JP6622070B2 - 高温超電導コイル及び高温超電導磁石 - Google Patents
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Description
例えば、重粒子線がん治療装置を構成する円形加速器の軌道には、偏向マグネットが配置される。
この偏向マグネットに高温超電導コイルを適用すれば、軌道を周回する重粒子線にかかる磁場を従来よりも強力にすることができる。
重粒子線ビームとマグネットのコイル巻線部との距離をできるだけ近づけることで、重粒子線ビームに対して効率的に磁場を印加することができるため、コイルは、この円筒状のビーム軌道の通過断面の曲線に沿って鞍型に巻回されることが望ましい。
よって、このような低温超電導線材では、曲げる方向を自由に変更しながら巻回することができるので、容易に鞍型に成形することができる。
また、低温超電導線材は、加熱しても超電導線材としての性能の劣化が少ないため、接着材で曲面に融着して位置を固定しながら巻回することもできる。
また、高温超電導線材では、テープ幅広面に垂直なテープ厚み面を湾曲させるいわゆるエッジワイズに湾曲させることに限界がある点で巻回態様には制約がある。
このような電磁力によってコイルが変形すると、コイルが劣化するとともに、設計通りの磁場形成が困難になる。
そこで、コイルの完成後には、コイルの適所にカラーを設けて、コイルの変形を防止している。
よって、コイルは、上述した通過断面の曲面とは別に、重粒子線の周回方向にも、円筒経路に沿って湾曲して形成される。
このように湾曲して形成されることでできる線材の凹形状部には、巻回によって超電導線材にかかる張力によって超電導線材の法線方向に応力の分力が発生する。
この法線方向の分力によって、超電導線材は、この凹形状部において剥離して湾曲した形状を維持できなくなる。
カラーは、凹形状部においては、磁場に基づく応力に加えて、このような応力にも対抗して超電導コイルを機械的に支持する。
エッジワイズ歪みを含む複雑な曲面を有する高温超電導コイルに電磁力が発生すると、薄膜層で構成される高温超電導線材に複雑な応力が発生する。
特に、凹形状部には、このような複雑な応力に加えて、湾曲状態を解消しようとする、いわゆるスプリングバックしようとする応力も発生する。
また、コイルおよびカラーの精密な配置関係を維持するため、コイルおよびカラーが設置されるベース、またはこれらを包囲するヨークなどの付属部品の形状も制限される。
また、本実施形態にかかる他の高温超電導コイルは、高温超電導コイル湾曲した軌道の形状に沿って湾曲するとともに巻回軸に略平行な側面を有して並置された一対の沿湾枠部が設けられた鞍型の巻枠と、前記巻枠に沿って巻回されることで前記巻回軸にテープ幅広面が平行になる立線部を有するテープ状の高温超電導線材と、前記沿湾枠部に平行な面を有して設けられて前記高温超電導線材を前記巻枠に固定するカラーと、を備え、前記巻枠は、対向する前記沿湾枠部の端部同士を接続する捻れ枠部を有し、前記捻れ枠部に沿わされた前記高温超電導線材は、巻回数の増加に伴う前記テープ幅広面の線材周縁の双方の長さの差の比が0.2%以下に設定されたものである。
高温超電導線材20は、図1に示されるように、一般に薄膜状の層が積層されたテープ形状の薄膜線材20を構成している。
この薄膜線材20は、例えばレアメタル酸化物(RE酸化物)からなる高温超電導層25(以下、「超電導層25」という)を含むREBCO線材などの線材である。
保護層26は、超電導層25に含まれる酸素が超電導層25から拡散することを防止して、超電導層25を保護するものである。
安定化層21は、超電導層25への過剰超電導電流の迂回経路となって熱暴走を防止するものである。
ただし、薄膜線材20を構成する各層の種類および数はこれに限定されるものではなく、必要に応じて多くても少なくてもよい。
図2は、重粒子線qを加速する加速器11の部分的な概略上面図である。
図2に示されるように、重粒子線qは加速器11が備える直径数十m程度の円形に湾曲している円筒状の軌道12を周回する。
軌道12を形成するビームダクト13の外表面には、重粒子線qを加速または偏向させる強力な磁場を発生させるマグネット14が配置される。
このマグネット14は、図3に示す巻回軸Cの周りに巻回された高温超電導コイル10(以下、単に「超電導コイル10」という)によって磁場を発生させる。
図3は、第1実施形態にかかる超電導コイル10が備える巻枠18の概略斜視図である。
つまり、巻枠18は、重粒子線qが周回する軌道12の湾曲形状に沿って湾曲する一対の沿湾枠部19の端部同士が、捻れ枠部32によって接続されて環状の枠を形成している。
一対の沿湾枠部19は、同心円状で曲率半径の異なる円弧形状をした2本が対向して並置される。
巻枠18は、ビームダクト13を被服するベース33を介してビームダクト13に載置される。
そして、巻枠18の両端の周縁34のうちベース33に接触する一方(以下、「設置周縁34a」という)が接着材などでベース33に固定される。
ここで同一の長さとは、設置周縁34aと非設置周縁34bとの一ターン分の周長の差の比が0.2%以下であることをいう。
等周条件を満足すると、巻枠18に沿って巻回される薄膜線材20には、エッジワイズ歪みなどの歪みが一ターン分で吸収されることになる。
つまり、沿湾枠部19の側面は、設置周縁34aの環状の曲線がのる平面Ωに垂直に立設される。
なお、巻枠18は、ベース33に一体化されてもよい。
そして、図5は、第1実施形態にかかる超電導コイル10の概略上面図、図6は、図5のVI−VI線に沿った断面図である。
なお、図4では、カラー36の図示を省略している。
この薄膜線材20の巻回軸Cに平行な部分を立線部37という。
立線部37においては、薄膜線材20が内周側のターンの線材周縁20bに外周側のターンの線材周縁20bを揃えて巻回される。
このように巻回されることで、薄膜線材20は平面Ωに沿って、軌道12の外表から離れる向きに積層される。
立線部37における線材周縁20bの群が平面Ωに沿った形状を維持するために、ベース33には、平面Ωに沿った支持板39が設けられていてもよい。
支持板39は、立線部37に限定されずその他の薄膜線材20の線材周縁20bまで延在されて支持してもよい。
例えば、巻回を繰り返すことで、一方の線材周縁20bが他方と比較して長くなる場合は、巻回の途中で、図示しない形状補正枠41をターン間に設けるなどして、長さを揃える。
絶縁材は、例えば、ポリエステル、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ウレタンフィルムまたはガラスなどが好適に用いられる。
立線部37は、上述したように、磁場による応力によって、巻回軸Cに対して放射線方向に押し広げられる。
カラー36は、押し広げられようとする薄膜線材20を巻枠18に垂直に押し返して超電導コイル10の形状を想定している形状に維持する。
よって、薄膜線材20の形状に合わせて多数の板材をずらしながら積層させてカラーを成形する方法や、軌道12よりも一回り大きな円筒を薄膜線材20の形状に合わせて削りだす方法を用いていた。
これらいずれの方法でも、カラーの製造は、困難であった。
また、カラー36を鉄などの磁性体にすることで、発生した磁場の磁路の機能をもたせてもよい。
そして、薄膜線材20にこの薄膜線材20のテープ幅広面20aと同一の線材幅を有する絶縁材(図示せず)を線材周縁20bを揃えて重ね合せながら接着をする(接着ステップS12)。
接着には、シリコーン系またはウレタン系の接着剤などが好適に用いられる。なお、接着材が絶縁材料である場合は、絶縁材を別個設けなくてもよい。
所定の巻数だけ巻回した後、巻回を中断して、超電導コイル10の外周の少なくとも一部に形状補正枠41を設ける(形状維持ステップS14)。
形状補正枠41が設けられることによって、線材周縁20bの周長のずれが調整されて、薄膜線材20が等周条件を満足するようになる。
そして、沿湾枠部19にカラー36の側面を平行にして装着し(装着ステップS16)、超電導コイル10の製造を終了する。
薄膜線材20を重粒子線qの周回方向およびそれに垂直な方向の2方向に湾曲した鞍型にすることで、重粒子線qを強力に偏向することができる。
また、簡素な形状のカラー36で超電導コイル10の形状を維持することで、超電導コイル10の製造、設置および保守が容易になる。
図8は、第2実施形態にかかる超電導コイル10の概略構成図である。
カラー36による薄膜線材20の押し返しが特に必要になるのは、スプリングバックが発生する凹形状部である立線部37である。
つまり、必ずしも超電導コイル10の外周の全周にわたってカラー36を設ける必要はない。
よって、立線部37よりも複雑な形状になり、発生する応力も複雑になることが予想される。
カラー36は、凹形状部を有しスプリングバックのおそれのある内周側の立線部37にのみ設けてもよい。
カラー36を立線部37のみに設けることで、捻れ枠部32の部分については別製品の押え手段の設置、または何ら押え手段を設けないなどの自由な対策をとることができる。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図9は、第3実施形態にかかる超電導コイル10が備えるベース33およびカラー36の概略構成図である。
なお、図9においては、後述する断熱層42は省略している。
また、図10は、図9のX−X線に沿う断面図である。図10では、ベース33およびカラー36に加えて、巻枠18、薄膜線材20および断熱層42も図示している。
そして、カラー36は、捻れ枠部32に設けられた2以上のベース33を架橋して設けられる。
上述のように立線部37および立線部37におけるカラー36の形状は、軌道12に沿って湾曲するのみの単純形状をしている。
よって、カラー36の製造および設置位置の調節は容易であり、必ずしもカラー36の周縁の全部をベース33に固定しなくてもよい。
ベース33には電磁力によって変形しようとする超電導コイル10およびカラー36などを強固に固定して支持するため、十分な強度および硬度を維持するだけの厚さが必要になる。
また、このようなベース33が除去された部分においては、巻枠18は、輻射を遮断してベース33よりも薄い断熱層42を介してビームダクト13に固定されてもよい。
図11は、ビームダクト13が配置されない軌道12において、超電導コイル10を複数配置した断面図である。
重粒子線qの経路は、必ずしもビームダクト13によって形成されている必要はない。
例えば、ビームダクト13の一部または全部がなくても、適所に適当な磁場がかかっていれば、重粒子線qを周回させて加速することができる。
ベース33は、立線部37の前後に配置されたビームダクト13に設けられる。
そして、カラー36は、立線部37の前後に設けられたこのベース33に架橋される。
最内周の線材周縁20bが1つの円上に配置されることで、それぞれの超電導コイル10がこの円の中心について対称な磁場を形成し、磁場形状の調節が容易だからである。
また、ビームダクト13およびベース33を配置せず、超電導コイル10を軌道12に近づけることで、加速器11を小型にすることができる。
図12は、第4実施形態にかかる超電導コイル10を含む高温超電導マグネット50(以下、「高温超電導磁石50」という)の概略構成図である。
冷却器51は、軌道12を超電導コイル10ごと包囲して超電導コイル10を冷却する。
そして、冷却器51に設けられた冷凍機52の冷却ステージ53は、純度の高いアルミニウムまたは銅などの熱伝導箔54などを介して、カラー36に熱的に接続される。
カラー36は、特にL字状に屈曲して超電導コイル10を支持している場合は、薄膜線材20に広い密着面積を有する。
そこで、カラー36を伝導冷却することで、超電導コイル10を冷却する。
カラー36の材質は、熱伝導の観点から、ステンレス、銅、アルミニウムまたはこれらの合金などが望ましい。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
Claims (14)
- 湾曲した軌道の形状に沿って湾曲するとともに巻回軸に略平行な側面を有して並置された一対の沿湾枠部が設けられた鞍型の巻枠と、
前記巻枠に沿って巻回されることで前記巻回軸にテープ幅広面が平行になる立線部を有するテープ状の高温超電導線材と、
前記沿湾枠部に平行な面を有して設けられて前記高温超電導線材を前記巻枠に固定するカラーと、
前記カラーは、前記立線部にのみ設けられることを特徴とする高温超電導コイル。 - 前記巻枠は、対向する前記沿湾枠部の端部同士を接続する捻れ枠部を備える請求項1に記載の高温超電導コイル。
- 前記軌道の外表を被覆して前記巻枠が固定されるベースを備える請求項1に記載の高温超電導コイル。
- 前記巻枠が固定されるベースは、前記巻枠のうち前記捻れ枠部のみに設けられる請求項2に記載の高温超電導コイル。
- 湾曲した軌道の形状に沿って湾曲するとともに巻回軸に略平行な側面を有して並置された一対の沿湾枠部が設けられた鞍型の巻枠と、
前記巻枠に沿って巻回されることで前記巻回軸にテープ幅広面が平行になる立線部を有するテープ状の高温超電導線材と、
前記沿湾枠部に平行な面を有して設けられて前記高温超電導線材を前記巻枠に固定するカラーと、
前記軌道の外表を被覆して前記巻枠が固定されるベースと、を備え、
前記巻枠は、対向する前記沿湾枠部の端部同士を接続する捻れ枠部を有し、
前記ベースは、前記巻枠のうち前記捻れ枠部のみに設けられることを特徴とする高温超電導コイル。 - 前記カラーは前記捻れ枠部に設けられた2以上の前記ベースを架橋して設けられる請求項4または請求項5に記載の高温超電導コイル。
- 前記巻枠の環状の周縁の双方の一ターン分の周長の差の比が0.2%以下に設定された請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の高温超電導コイル。
- 前記捻れ枠部に沿わされた前記高温超電導線材は、巻回数の増加に伴う前記テープ幅広面の線材周縁の双方の長さの差の比が0.2%以下に設定された請求項2、請求項4、請求項5、及び請求項6のいずれか1項に記載の高温超電導コイル。
- 湾曲した軌道の形状に沿って湾曲するとともに巻回軸に略平行な側面を有して並置された一対の沿湾枠部が設けられた鞍型の巻枠と、
前記巻枠に沿って巻回されることで前記巻回軸にテープ幅広面が平行になる立線部を有するテープ状の高温超電導線材と、
前記沿湾枠部に平行な面を有して設けられて前記高温超電導線材を前記巻枠に固定するカラーと、を備え、
前記巻枠は、対向する前記沿湾枠部の端部同士を接続する捻れ枠部を有し、
前記捻れ枠部に沿わされた前記高温超電導線材は、巻回数の増加に伴う前記テープ幅広面の線材周縁の双方の長さの差の比が0.2%以下に設定されたことを特徴とする高温超電導コイル。 - 前記巻枠の材質に、ステンレス、銅、アルミニウムおよびこれらを含む合金材料の少なくとも1つを使用する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の高温超電導コイル。
- 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の高温超電導コイルが、最内周の線材周縁が1つの円上に配置されるように複数固定される高温超電導磁石。
- 前記軌道を請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の高温超電導コイルごと包囲して前記高温超電導コイルを冷却する冷却器を備える高温超電導磁石。
- 前記冷却器に設けられた冷凍機の冷却ステージは、
前記カラーに熱的に接続されて前記カラーを伝導冷却する請求項12に記載の高温超電導磁石。 - 前記巻枠は、輻射を遮断する断熱層を介して前記軌道に直接固定される請求項12または請求項13に記載の高温超電導磁石。
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