JP2017012068A - 水中油型乳化組成物の製造方法及び加熱調理食品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生クリーム様の自然な風味を有し、加熱調理適性に優れた水中油型乳化組成物を提供する。【解決手段】植物油脂、乳脂肪及び乳脂肪分解物を含有する原料組成物を調製する工程、前記原料組成物を殺菌、均質化処理する工程、を含む水中油型乳化組成物の製造方法であって、前記乳脂肪分解物は、炭素数4及び炭素数6の短鎖脂肪酸、並びに炭素数10及び炭素数12の中鎖脂肪酸を含有し、かつ、前記原料組成物は、前記乳脂肪分解物を0.01〜10質量%含有する原料組成物である、水中油型乳化組成物の製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、耐熱性及び耐酸性が良好な水中油型乳化組成物の製造方法、並びに当該水中油型乳化組成物を使用した加熱調理食品の製造方法に関する。
生乳から乳脂肪以外の成分を除去した、いわゆる生クリームは、口あたりや口溶けが良く、起泡させてホイップドクリームとして用いるだけでなく、乳のコク味や香りを付与するために様々な料理に添加する調理用途としても広く用いられている。しかしながら、生クリームは比較的高価な素材であるため、生クリームよりも安価に製造することができる植物油脂を原料とする合成クリームには、生クリームの代替としての需要が存在する。しかしながら、合成クリームでは、乳のコク味や香りを生クリームと同じように再現することは難しい。
そこで、このような合成クリーム等の水中油型乳化組成物の風味を向上させるために、フレーバー等を水中油型乳化組成物に添加することがある。このようなフレーバーとしては、乳原料等を発酵させて得られるフレーバー組成物があり、当該フレーバー組成物を合成クリーム等の水中油型乳化組成物に添加して乳のコク味や香りを増強させる手法が知られている。
例えば、特許文献1には、調合香料を乳酸菌やプロピオン酸菌により発酵させると、該調合香料が極めてナチュラルな乳製品フレーバーを有するものになることが記載されている。具体的には、生クリームと香料とを含む組成物に乳酸菌を接種して培養することによって、まろやかで香気の強いクリーム・フレーバーが得られることが記載されている。
また、特許文献2には、乳原料水溶液に乳酸菌を接種して静置培養し、次いで培養液を香気条件下でジアセチルを生成せしめる発酵フレーバーの製造方法が開示されている。
例えば、特許文献1には、調合香料を乳酸菌やプロピオン酸菌により発酵させると、該調合香料が極めてナチュラルな乳製品フレーバーを有するものになることが記載されている。具体的には、生クリームと香料とを含む組成物に乳酸菌を接種して培養することによって、まろやかで香気の強いクリーム・フレーバーが得られることが記載されている。
また、特許文献2には、乳原料水溶液に乳酸菌を接種して静置培養し、次いで培養液を香気条件下でジアセチルを生成せしめる発酵フレーバーの製造方法が開示されている。
しかし、本発明者等の知見によれば、従来の乳製品等に用いられるフレーバーを合成クリーム等の水中油型乳化組成物へ添加しても、該水中油型乳化組成物を加熱調理食品の製造に用いた場合には、加熱調理食品に生クリームと同様の自然なコク味と香りを付与することは難しく、さらに、生クリームよりも加熱による分離が生じやすいために、加熱調理食品の食感を低下させてしまうことがあった。
そこで、本発明者等が研究を進めた結果、植物油脂と乳脂肪を含有する水中油型乳化組成物の製造において、乳脂肪分解物を添加して製造することにより、水中油型乳化組成物の耐熱性や耐酸性の効果が向上することを見いだした。
さらに、当該水中油型乳化組成物の製造の際に用いられる乳脂肪分解物として、炭素数4及び6の短鎖脂肪酸の含有量の和に対する、炭素数10及び12の中鎖脂肪酸の含有量の和の質量比が2〜5である乳脂肪分解物を使用することにより、製造される水中油型乳化組成物をホワイトソース等の加熱調理食品の原料の一部に用いることで、加熱調理食品の加熱調理適性が向上すると共に、加熱調理食品に生クリーム様の自然なコク味および香りに付与することができることを見出し、本発明を完成させた。
さらに、当該水中油型乳化組成物の製造の際に用いられる乳脂肪分解物として、炭素数4及び6の短鎖脂肪酸の含有量の和に対する、炭素数10及び12の中鎖脂肪酸の含有量の和の質量比が2〜5である乳脂肪分解物を使用することにより、製造される水中油型乳化組成物をホワイトソース等の加熱調理食品の原料の一部に用いることで、加熱調理食品の加熱調理適性が向上すると共に、加熱調理食品に生クリーム様の自然なコク味および香りに付与することができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、生クリーム様の自然な風味を有し、加熱調理適性に優れた水中油型乳化組成物の製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、前記の製造された水中油型乳化組成物と乳成分を含む加熱調理食品の原料とを混合し、熱処理して調製することにより、乳風味が十分に発揮された加熱調理食品の製造方法を提供することも目的としている。
さらに、本発明は、前記の製造された水中油型乳化組成物と乳成分を含む加熱調理食品の原料とを混合し、熱処理して調製することにより、乳風味が十分に発揮された加熱調理食品の製造方法を提供することも目的としている。
前記課題を解決するための本開示における第一の発明は、植物油脂、乳脂肪及び乳脂肪分解物を含有する原料組成物を調製する工程、調製された前記原料組成物を殺菌し、均質化処理する工程、を含む水中油型乳化組成物の製造方法であって、前記乳脂肪分解物は、炭素数4及び炭素数6の短鎖脂肪酸、並びに炭素数10及び炭素数12の中鎖脂肪酸を含有し、かつ、前記原料組成物は、前記乳脂肪分解物を0.01〜10質量%含有する原料組成物である、水中油型乳化組成物の製造方法である。
また、第一の発明は、前記乳脂肪分解物が、乳脂肪分解物に含まれる炭素数4及び炭素数6の短鎖脂肪酸の含有量の和に対する、炭素数10及び炭素数12の中鎖脂肪酸の含有量の和の質量比が2〜5であることを好ましい態様としている。
さらに、第一の発明は、前記乳脂肪分解物が、さらに炭素数16及び炭素数18の長鎖脂肪酸を含有し、前記乳脂肪分解物に含まれる炭素数4及び炭素数6の短鎖脂肪酸の含有量の合計に対する炭素数16及び炭素数18の長鎖脂肪酸の含有量の合計の質量比が5〜12であることを好ましい態様としている。
前記課題を解決するための本開示における第二の発明は、植物油脂、乳脂肪及び乳脂肪分解物を含有する原料組成物を調製する工程、調製された前記原料組成物を殺菌し、均質化処理して水中油型乳化組成物を調製する工程、並びに調製された前記水中油型乳化組成物と、乳成分を含む加熱調理食品の原料と、を混合して熱処理する工程、を含む加熱調理食品の製造方法であって、前記乳脂肪分解物は、炭素数4及び炭素数6の短鎖脂肪酸、並びに炭素数10及び炭素数12の中鎖脂肪酸を含有し、かつ前記原料組成物は、前記乳脂肪分解物を0.01〜10質量%含有する原料組成物である、加熱調理食品の製造方法である。
また、第二の発明は、前記加熱調理食品が、ホワイトソースであることを好ましい態様としている。
本発明によれば、耐熱性及び耐酸性が良好な水中油型乳化組成物の製造方法を提供することができる。製造される水中油型乳化組成物は、植物油脂を含んでいながら、生クリームの様な自然なコク味と香りを有し、さらに耐熱性、耐酸性等の加熱調理適性に優れている。また、当該水中油型乳化組成物は、乳成分を含む加熱調理食品の原料の一部として利用して加熱調理食品を製造することが可能であり、製造される加熱調理食品の乳風味を一層際立たせることができる。
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
[1]水中油型乳化組成物の製造方法
本開示における第一の発明である水中油型乳化組成物の製造方法は、植物油脂、乳脂肪及び乳脂肪分解物を含有する原料組成物の調製工程及び当該原料組成物の殺菌・均質化処理工程を含むものである。各々の工程は、以下に詳記するとおりのものである。
本開示における第一の発明である水中油型乳化組成物の製造方法は、植物油脂、乳脂肪及び乳脂肪分解物を含有する原料組成物の調製工程及び当該原料組成物の殺菌・均質化処理工程を含むものである。各々の工程は、以下に詳記するとおりのものである。
(1)原料組成物の調製工程
本工程は、植物油脂、乳脂肪及び乳脂肪分解物を含有する原料組成物を調製する工程である。具体的には、以下の手順にて原料組成物を調製する。
すなわち、植物油脂を60〜80℃に加温して液状にし、必要に応じて、これに乳化剤、好ましくは油溶性乳化剤、及び油溶性のビタミン類等のその他の原料を添加し、混合溶解することにより油相部を調製する。
次に、60〜80℃に加温した水に、脱脂粉乳、カゼインナトリウム、クエン酸ナトリウム及び乳化剤、等のその他成分を添加し、混合溶解することにより水相部を調製する。
続いて、前記油相部と前記水相部とを混合して混合液を調製し、当該混合液を60〜80℃の温度に調整した後、均質化処理(予備均質)を行う。均質化処理は、ホモミキサー、ホモゲナイザー等を用いた公知の均質化手段によって行うことができる。
さらに、前記均質化処理をした混合液と、乳脂肪を含有する原料及び乳脂肪分解物とを混合し、撹拌して原料組成物を調製する。
本工程は、植物油脂、乳脂肪及び乳脂肪分解物を含有する原料組成物を調製する工程である。具体的には、以下の手順にて原料組成物を調製する。
すなわち、植物油脂を60〜80℃に加温して液状にし、必要に応じて、これに乳化剤、好ましくは油溶性乳化剤、及び油溶性のビタミン類等のその他の原料を添加し、混合溶解することにより油相部を調製する。
次に、60〜80℃に加温した水に、脱脂粉乳、カゼインナトリウム、クエン酸ナトリウム及び乳化剤、等のその他成分を添加し、混合溶解することにより水相部を調製する。
続いて、前記油相部と前記水相部とを混合して混合液を調製し、当該混合液を60〜80℃の温度に調整した後、均質化処理(予備均質)を行う。均質化処理は、ホモミキサー、ホモゲナイザー等を用いた公知の均質化手段によって行うことができる。
さらに、前記均質化処理をした混合液と、乳脂肪を含有する原料及び乳脂肪分解物とを混合し、撹拌して原料組成物を調製する。
ここで、前記乳脂肪分解物は、原料組成物の調製工程において、原料組成物中に均一に混合されていれば、原料組成物の調製工程前のいずれの段階で添加しても良い。例えば、前記水相部に添加しても良いし、前記油相部と前記水相部とを均質化処理する前の混合液に添加することもできる。
なお、前記原料組成物は、乳脂肪分解物を0.01〜10質量%含有することが好ましく、0.1〜5質量%含有することがより好ましい。原料組成物中の乳脂肪分解物の含有量が、0.01〜10質量%の範囲内であれば、耐熱性及び耐酸性に優れ、乳の自然なコク味を有する水中油型乳化組成物を製造することができる。
(1−1)油相部
前記原料組成物の調製工程において調製される油相部は、植物油脂を主体とした油脂原料及びその他の油溶性原料を含むものである。
そのような油脂原料は、植物油脂のみから構成されるものであっても良いが、油中水型で油脂に容易に分散するものを含んでいても良く、例えば、乳脂肪以外の動物性油脂が含まれていても良い。
前記植物油脂としては、ベニバナ油(サフラワー油)、オリーブ油、大豆油、アマニ油、米胚芽油、小麦胚芽油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、菜種油、ゴマ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ヤシ油、グレープシードオイル、及びこれらを混合したもの等を用いることができる。
前記原料組成物の調製工程において調製される油相部は、植物油脂を主体とした油脂原料及びその他の油溶性原料を含むものである。
そのような油脂原料は、植物油脂のみから構成されるものであっても良いが、油中水型で油脂に容易に分散するものを含んでいても良く、例えば、乳脂肪以外の動物性油脂が含まれていても良い。
前記植物油脂としては、ベニバナ油(サフラワー油)、オリーブ油、大豆油、アマニ油、米胚芽油、小麦胚芽油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、菜種油、ゴマ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ヤシ油、グレープシードオイル、及びこれらを混合したもの等を用いることができる。
(1−2)水相部
前記原料組成物の調製工程において調製される水相部は、蛋白質類、炭水化物類、ミネラル類、乳化剤、水溶性のビタミン類、香料、着色料等の水溶性の原料を含むものである。
蛋白質類としては、乳由来の蛋白質を含むものであればよく、具体的には牛乳、濃縮乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、乳蛋白質濃縮物、乳清蛋白質濃縮物(WPC)、バターミルクパウダー、カゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインカリウム等が挙げられる。炭水化物類としては、ショ糖、乳糖、デキストリン、その他の単糖類、オリゴ糖類、加工澱粉、セルロース等の多糖類等を添加することができる。ミネラル類としては、ナトリウム、カリウム等のミネラル塩が例示され、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸カリウム等が挙げられる。乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、シュガーエステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が例示される。
前記原料組成物の調製工程において調製される水相部は、蛋白質類、炭水化物類、ミネラル類、乳化剤、水溶性のビタミン類、香料、着色料等の水溶性の原料を含むものである。
蛋白質類としては、乳由来の蛋白質を含むものであればよく、具体的には牛乳、濃縮乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、乳蛋白質濃縮物、乳清蛋白質濃縮物(WPC)、バターミルクパウダー、カゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインカリウム等が挙げられる。炭水化物類としては、ショ糖、乳糖、デキストリン、その他の単糖類、オリゴ糖類、加工澱粉、セルロース等の多糖類等を添加することができる。ミネラル類としては、ナトリウム、カリウム等のミネラル塩が例示され、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸カリウム等が挙げられる。乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、シュガーエステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が例示される。
(1−3)乳脂肪を含有する原料
前記原料組成物に含まれる乳脂肪を含有する原料は、植物油脂を含まず、脂肪分として乳脂肪のみを含有する水中油型の溶液であり、具体的には、生クリーム、発酵クリーム、牛乳、濃縮乳等が例示できる。また、生クリームや牛乳等を粉末化したものを水に溶解したものであっても良いし、バターやバターオイルを乳脂肪源として無脂乳固形分等により水中油型に乳化させて調製した液であっても良い。さらに、これらの混合物であってもよい。
前記生クリームは、食品衛生法の乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(以下、「乳等省令」と略記することがある。)で規定されるクリームを意味する。すなわち、生乳、牛乳、特別牛乳から脂肪分以外の成分を除去したものであり、乳脂肪分を18%以上含み、添加物を使用していないものを意味する。また、前記発酵クリームとは、生クリームを乳酸発酵させたものを意味する。
前記バターは、乳脂肪分を80質量%以上含むものであり、乳等省令で規定されるものを意味する。
前記原料組成物に含まれる乳脂肪を含有する原料は、植物油脂を含まず、脂肪分として乳脂肪のみを含有する水中油型の溶液であり、具体的には、生クリーム、発酵クリーム、牛乳、濃縮乳等が例示できる。また、生クリームや牛乳等を粉末化したものを水に溶解したものであっても良いし、バターやバターオイルを乳脂肪源として無脂乳固形分等により水中油型に乳化させて調製した液であっても良い。さらに、これらの混合物であってもよい。
前記生クリームは、食品衛生法の乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(以下、「乳等省令」と略記することがある。)で規定されるクリームを意味する。すなわち、生乳、牛乳、特別牛乳から脂肪分以外の成分を除去したものであり、乳脂肪分を18%以上含み、添加物を使用していないものを意味する。また、前記発酵クリームとは、生クリームを乳酸発酵させたものを意味する。
前記バターは、乳脂肪分を80質量%以上含むものであり、乳等省令で規定されるものを意味する。
(1−4)乳脂肪分解物
前記原料組成物に含まれる乳脂肪分解物は、乳脂肪を含む水溶液にリパーゼを添加して酵素分解して得られる酵素処理物であり、乳脂肪が当該酵素により分解されることにより生成する脂肪酸を含むものである。なお、前記乳脂肪を含む水溶液としては、乳脂肪が水に分散され、乳脂肪含有量が43〜60質量%の水溶液であれば特に制限されず、例えば、生クリーム、並びに、バター、発酵バター及びバターオイル等から調製した水溶液等が挙げられる。
また、前記乳脂肪分解物は、水中油型のエマルジョン状態で、油浮きや離水のないものであることが好ましいため、乳蛋白質、乳化剤及び安定剤等の乳化助剤を含有していても良い。
前記原料組成物に含まれる乳脂肪分解物は、乳脂肪を含む水溶液にリパーゼを添加して酵素分解して得られる酵素処理物であり、乳脂肪が当該酵素により分解されることにより生成する脂肪酸を含むものである。なお、前記乳脂肪を含む水溶液としては、乳脂肪が水に分散され、乳脂肪含有量が43〜60質量%の水溶液であれば特に制限されず、例えば、生クリーム、並びに、バター、発酵バター及びバターオイル等から調製した水溶液等が挙げられる。
また、前記乳脂肪分解物は、水中油型のエマルジョン状態で、油浮きや離水のないものであることが好ましいため、乳蛋白質、乳化剤及び安定剤等の乳化助剤を含有していても良い。
当該乳脂肪分解物は、短鎖脂肪酸である炭素数4の酪酸(以下、「C4」と表記する場合がある。)及び炭素数6のカプロン酸(以下、「C6」と表記する場合がある。)、並びに中鎖脂肪酸である炭素数10のカプリン酸(以下、「C10」と表記する場合がある。)及び炭素数12のラウリル酸(以下、「C12」と表記する場合がある。)を含有する。
さらに、当該乳脂肪分解物は、炭素数4および炭素数6の短鎖脂肪酸の含有量の合計に対する、炭素数10および炭素数12の中鎖脂肪酸の含有量の合計の質量比(C10+C12)/(C4+C6)が2〜5であることが好ましい。当該質量比が2〜5の範囲であれば、耐熱性及び耐酸性等の加熱調理適性に優れた水中油型乳化組成物を製造することができる。
さらに、当該乳脂肪分解物は、炭素数4および炭素数6の短鎖脂肪酸の含有量の合計に対する、炭素数10および炭素数12の中鎖脂肪酸の含有量の合計の質量比(C10+C12)/(C4+C6)が2〜5であることが好ましい。当該質量比が2〜5の範囲であれば、耐熱性及び耐酸性等の加熱調理適性に優れた水中油型乳化組成物を製造することができる。
また、前記乳脂肪分解物は、さらに長鎖脂肪酸である炭素数16のパルミチン酸(以下、「C16」と表記する場合がある。)及び炭素数18のステアリン酸(以下、「C18」と表記する場合がある。)を含有することが好ましい。
また、当該乳脂肪分解物に長鎖脂肪酸が含有されている場合は、炭素数4および炭素数6の短鎖脂肪酸の含有量の合計に対する、炭素数16および炭素数18の長鎖脂肪酸の含有量の合計の質量比(C16+C18)/(C4+C6)が5〜12であることが好ましい。当該質量比が5〜12の範囲であれば、加熱調理食品に乳の自然なコク味を付与する効果に優れた水中油型乳化組成物を製造することができる。
また、当該乳脂肪分解物に長鎖脂肪酸が含有されている場合は、炭素数4および炭素数6の短鎖脂肪酸の含有量の合計に対する、炭素数16および炭素数18の長鎖脂肪酸の含有量の合計の質量比(C16+C18)/(C4+C6)が5〜12であることが好ましい。当該質量比が5〜12の範囲であれば、加熱調理食品に乳の自然なコク味を付与する効果に優れた水中油型乳化組成物を製造することができる。
(2)原料組成物の殺菌・均質化工程
前記工程にて調製した原料組成物は、殺菌、均質化処理を行う。原料組成物の殺菌は、クリーム類の製造に用いられる公知の方法、例えば、高温短時間殺菌法(HTST)、超高温殺菌法(UHT)等の方法により行うことができる。殺菌に使用する機器としては、プレート式熱交換機、インジェクション式殺菌機、インフュージョン式殺菌機等を使用することができる。殺菌条件(温度と処理時間)は、殺菌方法や殺菌機に応じて適宜設定することができ、例えば、高温短時間殺菌法(HTST)の場合は82〜85℃で5〜15秒間殺菌することが好ましく、超高温殺菌法(UHT)の場合は120℃〜150℃で2〜15秒間殺菌することが好ましい。
前記工程にて調製した原料組成物は、殺菌、均質化処理を行う。原料組成物の殺菌は、クリーム類の製造に用いられる公知の方法、例えば、高温短時間殺菌法(HTST)、超高温殺菌法(UHT)等の方法により行うことができる。殺菌に使用する機器としては、プレート式熱交換機、インジェクション式殺菌機、インフュージョン式殺菌機等を使用することができる。殺菌条件(温度と処理時間)は、殺菌方法や殺菌機に応じて適宜設定することができ、例えば、高温短時間殺菌法(HTST)の場合は82〜85℃で5〜15秒間殺菌することが好ましく、超高温殺菌法(UHT)の場合は120℃〜150℃で2〜15秒間殺菌することが好ましい。
さらに、殺菌した原料組成物を、冷却プレート等の熱交換機により速やかに60〜90℃に冷却した後、均質化処理を行う。均質化処理は、ホモミキサー、ホモゲナイザー等の公知の均質化手段によって行うことができる。
続いて、均質化処理をした原料組成物を、冷却プレート等の熱交換機を用いて、速やかに10℃以下に冷却する。冷却した原料組成物は、温度を10℃以下に保持しながら必要に応じて6〜36時間エージングを行い、これを本発明における水中油型乳化組成物として得ることができる。
(2−1)水中油型乳化組成物
本発明の製造方法によって製造される水中油型乳化組成物は、乳脂肪及び植物油脂を含有し、脂肪分が水中油型の状態で分散した組成物である。具体的には、合成クリームやコンパウンドクリームが含まれる。
前記水中油型乳化組成物は、乳脂肪分を0.1〜30質量%含有することが好ましく、1〜20質量%含有することがより好ましい。また、植物油脂を10〜40質量%含有することが好ましく、30〜40質量%含有することがより好ましい。
本発明の製造方法によって製造される水中油型乳化組成物は、乳脂肪及び植物油脂を含有し、脂肪分が水中油型の状態で分散した組成物である。具体的には、合成クリームやコンパウンドクリームが含まれる。
前記水中油型乳化組成物は、乳脂肪分を0.1〜30質量%含有することが好ましく、1〜20質量%含有することがより好ましい。また、植物油脂を10〜40質量%含有することが好ましく、30〜40質量%含有することがより好ましい。
前記水中油型乳化組成物は、耐熱性に優れているため、後述する加熱調理食品の製造に好適に使用することができる。また、本発明の水中油型乳化組成物は、耐酸性にも優れているため、白ワイン等の酸性度の高い(pHの低い)材料を使用する加熱調理食品に対して特に好適に用いることができる。
なお、本発明の製造方法により製造される水中油型乳化組成物は、前記のとおり、加熱調理食品の製造に好適に用いられるものであるが、このことは当該水中油型乳化組成物の非加熱調理食品への使用を妨げるものではない。
なお、本発明の製造方法により製造される水中油型乳化組成物は、前記のとおり、加熱調理食品の製造に好適に用いられるものであるが、このことは当該水中油型乳化組成物の非加熱調理食品への使用を妨げるものではない。
[2]加熱調理食品の製造方法
本開示における第二の発明は、前記第一の発明によって製造される水中油型乳化組成物を使用した加熱調理食品の製造方法である。
すなわち、植物油脂、乳脂肪及び乳脂肪分解物を含有する原料組成物を調製する工程、調製された前記原料組成物を殺菌し、均質化処理して水中油型乳化組成物を調製する工程、並びに調製された前記水中油型乳化組成物と、乳成分を含む加熱調理食品の原料と、を混合して熱処理する工程、を含む加熱調理食品の製造方法であって、前記乳脂肪分解物は、炭素数4及び炭素数6の短鎖脂肪酸、並びに炭素数10及び炭素数12の中鎖脂肪酸を含有し、かつ前記原料組成物は、前記乳脂肪分解物を0.01〜10質量%含有する原料組成物である、加熱調理食品の製造方法である。
本開示における第二の発明は、前記第一の発明によって製造される水中油型乳化組成物を使用した加熱調理食品の製造方法である。
すなわち、植物油脂、乳脂肪及び乳脂肪分解物を含有する原料組成物を調製する工程、調製された前記原料組成物を殺菌し、均質化処理して水中油型乳化組成物を調製する工程、並びに調製された前記水中油型乳化組成物と、乳成分を含む加熱調理食品の原料と、を混合して熱処理する工程、を含む加熱調理食品の製造方法であって、前記乳脂肪分解物は、炭素数4及び炭素数6の短鎖脂肪酸、並びに炭素数10及び炭素数12の中鎖脂肪酸を含有し、かつ前記原料組成物は、前記乳脂肪分解物を0.01〜10質量%含有する原料組成物である、加熱調理食品の製造方法である。
当該熱処理する工程とは、加熱手段に関わらず製造工程において原料の温度を上昇させる工程を意味する。熱処理の方法は、製造工程において原料の温度を上昇させる手段が含まれている限り、直接加熱であっても、間接加熱であっても良い。
また、加熱調理食品の一部又は全部の原料を加熱しながら、本発明の製造方法により得られた水中油型乳化組成物を添加する方法により製造されても良い。
また、加熱調理食品の一部又は全部の原料を加熱しながら、本発明の製造方法により得られた水中油型乳化組成物を添加する方法により製造されても良い。
[加熱調理食品]
前記加熱調理食品としては、ホワイトソース、クリームシチュー、グラタン、デミグラスソース、ビーフシチュー、ミネストローネ、パスタソース等を例示することができる。
また、本発明において、乳成分を含む加熱調理食品とは、その製造工程において、生クリームや牛乳等の乳成分を含む素材を原料として使用する加熱調理食品を意味する。例えば、乳成分を含む加熱調理食品として、ホワイトソース、クリームシチュー、グラタン等が挙げられる。
前記加熱調理食品としては、ホワイトソース、クリームシチュー、グラタン、デミグラスソース、ビーフシチュー、ミネストローネ、パスタソース等を例示することができる。
また、本発明において、乳成分を含む加熱調理食品とは、その製造工程において、生クリームや牛乳等の乳成分を含む素材を原料として使用する加熱調理食品を意味する。例えば、乳成分を含む加熱調理食品として、ホワイトソース、クリームシチュー、グラタン等が挙げられる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[製造例1]乳脂肪分解物の製造
生クリーム(森永乳業株式会社製)2.9kgに水0.3kg、発酵バター(森永乳業株式会社製)0.7kg、脱脂粉乳(森永乳業株式会社製)0.1kgを加えて混合し、80℃で1分間加熱して殺菌した後、37℃に冷却した。この混合液に、反応器内で、キャンディダ属の微生物由来のリパーゼ(天野エンザイム社製)0.4gを添加し、37℃に保持しながら撹拌して3時間酵素反応を行った。酵素反応終了後の酵素処理物を加熱して85℃まで昇温させ、キサンタンガム(小川香料社製)2gを添加した。85℃に達した後、撹拌しながら85℃にて30分間保持して酵素を失活させた。
酵素失活後の酵素処理物に、モノグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学社製)12gを添加し、さらに85℃ に保持しながら30分間撹拌することによって乳化し、10℃以下に冷却して乳脂肪分解物を得た。
生クリーム(森永乳業株式会社製)2.9kgに水0.3kg、発酵バター(森永乳業株式会社製)0.7kg、脱脂粉乳(森永乳業株式会社製)0.1kgを加えて混合し、80℃で1分間加熱して殺菌した後、37℃に冷却した。この混合液に、反応器内で、キャンディダ属の微生物由来のリパーゼ(天野エンザイム社製)0.4gを添加し、37℃に保持しながら撹拌して3時間酵素反応を行った。酵素反応終了後の酵素処理物を加熱して85℃まで昇温させ、キサンタンガム(小川香料社製)2gを添加した。85℃に達した後、撹拌しながら85℃にて30分間保持して酵素を失活させた。
酵素失活後の酵素処理物に、モノグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学社製)12gを添加し、さらに85℃ に保持しながら30分間撹拌することによって乳化し、10℃以下に冷却して乳脂肪分解物を得た。
得られた乳脂肪分解物は、炭素数4及び炭素数6の短鎖脂肪酸の含有量の和に対する、炭素数10及び12の中鎖脂肪酸の含有量の和の質量比(C10+C12)/(C4+C6)が2.1であり、炭素数4及び炭素数6の短鎖脂肪酸の含有量の和に対する、炭素数16及び18の長鎖脂肪酸の含有量の和の質量比(C16+C18)/(C4+C6)が8.7であった。
<水中油型乳化組成物の製造>
[実施例1]
本発明の製造方法によって製造される水中油型乳化組成物として、合成クリームを製造した。
まず、菜種油(日清オイリオグループ株式会社製)33.0kgを70℃に加温した後、レシチン(株式会社Jオイルミルズ社製)1.5kg、及び油溶性のシュガーエステル(三菱化学フーズ社製)0.5kgを添加して固形物がなくなるまでよく撹拌し、溶解して油相部を調製した。
これとは別に、36.9kgの水を70℃まで加温した後、水溶性のシュガーエステル(三菱化学フーズ社製)0.5kg、脱脂粉乳(森永乳業株式会社製)2.8kg、カゼインナトリウム(フォンテラ社製)0.9kg、クエン酸3ナトリウム(株式会社サンフコ製)0.2kg、及び製造例1にて製造した乳脂肪分解物4.0kgを添加して固形物がなくなるまで撹拌し、溶解して水相部を得た。
調製した前記油相部と前記水相部とを混合し、これを70℃まで加熱した後、全圧3MPa、2段目圧力1MPaに設定した2段均質機により均質化して混合液を調製した。
次に、生乳を遠心分離して脂肪分以外の成分を除去して脂肪分48質量%の生クリームを調製した。
[実施例1]
本発明の製造方法によって製造される水中油型乳化組成物として、合成クリームを製造した。
まず、菜種油(日清オイリオグループ株式会社製)33.0kgを70℃に加温した後、レシチン(株式会社Jオイルミルズ社製)1.5kg、及び油溶性のシュガーエステル(三菱化学フーズ社製)0.5kgを添加して固形物がなくなるまでよく撹拌し、溶解して油相部を調製した。
これとは別に、36.9kgの水を70℃まで加温した後、水溶性のシュガーエステル(三菱化学フーズ社製)0.5kg、脱脂粉乳(森永乳業株式会社製)2.8kg、カゼインナトリウム(フォンテラ社製)0.9kg、クエン酸3ナトリウム(株式会社サンフコ製)0.2kg、及び製造例1にて製造した乳脂肪分解物4.0kgを添加して固形物がなくなるまで撹拌し、溶解して水相部を得た。
調製した前記油相部と前記水相部とを混合し、これを70℃まで加熱した後、全圧3MPa、2段目圧力1MPaに設定した2段均質機により均質化して混合液を調製した。
次に、生乳を遠心分離して脂肪分以外の成分を除去して脂肪分48質量%の生クリームを調製した。
当該調製した生クリーム21.5kgと、先に調製した前記混合液78.5kgとを混合し、植物油脂、乳脂肪及び乳脂肪分解物を含有する原料組成物を調製した。なお、当該原料組成物に占める乳脂肪分解物の含有量は4質量%であった。
当該原料組成物を殺菌機にて135℃、2秒間の条件で加熱殺菌をした後、速やかに70℃まで冷却した。その後、70℃に維持された原料組成物を、全圧5MPa、2段目圧力2MPaに設定した2段均質機にて均質化した後、7℃まで冷却し、本発明の水中油型乳化組成物である合成クリーム(実施品1)を製造した。当該合成クリームの脂肪分は45質量%であり、そのうち33質量%が植物油脂由来であり、12質量%が乳脂肪であった。
当該原料組成物を殺菌機にて135℃、2秒間の条件で加熱殺菌をした後、速やかに70℃まで冷却した。その後、70℃に維持された原料組成物を、全圧5MPa、2段目圧力2MPaに設定した2段均質機にて均質化した後、7℃まで冷却し、本発明の水中油型乳化組成物である合成クリーム(実施品1)を製造した。当該合成クリームの脂肪分は45質量%であり、そのうち33質量%が植物油脂由来であり、12質量%が乳脂肪であった。
[比較例1]
比較例として、実施例1にて使用した乳脂肪分解物の代わりに、遊離脂肪酸を含む乳脂肪分解物を含有しない発酵フレーバーを用いて、合成クリーム(比較品1)の製造を行った。
ここで、比較品1の製造に使用した発酵フレーバーは、特許第2756183号公報の実施例1に記載されている方法と同様の方法により調製したものを用いた。
比較例として、実施例1にて使用した乳脂肪分解物の代わりに、遊離脂肪酸を含む乳脂肪分解物を含有しない発酵フレーバーを用いて、合成クリーム(比較品1)の製造を行った。
ここで、比較品1の製造に使用した発酵フレーバーは、特許第2756183号公報の実施例1に記載されている方法と同様の方法により調製したものを用いた。
まず、菜種油(日清オイリオグループ株式会社製)36.0kgを70℃に加温し後、レシチン(株式会社Jオイルミルズ社製)0.34kgを添加して固形物がなくなるまでよく撹拌して溶解し油相部を調製した。
次に、37.7kgの水を70℃まで加温した後、油溶性のシュガーエステル(三菱化学フーズ社製)0.3kg、脱脂粉乳(森永乳業株式会社製)2.8kg、カゼインナトリウム(フォンテラ社製)0.9kg、クエン酸3ナトリウム(株式会社サンフコ製)0.2kg、及び前記発酵フレーバー0.3kgを添加して固形物がなくなるまで撹拌溶解して水相部を得た。
調製した前記油相部と前記水相部とを混合し、これを70℃まで加熱した後、全圧3MPa、2段目圧力1MPaに設定した2段均質機にて均質化して混合液を調製した。
次に、生乳から脂肪分以外の成分を除去して脂肪分48質量%の生クリームを調製した。当該調製した生クリーム21.5kgと、先に調製した前記混合液78.5kgとを混合して比較原料組成物を得た。
該比較原料組成物を殺菌機にて135℃、2秒間の条件で加熱殺菌をした後、速やかに70℃まで冷却した。
そして、70℃の比較原料組成物を、全圧5MPa、2段目圧力2MPaに設定した2段均質機にて均質化した後、7℃まで冷却して合成クリーム(比較品1)を得た。
当該合成クリームの脂肪分は46質量%であり、そのうち36質量%が植物油脂由来であり、10質量%が乳脂肪であった。
次に、37.7kgの水を70℃まで加温した後、油溶性のシュガーエステル(三菱化学フーズ社製)0.3kg、脱脂粉乳(森永乳業株式会社製)2.8kg、カゼインナトリウム(フォンテラ社製)0.9kg、クエン酸3ナトリウム(株式会社サンフコ製)0.2kg、及び前記発酵フレーバー0.3kgを添加して固形物がなくなるまで撹拌溶解して水相部を得た。
調製した前記油相部と前記水相部とを混合し、これを70℃まで加熱した後、全圧3MPa、2段目圧力1MPaに設定した2段均質機にて均質化して混合液を調製した。
次に、生乳から脂肪分以外の成分を除去して脂肪分48質量%の生クリームを調製した。当該調製した生クリーム21.5kgと、先に調製した前記混合液78.5kgとを混合して比較原料組成物を得た。
該比較原料組成物を殺菌機にて135℃、2秒間の条件で加熱殺菌をした後、速やかに70℃まで冷却した。
そして、70℃の比較原料組成物を、全圧5MPa、2段目圧力2MPaに設定した2段均質機にて均質化した後、7℃まで冷却して合成クリーム(比較品1)を得た。
当該合成クリームの脂肪分は46質量%であり、そのうち36質量%が植物油脂由来であり、10質量%が乳脂肪であった。
[試験例1]水中油型乳化組成物の物性比較試験
前記実施品1及び比較品1の各合成クリーム、並びに市販の生クリーム(脂肪含量45質量%、森永乳業株式会社製)を用いて、以下の手順にて耐熱性及び耐酸性を確認する試験を行った。
前記実施品1及び比較品1の各合成クリーム、並びに市販の生クリーム(脂肪含量45質量%、森永乳業株式会社製)を用いて、以下の手順にて耐熱性及び耐酸性を確認する試験を行った。
<耐熱性試験>
実施品1の合成クリーム150gをフライパンに入れ、IH調理器(製品名:KZ−PH31、パナソニック社製)の「強」設定(消費電力1400W)によりにて4分間加熱した。加熱した実施品1について、50mlを試料として試験管チューブに採取し、該チューブを3000rpmで3分間遠心分離した後、試験管内の試料の状態を目視にて確認した。
比較品1の合成クリーム及び市販の生クリームについても同様の試験を行った。
試験結果は、遠心分離後の試料において、分離のないものを○、若干の分離が見られるものを△、著しく分離しているものを×とし、各試料の耐熱性の評価として比較した。その結果を表1に示した。
実施品1の合成クリーム150gをフライパンに入れ、IH調理器(製品名:KZ−PH31、パナソニック社製)の「強」設定(消費電力1400W)によりにて4分間加熱した。加熱した実施品1について、50mlを試料として試験管チューブに採取し、該チューブを3000rpmで3分間遠心分離した後、試験管内の試料の状態を目視にて確認した。
比較品1の合成クリーム及び市販の生クリームについても同様の試験を行った。
試験結果は、遠心分離後の試料において、分離のないものを○、若干の分離が見られるものを△、著しく分離しているものを×とし、各試料の耐熱性の評価として比較した。その結果を表1に示した。
<耐酸性試験>
白ワイン(商品名「チンザノエクストラドライ」、pH3.0)100gをフライパンに入れ、IH調理器(製品名:KZ−PH31、パナソニック社製)の「強」設定(消費電力1400W)にて1分40秒加熱した。次いで、加熱した白ワインに実施品1の合成クリーム100gを添加して混合液を調製し、IH調理器(製品名:KZ−PH31、パナソニック社製)の「強」設定(消費電力1400W)にてさらに3分20秒加熱した。加熱した混合液50mlを試料として試験管チューブに採取し、該チューブを3000rpmで3分間遠心分離した後、試験管内の試料の状態を目視にて確認した。
比較品1の合成クリーム及び市販の生クリームについても同様の試験を行った。
試験結果は、遠心分離後の試料において、分離のないものを○、若干の分離が見られるものを△、著しく分離しているものを×とし、各試料の耐酸性の評価として比較した。その結果を表1に示した。
白ワイン(商品名「チンザノエクストラドライ」、pH3.0)100gをフライパンに入れ、IH調理器(製品名:KZ−PH31、パナソニック社製)の「強」設定(消費電力1400W)にて1分40秒加熱した。次いで、加熱した白ワインに実施品1の合成クリーム100gを添加して混合液を調製し、IH調理器(製品名:KZ−PH31、パナソニック社製)の「強」設定(消費電力1400W)にてさらに3分20秒加熱した。加熱した混合液50mlを試料として試験管チューブに採取し、該チューブを3000rpmで3分間遠心分離した後、試験管内の試料の状態を目視にて確認した。
比較品1の合成クリーム及び市販の生クリームについても同様の試験を行った。
試験結果は、遠心分離後の試料において、分離のないものを○、若干の分離が見られるものを△、著しく分離しているものを×とし、各試料の耐酸性の評価として比較した。その結果を表1に示した。
前記結果から、本発明の製造方法によって製造される実施品1の合成クリームは、植物油脂を含むものでありながら、市販の生クリームと同等の耐熱性及び耐酸性を有していることが確認された。また、実施品1の合成クリームは、比較品1の合成クリームとの比較においては、耐熱性及び耐酸性の両面で優れており、特に耐酸性の点では顕著な効果(分離抑制効果)があることが明らかとなった。比較品1の製造に使用された発酵フレーバーは、脱脂粉乳の水溶液を乳酸発酵させて得られた組成物であり、遊離脂肪酸等の乳脂肪分解物を含まないものであることから、本発明で使用される乳脂肪分解物を用いて合成クリームを製造することにより、耐熱性や耐酸性は顕著に向上することが判明した。
<ホワイトソースの製造>
実施品1及び比較品1の各合成クリーム、並びに市販の生クリーム(脂肪含量45質量%、森永乳業株式会社製)をいずれも原料の一部として用いて、それぞれホワイトソースの製造を行った。
[実施例2]
鍋に8.5gのバター(森永乳業株式会社製)及び6.2gの薄力粉を加えて混ぜ合わせた後、弱火にかけて3分間ヘラでかき混ぜながら炒めた。その後、鍋を火からおろして5℃の牛乳67.8gと実施品1の合成クリーム17.0gを加え、よくかき混ぜながら再び弱火にかけた。3分後に、鍋を火からおろして食塩0.5gを加えてホワイトソース(実施品2)100gを得た。
実施品1及び比較品1の各合成クリーム、並びに市販の生クリーム(脂肪含量45質量%、森永乳業株式会社製)をいずれも原料の一部として用いて、それぞれホワイトソースの製造を行った。
[実施例2]
鍋に8.5gのバター(森永乳業株式会社製)及び6.2gの薄力粉を加えて混ぜ合わせた後、弱火にかけて3分間ヘラでかき混ぜながら炒めた。その後、鍋を火からおろして5℃の牛乳67.8gと実施品1の合成クリーム17.0gを加え、よくかき混ぜながら再び弱火にかけた。3分後に、鍋を火からおろして食塩0.5gを加えてホワイトソース(実施品2)100gを得た。
[比較例2]
実施例2に記載されたホワイトソースの製造方法において、実施品1の合成クリームの代わりに、比較品1の合成クリームを使用して、ホワイトソース(比較品2)を製造した。
実施例2に記載されたホワイトソースの製造方法において、実施品1の合成クリームの代わりに、比較品1の合成クリームを使用して、ホワイトソース(比較品2)を製造した。
[比較例3]
実施例2に記載されたホワイトソースの製造方法において、実施品1の合成クリームの代わりに、市販の生クリーム(脂肪含量45質量%、森永乳業株式会社製)を使用して、ホワイトソース(比較品3)を製造した。
実施例2に記載されたホワイトソースの製造方法において、実施品1の合成クリームの代わりに、市販の生クリーム(脂肪含量45質量%、森永乳業株式会社製)を使用して、ホワイトソース(比較品3)を製造した。
[試験例2]ホワイトソースの風味比較試験
実施品2、比較品2及び比較品3の各ホワイトソースについて、熟練した8名のパネラーにより、乳風味の強さ、おいしさについて官能評価を実施した。
官能評価の結果は、前記3種のホワイトソースに対して、乳風味が強いもの、おいしいもの、の各評価の高い順から3点、2点、1点の評価点を付け、8名のパネラーの評点の平均値で表した。その結果を表2に示した。
実施品2、比較品2及び比較品3の各ホワイトソースについて、熟練した8名のパネラーにより、乳風味の強さ、おいしさについて官能評価を実施した。
官能評価の結果は、前記3種のホワイトソースに対して、乳風味が強いもの、おいしいもの、の各評価の高い順から3点、2点、1点の評価点を付け、8名のパネラーの評点の平均値で表した。その結果を表2に示した。
その結果、実施品1の合成クリームを使用した実施品2のホワイトソース(本発明の水中油型乳化組成物を原料の一部に使用して製造されたホワイトソース)は、比較品2のホワイトソース(乳脂肪分解物を含まない合成クリームを原料の一部に使用して製造されたホワイトソース)よりも、乳風味の強さ及びおいしさのいずれの評価においても顕著に優れていることがわかった。
さらに、本発明の実施品2のホワイトソースは、比較品2のホワイトソースに比して、加熱調理後の性状も良好であった。
また、実施品2のホワイトソースは、市販の生クリームを使用した比較品3のホワイトソースと比較しても、同等以上の乳風味の強さを有し、おいしさに優れているという評価結果となった。
さらに、本発明の実施品2のホワイトソースは、比較品2のホワイトソースに比して、加熱調理後の性状も良好であった。
また、実施品2のホワイトソースは、市販の生クリームを使用した比較品3のホワイトソースと比較しても、同等以上の乳風味の強さを有し、おいしさに優れているという評価結果となった。
本発明の製造方法により製造された水中油型乳化組成物は、耐熱性及び耐酸性が良好であり、熱処理する工程を含む加熱調理食品の製造に好適に用いることができる。
さらに、本発明の製造方法により製造された水中油型乳化組成物は、乳の自然なコク味を付与する効果に優れているため、乳成分を含む加熱調理食品の製造において、原料に用いられる生クリームや牛乳の代替品として好適に用いることも可能である。
さらに、本発明の製造方法により製造された水中油型乳化組成物は、乳の自然なコク味を付与する効果に優れているため、乳成分を含む加熱調理食品の製造において、原料に用いられる生クリームや牛乳の代替品として好適に用いることも可能である。
Claims (5)
- 植物油脂、乳脂肪及び乳脂肪分解物を含有する原料組成物を調製する工程、並びに
調製された前記原料組成物を殺菌し、均質化処理する工程、を含む水中油型乳化組成物の製造方法であって、
前記乳脂肪分解物は、炭素数4及び炭素数6の短鎖脂肪酸、並びに炭素数10及び炭素数12の中鎖脂肪酸を含有し、かつ
前記原料組成物は、前記乳脂肪分解物を0.01〜10質量%含有する原料組成物である、水中油型乳化組成物の製造方法。 - 前記乳脂肪分解物は、乳脂肪分解物に含まれる炭素数4及び炭素数6の短鎖脂肪酸の含有量の和に対する炭素数10及び炭素数12の中鎖脂肪酸の含有量の和の質量比が2〜5である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記乳脂肪分解物は、さらに炭素数16及び炭素数18の長鎖脂肪酸を含有し、前記乳脂肪分解物に含まれる炭素数4及び炭素数6の短鎖脂肪酸の含有量の合計に対する炭素数16及び炭素数18の長鎖脂肪酸の含有量の合計の質量比が5〜12である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 植物油脂、乳脂肪及び乳脂肪分解物を含有する原料組成物を調製する工程、
調製された前記原料組成物を殺菌し、均質化処理して水中油型乳化組成物を調製する工程、並びに
調製された前記水中油型乳化組成物と、乳成分を含む加熱調理食品の原料と、を混合して熱処理する工程、を含む加熱調理食品の製造方法であって、
前記乳脂肪分解物は、炭素数4及び炭素数6の短鎖脂肪酸、並びに炭素数10及び炭素数12の中鎖脂肪酸を含有し、かつ
前記原料組成物は、前記乳脂肪分解物を0.01〜10質量%含有する原料組成物である、加熱調理食品の製造方法。 - 前記加熱調理食品が、ホワイトソースである、請求項4に記載の製造方法。
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JP2018191520A (ja) * | 2017-05-12 | 2018-12-06 | ハウス食品株式会社 | 乳原料を添加して調理するための食品組成物及びその製造方法 |
-
2015
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