JP2019196583A - 橋梁の補修構造 - Google Patents
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Abstract
Description
主桁と分配横桁とが交差する部分には通常、ウェブギャップ板と称される補剛板が設けられ、橋梁ディテールの剛性を高めている(例えば特許文献1参照)。図12は、主桁と分配横桁との交差部分に設けられているウェブギャップ板の従来例を説明する概略斜視図である。
一方、分配横桁2は、横桁上フランジ2a、横桁下フランジ2b、およびこれらの横桁上フランジ2aと横桁下フランジ2bとを連結する横桁ウェブ2cを備えており、分配横桁2の長手方向は橋軸直交方向と一致している。また、分配横桁2は、主桁1の高さよりも小さい高さに形成され、長手方向の端部は主桁1の主桁ウェブ1cに接合されている。
タイプ2の疲労損傷は、主桁ウェブ1c側接合部に形成されたスカラップ6の中心付近からウェブギャップ板4に斜め下方向に向かって発生するき裂5bである。
タイプ3の疲労損傷は、ウェブギャップ板4と主桁ウェブ1cとの溶接接合部の内、スカラップ6側に溶接部に沿って発生するき裂5cである。
また、ウェブギャップ板4に発生する疲労損傷ではないが、主桁上フランジ1aと横桁上フランジ2aと主桁ウェブ1cとで囲まれた空間であるウェブギャップ部に面した部分、例えばスカラップ6に露出している主桁ウェブ1cに発生するき裂5dもある。
最も一般的なのは、損傷が発生した既設のウェブギャップ板を除去し、この既設のウェブギャップ部よりも厚い新たなウェブギャップ板(たとえば、既設のものが板厚9mmである場合は、新たなものは板厚19mm)に置換、切断、再溶接を行うことであるが、この作業は非常に狭い空間で行うので、非常に手間がかかりコスト高となり、しかも、応力の低減効果は少ない。また、ウェブギャップ板の板厚を増加させるのは、ウェブギャップ部のひずみの集中を防ぐのが目的であるが、形状的応力集中があるため、板厚に比例して応力が低減されるわけではない。
また、横桁上フランジと床版との間に縦桁を追加する方法もあるが、この方法は橋梁としての重量増加を招くとともに、桁下に全面足場が必要な上に、大型の部材(縦桁等)を床版下の狭い空間に搬入する必要があり工事コストが非常に大きい。
前記ウェブギャップ部に面する部分および/または前記ウェブギャップ板に、少なくとも前記損傷部を覆うようにして、常温硬化型の熱硬化性樹脂およびフィラーを含有するフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材が設置されていることを特徴とする。
非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量=1〜10・・・式(I)
の配合比で合計20〜150重量部含有し、非球状粒子フィラーの平均粒子径が1〜80μmであるものが使用され、このフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材を、ウェブギャップ板のき裂箇所に塗布し硬化させることで、ウェブギャップ板を補強するき裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材として使用できる。
この場合、補強部材は、フィラー含有樹脂組成物を前記主桁上フランジの下面から前記横桁上フランジの上面に亘って連続的に設けることによって柱状に形成するのが好ましい。
また、補強部材が鋼板をウェブギャップ板に一体化密着させる接着剤として機能するので、鋼板によってウェブギャップ板近傍の剛性を高めて発生応力を低減することができるとともに、鋼板の分だけ補強部材を形成するフィラー含有樹脂組成物の量を少なくでき、コスト低減を図れる。仮に、フィラー含有樹脂組成物ではない通常の接着剤で鋼板を接着した場合、接着剤の厚みを管理することは困難であり、その厚みが大きくなると接着剤での破壊が生じてしまい、鋼板の剛性・強度の向上効果を発揮させることはできない。
(第1の実施の形態)
図1および図2は、第1の実施の形態を示すもので、図1は橋梁の要部を示す正面図、図2(a)は図1におけるX円部の拡大図、図2(b)は図2(a)におけるA−A線矢視図、図2(c)は図2(a)におけるB−B線断面図である。
本実施の形態の橋梁は、コンクリート床版13を長手方向(橋軸方向)に支持する主桁11と、主桁11の長手方向に対して交差する水平方向に設けられた、横桁としての(荷重)分配横桁12とを備えている。主桁11と分配横桁12とは交差(図に示すものの場合は直交)し、かつ、主桁11の上面は分配横桁12の上面よりも高い位置になるように構築されている。なお、本実施の形態の場合、主桁11の下面は分配横桁12の下面よりも低い位置に配設される構成となっている。
主桁11は、水平方向に広がる主桁上フランジ11aおよび桁下フランジ11bと、これらの主桁上フランジ11aと主桁下フランジ11bとを連結する、高さ方向および橋軸に広がる主桁ウェブ11cとを備えており、主桁11の長手方向は橋梁の長手方向(橋軸方向)と一致している。また、主桁11は、橋軸直交方向(橋幅方向。図1において左右方向)に所定間隔で複数配置されている。また、主桁上フランジ11aの上面にコンクリート床版13が設置固定されている。
そして、主桁11と分配横桁12との交差部には、ウェブギャップ板14が設けられている。ウェブギャップ板14の配設場所は、主桁上フランジ11aの下面と主桁ウェブ11cの側面と横桁上フランジ12aの上面との3部材で3方向が囲まれた空間であるウェブギャップ部15であり、これに合わせて採寸切断されたウェブギャップ板14が、板面14aが主桁11の長手方向に沿う方向に向いた状態(すなわち、板面が分配横桁12の高さ方向および長手方向に広がった状態)でウェブギャップ部15に嵌め合わせられている。そして、ウェブギャップ板14の3つの端面(上端面、下端面および主桁ウェブ11c側を向く側端面)が前記3部材にそれぞれ溶接接合されている(図2(a)参照)。同様にして、主桁下フランジ11bの上面と主桁ウェブ11cの側面と横桁下フランジ12bの下面との3部材で3方向が囲まれたウェブギャップ部15にもウェブギャップ板14が設けられている。
なお、図2(a)中、符号5は、ウェブギャップ板14と、主桁上フランジ11aの下面、主桁ウェブ11cの側面、横桁上フランジ12aの上面との溶接部あり、符号16は、ウェブギャップ板14や分配横桁12の横桁ウェブ12cに形成されたスカラップである。
さらに、この補強部材21は、上面側は主桁11の上フランジ11aの下面に少なくとも一部が当接している一方で、下面側は分配横桁12の上フランジ12aの上面と離間した状態で対向している。
また、この補強部材21のウェブギャップ板14の板厚方向、すなわち主桁11の長手方向に沿う寸法は、当該ウェブギャップ板14の板厚より長くなっており、補強部材21の図2(b)における左右側を向く面21a,21aはウェブギャップ板14の板面14a,14aより外側に突出している。なお、本実施の形態では、補強部材21における、ウェブギャップ板14の各板面14a,14a側にそれぞれ位置する部分の寸法についても、ウェブギャップ板14の板厚よりも大きくなっている。このとき、補強部材21の厚さ(ウェブギャップ板14の板厚方向に沿う方向の大きさ)については、その厚さが大きいほどより大きな効果が期待できるが、塗布の難易度と効果の程度を勘案すると、溶接部5の寸法(ウェブギャップ板14の板厚方向に沿う方向の大きさ)が6mm程度とした場合には2〜3cm程度の厚さ、すなわち、その溶接部5の寸法の3〜5倍程度とすることで、溶接部5の応力低減を期待することができる。
このような補強部材21によってウェブギャップ板14の疲労き裂20を覆うようにして、密着させる場合、当該補強部材21の原料であるフィラー含有樹脂組成物を刷毛やコテ等によって疲労き裂20を覆うようにしてウェブギャップ板14の板面14a,14aに塗り重ねるようにして塗布し、上述した塊状の補強部材21を形成する。
すなわち、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、常温硬化型の熱硬化性樹脂、繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーを含有する。後述する通り、繊維状フィラーと、非球状粒子フィラーとの配合比は、所定の値の範囲内のものである。
き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、硬化前常温において粘度が25℃で5〜2000Pa・sである。き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、好ましくは粘度が25℃で50〜2000Pa・sの状態である。き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物の粘度が前記範囲であることで、当該き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、塗工時に塗布したき裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物が適度に形状を変えることができると同時に型が崩れるまでに一定の時間を要するため、成形が容易になる。
き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、2000Pa・sよりも高粘度で、流動性を有さず粘度が測定できないものであっても良く、また、硬化前に増粘することにより、粘度が25℃で5〜2000Pa・sになるものであってもよい。
前記熱硬化性樹脂は、塗布面への接着性や硬化物の強度等の条件を満たすのであれば特に制限はない。
前記熱硬化性樹脂は、鋼材である塗布面との接着性及び硬化物の強度の観点から、エポキシ樹脂が好適に用いられる。
なお、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物の粘度の測定は、JIS K 7233 エポキシ樹脂及び硬化剤の粘度試験方法に準じて行うことができる。
アミン系硬化剤は、例えば、ジエチレントリアミンといった脂肪族ポリアミンやイソホロンジアミンといった脂環式ポリアミン、ジアミノジフェノルスルフォンといった芳香族アミン、およびこれらの変性物が挙げられる。
また、繊維状フィラーとしてさらに好ましくは、引張弾性率の発現性上、3mm以上の長さを有し、かつ1本あたりの繊維直径が30μm未満の炭素繊維、ガラス繊維のチョップドストランド繊維を用いることができる。なお、繊維状フィラーを限定するものではないが、前記繊維状フィラー表面はマトリックス材料との親和性を向上させる表面処理、例えばエポキシ系樹脂サイジング等によるサイジング処理やシランカップリング剤等による表面処理が施されたものが好ましい。
中でも、非球状粒子フィラーとしては、ピッチコークス粉砕品、タルク、マイカ等の非球状フィラーはその粒子形状が鱗片状であることから、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物に必要とする引張弾性率を発現しやすいために好ましい。非球状粒子フィラーは、更に好ましくは、鱗片状を有し、それ自身の弾性率も高く、かつ炭素系元素で構成されるフィラー含有樹脂組成物との相溶性に優れるピッチコークス粉砕品である。
特に、石炭系タールを原料とする針状結晶性を有するピッチコークス粉砕品は、粉砕粒子の強度や弾性率が高く、かつその組成のほとんどが炭素であるため、他の無機系フィラーの場合と異なり相溶化剤等を用いなくとも強度や弾性率の発現を得ることができ、また粉砕時に容易に鱗片状になるために、非球状粒子フィラーとして最も好ましい非球状粒子フィラーである。
平均粒子径が1μmより小さな非球状フィラーは熱硬化型樹脂混合物との混合時に著しく粘度を高めてしまうため、塗工が困難となり好ましくない。また、平均粒子径が80μmより大きな非球状フィラーは熱硬化型樹脂混合物の強度が得られず、好ましくない。
なお、非球状粒子フィラーの平均粒径とは、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置によって測定された非球状粒子フィラーのメジアン径(D50)である。
非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量・・・式(I)
繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーの配合量が本発明の範囲内であれば施工上の問題や得られる弾性率や強度等の力学物性には問題は生じないが、前記配合比率に設計することよりき裂進展抑制効果を高めることが可能となる。
き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、ウェブギャップ板に、その疲労き裂を覆うようにして、塗布され、硬化することにより、き裂進展抑制効果を生じる。
塗布する厚さは、塗装が可能であり、硬化後に十分な強度が保たれる限りにおいて、特に制限がない。き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物を、疲労き裂に1mm以上、好ましくは20mm以上の厚さで塗布することにより、き裂進展を抑制する効果が高いものとなる。
また、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物を塗布する厚さをウェブギャップ板を構成する鋼材に応じて変化させ、硬化後のフィラー含有樹脂組成物の断面積および及び形状、接着面の面積を変化させることにより、異なる形状・種類のき裂進展抑制を行うことができる。
硬化方法は、常温硬化が可能であるが、必要に応じて加熱する等、一般的に用いられる方法を用いることができる。
図3は、第2の実施の形態を示すもので、(a)はウェブギャップ板14を設けた部分の要部を示す正面図、(b)は(a)におけるA−A線矢視図、(c)は(a)におけるB−B線断面図である。
本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、フィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材22が主桁上フランジ11aの下面と横桁上フランジ12aの上面に密着している点であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
補強部材22は第1の実施の形態のフィラー含有樹脂組成物と同成分のフィラー含有樹脂組成物により形成されたもので、当該フィラー含有樹脂組成物がウェブギャップ板14の両板面14a,14aに、疲労き裂20を挟み込むようにして塗布されているとともに、それらの各板面14a,14aに塗布された部分が、ウェブギャップ板14における主桁ウェブ11cとは反対側の端部の外方側で連結、一体化され、全体としての外形が縦長の概略略直方体状の柱状に形成されている。すなわち、この柱状に形成された補強部材22は、上端面22a側から下端面22b側に亘って高さ方向に連続的に形成されていて、上端面22aは主桁上フランジ11aの下面に当接または密着し、下端面22bは横桁上フランジ12aの上面に当接または密着している。さらに、4つの側面のうち、図3(a)における左右の側面は橋軸直交方向に向いており、図3(b)における左右の側面は橋軸方向に向いている(ただし、この場合の補強部材22の断面形状は、ウェブギャップ板14が存在する部分を回避した形状となる。)。図3(a),(b)に示すように、補強部材22の右側面22bは、ウェブギャップ板14の右端面より外側に突出し、主桁上フランジ11aの右側端面とほぼ面一となっている。
また、補強部材22の図3(b)における左右の寸法は、第1の実施の形態の補強部材21の同寸法より長くなっており、横桁上フランジ12aの幅より短くなっている。さらに、補強部材22の図3(b)における左右の側面は、横桁上フランジ12の左右端面より内側に位置している。
なお、補強部材22を柱状に形成するのは、施工の容易さによる。ウェブギャップ板14と横桁上フランジ12a、主桁上フランジ11aに囲まれた部分は、柱状にスペースに対してすり切りながらフィラー含有樹脂組成物を塗布することで、塗布量のコントロールが容易になる。塗布量が大きい方が応力低減効果が大きくなる方向にあるが、力の流れに関係ない部分に塗布された場合はその効果が得られないからである。また、エキスパート以外ではその力の流れを判断することは難しいので、管理の容易な柱状の形状形成を選定した。
すなわち、ウェブギャップ板14にコンクリート床版13から主桁上フランジ11aを介して荷重伝達され、繰り返し応力が作用するが、補強部材22が柱状に形成されており、コンクリート床版13を支持する主桁上フランジ11aの下面と横桁上フランジ12aの上面に密着しているので、前記荷重の全部がウェブギャップ板14に伝達されることなく、一部が補強部材22を介して横桁12に伝達される。このため、疲労き裂20に作用する繰り返し応力が小さくなるので、疲労き裂20の進展を効果的に抑制できる。
特にこの塗布形状をした補強部材22の場合、き裂の開閉挙動を抑制する効果が、同じ塗布量で最大を期待することができる。もっとも発生ひずみの大きな、ウェブギャップ板端部近傍での塗布量を最大とする塗布方法であるからである。
図4は、第3の実施の形態を示すもので、(a)はウェブギャップ板14を設けた部分の要部を示す正面図、(b)は同背面図、(c)は(a)におけるA−A線矢視図、(d)は(a)におけるB−B線断面図である。
本実施の形態が第2の実施の形態と異なる点は、フィラー含有樹脂組成物をウェブギャップ板14の両板面14a,14aのうち、一方の板面14aに密着するように塗布し、他方の板面14aに塗布しない点であるので、以下ではこの点について説明し、第2の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
したがって、この実施の形態の場合、第2の実施の形態の効果に加え、ウェブギャップ板14の他方の板面14aから損傷部(疲労き裂)20を経過観察することができるという利点がある。
なお、図1および図2に示す第1の実施の形態において、フィラー含有樹脂組成物をウェブギャップ板14の両板面14a,14aのうち、一方の板面14aに塗布して補強部材21を形成し、他方の板面14aにフィラー含有樹脂組成物を塗布しないようにしてもよい。このようにすれば、ウェブギャップ板14の他方の板面14aから損傷部(疲労き裂)20を経過観察することができる。
図5は、第4の実施の形態を示すもので、(a)はウェブギャップ板14を設けた部分の要部を示す正面図、(b)は同背面図、(c)は(a)におけるA−A線矢視図、(d)は(a)におけるB−B線断面図である。
本実施の形態が第3の実施の形態と異なる点は、フィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材22B中に鋼板30が埋設され、かつ鋼板30はその板面がウェブギャップ板14の板面に対向した状態に配設されている点であるので、以下ではこの点について説明し、第3の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
フィラー含有樹脂組成物は第1〜第3の実施の形態のフィラー含有樹脂組成物と同成分のものであり、このフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材22B中に、2枚の矩形板状の鋼板30,30が橋軸方向に平行離間して設けられている。具体的には、ウェブギャップ板14に近い側の鋼板30はその全てが補強部材22B中に埋設されており、遠い側の鋼板30は外側を向く板面のみが補強部材22Bの表面に露出し、その他の部分は補強部材22B中に埋設されている。
また、鋼板30,30は、それらの板面がウェブギャップ板14の板面14aと平行となるように設けられている。
このように本実施の形態では、補強部材22B中に2枚の鋼板30,30が設けられているが、3枚以上設けられていてもよい。3枚以上にすることによって、鋼材の量が増加し、応力低減効果も増加する傾向にある。
すなわち、フィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材22B中に、鋼板30,30がウェブギャップ板14の板面14aと平行に設けられているので、補強部材22Bをウェブギャップ板14の板面14aに確実に密着させて、疲労き裂20の進展を効果的に抑制できる。また、フィラー含有樹脂組成物が鋼板30,30をウェブギャップ板14に一体化密着させる接着剤として機能するので、鋼板30,30によってウェブギャップ板14の剛性を高めることができるとともに、鋼板30,30の分だけフィラー含有樹脂組成物の量を少なくでき、コスト低減を図れる。
また、フィラー含有樹脂組成物はモルタル等に比して、接着力が強いので、ウェブギャップ部15に鋼板30,30を確実に保持させることができる。
図6は、第5の実施の形態を示すもので、(a)はウェブギャップ板14を設けた部分の要部を示す正面図、(b)は同背面図、(c)は(a)におけるA−A線矢視図、(d)は(a)におけるB−B線断面図である。
本実施の形態が第4の実施の形態と異なる点は、補強部材22Bおよび鋼板30,30がウェブギャップ部15から逸脱しないようにした点であるので、以下ではこの点について説明し、第4の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
なお、ウェブギャップ板14に設ける貫通孔14bを主桁ウェブ11cに生じている疲労き裂の先端に設けることによって、当該貫通孔14bを疲労き裂のストップホールとして機能させることができる。
図7は、第6の実施の形態を示すもので、橋梁の要部を示す正面図である。
本実施の形態は、第1の実施の形態の補強部材21に加えて、主桁上フランジ11aの上面に設置されたコンクリート床版13の下面と、横桁上フランジ12aの上面との間に、第1の実施の形態のフィラー含有樹脂組成物と同成分のフィラー含有樹脂組成物により形成された支持体25を設けた構成となっている。以下では、第1の実施の形態と異なる点について説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
その後、ジャッキを除去することによって、支持体25をコンクリート床版13の下面および横桁上フランジ12aの上面によって上下方向に圧縮し、これによって、支持体25の上下端面をコンクリート床版13の下面および横桁上フランジ12aの上面に完全に密着させる。
なお、本実施の形態では、支持体15を横桁12の長手方向に離散的に設けたが、これに代えて、支持体を横桁12の長手方向に連続的に設けてもよい。
図8〜図10は、第7の実施の形態を示すもので、図8はウェブギャップ板を設けた部分の要部を示す斜視図、図9は同正面図、図10は同平断面図である。なお、図10ではコンクリート床版13は省略している。
本実施の形態では、ウェブギャップ板14の両板面14a,14aのうちの片面に、図示しない疲労き裂を覆うようにしてフィラー含有樹脂組成物により形成された第1の補強部材26が設けられ、さらに、主桁上フランジ11aの下面と横桁上フランジ12aの上面との間に、フィラー含有樹脂組成物により形成された第2の補強部材27が設けられ、コンクリート床版13の下面に設けられているハンチ部13aの下面と横桁上フランジ12aの上面との間に、フィラー含有樹脂組成物により形成された第3の補強部材28が設けられている。
さらに、ハンチ部13aの傾斜面13bと横桁上フランジ12aの上面との間にはフィラー含有樹脂組成物により形成された第3の補強部材28が設けられている。この第3の補強部材28は第2の補強部材27と一体的に形成され、上端面側から下端面側に亘って高さ方向に連続し、かつ上端面がハンチ部13aの傾斜面13bに沿うように傾斜した柱状に形成されていて、その傾斜している上端面はハンチ部13aの傾斜面13bに密着し、下端面は横桁上フランジ12aの上面に密着している。
すなわち、ウェブギャップ板14の一方の板面(背面)14aに第1の補強部材26が設けられ、他方の板面(正面)14aには第1の補強部材26が設けられていないので、他方の板面(正面)14aから損傷部(疲労き裂)を経過観察することができる。
また、ウェブギャップ板14にコンクリート床版13から主桁上フランジ11aを介して荷重伝達され、繰り返し応力が作用するが、第2の補強部材27が柱状に形成されており、この柱状の第2の補強部材27がコンクリート床版13を支持する主桁上フランジ11aの下面と横桁上フランジ12aの上面に密着しているので、前記荷重の全部がウェブギャップ板14に伝達されることなく、一部が第2の補強部材27を介して横桁12に伝達される。このため、損傷部(疲労き裂)に作用する繰り返し応力が小さくなるので、損傷部(疲労き裂)の進展を効果的に抑制できる。
さらに、コンクリート床版13のハンチ部13aの傾斜面13bと横桁上フランジ12aの上面との間に第3の補強部材28が設けられているので、コンクリート床版13から横桁12への荷重伝達経路を増加させることができる。このため、ウェブギャップ板14にコンクリート床版13から主桁上フランジ11aを介して荷重伝達されることで発生する繰り返し応力が小さくなるので、結果として、疲労き裂の進展をより効果的に抑制できる。
図1に示すような橋梁全体をモデル化し、荷重の位置(タイヤの位置)を路面上で200mmピッチ程度で変えながらFEM解析を行い、ウェブギャップ板に生じる応力を求めた。
当該解析に用いた軸重は100kNである。ウェブギャップ板の寸法は、幅100mm、高さ125mm、板厚9mmとし、主桁上フランジの下面と横桁上フランジの上面との間およびコンクリート床版のハンチ部の傾斜面と横桁上フランジの上面との間に、材料としてのフィラー含有樹脂組成物を充填して、前述の第7の実施形態で説明した図8〜図10に示す構成のフィラー含有樹脂組成物により形成された第1〜第3の補強部材を形成した。
材料としてのフィラー含有樹脂組成物は、新日鉄住金化学株式会社製のエポキシ樹脂YD−128(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、粘度12Pa・s)と株式会社T&K TOKA製硬化剤FXD821−F(変性脂肪族ポリアミン硬化剤、粘度0.065Pa・s)を、100対45で混合した樹脂組成物100部に対して、非球状粒子フィラーである新日鉄住金化学株式会社製ピッチコークス粉(平均粒子径15μm)を40部、さらに、シランカップリング材(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製グリシジル系シランカップリング剤A−187)を0.5部添加して、株式会社井上製作所製の自転公転型のプラネタリーミキサーを用いて常温条件下で混合した後、この混合物に繊維状フィラーとして繊維長6mmのチョップド型炭素繊維(日本グラファイトファイバー株式会社製XN―80C−06S)を10部添加して、手混合して得られたものを想定した。また、このフィラー含有樹脂組成物としては、JIS_K7162−試験片1B型とした場合の引張強度が25MPaであり、硬化後の接着強さが8MPaのものを想定した。
なお、上フランジ幅は200mm、ハンチの長さは300mmとした。
また、比較例として、フィラー含有樹脂組成物を塗布していない従来(オリジナル)の板厚9mmのウェブギャップ板、板厚のみを19mmに変更したウェブギャップ板に生じる応力を求めた。
また、図11において、t9で示すものはオリジナルの板厚9mmのウェブギャップ板の場合、t19で示すものは、前記板厚9mmのウェブギャップ板に代えて、板厚19mmのウェブギャップ板を用いた場合、c9で示すものは、板厚9mmのウェブギャップ板を使用し、上述したようにフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材を設置した場合である。
11a 主桁上フランジ
12 分配横桁(横桁)
12a 横桁上フランジ
13 コンクリート床版(床版)
14 ウェブギャップ板
14a 板面
15 ウェブギャップ部
20 疲労き裂(損傷部)
21,22,22A,22B,26〜28 補強部材
25 支持体
Claims (5)
- 橋梁の橋軸方向に延びる主桁と、当該主桁の長手方向と交差する水平方向に延び、かつ長手方向の端部が前記主桁に設けられた主桁ウェブに接合された横桁との交差部において、前記主桁ウェブと、当該主桁ウェブの上端に設けられた主桁上フランジと、前記横桁の上部に設けられた横桁上フランジとで囲まれたウェブギャップ部に面する部分に生じている損傷部、および/または前記ウェブギャップ部に嵌込み固定されたウェブギャップ板に生じている損傷部を補修してなる橋梁の補修構造であって、
前記ウェブギャップ部に面する部分および/または前記ウェブギャップ板に、少なくとも前記損傷部を覆うようにして、常温硬化型の熱硬化性樹脂およびフィラーを含有するフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材が設置されていることを特徴とする橋梁の補修構造。 - 前記ウェブギャップ板の両板面のうち、一方の板面に前記補強部材が設置され、他方の板面に前記補強部材が設置されていないことを特徴とする請求項1に記載の橋梁の補修構造。
- 前記補強部材が前記主桁上フランジの下面と前記横桁上フランジの上面との間に連続的に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の橋梁の補修構造。
- 前記補強部材中に鋼板が埋設されていて、前記鋼板は板面が前記ウェブギャップ板の板面に対向した状態に配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の橋梁の補修構造。
- 前記主桁上フランジの上面に設置された床版の下面と、前記横桁上フランジの上面との間に、常温硬化型の熱硬化性樹脂およびフィラーを含有するフィラー含有樹脂組成物により形成された支持体が、前記横桁の長手方向に連続的または離散的に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の橋梁の補修構造。
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