JP2014236092A - 超電導コイルの製造装置およびその製造方法 - Google Patents
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このRE系の線材を構成する層は非常に剥離しやすいことが知られており、超電導性はこの剥離やその他の応力によるクラックなどで容易に喪失する。
占積率が高まると、例えば、同じ強度の電磁波を発生させる同じ巻数であっても、必要となる線材の量は少なくて済み、単価が下がる。
さらに、超電導コイルを設計どおりの寸法精度に成形する観点からも、接着剤の過剰分を除去し、使用量を最小限にする必要がある。
すると、積層されて隣り合う超電導コイルどうしの正確な電気的な接続が困難となる。
設計どおりの寸法精度が得られないと範囲に超電導コイルが収まらなくなることもある。
そこで、一般的には、線材に電気絶縁材を重ねて線材および電気絶縁材に張力を付与しながら巻回し、その後、エポキシ樹脂などの接着剤に含浸して形状を固定する。
または、線材と電気絶縁材との界面に接着剤を付着させながら重ね、張力を付与しながら巻回して超電導コイルを成形する。
直線部を巻回する際、線材にかかる張力の大部分が直線部に沿う向きの成分となるので、圧縮する力がかかりにくく、線材の直線部に弛みがでてしまうからである。
さらに、複数の円弧部および直線部からなる超電導コイルでは、さらに多数の軸で回転させる必要があった。
複数の軸で巻枠を回転させると、1軸の場合と比べ、動きが複雑になり、回転の速度を上げることが困難となる。
しかし、ローラを移動させる場合は、ローラが直線部にくるように巻枠の回転にタイミングを合わせる制御を要し、回転の速度を上げることが困難となることに変わりはない。
この劣化を防ぐため、ローラで押しならす力の加減を細かに制御しなければならず、回転の速度に加え、この制御によっても製造コストの上昇を招いていた。
すなわち、巻回した箇所が未だ外周側にあるうちに接着剤の過剰分を十分排出しないと、この過剰分により、要求された寸法精度が得られなかった。
図1は、第1実施形態にかかる超電導コイル10の製造装置40の概略図である。
また、図2は、第1実施形態にかかる超電導コイル10および製造装置40のI−I断面図である。
そして、図3は、第1実施形態にかかる超電導コイル10における図1のII−II断面の拡大図である。
また、製造装置40は、超電導線材20とともに巻回される、後に詳述する電気絶縁材12(図3)を供給する絶縁材供給部53を備えている。
なお、供給部42は、超電導線材20を供給することができるものであればリールに限定されない。
固定滑車48aに架けられた超電導線材20の始端は、電気絶縁材12の始端とともに巻枠41に固定される。
電気絶縁材12が変形または断裂したりしない程度に電気絶縁材12にも同様に張力を付与すると、超電導線材20のみに付与するのと比べ、巻締まりが強くなる。
張力付与手段48の構造または超電導線材20もしくは電気絶縁材12への張力のかけ方は、その他従来種々のものが知られている。
製造装置40の構造上の制約や超電導線材20の種類などが考慮され、これら構造、張力のかけ方、さらには付与される張力の強度が適宜選択される。
接着剤14を付着させる面は、巻回された超電導線材20および電気絶縁材12が界面13(図3)をなす面である。
よって、超電導線材20または電気絶縁材12に、接着剤14を付着させる面も、両者の性状によって異なる。
また、付着部43を複数設け、付着させる面に合わせて付着のタイミングを違えてもよい。
なお、付着の方法は、塗布、浸漬または吹き付けなど従来種々のものがあり、接着剤14の性質などを考慮して適当な方法がとられる。
なお、巻枠41の回転の中心軸Aの方向は、図1では水平方向となるが、鉛直方向であってもよい。
フランジ46は、超電導線材20にかかる巻締まりなどによって超電導線材20がずれてしまい、超電導コイル10の側面が波打った形状になることを防止する。
このフランジ46は、スリット形状や円形状などをした貫通孔45をその平面に有し、界面13から流出する接着剤14の過剰分を排出する。
しかし、図3のように、超電導コイル10の両側面に貫通孔45を有するフランジ46を設けてもよい。
界面13の接着剤14をできるだけ均一にするという観点では、フランジ46は、超電導コイル10の両側面に設けられることが望ましい。
円形状の貫通孔45は、図4(A)に示されるように、巻回の中心軸Aから放射方向に等間隔に設けられていてもよい。
また、中心軸Aから放射方向に等間隔に空けることで、最内周の付近と最外周の付近とで接着剤14を均等に排出でき、界面13の接着剤14の厚さを均一にできる。
貫通孔45はスリット形状に限らず、円形状やその他の適宜選択された形状であってもよい。
なお、フランジ46の超電導線材20に接触する面に凹凸があると、巻回の際、剥離応力が生じうる。
そこで、超電導コイル10と接触する枠組線材47は、形成の後に平坦になるよう表面処理がなされるとよい。
超電導線材20は、図5に示されるように、例えば第二世代のRE系の高温超電導物質からなる酸化物超電導層25を含むテープ形状の線材である。
これら超電導線材20を構成する層は非常に剥離しやすいことが知られおり、超電導性はこの剥離やその他の応力などで容易に喪失する。
なお、RE系の超電導線材20は、ステンレスまたは銅などからなる基板22を含み、巻回の際に付与される張力に対し、超電導特性を劣化させずに耐えうる強度をもつ。
上述のポリビニルホルマールおよびポリビニルブチラールは、加熱しなくても液体状にもなり、その粘着性から、塗布して凝固させると塗布した面に接着する性質をもつ。
また、ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミドまたはポリアミドイミドなどの非粘着のフィルムであっても、このフィルムの重複する部分どうしを接着して超電導線材20を被覆することで、予め一体化させられる。
また、この場合、接着剤14は、図6に示されるように、超電導線材20を被覆した電気絶縁材12どうしの界面13に配置すればよい。
冷却の際、超電導コイル10を構成する各部材の熱収縮で超電導線材20に剥離方向の応力が生じることがある。
そこで、超電導線材20そのものの自然な熱収縮を阻害させないことも考慮し、電気絶縁材12の厚さは、絶縁性を保つ限度でできるだけ薄く、そして均一にする。
しかし、図6(B)に示されるように、超電導線材20が丸線形状であっても貫通孔45から接着剤14の過剰分を排出するという製造装置40の機能および効果は発揮できる。
製造装置40の利用が強く求められるのは、超電導コイル10の形状が、複数の円弧部15および円弧部15を接続する直線部16を有する非円形状のときである。
ただし、図7(C)に示されるように、真円形状の巻枠41および超電導コイル10であっても、製造装置40は当然適用できる。
なお、超電導コイル10の完成後に、巻枠41は、超電導コイル10から外されることも、超電導コイル10につけられたままで製品となることもある。
さらに、超電導コイル10が図7(B)のように、複数の円弧部15および直線部16からなると、さらに多数の軸で回転させる必要があった。
複数の軸で巻枠41を回転させると、1軸の場合と比べ、動きが複雑になり、回転の速度を上げることが困難となっていた。
ローラを移動させる場合は、ローラが直線部16にくるように巻枠41の回転にタイミングを合わせる制御を要し、回転の速度を上げることが困難となることに変わりはない。
よって、ローラで押しならす力の加減を細かに制御しなければならず、回転の速度に加え、この制御によっても製造コストの上昇を招いていた。
つまり、巻枠41がレーストラック形状や、さらに多数の直線部16を有していても、巻回部44を1軸で回転させられ、速く、単純な動作で巻回できるようになる。
さらに、フランジ46が有する貫通孔45により、巻回が進んで内周側に位置するようになった箇所の界面13からも、接着剤14を排出することができる。
図9は、第1実施形態にかかる超電導コイル10の製造手順を示すフローチャートである。
そして、始端を巻枠41に固定された超電導線材20に、張力付与手段48で張力を付与する(ステップS12)。
次に、巻回した際に電気絶縁材12が対向する面との界面13に接着剤14が配置されるよう、対象となる面に付着部43で接着剤14を付着させる(ステップS13)。
巻枠41に超電導線材20および電気絶縁材12を超電導コイル10の側面の位置をフランジ46で押さえて規定しながら巻回する(ステップS15)。
超電導コイル10が予め規定された巻数または大きさになるまで上述の製造手順を繰り返す(ステップS17;NO;ステップS11へ)。
成形された超電導コイル10を、フランジ46および巻枠41が装着されたまま数時間から数日間おく。
接着剤14が凝固したら、フランジ46および必要に応じて巻枠41を外し、超電導コイル10の製造を終了する(ステップS20)。
すなわち、低い製造コストで、超電導特性を劣化させずに高い寸法精度で巻回できる製造装置40および製造方法を提供できる。
図8は、第2実施形態にかかる超電導コイル10および製造装置40のI−I断面(図1)の断面図である。
本発明の第2実施形態にかかる製造方法は、図8に示されるように、第1実施形態にかかる製造方法で、超電導線材20の終端にダミー線材51を接続し、ダミー線材51を巻回された超電導線材20の最外周に巻回する。
そこで、超電導線材20の終端にダミー線材51を接続し、超電導線材20の最外周に引き続きダミー線材51を巻回させて巻締まりをより強くする。
なお、このダミー線材51は接着剤14が凝固するまで数時間から数日間装着され、巻回の後も巻締めによる接着剤14の過剰分の排出が続けられる。
超電導線材20にかかる張力は、巻締りによって直線部16の接着剤14が十分に排出される程度に強く、電気絶縁材12のような有機フィルムでは断裂するおそれがある。
さらに、巻締まりは弱くなるが、電気絶縁材12や電気絶縁材12と同程度の強度のフィルムを用いても効果はある。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
すなわち、低い製造コストで、超電導特性を劣化させずに高い寸法精度で巻回できる製造装置40および製造方法を提供できる。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
Claims (8)
- 巻枠に巻回されて超電導コイルとなる超電導線材を供給する供給部と、
前記超電導線材および前記超電導線材とともに巻回される電気絶縁材の少なくとも一方に張力を付与する張力付与手段と、
前記超電導線材の面または前記電気絶縁材の少なくとも一方の面に接着剤を付着させる付着部と、
前記巻枠に前記超電導線材および前記電気絶縁材を巻回させる巻回部と、
前記界面から流出する接着剤を排出する貫通孔を有するとともに前記超電導コイルの側面を規定するフランジと、を備えることを特徴とする超電導コイルの製造装置。 - 前記貫通孔は、スリット形状または円形状であることを特徴とする請求項1に記載の超電導コイルの製造装置。
- 円形状の前記貫通孔は、巻回の中心軸から放射方向に等間隔に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の超電導コイルの製造装置。
- 前記フランジは、線材が網目状に組まれて形成されることを特徴とする請求項1に記載の超電導コイルの製造装置。
- 前記巻枠は、複数の円弧部および前記円弧部を接続する直線部を有する非円形状であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超電導コイルの製造装置。
- 巻枠に巻回されて超電導コイルとなる超電導線材を供給するステップと、
前記超電導線材および前記超電導線材とともに巻回される電気絶縁材の少なくとも一方に張力を付与するステップと、
前記電気絶縁材の面または前記電気絶縁材の面に接着剤を付着させるステップと、
前記巻枠に前記超電導線材および前記電気絶縁材を巻回させるステップと、
前記界面から流出する接着剤を排出する貫通孔を有するとともに前記超電導コイルの側面を規定するステップと、を含むことを特徴とする超電導コイルの製造方法。 - 前記超電導線材の終端にダミー線材を接続するステップと、
前記超電導線材の最外周に前記ダミー線材を巻回するステップと、を含むことを特徴とする請求項6に記載の超電導コイルの製造方法。 - 前記ダミー線材に金属のリボンを用いることを特徴とする請求項7に記載の超電導コイルの製造方法。
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