JP2017001166A - 撥水性面の形成方法及びその方法を用いて形成された撥水性面を備えた撥水性物品 - Google Patents

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紀久夫 藤原
Kikuo Fujiwara
紀久夫 藤原
梅田 泰
Yasushi Umeda
泰 梅田
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Hideo Honma
英夫 本間
間瀬 恵二
Keiji Mase
恵二 間瀬
正三 石橋
Shozo Ishibashi
正三 石橋
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一成 林
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Abstract

【課題】高い撥水性を安定して実現することの出来る撥水性面の形成方法及びその方法を用いて形成された撥水性面を備えた撥水性物品を提供することを目的とする。【解決手段】基材にサンドブラスト処理を施して撥水性面を形成する方法であって、当該基材表面の垂直方向に対する噴射ノズルの軸角度を0°〜85°とし、且つ、当該噴射ノズル先端の当該基材表面からの距離を2mm〜200mmとして、平均粒径が0.3μm〜20μmの硬質砥粒を噴射圧0.02MPa〜0.6MPaで、当該基材表面に吹き付けて当該基材表面を凸凹形状とすることを特徴とする撥水性面形成方法を採用する。【選択図】図1

Description

本発明は、撥水性面の形成方法及びその方法を用いて形成された撥水性面を備えた撥水性物品に関し、特に、ブラスト加工法を用いた撥水性面の形成方法及びその方法を用いて形成された撥水性面を備えた撥水性物品に関する。
従来より、自動車等の輸送用機器の外装や窓ガラス、住宅等の建物の屋根、鏡や眼鏡レンズ、電化製品や産業機器等において、水が付着することに起因する問題が生じぬよう、基材表面にフッ素材料等を用いた撥水性膜を塗布して水滴の付着を防ぐことが行われている。ところが、基材表面に撥水性膜を塗布しただけでは、撥水性を十分に高めることが出来ない。そのため、従来より、基材表面に微小な凸凹を形成し、ロータス効果により撥水性の向上を図る試みがなされている。例えば、予め基材表面に微小な凸凹を形成しておき、この微小な凸凹の上に更に基材表面に撥水性膜を塗布することで、より高い撥水性を実現することが出来ると共に、当該撥水性膜を基材表面にアンカー効果によりしっかりと密着させることができ、耐久性にも優れたものとなる。
例えば、特許文献1には、撥水性およびその耐久性に優れた撥水材を提供するという目的を達成するための撥水材および撥水材の製造方法について開示がされている。具体的には、特許文献1の撥水材の製造方法は、微小凹凸構造の表面を有する撥水性基材の当該表面に、微小凹凸構造の表面の表面粗さ(中心面平均粗さ)の1/2以下の厚みの薄膜保護層を形成することを特徴としたものである(特許文献1の請求項4等参照のこと。)。特許文献1の撥水材の製造方法では、当該微小凹凸構造を形成するに際し、基材の表面をサンドブラスト等により粗面化するものである(特許文献1の段落0006等参照のこと。)。
特開平09−290207号公報
しかしながら、特許文献1に開示の撥水材および撥水材の製造方法では、基材表面に微小な凸凹が形成されるものの、高い撥水性を安定して実現することが出来なかった。
そこで本件発明では、上述した問題に鑑み、高い撥水性を安定して実現することの出来る撥水性面の形成方法及びその方法を用いて形成された撥水性面を備えた撥水性物品を提供することを目的とする。
本件発明に係る撥水性面形成方法: 本件発明に係る撥水性面形成方法は、基材にサンドブラスト処理を施して撥水性面を形成する方法であって、当該基材表面の垂直方向に対する噴射ノズルの軸角度を0°〜85°とし、且つ、当該噴射ノズル先端の当該基材表面からの距離を2mm〜200mmとして、平均粒径が0.3μm〜20μmの硬質砥粒を噴射圧0.02MPa〜0.6MPaで、当該基材表面に吹き付けて当該基材表面を凸凹形状とすることを特徴とする。
また、本件発明に係る撥水性面形成方法において、前記凸凹形状は、Rzが0.1μm〜5μmであり、且つ、Smが0.2μm〜2.0μmとなるように形成されることが好ましい。
また、本件発明に係る撥水性面形成方法において、前記硬質砥粒は、酸化アルミニウム系砥粒、炭化珪素系砥粒、ガラス、又は、ジルコニアアルミナ砥粒であることが好ましい。
また、本件発明に係る撥水性面形成方法において、前記基材表面の前記凸凹形状の上に、2種類以上のカップリング剤と、フロロシラン化物及び/又はメタロハイドロジェン変成シリコンとからなるコーティング層形成剤を用いてコーティング層を形成することが好ましい。
また、本件発明に係る撥水性面形成方法において、前記カップリング剤は、少なくとも1種類がフッ素系シランカップリング剤であることが好ましい。
本件発明に係る撥水性物品: 本件発明に係る撥水性物品は、前記撥水性面形成方法を用いて形成された撥水性面を備えたことを特徴とする。
本件発明に係る撥水性面形成方法は、簡易でありながらも、高い撥水性を安定して実現することが出来る。また、撥水コートを被撥水処理面にアンカー効果によりしっかりと密着させることが出来るため、耐久性にも優れたも撥水性面を得ることが出来る。従って、本件発明に係る撥水性物品は、光学レンズの防滴や自動車等の輸送機器に備えられる窓ガラス等に好適に用いることが出来る。
本件発明に係る撥水性面の形成方法により形成された撥水性面を説明するために例示した断面図である。
以下、本件発明に係る撥水性面形成方法及びその方法を用いて形成された撥水性面を備えた撥水性物品の一実施形態について説明する。
本件発明に係る撥水性面形成方法: 本件発明に係る撥水性面形成方法は、基材にサンドブラスト処理を施して撥水性面を形成する方法である。具体的には、当該基材表面の垂直方向に対する噴射ノズルの軸角度θを0°〜85°とし、且つ、当該噴射ノズル先端の当該基材表面からの距離を2mm〜200mmとして、平均粒径が0.3μm〜20μmの硬質砥粒を噴射圧0.02MPa〜0.6MPaで、当該基材表面に吹き付けて当該基材表面を凸凹形状とすることを特徴とするものである。
本件発明に係る撥水性面形成方法では、基材表面に上述した条件でサンドブラスト処理を施すことで、当該基材表面に大きな凸凹と、この大きな凸凹に微小な凸凹が形成されたフラクタル構造を簡便に形成することができ(図1を参照のこと。)、撥水性を向上させることが出来る。一般的に知られるWenzelの理論によれば、このような凸凹構造は、基材表面の実質的な表面積が増大して濡れに伴う表面エネルギーの変化が強調され、撥水性の更なる向上を図ることが出来る(図1中の基材2の表面に形成された凸凹構造、及び基材撥水性面1の形状を参照のこと。)。また、一般的に知られるCassieの理論によれば、このような凸凹構造は、毛管現象により微小凹部に水が侵入出来ないことで、隣接する微小凸部の間隙の空気が閉じ込められた空隙の面積割合が大きくなり、撥水性の更なる向上を図ることが出来る(図1中の水滴10と基材2との間の空隙11を参照のこと。)。
なお、固体表面の濡れ性の指標としては、測定の簡便性を理由から、主に水滴の接触角で判断がされる。一般的に、撥水性は、固体表面に対する水滴の接触角が90°以上を言い、110°〜150°が高撥水、それ以上が超撥水とされる。固体表面が平坦な場合に、フッ素材料等を用いた撥水性膜を塗布することによって得られる接触角は、100°程度であるが、本件発明に係る撥水性面形成方法により形成される撥水性面は、このような撥水処理膜を設けなくとも固体表面に対する水滴の接触角を100°以上にすることが出来る。
本件発明に係る撥水性面形成方法では、基材表面に上述したフラクタル構造を形成するために、上述したサンドブラスト処理条件を全て満足する必要がある。以下に、本件発明のサンドブラスト処理条件について説明する。
本件発明で前処理として用いるサンドブラスト処理に用いる硬質砥粒は、平均粒径が0.3μm〜20μmのものを使用する。基材表面を粗化して凸凹構造を形成することにより表面積を増大させると撥水性を向上させることが出来るが、目に見えた効果を発揮するには、硬質砥粒の平均粒径を0.3μm以上とすることが好ましい。但し、硬質砥粒の平均粒径が20μmを超えると、基材表面に与えるキズが大きくなり、基材がガラス、ポリカーボネート、アクリル等からなる照明、表示板、ディスプレイ、窓、信号機等に使用する場合において、基材表面の凸凹が著しくなり、視認性が劣化したり基材の表面硬度が低化する等の問題が生じて実用的でなくなる。
ちなみに、本件発明のサンドブラスト処理に使用する硬質砥粒は、その材質に関して特に限定はされず、基材の材質に合わせて適宜選択することが出来る。但し、基材表面にフラクタル構造を安定的に形成するに際し、硬質砥粒は、酸化アルミニウム系砥粒、炭化珪素系砥粒、ガラス、又は、ジルコニアアルミナ砥粒(Z)を用いることが好ましい。ここで、酸化アルミニウム系砥粒は、鋭い角と適度な靭性を備え、特に基材が鉄鋼や焼入鋼等鉄系材質である場合に好適に用いられ、褐色アルミナ系(アランダム:A)、白色アルミナ系(ホワイトアランダム:WA)、単結晶アルミナ系(ヒドロキシアパタイト:HA)等がある。また、炭化珪素系砥粒は、高硬度であるため、特に基材がアルミや銅等の非鉄金属や鋳鉄等の材質である場合に好適に用いられ、黒色炭化珪素系(カーボランダム:C)、緑色炭化珪素系(グリーンカーボランダム:GC)等がある。また、ジルコニアアルミナ砥粒(Z)は、高硬度且つ高靭性であるため、特に基材が構造用セラミックス等の材質である場合に好適に用いられる。
また、本件発明で使用するサンドブラスト処理条件では、基材表面の垂直方向に対する噴射ノズルの軸角度θを0°〜85°とし、且つ、当該噴射ノズル先端の当該基材表面からの距離を2mm〜200mmとする。ここで、基材表面の垂直方向に対する噴射ノズルの軸角度が85°を超えると、基材表面に撥水性向上のために適した凸凹形状を形成することが出来ない。そして、噴射ノズル先端の当該基材表面からの距離が2mm未満であれば、噴射ノズルから硬質砥粒を安定的に噴射することが出来なくなり、基材表面に均一な凸凹形状を形成することが出来ない。また、噴射ノズル先端の当該基材表面からの距離が200mmを超えると、加工能力が大幅に減じ、実用に供しない。
また、本件発明で使用するサンドブラスト処理条件では、上述した硬質砥粒を噴射圧0.02MPa〜0.6MPaで、当該基材表面に吹き付ける。これら噴射圧や噴射時間の最適な設定条件値は、基材の硬さや噴射する硬質砥粒の種類により多少変動するものの、上述の範囲であれば優れた撥水性面を形成することが出来る。ここで、噴射圧が0.02MPa未満であれば、加工能力が減じ実用的でない。また、噴射圧が0.6MPaを超えると、基材として硬脆性材料のガラス材等を用いた場合、その圧力で基材が破損する恐れがある。
本件発明に係る撥水性面の形成方法では、上述したサンドブラスト処理条件を全て満たすことで、基材表面の撥水性を安定して向上させることが出来るが、サンドブラスト処理を施して基材表面に形成される凸凹形状は、最大高さ粗さ(Rz)が0.1μm〜5μmであり、且つ、粗さ曲線の凹凸の平均間隔(Sm)が0.2μm〜2.0μmとなるように形成されることで、撥水性を向上させるのにより適したフラクタル構造を形成することが出来る。参考までに、最大高さ粗さ(Rz)、及び粗さ曲線の凹凸の平均間隔(Sm)は、JIS B 0601−2001において規定されるパラメーターである。
ここで、最大高さ粗さ(Rz)が、0.1μm未満の場合には、撥水性向上のために適した凸凹形状を形成出来ず、十分に撥水性を向上させることが出来ない。また、最大高さ粗さ(Rz)が、5μmを超える場合には、基材表面の凸凹が大きくなり過ぎて、表面が粗くなり、基材としてガラス材を用いた場合に透過率の低下を招くため好ましくない。そして、粗さ曲線の凹凸の平均間隔(Sm)が0.2μm未満である場合には、撥水性向上に適した凸凹形状を形成することが出来ない。また、粗さ曲線の凹凸の平均間隔(Sm)が2.0μmを超える場合には、形成される凸部及び凹部の数が少なく、撥水性の向上を十分に図ることが困難となる。撥水性を向上させるためには、凸部の数や凸部間のピッチが重要であり、凸部が密に並び存在密度を大きくしなければ撥水性能に大きく寄与することが出来ない。
また、本件発明に係る撥水性面形成方法では、サンドブラスト処理を施した撥水性面に2種類以上のカップリング剤と、フロロシラン化物及び/又はメタロハイドロジェン変成シリコンとからなるコーティング層形成剤を用いてコーティング層を形成することが好ましい。
本件発明に係る撥水性面形成方法では、少なくとも2種類のカップリング剤を塗布することで、撥水性面の耐久性を飛躍的に向上させると共に、基材への3次元密着性を高めることが出来る。また、本件発明に係る撥水性面形成方法では、上述したコーティング層形成剤を用いてコーティング層を形成することで、完全フラクタル形状を形成し、サンドブラスト処理を施した撥水性面を超撥水性面にすることが出来る。
なお、図1には、コーティング層5が、カップリング剤からなる層3と、フロロシラン化合物及び/又はメタロハイドロジェン変性シリコンからなる層4との2層構造により示されているが、本件発明に係る撥水性面形成方法では、上述したコーティング層形成剤を塗布する方法に関してこれに限定されない。例えば、本件発明のコーティング層5は、各コーティング層形成剤を全て混合した状態で凸凹形状が形成された基材表面に塗布しても良く、各コーティング層形成剤を順次塗布して複数層からなるコーティング層を形成しても良い。このとき、一部のコーティング層形成剤のみを混合して用いて層を形成する場合も含む。また、当該コーティング層形成剤を塗布する順番は、何ら限定しない。
本件発明で用いるコーティング層形成剤には、1官能〜4官能のフロロアルキルシラン化合物、又はNリッチ状態にした2官能以上のシラザン材を主体とするシラノール化合物からなるものを用いることが出来る。本件発明のカップリング剤は、分子量で30から280までのもののうち、少分子量と大分子量のものを適宜混入させることで密着性を上げることが出来る。また、この中にジフロロ又はフルオロシラン系のフッ素含有物及び/又はメタロハイドロジェン変成シリコンを塗料として混入させることで、更に撥水性を向上させることが出来る。本件発明のコーティング層形成剤は、撥水性の向上を図る上で、上述したカップリング剤を1重量%〜3重量%含有することが望ましい。また、かかるコーティング剤の希釈剤としてテトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のシラノール化合物で希釈しても良い。
本件発明で用いるカップリング剤は、少なくとも1種類がフッ素系シランカップリング剤であることが好ましい。本件発明に係る撥水性面形成方法では、コーティング層にフッ素系シランカップリング剤を含めることで、粉塵や雪等の付着を効果的に防ぐことが可能となる。また、本件発明の凸凹形状が形成された基材表面にフッ素系シランカップリング剤を含むコーティング層を形成することで、凹部に当該フッ素系シランカップリング剤が入り込み、雨風等に長期間曝されたとしても基材表面から撥水性塗料が完全に消失することはない。そのため、本件発明に係る撥水性面形成方法によれば、長期間に亘って優れた撥水効果を発揮する撥水性面を形成することが可能となる。
ちなみに、本件発明に係る撥水性面形成方法では、コーティング層を形成する方法として、一般的に用いられる種々のコーティング方法を適用することが出来る。但し、形成後のコーティング層の膜厚は、0.1μm以下にすることが望ましい。コーティング層の膜厚が0.1μmを超えると、サンドブラスト処理により予め基材表面に形成された微小な凹凸構造が埋没してしまい、撥水性が低下してしまう。なお、本件発明に係る撥水性面形成方法では、コーティング層を形成する前に基材表面にサンドブラスト処理を施して微小な凸凹を形成するが、そうすることで、狙った粗さの表面形状を得ることができ、制御性良く撥水性を発揮することが出来る。
本件発明に係る撥水性物品: 本件発明に係る撥水性物品は、上述した本件発明の撥水性面形成方法を用いて形成された撥水性面を備えたことを特徴とする。本件発明に係る撥水性物品は、サンドブラスト法により製造されるため、安価でありながらも優れた撥水性を有する。よって、本件発明に係る撥水性物品は、自動車灯体のカバーレンズ、ヘルメットシールド、眼鏡レンズ等に幅広く用いることが出来る。
以下、本件発明の実施例を示し、本件発明をより詳細に説明する。なお、本件発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
実施例1では、以下に示す条件でサンドブラスト処理後における基材表面に対する水滴の接触角の確認を行った。まず、基材である90mm×90mm×2(t)mmのソーダーガラス板に、平均粒径0.3μm〜2.0μmの砥粒(ホワイトアランダム、グリーンカーボランダム)をブラストガン(株式会社不二製作所製サンドブラスター)により噴射圧を0.02MPa〜0.6MPa、噴射角度を0°〜85°として、噴射距離200mmの条件でサンドブラスト処理を行った。
また、基材表面に対する水滴の接触角の測定には、サーフェス・エレクトロ・オプティクス株式会社製の自動接触計「型式:アルファ」を用い、温度25℃、相対湿度55%RHの条件下で測定した。この自動接触計に蒸留水の水滴を基材となるガラス材料表面に滴下して撮像し、その画像より接触角を計測した。
そして、本実施例1では、撥水性の確認試験を行うにあたり、試料1は、サンドブラスト砥粒としてホワイトアランダム(平均粒径:20μm)を用いた。また、試料2は、サンドブラスト砥粒としてホワイトアランダム(平均粒径:10μm)を用いた。また、試料3は、サンドブラスト砥粒としてホワイトアランダム(平均粒径:0.3μm)を用いた。また、試料4は、サンドブラスト砥粒としてグリーンカーボランダム(平均粒径:3μm)を用いた。
本実施例1で用いる試料1〜試料4は、本件発明のサンドブラスト処理条件を全て満たすものである。表1には、試料1〜試料4の条件を比較例試料の条件と対比容易となるよう併せて示す。
比較例
[比較例1]
以下、本件発明に対する比較例について説明する。比較例1は、実施例1との対比用として用いる。比較例1では、実施例1と同じブラスト処理装置を用い、実施例試料(試料1〜試料4)と同様に、基材表面に対する水滴の接触角の確認を行った。
そして、本比較例1では、撥水性の確認試験を行うにあたり、試料Aは、サンドブラスト砥粒として二酸化ジルコニウム(平均粒径:0.2μm)を用いた。また、試料Bは、サンドブラスト砥粒としてホワイトアランダム(平均粒径:2μm)を用いた。また、試料Cは、サンドブラスト砥粒としてグリーンカーボランダム(平均粒径:30μm)を用いた。
すなわち、比較例試料(試料A〜試料C)は、本件発明のサンドブラスト処理条件を全て満たさないものである。表1には、試料A〜試料Cの条件を実施例試料の条件と対比容易となるよう併せて示す。
[実施例と比較例との対比]
以下に、本件発明の実施例1及び比較例1とを対比しつつ、本件発明を詳細に説明する。
以下に、本件発明のサンドブラスト処理条件が基材の撥水性にどのような影響を及ぼすのかについて、表1に示す内容を基に実施例1と比較例1とを対比しつつ検討していく。
Figure 2017001166
表1において、基材表面に対する水滴の接触角が102°以上を撥水性が良好である状態を示す「○」とし、基材表面に対する水滴の接触角が100°未満を撥水性が劣る状態を示す「×」として評価した。表1から明らかなように、実施例1の試料1〜試料4は、全て撥水性に優れ「○」であった。これに対し、比較例1の試料A〜試料Cは、全て撥水性が劣り「×」となった。この基材表面に対する水滴の接触角の測定結果から明らかなように、実施例試料(試料1〜試料4)は、全般に高い接触角が得られ、高い撥水性を有している。これに対して、比較例試料(試料A〜試料C)は、十分な撥水性が得られているとは言えない。参考までに、実施例試料(試料1〜試料4)は、基材表面に対する水滴の接触角が125°以上となるような撥水性の表面を有するため、仮にこの表面にコーティング層を形成すれば、基材表面に対する水滴の接触角が150°以上の超撥水性を示すことが可能となる。
なお、実施例試料(試料1〜試料4)、及び比較例試料(試料A〜試料C)について、日本電色工業株式会社製ヘーズメーターNDH2000(光源:ハロゲンランプ)を用いて全光線透過率を測定したところ、実施例試料(試料1〜試料4)の透過率は、全て90%以上の結果が得られた。これに対し、比較例試料(試料A〜試料C)の透過率は、全て84%以下となり、低い透過率が得られた。この結果から、本件発明に係る撥水性面形成方法によれば、例え基材がガラス材であったとしても、撥水性の向上が十分に図られ、且つ、視認性の低下を招かない。
本件発明に係る撥水性面形成方法によれば、高い撥水性を安定して実現することの出来る撥水性面を簡易に形成することが出来る。また、本件発明に係る撥水性面形成方法は、量産性が高く、製造コストを低減させることが出来る。従って、本件発明に係る撥水性面形成方法を用いて形成された撥水性面を備えた撥水性物品は、安価でありながらも優れた撥水性を有するものとなる。従って、本件発明に係る撥水性物品は、防滴、防汚、防雪等に優れるため、自動車灯体のカバーレンズ、ヘルメットシールド、眼鏡レンズ等の様々な物品に好適に用いることが出来る。
1 基材撥水性面
2 基材
3 カップリング剤からなる層
4 フロロシラン化合物及び/又はメタロハイドロジェン変性シリコンからなる層
5 コーティング層
10 水滴
11 空隙

Claims (6)

  1. 基材にサンドブラスト処理を施して撥水性面を形成する方法であって、
    当該基材表面の垂直方向に対する噴射ノズルの軸角度を0°〜85°とし、且つ、当該噴射ノズル先端の当該基材表面からの距離を2mm〜200mmとして、平均粒径が0.3μm〜20μmの硬質砥粒を噴射圧0.02MPa〜0.6MPaで、当該基材表面に吹き付けて当該基材表面を凸凹形状とすることを特徴とする撥水性面形成方法。
  2. 前記凸凹形状は、Rzが0.1μm〜5μmであり、且つ、Smが0.2μm〜2.0μmとなるように形成される請求項1に記載の撥水性面形成方法。
  3. 前記硬質砥粒は、酸化アルミニウム系砥粒、炭化珪素系砥粒、ガラス、又は、ジルコニアアルミナ砥粒である請求項1又は請求項2に記載の撥水性面形成方法。
  4. 前記基材表面の前記凸凹形状の上に、2種類以上のカップリング剤と、フロロシラン化物及び/又はメタロハイドロジェン変成シリコンとからなるコーティング層形成剤を用いてコーティング層を形成する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の撥水性面形成方法。
  5. 前記カップリング剤は、少なくとも1種類がフッ素系シランカップリング剤である請求項4に記載の撥水性面形成方法。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の撥水性面形成方法を用いて形成された撥水性面を備えたことを特徴とする撥水性物品。
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