JP2018105007A - 亀裂進展抑制樹脂組成物及びその硬化物並びに亀裂進展抑制方法 - Google Patents

亀裂進展抑制樹脂組成物及びその硬化物並びに亀裂進展抑制方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018105007A
JP2018105007A JP2016252757A JP2016252757A JP2018105007A JP 2018105007 A JP2018105007 A JP 2018105007A JP 2016252757 A JP2016252757 A JP 2016252757A JP 2016252757 A JP2016252757 A JP 2016252757A JP 2018105007 A JP2018105007 A JP 2018105007A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin composition
filler
crack
fiber
crack growth
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2016252757A
Other languages
English (en)
Inventor
敬裕 吉岡
Takahiro Yoshioka
敬裕 吉岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Chemical and Materials Co Ltd
Original Assignee
Nippon Steel and Sumikin Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel and Sumikin Chemical Co Ltd filed Critical Nippon Steel and Sumikin Chemical Co Ltd
Priority to JP2016252757A priority Critical patent/JP2018105007A/ja
Publication of JP2018105007A publication Critical patent/JP2018105007A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Working Measures On Existing Buildindgs (AREA)

Abstract

【課題】本発明の課題は、老朽化した鋼建築構造物等の鋼材に発生した亀裂の進展抑制に対して、簡便で、施工時の作業負担の少ない修復補強工法を可能とする亀裂進展抑制樹脂組成物及びそれを用いた亀裂進展抑制方法を提供することである。【手段】本発明では、常温硬化型の熱硬化性アクリル樹脂及びフィラーを含有する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物は、前記フィラーとして、繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーの両方を含有し、常温硬化型の熱硬化性アクリル樹脂100重量部に対して繊維状フィラーと非球状粒子フィラーとを式(I)非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量=1〜10・・・式(I)の配合比で合計20〜150重量部含有し、非球状粒子フィラーの平均粒子径が1〜80μmであり、鋼構造物の亀裂箇所に塗布され硬化することで前記鋼構造物を補強する亀裂進展抑制樹脂組成物を用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、亀裂進展抑制樹脂組成物及びその硬化物、並びにそれら組成物を用いた亀裂進展抑制方法に関する。
より詳しくは、本発明は、鋼構造物の亀裂箇所に塗布され硬化することで鋼構造物を補修し、構造物等に発生した亀裂の進展を抑制する亀裂進展抑制樹脂組成物及びその硬化物、並びにそれら組成物を用いた亀裂進展抑制方法に関する。
我が国の高度経済成長期に建築され、建築後50年以上が経過しつつある橋梁や建築物等のインフラストラクチャーに対して、近年、その老朽化の進展が懸念されている。しかしながら、これらの建築物の多くは我が国の社会基盤インフラを担っていることもあり、安易な建替えや取り壊し、或いはインフラ機能を停止させての本格的な補修補強等の工事ができないことが多い。さらに、補修を必要とする社会基盤インフラは年々増加の一途をたどっていることから、補修や補強工事を行う上で案件について優先順位をつけて対応せざるを得なく、工事待ちの案件の維持管理を如何に行うかが危急の課題となっている。このため、これら老朽化した建築物に対して、簡便な補修や補強施工を可能とし、且つ、工事が行われるまでの期間において充分な補強機能を発現する材料の提供が求められている。
補修や補強工事においては、主にセメント材料が多用されているが、コンクリートを用いた土木建築が対象であり、下地との接着性が問題となるため、垂直に塗工する場合や、天井に塗工する場合は、別途にセメントを密着させるための鉄筋や金網等の付属付帯物の施工が必要となり、工事が複雑になるという問題点を有している。
また、鋼構造物については、老朽化による損傷部分に鋼板で当て板補強を施すことが主に行われているが、多くは作業エリアが狭隘で重機が使用しにくく、施工条件的に厳しいために作業が大掛かりにならざるを得ず、施工品質を保つことが難しいという問題がある。
これらの問題点に対して、最近、繊維強化されたプリプレグを建築構造物の表面に貼り付けて、剛性を維持した補修工法が開発されている。この方法は、補修対象とする構造部材と貼り付ける繊維強化されたプリプレグの引張弾性率値から設計することによって、構造部材等に発生した亀裂の進展を抑制する効果が簡便に得られることを可能とする。
しかしながら、建築物の構造は必ずしも平面ばかりではなく、凹凸部やリブ部などが存在するため、作業現場で大きなシートを貼り付ける繊維強化されたプリプレグの貼り付け工法は必ずしも好ましくない場合があり、改良を求められている。
そこで、繊維強化されたプリプレグシートを鋼構造物の形状や発生亀裂の状況に併せて加工して貼り付けることによって前記の問題点を克服しようとしたものが特許文献1に開示されている手法である。しかしながら、本法は作業現場での細かい作業は高コストや安全面において必ずしも好ましい方策とはいえない。
また、これらの工法は、繊維強化されたプリプレグを下地に貼り付けるに際して、好ましい接着剤を用いる必要があり、この接着剤の選定次第では貼り付け施工後に繊維強化されたプリプレグが剥がれてしまい、充分な亀裂進展抑制効果を得られない等の問題も発生している。
特許文献2では、これまでの提案材料の長所と問題点を克服すべく、ポリマーセメント比を調整することにより、鋼構造物とモルタル層のせん断力に対する剛性がほぼ等しくなる厚さとなるような吹き付け型の補修材料を提案している。
しかしながら、特許文献2の方法は剛性を得ることは可能であっても、セメントという脆性材料を用いるため、例えば常に振動等に晒される鋼橋等の建築物では吹付け材料自体の強度や、吹付け材料と補強を必要とする被鋼構造物との接着強度の面で、必ずしも充分とはいえない要素を有している。
また、特許文献3及び4では、これまでの提案材料の長所と問題点を克服すべく、熱硬化性樹脂に繊維状フィラーを添加した複合材料系にすることによって、建物外壁や建物基礎等に簡便に塗工による補強を行う方法を提案している。しかしながら、この方法では、繊維状フィラーの配向によっては著しい強度や弾性率の偏向性が生じてしまい、対象とする建築物に対して、必ずしもバランス良い補強が得られない可能性が生ずるばかりでなく、当該方法で提案されているガラス繊維やロックウール繊維は無機系フィラーである為に比重が高く、例えば外壁に垂直に厚さをもって塗工する場合などに、自重によって垂れてきたりするなど、実施工性の面での不具合が生じやすく、必ずしも充分とは言えない問題点を有している。
更に、特許文献5及び6においても、構造物の塗工型の補修材料として熱硬化性樹脂にアクリル樹脂組成物を応用した方法が提案されている。本方法は樹脂組成物粘度が低く、混合時に繊維状フィラーが“だま”になり難いなどの良好な現場作業性と、硬化物の強度や弾性率の均一性が良好なことを特徴としている。しかし、本出願はあくまでコンクリート建造物の剥落防止を目的としているのであって、特に鋼構造物のような高強度構造物に発生した亀裂に対する補修に用いるには樹脂組成物が強度不足であることが否めない。
以上の通り、特に鋼建築構造物等に発生した疲労亀裂に対して、樹脂組成物やセメント系材料の塗工、或いは強化物の貼り付けによる一時的な亀裂の進展抑制を図った事例は存在するものの、垂直塗工や天井部への塗工においても自重で垂れてきたり剥がれたりすることのない軽量で且つ接着性に優れる塗工型材料を使用し、簡便かつ施工時の作業負担の少ない施工方法で、亀裂進展の大幅な抑制向上を実現した事例は見られない。
特開2006−57352号公報 特開2012−184575号公報 特開2003−213136号公報 特開2003−213938号公報 特開2003−342314号公報 特許2014−77287号公報
本発明の課題は、従来のセメントやポリマーセメント、樹脂組成物又は繊維強化型プリプレグでは実現できなかった簡便な施工方法と力学物性を実現する塗工型の補修材料を提供することである。ここで、塗工とは、補修材料を、各種作業現場において塗布することをいう。
本発明の課題は、より具体的には、老朽化した鋼建築構造物等の鋼材に発生した亀裂の進展抑制に対して、簡便で、施工時の作業負担の少ない修復補強工法を可能とする亀裂進展抑制樹脂組成物及びそれを用いた亀裂進展抑制方法を提供することである。
本発明の発明者は上記課題について改善すべく鋭意検討した結果、常温硬化型の熱硬化性樹脂と適切なフィラー形状に選定された繊維状フィラー及び非球状状フィラーを、特定の配合比率で混合し、硬化後の樹脂組成物の引張弾性率と硬化後の樹脂組成物と一般構造用鋼材とのせん断強度を特定の強度以上のものとすることにより、垂直塗工による硬化接着が可能で且つ優れた亀裂進展抑制を可能にする亀裂進展抑制樹脂組成物を実現した。
即ち、本発明の発明者は、常温硬化型の熱硬化性アクリル樹脂及びフィラーを含有する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物は、前記フィラーとして、繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーの両方を含有し、常温硬化型の熱硬化性アクリル樹脂100重量部に対して繊維状フィラーと非球状粒子フィラーとを式(I)
非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量=1〜10・・・式(I)
の配合比で合計20〜150重量部含有し、非球状粒子フィラーの平均粒子径が1〜80μmであり、鋼構造物の亀裂箇所に塗布され硬化することで前記鋼構造物を補強する亀裂進展抑制樹脂組成物とすることにより、本発明を完成するに至ったのである。
本願発明は、以下の(1)〜(9)に存する。
(1)常温硬化型の熱硬化性樹脂及びフィラーを含有する樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物は、前記フィラーとして、強化繊維フィラー及び非球状粒子フィラーの両方を含有し、前記樹脂組成物は、アクリル系モノマーを含有する樹脂マトリックス成分100重量部に対して繊維状フィラーと非球状粒子フィラーとを式(I)
非球状粒子フィラーの配合量/強化繊維フィラーの配合量=1〜10・・・式(I)
の配合比で合計20〜150重量部含有し、非球状粒子フィラーの平均粒子径が1〜80μmであり、構造物の亀裂箇所に塗布され硬化することで前記鋼構造物を補強する亀裂進展抑制樹脂組成物。
(2)強化繊維フィラーが、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、セラミック繊維、有機繊維から選択される1種以上である繊維長3mm以上の繊維である上記(1)に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
(3)非球状粒子フィラーが破砕状、針状、平板状または鱗片状の無機フィラーである上記(1)又は(2)に記載の樹脂組成物。
(4)常温硬化型の樹脂組成物が2液型のアクリル系硬化組成物であり、第1液の粘度が5〜10000Pa・s、第2液の粘度が5〜10000Pa・sの範囲であって、第1液と第2液の粘度比(粘度(1液)/粘度(2液))が0.2〜200である上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
(5)密着改善剤またはカップリング剤を更に含有する上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
(6)亀裂を有する構造物の表面において、亀裂の全部又は一部を覆って厚さ1mm以上で硬化した、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の亀裂進展抑制樹脂組成物を、構造物の亀裂箇所に1mm以上の厚さで塗布して鋼構造物の亀裂進展を抑制する亀裂進展抑制方法。
(8)亀裂進展樹脂組成物と構造物との接面にプライマーを塗布した後、亀裂進展抑制樹脂組成物を塗布する上記(7)に記載の亀裂進展抑制方法。
(9)補修を行う構造物がコンクリート構造物もしくは鋼構造物である上記(7)又は(8)に記載の亀裂進展抑制方法。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物によれば、簡便で、施工時の作業負担の少ない方法により、鋼建築構造物等に発生した疲労亀裂に対する亀裂進展抑制が可能となる。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、亀裂を有する構造物表面において、亀裂の一部又は全部を覆って一定の厚さで塗布され、硬化することにより亀裂箇所に固着し、構造物の亀裂が進展することを抑制する力を生じる。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、同じ組成の樹脂組成物で、構造物に塗布・盛り付けする厚さ及び形状を変化させることにより、構造物を補強する部分の断面積及び接着面積等を変化させることができる。従って、同じ組成の樹脂組成物で、異なる構造物の亀裂が進展する力に抗する力を生じることができる。
は、亀裂進展抑制効果の評価を行った、亀裂進展抑制樹脂組成物を塗工した試験片を示す図である。中心部に、長さlmmの亀裂が生じた、巾Lmm、長さHmm、厚みtmmのSS400鋼材に対して、巾Lmm、長さ2×hmm、厚み2×tmmの補強塗工を行った塗工修復モデルとなっている。
〔亀裂進展抑制樹脂組成物〕
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、構造物の亀裂箇所に塗布し、硬化させることで亀裂を有する構造物を補強するために用いるものであり、常温硬化型の熱硬化性樹脂に、強化繊維フィラーと非球状粒子フィラーとが後述するように所定の値の範囲内で混合されたものである。本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、1液性又は2液性であっても良く、それ以上の複数の成分を混合して使用するものであっても良い。例えば、繊維状フィラーを、使用前に混合するものであっても良い。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、塗布される際、前記樹脂組成物中含有される非球状粒子フィラー及び強化繊維フィラーが塗布面に平行な方向に近い方向に配向する。従って、前記樹脂組成物中の樹脂マトリックスとフィラーとが、球状粒子又は繊維状フィラーのみを用いる場合よりも強力に相互作用すると共に、非球状粒子フィラー及び強化繊維フィラーが伸長する力に抗する応力を生じ、硬化した樹脂組成物全体として塗布面に平行な引張力に抗する弾性及び応力を生じる。このため、前記樹脂組成物には、塗布面に平行な引張力に対する極めて大きい強度が生じる。その結果、本発明の樹脂組成物は、鋼構造物の表面に亀裂を覆って塗布される等、亀裂進展方向への鋼構造物の変形を抑制する態様で塗布されることにより、亀裂進展を抑制することができる。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物には、亀裂が進展する方向への鋼構造物の変形を抑制するために用いることにおいて、その塗布の形態又は方法に制限はない。
〔常温硬化型の熱硬化性樹脂〕
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、常温硬化性を有する熱硬化性樹脂組成物であって、塗布面への接着性や硬化物の強度等の条件を満たすのであれば特に制限はなく、エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が使用可能である。
これらの中でもエポキシ樹脂およびアクリル樹脂が塗布面との接着性及び硬化物の強度、常温硬化性の観点から好ましいものであるが、より好ましくはアクリル樹脂が好適に用いられる。
前記アクリル樹脂は、アクリル系の硬化性を有する樹脂であり、アクリル系モノマーを含有する樹脂マトリックス成分である。 前記アクリル樹脂は、2液硬化型が好ましく、市販品であればデンカ社製ロックタイトや3M社製Scotch−Weldなどが挙げられる。また、有機過酸化物を含有する重合可能なアクリル系液状組成物(A液)と、有機過酸化物を分解してラジカルを発生させる硬化開始剤を含有する重合可能なアクリル系液状組成物(B液)をそれぞれ作成し、混合・硬化させてもよい。
前記重合可能なアクリル系液状組成物に使用されるアクリル系モノマーは、アクリレートと呼称される少なくとも分子中に(メタ)アクリル基を有するメタクリル酸エステルとアクリル酸エステルであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロトリエン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルキルオキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変成テトラフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキシド変成アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキシ変成アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキシド変成アクリレート、ノニルフェノールポロピレンオキシド変成アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、ポリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエシルリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(ローム アンド ハース社製QM657)、1、2−ポリブタジェン変成ジメタクリレート(日本曹達社製TE2000)、エポキシ(メタ)アクリレート(大阪有機化学社製ビスコート#540、共栄社化学社製エポキシエステル3000A)、ポリエステル(メタ)アクリレート(東亜合成社製アロニックスM−6100)、ウレタンアクリレート(東亞合成社製アロニックスM−1100、共栄社化学社製UA−306H)、アクリルニトリルブタジエンメタクリレート(宇部興産社製HycarVTBN)などが挙げられる。これらは単独で使用しても良いが、2種類以上を組合わせて使用することが好ましい。
本発明のアクリル系液状組成物に配合される有機過酸化物には、ハイドロパーオキサイド類が好ましく使用され、ターシャリブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
これら有機過酸化物は1種又は2種以上を併用して使用することができ、配合量はアクリル系モノマー100重量部に対して0.2〜10重量部配合されることが好ましく、0.5〜5重量部配合されることがより好ましい。有機過酸化物の配合量が0.2重量部未満の場合、樹脂組成物の硬化が遅くなる恐れがあり、10重量部を超えた場合は硬化速度のそれ以上の増加が見られない上に、接着性が低下してしまう恐れがある。
前記アクリル系モノマーは、低分子量のものであっても、高分子量のものであっても良く、形状安定性や、多くの反応点を有することによる強度向上等を考慮して、適宜選択することができる。
前記アクリル系モノマーの重合反応のモノマーにおける反応点となる官能基は、モノマー中1つでも重合反応が生じ硬化するのであれば本発明の目的を達し得るが、モノマー中2つ以上あることが強度向上の点で好ましい。前記モノマーは、3つ以上の多官能性モノマーであっても良く、前記官能基の数の異なる複数のモノマーの混合物であっても良い。
前記アクリル系モノマーが1液性である場合は、混合の手間が不要な分施工がより簡便になるという利点がある。この場合、硬化開始は、熱硬化、湿気硬化、酸素と接触することによる好気硬化、紫外線硬化等が挙げられ、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特に制限はない。
前記アクリル系モノマーが2液性である場合は、2液が混合されなければ反応が進行しないため保存が容易である利点がある。この場合、硬化開始は、2液の混合による硬化開始であっても、熱硬化、湿気硬化、酸素と接触することによる好気硬化、紫外線硬化等であっても良く、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特に制限はない。
硬化開始剤とはアクリル系液状組成物に配合された有機過酸化物を分解してラジカルを発生させる材料で、例えば、金属石鹸に代表されるオクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン、オクチル酸ニッケル、オクチル酸バナジウム、オクチル酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸ニッケル、亜麻仁油脂肪酸コバルト、ナフテン酸バナジウム、ナフテン酸銅、コバルトアセチルアセトナート、マンガンアセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナートなどが挙げられる。
前記硬化開始剤の配合量は、アクリル系モノマー100重量部に対して0.1〜10重量部であり、好ましくは0.3〜5重量部である。硬化開始剤の添加量が0.1重量部未満であると硬化速度が遅くなる恐れがあり、10重量部以上の添加では硬化時間のそれ以上の増加がみられない上に接着性が低下してしまう恐れがある。
塗工型で且つ、亀裂進展を抑制するに充分な引張弾性率を得るために、本発明者は、常温硬化型の熱硬化樹脂に対して最適となる強化繊維フィラーと非球状粒子フィラーの配合比率を見出した。これらのフィラーの配合比率は、得られる樹脂組成物の粘度を高めるため、単に配合後の樹脂組成物の強化効果が得られるだけではなく、塗工時のダレ防止などの施工面でのメリットを得ることも可能とする。
〔強化繊維フィラー〕
本発明に係る強化繊維フィラーとは、繊維長が1mm以上の短繊維であり、炭素繊維、ガラス繊維、ロックウールファイバー、バサルト繊維、SiCやアルミナ等のセラミックス繊維等の無機繊維、アラミドやナイロン等のポリマー、セルロース等から構成される有機繊維を単独、もしくは、これらを混合物として用いることができる。前記強化繊維フィラーの中でも炭素繊維及びガラス繊維、アラミド繊維又はこれらの混合物は、製造時のハンドリングの面でより好ましく使用される。
また、本発明に係る強化繊維フィラーとして、引張弾性率の発現性上、3mm以上の長さを有し、且つ1本あたりの繊維直径が30μm未満の炭素繊維、アラミド繊維のチョップドストランド繊維を用いることがさらに好ましい。なお、本発明に係る強化繊維フィラーを限定するものではないが、前記繊維状フィラー表面はマトリックス材料との親和性を向上させる表面処理、例えばエポキシ系樹脂サイジング等によるサイジング処理やシランカップリング剤等による表面処理が施されたものが好ましい。
〔非球状粒子フィラー〕
本発明に係る非球状粒子フィラーは、ピッチコークス粉砕品や黒鉛粉砕物、炭素繊維のミルドファイバー、破砕アルミナ、破砕シリカ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、カーボンブラック、ワラストナイト、等を用いることができ、これらの混合物も用いることができる。
本発明に係る非球状粒子フィラーは、破砕状、針状、平板状又は鱗片状のうち1種以上の無機フィラーであることが、引張強度及び引張弾性率が高くなるため好ましい。
中でも、本発明に係る非球状粒子フィラーとしては、ピッチコークス粉砕品、タルク、マイカ等の非球状粒子フィラーはその粒子形状が鱗片状であることから、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物に必要とする引張弾性率を発現しやすいために好ましい。本発明に係る非球状粒子フィラーは、更に好ましくは、鱗片状を有し、それ自身の弾性率も高く、且つ炭素系元素で構成される樹脂組成物との相溶性に優れるピッチコークス粉砕品である。
特に、石炭系タールを原料とする針状結晶性を有するピッチコークス粉砕品は、粉砕粒子の強度や弾性率が高く、且つその組成のほとんどが炭素であるため、他の無機系フィラーの場合と異なり相溶化剤等を用いなくとも強度や弾性率の発現を得ることができ、また粉砕時に容易に鱗片状になるために、本発明に係る非球状粒子フィラーとして最も好ましい非球状粒子フィラーである。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物に含有させて用いる非球状粒子フィラーは、平均粒子径が1〜80μm、好ましくは、1〜50μm、より好ましくは、1〜30μmで、より更に好ましくは、平均粒子径5〜20μmである。
平均粒子径が1μmより小さな非球状粒子フィラーは熱硬化型樹脂混合物との混合時に著しく粘度を高めてしまうため、塗工が困難となり好ましくない。また、平均粒子径が80μmより大きな非球状粒子フィラーは熱硬化型樹脂混合物の強度が得られず、好ましくない。
なお、本発明における非球状粒子フィラーの平均粒径とは、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置によって測定された非球状粒子フィラーのメジアン径(D50)である。
〔フィラー配合量〕
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、常温速硬化型の熱硬化性樹脂100重量部に対して、繊維状フィラーと非球状粒子フィラーが合計で20〜150重量部、好ましくは40〜120重量部配合される。常温で硬化する熱硬化性樹脂100部に対して、繊維状フィラーと非球状粒子フィラーの配合量が20重量部よりも少なくなると、補強効果を得るための引張弾性率が得られず、逆に、配合量が150重量部よりも多くなると、樹脂組成物内に発生する空隙が多くなるため、亀裂進展抑制樹脂組成物自身の強度の低下が生じてしまう。
また、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、常温硬化型の熱硬化性樹脂に配合される強化繊維フィラーと非球状粒子フィラーの配合比を、下式(I)で1〜10、より好ましくは2〜8となるようにする。配合比が1未満であると、補強効果を得るために十分な引張弾性率が得られず、10を超えると補強効果を得るために十分な引張弾性率だけでなく、引張強度も得られなくなってしまう。
非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量・・・式(I)
本発明では、熱硬化性樹脂と強化繊維フィラー及び/又は非球状粒子フィラーとの配合比は、熱硬化性樹脂100部に対して、強化繊維フィラーが3〜30重量部、非球状粒子フィラーが10〜120重量部であることが好ましく、より好ましくは、強化繊維フィラーが5〜20重量部、非球状粒子フィラーが20〜100重量部であることが好ましい。
強化繊維フィラー及び非球状粒子フィラーの配合量が本発明の範囲内であれば施工上の問題や得られる弾性率や強度等の力学物性には問題は生じないが、前記配合比率に設計することより亀裂進展抑制効果を高めることが可能となる。
〔亀裂進展抑制樹脂組成物の実施態様〕
本発明に係る実施形態のうちの一つとして、強化繊維フィラーと非球状粒子フィラーを、常温硬化できる熱硬化性樹脂に混合することによって、接着剤等を用いることなく、現場で簡単に垂直部への塗工を可能とし、且つ構造物に発生した亀裂の進展を抑制する引張弾性率を発現できる亀裂進展抑制樹脂組成物を実現した。
以下、その実施形態について具体的に説明する。
また、本発明では亀裂進展抑制樹脂組成物の物性を損なわない範囲内で、マトリックス樹脂に用いる熱硬化性樹脂以外の熱硬化性樹脂や無機フィラー、有機フィラーの併用混合、硬化促進剤としての3級アミンの配合、保存安定性の改良や可使時間の制御を目的としたフェノール系重合禁止剤、例えば、ハイドロキノンやハイドロキノンモノメチルエーテル類を添加してもよく、初期的な表面乾燥剤としてパラフィンワックスを添加してもよい。さらには分散性や接着性向上のためのシランカップリング剤、紫外線防止剤、熱劣化防止剤、酸化防止剤、流動調整剤、着色剤等の添加剤を併用混合することも可能である。特に、補強物が鋼構造物である場合、密着性向上のための密着性改善剤として、シランカップリング剤を添加すると良い。用いるシランカップリング剤に、特に制限はないが、密着性向上更には組成物の貯蔵安定性の観点から(メタ)アクリル基を含有するものが好ましい。
〔密着改善剤〕
密着改善剤は、強化充填材とマトリックス樹脂や、樹脂組成物と塗工面との界面における接着性を向上させるためのものであって、ポリマーカップリング剤(例えばBYK社製、BYK−4510等)やシランカップリング剤等が挙げられる。本発明においては取り扱いの容易さなど面からシランカップリング剤が密着改善剤として好ましく、グリシジルシラン系やイミダゾールシラン系のシランカップリング剤の接着力向上効果が大きいことからこれらの使用がより好ましい。
なお、密着改善剤としてシランカップリング剤を添加する場合、その添加量は本発明のエポキシ樹脂組成物100重量部に対して0.1〜5.0重量部、好ましくは0.3〜2.0重量部が適する。シランカップリング剤の添加量を上記範囲内とすることにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の粘度を必要以上に低下させることなく強化充填材や被塗工面との接着力を向上させることができる。
密着改善剤は、上記シランカップリング剤だけでなく、接着強度を改善し、亀裂進展抑制樹脂組成物の硬化後の物性を阻害しないものであれば、特に制限はない。
密着改善剤は、例えば、プライマーとして塗布された時に、接着強度を向上する成分を含む剤が挙げられる。密着改善剤が亀裂進展抑制樹脂組成物中に含有されることで、接着面にも密着改善剤が存在することになり、接着強度が改善され得る。
好ましくは、鋼材の表面の金属原子又は金属酸化物と相互作用し、金属表面に配位するものが好ましい。具体的には、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物等が挙げられる。
〔製造方法〕
本発明を限定するものではないが、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物の製造においては、一般のヘリカルミキサーやヘンシェルミキサー、ダルトン型ミキサー、遠心分離ミキサー等の混合機を使用することが好ましい。これらの混合において減圧すると、混合物に内包される気泡が除去できるため、より好ましい。
また、本発明を限定するものではないが、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、野外の施工現場での塗工作業性の簡便さより、2液を塗工作業直前に混合することが好ましく、アクリル系モノマーと有機過酸化物の混合物と、アクリル系モノマーと硬化開始剤の混合物を準備し、塗工作業直前に両者を混合して用いることがより好ましい。なお、その際、事前に準備する混合物は、A液に強化繊維フィラーと非球状粒子フィラーを混合したものでもよく、A液に強化充填剤のどちらか一方を混合し、且つ用いるB液にもう一方のフィラーを混合したものを準備してもよく、少なくとも一方に非球状粒子フィラーを配合した2液と強化繊維フィラーを準備しても良い。より好ましくは、A液/B液双方に非球状粒子フィラーを混合しておき、両者を施工現場で混合した後、繊維状フィラーを添加/混合し、使用することが良い。
施工時の簡便性を考えれば、2液の混合にはハンディータイプのミキサーを用いるほか、手作業で混合する方法が適するが、このとき、2液のうちのA液の粘度が5〜10000Pa・s、B液の粘度が5〜10000Pa・sの範囲にあり、両者の粘度比(粘度(A液)/粘度(B液))が0.2〜200であることが適しており、さらにA液の粘度が10〜8000Pa・s、B液の粘度が10〜8000Pa・s、両者の粘度比が0.5〜50であることが好ましい。このように、2液の粘度が所定範囲内であることによって、施工現場で実際に混合操作を行っても配合むらが生じにくく、かつ施工後には充分な亀裂進展抑制効果を発揮する樹脂組成物を得ることができる。
施工現場での2液の混合方法については特に制限するものではないが、ドラム缶装着型の混合機や、ハンディタイプの混合機で混合する方法が、簡便で、施工時の作業負担が少ないという観点から好ましい。ドラム缶装着型の混合機の例としては、清健製マゼール等が、ハンディタイプの混合機の例としては、ハンディタイプの大塚刷毛製マザール等が挙げられる。ただし、繊維状フィラーを配合以降の混合操作は、混合機を使用せず手作業で行うことが望ましい。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物を限定するものではないが、主剤樹脂ワニスと硬化剤を混合した混合物については、粘度が25℃で5〜10000Pa・sであり、より好ましくは、粘度が25℃で20〜8000Pa・sであることが、壁や天井等での塗工を簡便なものにするために好ましい。このため、塗工時の垂れ防止やハンドリング性の点で、混合直後の粘度が25℃で100〜8000Pa・sであることが好ましく、150〜8000Pa・sであることがより好ましく、200〜8000Pa・sであることが更にさらに好ましい。
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記混合物は、10000Pa・sよりも高粘度で、流動性を有さず粘度が測定できないものであっても良い。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及びフィラーを含有する樹脂組成物であるという性質上、チキソトロピー性(揺変性)を有し得る。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物を限定するものではないが、建築補修用エポキシ樹脂樹脂の規格JIS A 6024:2008における中粘度形のチキソトロピー性(揺変性)のチキソトロピックインデックスが、5±1となっていることから、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、同規格における測定において、4以上、好ましくは5以上のチキソトロピックインデックスを示すものであっても良い。チキソトロピックインデックスが前記範囲であることで、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、塗工時に塗布した前記樹脂組成物が型崩れしにくく、塗工・成形が容易になる。
また、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物の硬化時間は施工作業上、10分〜5時間程度であることが好ましく、30分〜3時間程度であることがより好ましい。また、良好な硬化状態の容易な確認方法として、主剤樹脂ワニスと硬化剤を混合した直後の混合物を水平面に対して20mmの厚さに塗工した後、2時間後の厚さの変化が2mm以内で硬化していることが好ましい。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物を限定するものではないが、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、例えば一般構造材圧延鋼材SS400との接着性を示す引張せん断強度が1MPa以上であることが好ましい。これ未満の引張せん断強度であっても特に著しい支障を生ずるものではないが、塗工後のはく離が生じ難い方が長期耐久性などの面で優れ得る。
〔塗工方法〕
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物の塗工方法は、粘度が25℃で5〜500Pa・sである材料を塗布することができる方法であれば特に制限はなく、一般に用いられている方法を用いることができる。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、構造物の亀裂箇所に、亀裂を覆うか、又は、亀裂を横断して塗布され、硬化することにより、亀裂進展抑制効果を生じる。
塗布する厚さは、塗工が可能であり、硬化後に十分な強度が保たれる限りにおいて、特に制限がない。本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物を、構造物の亀裂箇所に1mm以上、好ましくは20mm以上の厚さで塗布することにより、鋼構造物の亀裂進展を抑制する効果が高いものとなる。
また、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物を塗布する厚さを構造物の素材に応じて変化させ、硬化後の樹脂組成物の断面積及び形状、接着面の面積を変化させることにより、異なる形状・種類の構造物の亀裂進展抑制を行うことができる。
本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、亀裂を有する構造物の素材の表面において、亀裂の全部若しくは一部を覆って厚さ1mm以上で硬化するように塗工される。このように塗工されることにより、本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、亀裂が進展する力に抗するための応力を生じることができ、亀裂進展抑制効果を生じる。
硬化方法は、常温硬化が可能であるが、必要に応じて加熱する等、一般的に用いられる方法を用いることができる。
なお、補修材の塗布に際しては密着性を向上させるために別途プライマーを使用してもよい。プライマーの種類は補修を行う鋼構造体の材質や補修材の樹脂種に応じて適宜選択されるが、例えばエポキシ樹脂系や、シランカップリング剤系のプライマーが好ましく挙げられる。
以下、本発明の実施例に係る亀裂進展抑制樹脂組成物について実施例と比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
機械物性(引張曲げ、引張弾性率)の測定
本発明の実施例に係る亀裂進展抑制樹脂組成物の引張曲げ強度及び引張弾性率の測定は、JIS K 7162/1B プラスチック引張特性の試験方法に準じて行った。
せん断接着強度の測定
本発明の実施例に係る亀裂進展抑制樹脂組成物と一般構造用圧延用鋼材SS400との引張せん断強度による接着強度の評価測定は、JIS K 6850 接着剤−剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法に準じて行った。
亀裂進展抑制効果の評価
中心部に、長さlmmの亀裂が生じた、巾Lmm、長さHmm、厚みtmmのSS400鋼材に対して、巾Lmm、長さ2×hmm、厚み2×tmmの補強塗工を行った塗工修復モデルを作製し(図1)、各材料の引張強度及び引張弾性率、せん断強度の実測値を用いてシミュレーション及び測定を行い、下記条件1〜条件3を満たすものを、亀裂進展抑制効果を有するものとした。下記条件1〜条件3を満たすものであれば、実用上、鋼構造物に発生した亀裂の進展を抑制することができる。
(条件1)
下記参考文献1及び2を参考に、式1の算出値が0.5〜3の範囲に収まる。
(式1)
[(L−l)×SS400の引張弾性率×t]
/[L×塗工材料の引張弾性率×2t]
(条件2)
変形歪み0.1%時の塗工材料に発生する内部応力(=「引張弾性率」×0.001)
が塗工材料の引張強度以下である。
(条件3)
塗工材料と鋼材の界面の接着強度が、変形歪み0.1%時の塗工材料に発生する内部応力(=「引張弾性率」×0.001)以上である。
参考文献1 "Bonded repair of aircraft structures", edited by A.A. Baker and R. Jones
(Engineering application of fracture mechanics, 7) M. Nijhoff , Distributors for the United States and Canada, Kluwer Academic, 1988
参考文献2 M.Sato et al., Adv. Comp. Mater., Vol.11, No.1, p51−59(2002).
塗工後塗工物の実施工性の評価
垂直に立てかけたSS400製の鋼材板の中心に亀裂進展抑制樹脂組成物を塗工し、24時間後の塗工物の下方向へのダレ量を実際に測定することにより評価を行った。
補強塗工の長さの基準となるhは、例えば100mmのものを用いて測定を行った。
非球状粒子フィラーの粒子径測定
本発明に係る非球状粒子フィラーの粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定計(マイクロトラックMT3300EX 日機装社製)により体積基準粒子径の測定を行い、メジアン径(D50)を平均粒子径として求めた。
粘度測定
配合例における配合物の25℃の粘度は、東機産業(株)製B型粘度計、TVB−10を用いて測定した。
[配合例1−1〜3]
各原料を表1に記載の重量部量り、(株)シンキー製自転公転ミキサー、あわとり練太郎 ARV−310を用いて混合し、その粘度を測定した。
Figure 2018105007

*1 C−351K−10A アクリル系接着剤A液(デンカ製、ハードロックC−351K−10A)
*2 C−351K−10B アクリル系接着剤B液(デンカ製、ハードロックC−351K−10B)
*3 DPHA 多官能アクリレート(日本化薬製、KAYARAD DPHA)
*4 KBM5103 アクリル基含有カップリング剤(信越化学製、KBM5103)
*5 K1 微粉タルク(平均粒径約8μm、日本タルク製、ミクロエースK1)
[実施例1〜2]
表2に記載の割合で、配合例1−1〜3/強化繊維フィラーを量り取り、手作業で均一になるまで混合することで実施例1〜3の亀裂進展抑制樹脂組成物を得た。本組成物を用い、各種物性評価を行った。評価結果を表2に示す。
[引張試験]
引張試験用の試験片は、亀裂進展抑制樹脂組成物をトレーの上で平板上に伸ばして、そのまま常温下で1週間放置して硬化した平板から切削加工にて作製しており、残留応力等の影響を排除して物性試験を行うべく、硬化した平板をそのままの25℃の条件下で約一晩放置して平準化を行った。
[せん断接着強度]
せん断接着強度測定試験片は、亀裂進展抑制樹脂組成物を厚さ0.75mmで50mmの長さで塗工した一般構造用圧延鋼材SS400(幅32mm×長さ100mm×厚さ3mm)を2枚重ねとすることにより接着し、引張試験用の平板同様にそのまま25℃の条件下で1週間放置することにより試験片を作製した。
[亀裂進展抑制効果]
亀裂進展抑制効果については、硬化後の樹脂組成物が、引張強度が、30MPa以上、引張弾性率が、5GPa以上、せん断接着強度が、1MPa以上を全て満たす場合を亀裂進展抑制効果:有(○)、これらの何れかの値が満たないものを、亀裂進展抑制効果:無(×)とした。
[施工性]
施工性については、亀裂進展抑制樹脂組成物を巾10mm、長さ500mmのSS400製鋼材片の中央部に上下長さ方向100mm、塗工厚み20mmの仕様にて塗工し、塗工後24時間経過時の塗工物のダレ量が20mm以内であれば○、20mm以上で×とした。
Figure 2018105007

*6 XN−80C−06S 6mmチョップド炭素繊維(日本グラファイトファイバー製)
表2の結果より、実施例1〜2の本発明の亀裂進展抑制樹脂組成物は、比較例1の樹脂組成物に比べ、良好な引張強度、引張弾性率及びせん断接着強度により亀裂進展抑制効果も得られている。これより、本発明の効果は明瞭である。
本発明は、鋼建築構造物等の補修等の建築・建設分野で用いることができる。

Claims (9)

  1. 常温硬化型の硬化性を有する樹脂と、フィラーとを含有する樹脂組成物であって、
    前記樹脂組成物は、前記フィラーとして、強化繊維フィラー及び非球状粒子フィラーの両方を含有し、前記樹脂組成物は、アクリル系の硬化性を有する樹脂100重量部に対して繊維状フィラーと非球状粒子フィラーとを式(I)
    非球状粒子フィラーの配合量/強化繊維フィラーの配合量=1〜10・・・式(I)
    の配合比で合計20〜150重量部含有し、非球状粒子フィラーの平均粒子径が1〜80μmであり、構造物の亀裂箇所に塗布され硬化することで前記鋼構造物を補強する亀裂進展抑制樹脂組成物。
  2. 強化繊維フィラーが、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、セラミック繊維、有機繊維からなる群から選択される1種以上である繊維長3mm以上の繊維である請求項1に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
  3. 非球状粒子フィラーが、破砕状、針状、平板状又は鱗片状のうち1種以上の無機フィラーである請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 常温硬化型の樹脂組成物が2液型のアクリル系硬化組成物であり、第1液の粘度が5〜10000Pa・s、第2液の粘度が5〜10000Pa・sの範囲であって、第1液と第2液の粘度比(粘度(1液)/粘度(2液))が0.2〜200である請求項1〜3のいずれかに記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
  5. 密着改善剤またはカップリング剤を更に含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
  6. 亀裂を有する構造物の表面において、亀裂の全部又は一部を覆って厚さ1mm以上で硬化した、請求項1〜5のいずれか1項に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の亀裂進展抑制樹脂組成物を、構造物の亀裂箇所
    に1mm以上の厚さで塗布して鋼構造物の亀裂進展を抑制する亀裂進展抑制方法。
  8. 亀裂進展樹脂組成物と構造物との接面にプライマーを塗布した後、亀裂進展抑制樹脂組成物を塗布する請求項7に記載の亀裂進展抑制方法。
  9. 補強を行う構造物がコンクリート構造物もしくは鋼構造物である請求項7又は8に記載の亀裂進展抑制方法。
JP2016252757A 2016-12-27 2016-12-27 亀裂進展抑制樹脂組成物及びその硬化物並びに亀裂進展抑制方法 Pending JP2018105007A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016252757A JP2018105007A (ja) 2016-12-27 2016-12-27 亀裂進展抑制樹脂組成物及びその硬化物並びに亀裂進展抑制方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016252757A JP2018105007A (ja) 2016-12-27 2016-12-27 亀裂進展抑制樹脂組成物及びその硬化物並びに亀裂進展抑制方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2018105007A true JP2018105007A (ja) 2018-07-05

Family

ID=62785744

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016252757A Pending JP2018105007A (ja) 2016-12-27 2016-12-27 亀裂進展抑制樹脂組成物及びその硬化物並びに亀裂進展抑制方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2018105007A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6767148B2 (ja) 亀裂進展抑制樹脂組成物及び亀裂進展抑制方法
JP6436593B2 (ja) 接着用途を有する粘着性ゲルシート、その製造方法、一対の被着体の固定方法及び複合材
CN105753367B (zh) 一种用于桥梁伸缩缝快速维修的树脂混凝土及其制备方法
KR100897417B1 (ko) 세라믹계 2액형 방식도료 조성물
KR101590547B1 (ko) 콘크리트 단면 보수 보강용 모르타르 및 이를 이용한 콘크리트 단면의 보수 보강 공법
JP2018104542A (ja) エポキシ樹脂組成物及びその硬化物
JP6208533B2 (ja) 水系ポリウレタン組成物及びこれの床下地コンクリートへの施工方法
JP2019116585A (ja) 補強用エポキシ樹脂組成物及びその硬化物
JP6952464B2 (ja) 亀裂進展抑制樹脂組成物及びその硬化物
JP6923873B2 (ja) 補強工法及び補強構造
JP2011016681A (ja) 補修用速硬性ポリマーセメントモルタル組成物及びその施工方法
JP2018105007A (ja) 亀裂進展抑制樹脂組成物及びその硬化物並びに亀裂進展抑制方法
CN103842432B (zh) 自由基聚合型丙烯酸系树脂组合物、防水材料组合物和层积体及其制造方法
KR102454474B1 (ko) 상온 속경화형 콘크리트 균열 보수 조성물 및 이를 이용한 균열 콘크리트 보수 방법
JP5371562B2 (ja) 低臭性アクリル系シラップ組成物及びその製造方法
KR101805992B1 (ko) 메틸 메타크릴레이트계 수지를 이용한 속건형 크랙 보수재 도료 조성물
CN109337299A (zh) 一种改性乙烯基植筋胶及其制备方法
JP4299817B2 (ja) 組成物とそれを用いた表面保護材
JP5198979B2 (ja) コンクリート接着性エポキシ樹脂組成物
KR101103880B1 (ko) 콘크리트 구조물에 사용되는 강재의 방식을 위한 접착성 방청 도료 및 그 시공방법
JP7456718B2 (ja) 硬化性樹脂組成物の製造方法、硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂建設資材の製造方法、及び、硬化性樹脂建設資材
CN113526917B (zh) 一种钢桥面铺装用柔韧性环氧砂浆及其制备方法
JP2000136638A (ja) 樹脂組成物
JP2002226791A (ja) 低弾性接着剤組成物
KR100458311B1 (ko) 분무형 방수제 조성물