及び外観観察を行い、保存安定性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2017038574
(実施例2)
植物油脂を添加する前に、クエン酸を添加することでpHを5に調整した以外は、実施例1と同様にして、水中油型乳化物を得た。この水中油型乳化物について、実施例1と同様にして、初期と10℃で2週間後の粒子径測定及び外観観察を行い、保存安定性を評価した。結果を表3に示す。
(比較例2)
水中油型乳化物を調製するに当たり、タンパク質分解物を使用せず、ホエイタンパク質分離物(WPI9410、Hilmar社製)を使用した以外は、実施例2と同様にして水中油型乳化物
を調製した。
この水中油型乳化物について、実施例2と同様にして、初期と10℃で2週間後の粒子径測定及び外観観察を行い、保存安定性を評価した。結果を表3に示す。
Figure 2017038574
本発明の水中油型乳化物は、保存後の粒子径の変化がほとんどなく、保存安定性に優れた乳化物であることがわかった。また、本発明の水中油型乳化物は、分離の度合いも比較例に比べて小さかった。
さらに、pH5の酸性下においても、本発明の水中油型乳化物は粒子径は多少大きいも
のの、保存初期の段階では分離は見られず、良好な保存安定性を示すことがわかった。
本発明は、飲食品に応用できる。

Claims (9)

  1. 植物油脂、トリプシン処理により得られたタンパク質分解物及び乳化剤を含有する水中油型乳化物であって、
    該タンパク質分解物が、分子量分布において、タンパク質分解物に由来する全ての分子のピーク面積の総和に対する、分子量1000〜5000Daの分子のピーク面積の総和が30〜80%であることを特徴とする、水中油型乳化物。
  2. 該タンパク質分解物がホエイタンパク質分解物である、請求項1に記載の水中油型乳化物。
  3. 植物油脂が、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ゴマ油、落花生油、ひまわり油、サフラワー油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、マカデミア種子油、ツバキ種子油、茶実油及びそれらの加工油脂から選ばれる一種または二種以上の植物油脂である、請求項1または2に記載の水中油型乳化物。
  4. 植物油脂が、中鎖脂肪酸トリグリセリドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水中油型乳化物。
  5. 乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水中油型乳化物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の水中油型乳化物を含有することを特徴とする、飲食品。
  7. 流動食である、請求項6に記載の飲食品。
  8. コーヒー飲料である、請求項6に記載の飲食品。
  9. 植物油脂、トリプシン処理により得られたタンパク質分解物、乳化剤及び水性媒体を混合する工程を含み、
    該タンパク質分解物が、分子量分布において、タンパク質分解物に由来する全ての分子のピーク面積の総和に対する、分子量1000〜5000Daの分子のピーク面積の総和が30〜80%であることを特徴とする、水中油型乳化物の製造方法。
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CN111432643A (zh) * 2017-12-22 2020-07-17 雀巢产品有限公司 奶精组合物
CN113115821A (zh) * 2019-12-30 2021-07-16 丰益(上海)生物技术研发中心有限公司 含多肽的结构化乳液

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JPH02257838A (ja) * 1988-12-16 1990-10-18 Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd 耐酸、耐熱性水中油型乳化脂組成物及び該組成物を含有する食品

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