JP2004263048A - 浸透型接着剤および鋼構造物の補修方法 - Google Patents
浸透型接着剤および鋼構造物の補修方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004263048A JP2004263048A JP2003053715A JP2003053715A JP2004263048A JP 2004263048 A JP2004263048 A JP 2004263048A JP 2003053715 A JP2003053715 A JP 2003053715A JP 2003053715 A JP2003053715 A JP 2003053715A JP 2004263048 A JP2004263048 A JP 2004263048A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- adhesive
- weight
- epoxy resin
- modified
- agent
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【解決手段】エポキシ樹脂を主成分とする主剤と硬化剤とを3:1の重量比割合で混合する2液型接着剤であり、前記主剤は、少なくともビフェノールA型エポキシ樹脂と、変性ウレタンエポキシ樹脂と、キレートカップリング剤と、ポリエポキシ系反応性希釈剤とからなり、前記硬化剤は、少なくとも変性脂肪族アミンと、変性ポリアミドアミンアダクトとからなる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ樹脂を主剤とする浸透型接着剤および該接着剤を使用した鋼構造物における疲労損傷または亀裂等の補修方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、エポキシ樹脂を用いた接着剤で、例えば、金属が接着できる接着剤は公知になっている。この公知の接着剤は、5℃以下での使用もできる低温硬化性であって、エポキシ樹脂と、3官能アクリルオリゴマーと、エポキシ樹脂用硬化剤とからなるものである。そして、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテルを用いるのが好ましいとしている。
【0003】
また、3官能アクリルオリゴマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリメチロールプロバントリアクリレート、トリメチロールプロバンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロバンPO変性トリアクリレートを用いるのが好ましいとしている。
【0004】
更に、エポキシ樹脂用硬化剤としては公知のものを用いることができるとし、アミン系硬化剤、酸または酸無水物系硬化剤、塩基性活性水素化合物、イミダゾール類、ポリメルカブタン系硬化剤、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート系硬化剤を挙げている(特許文献1参照)。
【0005】
また、鋼構造物である鋼橋の亀裂を補修するものとして、鋼橋のソールプレートすみ肉溶接部からの亀裂の補修・補強構造が公知になっている。この補修・補強構造は、主桁のフランジのソールプレートのすみ肉溶接部と反対側に、主桁のフランジと平行に延びる補強板を当て、該補強板にフランジの反対側から押さえ材を当て、補強板を主桁のフランジと押さえ材とで挟んで高力ボルトで締め付けて補修・補強したものである。
【0006】
そして、このような補修・補強手段に加えて、鋼橋に発生した疲労亀裂の先端にドリルで孔を開けて、亀裂先端の高い応力集中を緩和するストップホールと称される工法が併用されている(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−275242(2〜5頁)
【特許文献2】
特開2000−288726(2〜4頁、図1、図6)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公知の接着剤においては、鋼板を補強箇所の表面に貼り付けることができるという程度のものでしかなく、特に、コンクリート構造物の補修・補強用接着剤として好適である旨説明され、5℃以下の低温下でも低粘度で使用しやすく、硬化速度に優れるとしているが、鋼材における疲労亀裂などの極めて狭い隙間への浸透性と接着強度、即ち補強強度等については全く言及されていないのである。
【0009】
また、上記の鋼橋の亀裂を補修する公知技術においては、補強板と押さえ材とを使用し、これらで亀裂部分を両側から挟んで高力ボルトで締め付けることによって補強を行うことが基本的な技術であり、ボルト止めするための孔を多数個明けなければならず、作業性が悪いという問題点を有している。
【0010】
更に、亀裂部分に対しては、亀裂の先端にストップホールを形成する対策がなされているが、そのストップホールの効果は、その位置や大きさによって大きく変わるため、円孔から再度亀裂が発生することがあったり、ドリルを用いて孔を明けるため、複数の部材が複雑に組み合わさった部分での疲労亀裂に対しては施工が非常に困難であった。
【0011】
従って、従来技術においては、鋼材の疲労亀裂のような狭い隙間に速やかに浸透し、且つ所要の弾性率を持って固化して簡単に補修ができるような浸透型接着剤の開発と、鋼構造物のどのような箇所に疲労亀裂が生じても、施工が簡単で安全且つ強固に補修することができる補修方法の開発とに、解決課題を有する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決する具体的手段として本発明に係る第1の発明は、エポキシ樹脂を主成分とする主剤と硬化剤とを3:1の重量比割合で混合する2液型接着剤であり、前記主剤は、少なくともビフェノールA型、ビフェノールF型、ビフェノールAD型エポキシ樹脂と、可撓性エポキシ樹脂と、接着促進剤と、反応性希釈剤とからなり、前記硬化剤は、少なくとも変性脂肪族アミンと、変性ポリアミド、変性ポリアミドアミンとからなることを特徴とする浸透型接着剤を提供するものである。
【0013】
この第1の発明において、前記主剤には、更に、チクソ性付与剤、高分子量ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリアクリル酸のいずれか一種または二種以上が含まれ、前記硬化剤には、接着促進剤が含まれることを付加的な要件として含むものである。
【0014】
更に、第1の発明は、主剤成分において、ビフェノールA型、ビフェノールF型、ビフェノールAD型エポキシ樹脂の一種又は二種以上の合計が20〜80重量%、可撓性エポキシ樹脂が20〜80重量%、接着促進剤が1〜5重量%、反応性希釈剤が5〜40重量%、チクソ性付与剤が1〜3重量%、高分子量ポリカルボン酸アルキルアミン塩が0.5〜2重量%、ポリアクリル酸が0.5〜2重量%の割合で混合され、硬化剤成分において、変性脂肪族アミンが20〜80重量%、変性ポリアミド、変性ポリアミドアミンが20〜80重量%、接着促進剤が1〜3重量%の割合で混合されていること及び粘度が100〜1000mPa・s20℃、チクソ係数が1.1〜5、熱変形温度が50℃以上であることを付加的な要件として含むものである。
【0015】
本発明に係る第2の発明として、エポキシ樹脂を主成分とする2液型接着剤を使用するものであって、前記主剤は、少なくともビフェノールA型、ビフェノールF型、ビフェノールAD型エポキシ樹脂と、可撓性エポキシ樹脂と、接着促進剤と、反応性希釈剤とからなり、前記硬化剤は、少なくとも変性脂肪族アミンと変性ポリアミド、変性ポリアミドアミンとからなる浸透型接着剤を鋼構造物の表面に塗布または注入して疲労亀裂に浸透させて固着させそれによって疲労亀裂の進展を抑制させることを特徴とする鋼構造物の補修方法を提供するものである。
【0016】
第1の発明に係る浸透型接着剤は、エポキシ樹脂に対して、接着促進剤を配合したことによって、樹脂の接着強度が向上し、更に反応性希釈剤とを配合したことによって、粘度を下げて浸透性を向上させて、狭い隙間でも浸透できるようにしたものである。また、前記硬化剤として、変性脂肪族アミンと変性ポリアミド、変性ポリアミドアミンの一種または二種以上とを配合したことによって、高い圧縮強度と熱変形温度の接着剤を得ることができると共に、エポキシ樹脂と結合して強靭性を得ることができるのである。
【0017】
また、第2の発明に係る鋼構造物の補修方法は、鋼構造物に発生した疲労亀裂部位に浸透型接着剤を塗布または注入することによって、接着剤が疲労亀裂の先端部まで浸透して固着し、疲労亀裂の進展を抑制することができるのであり、接着剤を塗布または注入するという簡単な工法でありながら、補修の効果は極めて高いのである。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る浸透型接着剤および鋼構造物の補修方法の実施の形態について説明する。はじめに浸透型接着剤について説明し、その後に浸透型接着剤を使用した鋼構造物の補修方法について説明する。
【0019】
本発明に係る浸透型接着剤は、エポキシ樹脂を主成分とする主剤と硬化剤とを3:1の重量比割合で混合する2液型接着剤である。そして、前記主剤は、基本的にはビフェノールA型、ビフェノールF型、ビフェノールAD型の一種または二種以上のエポキシ樹脂と、可撓性エポキシ樹脂と、接着促進剤と、反応性希釈剤との混合物からなり、前記硬化剤は、変性脂肪族アミンと、変性ポリアミド、変性ポリアミドアミンとの混合物からなるものである。
【0020】
この場合に、主剤を構成する成分において、概ねビフェノールA型、ビフェノールF型、ビフェノールAD型の一種または二種以上のエポキシ樹脂が20〜80重量%、可撓性エポキシ樹脂が20〜80重量%、接着促進剤が0.1〜10重量%、反応性希釈剤が5〜40重量%の割合で混合されるものである。また、硬化剤を構成する成分において、変性脂肪族アミンと変性ポリアミド、変性ポリアミドアミンが20〜80重量%の割合で混合されたものである。
【0021】
エポキシ樹脂の配合割合については、ビフェノールA型、ビフェノールF型、ビフェノールAD形、エポキシ樹脂の一種又は、二種以上の合計が20〜80重量%、可撓性エポキシ樹脂が20〜80重量%の配合がより好ましいことが解った。
【0022】
接着促進剤は、接着強度を高くするために使用されるものであり、一例として、チタネート系、シラン系、アルミニウム系、ジルコニウム系、クロム系、有機リン酸系のいずれか一種または二種以上が使用できる。そして、配合量については、0.1重量%以下では、接着強度向上が不充分であり、10重量%以上を越えると過剰で他の特性低下となる。より好ましい範囲としては、0.5〜5重量%の所要量配合することによって20N/mm2の高い接着強度を有する接着剤が得られるのである。これらは一例であり接着促進剤やその添加量を限定するものではない。
【0023】
反応性希釈剤は、接着剤の粘度を下げ浸透性を向上させるものであって、モノ又はジグリシジルエーテル又はトリグリシジルエーテル系のものが好ましく、例えば、エチレングリコールモノまたはジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールモノまたはジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールモノまたはジグリシジルエーテル、1.6−ヘキサンジオールモノまたはジグリシジルエーテル、炭素数が8以上の長鎖のアルキルグリコールのモノまたはジグリシジルエーテル等のいずれか一種または二種以上が使用できる。そして、配合量については、5重量%以下であると粘度があまり下がらず浸透性が不十分であり、40重量%以上であると粘度が下がり浸透性は良くなるが、残留性が低下する懸念が生ずる。これにより物性、耐熱性が低下する。従って配合量としては10〜30重量%の範囲が好適である。このように所要量の応性希釈剤を配合することによって、粘度が100〜1000mPa・s20℃の接着剤が得られた。
更に、反応性希釈剤として使用できるものとしては、例えば、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、オレフィンオキサイド、オクチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、3−(ペンタデシル)フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、シクロヘキセンビニルモノオキサイド、ジベンテンモノオキサイド、α−ビネノキサイド、tert−カルボン酸のグリシジルエステル等のモノエポキシ化合物、低粘度のモノまたはポリエポキシ化合物、その他、フルフリルアルコールのような反応性の基を有するアルコール系の反応性希釈剤等も使用可能である。これらは一例であり、これに限定するものではなく配合量も各々の構造から得られる特性により決定するため最適範囲は異なる場合もある。
【0024】
主剤、硬化剤の一方又は両方に、チクソ性付与剤が0.5〜20重量%、表面張力低下剤が0.01〜5重量%、接着促進剤が0.1〜10重量%の割合で混合させる。
【0025】
前記チクソ性付与剤は、接着剤の浸透性を維持しながら、塗布時における「ダレ」を防止するために含有させるものであって、例えば、ケイ酸系(微粒子無水ケイ酸、ヒュームドシリカ)、含水ケイ素マグネシウム系(セピオライト、クリソスタイル等)、ケイ酸アルミニウム系(モンモリロナイト系ベントナイト、ゼオライト等)、合成スメクタイト、ゲルオール、高分子量エチレンオキサイド、プラスチックパウダー、木粉、籾殻微粉の一種または二種以上が使用可能である。これらは一例であり、これに限定するものでは無い。そして配合量については、0.5重量%以下であると、ダレ防止に問題があり、20重量%以上になると浸透性に問題が生ずる。従って、配合量については、1〜10重量%の範囲がより好しい。このように所要量のチクソ性付与剤を配合することにより、チクソ係数が1.1〜5.0の範囲の接着剤が得られたのである。
【0026】
表面張力低下剤は、一例としてポリカルボン酸素、ポリアクリル酸素、リン酸エステル系、シリコーン系、フッ素系、アルキルエーテル系、アルキルエステル系、アルキルアミン系、脂肪酸エステル系等があり、接着剤の浸透性を更に向上させるために、接着剤の表面張力を低下させる目的で含有させるものであり、例えば、鋼材表面における臨界表面張力と同等またはそれ以下にして、いわゆる一種の界面活性作用を付与して濡れ性を向上させ、接着剤が鋼材表面において速やかに広がって盛り上がり現象が生じない程度に表面張力を低下させることができるのである。
【0027】
硬化剤における成分として、変性脂肪族アミンを用いたことは、エポキシ樹脂と高い交差結合と密度とを得るためで、それによって、圧縮弾性率が2〜3.5GPaの高い圧縮強度と弾性率とを得ることができると共に、比較的高い熱変形温度を有する変性脂肪族アミンの使用によって、接着剤の熱変形温度を50℃以上にすることができたのである。
【0028】
一般的に上記のような変性脂肪族アミンを用いると硬化物は脆くなることが知られているが、それを改善するために、硬化剤に所要量の変性ポリアミド、変性ポリアミドアミンの一種又は二種を併用する。それによって、主剤の可撓性エポキシ樹脂との間で靭性を付与し、2.5N・mm/mm2以上の高い衝撃強度の接着剤が得られたのである。
【0029】
次に、本発明に係る鋼構造物の補修方法の実施の形態について図面を用いて説明する。まず、図1(A),(B)に示したように、鋼材として縦×横×厚さが400mm×90mm×16mmのSS400の鋼材1を試験片として2枚使用し、各試験片の中央部に直径4mmの孔2を開け、その孔2の中心を通る対向部位に、例えば、糸鋸を使用して略3mmのノッチ3をそれぞれ形成した。
【0030】
これらの試験片1を動的能力±300KNの電気油圧式疲労試験機を用いて疲労試験を行った。その試験は、繰り返し速度を7Hzとし、0〜100MPaと0〜150MPaの2種類の応力範囲について1枚づつ試験を行った。
【0031】
まず、試験片のそれぞれに100MPaと150MPaの応力を静的載荷して亀裂を発生させる。この場合に、両者を代表して、図2に150MPaの応力を載荷した試験片の亀裂の発生状況を拡大して要部のみを示す。
【0032】
この図2から明らかなように、ノッチ3の端部から複数本の疲労亀裂4が発生しており、100MPaの応力載荷の場合は、亀裂開口の幅が0.02mm程度であり、150MPaの応力載荷の場合は、亀裂開口の幅が0.04mm程度であった。
【0033】
これら試験片に対して、本発明の浸透性接着剤を使用して疲労亀裂4の進展を抑制すること、即ち、鋼構造物における疲労亀裂を補修することにつながる試験をした。
【0034】
使用された浸透性接着剤の一例として、主剤は、ビフェノールA型、ビフェノールF型、ビフェノールAD型エポキシ樹脂43重量%と、可撓性エポキシ樹脂32重量%と、シリコン系カップリング剤3重量%と、m.p.クレジルグリジルエーテル22重量%とを混合させたものであり、硬化剤は、変性脂肪族アミン55重量%と、変性ポリアミドアミン45重量%とを混合させたものであって、これら主剤と硬化剤とを3:1の重量比割合で混合させたものである。
【0035】
このときの接着剤(未硬化物)の粘度は400mPa・s20℃であり、収縮率は1.4%であった。そして、この接着剤の硬化時(7日間硬化養生した硬化物)の強度については、圧縮強度が20MPa、引張り強度が12MPa、引張りせん断強度が15MPaであった。
【0036】
このような成分の接着剤をそれぞれの試験片における疲労亀裂4の部位にロールコートした。この場合に、孔2とノッチ3も含めて一緒に連続して複数回ロールコートしたが、孔2とノッチ3には接着剤が残らず、疲労亀裂4の開口部から先端部まで接着剤が浸透していることが確認された。
【0037】
接着剤塗布後24時間静置した後に、それぞれの試験片を前記電気油圧式疲労試験機を用いて、前記の疲労亀裂を生じさせた時と同じ条件の基で疲労試験を行った。そして、各試験片について、初期亀裂発生と、亀裂進展解析の結果と、接着剤で補修後における亀裂進展の結果とをそれぞれ図3及び図4のグラフに示してある。なお、これらグラフにおいて、縦軸に亀裂の長さを示し、横軸に応力載荷の回数を示してある。
【0038】
これらの図から明らかなように、樹脂注入硬化後において応力範囲100MPaの試験片は、約50万回の応力載荷を行ったが亀裂の進展は見られず、また応力範囲150MPaの試験片は、約30万回の応力載荷を行ったが、やはり亀裂の進展は見られなかった。
【0039】
この試験結果からして、本発明に係る接着剤が鋼材の亀裂部分に対して、亀裂の先端部付近まで良く浸透すること、それによって鋼材の亀裂の進展を完全に止めることが確認されたのである。
【0040】
また、材における亀裂の幅が一部において拡がっているような場合には、その拡がっている亀裂内に接着剤が残存するように、前記成分の主剤に対して、チクソ性付与剤を1〜3重量%の範囲で含有させると共に、浸透性を更に向上させるために、表面張力低下剤0.01〜5重量%の範囲で、及びポリアクリル酸を0.5〜2重量%の範囲の割合で適宜混合させる。これは、亀裂の状態に基づいて配合比の変わったものを選択して使用すればよいのである。
【0041】
そして、鋼材の亀裂部位に接着剤を塗布または注入することによって亀裂内に接着剤が浸透することは当然であるが、チクソ性が付与されていることで、塗布または注入後に、例えば、振動発信器または木槌で軽く叩くなどして弱い振動を鋼材に与えることによって、更に、微細な亀裂の先端まで接着剤が浸透するようになるのであり、亀裂開口が広くても狭くても接着剤が亀裂部分に介在して接着固化し、亀裂の進展を抑制することができるのである。
【0042】
いずれにしても、本発明の浸透型接着剤については、種々の実験を行ったところ、浸透性が大であって鋼材に生じた亀裂部位に塗布または注入するだけで、微細な亀裂の先端まで浸透して高い弾性率を持って接着固化することから鋼材の疲労亀裂の補修に使用すれば、亀裂の進展がほとんど抑制され、簡単な手段ではあるが、鋼材の補修手段として充分機能し使用に耐えることが確認されたのである。
【0043】
なお、本発明に係る浸透型接着剤の使用について、特に、金属である鋼材における疲労亀裂の補修について説明したが、これに限定されるものではなく、その他の材料、例えば、コンクリートのひび割れ補修、ガラスまたは陶器類のひび割れ補修または破損部位の接着等にも当然のこととして使用できることはいうまでもないのである。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る浸透型接着剤は、エポキシ樹脂を主成分とする主剤と硬化剤とを混合する2液型接着剤であり、主剤は、ビフェノールA型、ビフェノールF型、ビフェノールAD型エポキシ樹脂一種または二種以上と、可撓性エポキシ樹脂と、反応性希釈剤とからなり、硬化剤は、変性脂肪族アミンと変性ポリアミド、変性ポリアミドアミンの一種または二種以上とからなるものである。チクソ性付与剤、表面張力低下剤、接着促進剤を主剤または硬化剤の一方又は両方に配合したことによって、微細なひび割れにも浸透するばかりでなく高い圧縮強度、圧縮弾性率、熱変形温度と強靭性という優れた効果が得られる。
【0045】
また、この浸透型接着剤を鋼構造物の表面に塗布または注入して疲労亀裂に浸透させて固着させ、それによって疲労亀裂の進展を抑制させる構成にしたことにより、鋼構造物に発生した疲労亀裂部位に浸透型接着剤を塗布または注入することによって、接着剤が疲労亀裂の先端部まで浸透して固着し、疲労亀裂の進展を抑制することができるのであり、接着剤を塗布または注入するという簡単な工法でありながら、補修の確実性と信頼性が極めて高いという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鋼構造物の補修方法に関連する実験を説明するための図であり、(A)は鋼板の平面図、(B)は該鋼板に形成した孔とノッチとを拡大して示した説明図である。
【図2】同実験に使用した鋼板に電気油圧式疲労試験機を用いて疲労亀裂を生じさせた状態を示す一部拡大平面図である。
【図3】同鋼板に、100MPaの応力載荷を加えて疲労亀裂を生じさせるまでと、その生じた疲労亀裂に本発明の接着剤を塗布し硬化させた後に同じ応力載荷を加えて疲労亀裂が進展するか否かを示したグラフである。
【図4】同鋼板に、150MPaの応力載荷を加えて疲労亀裂を生じさせるまでと、その生じた疲労亀裂に本発明の接着剤を塗布し硬化させた後に同じ応力載荷を加えて疲労亀裂が進展するか否かを示したグラフである。
【符号の説明】
1 試験片の鋼材
2 孔
3 ノッチ
4 疲労亀裂
Claims (5)
- エポキシ樹脂及び硬化剤からなる鋼造物補修用の二液型接着剤であり、主剤は可撓性エポキシ樹脂、反応性希釈剤を必須成分として含有する組成物及び硬化剤は変性脂肪族アミンと変性ポリアミド、変性ポリアミドアミンの少なくとも一種を必須成分として含有する組成物からなることを特徴とする浸透型エポキシ接着剤。
- 更に、チクソ性付与剤、表面張力低下剤、接着促進剤を主剤又は硬化剤の一方又は両方に含有する請求項1の浸透型エポキシ接着剤。
- 主剤成分において、ビフェノールA型、ビフェノールF型、ビフェノールAD型エポキシ樹脂の一種又は二種以上の合計が20〜80重量%、可撓性エポキシ樹脂が20〜80重量%、反応性希釈剤が5〜40重量%、硬化剤成分において変性脂肪族アミンが20〜80重量%、変性ポリアミド、変性ポリアミドアミンの一種又は二種の合計が20〜80重量%、主剤又は硬化剤の一方又は両方にチクソ性付与剤が0.5〜20重量%、表面張力低下剤が0.01〜5重量%、接着促進剤が0.1〜10重量%添加されてなる請求項1又は2記載の浸透型エポキシ接着剤。
- 粘度が100〜1000mPa・s20℃、チクソ係数が1.1〜5.0、熱変形温度が50℃以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の浸透型接着剤。
- 請求項1〜4のいずれかの浸透型接着剤を使用するものであって、該浸透型接着剤を鋼構造物の表面に塗布または注入して疲労亀裂に浸透させて固着させ、それによって疲労亀裂の進展を抑制させることを特徴とする鋼構造物の補修方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003053715A JP2004263048A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 浸透型接着剤および鋼構造物の補修方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003053715A JP2004263048A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 浸透型接着剤および鋼構造物の補修方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004263048A true JP2004263048A (ja) | 2004-09-24 |
Family
ID=33118247
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003053715A Pending JP2004263048A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 浸透型接着剤および鋼構造物の補修方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004263048A (ja) |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN100336841C (zh) * | 2005-09-14 | 2007-09-12 | 中国科学院广州化学研究所 | 一种环氧树脂增韧固化剂 |
JP2013198852A (ja) * | 2012-03-23 | 2013-10-03 | Ohbayashi Corp | セメント組成物下地の塗装方法 |
KR20150114661A (ko) * | 2014-04-02 | 2015-10-13 | 최길완 | 스포츠용 보드 데크 보수용 조성물 |
CN105062396A (zh) * | 2015-08-21 | 2015-11-18 | 卡本复合材料(天津)有限公司 | 一种双组份高强度建筑环氧结构胶及其制备方法 |
JP2018104542A (ja) * | 2016-12-26 | 2018-07-05 | 新日鉄住金化学株式会社 | エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 |
JP2018144151A (ja) * | 2017-03-03 | 2018-09-20 | 国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 | 粘性流体の亀裂内浸透方法 |
-
2003
- 2003-02-28 JP JP2003053715A patent/JP2004263048A/ja active Pending
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN100336841C (zh) * | 2005-09-14 | 2007-09-12 | 中国科学院广州化学研究所 | 一种环氧树脂增韧固化剂 |
JP2013198852A (ja) * | 2012-03-23 | 2013-10-03 | Ohbayashi Corp | セメント組成物下地の塗装方法 |
KR20150114661A (ko) * | 2014-04-02 | 2015-10-13 | 최길완 | 스포츠용 보드 데크 보수용 조성물 |
KR101672861B1 (ko) | 2014-04-02 | 2016-11-04 | 최길완 | 스포츠용 보드 데크 보수용 조성물 |
CN105062396A (zh) * | 2015-08-21 | 2015-11-18 | 卡本复合材料(天津)有限公司 | 一种双组份高强度建筑环氧结构胶及其制备方法 |
CN105062396B (zh) * | 2015-08-21 | 2017-11-17 | 卡本复合材料(天津)有限公司 | 一种双组份高强度建筑环氧结构胶及其制备方法 |
JP2018104542A (ja) * | 2016-12-26 | 2018-07-05 | 新日鉄住金化学株式会社 | エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 |
JP2018144151A (ja) * | 2017-03-03 | 2018-09-20 | 国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 | 粘性流体の亀裂内浸透方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Chen et al. | The mechanical properties and toughening mechanisms of an epoxy polymer modified with polysiloxane-based core-shell particles | |
Täljsten | Plate bonding: Strengthening of existing concrete structures with epoxy bonded plates of steel or fibre reinforced plastics | |
JP6162360B2 (ja) | 2液型液体シム組成物 | |
JP6289311B2 (ja) | 粘接着剤組成物、粘接着シート、被着体の接着方法及び複合材 | |
Cree et al. | Tensile and lap-splice shear strength properties of CFRP composites at high temperatures | |
JP2004263048A (ja) | 浸透型接着剤および鋼構造物の補修方法 | |
CN105419710B (zh) | 耐水型云石胶及其制备和使用方法 | |
Liu et al. | Bond behavior of epoxy resin–polydicyclopentadiene phase separated interpenetrating networks for adhering carbon fiber reinforced polymer to steel | |
JPH0811791B2 (ja) | プレストレストコンクリート緊張材用塗布材料 | |
JP5744158B2 (ja) | 漏油防止用シーリング材、漏油防止構造、および漏油箇所の補修方法 | |
WO2008077369A3 (de) | Verfahren zur sanierung von schadstellen in bauwerken, insbesondere rohrleitungen oder kanälen | |
Shamsuddoha et al. | Effect of hygrothermal conditioning on the mechanical and thermal properties of epoxy grouts for offshore pipeline rehabilitation | |
JP2019196583A (ja) | 橋梁の補修構造 | |
JP2000169820A (ja) | 接着剤組成物 | |
KR101308683B1 (ko) | 콘크리트 구조물 보강용 모르타르 | |
JP6952464B2 (ja) | 亀裂進展抑制樹脂組成物及びその硬化物 | |
JP2003342314A (ja) | 短繊維を配合したアクリル系硬化性組成物 | |
Azraai et al. | Characterization of mechanical properties of graphene-modified epoxy resin for pipeline repair | |
JP6816319B1 (ja) | コンクリート接着用の二液混合型接着剤およびコンクリート補強方法 | |
JP2009019354A (ja) | コンクリート構造物の補修・補強剤及びこれを用いた補修・補強方法 | |
JP6826428B2 (ja) | 構造材の補修・補強方法および補修・補強構造 | |
CN103321352B (zh) | 基于丙烯酸环氧树脂的化学锚栓胶管的制备方法及其产品 | |
CN106349647A (zh) | 无砟轨道ca砂浆层伤损修复用树脂材料及其制备方法 | |
JP2016056607A (ja) | コンクリート構造物の補修方法 | |
JP5198979B2 (ja) | コンクリート接着性エポキシ樹脂組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060213 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20090121 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Effective date: 20090121 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 |
|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20090121 |
|
A521 | Written amendment |
Effective date: 20090121 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090528 |
|
A521 | Written amendment |
Effective date: 20090721 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 |
|
A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20090811 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20091110 |
|
A911 | Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20091119 |
|
A912 | Removal of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912 Effective date: 20091211 |