<<光電変換素子>>
本発明の光電変換素子は、導電性支持体および導電性支持体上に設けられた感光層を有する第一電極と、第一電極に対向する第二電極と、第一電極と第二電極の間に正孔輸送層とを有する。
本発明において、導電性支持体上に感光層を設けるとは、導電性支持体の表面に接して感光層を設ける(直接設ける)態様、および、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を設ける態様を含む意味である。
導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様において、導電性支持体と感光層との間に設けられる他の層としては、太陽電池の電池性能を低下させないものであれば特に限定されない。例えば、多孔質層、ブロッキング層、及び電子輸送層等が挙げられる。
本発明において、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様としては、例えば、感光層が、多孔質層の表面に薄い膜状に設けられる態様(図1A及び図1B参照)、多孔質層の表面に厚い膜状に設けられる態様(図2参照)、ブロッキング層の表面に薄い膜状又は厚い膜状(図3参照)に設けられる態様、および電子輸送層の表面に薄い膜状または厚い膜状(図4参照)に設けられる態様などが挙げられる。感光層は、線状または分散状に設けられてもよいが、好ましくは膜状に設けられる。
本発明の光電変換素子は、本発明で規定する構成以外の構成は特に限定されず、光電変換素子および太陽電池に関する公知の構成を採用できる。本発明の光電変換素子を構成する各層は、目的に応じて設計され、例えば、単層に形成されても、複層に形成されてもよい。例えば、多孔質層を導電性支持体と感光層との間に設けることもできる(図1A、図2参照)。
以下、本発明の光電変換素子の好ましい態様について説明する。
図1A、図1B、図2〜図4において、同じ符号は同じ構成要素(部材)を意味する。
なお、図1A、および図2は、多孔質層12を形成する微粒子の大きさを強調して示してある。これらの微粒子は、好ましくは、導電性支持体11に対して水平方向および垂直方向に詰まり(堆積または密着して)、多孔質構造を形成している。
本明細書において、単に光電変換素子10という場合は、特に断らない限り、光電変換素子10A〜10Dを意味する。このことは、太陽電池を利用したシステム(以下、「システム」)100、第一電極1についても同様である。また、単に感光層13という場合は、特に断らない限り、感光層13A〜13Cを意味する。同様に、正孔輸送層3という場合は、特に断らない限り、正孔輸送層3Aおよび3Bを意味する。
本発明の光電変換素子の好ましい態様として、例えば、図1Aに示す光電変換素子10Aが挙げられる。図1Aに示されるシステム100Aは、光電変換素子10Aを外部回路6で動作手段M(例えば電動モーター)に仕事をさせる電池用途に応用したシステムである。
この光電変換素子10Aは、第一電極1Aと、第二電極2と、正孔輸送層3Aとを有している。
第一電極1Aは、支持体11aおよび透明電極11bからなる導電性支持体11と、多孔質層12と、図1A中の断面領域bを拡大した図1Bに模式的に示されるように多孔質層12の表面に、ペロブスカイト型光吸収剤で設けられた感光層13Aとを有している。また透明電極11b上にブロッキング層14を有し、ブロッキング層14上に多孔質層12が形成される。このように多孔質層12を有する光電変換素子10Aは、感光層13Aの表面積が大きくなるため、電荷分離および電荷移動効率が向上すると推定される。
図2に示す光電変換素子10Bは、図1Aに示す光電変換素子10Aの感光層13Aを厚く設けた好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Bにおいて、正孔輸送層3Bは薄く設けられている。光電変換素子10Bは、図1Aで示した光電変換素子10Aに対して感光層13Bおよび正孔輸送層3Bの膜厚の点で異なるが、これらの点以外は光電変換素子10Aと同様に構成されている。
図3に示す光電変換素子10Cは、本発明の光電変換素子の別の好ましい態様を模式的に示したものである。光電変換素子10Cは、図2に示す光電変換素子10Bに対して多孔質層12を設けていない点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Bと同様に構成されている。すなわち、光電変換素子10Cにおいて、感光層13Cはブロッキング層14の表面に厚い膜状に形成されている。光電変換素子10Cにおいて、正孔輸送層3Bは図1Aに示す正孔輸送層3Aと同様に厚く設けることもできる。
図4に示す光電変換素子10Dは、本発明の光電変換素子のまた別の好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Dは、図3に示す光電変換素子10Cに対してブロッキング層14に代えて電子輸送層15を設けた点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Cと同様に構成されている。第一電極1Dは、導電性支持体11と、導電性支持体11上に順に形成された、電子輸送層15および感光層13Cとを有している。この光電変換素子10Dは、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。これにより、光電変換素子の生産性が向上し、しかも薄型化またはフレキシブル化が可能になる。
本発明において、光電変換素子10を応用したシステム100は、以下のようにして、太陽電池として機能する。
すなわち、光電変換素子10において、導電性支持体11を透過して、または第二電極2を透過して感光層13に入射した光は光吸収剤を励起する。励起された光吸収剤はエネルギーの高い電子を有しており、この電子を放出できる。エネルギーの高い電子を放出した光吸収剤は酸化体となる。
光電変換素子10A〜10Dにおいては、光吸収剤から放出された電子は、光吸収剤間を移動して導電性支持体11に到達する。導電性支持体11に到達した電子が外部回路6で仕事をした後、第二電極2、正孔輸送層3を経て、感光層13に戻る。感光層13に戻った電子により光吸収剤が還元される。
光電変換素子10においては、このような光吸収剤の励起および電子移動のサイクルを繰り返すことにより、システム100が太陽電池として機能する。
光電変換素子10A〜10Dにおいて、感光層13から導電性支持体11への電子の流れ方は、多孔質層12の有無およびその種類等により、異なる。本発明の光電変換素子10においては、光吸収剤間を電子が移動する電子伝導が起こる。したがって、多孔質層12を設ける場合、多孔質層12は従来の半導体以外に絶縁体で形成することができる。多孔質層12が半導体で形成される場合、多孔質層12の半導体微粒子内部や半導体微粒子間を電子が移動する電子伝導も起こる。一方、多孔質層12が絶縁体で形成される場合、多孔質層12での電子伝導は起こらない。多孔質層12が絶縁体で形成される場合、絶縁体微粒子に酸化アルミニウム(Al2O3)の微粒子を用いると、比較的高い起電力(Voc)が得られる。
上記他の層としてのブロッキング層14が導体または半導体により形成された場合もブロッキング層14での電子伝導が起こる。
また、電子輸送層15でも電子伝導が起こる。
本発明の光電変換素子および太陽電池は、上記の好ましい態様に限定されず、各態様の構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各態様間で適宜組み合わせることができる。
本発明において、光電変換素子または太陽電池に用いられる材料および各部材は、本発明で規定する材料および部材を除いて、常法により調製することができる。例えば、ペロブスカイト増感太陽電池について、例えば、非特許文献1ならびにJ.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051およびScience,338,p.643−647(2012)を参照することができる。また、色素増感太陽電池に用いられる材料および各部材についても参考にすることができる。色素増感太陽電池としては、例えば、特開2001−291534号公報、米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,0843,65号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。
以下、本発明の光電変換素子および太陽電池の主たる部材および化合物の好ましい態様について、説明する。
<第一電極1>
第一電極1は、導電性支持体11と感光層13とを有し、光電変換素子10において作用電極として機能する。
第一電極1は、導電性支持体11と感光層13に加え、図1A、図2〜図4に示されるように、多孔質層12、ブロッキング層14、および電子輸送層15の少なくとも1つの層を有することが好ましい。
第一電極1は、短絡防止の点で少なくともブロッキング層14を有することが好ましく、光吸収効率の点および短絡防止の点で多孔質層12およびブロッキング層14を有していることがさらに好ましい。
また、第一電極1は、光電変換素子の生産性の向上、薄型化またはフレキシブル化の点で、有機材料で形成された、電子輸送層15を有することが好ましい。
− 導電性支持体11 −
導電性支持体11は、導電性を有し、感光層13等を支持できるものであれば特に限定されない。導電性支持体11は、導電性を有する材料(例えば金属)で形成された構成、または、ガラスもしくはプラスチックの支持体11aとこの支持体11aの表面に形成された導電膜としての透明電極11bとを有する構成が好ましい。
なかでも、図1A、図2〜図4に示されるように、ガラスまたはプラスチックの支持体11aの表面に導電性の金属酸化物を塗設して透明電極11bを成膜した導電性支持体11がさらに好ましい。プラスチックで形成された支持体11aとしては、例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0153に記載の透明ポリマーフィルムが挙げられる。支持体11aを形成する材料としては、ガラスおよびプラスチックの他にも、セラミック(例えば、特開2005−135902号公報参照)、導電性樹脂(例えば、特開2001−160425号公報参照)を用いることができる。金属酸化物としては、スズ酸化物(Tin Oxide:TO)が好ましく、インジウム−スズ酸化物(スズドープ酸化インジウム)(Indium Tin Oxide:ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(Fluorine doped Tin Oxide:FTO)等のフッ素ドープスズ酸化物が特に好ましい。このときの金属酸化物の塗布量は、支持体11aの表面積1m2当たり0.1〜100gが好ましい。導電性支持体11を用いる場合、光は支持体11a側から入射させることが好ましい。
導電性支持体11は、実質的に透明であることが好ましい。本発明において、「実質的に透明である」とは、光(波長300〜1200nm)の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上が好ましく、80%以上が特に好ましい。
支持体11aおよび導電性支持体11の厚みは、特に限定されず、適宜の厚みに設定される。例えば、0.01μm〜10mmであることが好ましく、0.1μm〜5mmであることがさらに好ましく、0.3μm〜4mmであることが特に好ましい。
透明電極11bを設ける場合、透明電極11bの膜厚は、特に限定されず、例えば、0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることがさらに好ましく、0.05〜20μmであることが特に好ましい。
導電性支持体11または支持体11aは、表面に光マネージメント機能を有してもよい。例えば、導電性支持体11または支持体11aの表面に、特開2003−123859号公報に記載の、高屈折膜および低屈折率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜を有してもよく、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能を有してもよい。
− ブロッキング層14 −
本発明においては、光電変換素子10A〜10Cのように、好ましくは、透明電極11bの表面に、すなわち、導電性支持体11と、多孔質層12、感光層13または正孔輸送層3等との間に、ブロッキング層14を有している。
光電変換素子および太陽電池において、例えば感光層13または正孔輸送層3と、透明電極11b等とが電気的に接続すると逆電流を生じる。ブロッキング層14は、この逆電流を防止する機能を果たす。ブロッキング層14は短絡防止層ともいう。
ブロッキング層14を、光吸収剤を担持する足場として機能させることもできる。
このブロッキング層14は、光電変換素子が電子輸送層を有する場合にも設けられてもよい。例えば、光電変換素子10Dの場合、導電性支持体11と電子輸送層15との間にブロッキング層14が設けられてもよい。
ブロッキング層14を形成する材料は、上記機能を果たすことのできる材料であれば特に限定されないが、可視光を透過する物質であって、導電性支持体11(透明電極11b)等に対する絶縁性物質であることが好ましい。「導電性支持体11(透明電極11b)に対する絶縁性物質」とは、具体的には、伝導帯のエネルギー準位が、導電性支持体11を形成する材料(透明電極11bを形成する金属酸化物)の伝導帯のエネルギー準位以上であり、かつ、多孔質層12を構成する材料の伝導帯や光吸収剤の基底状態のエネルギー準位より低い化合物(n型半導体化合物)をいう。
ブロッキング層14を形成する材料は、例えば、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等が挙げられる。また、一般的に光電変換材料に用いられる材料でもよく、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化タングステン等も挙げられる。なかでも、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が好ましい。
ブロッキング層14の膜厚は、0.001〜10μmが好ましく、0.005〜1μmがさらに好ましく、0.01〜0.1μmが特に好ましい。
本発明において、各層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)等を用いて光電変換素子10の断面を観察することにより、測定できる。
− 多孔質層12 −
本発明においては、光電変換素子10A、および10Bのように、好ましくは、透明電極11b上に多孔質層12を有している。光電変換素子10がブロッキング層14を有している場合は、多孔質層12は、ブロッキング層14上に形成されることが好ましい。
多孔質層12は、表面に感光層13を担持する足場として機能する層である。太陽電池において、光吸収効率を高めるためには、少なくとも太陽光等の光を受ける部分の表面積を大きくすることが好ましく、多孔質層12の全体としての表面積を大きくすることが好ましい。
多孔質層12は、多孔質層12を形成する材料の微粒子が堆積または密着してなる、細孔を有する微粒子層であることが好ましい。多孔質層12は、2種以上の微粒子が堆積してなる微粒子層であってもよい。多孔質層12が細孔を有する微粒子層であると、光吸収剤の担持量(吸着量)を増量できる。
多孔質層12の表面積を大きくするには、多孔質層12を構成する個々の微粒子の表面積を大きくすることが好ましい。本発明では、多孔質層12を形成する微粒子を導電性支持体11等に塗設した状態で、この微粒子の表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。多孔質層12を形成する微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径において、1次粒子として0.001〜1μmが好ましい。微粒子の分散物を用いて多孔質層12を形成する場合、微粒子の上記平均粒径は、分散物の平均粒径として0.01〜100μmが好ましい。
多孔質層12を形成する材料は、導電性に関しては特に限定されず、絶縁体(絶縁性の材料)であっても、導電性の材料または半導体(半導電性の材料)であってもよい。
多孔質層12を形成する材料としては、例えば、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(光吸収剤として用いるペロブスカイト化合物を除く。)、ケイ素の酸化物(例えば、二酸化ケイ素、ゼオライト)、またはカーボンナノチューブ(カーボンナノワイヤおよびカーボンナノロッド等を含む)を用いることができる。
金属のカルコゲニドとしては、特に限定されないが、好ましくは、チタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、アルミニウムまたはタンタルの各酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。金属のカルコゲニドの結晶構造として、アナターゼ型、ブルッカイト型またはルチル型が挙げられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、特に限定されないが、遷移金属酸化物等が挙げられる。例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸バリウム、スズ酸バリウム、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ストロンチウム、タンタル酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、鉄酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸バリウムランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸ビスマスが挙げられる。なかでも、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が好ましい。
カーボンナノチューブは、炭素膜(グラフェンシート)を筒状に丸めた形状を有する。カーボンナノチューブは、1枚のグラフェンシートが円筒状に巻かれた単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube:SWCNT)、2枚のグラフェンシートが同心円状に巻かれた2層カーボンナノチューブ(double-walled carbon nanotube:DWCNT)、複数のグラフェンシートが同心円状に巻かれた多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotube:MWCNT)に分類される。多孔質層12としては、いずれのカーボンナノチューブも特に限定されず、用いることができる。
多孔質層12を形成する材料は、なかでも、チタン、スズ、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウムもしくはケイ素の酸化物、またはカーボンナノチューブが好ましく、酸化チタンまたは酸化アルミニウムがさらに好ましい。
多孔質層12は、上述の、金属のカルコゲニド、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、ケイ素の酸化物およびカーボンナノチューブのうち少なくとも1種で形成されていればよく、複数種で形成されていてもよい。
多孔質層12の膜厚は、特に限定されないが、通常0.05〜100μmの範囲であり、好ましくは0.1〜100μmの範囲である。太陽電池として用いる場合は、0.1〜50μmが好ましく、0.2〜30μmがより好ましい。
− 電子輸送層15−
本発明においては、光電変換素子10Dのように、好ましくは、透明電極11bの表面に電子輸送層15を有している。
電子輸送層15は、感光層13で発生した電子を導電性支持体11へと輸送する機能を有する。電子輸送層15は、この機能を発揮することができる電子輸送材料で形成される。電子輸送材料としては、特に限定されないが、有機材料(有機電子輸送材料)が好ましい。有機電子輸送材料としては、[6,6]−Phenyl−C61−Butyric Acid Methyl Ester(PC61BM)等のフラーレン化合物、ペリレンテトラカルボキシジイミド(pelylene tetracarboxylic diimide:PTCDI)等のペリレン化合物、その他、テトラシアノキノジメタン(Tetracyano-quinodimethane:TCNQ)等の低分子化合物、または、高分子化合物等が挙げられる。
電子輸送層15の膜厚は、特に限定されないが、0.001〜10μmが好ましく、0.01〜1μmがより好ましい。
− 感光層(光吸収層)13 −
感光層13は、好ましくは、多孔質層12(光電変換素子10A、および10B)、ブロッキング層14(光電変換素子10C)、電子輸送層15(光電変換素子10D)、の各層の表面(感光層13が設けられる表面が凹凸の場合の凹部内表面を含む。)に設けられる。
本発明において、感光層13は、光吸収剤として、後述するペロブスカイト化合物を少なくとも1種含有していればよく、2種以上のペロブスカイト化合物を含有してもよい。また、感光層13は、光吸収剤として、ペロブスカイト化合物と併せて、ペロブスカイト化合物以外の光吸収剤を含んでいてもよい。ペロブスカイト化合物以外の光吸収剤としては、例えば金属錯体色素および有機色素が挙げられる。このとき、ペロブスカイト化合物と、それ以外の光吸収剤との割合は特に限定されない。
感光層13は、単層であっても2層以上の積層であってもよい。感光層13が2層以上の積層構造である場合、互いに異なった光吸収剤からなる層を積層してなる積層構造でもよく、また、感光層と感光層の間に、正孔輸送材料を含む中間層を有する積層構造でもよい。
感光層13を導電性支持体11上に有する態様は、上述した通りである。感光層13は、好ましくは、励起した電子が導電性支持体11または第二電極2に流れるように、上記各層の表面に設けられる。このとき、感光層13は、上記各層の表面全体に設けられていてもよく、その表面の一部に設けられていてもよい。
感光層13の膜厚は、導電性支持体11上に感光層13を有する態様に応じて適宜に設定され、特に限定されない。例えば、0.001〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがさらに好ましく、0.01〜5μmが特に好ましい。
多孔質層12を有する場合、多孔質層12の膜厚との合計膜厚は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、0.3μm以上が特に好ましい。また、合計膜厚は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。合計膜厚は、上記値を適宜に組み合わせた範囲とすることができる。ここで、図1A及び図1Bのように、感光層13が薄い膜状である場合に、感光層13の膜厚は、多孔質層12の表面に垂直な方向に沿う、多孔質層12との界面と後述する正孔輸送層3との界面との距離をいう。
光電変換素子10において、多孔質層12と感光層13と正孔輸送層3との合計膜厚は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、0.5μm以上が特に好ましい。また、この合計膜厚は、200μm以下が好ましく、50μm以下が好ましく、30μm以下が好ましく、5μm以下が好ましい。合計膜厚は、上記値を適宜に組み合わせた範囲とすることができる。
本発明において、感光層を厚い膜状に設ける場合(感光層13Bおよび13C)、この感光層に含まれる光吸収剤は正孔輸送材料として機能することもある。
ペロブスカイト化合物の使用量は、第一電極1の表面の少なくとも一部を覆う量であればよく、表面全体を覆う量が好ましい。
〔感光層の光吸収剤〕
感光層13は、光吸収剤として、「周期表第一族元素またはカチオン性有機基A」と、「周期表第一族元素以外の金属原子M」と、「アニオン性原子または原子団X」と、を含むペロブスカイト型結晶構造を有するペロブスカイト化合物(ペロブスカイト型光吸収剤)を少なくとも1種含有する。
ペロブスカイト化合物の周期表第一族元素またはカチオン性有機基A、金属原子Mおよびアニオン性原子または原子団Xは、それぞれ、ペロブスカイト型結晶構造において、カチオン(便宜上、カチオンAということがある)、金属カチオン(便宜上、カチオンMということがある)およびアニオン(便宜上、アニオンXということがある)の各構成イオンとして存在する。
本発明において、カチオン性有機基とは、ペロブスカイト型結晶構造においてカチオンになる性質を有する有機基をいい、アニオン性原子または原子団とはペロブスカイト型結晶構造においてアニオンになる性質を有する原子または原子団をいう。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、カチオンAは、周期表第一族元素Aのカチオンまたはカチオン性有機基Aからなる有機カチオンである。カチオンAは有機カチオンが好ましい。
周期表第一族元素のカチオンは、特に限定されず、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)またはセシウム(Cs)の各元素のカチオン(Li+、Na+、K+、Cs+)が挙げられ、特にセシウムのカチオン(Cs+)が好ましい。
有機カチオンは、上記性質を有する有機基のカチオンであれば特に限定されないが、下記式(1)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンであることがさらに好ましい。
式(1):R1a−NH3 +
式中、R1aは置換基を表す。R1aは、有機基であれば特に限定されるものではないが、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または下記式(2)で表される基が好ましい。なかでも、アルキル基、下記式(2)で表される基がより好ましい。
式中、XaはNR1c、酸素原子または硫黄原子を表す。R1bおよびR1cは各々独立に水素原子または置換基を表す。***は式(1)の窒素原子との結合を表す。
本発明において、カチオン性有機基Aの有機カチオンは、上記式(1)中のR1aとNH3とが結合してなるアンモニウムカチオン性有機基Aからなる有機アンモニウムカチオン(R1a−NH3 +)が好ましい。この有機アンモニウムカチオンが共鳴構造を採り得る場合、有機カチオンは有機アンモニウムカチオンに加えて共鳴構造のカチオンを含む。例えば、上記式(2)で表すことができる基においてXaがNH(R1cが水素原子)である場合、有機カチオンは、上記式(2)で表すことができる基とNH3とが結合してなるアンモニウムカチオン性有機基の有機アンモニウムカチオンに加えて、この有機アンモニウムカチオンの共鳴構造の1つである有機アミジニウムカチオンをも包含する。アミジニウムカチオン性有機基からなる有機アミジニウムカチオンとしては、下記式(Aam)で表されるカチオンが挙げられる。本明細書において、下記式(Aam)で表されるカチオンを便宜上、「R1bC(=NH)−NH3」と表記することがある。
式(1)中のR1aとしてのアルキル基は、炭素数が1〜18のアルキル基が好ましく、1〜6のアルキル基がより好ましく、1〜3のアルキル基がさらに好ましい。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはデシル等が挙げられる。
R1aとしてのシクロアルキル基は、炭素数が3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル等が挙げられる。
R1aとしてのアルケニル基は、炭素数が2〜18のアルケニル基が好ましく、2〜6のアルケニル基がより好ましい。例えば、ビニル、アリル、ブテニルまたはヘキセニル等が挙げられる。
R1aとしてのアルキニル基は、炭素数が2〜18のアルキニル基が好ましく、2〜4のアルキニル基がより好ましい。例えば、エチニル、ブチニルまたはヘキシニル等が挙げられる。
R1aとしてのアリール基は、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、炭素数6〜12のアリール基がより好ましく、例えば、フェニルが挙げられる。
R1aとしてのヘテロアリール基は、芳香族ヘテロ環のみからなる基と、芳香族ヘテロ環に他の環、例えば、芳香環、脂肪族環やヘテロ環が縮合した縮合ヘテロ環からなる基とを包含する。
芳香族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、芳香族ヘテロ環の環員数としては、3〜8員環が好ましく、5員環または6員環がより好ましい。
5員環の芳香族ヘテロ環および5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドリン環、インダゾール環の各環基が挙げられる。また、6員環の芳香族ヘテロ環および6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キナゾリン環の各環基が挙げられる。
式(2)で表すことができる基において、XaはNR1c、酸素原子または硫黄原子を表し、NR1cが好ましい。ここで、R1cは、水素原子または置換基を表し、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、水素原子がさらに好ましい。
R1bは、水素原子または置換基を表し、水素原子が好ましい。R1bが採り得る置換基は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基またはアミノ基が挙げられる。
R1bおよびR1cがそれぞれ採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基は、上記R1aの各基と同義であり、好ましいものも同じである。
式(2)で表すことができる基としては、例えば、(チオ)アシル基、(チオ)カルバモイル基、イミドイル基またはアミジノ基が挙げられる。
(チオ)アシル基は、アシル基およびチオアシル基を包含する。アシル基は、総炭素数が1〜7のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ヘキサノイル等が挙げられる。チオアシル基は、総炭素数が1〜7のチオアシル基が好ましく、例えば、チオホルミル、チオアセチル、チオプロピオニル等が挙げられる。
(チオ)カルバモイル基は、カルバモイル基およびチオカルバモイル基(H2NC(=S)−)を包含する。
イミドイル基は、R1b−C(=NR1c)−で表される基であり、R1bおよびR1cはそれぞれ水素原子またはアルキル基が好ましく、アルキル基は上記R1aのアルキル基と同義であるのがより好ましい。例えば、ホルムイミドイル、アセトイミドイル、プロピオンイミドイル(CH3CH2C(=NH)−)等が挙げられる。なかでも、ホルムイミドイルが好ましい。
式(2)で表すことができる基としてのアミジノ基は、上記イミドイル基のR1bがアミノ基でR1cが水素原子である構造を有する。
R1aが採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および上記式(2)で表すことができる基は、いずれも、置換基を有していてもよい。R1aが有していてもよい置換基WPとしては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基またはカルボキシ基が挙げられる。R1aが有していてもよい各置換基は、さらに置換基で置換されていてもよい。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、金属カチオンMは、周期表第一族元素以外の金属原子Mのカチオンであって、ペロブスカイト型結晶構造を採り得る金属原子のカチオンであれば、特に限定されない。このような金属原子としては、例えば、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、イッテルビウム(Yb)、ユウロピウム(Eu)、インジウム(In)、チタン(Ti)、ビスマス(Bi)、タリウム(Tl)等の金属原子が挙げられる。なかでも、金属原子MはPb原子またはSn原子が特に好ましい。Mは1種の金属原子であってもよく、2種以上の金属原子であってもよい。2種以上の金属原子である場合には、Pb原子およびSn原子の2種が好ましい。このときの金属原子の割合は特に限定されない。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、アニオンXは、アニオン性原子または原子団Xのアニオンを表す。このアニオンは、好ましくはハロゲン原子のアニオン、または、NCS−、NCO−、CH3COO−もしくはHCOO−の、各原子団のアニオンが挙げられる。なかでも、ハロゲン原子のアニオンであることがさらに好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等が挙げられる。
アニオンXは、1種のアニオン性原子または原子団のアニオンであってもよく、2種以上のアニオン性原子または原子団のアニオンであってもよい。1種のアニオン性原子または原子団のアニオンである場合には、ヨウ素原子のアニオンが好ましい。一方、2種以上のアニオン性原子または原子団のアニオンである場合には、2種のハロゲン原子のアニオン、特に塩素原子のアニオンおよびヨウ素原子のアニオンが好ましい。2種以上のアニオンの割合は特に限定されない。
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、上記の各構成イオンを有するペロブスカイト型結晶構造を有し、下記式(I)で表されるペロブスカイト化合物が好ましい。
式(I):AaMmXx
式中、Aは周期表第一族元素またはカチオン性有機基を表す。Mは周期表第一族元素以外の金属原子を表す。Xはアニオン性原子または原子団を表す。
aは1または2を表し、mは1を表し、a、mおよびxはa+2m=xを満たす。
式(I)において、周期表第一族元素またはカチオン性有機基Aは、ペロブスカイト型結晶構造の上記カチオンAを形成する。したがって、周期表第一族元素およびカチオン性有機基Aは、上記カチオンAとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる元素または基であれば、特に限定されない。周期表第一族元素またはカチオン性有機基Aは、上記カチオンAで説明した上記周期表第一族元素またはカチオン性有機基と同義であり、好ましいものも同じである。
金属原子Mは、ペロブスカイト型結晶構造の上記金属カチオンMを形成する金属原子である。したがって、金属原子Mは、周期表第一族元素以外の原子であって、上記金属カチオンMとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる原子であれば、特に限定されない。金属原子Mは、上記金属カチオンMで説明した上記金属原子と同義であり、好ましいものも同じである。
アニオン性原子または原子団Xは、ペロブスカイト型結晶構造の上記アニオンXを形成する。したがって、アニオン性原子または原子団Xは、上記アニオンXとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる原子または原子団であれば、特に限定されない。アニオン性原子または原子団Xは、上記アニオンXで説明したアニオン性原子または原子団と同義であり、好ましいものも同じである。
式(I)で表されるペロブスカイト化合物は、aが1である場合、下記式(I−1)で表されるペロブスカイト化合物であり、aが2である場合、下記式(I−2)で表されるペロブスカイト化合物である。
式(I−1):AMX3
式(I−2):A2MX4
式(I−1)および式(I−2)において、Aは周期表第一族元素またはカチオン性有機基を表し、上記式(I)のAと同義であり、好ましいものも同じである。
Mは、周期表第一族元素以外の金属原子を表し、上記式(I)のMと同義であり、好ましいものも同じである。
Xは、アニオン性原子または原子団を表し、上記式(I)のXと同義であり、好ましいものも同じである。
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、式(I−1)で表される化合物および式(I−2)で表される化合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。したがって、本発明において、ペロブスカイト化合物は、光吸収剤として少なくとも1種が存在していればよく、組成式、分子式および結晶構造等により、厳密にいかなる化合物であるかを明確に区別する必要はない。
以下に、本発明に用いうるペロブスカイト化合物の具体例を例示するが、これによって本発明が制限されるものではない。下記においては、式(I−1)で表される化合物と、式(I−2)で表される化合物とを分けて記載する。ただし、式(I−1)で表される化合物として例示した化合物であっても、合成条件等によっては、式(I−2)で表される化合物となる場合もあり、また、式(I−1)で表される化合物と式(I−2)で表される化合物との混合物となる場合もある。同様に、式(I−2)で表される化合物として例示した化合物であっても、式(I−1)で表される化合物となる場合もあり、また、式(I−1)で表される化合物と式(I−2)で表される化合物との混合物となる場合もある。
式(I−1)で表される化合物の具体例として、例えば、CH3NH3PbCl3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBrI2、CH3NH3PbBr2I、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnI3、CH(=NH)NH3PbI3が挙げられる。
式(I−2)で表される化合物の具体例として、例えば、(C2H5NH3)2PbI4、(CH2=CHNH3)2PbI4、(CH≡CNH3)2PbI4、(n−C3H7NH3)2PbI4、(n−C4H9NH3)2PbI4、(C10H21NH3)2PbI4、(C6H5NH3)2PbI4、(C6H5CH2CH2NH3)2PbI4、(C6H3F2NH3)2PbI4、(C6F5NH3)2PbI4、(C4H3SNH3)2PbI4が挙げられる。ここで、(C4H3SNH3)2PbI4におけるC4H3SNH3はアミノチオフェンである。
ペロブスカイト化合物は、下記式(II)で表される化合物と下記式(III)で表される化合物とから合成することができる。
式(II):AX
式(III):MX2
式(II)中、Aは周期表第一族元素またはカチオン性有機基を表し、式(I)のAと同義であり、好ましいものも同じである。式(II)中、Xはアニオン性原子または原子団を表し、式(I)のXと同義であり、好ましいものも同じである。
式(III)中、Mは周期表第一族元素以外の金属原子を表し、式(I)のMと同義であり、好ましいものも同じである。式(III)中、Xはアニオン性原子または原子団を表し、式(I)のXと同義であり、好ましいものも同じである。
ペロブスカイト化合物の合成方法については、例えば、Akihiro Kojima, Kenjiro Teshima, Yasuo Shirai, and Tsutomu Miyasaka, “Organometal Halide Perovskites as Visible−Light Sensitizers for Photovoltaic Cells”, J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),6050−6051等に記載の合成方法が挙げられる。
光吸収剤の使用量は、第一電極1の表面の少なくとも一部を覆う量であればよく、表面全体を覆う量が好ましい。
感光層13中、ペロブスカイト化合物の含有量は、通常1〜100質量%である。
<正孔輸送層3>
本発明の光電変換素子は、光電変換素子10A〜10Dのように、第一電極1と第二電極2との間に正孔輸送層3を有する。正孔輸送層3は、好ましくは第一電極1の感光層13と第二電極2の間に設けられる。
正孔輸送層3は、光吸収剤の酸化体に電子を補充する機能を有し、好ましくは固体状の層(固体正孔輸送層)である。
正孔輸送層3は、正孔輸送材料として、下記式(AI)で表される構造単位を有するポリマー(以下、「ポリマー(A)」ともいう。)を含有する。
式中、
Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、3価の芳香族炭化水素環基又は芳香族ヘテロ環基を表す。
-(-Z-)n-は、単結合で互いに連結されたAr1及びAr2と共に環を形成するために必要な連結基を表す。nは1又は2を表し、nが1の場合、形成される上記環は5員環であり、nが2の場合、形成される上記環は6員環である。また、nが2の場合、2つのZは同一でも異なっていてもよい。
Zは、−O−、−S−、−C(=O)−、−CR1R2−、−S(=O)−、−SO2−、−Si(R3)(R4)−、−N(R5)−、−B(R6)−、−P(R7)−又は−P(=O)(R8)−を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*は、ポリマー(A)を構成する他の部位との結合部を表す。
以下、一般式(AI)について詳細に説明する。
Ar1及びAr2により表される3価の芳香族炭化水素環基は、好ましくは、炭素数6〜60の3価の芳香族炭化水素環基であり、更に置換基を有していてもよい。
この芳香族炭化水素環基は、単環であっても縮合環であってもよい。本発明の一形態において、この芳香族炭化水素環基は、5つ以下の環が縮合した縮合環、又は単環が好ましく、2つの環が縮合した縮合環、又は単環がより好ましく、単環がさらに好ましい。
芳香族炭化水素環基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、ピレン、ペリレンが挙げられる。なかでも、ベンゼン又はナフタレンが好ましく、ベンゼンがより好ましい。
芳香族炭化水素環基は、上述の通り置換基を更に有していてもよく、その場合は、置換基を含めた全体を芳香族炭化水素環基とする。ただし、この場合、上述した好適な芳香族炭化水素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まない。置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の炭化水素基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数1〜12のアルカノイル基、炭素数6〜60のアリールオキシ基、炭素数3〜60の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
Ar1及びAr2により表される3価の芳香族ヘテロ環基は、好ましくは、炭素数4〜60の3価の芳香族ヘテロ環基であり、更に置換基を有していてもよい。
この芳香族ヘテロ環基は、単環又は縮合環であってもよい。これらの中でも、5つ以下の環が縮合した縮合環、又は単環が好ましく、2つの環が縮合した縮合環、又は単環がより好ましく、単環がさらに好ましい。
芳香族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子、窒素原子が挙げられ、中でも、酸素原子、硫黄原子及びセレン原子が好ましく、硫黄原子がより好ましい。また、芳香族ヘテロ環の環員数としては、3〜8員環が好ましく、5員環または6員環がより好ましい。
5員環の芳香族ヘテロ環および5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、フラン環、チオフェン環、シロール環、セレノフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、インドリン環、インダゾール環の各環基が挙げられる。また、6員環の芳香族ヘテロ環および6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キナゾリン環の各環基が挙げられる。
本発明の一形態において、Ar1及びAr2により表される芳香族ヘテロ環基は、硫黄原子を含有することが好ましく、例えば、チオフェン環であることが好ましい。
芳香族ヘテロ環基は、上述したように置換基を更に有していてもよい。この場合、上述した好適な芳香族ヘテロ環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まない。置換基としては、上述した芳香族炭化水素環基が有してもよい置換基として挙げた例と同様の例が挙げられる。
本発明の一形態において、式(AI)中のnは2であり、-(-Z-)n-がAr1及びAr2と共に形成する環は6員環であることが好ましい。
Zは、上述した通り、−O−、−S−、−C(=O)−、−CR1R2−、−S(=O)−、−SO2−、−Si(R3)(R4)−、−N(R5)−、−B(R6)−、−P(R7)−又は−P(=O)(R8)−を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8(以下、R1〜R8)により表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミド基、イミノ基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、カルボキシル基又はシアノ基等が挙げられる。
なお、−CR1R2−において、R1及びR2は互いに連結して環を形成してもよい。この場合に形成される環としては、例えば、置換基を有していてもよいシクロペンタン環、置換基を有していてもよいシクロヘキサン環、置換基を有していてもよいシクロヘプタン環等が挙げられる。
R1〜R8により表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
R1〜R8により表されるアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、環状であってもよい。アルキル基の炭素数は、通常1〜30である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル墓、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。アルキル基は置換基を有していてもよい。
R1〜R8により表されるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、環状であってもよい。アルコキシ基の炭素数は、通常1〜20であり、アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基が挙げられ、置換されたアルコキシ基の具体例としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基などの炭素数が1〜20のフッ素化アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は置換基を有していてもよい。
R1〜R8により表されるアルキルチオ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、環状であってもよい。アルキルチオ基の炭素数は、通常1〜20であり、アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基が挙げられ、置換されたアルキルチオ基の具体例としては、トリフルオロメチルチオ基などの炭素数が1〜20のフッ素化アルキルチオ基が挙げられる。アルキルチオ基は置換基を有していてもよい。
R1〜R8により表されるアリール基は、その炭素数が通常6〜60である。アリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12アルコキシは、炭素数1〜12のアルコキシであることを示す。C1〜C12アルコキシは、好ましくはC1〜C8アルコキシであり、より好ましくはC1〜C6アルコキシである。C1〜C8アルコキシは、炭素数1〜8のアルコキシであることを示し、C1〜C6アルコキシは、炭素数1〜6のアルコキシであることを示す。C1〜C12アルコキシ、C1〜C8アルコキシ及びC1〜C6アルコキシの具体例としては、上記アルコキシ基で説明し例示したものが挙げられる。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基(C1〜C12アルキルは、炭素数1〜12のアルキルであることを示す。C1〜C12アルキルは、好ましくはC1〜C8アルキルであり、より好ましくはC1〜C6アルキルである。C1〜C8アルキルは、炭素数1〜8のアルキルであることを示し、C1〜C6アルキルは、炭素数1〜6のアルキルであることを示す。C1〜C12アルキル、C1〜C8アルキル及びC1〜C6アルキルの具体例としては、上記アルキル基で説明し例示したものが挙げられる。以下も同様である。)、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
R1〜R8により表されるアリールオキシ基は、その炭素数が通常6〜60である。アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基が挙げられ、置換されたアリールオキシ基の具体例としては、ペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられる。
R1〜R8により表されるアリールチオ基は、その炭素数が通常6〜60である。アリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基が挙げられ、置換されたアリールチオ基の具体例としては、ペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
R1〜R8により表されるアリールアルキル基は、その炭素数が通常7〜60である。アリールアルキル基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基が挙げられる。
R1〜R8により表されるアリールアルコキシ基は、その炭素数が通常7〜60である。アリールアルコキシ基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基が挙げられる。
R1〜R8により表されるアリールアルキルチオ基は、その炭素数が通常7〜60である。アリールアルキルチオ基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基が挙げられる。
R1〜R8により表されるアシル基は、その炭素数が通常2〜20である。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
R1〜R8により表されるアシルオキシ基は、その炭素数が通常2〜20である。アシルオキシ基の具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基が挙げられる。
R1〜R8により表されるアミド基は、その炭素数が通常1〜20である。アミド基とは、酸アミドから窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる基をいう。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
R1〜R8により表されるイミド基とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる基をいう。イミド基の具体例としては、スクシンイミド基、フタル酸イミド基が挙げられる。
R1〜R8により表される置換アミノ基は、その炭素数が通常1〜40である。置換アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキルオキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基が挙げられる。
R1〜R8により表される置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が挙げられる。
R1〜R8により表される置換シリルオキシ基としては、例えば、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリ−n−プロピルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基、ジメチルフェニルシリルオキシ基が挙げられる。
R1〜R8により表される置換シリルチオ基としては、例えば、トリメチルシリルチオ基、トリエチルシリルチオ基、トリ−n−プロピルシリルチオ基、トリイソプロピルシリルチオ基、tert−ブチルジメチルシリルチオ基、トリフェニルシリルチオ基、トリ−p−キシリルシリルチオ基、トリベンジルシリルチオ基、ジフェニルメチルシリルチオ基、tert−ブチルジフェニルシリルチオ基、ジメチルフェニルシリルチオ基が挙げられる。
R1〜R8により表される置換シリルアミノ基としては、例えば、トリメチルシリルアミノ基、トリエチルシリルアミノ基、トリ−n−プロピルシリルアミノ基、トリイソプロピルシリルアミノ基、tert−ブチルジメチルシリルアミノ基、トリフェニルシリルアミノ基、トリ−p−キシリルシリルアミノ基、トリベンジルシリルアミノ基、ジフェニルメチルシリルアミノ基、tert−ブチルジフェニルシリルアミノ基、ジメチルフェニルシリルアミノ基、ジ(トリメチルシリル)アミノ基、ジ(トリエチルシリル)アミノ基、ジ(トリ−n−プロピルシリル)アミノ基、ジ(トリイソプロピルシリル)アミノ基、ジ(tert−ブチルジメチルシリル)アミノ基、ジ(トリフェニルシリル)アミノ基、ジ(トリ−p−キシリルシリル)アミノ基、ジ(トリベンジルシリル)アミノ基、ジ(ジフェニルメチルシリル)アミノ基、ジ(tert−ブチルジフェニルシリル)アミノ基、ジ(ジメチルフェニルシリル)アミノ基が挙げられる。
R1〜R8により表される1価の複素環基としては、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、フラザン、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、チオピラン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、モルホリン、トリアジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、インドリン、イソインドリン、クロメン、クロマン、イソクロマン、ベンゾピラン、キノリン、イソキノリン、キノリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、キナゾリジン、シンノリン、フタラジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、キサンテン、フェナントリジン、アクリジン、β-カルボリン、ペリミジン、フェナントロリン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジン等の複素環式化合物から水素原子を1個除いた基が挙げられる。1価の複素環基としては、1価の芳香族複素環基が好ましい。また、1価の複素環基は置換基を有していてもよい。
R1〜R8により表される複素環オキシ基としては、上記1価の複素環基に酸素原子が結合した式(a1)で表される基が挙げられる。複素環チオ基としては、上記1価の複素環基に硫黄原子が結合した式(a2)で表される基が挙げられる。
式中、Ar41及びAr42は、それぞれ独立に、1価の複素環基を表す。
本発明において、複素環オキシ基は、その炭素数が通常2〜60である。複素環オキシ基の具体例としては、チエニルオキシ基、C1〜C12アルキルチエニルオキシ基、ピロリルオキシ基、フリルオキシ基、ピリジルオキシ基、C1〜C12アルキルピリジルオキシ基、イミダゾリルオキシ基、ピラゾリルオキシ基、トリアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、チアゾールオキシ基、チアジアゾールオキシ基が挙げられる。
本発明において、複素環チオ基は、その炭素数が通常2〜60である。複素環チオ基の具体例としては、チエニルメルカプト基、C1〜C12アルキルチエニルメルカプト基、ピロリルメルカプト基、フリルメルカプト基、ピリジルメルカプト基、C〜C12アルキルピリジルメルカプト基、イミダゾリルメルカプト基、ピラゾリルメルカプト基、トリアゾリルメルカプト基、オキサゾリルメルカプト基、チアゾールメルカプト基、チアジアゾールメルカプト基が挙げられる。
本発明において、アリールアルケニル基は、通常、その炭素数8〜20であり、アリールアルケニル基の具体例としては、スチリル基が挙げられる。
本発明において、アリールアルキニル基は、通常、その炭素数8〜20であり、アリールアルキニル基の具体例としては、フェニルアセチレニル基が挙げられる。
本発明の一形態において、式(AI)中の少なくとも一つのZは−CR1R2−であることが好ましい。
その場合のR1およびR2の少なくとも一方は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、又は下記式(AIV)で表される基であることが好ましい。
ここで、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子は、R1〜R8において説明したアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、及びハロゲン原子と同義であり、好ましいものも同じである。
本発明の一形態において、式(AI)中の少なくとも一つのZは−CR1R2−であり、且つ、R1およびR2の少なくとも一方は、下記式(AIV)で表される基であることが、耐湿性及び耐湿熱性の観点から好ましい。この場合、ポリマーAの疎水性が高まり、水分の侵入が抑制されるため、耐湿性が向上すると推測される。また、主鎖に加えて側鎖の相互作用も高くなることで、好ましい配列が強固になり、耐湿熱性も向上すると推測される。
式(AIV)中、
L11は、連結基を表す。
Ar10は、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
*は、R1又はR2が結合する炭素原子との結合部を表す。
式(AIV)中のL11により表される連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜10)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜6)、アルキニレン基(好ましくは炭素数2〜6)、−COO−、−CON(Ri)−、−OCO−、−N(Ri)CO−、−OCON(Ri)−、−N(Ri)COO−、−N(Ri)CON(Ri)−、−CO−、−CS−、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−SO2O−、−SO2N(Ri)−、−N(Ri)−(式中、Riは水素原子、アリール基又はアルキル基を表す)、又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基などが挙げられる。
本発明の一形態において、L11は、アルキレン基、アルキレン基−O−アルキレン基であることが好ましい。
式(AIV)中のAr10により表されるアリール基は、R1〜R8において説明したアリール基において説明したアリール基と同義であり、好ましいものも同じである。
また、Ar10により表されるヘテロアリール基としては、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、フラザン、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、キナゾリジン、シンノリン、フタラジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、β-カルボリン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン等の芳香族ヘテロ環から水素原子を1個除いた基等が挙げられる。ヘテロアリール基は置換基を有していてもよい。
本発明の一形態において、ポリマー(A)は、式(AI)で表される構造単位として、下記式(AII)で表される構造単位を有することが好ましい。
式中、
Ar21及びAr22は、それぞれ独立に、3価の芳香族炭化水素環基又は芳香族ヘテロ環基を表す。
R21およびR22は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。あるいは、R21及びR22は互いに連結して環を形成してもよい。
*は、上記ポリマー(A)を構成する他の部位との結合部を表す。
Ar21及びAr22により表される3価の芳香族炭化水素環基及び芳香族ヘテロ環基は、一般式(AI)中のAr1及びAr2により表される3価の芳香族炭化水素環基及び芳香族ヘテロ環基と同義であり、好ましいものも同じである。
本発明の一形態において、Ar21及びAr22の少なくとも一方は、硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環基であることが好ましく、双方が硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環であることがより好ましい。硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環としては、例えば、チオフェン環が好ましい。
R21およびR22により表される置換基の定義及び具体例は、上述したR1〜R8と同義であり、好ましいものも同じである。
R21及びR22が互いに連結して形成し得る環としては、例えば、置換基を有していてもよいシクロペンタン環、置換基を有していてもよいシクロヘキサン環、置換基を有していてもよいシクロヘプタン環等が挙げられる。
本発明の一形態において、R21およびR22の少なくとも一方は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、下記式(AV)で表される基であることが好ましい。
ここで、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子は、式(AI)中のZとしての−CR1R2−において説明した、R1及びR2により表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子と同義であり、好ましいものも同じである。
式中、
L21は、連結基を表し、Ar20は、アリール基又はヘテロアリール基を表し、*は、R21又はR22が結合する炭素原子との結合部を表す。
ここで、L21により表される連結基は、上述した一般式(AIV)中のL11により表される連結基と同義であり、好ましいものも同じである。
また、Ar20により表されるアリール基及びヘテロアリール基は、上述した一般式(AIV)中のAr10により表されるアリール基及びヘテロアリール基と同義であり、好ましいものも同じである。
本発明の一形態において、R21およびR22の少なくとも一方は、上記式(AV)で表される基であることがより好ましい。
また、本発明の一形態において、ポリマー(A)は、式(AI)で表される構造単位として、下記式(AIII)で表される構造単位を有することが好ましい。
式中、
Ar31及びAr32は、それぞれ独立に、3価の芳香族ヘテロ環基を表す。
R31、R32、R33、R34は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。あるいは、R31、R32、R33及びR34のうち2個が連結して環を形成し、残りは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を表す。
*は、上記ポリマー(A)を構成する他の部位との結合部を表す。
Ar31及びAr32により表される芳香族ヘテロ環基としては、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、窒素原子及びセレン原子から選択されるいずれかを少なくとも含む3価の芳香族ヘテロ環基であることが好ましく、より好ましくは、炭素数4〜60の3価の芳香族ヘテロ環基である。Ar31及びAr32としての芳香族ヘテロ環基は、更に置換基を有していてもよい。
この芳香族ヘテロ環基は、単環又は縮合環であってもよい。これらの中でも、5つ以下の環が縮合した縮合環、又は単環が好ましく、2つの環が縮合した縮合環、又は単環がより好ましく、単環がさらに好ましい。
芳香族ヘテロ環の環員数としては、3〜8員環が好ましく、5員環または6員環がより好ましい。
酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、窒素原子又はセレン原子を含む5員環の芳香族ヘテロ環および5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、シロール環、セレノフェン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環等が挙げられる。また、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、窒素原子又はセレン原子を含む6員環の芳香族ヘテロ環および6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、シラベンゼン環等が挙げられる。
本発明の一形態において、Ar31及びAr32により表される芳香族ヘテロ環基の少なくとも一方は、硫黄原子を含むことが好ましく、双方が硫黄原子を含むことがより好ましい。硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環としては、例えば、チオフェン環が好ましい。
R31、R32、R33、R34(以下、R31〜R34)により表される置換基の定義及び具体例は、上述したR1〜R8により表される置換基の定義及び具体例と同じである。
R31、R32、R33及びR34のうち2個が連結して形成し得る環としては、例えば、置換基を有していてもよいシクロペンタン環、置換基を有していてもよいシクロヘキサン環、置換基を有していてもよいシクロヘプタン環等が挙げられる。
本発明の一形態において、R31〜R34の少なくとも一つは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は下記式(AVI)で表される基であることが好ましい。
ここで、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子は、式(AI)中のZとしての−CR1R2−において説明した、R1及びR2としてのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子と同義であり、好ましいものも同じである。
式中、
L31は、連結基を表し、Ar30は、アリール基又はヘテロアリール基を表し、*は、R31、R32、R33又はR34が結合する炭素原子との結合部を表す。
ここで、L31により表される連結基は、上述した一般式(AIV)中のL11により表される連結基と同義であり、好ましいものも同じである。
また、Ar30により表されるアリール基及びヘテロアリール基は、上述した一般式(AIV)中のAr10により表されるアリール基及びヘテロアリール基と同義であり、好ましいものも同じである。
本発明の一形態において、R31〜R34の少なくとも一つは、上記式(AVI)で表される基であることがより好ましい。
本発明の式(AI)で表される構造単位を有するポリマー(A)は、カップリング反応、例えばChemical Reviews,2002年,102巻,1358ページなどに記載の方法を用いて合成することができる。すなわち、遷移金属触媒使用した、亜鉛反応剤を用いる根岸カップリング、スズ反応剤を用いる右田−小杉−Stilleカップリング、ホウ素反応剤を用いる鈴木−宮浦カップリング、マグネシウム反応剤を用いる熊田−玉尾−Corriuカップリング、ケイ素反応剤を用いる檜山カップリングなどのクロスカップリングや、銅を使用したUllmann反応、ニッケルを使用した山本重合などを利用して合成することができる。
遷移金属触媒としては、パラジウム、ニッケル、銅、コバルト、鉄(Journal of the American Chemical Society,2007年,129巻,9844ページ記載)などの金属を使用することができる。また金属は配位子を有していても良く、PPh3、P(t−Bu)3などのリン配位子や、N−ヘテロサイクリックカルベン配位子(Angewandte Chemie International Edition,2002年,41巻,1290ページ記載)などが好ましく用いられる。原料となるスズ反応剤やホウ素反応剤などの金属反応剤は、Organic Synthesis Collective Volume,11巻,2009年,393ページ、同 9巻,1998年,553ページ、Tetrahedron,1997年,53巻,1925ページ、Journal of Organic Chemistry,1993年,58巻,904ページ、特開2005−290001号公報、特表2010−526853号公報などの記載を参考にして合成することができる。反応はMacromolecular Rapid Communications,2007年,28巻,387ページに記載されているようにマイクロウェーブ照射下でおこなってもよい。
式(AI)で表される構造単位を有するポリマー(A)の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量で500〜500000が好ましく、5000〜100000がより好ましい。
分子量は特に断らない限りGPC(Gel Permeation Chromatography;ゲルろ過クロマトグラフィー)法を用いて測定した値とし、分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量とする。GPC法に用いるカラムに充填されているゲルは芳香族化合物を繰り返し単位に持つゲルが好ましく、例えばスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなるゲルが挙げられる。カラムは2〜6本連結させて用いることが好ましい。用いる溶媒は、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリドンのアミド系溶媒、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族系溶媒が挙げられる。測定は、溶媒の流速が0.1〜2mL/minの範囲で行うことが好ましく、0.5〜1.5mL/minの範囲で行うことが最も好ましい。この範囲内で測定を行うことで、装置に負荷がかからず、さらに効率的に測定ができる。測定温度は10〜50℃で行うことが好ましく、20〜40℃で行うことが最も好ましい。使用可能温度が高いカラムを用いて50℃〜200℃で測定をおこなうこともできる。なお、使用するカラム及びキャリアは測定対象となる高分子化合物の物性に応じて適宜選定することができる
本発明において、式(AI)で表される構造単位を有するポリマー(A)は、式(AI)で表される構造単位からなるホモポリマーであってもよいし、他の共重合成分を有するコポリマーであってもよい。他の共重合成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開2013−74136号公報の段落0026〜0102に記載のものを援用することができ、これらの内容は参照により本明細書に取り込まれる。
ポリマー(A)がコポリマーであるとき、その共重合比は特に限定されないが、式(AI)で表される構造単位がモル比で全体の10〜90モル%であることが好ましく、45〜55モル%であることが好ましい。
本発明の式(AII)で表されるように、構造単位が非対称である場合には、これを含むポリマーには結合様式の違いによる位置規則性が生じる。本発明では代表的な一つの結合様式のみを記載しているが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
コポリマーはランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、周期的共重合体のいずれであってもよいが、交互共重合体または周期的共重合体であることが好ましく、交互共重合体であることがより好ましい。
以下、式(AI)で表される構造単位の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。下記具体例において、「*」は、ポリマー(A)を構成する他の部位との結合部を示す。
正孔輸送層3を形成する正孔輸送材料は、式(AI)で表される構造単位を有するポリマー(A)以外の材料を含んでもよい。この材料は液体材料でも固体材料でもよく、特に限定されない。例えば、CuI、CuNCS等の無機材料、および、例えば特開2001−291534号公報の段落番号0209〜段落番号0212に記載の有機正孔輸送材料等が挙げられる。有機正孔輸送材料としては、好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリシラン等の導電性高分子、2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心原子を共有するスピロ化合物、トリアリールアミン等の芳香族アミン化合物、トリフェニレン化合物、含窒素複素環化合物または液晶性シアノ化合物が挙げられる。
式(AI)で表される構造単位を有するポリマー(A)以外に含まれていてもよい正孔輸送材料は、溶液塗布可能で固体状になる有機正孔輸送材料が好ましく、具体的には、2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレン(2,2’,7,7’-tetrakis-(N,N-di-p-methoxyphenylamine)-9,9’-spirobifluorene)(spiro−OMeTADともいう)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、4−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド ジフェニルヒドラゾン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(poly(3,4-ethylene dioxythiophene;PEDOT)等が挙げられる。
正孔輸送層3の膜厚は、特に限定されないが、50μm以下が好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、5nm〜5μmがさらに好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。なお、正孔輸送層3の膜厚は、第二電極2と感光層13の表面との平均距離に相当し、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて光電変換素子の断面を観察することにより、測定できる。
<第二電極2>
第二電極2は、太陽電池において正極として機能する。第二電極2は、導電性を有していれば特に限定されず、通常、導電性支持体11と同じ構成とすることができる。強度が十分に保たれる場合は、支持体11aは必ずしも必要ではない。
第二電極2の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光層13に光が到達するためには、導電性支持体11と第二電極2との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の太陽電池においては、導電性支持体11が透明であって太陽光を支持体11a側から入射させるのが好ましい。この場合、第二電極2は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。
第二電極2を形成する材料として、例えば、白金(Pt)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、インジウム(In)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスニウム(Os)、アルミニウム(Al)等の金属、上述の導電性の金属酸化物、炭素材料および伝導性高分子等が挙げられる。炭素材料としては、炭素原子同士が結合してなる、導電性を有する材料であればよく、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン等が挙げられる。
第二電極2としては、金属もしくは導電性の金属酸化物の薄膜(蒸着してなる薄膜を含む)、または、この薄膜を有するガラス基板もしくはプラスチック基板が好ましい。ガラス基板もしくはプラスチック基板としては、金もしくは白金の薄膜を有するガラス、または、白金を蒸着したガラスが好ましい。
第二電極2の膜厚は、特に限定されず、0.01〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがさらに好ましく、0.01〜1μmが特に好ましい。
<その他の構成>
本発明においては、第一電極1と第二電極2との接触を防ぐために、ブロッキング層14に代えて、または、ブロッキング層14と共に、スペーサーやセパレータを用いることもできる。
また、第二電極2と正孔輸送層3の間に正孔ブロッキング層を設けてもよい。
<<太陽電池>>
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を用いて構成される。例えば図1A、図2〜図4に示されるように、外部回路6に対して仕事させるように構成した光電変換素子10を太陽電池として用いることができる。第一電極1(導電性支持体11)および第二電極2に接続される外部回路6は、公知のものを特に制限されることなく、用いることができる。
本発明は、例えば、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051およびScience,338,p.643(2012)に記載の各太陽電池に適用することができる。
本発明の太陽電池は、構成物の劣化および蒸散等を防止するために、側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。
<<光電変換素子および太陽電池の製造方法>>
本発明の光電変換素子および太陽電池は、公知の製造方法、例えは、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051、Science,338,p.643(2012)等に記載の方法によって製造できる。
以下に、本発明の光電変換素子および太陽電池の製造方法を簡単に説明する。
本発明の製造方法においては、まず、導電性支持体11の表面に、所望によりブロッキング層14、多孔質層12、および電子輸送層15の少なくとも一つを形成する。
ブロッキング層14は、例えば、上記絶縁性物質またはその前駆体化合物等を含有する分散物を導電性支持体11の表面に塗布し、焼成する方法またはスプレー熱分解法等によって、形成できる。
多孔質層12を形成する材料は、好ましくは微粒子として用いられ、さらに好ましくは微粒子を含有する分散物として用いられる。
多孔質層12を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、湿式法、乾式法、その他の方法(例えば、Chemical Review,第110巻,6595頁(2010年刊)に記載の方法)が挙げられる。これらの方法において、導電性支持体11の表面またはブロッキング層14の表面に分散物(ペースト)を塗布した後に、100〜800℃の温度で10分〜10時間、例えば空気中で焼成することが好ましい。これにより、微粒子同士を密着させることができる。
焼成を複数回行う場合、最後の焼成以外の焼成の温度(最後以外の焼成温度)を、最後の焼成の温度(最後の焼成温度)よりも低い温度で行うのがよい。例えば、酸化チタンペーストを用いる場合、最後以外の焼成温度を50〜300℃の範囲内に設定することができる。また、最後の焼成温度を、100〜600℃の範囲内において、最後以外の焼成温度よりも高くなるように、設定することができる。支持体11aとしてガラス支持体を用いる場合、焼成温度は60〜500℃が好ましい。
多孔質層12を形成するときの、多孔質材料の塗布量は、多孔質層12の膜厚および塗布回数等に応じて適宜に設定され、特に限定されない。導電性支持体11の表面積1m2当たりの、多孔質材料の塗布量は、例えば、0.5〜500gが好ましく、さらには5〜100gが好ましい。
電子輸送層15を設ける場合、それぞれ、後述する正孔輸送層3と同様にして、形成することができる。
次いで、感光層13を設ける。
感光層13を設ける方法は、湿式法および乾式法が挙げられ、特に限定されない。本発明においては、湿式法が好ましく、例えば、ペロブスカイト型光吸収剤を含有する光吸収剤溶液に接触させる方法が好ましい。この方法においては、まず、感光層を形成するための光吸収剤溶液を調製する。光吸収剤溶液は、上記ペロブスカイト化合物の原料であるMX2とAXとを含有する。ここで、A、MおよびXは上記式(I)のA、MおよびXと同義である。この光吸収剤溶液において、MX2とAXとのモル比は目的に応じて適宜に調整される。光吸収剤としてペロブスカイト化合物を形成する場合、AXとMX2とのモル比は、1:1〜10:1であることが好ましい。この光吸収剤溶液は、MX2とAXとを所定のモル比で混合した後に加熱することにより、調製できる。この形成液は通常溶液であるが、懸濁液でもよい。加熱する条件は、特に限定されないが、加熱温度は30〜200℃が好ましく、70〜150℃がさらに好ましい。加熱時間は0.5〜100時間が好ましく、1〜3時間がさらに好ましい。溶媒または分散媒は後述するものを用いることができる。
次いで、調製した光吸収剤溶液を、その表面に感光層13を形成する層(光電変換素子10においては、多孔質層12、ブロッキング層14、または電子輸送層15のいずれかの層)の表面に接触させる。具体的には、光吸収剤溶液を塗布または浸漬することが好ましい。接触させる温度は5〜100℃であることが好ましく、浸漬時間は5秒〜24時間であるのが好ましく、20秒〜1時間がより好ましい。塗布した光吸収剤溶液を乾燥させる場合、乾燥は熱による乾燥が好ましく、通常は、20〜300℃、好ましくは50〜170℃に加熱することで乾燥させる。
また、上記ペロブスカイト化合物の合成方法に準じて感光層を形成することもできる。
さらに、上記AXを含有するAX溶液と、上記MX2を含有するMX2溶液とを、別々に塗布(浸漬法を含む)し、必要により乾燥する方法も挙げられる。この方法では、いずれの溶液を先に塗布してもよいが、好ましくはMX2溶液を先に塗布する。この方法におけるAXとMX2とのモル比、塗布条件および乾燥条件は、上記方法と同じである。この方法では、上記AX溶液および上記MX2溶液の塗布に代えて、AXまたはMX2を、蒸着させることもできる。
さらに他の方法として、上記光吸収剤溶液の溶剤を除去した化合物または混合物を用いた、真空蒸着等の乾式法が挙げられる。例えば、上記AXおよび上記MX2を、同時または順次、蒸着させる方法も挙げられる。
これらの方法等により、ペロブスカイト化合物が多孔質層12、ブロッキング層14、または電子輸送層15の表面に感光層として形成される。
このようにして設けられた感光層13上に、正孔輸送層3を形成する。
正孔輸送層3は、正孔輸送材料を含有する正孔輸送材料溶液を塗布し、乾燥して、形成することができる。正孔輸送材料溶液は、塗布性に優れる点、および多孔質層12を有する場合は多孔質層12の孔内部まで侵入しやすい点で、正孔輸送材料の濃度が0.1〜1.0M(モル/L)であるのが好ましい。
正孔輸送層3を形成した後に、第二電極2を形成して、光電変換素子が製造される。
各層の膜厚は、各分散液または溶液の濃度、塗布回数を適宜に変更して、調整できる。例えば、膜厚が厚い感光層13Bおよび13Cを設ける場合には、光吸収剤溶液を複数回塗布、乾燥すればよい。
上述の各分散液および溶液は、それぞれ、必要に応じて、分散助剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。
光電変換素子の製造方法に使用する溶媒または分散媒としては、特開2001−291534号公報に記載の溶媒が挙げられるが、特にこれに限定されない。本発明においては、有機溶媒が好ましく、さらに、アルコール溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、炭化水素溶媒、ラクトン溶媒、ハロゲン溶媒、および、これらの2種以上の混合溶媒が好ましい。混合溶媒としては、アルコール溶媒と、アミド溶媒、ニトリル溶媒または炭化水素溶媒から選ばれる溶媒との混合溶媒が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、アセトニトリル、N,N’−ジメチルホルムアミド(N,N’-dimethylformamide;DMF)、ジメチルアセトアミド、または、これらの混合溶媒が好ましい。
各層を形成する溶液または分散剤の塗布方法は、特に限定されず、スピンコート、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、インクジェット印刷法、浸漬法等、公知の塗布方法を用いることができる。なかでも、スピンコート、スクリーン印刷等が好ましい。
本発明の光電変換素子は、必要に応じて、アニール、ライトソーキング、酸素雰囲気下での放置等の効率安定化処理を行ってもよい。
上記のようにして作製した光電変換素子は、第一電極1および第二電極2に外部回路6を接続して、太陽電池として用いることができる。
以下に示す手順により、図1Aに示される光電変換素子10Aを製造した。なお、感光層13の膜厚が大きい場合は、図2に示される光電変換素子10Bに対応することになる。
実施例1(光電変換素子(試料番号101)の製造
<導電性支持体11の作製>
ガラス基板(支持体11a、厚さ2mm)上にフッ素ドープされたSnO2導電膜(透明電極11b、膜厚300nm)を形成し、導電性支持体11を作製した。
<ブロッキング層用溶液の調製>
チタニウム ジイソプロポキシド ビス(アセチルアセトナート)の15質量%イソプロパノール溶液(アルドリッチ社製)を1−ブタノールで希釈して、0.02Mのブロッキング層用溶液を調製した。
<ブロッキング層14の形成>
調製した0.02Mのブロッキング層用溶液を用いてスプレー熱分解法により、450℃にて、導電性支持体11のSnO2導電膜上に酸化チタンからなるブロッキング層14(膜厚50nm)を形成した。
<酸化チタンペーストの調製>
酸化チタン(アナターゼ、平均粒径20nm)のエタノール分散液に、エチルセルロース、ラウリン酸およびテルピネオールを加えて、酸化チタンペーストを調製した。
<多孔質層12の形成>
調製した酸化チタンペーストをブロッキング層14の上にスクリーン印刷法で塗布し、空気中、500℃で3時間焼成した。その後、得られた酸化チタンの焼成体を、40mMのTiCl4水溶液に浸した後、60℃で1時間加熱し、続けて500℃で30分間加熱して、TiO2からなる多孔質層12(膜厚250nm)を形成した。
<感光層13Aの形成>
メチルアミンの40%メタノール溶液(27.86mL)と57質量%のヨウ化水素の水溶液(ヨウ化水素酸、30mL)をフラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して、CH3NH3Iの粗体を得た。得られたCH3NH3Iの粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶し、得られた結晶をろ取し、60℃で5時間減圧乾燥して、精製CH3NH3Iを得た。
次いで、精製CH3NH3IとPbI2とをモル比3:1でDMF中、60℃で12時間攪拌混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)シリンジフィルターでろ過して、40質量%の光吸収剤溶液Aを調製した。
調製した光吸収剤溶液Aを導電性支持体11上に成膜した多孔質層12上に、スピンコート法(2000rpmで60秒)により塗布した後、塗布した光吸収剤溶液Aをホットプレートにより100℃で60分間乾燥し、CH3NH3PbI3のペロブスカイト化合物からなる感光層13A(膜厚300nm(多孔質層12の膜厚250nmを含む))を設けた。
こうして第一電極1Aを作製した。
<正孔輸送材料の合成>
[ポリマー(1)の合成]
下記に示すポリマー(1)は、特開2013−100457号公報に記載の方法を参考にして下記モノマー(1)を調製し、Macromolecules,1992年,25巻,1214〜1223ページに記載の方法を参考にして合成した。
[他のポリマーの合成例]
下記に示すポリマー(2)、(3)、(5)、(14)、(15)、(20)は、ポリマー(1)と同様にして合成した。
下記に示すポリマー(4)、(6)は、特開2013−49842号公報に記載の方法を参考にしてモノマーを調製し、ポリマー(1)と同様の方法で合成した。
下記に示すポリマー(7)は、Dyes and Pigments,2015年,112巻,145〜153ページ記載の方法を参考にしてモノマーを調製し、ポリマー(1)と同様の方法で合成した。
下記に示すポリマー(8)は、特開2013−100457号公報に記載の方法を参考にして調製した下記モノマー(8)と下記に示すモノマー(1)からJournal of the American Chemical Society,2008年,130巻,7670〜7685ページに記載の方法を参考にして合成した。
下記に示すポリマー(9)、(12)は、特開2013−100457号公報に記載の方法を参考にしてモノマーを調整し、ポリマー(8)と同様の方法で合成した。
下記に示すポリマー(10)、(11)は、特開2013−49842号公報および特開2013−100457号公報に記載の方法を参考にしてモノマーを調整し、ポリマー(8)と同様の方法で合成した。
下記に示すポリマー(13)は、Journal of the American Chemical Society,1994年,116巻,11715〜11722ページおよび特開2013−100457号公報に記載の方法を参考にしてモノマーを調製し、ポリマー(1)と同様の方法で合成した。
下記に示すポリマー(16)、(17)は、Advanced Materials,2012年,24巻,5428〜5432ページに記載の方法を参考にしてモノマーを調製し、ポリマー(1)と同様の方法で合成した。
下記に示すポリマー(18)、(19)は、Organic Letters,2012年,14巻,628〜631ページに記載の方法を参考にしてモノマーを調製し、ポリマー(1)と同様の方法で合成した。
下記に示すポリマー(21)は、Journal of Organic Chemistry,2014年,79巻,9206〜9221ページに記載の方法を参考にしてモノマーを調製し、ポリマー(1)と同様の方法で合成した。
[各ポリマーの分子量]
各ポリマーの、GPCで分析したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)をまとめて下記表1に示す。
[比較用正孔輸送材料]
比較用正孔輸送材料として、下記に示すspiro−MeOTAD(和光純薬工業(株)製)と、P3HT(平均分子量40,000〜70,000)(和光純薬工業(株)製)を使用した。
<正孔輸送材料溶液の調製>
正孔輸送材料として、上記で合成したポリマー(1)(180mg)をクロロベンゼン(1mL)に溶解させた。このクロロベンゼン溶液に、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(170mg)をアセトニトリル(1mL)に溶解させたアセトニトリル溶液37.5μLと、t−ブチルピリジン(TBP、17.5μL)とを加えて混合し、正孔輸送層用溶液を調製した。
<正孔輸送層3Aの形成>
次いで、第一電極1Aの表面上に、調製した正孔輸送層用溶液をスピンコート法により塗布、乾燥して、固体状の正孔輸送層3A(膜厚100nm)を成膜した。
<第二電極2の作製>
正孔輸送層3A上に蒸着法により金を蒸着して、第二電極2(膜厚100nm)を作製した。
こうして、光電変換素子10A(試料番号101)を製造した。
各膜厚は、上記方法に従って、SEMにより観察して、測定した。
(光電変換素子(試料番号102〜121、c11〜c12)の製造)
光電変換素子(試料番号101)の製造において、「ポリマー(1)」に代えて下記表2の「正孔輸送材料」欄に記載のポリマーそれぞれを含有する正孔輸送層用溶液を用いた以外は、光電変換素子(試料番号101)の製造と同様にして、本発明の光電変換素子(試料番号102〜121)、ならびに、比較のための光電変換素子(試料番号c11〜c12)をそれぞれ製造した。なお、比較用の試料番号c11及びc12では、上述した比較用正孔輸送材料を使用した。
<耐湿性の評価>
光電変換素子の耐湿性を以下のようにして評価した。
各試料番号の光電変換素子を上記製造方法と同様にして3検体製造した。3検体それぞれについて、電池特性試験を行って、電流を測定した。そして、その3検体の平均値を各試料番号の光電変換素子の初期の電流とした。電池特性試験は、ソーラーシミュレーター「WXS−85H」(WACOM社製)を用いて、AM1.5フィルタを通したキセノンランプから1000W/m2の擬似太陽光を照射することにより行った。この試験において、I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、初期の光電変換効率(η/%)を求めた。
各試料番号の3検体それぞれを、温度25℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽に24時間保存してから、上記と同様にして電池特性試験を行って、光電変換効率(η/%)を測定した。3検体の平均値を各試料番号の光電変換素子の、保存後の光電変換効率(η/%)とした。
光電変換素子の耐湿性は、下記式によって算出される光電変換効率の低下率から下記評価基準に沿って評価した。
低下率(%)=100−{100×(保存後の光電変換効率)/(初期の光電変換効率)}
− 耐湿性評価基準 −
A: 低下率が15%未満
B: 低下率が15%以上20%未満
C: 低下率が20%以上25%未満
D: 低下率が25%以上30%未満
E: 低下率が30%以上40%未満
F: 低下率が40%以上
結果を下記表2に示す。
<耐湿熱性の評価>
各試料番号の光電変換素子を上記製造方法と同様にして3検体製造した。3検体それぞれについて、電池特性試験を行って、電流を測定した。そして、その3検体の平均値を各試料番号の光電変換素子の初期の電流とした。電池特性試験は、ソーラーシミュレーター「WXS−85H」(WACOM社製)を用いて、AM1.5フィルタを通したキセノンランプから1000W/m2の擬似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定した。
次いで、各試料番号の3検体それぞれを、相対湿度60%、温度45℃の恒温恒湿槽に80時間静置してから、上記と同様にして電池特性試験を行って、電流を測定した。3検体の平均値を各試料番号の光電変換素子の、静置後の電流とした。
光電変換素子の耐湿熱性は、下記式によって算出される電流の低下率から、下記評価基準に沿って評価した。
低下率(%)=[(初期の電流−静置後の電流)/(初期の電流)]×100
− 耐湿熱性評価基準 −
A : 低下率が15%未満
B : 低下率が15%以上20%未満
C : 低下率が20%以上30%未満
D : 低下率が30%以上40%未満
E : 低下率が40%以上50%未満
F : 低下率が50%以上
結果を下記表2に示す。
本発明の太陽電池の光電変換効率は、いずれも太陽電池として正常に作動するのに十分な光電変換効率であった。なお、試料番号101の平均効率は5.0%であった。
上記表2に示されるように、正孔輸送層に式(AI)で表される構造単位を有するポリマーを含有することを特徴とする本発明の光電変換素子は、耐湿性および耐湿熱性に優れることがわかった。
実施例2
実施例1における<正孔輸送材料溶液の調製>において、「ポリマー(1)」(180mg)をクロロベンゼン(1mL)に溶解させ、これにアセトニトリル37.5μLを加えて混合することで、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとt−ブチルピリジンを含まない正孔輸送層用溶液を調製し、以下の操作は実施例1と全く同様に行うことで、試料番号201を作製した。
「ポリマー(1)」に代えて下記表3の「正孔輸送材料」欄に記載のポリマーを含有する正孔輸送層用溶液を用いた以外は、光電変換素子(試料番号201)の製造と同様にして、本発明の光電変換素子(試料番号202〜221)、ならびに、比較のための光電変換素子(試料番号c21〜c22)をそれぞれ製造した。
作製した試料について、実施例1の<耐湿性の評価>および<耐湿熱性の評価>と同様にして評価をおこなった。
結果を下記表3に示す。
本発明の太陽電池の光電変換効率は、いずれも太陽電池として正常に作動するのに十分な光電変換効率であった。なお、試料番号201の平均効率は3.7%であった。
上記表3に示されるように、正孔輸送層に式(AI)で表される単位構造を有するポリマーを含有することを特徴とする本発明の光電変換素子は、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとt−ブチルピリジンなどのドーパントを併用しない系においても、耐湿性および耐湿熱性に優れることがわかった。