JP2017008296A - 亀裂進展抑制樹脂組成物及び亀裂進展抑制方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋼建築構造物等の鋼材に発生した亀裂の進展抑制に対して、簡便で、施工時の作業負担の少ない修復補強工法を可能とする亀裂進展抑制樹脂組成物を提供する。【解決手段】常温硬化型の熱硬化性樹脂及びフィラーを含有する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物は、前記フィラーとして、繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーの両方を含有し、前記樹脂組成物は、硬化前常温において粘度が25℃で5〜2000Pa・sであり、常温硬化型の熱硬化性樹脂100重量部に対して繊維状フィラーと非球状粒子フィラーとを式(I)(非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量=1〜10)の配合比で合計20〜150重量部含有し、非球状粒子フィラーの平均粒子径が1〜80μmである、鋼構造物の亀裂箇所に塗布し硬化させることで前記鋼構造物を補強する亀裂進展抑制樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、亀裂進展抑制樹脂組成物及びそれを用いた亀裂進展抑制方法に関する。
より詳しくは、本発明は、鋼構造物等に発生した亀裂の進展を抑制する亀裂進展抑制樹脂組成物及びそれを用いた亀裂進展抑制方法に関する。
我が国の高度経済成長期に建築され、建築後50年以上が経過しつつある建築物等のインフラ整備に対して、近年、その老朽化の進展が懸念されている。しかしながら、これらの建築物の多くは我が国の基盤インフラを担っていることもあり、安易な建替えや取り壊し、或いはインフラ機能を停止させての本格的な補修補強等の工事ができないことが多い。これら建築物に対して、簡便な補修や補強施工を可能とし、且つ充分な機能を発現する材料の提供が求められており、通常、セメントによる補修方法や樹脂組成物による補修、さらには作業現場での貼り付けが可能な繊維強化型プリプレグ等の材料が提案され、使用され始めている。
セメントを用いた補修工事は、主にコンクリートを用いた土木建築で検討されている。しかしながら、セメントは下地との接着性が問題となるため、垂直に塗工する場合や、天井に塗工する場合は、別途にセメントを密着させるための鉄筋や金網等の付属付帯物の施工が必要となり、工事が複雑になるという問題点を有している(例えば、非特許文献1)。
このため、垂直塗工や天井部への塗工においては自重で垂れてきたり剥がれたりすることのない、軽量で且つ接着性に優れる塗工型材料が望まれている。
これらの問題点に対して、発生した亀裂部に直接樹脂を注入して亀裂を塞いでしまう工法が開発されている(例えば、特許文献1や非特許文献2)。しかしながら、微細で空隙間の小さな亀裂に樹脂を浸透させるためには、作業現場での高圧注入工法が必要となる他、用いる樹脂の粘度を非常に低くして流れの良い樹脂にしなければならないため、樹脂自身へのフィラー添加や強化策ができず、単に亀裂の孔を埋めるだけで補強強化は得られない。したがって、補修後により大きな力が加わると、注入した樹脂自体が破壊して新たな亀裂の発生原因となる可能性がある。また、この補修工法は主にコンクリートを対象としたものであって、鋼構造物等の補修には必ずしも好ましい工法とはいえない。
更に、以上の問題点を克服すべく、最近、繊維強化されたプリプレグを建築構造物の表面に貼り付けて、剛性を維持した補修工法が開発されている(例えば、非特許文献3)。この方法は、従来航空機の尾翼等に発生した亀裂進展の抑制防止を目的として開発された工法(例えば、非特許文献4)を建築土木分野へ応用したものであり、補修対象とする構造部材と貼り付ける繊維強化されたプリプレグの引張弾性率値から設計することによって、構造部材等に発生した亀裂の進展を抑制する効果が簡便に得られることを可能とする(例えば、非特許文献5)。
しかしながら、航空機の尾翼等と異なり、建築物の構造は必ずしも平面ばかりではなく、凹凸部やリブ部などが存在するため、作業現場で大きなシートを貼り付ける繊維強化されたプリプレグの貼り付け工法は必ずしも好ましくない場合があり、改良を求められている。
特許文献2は、繊維強化されたプリプレグシートを鋼構造物の形状や発生亀裂の状況に併せて加工して貼り付けることによって前記の問題点を克服しようとしたものである。しかしながら、作業現場での細かい作業は高コストや安全面において必ずしも好ましい方策とはいえない。
また、これらの工法は、繊維強化されたプリプレグを下地に貼り付けるに際して、好ましい接着剤を用いる必要があり、この接着剤の選定次第では貼り付け施工後に繊維強化されたプリプレグが剥がれてしまい、充分な亀裂進展抑制効果を得られない等の問題が発生している。
特許文献3及び特許文献4では、このような問題点に対して、樹脂にナノフィラーを添加することによって、亀裂内部にフィラーを浸透させることによって亀裂進展の抑制を図ろうとしたものであるが、文献2や文献3同様、作業現場での高圧浸透機器の使用や、ナノフィラーが亀裂へ浸透して亀裂抑制効果をどの程度得るかの検証が充分でない。
特許文献5では、これまでの提案材料の長所と問題点を克服すべく、ポリマーセメント比を調整することにより、鋼構造物とモルタル層のせん断力に対する剛性がほぼ等しくなる厚さとなるような吹き付け型の補修材料を提案している。
しかしながら、特許文献5の方法は剛性を得ることは可能であっても、セメントという脆性材料を用いるため、例えば常に振動等に晒される鋼橋等の建築物では吹付け材料自体の強度や、吹付け材料と補強を必要とする被鋼構造物との接着強度の面で、必ずしも充分とはいえない要素を有している。
また、特許文献6及び7では、これまでの提案材料の長所と問題点を克服すべく、熱硬化性樹脂に繊維状フィラーを添加した複合材料系にすることによって、建物外壁や建物基礎等に簡便に塗工による補強を行う方法を提案している。しかしながら、この方法では、繊維状フィラーの配向によっては著しい強度や弾性率の偏向性が生じてしまい、対象とする建築物に対して、必ずしもバランス良い補強が得られない可能性が生ずるばかりでなく、当該方法で提案されているガラス繊維やロックウール繊維は無機系フィラーである為に比重が高く、例えば外壁に垂直に厚さをもって塗工する場合などに、自重によって垂れてきたりするなど、実施工性の面での不具合が生じやすく、必ずしも充分とは言えない問題点を有している。
以上の通り、鋼建築構造物等に発生した疲労亀裂に対して、樹脂組成物やセメント系材料の塗工、或いは強化物の貼り付けによる一時的な亀裂の進展抑制を図った研究事例は存在するものの、簡便で、施工時の作業負担の少ない施工方法で、実用性を備えた亀裂進展の大幅な抑制向上を実現した事例は見られない。
特開2004−263048号公報 特開2006−57352号公報 特開2011−62809号公報 特開2005−28462号公報 特開2012−184575号公報 特開2003−213136号公報 特開2003−213938号公報
福田ら,トンネル工学報告集,第15巻,p29(2006). 日鉄住金セメント株式会社,特殊製品ガイド,2013年6月. 石川,日本接着学会誌,45,p139(2009). M.Sato et al., Adv. Comp. Mater., 11(1), p51−59(2002). 松本ら,構造工学論文集,VOL.59A,p798(2013).
本発明の課題は、従来のセメントやポリマーセメント、樹脂組成物又は繊維強化型プリプレグでは実現できなかった簡便な施工方法と力学物性を実現する塗工型の補修材料を提供することである。ここで、塗工とは、補修材料を、各種作業現場において塗布することをいう。
本発明の課題は、より具体的には、老朽化した鋼建築構造物等の鋼材に発生した亀裂の進展抑制に対して、簡便で、施工時の作業負担の少ない修復補強工法を可能とする亀裂進展抑制樹脂組成物及びそれを用いた亀裂進展抑制方法を提供することである。
本発明の発明者は上記課題について改善すべく鋭意検討した結果、常温硬化型の熱硬化性樹脂と適切なフィラー形状に選定された繊維状フィラー及び非球状状フィラーを、適切な配合比率で混合し、硬化後の樹脂組成物の引張弾性率と硬化後の樹脂組成物と一般構造用鋼材とのせん断強度を特定の強度以上のものとすることにより、垂直塗工による硬化接着が可能で且つ優れた亀裂進展抑制を可能にする亀裂進展抑制樹脂組成物を実現した。
即ち、本発明の発明者は、常温硬化型の熱硬化性樹脂及びフィラーを含有する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物は、前記フィラーとして、繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーの両方を含有し、前記樹脂組成物は、硬化前粘度が25℃で5〜2000Pa・sであり、常温硬化型の熱硬化性樹脂100重量部に対して繊維状フィラーと非球状粒子フィラーとを式(I)
非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量=1〜10・・・式(I)
の配合比で合計20〜150重量部含有し、非球状粒子フィラーの平均粒子径が1〜80μmである、鋼構造物の亀裂箇所に塗布し硬化させることで前記鋼構造物を補強する亀裂進展抑制樹脂組成物とすることにより、本発明を完成するに至ったのである。
本願発明は、以下の(1)〜(10)に存する。
(1) 常温硬化型の熱硬化性樹脂及びフィラーを含有する樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物は、前記フィラーとして、繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーの両方を含有し、
前記樹脂組成物は、粘度が25℃で5〜2000Pa・sであり、常温硬化型の熱硬化性樹脂100重量部に対して繊維状フィラーと非球状粒子フィラーとを式(I)
非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量=1〜10・・・式(I)
の配合比で合計20〜150重量部含有し、
非球状粒子フィラーの平均粒子径が1〜80μmである、鋼構造物の亀裂箇所に塗布し硬化させることで前記鋼構造物を補強する亀裂進展抑制樹脂組成物。
(2) 粘度が25℃で50〜2000Pa・sである樹脂組成物である上記(1)に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
(3) 繊維状フィラーが、繊維長3mm以上の炭素短繊維及び/又はガラス短繊維である上記(1)又は(2)に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
(4) 非球状粒子フィラーが、ピッチコークス粉砕品、タルク、マイカ及びクレーからなる群から選択される1又は2以上のフィラーからなる上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
(5) 非球状粒子フィラーが石炭系の針状結晶を有するピッチコークス粉砕品である上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
(6) 常温硬化型の熱硬化性樹脂が、常温硬化可能な2液混合型のエポキシ系樹脂である上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
(7) 更にシランカップリング剤を含有する上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
(8) 亀裂を有する鋼の表面において、亀裂の全部又は一部を覆って厚さ1mm以上で硬化した、上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
(9) 上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の亀裂進展抑制樹脂組成物を、鋼構造物の亀裂箇所に1mm以上の厚さで塗布して鋼構造物の亀裂進展を抑制する亀裂進展抑制方法。
(10) 亀裂進展樹脂組成物と鋼構造物との接面にプライマーを塗布した後、亀裂進展抑制樹脂組成物を塗布する上記(9)の亀裂進展抑制方法。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物によれば、簡便で、施工時の作業負担の少ない方法により、鋼建築構造物に発生した疲労亀裂に対する亀裂進展抑制が可能となる。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、亀裂を有する鋼表面において、亀裂の一部又は全部を覆って一定の厚さで塗布され、硬化することにより亀裂箇所に固着し、鋼材の亀裂が進展することを抑制する力を生じる。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、同じ組成の樹脂組成物で、鋼材に塗布・盛り付けする厚さ及び形状を変化させることにより、鋼材を補強する部分の断面積及び接着面積等を変化させることができる。従って、同じ組成の樹脂組成物で、異なる鋼材の亀裂が進展する力に抗する力を生じることができる。
亀裂進展抑制効果の評価を行った、亀裂進展抑制樹脂組成物を塗工した試験片を示す図である。中心部に、長さlmmの亀裂が生じた、巾Lmm、長さHmm、厚みtmmのSS400鋼材に対して、巾Lmm、長さ2×hmm、厚み2×tmmの補強塗工を行った塗工修復モデルとなっている。
〔亀裂進展抑制樹脂組成物〕
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、鋼構造物の亀裂箇所に塗布し、硬化させることで亀裂を有する鋼構造物を補強するために用いる。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、常温硬化型の熱硬化性樹脂、繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーを含有する。後述する通り、繊維状フィラーと、非球状粒子フィラーとの配合比は、所定の値の範囲内のものである。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、硬化前常温において粘度が25℃で5〜2000Pa・sである。本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、好ましくは粘度が25℃で50〜2000Pa・sの状態である。 本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物の粘度が前記範囲であることで、前記樹脂組成物は、塗工時に塗布した前記樹脂組成物が適度に形状を変えることができると同時に型が崩れるまでに一定の時間を要するため、成形が容易になる。
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記樹脂組成物は、2000Pa・sよりも高粘度で、流動性を有さず粘度が測定できないものであっても良い。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、硬化前に増粘することにより、粘度が25℃で5〜2000Pa・sになるものであってもよい。
〔常温硬化型の熱硬化性樹脂〕
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物に係る常温硬化型の熱硬化性樹脂には、常温硬化が可能な熱硬化性樹脂が用いられる。前記熱硬化性樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
前記熱硬化性樹脂は、塗布面への接着性や硬化物の強度等の条件を満たすのであれば特に制限はない。
前記熱硬化性樹脂は、鋼材である塗布面との接着性及び硬化物の強度の観点から、エポキシ樹脂が好適に用いられる。
前記エポキシ樹脂は、液状であり、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。前記エポキシ樹脂は、例えば、ポリオールから得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、活性水素を複数有するアミンより得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸より得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂や、分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるポリエポキシドなどが用いられる。かかるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができるが、性能並びに経済性上、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、クレゾールノボラック型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等の2官能以上の液状エポキシ樹脂が好ましい。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、例えば、施工前にエポキシ樹脂に硬化剤を配合する2液型であり、主剤と硬化剤を混合した直後に粘度が25℃で5〜2000Pa・sである。このとき、主剤となる熱硬化性樹脂の粘度は25℃で0.5〜30Pa・sの範囲にあることが望ましく、より好ましくは0.7〜20Pa・sである。粘度が0.5Pa・s以下であると、亀裂進展抑制樹脂組成物としたときに塗工時に垂れやすくなるほか、必要な強度が得られない等の問題がある。また、粘度が30Pa・s以上であるとフィラーの混練がし難くなるほか、亀裂進展抑制樹脂組成物の粘度が高すぎて塗工が出来なくなる問題が起きる。
なお、本発明の実施例に係る亀裂進展抑制樹脂組成物の粘度の測定は、JIS K 7233 エポキシ樹脂及び硬化剤の粘度試験方法に準じて行うことができる。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物が主剤と硬化剤を混合して用いられる場合、本発明に用いる硬化剤は、常温での硬化が可能であるものであれば酸無水物系やアミン系等、特に制限されないが、作業現場での可使時間や使用環境等を考慮するとアミン系硬化剤が好ましい。
アミン系硬化剤は、例えば、ジエチレントリアミンといった脂肪族ポリアミンやイソホロンジアミンといった脂環式ポリアミン、ジアミノジフェノルスルフォンといった芳香族アミン、およびこれらの変性物が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、特に粘度が0.01〜2Pa・sの範囲にある液状の脂肪族ポリアミンおよびその変性物が、常温で短時間硬化が可能であり、実施工時に容易に混合できるため、好適に用いることができる。また、硬化剤の配合比について特に制限はないが、主剤となるエポキシ樹脂の当量100部に対して、硬化剤の割合が20〜100部になるようなアミン価を有するものが好ましい。
塗工型で且つ、亀裂進展を抑制するに充分な引張弾性率を得るために、本発明者は、常温硬化型の熱硬化樹脂に対して最適となる繊維状フィラーと非球状粒子フィラーの配合比率を見出した。これらのフィラーの配合比率は、得られる樹脂組成物の粘度を高めるため、単に配合後の樹脂組成物の強化効果が得られるだけではなく、塗工時のダレ防止などの施工面でのメリットを得ることも可能とする。
〔繊維状フィラー〕
本発明に係る繊維状フィラーは、炭素繊維、ガラス繊維、ロックウールファイバー等の無機繊維、ポリマーから構成される有機繊維を用いることができ、これらの混合物も用いることができる。中でも炭素繊維及びガラス繊維、又はこれらの混合物は、製造時のハンドリングの面でより好ましい。
また、本発明に係る繊維状フィラーとしてさらに好ましくは、引張弾性率の発現性上、3mm以上の長さを有し、且つ1本あたりの繊維直径が30μm未満の炭素繊維、ガラス繊維のチョップドストランド繊維を用いることができる。なお、本発明に係る繊維状フィラーを限定するものではないが、前記繊維状フィラー表面はマトリックス材料との親和性を向上させる表面処理、例えばエポキシ系樹脂サイジング等によるサイジング処理やシランカップリング剤等による表面処理が施されたものが好ましい。
〔非球状粒子フィラー〕
本発明に係る非球状粒子フィラーは、ピッチコークス粉砕品、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛粉砕物、ワラストナイト、破砕シリカ粉、樹脂系微粒子等を用いることができ、これらの混合物も用いることができる。
中でも、本発明に係る非球状粒子フィラーとしては、ピッチコークス粉砕品、タルク、マイカ等の非球状フィラーはその粒子形状が鱗片状であることから、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物に必要とする引張弾性率を発現しやすいために好ましい。本発明に係る非球状粒子フィラーは、更に好ましくは、鱗片状を有し、それ自身の弾性率も高く、且つ炭素系元素で構成される樹脂組成物との相溶性に優れるピッチコークス粉砕品である。
特に、石炭系タールを原料とする針状結晶性を有するピッチコークス粉砕品は、粉砕粒子の強度や弾性率が高く、且つその組成のほとんどが炭素であるため、他の無機系フィラーの場合と異なり相溶化剤等を用いなくとも強度や弾性率の発現を得ることができ、また粉砕時に容易に鱗片状になるために、本発明に係る非球状粒子フィラーとして最も好ましい非球状粒子フィラーである。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物に含有させて用いる非球状粒子フィラーは、平均粒子径が1〜80μm、好ましくは、1〜50μm、より好ましくは、1〜30μmで、より更に好ましくは、平均粒子径5〜20μmである。
平均粒子径が1μmより小さな非球状フィラーは熱硬化型樹脂混合物との混合時に著しく粘度を高めてしまうため、塗工が困難となり好ましくない。また、平均粒子径が80μmより大きな非球状フィラーは熱硬化型樹脂混合物の強度が得られず、好ましくない。
なお、本発明における非球状粒子フィラーの平均粒径とは、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置によって測定された非球状粒子フィラーのメジアン径(D50)である。
〔フィラー配合量〕
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、常温速硬化型の熱硬化性樹脂100重量部に対して、繊維状フィラーと非球状粒子フィラーが合計で20〜150重量部、好ましくは40〜120重量部配合される。常温で硬化する熱硬化性樹脂100部に対して、繊維状フィラーと非球状粒子フィラーの配合量が20重量部よりも少なくなると、補強効果を得るための引張弾性率が得られず、逆に、配合量が150重量部よりも多くなると、樹脂組成物内に発生する空隙が多くなるため、亀裂進展抑制樹脂組成物自身の強度の低下が生じてしまう。
また、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、常温硬化型の熱硬化性樹脂に配合される繊維状フィラーと非球状粒子フィラーの配合比を、下式(I)で1〜10、より好ましくは2〜8となるようにする。配合比が1未満であると、補強効果を得るために十分な引張弾性率が得られず、10を超えると補強効果を得るために十分な引張弾性率だけでなく、引張強度も得られなくなってしまう。
非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量・・・式(I)
本発明では、熱硬化性樹脂と繊維状フィラー及び/又は非球状粒子フィラーとの配合比は、熱硬化性樹脂100部に対して、繊維状フィラーが3〜30重量部、非球状粒子フィラーが10〜120重量部であることが好ましく、より好ましくは、繊維状フィラーが5〜20重量部、非球状粒子フィラーが20〜100重量部であることが好ましい。
繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーの配合量が本発明の範囲内であれば施工上の問題や得られる弾性率や強度等の力学物性には問題は生じないが、前記配合比率に設計することより亀裂進展抑制効果を高めることが可能となる。
〔亀裂進展抑制樹脂組成物〕
本発明に係る実施形態のうちの一つとして、チョップド型の繊維状フィラーと非球状粒子フィラーを、常温硬化できる熱硬化性樹脂に混合することによって、接着剤等を用いることなく、現場で簡単に垂直部への塗工を可能とし、且つ鋼構造物に発生した亀裂の進展を抑制する引張弾性率を発現できる亀裂進展抑制樹脂組成物を実現した。
以下、その実施形態について具体的に説明する。
また、本発明では亀裂進展抑制樹脂組成物の物性を損なわない範囲内で、マトリックス樹脂に用いる熱硬化性樹脂以外の熱硬化性樹脂や無機フィラー、有機フィラーの併用混合、さらには分散性や接着性向上のためのシランカップリング剤、紫外線防止剤、熱劣化防止剤、酸化防止剤、流動調整剤等の添加剤を併用混合しても良い。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(主剤)と硬化剤が別々に提供され、作業者が作業直前に両者を混合する二液型の樹脂組成物であってもよい。二液型とすることによって、反応性の高い硬化剤を用いることができ、現場での短時間の施工が可能となる他、主剤と硬化剤を別々に保管するため、保管条件に特に制限なく長期保管でき、必要に応じて速やかに施工を行うことができる。
〔製造方法〕
本発明を限定するものではないが、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物の製造においては、一般のヘリカルミキサーやヘンシェルミキサー、ダルトン型ミキサー、遠心分離ミキサー等の混合機を使用することが好ましい。これらの混合において減圧すると、混合物に内包される気泡が除去できるため、より好ましい。
また、本発明を限定するものではないが、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、野外の施工現場での塗工作業性の簡便さより、樹脂と硬化剤は塗工作業直前に混合することが好ましい。例えば、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、主剤樹脂ワニス又は硬化剤へ繊維状及び粒子状フィラーを事前に混合した混合物を準備し、塗工作業直前にその混合物に必要量の主剤樹脂ワニス又は硬化剤を添加混合して用いることが好ましい。なお、その際、事前に準備する混合物は、主剤と繊維状フィラーと粒子状フィラーを混合したものでもよく、どちらか一方を混合し、且つ用いる硬化剤にもう一方のフィラーを混合したものを準備する方法でもよい。
施工時の簡便性を考えれば、主剤樹脂ワニスと繊維状フィラーと粒子状フィラーを混合した混合ワニスを準備し、塗工作業直前に硬化剤を混合する方法が好ましい。
一方、硬化剤と繊維状フィラーと非球状粒子フィラーを混合した混合ワニスを準備し、塗工作業直前に主事樹脂ワニスを混合する方法も好適に用いられるが、主体となる混合物を粘度の高いものとし、粘度が低い方を添加する方式の方が実施工上的にはハンドリング性がよいため更に好ましい。
施工現場での混合方法については特に制限するものではないが、ドラム缶装着型の混合機や、ハンディタイプの混合機で混合する方法が、簡便で、施工時の作業負担が少ないという観点から好ましい。ドラム缶装着型の混合機の例としては、清健製マゼール等が、ハンディタイプの混合機の例としては、ハンディタイプの大塚刷毛製マザール等が挙げられる。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物を限定するものではないが、主剤樹脂ワニスと硬化剤を混合した混合物については、粘度が25℃で5〜2000Pa・sであり、より好ましくは、粘度が25℃で50〜2000Pa・sであることが、壁や天井等での塗工を簡便なものにするために好ましい。このため、塗工時の垂れ防止やハンドリング性の点で、混合直後の粘度が25℃で10〜2000Pa・sであることが好ましく、30〜1500Pa・sであることがより好ましく、50〜1000Pa・sであることが更にさらに好ましい。
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記混合物は、2000Pa・sよりも高粘度で、流動性を有さず粘度が測定できないものであっても良い。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及びフィラーを含有する樹脂組成物であるという性質上、チキソトロピー性(揺変性)を有する場合がある。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物を限定するものではないが、建築補修用エポキシ樹脂樹脂の規格JIS A 6024:2008における中粘度形のチキソトロピー性(揺変性)のチキソトロピックインデックスが、5±1となっていることから、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、同規格における測定において、4以上、好ましくは5以上のチキソトロピックインデックスを示すものであっても良い。チキソトロピックインデックスが前記範囲であることで、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、塗工時に塗布した前記樹脂組成物が型崩れしにくく、塗工・成形が容易になる。
また、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物の硬化時間は施工作業上、10分〜5時間程度であることが好ましく、30分〜3時間程度であることがより好ましい。また、良好な硬化状態の容易な確認方法として、主剤樹脂ワニスと硬化剤を混合した直後の混合物を水平面に対して20mmの厚さに塗工した後、2時間後の厚さの変化が2mm以内で硬化していることが好ましい。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物を限定するものではないが、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、例えば一般構造材圧延鋼材SS400との接着性を示す引張せん断強度が1MPa以上であることが好ましい。これ未満の引張せん断強度であっても特に著しい支障を生ずるものではないが、塗工後のはく離が生じ難い方が長期耐久性などの面で優れる場合がある。
〔塗工方法〕
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物の塗工方法は、粘度が25℃で5〜2000Pa・sである材料を塗布することができる方法であれば特に制限はなく、一般に用いられている方法を用いることができる。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、鋼構造物の亀裂箇所に、亀裂を覆うか、又は、亀裂を横断して塗布され、硬化することにより、亀裂進展抑制効果を生じる。
塗布する厚さは、塗工が可能であり、硬化後に十分な強度が保たれる限りにおいて、特に制限がない。本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物を、鋼構造物の亀裂箇所に1mm以上、好ましくは20mm以上の厚さで塗布することにより、鋼構造物の亀裂進展を抑制する効果が高いものとなる。
また、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物を塗布する厚さを鋼構造物の鋼材に応じて変化させ、硬化後の樹脂組成物の断面積及び形状、接着面の面積を変化させることにより、異なる形状・種類の鋼材の亀裂進展抑制を行うことができる。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、亀裂を有する鋼構造物の鋼の表面において、亀裂の全部若しくは一部を覆って厚さ1mm以上で硬化するように塗工される。このように塗工されることにより、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、亀裂が進展する力に抗するための応力を生じることができ、亀裂進展抑制効果を生じる。
硬化方法は、常温硬化が可能であるが、必要に応じて加熱する等、一般的に用いられる方法を用いることができる。
なお、補修材の塗布に際しては密着性を向上させるために別途プライマーを使用してもよい。プライマーの種類は補修を行う鋼構造体の材質や補修材の樹脂種に応じて適宜選択されるが、例えばエポキシ樹脂系や、シランカップリング剤系のプライマーが好ましく挙げられる。
以下、本発明の実施例に係る亀裂進展抑制樹脂組成物について実施例と比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
機械物性(引張曲げ、引張弾性率)の測定
本発明の実施例に係る亀裂進展抑制樹脂組成物の引張曲げ強度及び引張弾性率の測定は、JIS K 7162/1B プラスチック引張特性の試験方法に準じて行った。
せん断接着強度の測定
本発明の実施例に係る亀裂進展抑制樹脂組成物と一般構造用圧延用鋼材SS400との引張せん断強度による接着強度の評価測定は、JIS K 6850 接着剤−剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法に準じて行った。
亀裂進展抑制効果の評価
中心部に、長さlmmの亀裂が生じた、巾Lmm、長さHmm、厚みtmmのSS400鋼材に対して、巾Lmm、長さ2×hmm、厚み2×tmmの補強塗工を行った塗工修復モデルを作製し(図1)、各材料の引張強度及び引張弾性率、せん断強度の実測値を用いてシミュレーション及び測定を行い、下記条件1〜条件3を満たすものを、亀裂進展抑制効果を有するものとした。下記条件1〜条件3を満たすものであれば、実用上、鋼構造物に発生した亀裂の進展を抑制することができる。
(条件1)
下記参考文献1及び2を参考に、式1の算出値が0.5〜3の範囲に収まる。
(式1)
[(L−l)×SS400の引張弾性率×t]
/[L×塗工材料の引張弾性率×2t]
(条件2)
変形歪み0.1%時の塗工材料に発生する内部応力(=「引張弾性率」×0.001)が塗工材料の引張強度以下である。
(条件3)
塗工材料と鋼材の界面の接着強度が、変形歪み0.1%時の塗工材料に発生する内部応力(=「引張弾性率」×0.001)以上である。
参考文献1 "Bonded repair of aircraft structures", edited by A.A. Baker and R. Jones(Engineering application of fracture mechanics, 7) M. Nijhoff , Distributors for the United States and Canada, Kluwer Academic, 1988
参考文献2 M.Sato et al., Adv. Comp. Mater., Vol.11, No.1, p51−59(2022).
塗工後塗工物の実施工性の評価
垂直に立てかけたSS400製の鋼材板の中心に亀裂進展抑制樹脂組成物を塗工し、24時間後の塗工物の下方向へのダレ量を実際に測定することにより評価を行った。
補強塗工の長さの基準となるhは、例えば100mmのものを用いて測定を行った。
非球状粒子フィラーの粒子径測定
本発明に係る非球状粒子フィラーの粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定計(マイクロトラックMT3300EX 日機装社製)により体積基準粒子径の測定を行い、メジアン径(D50)を平均粒子径として求めた。
〔実施例1〜5、比較例1〜4〕
新日鉄住金化学株式会社製のエポキシ樹脂YD−128(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、粘度12Pa・s)と株式会社T&K TOKA製硬化剤FXD821−F(変性脂環式ポリアミン硬化剤、粘度0.065Pa・s)を、100対45で混合した樹脂組成物に対して、繊維状フィラーとして日本グラファイトファイバー株式会社製炭素繊維80NT(繊維長6mmおよび25mm品)または、オーシーヴィー津株式会社製ガラス繊維EC13−3MM995(繊維長3mm)を、非球状粒子フィラーとして新日鉄住金化学株式会社製ピッチコークス粉A(平均粒子径15μm)または、日本タルク株式会社製のタルクK−1(平均粒子径8μm)を表1および表2に示す配合に従い株式会社シンキー製の自転公転型のミキサーを用いて常温条件下で配合し、塗工型の亀裂進展抑制樹脂組成物A〜Iを製造した。製造した塗工型の亀裂進展抑制樹脂組成物A〜Iは、それぞれ引張試験により強度および弾性率を測定するとともに、一般構造用圧延鋼材SS400を用いたせん断接着強度および、塗工後塗工物の実施工性を評価した。
引張試験用の試験片は、亀裂進展抑制樹脂組成物A〜Iをトレーの上で平板上に伸ばして、そのまま常温下で一晩放置して硬化した平板から切削加工にて作製しており、残留応力等の影響を排除して物性試験を行うべく、硬化した平板をそのままの常温条件下で約一晩放置して平準化を行った。
一方、せん断接着強度測定試験片は、亀裂進展抑制樹脂組成物A〜Iを厚さ0.75mmで50mmの長さで塗工した一般構造用圧延鋼材SS400(幅32mm×長さ100mm×厚さ3mm)を2枚重ねとすることにより接着し、引張試験用の平板同様にそのまま常温下で一晩放置することにより試験片を作製した。表1に実施例の、表2に比較例の評価結果を示す。
樹脂組成物A〜Iの亀裂進展抑制効果については、シミュレーションおよび測定から硬化後の樹脂組成物が、引張強度が、30MPa以上、引張弾性率が、5GPa以上、せん断接着強度が、1MPa以上を全て満たす場合を亀裂進展抑制効果:有(○)、これらの何れかの値が満たないものを、亀裂進展抑制効果:無(×)とした。
また、塗工後塗工物の実施工性については、亀裂進展抑制樹脂組成物A〜Iを巾10mm、長さ500mmのSS400製鋼材片の中央部に上下長さ方向100mm、塗工厚み20mmの仕様にて塗工し、塗工後24時間経過時の塗工物のダレ量が20mm以内であれば○、20mm以上で×とした。
Figure 2017008296
Figure 2017008296
〔実施例6、比較例5〜6〕
新日鉄住金化学株式会社製のエポキシ樹脂YD−128と株式会社T&K TOKA製硬化剤FXD821−Fを100対45で混合した樹脂組成物100重量部に対して、日本グラファイトファイバー株式会社製炭素繊維80NT(繊維長6mm)、新日鉄住金化学株式会社製ピッチコークス粉A〜Cを用いて、表3に示す配合により混合機にて塗工型の亀裂進展抑制樹脂組成物J〜Lを製造し、実施例1〜5、比較例1〜4と同様にしてそれぞれの強度、弾性率及びせん断接着強度を評価した。なお、新日鉄住金化学株式会社製ピッチコークス粉A〜Cとは、その粒子径の効果を確認するため、微粉砕によって3種類の粒度に調整されたピッチコークス粉であり、塊状のピッチコークスを平均粒子径15μmに微粉砕したものをピッチコークス粉A、微粉砕時に粉塵として回収された最大粒子径が1μm未満の微粉分をピッチコークス粉B、粗粉砕程度(平均粒子径500μm程度)に留めたものをピッチコークス粉Cとした。また、亀裂進展抑制用樹脂組成物J〜Lの亀裂進展抑制効果および塗工後塗工物の実施工性については、実施例1〜5、比較例1〜4と同様にして評価を行った。表3に実施例及び比較例の評価結果を示す。
Figure 2017008296

比較例5では混合物の粘度が高すぎ、試験片を作製できなかった。
比較例6では容易に破断してしまい、弾性率の測定ができなかった。
〔実施例7〕
実施例4の亀裂進展抑制樹脂組成物を、試験片にエポキシ樹脂系プライマーを塗布した以外は、実施例1〜6、比較例1〜6と同様にしてせん断接着強度と塗工後塗工物の実施工性の状況評価を行った。表4にその評価結果を示す。
〔実施例8〕
実施例4の亀裂進展抑制樹脂組成物にモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製グリシジル系シランカップリング剤A−187を樹脂組成物100重量部に対して1重量部を添加したこと以外は、実施例1〜6、比較例1〜6と同様にしてせん断接着強度と塗工後塗工物の実施工性の状況評価を行った。表4にその評価結果を示す。
Figure 2017008296
表1〜4の結果より、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は実施工性が良好であり、亀裂進展抑制効果も得られているが、比較例の樹脂組成物では塗工物の実施工性に何らかの問題があるうえに亀裂進展抑制効果も得られていない。これより、本発明の効果は明瞭である。
本発明は、鋼建築構造物等の補修等の建築・建設分野で用いることができる。

Claims (10)

  1. 常温硬化型の熱硬化性樹脂及びフィラーを含有する樹脂組成物であって、
    前記樹脂組成物は、前記フィラーとして、繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーの両方を含有し、
    前記樹脂組成物は、粘度が25℃で5〜2000Pa・sであり、常温硬化型の熱硬化性樹脂100重量部に対して繊維状フィラーと非球状粒子フィラーとを式(I)
    非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量=1〜10・・・式(I)
    の配合比で合計20〜150重量部含有し、
    非球状粒子フィラーの平均粒子径が1〜80μmである、鋼構造物の亀裂箇所に塗布し硬化させることで前記鋼構造物を補強する亀裂進展抑制樹脂組成物。
  2. 粘度が25℃で50〜2000Pa・sである樹脂組成物である請求項1に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
  3. 繊維状フィラーが、繊維長3mm以上の炭素短繊維及び/又はガラス短繊維である請求項1又は請求項2に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
  4. 非球状粒子フィラーが、ピッチコークス粉砕品、タルク、マイカ及びクレーからなる群から選択される1又は2以上のフィラーからなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
  5. 非球状粒子フィラーが石炭系の針状結晶を有するピッチコークス粉砕品である請求項1〜4のいずれか1項に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
  6. 常温硬化型の熱硬化性樹脂が、常温硬化可能な2液混合型のエポキシ系樹脂である請求項1〜5のいずれか1項に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
  7. 更にシランカップリング剤を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
  8. 亀裂を有する鋼の表面において、亀裂の全部又は一部を覆って厚さ1mm以上で硬化した、請求項1〜7のいずれか1項に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物を、鋼構造物の亀裂箇所に1mm以上の厚さで塗布して鋼構造物の亀裂進展を抑制する亀裂進展抑制方法。
  10. 亀裂進展樹脂組成物と鋼構造物との接面にプライマーを塗布した後、亀裂進展抑制樹脂組成物を塗布する請求項9の亀裂進展抑制方法。
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