JP2018104542A - エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、老朽化した鋼建築構造物等の鋼材に発生した亀裂の進展抑制に対して、簡便で、施工時の作業負担の少ない修復補強工法を可能とする亀裂進展抑制樹脂組成物としてのエポキシ樹脂組成物を提供することである。【手段】本発明では、フィラーを含有するエポキシ樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂としてビスフェノールA型および/またはビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、及び(C)強化充填剤を含み、前記(C)強化充填剤が、(C−1)非球状粒子フィラーと(C−2)強化繊維フィラーの2種を含み、且つ、前記(C)強化充填剤が前記エポキシ樹脂組成物中25〜60質量%含有され、鋼構造物の亀裂箇所に塗布され硬化することで前記鋼構造物を補修することを特徴とする前記エポキシ樹脂組成物を用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、フィラーを含有するエポキシ樹脂組成物及びその硬化物に関する。
より詳しくは、本発明は、鋼構造物の亀裂箇所に塗布され硬化することで鋼構造物を補修し、構造物に発生した亀裂の進展を抑制する亀裂進展抑制樹脂組成物としてのフィラーを含有するエポキシ樹脂組成物及びその硬化物に関する。
我が国の高度経済成長期に建築され、建築後50年以上が経過しつつある橋梁や建築物等のインフラストラクチャーに対して、近年、その老朽化の進展が懸念されている。しかしながら、これらの建築物の多くは我が国の社会基盤インフラを担っていることもあり、安易な建替えや取り壊し、或いはインフラ機能を停止させての本格的な補修補強等の工事ができないことが多い。さらに、補修を必要とする社会基盤インフラは年々増加の一途をたどっていることから、補修や補強工事を行う上で案件について優先順位をつけて対応せざるを得なく、工事待ちの案件の維持管理を如何に行うかが危急の課題となっている。このため、これら老朽化した建築物に対して、簡便な補修や補強施工を可能とし、且つ、工事が行われるまでの期間において充分な補強機能を発現する材料の提供が求められている。
補修や補強工事においては、主にセメント材料が多用されているが、コンクリートを用いた土木建築が対象であり、下地との接着性が問題となるため、垂直に塗工する場合や、天井に塗工する場合は、別途にセメントを密着させるための鉄筋や金網等の付属付帯物の施工が必要となり、工事が複雑になるという問題点を有している。
また、鋼構造物については、老朽化による損傷部分に鋼板で当て板補強を施すことが主に行われているが、多くは作業エリアが狭隘で重機が使用しにくく、施工条件的に厳しいために作業が大掛かりにならざるを得ず、施工品質を保つことが難しいという問題がある。
これらの問題点に対して、最近、繊維強化されたプリプレグを建築構造物の表面に貼り付けて、剛性を維持した補修工法が開発されている。この方法は、補修対象とする構造部材と貼り付ける繊維強化されたプリプレグの引張弾性率値から設計することによって、構造部材等に発生した亀裂の進展を抑制する効果が簡便に得られることを可能とする。
しかしながら、建築物の構造は必ずしも平面ばかりではなく、凹凸部やリブ部などが存在するため、作業現場で大きなシートを貼り付ける繊維強化されたプリプレグの貼り付け工法は必ずしも好ましくない場合があり、改良を求められている。
そこで、繊維強化されたプリプレグシートを鋼構造物の形状や発生亀裂の状況に併せて加工して貼り付けることによって前記の問題点を克服しようとしたものが特許文献1に開示されている手法である。しかしながら、本法は作業現場での細かい作業は高コストや安全面において必ずしも好ましい方策とはいえない。
また、これらの工法は、繊維強化されたプリプレグを下地に貼り付けるに際して、好ましい接着剤を用いる必要があり、この接着剤の選定次第では貼り付け施工後に繊維強化されたプリプレグが剥がれてしまい、充分な亀裂進展抑制効果を得られない等の問題も発生している。
特許文献2では、これまでの提案材料の長所と問題点を克服すべく、ポリマーセメント比を調整することにより、鋼構造物とモルタル層のせん断力に対する剛性がほぼ等しくなる厚さとなるような吹き付け型の補修材料を提案している。
しかしながら、特許文献2の方法は剛性を得ることは可能であっても、セメントという脆性材料を用いるため、例えば常に振動等に晒される鋼橋等の建築物では吹付け材料自体の強度や、吹付け材料と補強を必要とする被鋼構造物との接着強度の面で、必ずしも充分とはいえない要素を有している。
また、特許文献3及び4では、これまでの提案材料の長所と問題点を克服すべく、熱硬化性樹脂に繊維状フィラーを添加した複合材料系にすることによって、建物外壁や建物基礎等に簡便に塗工による補強を行う方法を提案している。しかしながら、この方法では、繊維状フィラーの配向によっては著しい強度や弾性率の偏向性が生じてしまい、対象とする建築物に対して、必ずしもバランス良い補強が得られない可能性が生ずるばかりでなく、当該方法で提案されているガラス繊維やロックウール繊維は無機系フィラーである為に比重が高く、例えば外壁に垂直に厚さをもって塗工する場合などに、自重によって垂れてきたりするなど、実施工性の面での不具合が生じやすく、必ずしも充分とは言えない問題点を有している。
更に、特許文献5及び6においても、構造物の塗工型の補修材料として熱硬化性樹脂にアクリル樹脂組成物を応用した方法が提案されている。本方法は樹脂組成物粘度が低く、混合時に繊維状フィラーが“だま”になり難いなどの良好な現場作業性と、硬化物の強度や弾性率の均一性が良好なことを特徴としている。しかし、本出願はあくまでコンクリート建造物の剥落防止を目的としているのであって、特に鋼構造物のような高強度構造物に発生した亀裂に対する補修に用いるには樹脂組成物が強度不足であることが否めない。
以上の通り、特に鋼建築構造物等に発生した疲労亀裂に対して、樹脂組成物やセメント系材料の塗工、或いは強化物の貼り付けによる一時的な亀裂の進展抑制を図った事例は存在するものの、垂直塗工や天井部への塗工においても自重で垂れてきたり剥がれたりすることのない軽量で且つ接着性に優れる塗工型材料を使用し、簡便かつ施工時の作業負担の少ない施工方法で、亀裂進展の大幅な抑制向上を実現した事例は見られない。
特開2006−57352号公報 特開2012−184575号公報 特開2003−213136号公報 特開2003−213938号公報 特開2003−342314号公報 特許2014−77287号公報
本発明の課題は、従来のセメントやポリマーセメント、樹脂組成物又は繊維強化型プリプレグでは実現できなかった簡便な施工方法と力学物性を実現する塗工型の補修材料を提供することである。ここで、塗工とは、補修材料を、各種作業現場において塗布することをいう。
本発明の課題は、より具体的には、老朽化した鋼建築構造物等の鋼材に発生した亀裂の進展抑制に対して、簡便で、施工時の作業負担の少ない修復補強工法を可能とする亀裂進展抑制樹脂組成物としてのエポキシ樹脂組成物を提供することである。
本発明の発明者は上記課題について改善すべく鋭意検討した結果、エポキシ樹脂に強化繊維フィラーと非球状粒子フィラーを、特定の配合比率で混合し、硬化後の樹脂組成物の引張弾性率と硬化後の樹脂組成物の引張強度を特定の強度以上のものとすることにより、垂直塗工による硬化接着が可能で優れた亀裂進展抑制を可能にする亀裂進展抑制樹脂組成物としての2液硬化型エポキシ樹脂組成物を実現した。
即ち、本発明の発明者は、フィラーを含有するエポキシ樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂としてビスフェノールA型および/またはビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、(C)強化充填剤、を含み、前記(C)強化充填剤が(C−1)非球状粒子フィラーと(C−2)強化繊維フィラーの2種からなり、前記エポキシ組成物中25〜60質量%含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物とすることにより、本発明を完成するに至ったのである。
本願発明は、以下の(1)〜(8)に存する。
(1) フィラーを含有するエポキシ樹脂組成物であって、
(A)エポキシ樹脂としてビスフェノールA型および/またはビスフェノールF型液状
エポキシ樹脂
(B)アミン系硬化剤
(C)強化充填剤
を含み、前記(C)強化充填剤が(C−1)非球状粒子フィラーと(C−2)強化繊維フィラーの2種からなり、且つ、前記(C)強化充填剤が前記エポキシ樹脂組成物中25〜60質量%含有され、鋼構造物の亀裂箇所に塗布され硬化することで前記鋼構造物を補修することを特徴とする前記エポキシ樹脂組成物。
(2) (C)強化充填剤の(C−1)非球状粒子フィラーと(C−2)強化繊維フィラーが式(I)の割合で配合されている上記(1)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(C−1)非球状粒子フィラーの配合量
/(C−2)繊維状フィラーの配合量=1〜10 ・・・式(I)。
(3) 2液性エポキシ樹脂組成物であって、第1液がエポキシ樹脂(A)と強化充填剤(C)の一部を含み粘度が5〜5000Pa・sであり、第2液がアミン系硬化剤(B)と残りの全量の強化充填剤(C)を含む粘度が0.2〜200Pa・sであり、第1液と第2液の粘度比(粘度(1液)/粘度(2液))が1〜500である上記(1)又は(2)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(4) 更に(D)反応性希釈剤が全組成物中に2.0〜20.0質量%含有する上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
(5) 更に(E)密着改善剤又はカップリング剤を全組成物中0.1〜5.0質量%含有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
(6) (C−1)非球状粒子フィラーが平板状または鱗片状の無機フィラーであり、
(C−2)強化繊維フィラーが繊維長3mm以上の炭素繊維またはガラス繊維、バサルト繊維、SiC等のセラミック繊維や、アラミドやセルロース繊維などの有機繊維から選択される少なくとも1種である上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
(7) 補修を行う構造物がコンクリート構造物もしくは鋼構造物である上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
(8)構造物に生じた亀裂の全部又は一部を覆って厚さ1mm以上の塗膜を形成し、硬化した上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
本発明のエポキシ樹脂組成物によれば、簡便で、施工時の作業負担の少ない方法により、鋼建築構造物等に発生した疲労亀裂に対する亀裂進展抑制が可能となる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、亀裂を有する構造物表面において、亀裂の一部又は全部を覆って一定の厚さで塗布され、硬化することにより亀裂箇所に固着し、鋼材の亀裂が進展することを抑制する力を生じる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、同じ組成の樹脂組成物で、構造物に塗布・盛り付けする厚さ及び形状を変化させることにより、構造物を補強する部分の断面積及び接着面積等を変化させることができる。従って、同じ組成の樹脂組成物で、異なる構造物の亀裂が進展する力に抗する力を生じることができる。
は、亀裂進展抑制効果の評価を行うために用いた、エポキシ樹脂組成物を塗工した試験片を示す図である。中心部に、長さlmmの亀裂が生じた、巾Lmm、長さHmm、厚みtmmのSS400鋼材に対して、巾Lmm、長さ2×hmm、厚み2×tmmの補強塗工を行った塗工修復モデルとなっている。
〔エポキシ樹脂組成物〕
亀裂進展抑制樹脂組成物としての本発明の2液硬化型エポキシ樹脂組成物は、構造物の亀裂箇所に塗布し、硬化させることで亀裂を有する構造物を補強するために用いる。
前記エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂としてビスフェノールA型および/またはビスフェノールF型常温硬化液状エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、(C)強化充填材、を含有する2液硬化型のエポキシ樹脂組成物である。
本発明の趣旨を逸脱しない限り制限はないが、無溶剤系が好ましく、また、常温硬化性を有するものが好ましい。硬化温度は、補修箇所の温度が高温又は低温である場合には、その温度に適した硬化温度となるエポキシ樹脂及びアミン系硬化剤を用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、塗布される際、前記エポキシ樹脂組成物中含有される非球状粒子フィラー及び強化繊維フィラーが塗布面に平行な方向に近い方向に配向する。従って、前記樹脂組成物中の樹脂マトリックスとフィラーとが、球状粒子又は繊維状フィラーのみを用いる場合よりも強力に相互作用すると共に、非球状粒子フィラー及び強化繊維フィラーが伸長する力に抗する応力を生じ、硬化した樹脂組成物全体として塗布面に平行な引張力に抗する弾性及び応力を生じる。このため、前記エポキシ樹脂組成物には、塗布面に平行な引張力に対する極めて大きい強度が生じる。その結果、本発明のエポキシ樹脂組成物は、鋼構造物の表面に亀裂を覆って塗布される等、亀裂進展方向への鋼構造物の変形を抑制する態様で塗布されることにより、亀裂進展を抑制することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、亀裂が進展する方向への鋼構造物の変形を抑制するために用いることにおいて、その塗布の形態又は方法に制限はない。
(A)エポキシ樹脂
本発明のエポキシ樹脂組成物には、常温硬化性を有する液状の熱硬化性樹脂が使用されるが、塗布面への接着性や硬化物の強度等の条件を勘案すると、エポキシ樹脂が好適に用いられる。
前記エポキシ樹脂は、液状であり、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。前記エポキシ樹脂は、例えば、ポリオールから得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、活性水素を複数有するアミンより得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸より得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂や、分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるポリエポキシドなどが用いられる。かかるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができるが、性能並びに経済性上、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、クレゾールノボラック型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等の2官能以上の液状エポキシ樹脂が好ましく、より好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である。ただし、これらエポキシ樹脂は単独使用に限定されるわけではなく、2種類以上の液状エポキシ樹脂を組み合せて用いても良く、固形のエポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂を組み合わせて用いても良い。その場合においても、性能並びに経済性の観点からビスフェノールA型エポキシ樹脂もしくはビスフェノールF型エポキシ樹脂を必須成分として組み合わせることが好ましい。その際、ビスフェノールA型エポキシ樹脂もしくはビスフェノールF型エポキシ樹脂の全エポキシ樹脂に対する割合は30〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは50〜90質量%、更に好ましくは65〜85質量%である。
なお、単独で用いる場合の液状エポキシ樹脂もしくは、複数のエポキシ樹脂を組み合わせて使用する場合の混合物の粘度は25℃で0.01〜50Pa・sの範囲にあることが望ましく、より好ましくは1〜25Pa・sである。粘度が0.01Pa・s以下であると、エポキシ樹脂組成物としたときに塗工時に垂れやすくなるほか、必要な強度が得られない等の問題がある。また、粘度が50Pa・s以上であるとフィラーの混練がし難くなるほか、エポキシ樹脂組成物の粘度が高すぎて塗工が出来なくなる問題が起きる。
なお、本発明の実施例に係るエポキシ樹脂組成物の粘度の測定は、JIS K 7233 エポキシ樹脂及び硬化剤の粘度試験方法に準じて行うことができる。
(B)アミン系硬化剤
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用される硬化剤は、常温でエポキシ樹脂を硬化することが可能であるものであれば酸無水物系やアミン系等、特に制限されないが、作業現場での可使時間や使用環境等を考慮するとアミン系硬化剤が好ましい。
アミン系硬化剤に用いるアミン化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミン化合物(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等)、芳香環を有する脂肪族ポリアミン化合物(例えば、キシリレンジアミン等)、脂環式ポリアミン化合物(例えば、メンセンジアミン等)、芳香族ポリアミン化合物(例えば、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等)、その他ポリエーテル骨格のポリアミノ化合物(例えば、ノルボルナン骨格のポリアミノ化合物等)等が挙げられる。これらはそのまま使用しても良いし、カルボキシル基を有する化合物との反応によるアミド変性、エポキシ化合物との付加反応によるアダクト変性、ホルムアルデヒドとフェノール類との反応によるマンニッヒ変性等の変性を行った後に使用しても良い。
アミン系硬化剤は上記アミン化合物を単独で使用しても良いし、複数を組み合せて用いても良い。更に、作業現場の環境や可使時間を調整するために、硬化促進剤を添加しても良い。
硬化促進剤とは、エポキシ樹脂中のグリシジル基とアミノ基との反応を促進させるものであり、各種芳香族カルボン酸類(例えば、安息香酸、サリチル酸、トリヒドロキシ安息香酸、フタル酸、ケイ皮酸、ベンゼンヘキサカルボン酸等)やアミン類(例えば、ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン(BDMA),2(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−10)、2,4,6−(トリスジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の第三級アミン、ヒドロキシルアミン、フェノキシアミン等のヒドロキシルアミン類、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4(5)−メチルイミダゾール、2−エチル−4メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類等)、フェノール類(例えば、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、4−ターシャリーブチルフェノール、4−セカンダリーブチルフェノール、2−ターシャリ−ブチルフェノール、2−セカンダリーブチルフェノール、4−オクチルフェノール、4−ターシャリー・ブチルカテコール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、カルダノール等)およびその変性物等が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、特に粘度が0.01〜20Pa・sの範囲にある液状の脂肪族ポリアミンおよびその変性物が、容易な混合と常温での短時間硬化が可能なため、好適に用いることができる。また、硬化剤の配合比について特に制限はないが、主剤となるエポキシ樹脂の当量100部に対して、硬化剤の割合が20〜100部になるようなアミン価を有するものが好ましい。
(C)強化充填材
塗工型で且つ、亀裂進展を抑制するに充分な引張弾性率を得るためには、樹脂組成物への強化充填剤の配合が必須である。本発明者は、常温硬化型の熱硬化樹脂に対して強化充填剤として強化繊維フィラーと非繊維状無機フィラーの併用し、効果的な亀裂進展抑制効果を発現する強化繊維フィラーと非繊維状無機フィラーの配合比率を見出した。これらのフィラーの配合比率は、得られる樹脂組成物の粘度を高めるため、単に配合後の樹脂組成物の強化効果が得られるだけではなく、塗工時のダレ防止などの施工面でのメリットを得ることも可能とする。
(C−1)非球状粒子フィラー
本発明に係る非球状粒子フィラーとは、長径が1mm未満のミルドファイバーや、棒状もしくは針状フィラー、破砕形状などの無定形フィラー、平板もしくは鱗片状をした無機フィラーであって、例えば、炭素繊維のミルドファイバーやワラストナイト、ピッチコークスや黒鉛、アルミナ、シリカなどの粉砕物、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー等の天然物やセラミックスのような人工物等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
非球状粒子フィラーのなかでも、特に、平板もしくは鱗片状の無機フィラーは、形状の異方性が強いため、塗布時に塗工面に対してフィラーが平行に配向しやすく、亀裂進展抑制樹脂組成物としての本発明のエポキシ樹脂組成物に必要とする引張弾性率等の力学特性を発現しやすいのでより好ましい。前記平板もしくは鱗片状フィラーは、タルクやマイカ、窒化ホウ素、板状アルミナ、板状シリカ等が例示されるが、本発明に係る非球状粒子フィラーとしては、更に好ましくは、鱗片状を有し、それ自身の弾性率も高く、且つ炭素系元素で構成される樹脂組成物との相溶性に優れるピッチコークス粉砕品である。
特に、石炭系タールを原料とする針状結晶性を有するピッチコークス粉砕品は、粉砕粒子の強度や弾性率が高く、且つその組成のほとんどが炭素であるため、他の無機系フィラーの場合と異なり相溶化剤等を用いなくとも強度や弾性率の発現を得ることができ、また粉砕時に容易に鱗片状になるために、本発明に係る非球状粒子フィラーとして最も好ましい非球状粒子フィラーである。
本発明のエポキシ樹脂組成物に含有させて用いる非球状粒子フィラーの平均粒子径に関して特に制限はないが、平均粒子径が1〜80μmの範囲であると良い。好ましくは、1〜50μm、より好ましくは、1〜30μmで、より更に好ましくは、平均粒子径5〜20μmである。
平均粒子径が1μmより小さな非球状粒子フィラーは熱硬化型樹脂混合物との混合時に著しく粘度を高めてしまうため、塗工が困難となり好ましくない。また、平均粒子径が80μmより大きな非球状粒子フィラーは熱硬化型樹脂混合物の強度が得られず、好ましくない。
なお、本発明における非球状粒子フィラーの平均粒径とは、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置によって測定された非球状粒子フィラーのメジアン径(D50)である。
(C−2)強化繊維フィラー
本発明に係る強化繊維フィラーとは、繊維長が1mm以上の短繊維であり、炭素繊維、ガラス繊維、ロックウールファイバー、バサルト繊維、SiCやアルミナ等のセラミックス繊維等の無機繊維、アラミドやナイロン等のポリマー、セルロース等から構成される有機繊維を単独、もしくは、これらを混合物として用いることができる。前記強化繊維フィラーの中でも炭素繊維及びガラス繊維、アラミド繊維又はこれらの混合物は、製造時のハンドリングの面でより好ましく使用される。
また、本発明に係る強化繊維フィラーとして、引張弾性率の発現性上、3mm以上の長さを有し、且つ1本あたりの繊維直径が30μm未満の炭素繊維、アラミド繊維のチョップドストランド繊維を用いることがさらに好ましい。なお、本発明に係る強化繊維フィラーを限定するものではないが、前記繊維状フィラー表面はマトリックス材料との親和性を向上させる表面処理、例えばエポキシ系樹脂サイジング等によるサイジング処理やシランカップリング剤等による表面処理が施されたものが好ましい。
〔フィラー配合量〕
本発明のエポキシ樹脂組成物には、非球状粒子フィラーと繊維状フィラーの合計量が、全組成物中25〜60質量%となる量のフィラーが配合される。前記フィラーの合計量は、好ましくは、30〜55質量%である。配合されるフィラーの合計量が25質量%よりも少なくなると、補強効果を得るための引張弾性率が得られず、逆に、配合される合計量が60質量%よりも多くなると、樹脂組成物内に発生する空隙が多くなるため、エポキシ樹脂組成物自身の強度の低下が生じてしまう。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、常温硬化型の熱硬化性樹脂に配合される強化繊維フィラーと非球状粒子フィラーの配合比を、下式(I)で1〜10、より好ましくは2〜8となるようにする。配合比が1未満であると、補強効果を得るために十分な引張弾性率が得られず、10を超えると補強効果を得るために十分な引張弾性率だけでなく、引張強度も得られなくなってしまう。
非球状粒子フィラーの配合量/強化繊維フィラーの配合量・・・式(I)
本発明では、熱硬化性樹脂と繊維状フィラー及び/又は非球状粒子フィラーとの配合比は、熱硬化性樹脂100部に対して、繊維状フィラーが3〜30重量部、非球状粒子フィラーが10〜120重量部であることが好ましく、より好ましくは、繊維状フィラーが5〜20重量部、非球状粒子フィラーが20〜100重量部であることが好ましい。
繊維状フィラー及び非球状粒子フィラーの配合量が本発明の範囲内であれば施工上の問題や得られる弾性率や強度等の力学物性には問題は生じないが、前記配合比率に設計することより亀裂進展抑制効果を高めることが可能となる。
〔亀裂進展抑制樹脂組成物としての実施形態〕
本発明のエポキシ樹脂組成物に係る実施形態のうちの一つとして、チョップド型の強化繊維フィラーと非球状粒子フィラーを、常温硬化できるエポキシ樹脂組成物に混合することによって、接着剤等を用いることなく、現場で簡単に垂直部への塗工を可能とし、且つ鋼構造物に発生した亀裂の進展を抑制する引張弾性率を発現できるエポキシ樹脂組成物を実現した。
以下、その実施形態について具体的に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲内で、反応性希釈剤や密着改善剤が添加されていることが好ましい。また、マトリックス樹脂に用いる熱硬化性樹脂以外の熱硬化性樹脂や無機フィラー、有機フィラーの併用混合、揺変剤、紫外線防止剤、熱劣化防止剤、酸化防止剤、流動調整剤、染料等の添加剤を併用混合しても良い。
(D)反応性希釈剤
反応性希釈剤とは、低分子量のエポキシ樹脂であり、粘度が1Pa・s以下であることが特徴の低粘性のエポキシ樹脂である。これを用いることにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の物性を低下させることなく粘度調整を行うことができることから、好ましく使用される。
これら反応性希釈剤は、例えば、YED111N、YED122、YED216(いずれも三菱化学社製)、ネオトートS、YH−300、PG−207GS、ZX−1658(いずれも新日鉄住金化学社製)、BGE−C、BEG−R、SY−25L、SY−35M、SY−40M、PGE、SY−OCG、m,p−CGE、SY−OPG、SR−NPG、SR−14BL、SR−14BJ、SR−16H、SR−16HL、SR−16HJ、SR−TMP、SR−TMPL、SRB−301、SR−PG、SR−TPG、SR−4PG、SR−PTMG、SR−CF2、SR−HHPA、SR−2EGS、SR−8EGS、SR−GLG、SR−DGE(いずれも阪本薬品工業社製)、Epodil741、Epodil749、Epodil757(いずれもAir Products社製)等が例示されるが、これらに限られるものではない。
なお、反応性希釈剤を使用する場合の添加量は、本発明のエポキシ樹脂組成物100重量部に対し20重量部以下であり、好ましくは2.0〜20.0重量部である。反応性希釈剤の添加量が上記範囲内であれば、樹脂組成物の機械物性が低下して亀裂進展抑制効果を損なうような恐れはない。
(E)密着改善剤
密着改善剤は、強化充填材とマトリックス樹脂や、樹脂組成物と塗工面との界面における接着性を向上させるためのものであって、ポリマーカップリング剤(例えばBYK社製、BYK−4510等)やシランカップリング剤等が挙げられる。本発明においては取り扱いの容易さなど面からシランカップリング剤が密着改善剤として好ましく、グリシジルシラン系やイミダゾールシラン系のシランカップリング剤の接着力向上効果が大きいことからこれらの使用がより好ましい。
なお、密着改善剤としてシランカップリング剤を添加する場合、その添加量は本発明のエポキシ樹脂組成物100重量部に対して0.1〜5.0重量部、好ましくは0.3〜2.0重量部が適する。シランカップリング剤の添加量を上記範囲内とすることにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の粘度を必要以上に低下させることなく強化充填材や被塗工面との接着力を向上させることができる。
密着改善剤は、上記シランカップリング剤だけでなく、接着強度を改善し、亀裂進展抑制樹脂組成物の硬化後の物性を阻害しないものであれば、特に制限はない。
密着改善剤は、例えば、プライマーとして塗布された時に、接着強度を向上する成分を含む剤であっても良い。密着改善剤が亀裂進展抑制樹脂組成物中に含有されることで、接着面にも密着改善剤が存在することになり、接着強度が改善され得る。
好ましくは、鋼材の表面の金属原子又は金属酸化物と相互作用し、金属表面に配位するものが好ましい。具体的には、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、樹脂モノマーと硬化剤があらかじめ配合されている1液型の樹脂組成物でも良いが、熱硬化性樹脂(主剤)と硬化剤が別々に提供され、作業者が作業直前に両者を混合する二液型の樹脂組成物であることが好ましい。二液型とすることによって、反応性の高い硬化剤を用いることができ、現場での短時間の施工が可能となる他、主剤と硬化剤を別々に保管するため、保管条件に特に制限なく長期保管でき、必要に応じて速やかに施工を行うことができる。
また、本発明ではエポキシ樹脂組成物の力学物性を損なわない範囲内で、マトリックス樹脂に用いる熱硬化性樹脂以外の熱硬化性樹脂や無機フィラー、有機フィラーの併用混合、粘度調整のための反応性希釈剤、フィラーの沈降を抑制するための揺変剤、分散性や接着性向上のためのシランカップリング剤、紫外線防止剤、熱劣化防止剤、酸化防止剤、流動調整剤、染料や顔料等の色材等の添加剤を併用混合しても良い。
〔製造方法〕
本発明を限定するものではないが、本発明のエポキシ樹脂組成物の製造においては、一般のヘリカルミキサーやヘンシェルミキサー、ダルトン型ミキサー、遠心分離ミキサー等の混合機を使用することが好ましい。これらの混合において減圧すると、混合物に内包される気泡が除去できるため、より好ましい。
また、本発明を限定するものではないが、本発明のエポキシ樹脂組成物は、野外の施工現場での塗工作業性の簡便さより、樹脂と硬化剤は塗工作業直前に混合することが好ましい。例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物は、主剤樹脂ワニス又は硬化剤へ繊維状及び粒子状フィラーを事前に混合した混合物を準備し、塗工作業直前にその混合物に必要量の主剤樹脂ワニス又は硬化剤を添加混合して用い方法がある。なお、その際、事前に準備する混合物は、第1液としての主剤又は第2液としての硬化剤の一方または両方に繊維状フィラーと粒子状フィラーとを混合したものでもよく、第1液又は第2液の一方に繊維状フィラー又は粒子状フィラーのどちらか一方を混合し、且つ他方の液に繊維状フィラー又は粒子状フィラーのの他方を混合したものを準備する方法でもよい。より好ましくは、主剤及び硬化剤の両方に非球状粒子フィラーを混合しておき、両者を施工現場で混合した後、繊維状フィラーを添加/混合し、使用する方法を用いることで、混練時の繊維状フィラーの欠損を最小限に塗止めることが出来るため、本組成物の効果を高めることが出来る。
施工時の簡便性を考えれば、2液の混合にはハンディータイプのミキサー、ノズルからの吐出時に混合されるスタティックミキサー等を用いるほか、手作業で混合する方法が適するが、このとき、2液のうちの主剤の粘度が5〜5000、硬化剤の粘度が0.2〜200Pa・sの範囲にあり、主剤の硬化剤に対する粘度比(粘度(主剤)/粘度(硬化剤))が1〜500であることが適しており、さらに主剤が20〜500、硬化剤が0.5〜50、主剤の硬化剤に対する粘度比が20〜200であることが好ましい。このように、2液の粘度が所定範囲内であることによって、施工現場で実際に混合操作を行っても配合むらが生じにくく、かつ施工後には充分な亀裂進展抑制効果を発揮する樹脂組成物を得ることができる。
施工現場での主剤/硬化剤の混合方法については特に制限するものではないが、ドラム缶装着型の混合機や、ハンディタイプの混合機で混合する方法が、簡便で、施工時の作業負担が少ないという観点から好ましい。ドラム缶装着型の混合機の例としては、清健製マゼール等が、ハンディタイプの混合機の例としては、ハンディタイプの大塚刷毛製マザール等が挙げられる。ただし、繊維状フィラーを配合以降の混合操作は、混合機を使用せず手作業で行うことが望ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物を限定するものではないが、主剤樹脂ワニスと硬化剤を混合した混合物については、粘度が25℃で10〜1000Pa・sであり、より好ましくは、粘度が25℃で40〜400Pa・sであることが、壁や天井等での塗工を簡便なものにするために好ましい。このため、塗工時の垂れ防止やハンドリング性の点で、混合直後の粘度が25℃で80〜400Pa・sであることが好ましく、120〜400Pa・sであることがより好ましく、200〜400Pa・sであることが更にさらに好ましい。
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記混合物は、1000Pa・sよりも高粘度で、流動性を有さず粘度が測定できないものであっても良い。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及びフィラーを含有する樹脂組成物であるという性質上、チキソトロピー性(揺変性)を有する場合がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物を限定するものではないが、建築補修用エポキシ樹脂樹脂の規格JIS A 6024:2008における中粘度形のチキソトロピー性(揺変性)のチキソトロピックインデックスが、5±1となっていることから、本発明のエポキシ樹脂組成物は、同規格における測定において、4以上、好ましくは5以上のチキソトロピックインデックスを示すものであっても良い。チキソトロピックインデックスが前記範囲であることで、本発明のエポキシ樹脂組成物は、塗工時に塗布した前記樹脂組成物が型崩れしにくく、塗工・成形が容易になる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化時間は施工作業上、10分〜5時間程度であることが好ましく、30分〜3時間程度であることがより好ましい。また、良好な硬化状態の容易な確認方法として、主剤樹脂ワニスと硬化剤を混合した直後の混合物を水平面に対して20mmの厚さに塗工した後、2時間後の厚さの変化が2mm以内で硬化していることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物を限定するものではないが、本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば一般構造材圧延鋼材SS400との接着性を示す引張せん断強度が1MPa以上であることが好ましい。これ未満の引張せん断強度であっても特に著しい支障を生ずるものではないが、塗工後のはく離が生じ難い方が長期耐久性などの面で優れる場合がある。
〔塗工方法〕
本発明のエポキシ樹脂組成物の塗工方法は、粘度が25℃で10〜1000Pa・sである材料を塗布することができる方法であれば特に制限はなく、一般に用いられている方法を用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、構造物の亀裂箇所に、亀裂を覆うか、又は、亀裂を横断して塗布され、硬化することにより、亀裂進展抑制効果を生じる。
塗布する厚さは、塗工が可能であり、硬化後に十分な強度が保たれる限りにおいて、特に制限がない。本発明のエポキシ樹脂組成物を、構造物の亀裂箇所に1mm以上、好ましくは20mm以上の厚さで塗布することにより、構造物の亀裂進展を抑制する効果が高いものとなる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物を塗布する厚さを構造物の素材に応じて変化させ、硬化後の樹脂組成物の断面積及び形状、接着面の面積を変化させることにより、異なる形状・種類の素材の亀裂進展抑制を行うことができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、亀裂を有する構造物の素材の表面において、亀裂の全部若しくは一部を覆って厚さ1mm以上で硬化するように塗工される。このように塗工されることにより、本発明のエポキシ樹脂組成物は、亀裂が進展する力に抗するための応力を生じることができ、亀裂進展抑制効果を生じる。
硬化方法は、常温硬化が可能であるが、必要に応じて加熱する等、一般的に用いられる方法を用いることができる。
なお、補修材の塗布に際しては密着性を向上させるために別途プライマーを使用してもよい。プライマーの種類は補修を行う鋼構造体の材質や補修材の樹脂種に応じて適宜選択されるが、例えばエポキシ樹脂系や、シランカップリング剤系のプライマーが好ましく挙げられる。
以下、本発明の実施例に係るエポキシ樹脂組成物について実施例と比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
〔機械物性(引張曲げ、引張弾性率)の測定〕
本発明の実施例に係るエポキシ樹脂組成物の引張曲げ強度及び引張弾性率の測定は、JIS K 7162/1B プラスチック引張特性の試験方法に準じて行った。
〔せん断接着強度の測定〕
本発明の実施例に係るエポキシ樹脂組成物と一般構造用圧延用鋼材SS400との引張せん断強度による接着強度の評価測定は、JIS K 6850 接着剤−剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法に準じて行った。
〔亀裂進展抑制効果の評価〕
中心部に、長さlmmの亀裂が生じた、巾Lmm、長さHmm、厚みtmmのSS400鋼材に対して、巾Lmm、長さ2×hmm、厚み2×tmmの補強塗工を行った塗工修復モデルを作製し(図1)、各材料の引張強度及び引張弾性率、せん断強度の実測値を用いてシミュレーション及び測定を行い、下記条件1〜条件3を満たすものを、亀裂進展抑制効果を有するものとした。下記条件1〜条件3を満たすものであれば、実用上、鋼構造物に発生した亀裂の進展を抑制することができる。
(条件1)
下記参考文献1及び2を参考に、式1の算出値が0.5〜3の範囲に収まる。
(式1)
[(L−l)×SS400の引張弾性率×t]
/[L×塗工材料の引張弾性率×2t]
(条件2)
変形歪み0.1%時の塗工材料に発生する内部応力(=「引張弾性率」×0.001)
が塗工材料の引張強度以下である。
(条件3)
塗工材料と鋼材の界面の接着強度が、変形歪み0.1%時の塗工材料に発生する内部応力(=「引張弾性率」×0.001)以上である。
参考文献1 "Bonded repair of aircraft structures", edited by A.A. Baker and R. Jones
(Engineering application of fracture mechanics, 7) M. Nijhoff , Distributors for the United States and Canada, Kluwer Academic, 1988
参考文献2 M.Sato et al., Adv. Comp. Mater., Vol.11, No.1, p51−59(2002).
〔塗工後塗工物の実施工性の評価〕
垂直に立てかけたSS400製の鋼材板の中心にエポキシ樹脂組成物を塗工し、24時間後の塗工物の下方向へのダレ量を実際に測定することにより評価を行った。
補強塗工の長さの基準となるhは、例えば100mmのものを用いて測定を行った。
〔非球状粒子フィラーの粒子径測定〕
本発明に係る非球状粒子フィラーの粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定計(マイクロトラックMT3300EX 日機装社製)により体積基準粒子径の測定を行い、メジアン径(D50)を平均粒子径として求めた。
〔粘度測定〕
配合例における配合物の25℃の粘度は、東機産業(株)製B型粘度計、TVB−10を用いて測定した。
[配合例1−1〜5、2−1〜4]
各原料を表1〜2に記載の重量部量り、(株)シンキー製自転公転ミキサー、あわとり練太郎 ARV−310を用いて混合し、その粘度を測定した。表1が第1液、表2が第2液の配合を表す。
Figure 2018104542

*1 YD128 ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(新日鉄住金化学製)
*2 YDF170 ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(新日鉄住金化学製)
*3 PC粉A 粉砕ピッチコークス、平均粒径(D50) 約20μm
*4 K1 微粉タルク(平均粒径約8μm、日本タルク製、ミクロエースK1)
*5 SR−NPG ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業製)
*6 A187 g−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ製)
Figure 2018104542

*7 FXD821F 脂肪族ポリアミン系硬化剤(T&K TOKA製)
*8 PC粉A 粉砕ピッチコークス、平均粒径(D50) 約20μm
*9 K1 微粉タルク(平均粒径約8μm、日本タルク製、ミクロエースK1)
[実施例1〜5、比較例1〜5]
表3に記載の割合で、配合例1−1〜5/YD128/配合例2−1〜4/FXD821F/強化繊維フィラーを量り取り、手作業で均一になるまで混合することで実施例1〜5、比較例1〜3のエポキシ樹脂組成物を得た。本組成物を用い、各種物性評価を行った。その評価結果及び硬化物組成を表3に示す。
〔引張試験〕
引張試験用の試験片は、エポキシ樹脂組成物をトレーの上で平板上に伸ばして、そのまま常温下で1週間放置して硬化した平板から切削加工にて作製しており、残留応力等の影響を排除して物性試験を行うべく、硬化した平板をそのままの25℃の条件下で約一晩放置して平準化を行った。
〔せん断接着強度〕
せん断接着強度測定試験片は、エポキシ樹脂組成物を厚さ0.75mmで50mmの長さで塗工した一般構造用圧延鋼材SS400(幅32mm×長さ100mm×厚さ3mm)を2枚重ねとすることにより接着し、引張試験用の平板同様にそのまま25℃の条件下で1週間放置することにより試験片を作製した。
・亀裂進展抑制効果
亀裂進展抑制効果については、硬化後の樹脂組成物が、引張強度が、30MPa以上、引張弾性率が、5GPa以上、せん断接着強度が、1MPa以上を全て満たす場合を亀裂進展抑制効果:有(○)、これらの何れかの値が満たないものを、亀裂進展抑制効果:無(×)とした。
〔施工性〕
施工性については、エポキシ樹脂組成物を巾10mm、長さ500mmのSS400製鋼材片の中央部に上下長さ方向100mm、塗工厚み20mmの仕様にて塗工し、塗工後24時間経過時の塗工物のダレ量が20mm以内であれば○、20mm以上で×とした。
Figure 2018104542

*10 XN−80C−06S 6mmチョップド炭素繊維(日本グラファイトファイバー製)
表3の結果より、本発明のエポキシ樹脂組成物は実施工性が良好であり、亀裂進展抑制効果も得られているが、比較例の樹脂組成物では塗工物の実施工性に何らかの問題があるうえに亀裂進展抑制効果も得られていない。これより、本発明の効果は明瞭である。
本発明は、鋼建築構造物等の補修等の建築・建設分野で用いることができる。

Claims (8)

  1. フィラーを含有するエポキシ樹脂組成物であって、
    (A)エポキシ樹脂としてビスフェノールA型および/またはビスフェノールF型液状
    エポキシ樹脂
    (B)アミン系硬化剤
    (C)強化充填剤
    を含み、前記(C)強化充填剤が、(C−1)非球状粒子フィラーと(C−2)強化繊維フィラーの2種を含み、且つ、前記(C)強化充填剤が前記エポキシ樹脂組成物中25〜60質量%含有され、鋼構造物の亀裂箇所に塗布され硬化することで前記鋼構造物を補修することを特徴とする前記エポキシ樹脂組成物。
  2. (C)強化充填剤中の(C−1)非球状粒子フィラーと(C−2)強化繊維フィラーとが式(I)の割合で配合されている請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
    (C−1)非球状粒子フィラーの配合量/
    (C−2)繊維状フィラーの配合量=1〜10 ・・・式(I)
  3. 2液硬化型エポキシ樹脂組成物であって、第1液がエポキシ樹脂(A)と強化充填剤(C)の一部をと含み粘度が5〜5000Pa・sであり、第2液が(B)アミン系硬化剤と残り全部の(C)強化充填剤とを含む粘度が0.2〜200Pa・sであり、第1液と第2液の粘度比(粘度(1液)/粘度(2液))が1〜500である請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 更に(D)反応性希釈剤が全組成物中に2.0〜20.0質量%含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の常温硬化性を有するエポキシ樹脂組成物。
  5. 更に、(E)密着改善剤またはカップリング剤を全組成物中0.1〜5.0質量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. (C−1)非球状粒子フィラーが平板状または鱗片状の無機フィラーであり、
    (C−2)強化繊維フィラーが繊維長3mm以上の炭素繊維またはガラス繊維、バサルト繊維、SiC等のセラミック繊維や、アラミドやセルロース繊維などの有機繊維から選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の常温硬化性を有するエポキシ樹脂組成物。
  7. 補修を行う構造物がコンクリート構造物もしくは鋼構造物である請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  8. 構造物に生じた亀裂の全部又は一部を覆って厚さ1mm以上の塗膜を形成し、硬化した請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
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