JP2019196583A - 橋梁の補修構造 - Google Patents

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Noriyoshi Tominaga
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Abstract

【課題】橋梁のウェブギャップ板等に生じている損傷部を簡易かつ低コストで補修できる橋梁の補修構造を提供する。【解決手段】ウェブギャップ板14に、その疲労き裂20を覆うようにして、常温硬化型の熱硬化性樹脂およびフィラーを含有するフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材21が設置されているので、疲労き裂20を簡易かつ低コストで補修できるとともに、主桁上フランジ11aからウェブギャップ板14へ伝達される荷重の一部を補強部材21中にバイパスできるので、疲労き裂20に生じる応力を低減でき、よって、疲労き裂20の進展を抑制できる。【選択図】図2

Description

本発明は橋梁の補修構造に関する。
高速道路等に使用される橋梁では、床版を長手方向(橋軸方向)に支持する主桁と、主桁の長手方向に対して交差する水平方向に設けられた(荷重)分配横桁を備えている。
主桁と分配横桁とが交差する部分には通常、ウェブギャップ板と称される補剛板が設けられ、橋梁ディテールの剛性を高めている(例えば特許文献1参照)。図12は、主桁と分配横桁との交差部分に設けられているウェブギャップ板の従来例を説明する概略斜視図である。
図12において、符号1は主桁、符号2は分配横桁を示す。主桁1と分配横桁2とは交差(この場合は直交)し、かつ、主桁1の上面は分配横桁2の上面よりも高い位置になるように構築されている。主桁1は、主桁上フランジ1a、主桁下フランジ1b、およびこれらの主桁上フランジ1aと主桁下フランジ1bとを連結する主桁ウェブ1cを備えており、主桁1の長手方向は橋梁の長手方向(橋軸方向)と一致している。
一方、分配横桁2は、横桁上フランジ2a、横桁下フランジ2b、およびこれらの横桁上フランジ2aと横桁下フランジ2bとを連結する横桁ウェブ2cを備えており、分配横桁2の長手方向は橋軸直交方向と一致している。また、分配横桁2は、主桁1の高さよりも小さい高さに形成され、長手方向の端部は主桁1の主桁ウェブ1cに接合されている。
そして、主桁1と分配横桁2との交差部には、ウェブギャップ板4が設けられている。ウェブギャップ板4の配設場所は、主桁上フランジ1aの下面と主桁ウェブ1cの側面と横桁上フランジ2aの上面との3部材で3方向が囲まれた空間(ウェブギャプ部)であり、これに合わせて採寸切断されたウェブギャップ板4が、板面が主桁1の長手方向に沿う方向に向いた状態でその空間に嵌め込まれ、ウェブギャップ板4の3つの端面(上端面、下端面および主桁ウェブ1c側を向く側端面)が前記3部材に溶接接合されている。同様にして、主桁下フランジ1bの上面と主桁ウェブ1cの側面と横桁下フランジ2bの下面との3部材で3方向が囲まれた空間(ウェブギャプ部)にもウェブギャップ板4が嵌め込まれ3部材に溶接されている。
特開2000−226813号公報
上述したウェブギャップ板4には、橋梁を車両等が走行通過する度に、床版が強制変形されることで、繰り返し応力が発生する。このためウェブギャップ板4には図13に示すように、タイプ1〜タイプ4の疲労損傷(疲労き裂)が発生することがある。つまり、車両通行に伴って、床版が主桁上フランジごと強制変形させられるが、主桁が分配横桁で拘束されているために、その拘束部において、小さなウェブギャップ部に変形が集中し、疲労き裂が(疲労損傷)発生する。
タイプ1の疲労損傷は、ウェブギャップ板4の上端部と主桁上フランジ1aの下面との溶接部5の内、回し溶接部止端部側に溶接部5に沿って発生するき裂5aである。
タイプ2の疲労損傷は、主桁ウェブ1c側接合部に形成されたスカラップ6の中心付近からウェブギャップ板4に斜め下方向に向かって発生するき裂5bである。
タイプ3の疲労損傷は、ウェブギャップ板4と主桁ウェブ1cとの溶接接合部の内、スカラップ6側に溶接部に沿って発生するき裂5cである。
また、ウェブギャップ板4に発生する疲労損傷ではないが、主桁上フランジ1aと横桁上フランジ2aと主桁ウェブ1cとで囲まれた空間であるウェブギャップ部に面した部分、例えばスカラップ6に露出している主桁ウェブ1cに発生するき裂5dもある。
このようなウェブギャップ板等の疲労損傷を補修する場合、従来以下のような方法がとられている。
最も一般的なのは、損傷が発生した既設のウェブギャップ板を除去し、この既設のウェブギャップ部よりも厚い新たなウェブギャップ板(たとえば、既設のものが板厚9mmである場合は、新たなものは板厚19mm)に置換、切断、再溶接を行うことであるが、この作業は非常に狭い空間で行うので、非常に手間がかかりコスト高となり、しかも、応力の低減効果は少ない。また、ウェブギャップ板の板厚を増加させるのは、ウェブギャップ部のひずみの集中を防ぐのが目的であるが、形状的応力集中があるため、板厚に比例して応力が低減されるわけではない。
また、横桁上フランジと床版との間に縦桁を追加する方法もあるが、この方法は橋梁としての重量増加を招くとともに、桁下に全面足場が必要な上に、大型の部材(縦桁等)を床版下の狭い空間に搬入する必要があり工事コストが非常に大きい。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、橋梁のウェブギャップ板等に生じている損傷部を簡易かつ低コストで補修できる橋梁の補修構造を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の橋梁の補修構造は、橋梁の橋軸方向に延びる主桁と、当該主桁の長手方向と交差する水平方向に延び、かつ長手方向の端部が前記主桁に設けられた主桁ウェブに接合された横桁との交差部において、前記主桁ウェブと、当該主桁ウェブの上端に設けられた主桁上フランジと、前記横桁の上部に設けられた横桁上フランジとで囲まれたウェブギャップ部に面する部分に生じている損傷部、および/または前記ウェブギャップ部に嵌込み固定されたウェブギャップ板に生じている損傷部を補修してなる橋梁の補修構造であって、
前記ウェブギャップ部に面する部分および/または前記ウェブギャップ板に、少なくとも前記損傷部を覆うようにして、常温硬化型の熱硬化性樹脂およびフィラーを含有するフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材が設置されていることを特徴とする。
ここで、前記フィラー含有樹脂組成物としては、前記フィラーとして、繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーの両方を含有し、粘度が25℃で5〜2000Pa・sであり、常温硬化型の熱硬化性樹脂100重量部に対して繊維状フィラーと非球状粒子フィラーとを式(I)
非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量=1〜10・・・式(I)
の配合比で合計20〜150重量部含有し、非球状粒子フィラーの平均粒子径が1〜80μmであるものが使用され、このフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材を、ウェブギャップ板のき裂箇所に塗布し硬化させることで、ウェブギャップ板を補強するき裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材として使用できる。
このようなフィラー含有樹脂組成物(き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物)は、従来の接着材よりも剛性強度が高く、充填によってウェブギャップ板に発生する応力を全体的に激減させることができる。また、フィラー含有樹脂組成物(き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物)は、金属材料やモルタルよりも軽量で、硬化速度も速く、重量増加を押さえ、施工が容易であるとともに、フィラー含有樹脂組成物(き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物)の接着力が、既に生じている疲労き裂(損傷部)の開口を拘束するため、き裂進展抑制を効果的に行える。
本発明においては、ウェブギャップ部に面する部分および/またはウェブギャップ板に、少なくとも前記損傷部を覆うようにして、常温硬化型の熱硬化性樹脂およびフィラーを含有するフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材が設置されているので、損傷部を簡易かつ低コストで補修できるとともに、主桁上フランジからウェブギャップ板へ伝達される荷重の一部を補強部材中にバイパスできるので、損傷部に生じる応力を低減でき、よって、損傷部(疲労き裂)の進展を抑制できる。
また、本発明の前記構成において、前記ウェブギャップ板の両板面のうち、一方の板面に前記補強部材が設置され、他方の板面に前記補強部材が設置されていなくてもよい。
このような構成によれば、ウェブギャップ板の一方の板面に補強部材が設置され、他方の板面に補強部材が設置されていないので、他方の板面から損傷部(疲労き裂)を経過観察することができる。
また、本発明の前記構成において、前記補強部材が前記主桁上フランジの下面と前記横桁上フランジの上面との間に連続的に設けられていてもよい。
この場合、補強部材は、フィラー含有樹脂組成物を前記主桁上フランジの下面から前記横桁上フランジの上面に亘って連続的に設けることによって柱状に形成するのが好ましい。
このような構成によれば、ウェブギャップ板に床版から主桁上フランジを介して荷重伝達され、繰り返し応力が作用するが、補強部材が床版を支持する主桁上フランジの下面と横桁上フランジの上面との間に連続的に設けられているので、前記荷重の全部がウェブギャップ板に伝達されることなく、一部が補強部材を介して横桁に伝達される。このため、損傷部(疲労き裂)に作用する繰り返し応力が小さくなるので、損傷部(疲労き裂)の進展を効果的に抑制できる。
また、本発明の前記構成において、前記補強部材中に鋼板が埋設されていて、前記鋼板は板面が前記ウェブギャップ板の板面に対向した状態に配設されていてもよい。
このような構成によれば、補強部材中に鋼板が埋設されていて、前記鋼板は板面が前記ウェブギャップ板の板面に対向した状態に配設されているので、補強部材をウェブギャップ板の板面に確実に密着させて、き裂の進展を効果的に抑制できる。
また、補強部材が鋼板をウェブギャップ板に一体化密着させる接着剤として機能するので、鋼板によってウェブギャップ板近傍の剛性を高めて発生応力を低減することができるとともに、鋼板の分だけ補強部材を形成するフィラー含有樹脂組成物の量を少なくでき、コスト低減を図れる。仮に、フィラー含有樹脂組成物ではない通常の接着剤で鋼板を接着した場合、接着剤の厚みを管理することは困難であり、その厚みが大きくなると接着剤での破壊が生じてしまい、鋼板の剛性・強度の向上効果を発揮させることはできない。
また、本発明の前記構成において、前記主桁上フランジの上面に設置された床版の下面と、前記横桁上フランジの上面との間に、常温硬化型の熱硬化性樹脂およびフィラーを含有するフィラー含有樹脂組成物により形成された支持体が、前記横桁の長手方向に連続的または離散的に設けられていてもよい。
このような構成によれば、フィラー含有樹脂組成物により形成された支持体が横桁の長手方向に連続的または離散的に設けられているので、床版から横桁への荷重伝達経路を増加させることができる。このため、ウェブギャップ板にコンクリート床版から主桁上フランジを介して荷重伝達されることで発生する繰り返し応力が小さくなるので、結果として、疲労き裂の進展をより効果的に抑制できる。
本発明によれば、橋梁のウェブギャップ部に面する部分および/またはウェブギャップ板等に生じている損傷部を簡易かつ低コストで補修できる。
本発明の第1の実施の形態に係る橋梁の補修構造を示すもので、要部の正面図である。 同、(a)は図1におけるX円部の拡大図、(b)は(a)におけるA−A線矢視図、(c)は(a)におけるB−B線断面図である。 本発明の第2の実施の形態に係る橋梁の補修構造を示すもので、(a)はウェブギャップ板を設けた部分の要部を示す正面図、(b)は(a)におけるA−A線矢視図で、(c)は(a)におけるB−B線断面図である。 本発明の第3の実施の形態に係る橋梁の補修構造を示すもので、(a)はウェブギャップ板を設けた部分の要部を示す正面図、(b)は(a)におけるA−A線矢視図、(c)は(a)におけるB−B線断面図である。 本発明の第4の実施の形態に係る橋梁の補修構造を示すもので、(a)はウェブギャップ板を設けた部分の要部を示す正面図、(b)は(a)におけるA−A線矢視図、(c)は(a)におけるB−B線断面図である。 本発明の第5の実施の形態に係る橋梁の補修構造を示すもので、(a)はウェブギャップ板を設けた部分の要部を示す正面図、(b)は(a)におけるA−A線矢視図、(c)は(a)におけるB−B線断面図である。 本発明の第6の実施の形態に係る橋梁の補修構造を示すもので、要部の正面図である。 本発明の第7の実施の形態を示すもので、ウェブギャップ板を設けた部分の要部を示す斜視図である。 同、ウェブギャップ板を設けた部分の要部を示す正面図である。 同、ウェブギャップ板を設けた部分の要部を示す平面図である。 本発明に係る橋梁の補修構造のFEM解析を説明するためのもので、ウェブギャップ板に生じる応力を示すグラフである。 従来の主桁と分配横桁の交差部を示す斜視図である。 ウェブギャップ板に生じている疲労き裂を示すもので、要部の正面図である。
以下、図面を参照して本発明に係る橋梁の補修構造の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1および図2は、第1の実施の形態を示すもので、図1は橋梁の要部を示す正面図、図2(a)は図1におけるX円部の拡大図、図2(b)は図2(a)におけるA−A線矢視図、図2(c)は図2(a)におけるB−B線断面図である。
本実施の形態の橋梁は、コンクリート床版13を長手方向(橋軸方向)に支持する主桁11と、主桁11の長手方向に対して交差する水平方向に設けられた、横桁としての(荷重)分配横桁12とを備えている。主桁11と分配横桁12とは交差(図に示すものの場合は直交)し、かつ、主桁11の上面は分配横桁12の上面よりも高い位置になるように構築されている。なお、本実施の形態の場合、主桁11の下面は分配横桁12の下面よりも低い位置に配設される構成となっている。
主桁11は、水平方向に広がる主桁上フランジ11aおよび桁下フランジ11bと、これらの主桁上フランジ11aと主桁下フランジ11bとを連結する、高さ方向および橋軸に広がる主桁ウェブ11cとを備えており、主桁11の長手方向は橋梁の長手方向(橋軸方向)と一致している。また、主桁11は、橋軸直交方向(橋幅方向。図1において左右方向)に所定間隔で複数配置されている。また、主桁上フランジ11aの上面にコンクリート床版13が設置固定されている。
一方、分配横桁12は、水平方向に広がる横桁上フランジ12aおよび横桁下フランジ12bと、これらの横桁上フランジ12aと横桁下フランジ12bとを連結する、高さ方向および橋軸直交方向に広がる横桁ウェブ12cとを備えており、分配横桁12の長手方向は橋軸直交方向と一致している。この分配横桁12は、主桁11の高さよりも小さい高さに形成され、長手方向の端部が主桁11の主桁ウェブ11cに接合されている。また、分配横桁12は橋軸方向(図1において紙面と交差する方向)に所定間隔で複数配置されている。
そして、主桁11と分配横桁12との交差部には、ウェブギャップ板14が設けられている。ウェブギャップ板14の配設場所は、主桁上フランジ11aの下面と主桁ウェブ11cの側面と横桁上フランジ12aの上面との3部材で3方向が囲まれた空間であるウェブギャップ部15であり、これに合わせて採寸切断されたウェブギャップ板14が、板面14aが主桁11の長手方向に沿う方向に向いた状態(すなわち、板面が分配横桁12の高さ方向および長手方向に広がった状態)でウェブギャップ部15に嵌め合わせられている。そして、ウェブギャップ板14の3つの端面(上端面、下端面および主桁ウェブ11c側を向く側端面)が前記3部材にそれぞれ溶接接合されている(図2(a)参照)。同様にして、主桁下フランジ11bの上面と主桁ウェブ11cの側面と横桁下フランジ12bの下面との3部材で3方向が囲まれたウェブギャップ部15にもウェブギャップ板14が設けられている。
なお、図2(a)中、符号5は、ウェブギャップ板14と、主桁上フランジ11aの下面、主桁ウェブ11cの側面、横桁上フランジ12aの上面との溶接部あり、符号16は、ウェブギャップ板14や分配横桁12の横桁ウェブ12cに形成されたスカラップである。
このようなウェブギャップ板14を有する橋梁において、主桁11と分配横桁12の交差部において、主桁上フランジ11aと横桁上フランジ12aと主桁ウェブ11cとで囲まれたウェブギャップ部15に面する部分および/またはウェブギャップ部15に嵌込み固定されたウェブギャップ板14に疲労き裂(損傷部)が生じている場合に、以下のようにして疲労き裂が補修されている。
すなわち、例えば図2(a)に示すように、ウェブギャップ板14の上端部と主桁上フランジ11aの下面との溶接部5の内、回し溶接部止端部側に溶接部5に沿って疲労き裂(損傷部)20(すなわち、図13中のき裂5aに相当する位置に生じている疲労き裂)が生じている場合、当該疲労き裂20を覆うようにして、常温硬化型の熱硬化性樹脂およびフィラーを含有するフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材21が設置されている。このフィラー含有樹脂組成物は、例えばエポキシ樹脂中にカーボン短繊維を混和し、通常のエポキシ樹脂に対して大幅に剛性および強度を向上させたもので、モルタルに比して、即硬化性および接着力に優れており、フィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材21は、ウェブギャップ板14の表面に密着した状態となっている。
図2(a)〜(c)に示すように、このようなフィラー含有樹脂組成物は、ウェブギャップ板14の両板面14a,14aに、疲労き裂20を挟み込むようにして塗布されることで塊状の補強部材21を形成しているとともに、それらの各板面14aに塗布された部分が、ウェブギャップ板14における主桁ウェブ11cとは反対側の端部の外方側で連結、一体化されていて、全体として疲労き裂20を含んでビード部を水平方向に長く包みこんだ形状になっている。より具体的には、補強部材21は橋軸直交方向に長い塊状に形成され、下面が鉛直下方向に向き、上面が主桁11の上フランジ11aの下面に向いた状態となっており、下面と上面との間にある周面が橋軸方向と橋軸直交方向とに向いた状態となっている。なお、補強部材21の平断面形状は、図2(c)に示すように、ウェブギャップ板14の一部および疲労き列20を包み込むような形状となっている。
さらに、この補強部材21は、上面側は主桁11の上フランジ11aの下面に少なくとも一部が当接している一方で、下面側は分配横桁12の上フランジ12aの上面と離間した状態で対向している。
また、この補強部材21のウェブギャップ板14の板厚方向、すなわち主桁11の長手方向に沿う寸法は、当該ウェブギャップ板14の板厚より長くなっており、補強部材21の図2(b)における左右側を向く面21a,21aはウェブギャップ板14の板面14a,14aより外側に突出している。なお、本実施の形態では、補強部材21における、ウェブギャップ板14の各板面14a,14a側にそれぞれ位置する部分の寸法についても、ウェブギャップ板14の板厚よりも大きくなっている。このとき、補強部材21の厚さ(ウェブギャップ板14の板厚方向に沿う方向の大きさ)については、その厚さが大きいほどより大きな効果が期待できるが、塗布の難易度と効果の程度を勘案すると、溶接部5の寸法(ウェブギャップ板14の板厚方向に沿う方向の大きさ)が6mm程度とした場合には2〜3cm程度の厚さ、すなわち、その溶接部5の寸法の3〜5倍程度とすることで、溶接部5の応力低減を期待することができる。
また、補強部材21の図2(a)における左右方向の寸法は疲労き裂20より長く、かつウェブギャップ板14の左右方向の寸法より短くなっている。また、補強部材21の右端面21bはウェブギャップ板14の右端面より外側に突出し、主桁上フランジ11aの右側端面より若干外側に突出している。
このような補強部材21によってウェブギャップ板14の疲労き裂20を覆うようにして、密着させる場合、当該補強部材21の原料であるフィラー含有樹脂組成物を刷毛やコテ等によって疲労き裂20を覆うようにしてウェブギャップ板14の板面14a,14aに塗り重ねるようにして塗布し、上述した塊状の補強部材21を形成する。
このように補強部材21は塊状に形成されているが、形状や体積はこれに限ることはない。補強部材21は、少なくも疲労き裂20を覆うとともに、疲労き裂20によってウェブギャップ板14の断面欠損分の約10倍程度の体積があればよい。これは、フィラー含有樹脂組成物のヤング率がウェブギャップ板14を構成する鋼材の約1/10程度であるからである。例えば、疲労き裂20がウェブギャップ板14をその板厚方向に貫通して形成されている場合、疲労き裂20の長さをL、幅をW、ウェブギャップ板14の板厚tとすると、補強部材21の体積Vは、V≧L×W×t×10となる。
塊状の補強部材21の原料であるフィラー含有樹脂組成物は、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物とも称され、当該き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は以下のように構成されている。
すなわち、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、常温硬化型の熱硬化性樹脂、繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーを含有する。後述する通り、繊維状フィラーと、非球状粒子フィラーとの配合比は、所定の値の範囲内のものである。
き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、硬化前常温において粘度が25℃で5〜2000Pa・sである。き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、好ましくは粘度が25℃で50〜2000Pa・sの状態である。き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物の粘度が前記範囲であることで、当該き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、塗工時に塗布したき裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物が適度に形状を変えることができると同時に型が崩れるまでに一定の時間を要するため、成形が容易になる。
き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、2000Pa・sよりも高粘度で、流動性を有さず粘度が測定できないものであっても良く、また、硬化前に増粘することにより、粘度が25℃で5〜2000Pa・sになるものであってもよい。
前記常温硬化型の熱硬化性樹脂には、常温硬化が可能な熱硬化性樹脂が用いられる。前記熱硬化性樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
前記熱硬化性樹脂は、塗布面への接着性や硬化物の強度等の条件を満たすのであれば特に制限はない。
前記熱硬化性樹脂は、鋼材である塗布面との接着性及び硬化物の強度の観点から、エポキシ樹脂が好適に用いられる。
前記エポキシ樹脂は、液状であり、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。前記エポキシ樹脂は、例えば、ポリオールから得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、活性水素を複数有するアミンより得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸より得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂や、分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるポリエポキシドなどが用いられる。かかるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができるが、性能並びに経済性上、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、クレゾールノボラック型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等の2官能以上の液状エポキシ樹脂が好ましい。
き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、例えば、施工前にエポキシ樹脂に硬化剤を配合する2液型であり、主剤と硬化剤を混合した直後に粘度が25℃で5〜2000Pa・sである。このとき、主剤となる熱硬化性樹脂の粘度は25℃で0.5〜30Pa・sの範囲にあることが望ましく、より好ましくは0.7〜20Pa・sである。粘度が0.5Pa・s以下であると、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物としたときに塗工時に垂れやすくなるほか、必要な強度が得られない等の問題がある。また、粘度が30Pa・s以上であるとフィラーの混練がし難くなるほか、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物の粘度が高すぎて塗工が出来なくなる問題が起きる。
なお、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物の粘度の測定は、JIS K 7233 エポキシ樹脂及び硬化剤の粘度試験方法に準じて行うことができる。
き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物が主剤と硬化剤を混合して用いられる場合、硬化剤は、常温での硬化が可能であるものであれば酸無水物系やアミン系等、特に制限されないが、作業現場での可使時間や使用環境等を考慮するとアミン系硬化剤が好ましい。
アミン系硬化剤は、例えば、ジエチレントリアミンといった脂肪族ポリアミンやイソホロンジアミンといった脂環式ポリアミン、ジアミノジフェノルスルフォンといった芳香族アミン、およびこれらの変性物が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、特に粘度が0.01〜2Pa・sの範囲にある液状の脂肪族ポリアミンおよびその変性物が、常温で短時間硬化が可能であり、実施工時に容易に混合できるため、好適に用いることができる。また、硬化剤の配合比について特に制限はないが、主剤となるエポキシ樹脂の当量100部に対して、硬化剤の割合が20〜100部になるようなアミン価を有するものが好ましい。
塗工型でかつ、き裂進展を抑制するに充分な引張弾性率を得るために、常温硬化型の熱硬化樹脂に対して最適となる繊維状フィラーと非球状粒子フィラーの配合比率を見出した。これらのフィラーの配合比率は、得られるフィラー含有樹脂組成物の粘度を高めるため、単に配合後のフィラー含有樹脂組成物の強化効果が得られるだけではなく、塗工時のダレ防止などの施工面でのメリットを得ることも可能とする。
繊維状フィラーは、炭素繊維、ガラス繊維、ロックウールファイバー等の無機繊維、ポリマーから構成される有機繊維を用いることができ、これらの混合物も用いることができる。中でも炭素繊維及びガラス繊維、またはこれらの混合物は、製造時のハンドリングの面でより好ましい。
また、繊維状フィラーとしてさらに好ましくは、引張弾性率の発現性上、3mm以上の長さを有し、かつ1本あたりの繊維直径が30μm未満の炭素繊維、ガラス繊維のチョップドストランド繊維を用いることができる。なお、繊維状フィラーを限定するものではないが、前記繊維状フィラー表面はマトリックス材料との親和性を向上させる表面処理、例えばエポキシ系樹脂サイジング等によるサイジング処理やシランカップリング剤等による表面処理が施されたものが好ましい。
非球状粒子フィラーは、ピッチコークス粉砕品、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛粉砕物、ワラストナイト、破砕シリカ粉、樹脂系微粒子等を用いることができ、これらの混合物も用いることができる。
中でも、非球状粒子フィラーとしては、ピッチコークス粉砕品、タルク、マイカ等の非球状フィラーはその粒子形状が鱗片状であることから、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物に必要とする引張弾性率を発現しやすいために好ましい。非球状粒子フィラーは、更に好ましくは、鱗片状を有し、それ自身の弾性率も高く、かつ炭素系元素で構成されるフィラー含有樹脂組成物との相溶性に優れるピッチコークス粉砕品である。
特に、石炭系タールを原料とする針状結晶性を有するピッチコークス粉砕品は、粉砕粒子の強度や弾性率が高く、かつその組成のほとんどが炭素であるため、他の無機系フィラーの場合と異なり相溶化剤等を用いなくとも強度や弾性率の発現を得ることができ、また粉砕時に容易に鱗片状になるために、非球状粒子フィラーとして最も好ましい非球状粒子フィラーである。
き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物に含有させて用いる非球状粒子フィラーは、平均粒子径が1〜80μm、好ましくは、1〜50μm、より好ましくは、1〜30μmで、より更に好ましくは、平均粒子径5〜20μmである。
平均粒子径が1μmより小さな非球状フィラーは熱硬化型樹脂混合物との混合時に著しく粘度を高めてしまうため、塗工が困難となり好ましくない。また、平均粒子径が80μmより大きな非球状フィラーは熱硬化型樹脂混合物の強度が得られず、好ましくない。
なお、非球状粒子フィラーの平均粒径とは、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置によって測定された非球状粒子フィラーのメジアン径(D50)である。
き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、常温速硬化型の熱硬化性樹脂100重量部に対して、繊維状フィラーと非球状粒子フィラーが合計で20〜150重量部、好ましくは40〜120重量部配合される。常温で硬化する熱硬化性樹脂100部に対して、繊維状フィラーと非球状粒子フィラーの配合量が20重量部よりも少なくなると、補強効果を得るための引張弾性率が得られず、逆に、配合量が150重量部よりも多くなると、フィラー含有樹脂組成物内に発生する空隙が多くなるため、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物自身の強度の低下が生じてしまう。
また、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、常温硬化型の熱硬化性樹脂に配合される繊維状フィラーと非球状粒子フィラーの配合比を、下式(I)で1〜10、より好ましくは2〜8となるようにする。配合比が1未満であると、補強効果を得るために十分な引張弾性率が得られず、10を超えると補強効果を得るために十分な引張弾性率だけでなく、引張強度も得られなくなってしまう。
非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量・・・式(I)
熱硬化性樹脂と繊維状フィラーおよび/または非球状粒子フィラーとの配合比は、熱硬化性樹脂100部に対して、繊維状フィラーが3〜30重量部、非球状粒子フィラーが10〜120重量部であることが好ましく、より好ましくは、繊維状フィラーが5〜20重量部、非球状粒子フィラーが20〜100重量部であることが好ましい。
繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーの配合量が本発明の範囲内であれば施工上の問題や得られる弾性率や強度等の力学物性には問題は生じないが、前記配合比率に設計することよりき裂進展抑制効果を高めることが可能となる。
チョップド型の繊維状フィラーと非球状粒子フィラーを、常温硬化できる熱硬化性樹脂に混合することによって、接着剤等を用いることなく、現場で簡単に垂直部への塗工を可能とし、かつ鋼構造物に発生したき裂の進展を抑制する引張弾性率を発現できるき裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物を実現した。
また、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物の物性を損なわない範囲内で、マトリックス樹脂に用いる熱硬化性樹脂以外の熱硬化性樹脂や無機フィラー、有機フィラーの併用混合、さらには分散性や接着性向上のためのシランカップリング剤、紫外線防止剤、熱劣化防止剤、酸化防止剤、流動調整剤等の添加剤を併用混合しても良い。
き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(主剤)と硬化剤が別々に提供され、作業者が作業直前に両者を混合する二液型のフィラー含有樹脂組成物であってもよい。二液型とすることによって、反応性の高い硬化剤を用いることができ、現場での短時間の施工が可能となる他、主剤と硬化剤を別々に保管するため、保管条件に特に制限なく長期保管でき、必要に応じて速やかに施工を行うことができる。
また、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物をウェブギャップ板に塗装する場合は、粘度が25℃で5〜2000Pa・sである材料を塗装することができる方法であれば特に制限はなく、一般に用いられている方法を用いることができる。
き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物は、ウェブギャップ板に、その疲労き裂を覆うようにして、塗布され、硬化することにより、き裂進展抑制効果を生じる。
塗布する厚さは、塗装が可能であり、硬化後に十分な強度が保たれる限りにおいて、特に制限がない。き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物を、疲労き裂に1mm以上、好ましくは20mm以上の厚さで塗布することにより、き裂進展を抑制する効果が高いものとなる。
また、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物を塗布する厚さをウェブギャップ板を構成する鋼材に応じて変化させ、硬化後のフィラー含有樹脂組成物の断面積および及び形状、接着面の面積を変化させることにより、異なる形状・種類のき裂進展抑制を行うことができる。
硬化方法は、常温硬化が可能であるが、必要に応じて加熱する等、一般的に用いられる方法を用いることができる。
なお、き裂進展抑制フィラー含有樹脂組成物の塗布に際しては密着性を向上させるために別途プライマーを使用してもよい。プライマーの種類は補修を行う鋼構造体の材質や補修材の樹脂種に応じて適宜選択されるが、例えばエポキシ樹脂系や、シランカップリング剤系のプライマーが好ましく挙げられる。
以上のように本実施の形態によれば、ウェブギャップ板14に、疲労き裂(損傷部)20を覆うようにして、常温硬化型の熱硬化性樹脂およびフィラーを含有するフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材21が密着されているので、疲労き裂20を簡易かつ低コストで補修できる。さらに、補強部材21は、主桁上フランジ11aからウェブギャップ板14へ伝達される荷重の一部を伝えるバイパスとして機能し、その荷重を疲労き裂20を避けるように伝達させることができるので、疲労き裂20に生じる応力を低減でき、よって、疲労き裂20の進展を抑制できる。
なお、本実施の形態では、ウェブギャップ板14の上端部と主桁上フランジ11aの下面との溶接接5の内、回し溶接部止端部側に溶接部5に沿って疲労き裂20が生じている場合を例にとって説明した。しかしながら、例えば図13に示すように、主桁ウェブ1c側接合部に形成されたスカラップ6の中心付近からウェブギャップ板4に斜め下方向に向かって発生する疲労き裂5bや、ウェブギャップ板4と主桁ウェブ1cとの溶接部5の内、スカラップ16側に溶接部5に沿って発生する疲労き裂5cを補修する場合も、少なくともこれら疲労き裂5b,5cbを覆うようにしてフィラー含有樹脂組成物を塗布して補強部材21を形成すればよい。さらには、ウェブギャップ板4に発生する疲労損傷ではないが、主桁上フランジ1aと横桁上フランジ2aと主桁ウェブ1cとで囲まれたウェブギャップ部に面した部分においてスカラップ6に露出している主桁ウェブ1cに発生する疲労き裂5dを補修する場合であっても、少なくともこれら疲労き裂5dを覆うようにしてフィラー含有樹脂組成物を塗布して補強部材21を形成すればよい。また、疲労き裂が生じている場所が複数か所で生じている場合、例えば図13に示すように、ウェブギャップ板4の複数か所に疲労き裂が生じている場合には、2か所以上の疲労き裂を覆うようにフィラー含有樹脂組成物を塗布して補強部材21を形成してもよい。
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態を示すもので、(a)はウェブギャップ板14を設けた部分の要部を示す正面図、(b)は(a)におけるA−A線矢視図、(c)は(a)におけるB−B線断面図である。
本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、フィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材22が主桁上フランジ11aの下面と横桁上フランジ12aの上面に密着している点であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
第2の実施の形態でも第1の実施の形態と同様に、ウェブギャップ板14の上端部と主桁上フランジ11aの下面との溶接部5の内、回し溶接部止端部側に溶接部5に沿って疲労き裂20が生じている。
補強部材22は第1の実施の形態のフィラー含有樹脂組成物と同成分のフィラー含有樹脂組成物により形成されたもので、当該フィラー含有樹脂組成物がウェブギャップ板14の両板面14a,14aに、疲労き裂20を挟み込むようにして塗布されているとともに、それらの各板面14a,14aに塗布された部分が、ウェブギャップ板14における主桁ウェブ11cとは反対側の端部の外方側で連結、一体化され、全体としての外形が縦長の概略略直方体状の柱状に形成されている。すなわち、この柱状に形成された補強部材22は、上端面22a側から下端面22b側に亘って高さ方向に連続的に形成されていて、上端面22aは主桁上フランジ11aの下面に当接または密着し、下端面22bは横桁上フランジ12aの上面に当接または密着している。さらに、4つの側面のうち、図3(a)における左右の側面は橋軸直交方向に向いており、図3(b)における左右の側面は橋軸方向に向いている(ただし、この場合の補強部材22の断面形状は、ウェブギャップ板14が存在する部分を回避した形状となる。)。図3(a),(b)に示すように、補強部材22の右側面22bは、ウェブギャップ板14の右端面より外側に突出し、主桁上フランジ11aの右側端面とほぼ面一となっている。
また、補強部材22の図3(b)における左右の寸法は、第1の実施の形態の補強部材21の同寸法より長くなっており、横桁上フランジ12aの幅より短くなっている。さらに、補強部材22の図3(b)における左右の側面は、横桁上フランジ12の左右端面より内側に位置している。
なお、補強部材22を柱状に形成するのは、施工の容易さによる。ウェブギャップ板14と横桁上フランジ12a、主桁上フランジ11aに囲まれた部分は、柱状にスペースに対してすり切りながらフィラー含有樹脂組成物を塗布することで、塗布量のコントロールが容易になる。塗布量が大きい方が応力低減効果が大きくなる方向にあるが、力の流れに関係ない部分に塗布された場合はその効果が得られないからである。また、エキスパート以外ではその力の流れを判断することは難しいので、管理の容易な柱状の形状形成を選定した。
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得られるのは勿論のこと、以下のような効果も得られる。
すなわち、ウェブギャップ板14にコンクリート床版13から主桁上フランジ11aを介して荷重伝達され、繰り返し応力が作用するが、補強部材22が柱状に形成されており、コンクリート床版13を支持する主桁上フランジ11aの下面と横桁上フランジ12aの上面に密着しているので、前記荷重の全部がウェブギャップ板14に伝達されることなく、一部が補強部材22を介して横桁12に伝達される。このため、疲労き裂20に作用する繰り返し応力が小さくなるので、疲労き裂20の進展を効果的に抑制できる。
特にこの塗布形状をした補強部材22の場合、き裂の開閉挙動を抑制する効果が、同じ塗布量で最大を期待することができる。もっとも発生ひずみの大きな、ウェブギャップ板端部近傍での塗布量を最大とする塗布方法であるからである。
(第3の実施の形態)
図4は、第3の実施の形態を示すもので、(a)はウェブギャップ板14を設けた部分の要部を示す正面図、(b)は同背面図、(c)は(a)におけるA−A線矢視図、(d)は(a)におけるB−B線断面図である。
本実施の形態が第2の実施の形態と異なる点は、フィラー含有樹脂組成物をウェブギャップ板14の両板面14a,14aのうち、一方の板面14aに密着するように塗布し、他方の板面14aに塗布しない点であるので、以下ではこの点について説明し、第2の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
本実施の形態では、第1および第2の実施の形態と同成分のフィラー含有樹脂組成物をウェブギャップ板14の両板面14a,14aのうち、一方の板面14aの全体およびウェブギャップ板14における主桁ウェブ11cとは反対側の端部に密着するように塗布して補強部材22Aを形成し、他方の板面14aにはフィラー含有樹脂組成物が塗布されていない構成となっている。また、本実施の形態の補強部材22Aは、全体としての外形が縦長の概略略直方体状の柱状に形成され、より具体的には、上端面22a側から下端面22b側に亘って高さ方向に連続的に形成されていて、上端面22aは主桁上フランジ11aの下面に密着し、下端面22bは横桁上フランジ12aの上面に密着した構成となっている。また、ウェブギャップ板14における主桁ウェブ11cとは反対側の端面にもフィラー含有樹脂組成物が所定の厚さでかつ端面を覆うようにして塗布され、ウェブギャップ板14の板面14aに塗布されているフィラー含有樹脂組成物と一体化されている。
したがって、この実施の形態の場合、第2の実施の形態の効果に加え、ウェブギャップ板14の他方の板面14aから損傷部(疲労き裂)20を経過観察することができるという利点がある。
なお、図1および図2に示す第1の実施の形態において、フィラー含有樹脂組成物をウェブギャップ板14の両板面14a,14aのうち、一方の板面14aに塗布して補強部材21を形成し、他方の板面14aにフィラー含有樹脂組成物を塗布しないようにしてもよい。このようにすれば、ウェブギャップ板14の他方の板面14aから損傷部(疲労き裂)20を経過観察することができる。
(第4の実施の形態)
図5は、第4の実施の形態を示すもので、(a)はウェブギャップ板14を設けた部分の要部を示す正面図、(b)は同背面図、(c)は(a)におけるA−A線矢視図、(d)は(a)におけるB−B線断面図である。
本実施の形態が第3の実施の形態と異なる点は、フィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材22B中に鋼板30が埋設され、かつ鋼板30はその板面がウェブギャップ板14の板面に対向した状態に配設されている点であるので、以下ではこの点について説明し、第3の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
第4の実施の形態でも第3の実施の形態と同様に、ウェブギャップ板14の上端部と主桁上フランジ11aの下面との溶接接5の内、回し溶接部止端部側に溶接部5に沿って疲労き裂(損傷部)20が生じている。
フィラー含有樹脂組成物は第1〜第3の実施の形態のフィラー含有樹脂組成物と同成分のものであり、このフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材22B中に、2枚の矩形板状の鋼板30,30が橋軸方向に平行離間して設けられている。具体的には、ウェブギャップ板14に近い側の鋼板30はその全てが補強部材22B中に埋設されており、遠い側の鋼板30は外側を向く板面のみが補強部材22Bの表面に露出し、その他の部分は補強部材22B中に埋設されている。
また、鋼板30,30は、それらの板面がウェブギャップ板14の板面14aと平行となるように設けられている。
鋼板30の上端面と主桁上フランジ11aの下面と間には隙間が設けられ、鋼板30の下端面と横桁上フランジ12aの上面との間にも隙間が設けられている。これら隙間にフィラー含有樹脂組成物が設けられている。また、図5(c)において、ウェブギャップ板14の右側方(すなわち、ウェブギャップ板14の板厚方向(橋軸方向)の奥側の板面側)に、当該ウェブギャップ板14から離間する鋼板30,30が互いに離間して設けられ、鋼板30,30の間、鋼板30とウェブギャップ板14との間、鋼板30,30と主桁11や横桁12との間の各空間を埋めるようフィラー含有樹脂組成物が設けられることにより、補強部材22Bが形成されている。そして、補強部材22Bはウェブギャップ板14の一方の板面14aと鋼板30の板面にそれぞれ密着するとともに、鋼板30,30を除いて、高さ方向に連続的に形成される一方、補強部材22Bは、鋼板30の下端面と主桁上フランジ11aの下面、鋼板20の上端面と横桁上フランジ12aの上面、さらには鋼板30の主桁11側の側端面と主桁上ウェブ11cとにそれぞれ密着している。なお、図5(c)中の右側に位置する鋼板30において、外側を向く板面は上述したように、補強部材22B中に埋設されておらず、外部に露出した状態となっている。
このように本実施の形態では、補強部材22B中に2枚の鋼板30,30が設けられているが、3枚以上設けられていてもよい。3枚以上にすることによって、鋼材の量が増加し、応力低減効果も増加する傾向にある。
ウェブギャップ部15に補強部材22Bおよび鋼板30,30を設けるには、例えば、ウェブギャップ部15を構成する断面コ字形の凹所の内面にフィラー含有樹脂組成物を所定の厚さだけ塗布した後、1枚目の鋼板30をウェブギャップ板14と平行になるようにしてフィラー含有樹脂組成物に密着させ、次に、この鋼板30に次のフィラー含有樹脂組成物を所定の厚さだけ塗布した後、2枚目の鋼板30をウェブギャップ板14と平行になるようにしてフィラー含有樹脂組成物に密着させ、最後に2枚目の鋼板30の表面とフィラー含有樹脂組成物の表面とをほぼ面一となるように均して終了する。
本実施の形態によれば、第1〜第3の実施の形態と同様の効果を得られるのは勿論のこと、以下のような効果も得られる。
すなわち、フィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材22B中に、鋼板30,30がウェブギャップ板14の板面14aと平行に設けられているので、補強部材22Bをウェブギャップ板14の板面14aに確実に密着させて、疲労き裂20の進展を効果的に抑制できる。また、フィラー含有樹脂組成物が鋼板30,30をウェブギャップ板14に一体化密着させる接着剤として機能するので、鋼板30,30によってウェブギャップ板14の剛性を高めることができるとともに、鋼板30,30の分だけフィラー含有樹脂組成物の量を少なくでき、コスト低減を図れる。
また、フィラー含有樹脂組成物はモルタル等に比して、接着力が強いので、ウェブギャップ部15に鋼板30,30を確実に保持させることができる。
(第5の実施の形態)
図6は、第5の実施の形態を示すもので、(a)はウェブギャップ板14を設けた部分の要部を示す正面図、(b)は同背面図、(c)は(a)におけるA−A線矢視図、(d)は(a)におけるB−B線断面図である。
本実施の形態が第4の実施の形態と異なる点は、補強部材22Bおよび鋼板30,30がウェブギャップ部15から逸脱しないようにした点であるので、以下ではこの点について説明し、第4の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
本実施の形態では、ウェブギャップ板14にその板厚方向に貫通する貫通孔14bを設けるとともに、鋼板30,30にもその板厚方向に貫通する貫通孔30bを設け、これら貫通孔14b,30b,30bが同軸となるように鋼板30,30を配置し、貫通孔14b,30b,30bにボルトやワイヤ等の締結材31を挿通して、当該締結材31によってウェブギャップ板14と鋼板30,30を締結する。この締結作業は、ウェブギャップ部15にフィラー含有樹脂組成物23,24および鋼板30,30を設置した後、行う。なお、締結材31の両端部には、ナット等の止着板31a,31aが設けられ、当該止着板31a,31aによってウェブギャップ板14と外側の鋼板30とを挟み付けて固定する。
本実施の形態では、第3の実施の形態と同様に効果を得られる他、フィラー含有樹脂組成物23,24および鋼板30,30がウェブギャップ部15から逸脱して、落下するのを未然に防止できるという利点がある。
なお、ウェブギャップ板14に設ける貫通孔14bを主桁ウェブ11cに生じている疲労き裂の先端に設けることによって、当該貫通孔14bを疲労き裂のストップホールとして機能させることができる。
(第6の実施の形態)
図7は、第6の実施の形態を示すもので、橋梁の要部を示す正面図である。
本実施の形態は、第1の実施の形態の補強部材21に加えて、主桁上フランジ11aの上面に設置されたコンクリート床版13の下面と、横桁上フランジ12aの上面との間に、第1の実施の形態のフィラー含有樹脂組成物と同成分のフィラー含有樹脂組成物により形成された支持体25を設けた構成となっている。以下では、第1の実施の形態と異なる点について説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
本実施の形態では、コンクリート床版13の下面と、横桁上フランジ12aの上面との間に支持体25が橋軸直交方向(図7において左右方向)に所定間隔で複数設けられている。支持体25は断面円形または矩形を有する柱状に形成されている。すなわち、この柱状の支持体25は、上端面側から下端面側に亘って高さ方向に連続的に形成されていて、その上端面がコンクリート床版13の下面に密着され、下端面が横桁上フランジ12aの上面に密着されている。なお、支持体25の断面は円形や矩形に限ることはない。
このような支持体25を施工する場合、例えば、コンクリート床版13の下面と、横桁上フランジ12aの上面との間に、図示しないジャッキを挿入し、このジャッキによってコンクリート床版13の下面と、横桁上フランジ12aの上面との間を上下に押し拡げたうえで、当該間に支持体25を、下端面がコンクリート床版13の下面に、下端面が横桁上フランジ12aの上面にそれぞれ密着し、かつ上端面側から下端面側に亘って高さ方向に連続する柱状に形成するようにして施工する。
その後、ジャッキを除去することによって、支持体25をコンクリート床版13の下面および横桁上フランジ12aの上面によって上下方向に圧縮し、これによって、支持体25の上下端面をコンクリート床版13の下面および横桁上フランジ12aの上面に完全に密着させる。
本実施の形態によれば、フィラー含有樹脂組成物によって形成された支持体25が横桁12の長手方向に離散的に設けられているので、コンクリート床版13から横桁12への荷重伝達経路を増加させることができる。このため、ウェブギャップ板14にコンクリート床版13から主桁上フランジ11aを介して荷重伝達されることで発生する繰り返し応力が小さくなるので、結果として、疲労き裂20の進展をより効果的に抑制できる。
なお、本実施の形態では、支持体15を横桁12の長手方向に離散的に設けたが、これに代えて、支持体を横桁12の長手方向に連続的に設けてもよい。
(第7の実施の形態)
図8〜図10は、第7の実施の形態を示すもので、図8はウェブギャップ板を設けた部分の要部を示す斜視図、図9は同正面図、図10は同平断面図である。なお、図10ではコンクリート床版13は省略している。
本実施の形態では、ウェブギャップ板14の両板面14a,14aのうちの片面に、図示しない疲労き裂を覆うようにしてフィラー含有樹脂組成物により形成された第1の補強部材26が設けられ、さらに、主桁上フランジ11aの下面と横桁上フランジ12aの上面との間に、フィラー含有樹脂組成物により形成された第2の補強部材27が設けられ、コンクリート床版13の下面に設けられているハンチ部13aの下面と横桁上フランジ12aの上面との間に、フィラー含有樹脂組成物により形成された第3の補強部材28が設けられている。
すなわちまず、図8に示すように、主桁上フランジ11aの上面にコンクリート床版13のハンチ部13aの下面が設置されている。また、図10に示すように、ウェブギャップ板14の一方の板面14aである背面14a(橋軸方向の奥側の板面。すなわち図10において上側に位置する板面))に第1の実施の形態のフィラー含有樹脂組成物と同成分のフィラー含有樹脂組成物により形成された第1の補強部材26が、図示しない疲労き裂を覆うようにして背面14aの全領域に密着している。また、第1の補強部材26は、上端面側から下端面側に亘って高さ方向に連続する柱状に形成され、その上端面は主桁上フランジ11aの下面に密着し、下端面は横桁上フランジ12aの上面に密着している。
また、主桁上フランジ11aの下面と横桁上フランジ12aの上面との間にはフィラー含有樹脂組成物により形成された第2の補強部材27が設けられている。この第2の補強部材27はウェブギャップ板14の背面14a側において第1の補強部材26と一体的に形成され、ウェブギャップ板14の正面14c側において主桁ウェブ11cとの間に所定の間隔が設けられている。また、第2の補強部材27は柱状に形成され、その上端面は主桁上フランジ11aの下面に密着し、下端面は横桁上フランジ12aの上面に密着している。
さらに、ハンチ部13aの傾斜面13bと横桁上フランジ12aの上面との間にはフィラー含有樹脂組成物により形成された第3の補強部材28が設けられている。この第3の補強部材28は第2の補強部材27と一体的に形成され、上端面側から下端面側に亘って高さ方向に連続し、かつ上端面がハンチ部13aの傾斜面13bに沿うように傾斜した柱状に形成されていて、その傾斜している上端面はハンチ部13aの傾斜面13bに密着し、下端面は横桁上フランジ12aの上面に密着している。
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、以下のような効果も得られる。
すなわち、ウェブギャップ板14の一方の板面(背面)14aに第1の補強部材26が設けられ、他方の板面(正面)14aには第1の補強部材26が設けられていないので、他方の板面(正面)14aから損傷部(疲労き裂)を経過観察することができる。
また、ウェブギャップ板14にコンクリート床版13から主桁上フランジ11aを介して荷重伝達され、繰り返し応力が作用するが、第2の補強部材27が柱状に形成されており、この柱状の第2の補強部材27がコンクリート床版13を支持する主桁上フランジ11aの下面と横桁上フランジ12aの上面に密着しているので、前記荷重の全部がウェブギャップ板14に伝達されることなく、一部が第2の補強部材27を介して横桁12に伝達される。このため、損傷部(疲労き裂)に作用する繰り返し応力が小さくなるので、損傷部(疲労き裂)の進展を効果的に抑制できる。
さらに、コンクリート床版13のハンチ部13aの傾斜面13bと横桁上フランジ12aの上面との間に第3の補強部材28が設けられているので、コンクリート床版13から横桁12への荷重伝達経路を増加させることができる。このため、ウェブギャップ板14にコンクリート床版13から主桁上フランジ11aを介して荷重伝達されることで発生する繰り返し応力が小さくなるので、結果として、疲労き裂の進展をより効果的に抑制できる。
次に、本発明に係る橋梁の補修構造のFEM解析について説明する。
図1に示すような橋梁全体をモデル化し、荷重の位置(タイヤの位置)を路面上で200mmピッチ程度で変えながらFEM解析を行い、ウェブギャップ板に生じる応力を求めた。
当該解析に用いた軸重は100kNである。ウェブギャップ板の寸法は、幅100mm、高さ125mm、板厚9mmとし、主桁上フランジの下面と横桁上フランジの上面との間およびコンクリート床版のハンチ部の傾斜面と横桁上フランジの上面との間に、材料としてのフィラー含有樹脂組成物を充填して、前述の第7の実施形態で説明した図8〜図10に示す構成のフィラー含有樹脂組成物により形成された第1〜第3の補強部材を形成した。
材料としてのフィラー含有樹脂組成物は、新日鉄住金化学株式会社製のエポキシ樹脂YD−128(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、粘度12Pa・s)と株式会社T&K TOKA製硬化剤FXD821−F(変性脂肪族ポリアミン硬化剤、粘度0.065Pa・s)を、100対45で混合した樹脂組成物100部に対して、非球状粒子フィラーである新日鉄住金化学株式会社製ピッチコークス粉(平均粒子径15μm)を40部、さらに、シランカップリング材(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製グリシジル系シランカップリング剤A−187)を0.5部添加して、株式会社井上製作所製の自転公転型のプラネタリーミキサーを用いて常温条件下で混合した後、この混合物に繊維状フィラーとして繊維長6mmのチョップド型炭素繊維(日本グラファイトファイバー株式会社製XN―80C−06S)を10部添加して、手混合して得られたものを想定した。また、このフィラー含有樹脂組成物としては、JIS_K7162−試験片1B型とした場合の引張強度が25MPaであり、硬化後の接着強さが8MPaのものを想定した。
なお、上フランジ幅は200mm、ハンチの長さは300mmとした。
また、比較例として、フィラー含有樹脂組成物を塗布していない従来(オリジナル)の板厚9mmのウェブギャップ板、板厚のみを19mmに変更したウェブギャップ板に生じる応力を求めた。
その結果を図11に示す。図11に示すグラフにおいて、縦軸はウェブギャップ板に生じる応力、横軸はウェブギャップ板の板面における経路長を示す。この場合の「経路」とは、ウェブギャップ板の正面側(図9における手前側)の板面における、主桁上フランジの下面、主桁ウェブ、横桁上フランジの上面に沿う端縁寄りの経路を指し、「経路長」は、主桁上フランジの下面における主桁ウェブとは反対側の端縁側を起点(0mm)として、横桁上フランジの上面における主桁ウェブとは反対側の端縁側を終点(325mm)とした長さとしている。
また、図11において、t9で示すものはオリジナルの板厚9mmのウェブギャップ板の場合、t19で示すものは、前記板厚9mmのウェブギャップ板に代えて、板厚19mmのウェブギャップ板を用いた場合、c9で示すものは、板厚9mmのウェブギャップ板を使用し、上述したようにフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材を設置した場合である。
図11に示すように、c9で示す場合が、t9およびt19で示す場合より経路長のどの位置でもウェブギャプ板に生じる応力が低くなっていることが分かる。これは、フィラー含有樹脂組成物の充填によって(フィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材を設置することによって、)ウェブギャップ板でのひずみの集中が低減されたとともに、帆補強部材を通じた応力伝達経路が形成されたことによる。このため、c9で示す場合は、t9およびt19で示す場合より、ウェブギャップ板に生じている疲労き裂の進展を抑制できる。
11 主桁
11a 主桁上フランジ
12 分配横桁(横桁)
12a 横桁上フランジ
13 コンクリート床版(床版)
14 ウェブギャップ板
14a 板面
15 ウェブギャップ部
20 疲労き裂(損傷部)
21,22,22A,22B,26〜28 補強部材
25 支持体

Claims (5)

  1. 橋梁の橋軸方向に延びる主桁と、当該主桁の長手方向と交差する水平方向に延び、かつ長手方向の端部が前記主桁に設けられた主桁ウェブに接合された横桁との交差部において、前記主桁ウェブと、当該主桁ウェブの上端に設けられた主桁上フランジと、前記横桁の上部に設けられた横桁上フランジとで囲まれたウェブギャップ部に面する部分に生じている損傷部、および/または前記ウェブギャップ部に嵌込み固定されたウェブギャップ板に生じている損傷部を補修してなる橋梁の補修構造であって、
    前記ウェブギャップ部に面する部分および/または前記ウェブギャップ板に、少なくとも前記損傷部を覆うようにして、常温硬化型の熱硬化性樹脂およびフィラーを含有するフィラー含有樹脂組成物により形成された補強部材が設置されていることを特徴とする橋梁の補修構造。
  2. 前記ウェブギャップ板の両板面のうち、一方の板面に前記補強部材が設置され、他方の板面に前記補強部材が設置されていないことを特徴とする請求項1に記載の橋梁の補修構造。
  3. 前記補強部材が前記主桁上フランジの下面と前記横桁上フランジの上面との間に連続的に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の橋梁の補修構造。
  4. 前記補強部材中に鋼板が埋設されていて、前記鋼板は板面が前記ウェブギャップ板の板面に対向した状態に配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の橋梁の補修構造。
  5. 前記主桁上フランジの上面に設置された床版の下面と、前記横桁上フランジの上面との間に、常温硬化型の熱硬化性樹脂およびフィラーを含有するフィラー含有樹脂組成物により形成された支持体が、前記横桁の長手方向に連続的または離散的に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の橋梁の補修構造。
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