JP2017010958A - 積層型超電導コイル装置 - Google Patents
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よって、高磁場を発生させるために必要な高い電流密度および高い許容応力を有する高温超電導コイルの実現が期待されている。
これらの形成方法で代表的なものに、薄膜テープ線を同心円状に巻回した超電導コイルを巻回軸方向に複数積層して1つの積層型高温超電導コイルにする方法がある。
隣接する超電導コイルは、その最内周または最外周のいずれかにおいて、段違いに金属板が架設されて、電気的に接続される。
積層された全ての超電導コイルは、この金属板によって超電導電流が通流する1つの経路を形成する。
この外力によって超電導コイルが規定位置からずれると、この磁場の強度分布は設計した強度分布から外れる。
また、冷却時の超電導コイルの熱収縮による変形によっても超電導コイルは規定位置からずれて、磁場の強度分布は設計した強度分布から外れる。
また、このような超電導コイルのずれや変形によってクエンチが発生すると、発生磁場を維持することができない。
このずれおよび変形を防止するため、従来のように低温超電導コイルを用いる場合、積層されて隣接する超電導コイルを相互に接着することが望ましい。
低温超電導コイルについては、接着に加えて、中心軸方向の上下端に可動に設けられたフランジを超電導コイルに押し当てることでこのずれの防止を補強することもある。
なお、冷熱の伝導性を高める観点からも、隣接する超電導コイルは、相互に接着されていることが望ましい。
薄膜テープ線においても、クエンチによる発生磁場の消失を防止するとともに、発生磁場がその設計どおりの強度分布から外れて歪むことを防止する必要がある。
発生磁場が歪むことで、超電導コイルどうしの接続部など強度が低い箇所が破壊されることもあり、最悪の場合焼損してしまう。
よって、磁場の出力試験時などの積層型超電導コイル装置の製作工程が進んだ段階においても、超電導コイルの交換が必要となる頻度が高くなる。
つまり、超電導コイルを隣接する他の超電導コイルに強固に接着してしまうと、部分的な交換ができずに、全ての超電導コイルを交換しなければならないという課題があった。
また、超電導コイルの変形による各層の剥離を防止する観点からも、超電導コイルどうしを強固に接着して自由な変形を阻害するのは好ましくない。
まず、図1の実施形態にかかる超電導コイル11の薄膜テープ線20の構成斜視図を用いて、薄膜テープ線20を説明する。
薄膜テープ線20は、例えば第二世代のRE系の高温超電導物質からなる酸化物超電導層25を含むテープ状の線材である。
薄膜テープ線20を構成するこれらの層は、微小な応力で容易に剥離し、超電導性が不安定化する。
薄膜テープ線20は、図2に示されるように、巻回軸Cを中心に、テープ幅方向の両側縁を揃えて巻枠13に同心円状に巻回されて、いわゆるパンケーキコイルと呼ばれる高温超電導コイル11にされる。
この高温超電導コイル11(以下、単に「超電導コイル11」という)を巻回軸方向Cに複数積層して、例えば、冷却器(図示せず)に収容して超電導高磁場磁石にする。
図3は、第1実施形態にかかる積層型超電導コイル装置10(以下、単に「装置10」という)の概略断面斜視図である。
第1実施形態にかかる装置10は、図3に示されるように、巻回軸方向Cに積層された複数の超電導コイル11で構成される巻線部材12を備える。
隣接する超電導コイル11どうしの接触面は互いに絶縁されており、薄膜テープ線20の最内周または最外周のいずれかのみで電気的に接続されている。
よって、超電導コイル11を積層した巻線部材12もまた、巻回軸Cを中心とする円筒状の空洞部14を有することになる。
この空洞部14には、この空洞部14の直径と同程度または一回り小さい直径を有する筒材35がこの空洞部14を貫通して設けられる。
なお、この空洞部14の直径と筒材35の直径との差異を、超電導コイル11の法線方向Dのずれの許容範囲内にすることで、筒材35が超電導コイル11の法線方向Dのずれのストッパとなる。
このフランジ33は、巻線部材12の巻回軸方向Cの端面32の片面または両面に対向するように固定される。
フランジ33が両方の端面32について設けられている場合、押当て部材34は、いずれか一方のみに設けられていてもよい。
押当て部材34は、例えば、図3に示されるように、フランジ33を貫通して設けられたボルトなどである。
押当て部材34は、押し当てによる圧力を分散する分散板37を介して、巻線部材12の端面32に押し当てられる。
これら押当て部材34および分散板37は、一体に形成されていてもよい。
なお、筒材35には、押当て部材34の押し当てによる反発力でフランジ33が跳ね上がるのを防止する例えばリング状のストッパ38が一体化または後付けによって設けられてもよい。
また、繊維強化プラスチックまたはポリカーボネートなどの非磁性体で高い絶縁性を有する有機材料も同様に好適に用いられる。
弱接着とは、接着された超電導コイル11の一方を、他の超電導コイル11の超電導特性を劣化させるような損傷を与えずに引き離すことができる程度に接着されていることである。
例えば、引き離された後の超電導コイル11の抵抗値の増加率が1%以下であるとき、この超電導コイル11の超電導特性は、損傷していないといえる。
離形剤には、フッ素樹脂テープ、パラフィン、グリースまたはシリコンオイルなどが好適に用いられる。
以下、各実施形態において、超電導コイル11どうしが非接着または弱接着であることを、弱接着に接着されていることも含めて「非接着」と表す。
例えば、超電導コイル11を12個積層して3つおきに非接着な箇所を設ければ、巻線部材12は、4つの超電導コイル11で構成される3つのブロックに分けることができる。
つまり、超電導コイル11の交換が必要になったとき、1つのブロックを交換すれば、全てを交換しなくてもよいことになる。
当然、全ての超電導コイル11を非接着に積層してもよい。
しかし、高温超電導コイルを用いる場合、低温超電導コイルを用いたときには問題にならない一部の高温超電導コイルの交換も容易にすることができる必要がある。
そこで、第1実施形態にかかる装置10では、超電導コイル11間を非接着にする一方で、押当て部材34で巻線部材12の端面32を巻回軸方向Cに加圧する。
超電導コイル11の巻回軸方向Cおよび巻回軸方向Cに垂直な方向への超電導コイル11のずれを防止することができる。
図4(A)は、第2実施形態にかかる装置10の概略正面断面図である。
また、図4(B)は、第2実施形態にかかる装置10の変形例を示す概略正面断面図である。
なお、図4(A),(B)は、第1実施形態で示した図3と同じ位置における正面断面図であるが、簡単のため断面部分のみを示している。以降の各図も同様である。
図4(A)は、分散板37にばね材43を設けた例を示しており、図4(B)は、押当て部材34にばね材43を設けた例を示している。
よって、押当て部材34または分散板37に弾性が全くない場合、室温で最適な圧力で押当て部材34を押し当てても、超電導電流発生時には非接触となってしまう。
よって、押当て部材34または分散板37は、熱収縮量および電磁力による巻線部材12の変位量の総和よりも大きい変位裕度を有している必要がある。
このような高い弾性を有する分散板37または押当て部材34で加圧することで、隣接する超電導コイル11に非接着な超電導コイル11があっても、外力による超電導コイル11のずれが軽減される。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図5(A)は、第3実施形態にかかる装置10の概略正面断面図、図5(B)は、図5(A)で示す装置10のI−I断面の上面断面図である。
第3実施形態にかかる装置10は、図5に示されるように、一部またはすべての超電導コイル11について、巻回されて対向する特定のターン20n,20n+1間を非接着にする。
絶縁材44の配置の方法は、例えば、以下の2つに大別することができる。
一方は、薄膜テープ線20の単体での巻回の後、超電導コイル11に樹脂を含浸させて各ターン20k(k=1,2,…,n,…)間を絶縁する方法である。
絶縁テープを用いる場合も、超電導コイル11の成形後に樹脂を含浸させて超電導コイル11の全体を固定することが多い。
いずれの場合も、各ターン20kが絶縁されることで、超電導電流が法線方向Dに短絡することが防止されている。
しかし、従来低温超電導コイルに施したように対向するターン20k,20k+1を絶縁するとともに強固に接着してしまうと、応力に従った薄膜テープ線20の自由な変位が阻害される。
よって、この応力が脆弱で容易に剥離する薄膜テープ線20の各層(21〜26)を剥離または破断させて薄膜テープ線20を劣化させることがある。
第1実施形態で述べたとおり、超電導コイル11の変形は磁場形状を変形させるので、ターン全体のうち、特定のターン20n,20n+1間にこのような離形処理をするのが望ましい。
この離形処理によって、強い応力が薄膜テープ線20にかかった場合に、ターン20nが剥離して、応力を緩和する形状に変形することができる。
なお、非接着にするターン20nの位置は、超電導コイル11の積層位置などによって、適宜決定する。
例えば、積層位置によっては、その超電導コイル11の全てのターン20kを非接着にしてもよい。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図6は、第4実施形態にかかる装置10の概略正面断面図である。
この間隙に接着材39が配置されているときは、冷却箔45は、この接着剤46の中に埋め込まれるように配置される。
冷却器には、超電導コイル11を冷却する冷熱源となる冷凍機47が設置される。
この冷凍機47には、冷凍機47の冷熱を超電導コイル11に伝熱する冷却箔45の一端が接続される。
そして、この端面32から隣接する超電導コイル11を順々に伝熱して内部の超電導コイル11を冷却していた。
しかし、このように巻線部材12の外面の一部のみから巻線部材12を冷却すると、巻線部材12の中腹の超電導コイル11が十分に冷却されるまでに、巻線部材12に不均一な温度分布ができる。
同様に、このような冷却方法は、1つの超電導コイル11内においても、不均一な温度分布を発生させる。
そこで、第4実施形態では、冷却箔45の他端を超電導コイル11どうしの接着部分に差し込むことで、中腹部の超電導コイル11もそれぞれ直接冷却する。
このように冷却箔45が超電導コイル11の側面を不足なく被覆することで、同一の超電導コイル11内にできる温度分布が均一な状態を維持して冷却される。
また、冷却箔45が超電導コイル11に電気的に接続されて超電導電流が短絡しないように、必要に応じて冷却箔45をコーティングするなどの絶縁処理をする。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
ダブルパンケーキコイル51とは、薄膜テープ線20を同心円状に巻回した超電導コイル11を2段積層させて最内周を電気的に接続することで一体化したコイルである。
また、図7(B)はソレノイドコイル52の概略斜視図である。
ソレノイドコイル52とは、一本の薄膜テープ線20を巻回軸方向Cにずらしながら巻回して、この巻回と端部での折り返しを繰り返して成形されるコイルである。
積層される超電導コイル11は、ダブルパンケーキコイル51であってもよいし、ソレノイドコイル52であってもよい。
レーストラック型コイル53とは、上述した超電導コイル11と同様に、薄膜テープ線20を巻回軸方向Cにずらさずに同心円状に巻回したコイルである。
レーストラック型コイル53は、レーストラック形状の巻枠13に巻回することで、全体がレーストラック形状に成形されたものである。
積層される超電導コイル11は、このようなレーストラック型コイル53であってもよい。
Claims (11)
- 高温超電導線材が巻回されてなる超電導コイルが巻回軸方向に複数積層された巻線部材と、
前記超電導コイルの最内周面に沿って配置されて前記巻線部材を前記巻回軸方向に貫通する筒材と、
前記巻線部材の前記巻回軸方向の端面の少なくとも一面に対向するように前記筒材に固定されるフランジと、
前記フランジに前記巻回軸方向に可動に固定されて前記端面に押し当てられる押当て部材と、を備え、
積層される前記超電導コイルの隣接する他の高温超電導コイルと接触する接触面の少なくとも一部を非接着または離形処理による弱接着にすることを特徴とする積層型超電導コイル装置。 - 前記端面に設けられて前記押当て部材による前記端面への圧力を分散させる分散板を備える請求項1に記載の積層型超電導コイル装置。
- 前記押当て部材は、前記フランジを貫通して設けられたボルトである請求項1または請求項2に記載の積層型超電導コイル装置。
- 前記分散板および前記押当て部材の少なくとも一方は、コイルばね、薄板ばねおよび皿ばねからなる群より選ばれた少なくとも一種のばね材を備える請求項2または請求項3に記載の積層型超電導コイル装置。
- 前記押当て部材の押し当て時における変位量は、前記巻線部材の冷却による熱収縮量および電磁力による変位量の前記巻回軸方向の総和よりも大きい請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層型超電導コイル装置。
- 前記筒材は、前記最内周面に接触して設けられる請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の積層型超電導コイル装置。
- 前記離形処理は、接着材の前記超電導コイルとの接着面における離形層の形成である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の積層型超電導コイル装置。
- 前記超電導コイルの少なくとも1つは、巻回されて対向するターン間に配置される絶縁材に前記離形処理がなされる請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の積層型超電導コイル装置。
- 前記離形処理は、フッ素樹脂テープ、パラフィン、グリースおよびシリコンオイルからなる群より選ばれた少なくとも一種の離形剤の接着もしくは塗布である請求項8に記載の積層型超電導コイル装置。
- 隣接する前記超電導コイルどうしの間隙に、前記超電導コイルに冷熱を伝熱する冷却箔を配置する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の積層型超電導コイル装置。
- 前記冷却箔は、前記超電導コイルよりも熱伝導率が高い請求項10に記載の積層型超電導コイル装置。
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