JP2016520860A - 赤外光用屈折対物レンズ・アセンブリ - Google Patents

赤外光用屈折対物レンズ・アセンブリ Download PDF

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Abstract

中赤外の対物レンズ・アセンブリ10は、中赤外のスペクトル領域において動作する、複数の、間隔を置いて離れて配置された屈折レンズ素子20を含み、複数のレンズ素子20は、観察される物体14に最も近い無収差の第1のレンズ素子26を含む。第1のレンズ素子26は、物体14に面する前方表面36、及び物体14から隔たって面する後方表面38を有する。前方表面36は、負である曲率半径を有してもよい。

Description

米国政府は、全米科学財団との契約番号NSF SBIR Phase I Award No:IIP-1230424、及びPhase II Award No:IIP-1046450に従って、この発明の権利を有する。
可能な限り、国際出願PCT/US12/61987号の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。可能な限り、「MICROSCOPE WITH OBJECTIVE LENS ASSEMBLY」と題する、2013年4月12日に出願された、米国仮出願第61/811548号の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
対物レンズ・アセンブリは、顕微鏡、望遠鏡、カメラ、及び他のデバイスにおいて、観察している物体からの光を集め、光を集束して物体の像を形成するために、一般に使用される。光の可視スペクトルにおいて動作する対物レンズ・アセンブリは、全く一般的である。
現在では、本発明の出願人は、中赤外(Mid Infrared:「MIR」)の光スペクトルにおいて動作する顕微鏡を開発している。
残念なことに、既存の対物レンズ・アセンブリは、MIRの光スペクトルにおいて十分な性能を提供しない。
本発明は、対物面に配置される物体からの中赤外の光を集めて、中赤外の光を像平面に集束する、中赤外の対物レンズ・アセンブリを対象とする。1つの実施例において、対物レンズ・アセンブリは、中赤外のスペクトル領域において動作する、複数の、間隔を置いて離れて配置された屈折レンズ素子を含み、複数のレンズ素子は物体に最も近い無収差の第1のレンズ素子を含み、第1のレンズ素子は、物体に面する前方表面、及び物体から隔たって面する後方表面を有し、前方表面は、負である曲率半径を有する。
1つの実施例において、複数のレンズ素子は光軸に沿って間隔を置いて離れて配置され、第1のレンズ素子の前方表面は曲率の中心を有し、且つ、第1のレンズ素子は、曲率中心が光軸に配置され、且つ近似的に対物面に存在するように、配置される。別のやり方で述べると、第1のレンズ素子の前方表面は、光軸に沿って対物面から前部分離距離離れて間隔を置いて配置され、前部分離距離は、第1のレンズ素子の前方表面の曲率半径の大きさに近似的に等しい。代替の、非排他的な実施例において、前部分離距離は、第1のレンズ素子の前方表面の曲率半径のおよそ1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1パーセント以内に存在する。
その上、代替の、非排他的な実例において、第1のレンズ素子は、中赤外のスペクトル領域で、2、2.5、又は3より大きい屈折率を有している材料でできている。例えば、第1のレンズ素子は、ゲルマニウムでできていてもよい。高い屈折率の材料の使用は、単色収差を最小化するために、第1のレンズ素子にとって重要である。
加えて、ある実施例において、対物レンズ装置は3から10のレンズ素子を含み、レンズ素子の少なくとも2つは、異なる材料でできていて、レンズ素子のそれぞれは、ゲルマニウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、及びシリコンを含むグループから選択される材料でできている。或いは、レンズ素子の3つ又は4つは、異なる材料でできていてもよい。
非排他的な実例として、第1のレンズ素子は、第2のレンズ素子の第2の材料の赤外のアッベ数より大きい、赤外のアッベ数を有する第1の材料でできていてもよい。
実施例において、隣接するレンズ素子は、光軸に沿って分離距離離れて間隔を置いて配置され、分離距離は、0.5ミリメートルより大きいか、又はゼロギャップの値を含む5マイクロメートル未満のどちらかである。分離距離がエアギャップであり得るか、又は、接着材又は屈折率整合流体又はポリマーで満たされ得ることに注意されたい。
別の実施例では、複数のレンズ素子は、前部レンズ群及び後部レンズ群を含むように配置され、且つ、前部レンズ群は、無限の像共役のために補正される。更に、後部レンズ群は、間隔を置いて離れて配置される、第1の後部レンズ素子及び第2の後部レンズ素子を含んでもよく、後部レンズ素子は、後部レンズ群の有効焦点距離が波長の増加と共に減少するような逆分散を実現するように設計されている。1つの実施例において、第1の後部レンズ素子は正の屈折力を有し、第2の後部レンズ素子は負の屈折力を有し、第1の後部レンズ素子は第1の材料でできていて、第2の後部レンズ素子は第2の材料でできていて、且つ、第1の材料は、中赤外のスペクトル領域の第2の材料より低い分散又は高い赤外のアッベ数を有する。例えば、第1の材料は、ゲルマニウム及び硫化亜鉛、又はゲルマニウム及びセレン化亜鉛であり得る。
1つの実施例において、第1のレンズ素子の後方表面は、以下の式によって定義されるように、無収差の状態を近似的に満たす曲率半径Rを有し、R=−(η/(η+η’))×L、ここでηは第1のレンズ素子の屈折率であり、η’は、レンズ素子を取り囲んでいる媒質の屈折率であり、Lは、後方表面の頂点及び軸上の物点の物理的距離であり、これは、軸上の物点及び第1の素子の前方表面の頂点の距離と、第1のレンズ素子の中心厚との合計である。
別の実施例では、対物レンズ・アセンブリの各レンズ素子の中心厚Lcは、以下の公式に従い、センチメートルを単位にして測定され、Lc>1/(4×η)、ここで、ηはレンズ・アセンブリの中赤外の動作帯域にわたる平均屈折率である。
更に別の実施例において、本発明は、中赤外のスペクトル領域において900から1800cm−1帯域の波数領域にわたって、且つ100マイクロメートルから2.0ミリメートルまでの間の視野にわたって、およそ0.5波より小さいRMS波面誤差を有する、中赤外の屈折対物レンズ・アセンブリを対象とする。
更に別の実施例では、本発明は、赤外の対物レンズ・アセンブリを対象とし、複数のレンズ素子は、レンズ・アセンブリの開口数とレンズ・アセンブリの拡大率との比が30より小さいように、設計され、配置される。
更に、代替の、非排他的な実施例において、対物レンズ・アセンブリは、100、90、80、70、60、又は50ミリメータより小さい作動距離を有する。
更に別の実施例において、中赤外の対物レンズ・アセンブリは、中赤外のスペクトル領域において動作する、複数の、間隔を置いて離れて配置される屈折レンズ素子を含み、その複数のレンズ素子は物体に最も近い無収差の前部レンズ素子を含み、その前部レンズ素子は、光軸、物体に面する前方表面、及び物体から隔たって面する後方表面を有し、その前方表面は、光軸に沿って物体から前部分離距離離れて間隔を置いて配置される。本実施例において、移動アセンブリは、前部分離距離を調整するために、物体及び素子の前部レンズ群の少なくとも1つを移動させ、且つ、制御システムは、RMS波面誤差を減少させるために、前部分離距離を選択的に調整するように移動アセンブリを制御する。更に、本実施例において、中赤外レーザーは、中赤外のスペクトル領域内にあるレーザービームを物体に向け、且つ、制御システムは、RMS波面誤差を最小にするために、レーザービームの波長に基づいて前部分離距離を選択的に調整するように移動アセンブリを制御する。
本明細書に提供されるように、「MIRスペクトル領域」という用語は、近似的に3から15マイクロメートル(3〜15μm)までの周波数範囲を意味し、且つ含むものとする。
更に、本明細書に使用されるように、「開口数」(「NA」)という用語は、対物レンズ・アセンブリが物体から光を受け入れることができる角度領域(受光コーン)を特徴づける、無次元数である。従って、開口数は、対物レンズ・アセンブリの集光能力及び分解能の指標である。対物レンズ・アセンブリの開口数は、数式ΝΑ=ηsinθによって定義され、ηは、光が物体と対物レンズ・アセンブリとの間を移動する媒質の屈折率(例えば空気の場合に1.00)であり、θは、物体から対物レンズ・アセンブリに入射可能な光の最大コーンの半値角である。顕微鏡応用例の場合、最も微細に分解された細部のサイズは、λ/2ΝΑに比例し、ここで、λは(例えば、この実例ではMIRスペクトル領域における)光の波長であり、NAは対物レンズ・アセンブリの開口数である。従って、より大きな開口数を有する対物レンズ・アセンブリは、より小さな開口数を有する対物レンズ・アセンブリより微細な細部を提供できるだろう。更に、より大きな開口数を有する対物レンズ・アセンブリはより多くの光を集められ、結果として生じる像はより明るいだろう。
本明細書で使用されるように、視野(「FOV:Field of View」)という用語は、像平面において任意の与えられた時点で見ることができる、物体の広がりを意味する。本明細書に開示される顕微鏡応用例の場合、視野は、任意の与えられた時点において、光検出器によって取り込まれる光の円の直径、又は矩形の開口を有している光検出器の境界によって定められる矩形状領域の幅である。一般的に言って、対物レンズ・アセンブリの拡大率がより高いほど、公式Wa/|Mt|に従う視野はより小さく、ここで、Waはセンサアレイの物理的な幅であり、|Mt|は、光学レンズ・アセンブリの横断像拡大率の大きさである。空間的分解能を損なわないという条件でFOVを最大化することが望ましい。空間的分解能、システムの光学的スループット、及び伝統的な顕微鏡システムのFOVの間に基本的なトレードオフが存在する。
顕微鏡の光学的スループットは、像平面に位置するセンサに衝突する光量によって定量化できる。スループットは、開口数と横断像拡大率との比の二乗、(NA/Mt)に比例する。高い信号対雑音比(SNR:Signal−to−Noise Ratio)を保証するためにはこの量を最大化することが望ましい。分解能が1/NAに比例し、FOVが1/Mtに比例するので、本発明者は、ベストなシステム性能を実現するために、できる限りNAを最大化し、Mtを最小化することが望ましいことを見つける。しかしながら、NAが増加するので、本発明者は、2つの理由のためにMtを増加させることを一般に必要とする。第1に、本発明者は、像平面におけるデジタルサンプリングの速度が画質要求を満たすために十分であることを保証する必要がある。第2に、光学収差は、近軸光学理論(sin(θ)〜θと近似することができ、ここでθは光線と任意の与えられたレンズ素子面とのなす角である。)からの偏差が増加するため、NA及びFOVが増加するにつれて急速に増加する。
十分なサンプリング速度が実現することを保証するために、実際の物理的な画素サイズWpを横断像拡大率の大きさによって除算することによって与えられる、試料基準化画素サイズ(sample−referred pixel size)Ws、Ws=Wp/|Mt|は、1.22×λ/NAによって与えられる、エアリー直径(Airy Diameter)より少なくとも近似的に5倍小さくなければならない。例えば、NA=0.7及びλ=6μmである場合、そのときWsは2μm以下である。本発明は、中赤外のスペクトルにおいて動作する光学的レンズ・アセンブリについて、高いNA及び広いFOVの限界を広げる方法を提供する。
本発明の新しい特徴、その構造、及びその動作は、同様な参照記号が同様な部分を表す、付随する説明に関連した以下の添付の図面から最良に理解されるだろう。
本発明の特徴を有している対物レンズ・アセンブリ、及び物体及び像平面を部分的に切り取って、簡略化された側面図である。 対物レンズ・アセンブリの一部、図1Aの対物及び像平面を、拡大し、簡略化した側面図である。 図1A及び図1Bの対物レンズ・アセンブリについて、生成される複数のスポットダイヤグラムを含む図である。 図1A及び図1Bの対物レンズ・アセンブリについて、マイクロメータ単位の波長に対して波を単位にしたRMS波面誤差を例示する図である。 増加した前部分離距離を有する、図1A及び図1Bの対物レンズ・アセンブリについて、マイクロメータ単位の波長に対して波を単位にしたRMS波面誤差を例示する図である。 本発明の特徴を有しているレンズ・アセンブリを含む、アセンブリの簡略化された説明図である。 本発明の特徴を有している対物レンズ・アセンブリの別の実施例の簡略化された側面図である。 図2Aの対物レンズ・アセンブリの一部を拡大し、簡略化した側面図である。 図2A及び図2Bの対物レンズ・アセンブリについて、マイクロメータ単位の波長に対して波を単位にしたRMS波面誤差を例示する図である。 本発明の特徴を有している対物レンズ・アセンブリの別の実施例の簡略化された側面図である。 図3Aの対物レンズ・アセンブリの一部を拡大し、簡略化した側面図である。 図3A及び図3Bの対物レンズ・アセンブリについて、マイクロメータ単位の波長に対して波を単位にしたRMS波面誤差を例示する図である。 赤外の像の実際の試験結果を例示する図である。 本発明の特徴を有している対物レンズ・アセンブリの別の実施例の簡略化された側面図である。 図4Aの対物レンズ・アセンブリの一部を拡大し、簡略化した側面図である。 図4A及び図4Bの対物レンズ・アセンブリについて、マイクロメータ単位の波長に対して波を単位にしたRMS波面誤差を例示する図である。 本発明の特徴を有しているアセンブリの簡略化された説明図である。 ゲルマニウム、セレン化亜鉛、及び硫化亜鉛のための光学分散曲線を例示する図である。 ゲルマニウム、セレン化亜鉛、及び硫化亜鉛のための屈折率曲線を例示する図である。
最初に図1Aを参照して、1つの実施例において、本発明は、対物面15に位置する、観察されている物体14(ボックスとして例示する)から光12(破線として例示する)を集め、像平面16(しばしばシステム焦点面と呼ばれる)上の像を生成するために光12を集束する、対物レンズ・アセンブリ10を対象とする。本実施例において、レンズ・アセンブリ10は、レンズハウジング18(切り取って例示される)、及び、レンズハウジング18に連結されて、固定され、且つレンズ・アセンブリ10の光学的軸22に沿って直線に配置された、複数の、間隔を置いて離れて配置される屈折レンズ素子20を含む。本明細書に提供される教示に従って、レンズ・アセンブリ10の構成要素の設計は、レンズ・アセンブリ10の性能を変更するために変更可能である。
多くの図は、X軸、X軸に直交するY軸、及びX軸及びY軸に直交するZ軸を例示する配向システムを含む。これらの軸のいずれかが第1、第2、及び/又は第3軸とも呼ばれることができることに注意されたい。図1Aにおいて、光軸22はZ軸と同一直線上にあり、対物面15はX軸及びY軸と平行して配置され、像平面16はX軸及びY軸と平行して配置され、且つ、径方向及びφベクトルはXY平面内に置かれている。ある実例では、レンズ素子20及びレンズハウジング18は、近似的に軸方向に対称であり、光軸22のまわりに円筒対称性を有する。
説明のために、図面では、結像されている物体14が対物レンズ・アセンブリ10の左側にあり、像平面16が対物レンズ・アセンブリ10の右側にあるような方向に、定められている。非排他的な本実施例において、光12は、左から右に進行して、像平面16に像を形成する。更に、考察を容易にするために、レンズ素子20は、図面において物体位置から像の位置に(左から右に)説明されるだろう。
非排他的な実例として、本明細書に提供されるレンズ・アセンブリ10は、MIRイメージング、MIR顕微鏡、MIR分光、MIR分光イメージング、MIR顕微分光イメージング、MIRカメラ、MIR遠隔検出(stand−off detection)、及び/又は他の光学器械に使用可能であり、又は、イメージング又は軸外レーザー照射を必要としているベンチトップの科学実験において簡単に使用可能である。例えば、ある実施例において、光検出器24(ボックスとして例示する)は、物体14から集められた光12の像を取り込むために、像平面16に配置されることができる。1つの実施例において、光検出器24は、MIRスペクトル領域(又はその所定の所望の部分)に測定帯域を有し(例えば光を検出し)、物体14から集められた光12のMIR像を取り込む。その後、MIR像は、観察している物体14の1つ又は複数の特性を決定するために、分析可能である。
ある実施例では、本明細書に提供されるレンズ・アセンブリ10は、MIRスペクトル領域(又はその所定の所望の部分)において動作するように独自に設計され、且つ、MIRスペクトル領域(又はその所定の所望の部分)にわたって色収差を補正するか、実質的に色収差を補正して、色収差の影響を減少させる。更に、レンズ・アセンブリ10は、MIRスペクトル帯域の実質的な部分にわたって開口数と視野の両方を最大にするために、単色収差を最小にするように独自に設計されている。更に、レンズ・アセンブリ10は、(i)反射の代わりに屈折レンズ素子20(ii)対物レンズ・アセンブリ24を含むスペクトル結像系の測定帯域の外側で、任意の寄生エタロンの自由スペクトル領域(「FSR」:Free Spectral range)が下がることを保証するために設計された、レンズ素子20間の間隔、及び(iii)対物レンズ・アセンブリを含むスペクトル結像系の測定帯域の外側で、寄生エタロンのFSR(コヒーレント効果)が下がることを保証するために設計された、レンズ素子20の光学的厚み、の使用を通してコヒーレンス効果を管理するように独自に設計される。その結果として、光検出器24によって取り込まれる像は、より高い像質を有し、スペクトル像は、より高いスペクトル忠実度並びにより高い像質をもたらすだろう。
更に、本明細書に提供されるように、本発明は、MIRスペクトル領域で、コヒーレント光のために最適化される屈折対物レンズ・アセンブリ10を対象とする。ある実施例において、対物レンズ・アセンブリ10は、MIRスペクトル領域に存在すると共に物体14に向けられる、コヒーレントなレーザービーム(図1Aに図示せず)を生成する、中赤外のレーザー装置(図1Aに図示せず)と連動して特に使用され、且つ、反射モード結像系のように物体14に衝突する以前に、又は透過結像系のように対物レンズ・アセンブリ10以前に物体14に衝突することによって、対物レンズ・アセンブリ10を横断してもよい。設計によっては、屈折対物レンズ・アセンブリ10は、物体14から反射するか、又はそれを通って透過するかのどちらかの光12を集め、その光を焦点面アレイ(FPA:Focal Plane Array)などのイメージング・センサ24に結像する。
ある実施例において、非排他的な実例として、対物レンズ・アセンブリ12は、(i)近似的に3から15マイクロメートル(3〜15μm)の全MIRスペクトル領域(ii)近似的に5.5から11マイクロメートル(5.5〜11μm)の所定の所望の領域(iii)近似的に6から10マイクロメートル(6〜10μm)の所定の所望の領域(iv)近似的に8から14マイクロメートル(8〜14μm)の所定の所望の領域(v)近似的に7から14マイクロメートル(7〜14μm)の所定の所望の領域、又は(vi)近似的に3から11マイクロメートル(3〜11μm)の所定の所望の領域、で最適化が可能である。重要なことは、本明細書に提供された教示によって、対物レンズ・アセンブリ12は、上記に提供されるもの以外のMIRスペクトル領域の他の所定の所望の領域でも、最適化可能であることである。
ある実施例において、屈折対物レンズ・アセンブリ12は、高分解能であり、MIRスペクトル領域のコヒーレント・レーザー照射の下で性能を最適化し、且つ、像を取り込むために使用される光検出器24の物理的な広さによって限定されるように全視野の実質的な部分にわたって回折限界空間分解能を実現する。更にその上、収差は、回折限界性能が全FOVにわたって実現されるように、特に軸を外れた対物視野点について、適切に抑制可能である。
更に、本明細書に提供される屈折対物レンズ・アセンブリ12は、視野位置に伴って急速に減少する分解能を示さない。(すなわち、視野中心から離れた物点で像が劣化しない)。更に、本明細書に提供される屈折対物レンズ・アセンブリ12は、(i)利用可能な反射型対物レンズによって示される、掩蔽、及び開口の厳密な芯出しを排除し、且つ、(ii)複数の屈折レンズ素子20を使用して結像収差を補正する。加えて、本明細書に提供される対物レンズ・アセンブリ12は、反射型カセグレン対物レンズにおいて必要とされるものより低い開口数の集光レンズ光学系の使用を可能にし、それによって、システムの光結合効率を増加させ、結像系のコスト及び複雑さを減少させる。
加えて、本明細書に提供されるように、高いNA及び広いFOVの限界を広げるために、後者についてはMt(横断像拡大率)を最小にすることによって実現されるが、レンズ・アセンブリの光学収差は、最小化されなければならない。これは、レンズ材料、面曲率、厚み、及び素子間の間隔を含む、各レンズ素子20の特定の技術を通して実現可能である。温度及び圧力のような環境の影響を無視すると、光学収差は、2つの基本的な系統、色及び単色に到達する。色収差は、波長依存性を有する、ある特定の材料の屈折率のため、発生する。屈折率が波長によってどう変化するかは、分散曲線と呼ばれる。図6Aは、5〜11マイクロメートルの領域にわたる、ゲルマニウム602、セレン化亜鉛604、及び硫化亜鉛606の光学分散曲線を例示し、図6Bは、5〜11マイクロメートルの領域にわたる、ゲルマニウム607、セレン化亜鉛608、及び硫化亜鉛609の屈折率曲線を例示する。指数は、これらの材料のそれぞれについて、波長が増加するにつれて、単調に減少する。その傾向は大部分の赤外線のガラス材料について一般的であるが、大きさ及び正確な形状は材料毎に実質的に変化する。各材料は、ユニークな分散曲線を有し、アッベ数と呼ばれる単一番号によって定量化が可能である。通常、アッベ数(Vd)は次の公式を使用して可視スペクトルに対して定義され、Vd=(ηD−1)/(ηF−ηC)、ここで、D、F、及びCは、それぞれ589.3nm、486.1nm、及び656.3nmにおける、フラウンホーファーD、F、及びCスペクトル線である。赤外線において、本発明者は、同じ公式を用いて、しかし、D、F、及びCの波長を8μm(D)、5μm(F)、及び8μm(C)の赤外の波長に置き換えることによって、スペクトル領域5〜11μmのアッベ数を定めることを選択した。例えば、ゲルマニウムは近似的に246の赤外のアッベ数を有するだろうが、セレン化亜鉛は近似的に48の赤外のアッベ数を有し、他方では、硫化亜鉛は近似的に33の赤線のアッベ数を有するだろう。アッベ数のより高い値は、より小さい相対分散、すなわち波長の変化に伴う屈折率のより小さい変化、を示す。薄いレンズの近似において、レンズ素子のレンズの有効焦点距離(EFL)の逆数として定義される屈折力は、減少する指数(η/η’−1、ここで、η’はレンズを取り囲んでいる媒体の屈折率である)と、前部と後部との間の曲率半径(ROC:radii of curvature)の違いによって与えられるレンズ形状Cと、の積に比例し、すなわち、P=(η/η’−1)×C、ここで、C=1/ROC(前部)−1/ROC(後部)である。この公式から、発明者は、全レンズ・アセンブリにおいて与えられたレンズ素子の分散が有する効果が、ガラスの特性だけでなくレンズ形状にもまた依存することを理解する。この効果に留意しない場合、その結果は、結像の状態が、与えられた一組の物体及び像の共役対について、設計するスペクトル帯域内で全ての波長に対して満足しない可能性がある。すなわち、像質は、像の焦点が最適な像平面からずらされるため、波長が設計帯域にわたって変化するにつれて、実質的に低下するだろう。色収差は、材料、形状、厚み、及びレンズ素子間の間隔を設計することによって、最小化できる。異なる分散曲線を有する、最低でも2つの異なる材料が、色収差を減少させるために必要であるが、加えて、換言すれば、3以上の材料のタイプが色収差を適切に最小化するために必要であってもよい。
単色収差は、分散がない場合にさえ存在する収差として、定義される。1次の、又は3次の収差は、5つのグループに分類されており、すなわち、球面、コマ、非点収差、ペッツバール湾曲、及び歪曲である。これらの収差のそれぞれは、大きな角度におけるsin(θ)=θの誤差から発生し、光軸に対する対物面位置と、この位置から出射した光線がシステムの入射口にどのように衝突するかとの組合せに依存する。NAが高く、FOVが広い場合、θが増加し、結果として単色収差の増加に通じる。これらの収差は、レンズ・アセンブリの要素数を増加させることによって、且つ、個別要素の形状、材料、厚み、及びレンズ素子間の間隔を設計するによって、最小化されるはずであり、実現可能である。単色収差は、RMSスポットサイズの幾何学的な像のぼやけが、1.22×λ/NAによって与えられるエアリーディスクのサイズを実質的に下回るようなレベルまで減少するので、対物レンズ・アセンブリは、基本的な回折効果によって制限され、回折限界光学系と呼ばれる。
屈折対物レンズ・アセンブリ10についての多くの特定の、非排他的な仕様が、本明細書に開示される。これらの実施例において、これらの屈折対物レンズ・アセンブリ12が、(i)比較的高い開口数(0.15〜0.7の範囲であるNA)(ii)比較的広い視野(「FOV」)(少なくとも近似的に0.5mm)、及び(iii)近似的に4から12.5倍(4x〜12.5x)の間の拡大率、の組合せを有する。既存の実施例のいずれかの拡大率を増加させることが簡単であることは、当業者にとって明らかだろう。加えて、本明細書に開示される対物レンズ・アセンブリ12は有限共役であり、従って、物体14に集束するために、第2のレンズを必要としない。更に、これらの特定の実施例のユニークな設計のため、前部及び後部グループを別々のレンズ・アセンブリに分割することによって、これらの対物レンズを無限共役の対物レンズに変換することは、簡単である。
観察されている物体14のタイプは、変更可能である。非排他的な実例として、物体14は、パラフィンに包埋されるか又は空気にさらされ、染色されないか又は染色され、CaF2、BaF2、Si、Ge、ZnS、ZnSe、CdSeなどの様々な赤外線透過性基板に、又は、例えばKevley(Kevley Technologies社)、Au、Ag、Ti、Ni、Alなどの反射基板上に固定される、人間又は動物の組織試料又は植物体などの、生物標本であり得る。更に、物体14は、アモルファス、多結晶質、又は結晶質であり得る、標本、半導体、有機ポリマー・フィルム、金属フィルム、絶縁膜であり得るだろう。更にその上、物体14は、微生物又は細胞生命を維持するために使用される、水又は成長培地などの液体培地に浸漬される試料であり得る。物体は、頂点が前部レンズ素子の方に面すると共に、対物レンズ・アセンブリ10の実効開口数を増加させるようにCaF2、BaF2、ZnS、ZnSe、Si、又はGeなどの赤外の透明材料でできている、半球又は超半球の固体基板を同様に含んでもよい。非排他的な実例として、物体14が組織試料である場合、本明細書に開示される対物レンズ・アセンブリ10の視野は、組織の組織病理学において一般に使用される組織のマイクロアレイ内で、完全な単一の組織コアの像を集めるために十分である一方で、同時にMIRスペクトル領域の全体又は大部分において回折限界の空間的分解能を実現する。例えば、物体14は、0.6mm直径のコアに切り取られる組織コアであってもよい。1つの実施例において、対物レンズ・アセンブリ10の視野は0.65mmであり、そのため単一の0.6mmの直径のコア14の全長が単一のFOV内で同時に結像されるだろう。
1つの実施例において、ステージ25Aは、物体14を保持し、且つ、ステージ移動アセンブリ25Bは、ステージ25A及び物体14を対物レンズ・アセンブリ12に対して移動させるために使用される。例えば、ステージ移動アセンブリ25Bは、対物レンズ・アセンブリ12に対して(X、Y、Zに沿った)3つの自由度で物体14を移動させるように制御可能である。或いは、ステージ移動アセンブリ25Bは、6つの自由度を有するステージを移動させるように設計可能である。ステージ移動アセンブリ25Bは1つ又は複数のアクチュエータを含むことができ、又は、ステージ25Aは手動で移動可能である。例えば、ステージ移動アセンブリ25Bは、正確に物体14の位置を定めると共にそれを移動させる、複数の圧電アクチュエータを含むことができる。
光検出器24のタイプは変更可能である。例えば、1つの実施例において、光検出器24は、物体14から集められた光12のMIR像を取り込むために、MIRスペクトル領域の光を検出する複数の光検出画素を含む、MIRカメラであり得る。非排他的な実例として、光検出器24は、1から2000画素範囲の、垂直(V)及び水平(H)方向に多くの行及び列を有する任意の正方格子パターン、又は1から4,000,000の総画素のどちらか、及び、これらの範囲内のV及びH画素数の任意の組合せを有する、マイクロボロメータ焦点面アレイ(FPA)又は水銀テルル化カドミウム(MCT)焦点面アレイを含むことができる。特定の構成の非排他的な実例は、近似的に5μm、10μm、17μm、25μm、34μm、及び50μmの構成を含む、5μmから200μmまでの範囲の画素サイズを用いて、特に80×80、160×160、160×120、160×128、324×256、320×240、384×288、640×512、512×512、640×640、640×480、480×480、1024×1024、及び1024×768を含んでもよい。しかしながら、他のサイズも可能である。
代替の、非排他的な実例において、光検出器24は、(i)近似的に3から15マイクロメートル(3〜15のμm)の全MIRスペクトル領域(ii)近似的に5.5から11マイクロメートル(5.5〜11μm)の所定の所望の領域(iii)近似的に6から10マイクロメートル(6〜10μm)の所定の所望の領域(iv)近似的に8から14マイクロメートル(8〜14μm)の所定の所望の領域(v)近似的に7から14マイクロメートル(7〜14μm)の所定の所望の領域、又は(vi)近似的に3から11マイクロメートル(3〜11μm)の所定の所望の領域、に近似的に等しい測定帯域を有する(光を検出可能である)。
更に、ある実施例で、光検出器24は、ブロックすることが可能であり、それぞれの測定帯域の外側で光を検出しない。上記に提供される例の場合、光検出器24は、(i)15マイクロメートルより大きく又は3マイクロメートル未満(ii)11マイクロメートルより大きく又は5.5マイクロメートル未満(iii)10マイクロメートルより大きく又は6マイクロメートル未満(iv)8より大きく又は14マイクロメートル未満(v)7より大きく又は14マイクロメートル未満、又は(vi)3より大きく又は11マイクロメートル未満、の光の検出を阻止することができる。光検出器24の設計は、システムの所望の要求に合うように調整可能であることに注意されたい。
レンズハウジング18は剛体であり、複数のレンズ素子20を保持する。1つの非排他的な実施例において、レンズハウジング18は、一般に筒状の形状であり、レンズハウジング18の内部にレンズ素子20を保持する。図1Aに例示されるレンズハウジング18は非常に簡略化され、且つ、レンズハウジング18は、レンズ素子20を適切な間隔でレンズハウジング18にしっかりと固定するための複数のハウジング構成部品(図示せず)を含むことができることに注意されたい。
上記に提供するように、対物レンズ・アセンブリ10は、光軸22に沿って間隔を置いて離れて配置される複数のレンズ素子20を含む。更に、レンズ素子20のそれぞれは一般にディスク形状であり、各レンズ素子20は光軸22と同軸である。本明細書に提供されるように、サイズ、形状、設計、間隔、及びレンズ素子20の数は、対物レンズ・アセンブリ10の所望の性能特性を実現するために変更可能である。例えば、1つの実施例において、対物レンズ・アセンブリ10は、(i)少なくとも3つの、間隔を置いて離れて配置された屈折レンズ素子20を含み、(ii)レンズ素子20のうちの少なくとも2つは、異なる材料でできており、且つ、(iii)レンズ素子20のそれぞれは、MIRスペクトル領域において動作する材料でできている。例えば、レンズの材料は、ゲルマニウム(「Ge」)、硫化亜鉛(「ZnS」)、セレン化亜鉛(「ZnSe」)、シリコン(「Si」)、フッ化カルシウム(「CaF2」)、バリウムフッ化物(「BaF2」)、又はサファイヤを含むグループから選択可能である。
非排他的な実例として、対物レンズ・アセンブリ10の単色収差は、(i)複数の、少なければ2つの、多ければ4つのタイプの材料(例えばゲルマニウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、シリコン、CaF2)の使用(ii)ゲルマニウム、硫化亜鉛、及びセレン化亜鉛の組合せ、又は(iii)ゲルマニウム及びシリコンの組合せ、によって最小にすることができる。
本明細書に提供される対物レンズ・アセンブリ10の性能を説明するための重要なメトリックは、横断拡大率の大きさと、対物レンズ・アセンブリ10の開口数(|Mt|:NA)との比である。本明細書に提供されるように、対物レンズ・アセンブリ10のレンズ素子20のために利用されるサイズ、形状、間隔、及び材料は、アセンブリ10がMIRスペクトル領域において動作し、且つその比(|Mt|:NA)が30より小さいように、選択される。以前に定められたように十分なデジタルサンプリングが実現するという条件で、その比が低ければ低いほど、レンズ・アセンブリ10の性能はより良好になる。代替の、非排他的な実例として、本明細書に提供されるように、対物レンズ・アセンブリ10のレンズ素子20のために利用されるサイズ、形状、間隔、及び材料は、アセンブリ10がMIRスペクトル領域において動作し、且つ、比(|Mt|:NA)が29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、又は11より小さいように、選択される。
全ての特定の、しかし非排他的な対物レンズ・アセンブリ10の設計は、本明細書で定められ、又はこれらの設計から明らかな拡張として引き出すことができるが、30より小さい、横断拡大率大きさとNAとの比を有し、その値が低ければ低いほど、メトリックはより良好である。この比のより高い値を実現することは、一般により容易である。例えば、図1Aに例示されたレンズ・アセンブリ10の特定の、しかし非排他的な実施例は、0.7のNA、12.5xの拡大率、従って、近似的に18の比を有する。(図2Aに例示された)レンズ・アセンブリ210の別の特定の、しかし非排他的な実施例は、0.35のNA、4xの拡大率を有し、11.4の比を実現する。(図4Aに例示された)レンズ・アセンブリ410の更に別の特定の、しかし非排他的な実施例は、0.15のNA及び4xの拡大率を有し、26.7の比を実現する。その上、本明細書に例示されない更に別の実施例は、(0.7のNA及び12.5xの拡大率を有する)図1Aに例示される対物レンズ・アセンブリ10の明らかな拡張を通して設計できるだろうが、0.9のNA及び25の拡大率を実現し、28の比を生成する対物レンズ・アセンブリである。
本明細書に提供される教示によって、30より低い比を実現する、多数の他のレンズ・アセンブリ設計が可能であることに注意されたい。本明細書に開示される設計仕様及び一般的なノウハウは、それ故、スペクトルの赤外領域の顕微鏡対物レンズの最高水準の性能における重大な進歩を表す。
本明細書に提供される対物レンズ・アセンブリ10の性能を説明するための更に別の重要なメトリックは、中赤外のスペクトルの特定の波長(又は波数)領域にわたって発生する、二乗平均平方根(「RMS」)誤差の量である。一般的に言って、RMS誤差が低ければ低いほど、像平面16で形成される像はより高品質である。例えば、本明細書に提供される対物レンズ・アセンブリは、中赤外のスペクトル領域における900から1800cm−1帯域(5.5〜11マイクロメートルの領域)の波数領域にわたって、近似的に0.5波より小さいRMS波面誤差を実現可能である。別の言い方をすると、本明細書に提供される対物レンズ・アセンブリは、中赤外のスペクトル領域における5.5マイクロメートルの波長領域にわたって、近似的に0.5波より小さいRMS波面誤差を実現可能である。
更に、代替の、非排他的な実例において、本明細書に提供される対物レンズ・アセンブリは、中赤外のスペクトル領域における5.5マイクロメートルの波長領域(例えば900〜1800cm−1帯域)にわたって、近似的に0.4、0.3、0.25、又は0.2波より小さいRMS波面誤差を実現可能である。更に、本レンズ・アセンブリは、これらの低いRMS波面誤差を実現可能である。
代替の、非排他的な実施例において、本明細書に提供されるレンズ・アセンブリは、中赤外のスペクトル領域における5.5マイクロメートルの波長領域(例えば5.5から11マイクロメートルの領域)にわたって、且つ100マイクロメートルから2.0ミリメートルまでの間の視野にわたって、0.5、0.4、0.3、0.25、又は0.2波より小さいRMS波面誤差を実現可能である。代替的な実例として、本明細書に提供される結果は、少なくとも0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2ミリメートルの視野によって、可能である。
対物レンズ・アセンブリ10の多くの異なる、非排他的な実例は、本明細書に提供される。図1Aに例示される第1の実施例において、対物レンズ・アセンブリ10は、(i)近似的に0.7の開口数、12.5xの拡大率、全角度2度より大きい視野(又は17μmの画素サイズによる480×480画素の焦点面アレイ(「FPA」)を有する光検出器24を使用する場合に0.6ミリメートルより大きい)、及び900から1800cm−1(900cm−1のスペクトル幅)の波長領域にわたる回折限界性能、を有する屈折対物レンズ・アセンブリである。この対物レンズ・アセンブリ10は、5.5から11マイクロメートルまで(5.5〜11μm)のスペクトル領域にわたって色収差を補正する。
図1Aに例示される実施例において、対物レンズ・アセンブリ10は、5つの、間隔を置いて離れて配置された光学レンズ素子20を含み、それは、2つのグループに、すなわち、(i)第1の3つの素子20を含む前部レンズ群20A(同様に第1のレンズ群と呼ばれることができる)、及び(ii)最後部の2素子20Bを含む後部レンズ群20B(同様に第2のレンズ群と呼ばれることができる)、に分類可能である。この例では、前部レンズ群20Aは、対物面15に対して、後部レンズ群20Bより近く、一方、前部レンズ群20Aは、像平面16に対して、後部レンズ群20Bより遠い。
便宜上、図1Aにおいて左から右へ移動すると(物体位置から像の位置に)、レンズ素子20の(i)第1のレンズ群20Aは、観察されている物体14に最も近い、前部第1のレンズ素子26、前部第1のレンズ素子26の右側に離れて且つ直接に間隔を置いて配置された、前部第2のレンズ素子28、前部第2のレンズ素子28の右側に離れて且つ直接に間隔を置いて配置された、前部第3のレンズ素子30、と名前を付けることができ、且つ、(ii)第2のレンズ群20Bは、前部第3のレンズ素子30の右側に離れて且つ直接に間隔を置いて配置された、後部第1のレンズ素子32、及び、後部第1のレンズ素子32の右側に離れて且つ直接に間隔を置いて配置された、後部第2のレンズ素子34、と名前を付けることができる。本実施例において、後部第2のレンズ素子34は、像平面16に最も近く、且つ、レンズ素子28、30、32は、間隔を置いて離れて配置され、前部第1のレンズ素子26と後部第2のレンズ素子34との間に配置される。
(i)前部第1のレンズ素子26は前部レンズ素子と更に呼ばれることができ、(ii)後部第2のレンズ素子34は後部レンズ素子と更に呼ばれることができ、且つ、(iii)レンズ素子28、30、及び32は中間レンズ素子28、30、32と更に呼ばれることができることに注意されたい。
ある実施例において、前部レンズ群20A及び後部レンズ群20Bは、無限の像共役のために独立して補正され、及び/又は、後部レンズ群20Bは、後部レンズ群20Bの有効焦点距離が波長の増加につれて減少するような逆分散を実現するように設計されている。従って、本発明は、後部レンズ群20Bから前部レンズ群20Aを分離することによって、これらの対物レンズを無限の共役対物レンズに変換する簡単な方法を提供する。この特徴は、収差を増加させることなく、前部及び後部レンズ群の間の分離距離の増加を可能にする。これによって、ビーム・スプリッタ(図示せず)又は他の光学フィルタリング構成部品(図示せず)は、平行光によって動作するように設計される、前部及び後部レンズ群20A、20Bの間に容易に配置できる。
図1Bは、(i)前部レンズ群20Aのレンズ素子26、28、30(ii)後部レンズ群20Bのレンズ素子32、34(iii)対物面15における物体14、及び(iv)像平面16、を含む、図1Aの対物レンズ・アセンブリ10の一部を拡大し、簡略化した側面図である。レンズ素子20のそれぞれは、前方表面36及び後方表面38を含む。更に、各素子20について、前方表面36は、物体14に面し(像平面16から左側に隔たって面し)、その対応する後方表面38より物体14に近く、一方、後方表面38は、像平面16に面し(物体14から右側に隔たって面し)、その対応する前方表面36より像平面16に近い。
図1Bにおいて、(i)距離「a」は、光軸22に沿って、物体14と前部第1のレンズ素子26の前方表面36との間の前部分離距離を例示し、(ii)距離「b」は、光軸22に沿って、前部第1のレンズ素子26の厚みを例示し、(iii)距離「c」は、光軸22に沿って、前部第1のレンズ素子26の後方表面38と前部第2のレンズ素子28の前方表面36との間の分離距離を例示し、(iv)距離「d」は、光軸22に沿って前部第2のレンズ素子28の厚みを例示し、(v)距離「e」は、光軸22に沿って、前部第2の素子28の後方表面38と前部第3のレンズ素子30の前方表面36との間の分離距離を例示し、(vi)距離「f」は、光軸22に沿って前部第3のレンズ素子30の厚みを例示し、(vii)距離「g」は、光軸22に沿って、前部第3のレンズ素子30の後方表面38と後部第1のレンズ素子32の前方表面36との間の分離距離を例示し、(viii)距離「h」は、光軸22に沿って、後部第1のレンズ素子32の厚みを例示し、(ix)距離「i」は、光軸22に沿って、後部第1のレンズ素子32の後方表面38と後部第2のレンズ素子34の前方表面36との間の分離距離を例示し、(x)距離「j」は、光軸22に沿って、後部第2のレンズ素子34の厚みを例示し、且つ、(xi)距離「k」は、光軸22に沿って、後部第2のレンズ素子34の後方表面38と像平面16との間の距離を例示する。
ある実施例において、隣接するレンズ素子20間の分離距離「c」、「e」、「g」、「i」は、対物レンズ・アセンブリ10を含む分光システムのスペクトル帯域から外へ寄生エタロンをシフトするために、0.5ミリメートルより大きく、あるいは5マイクロメートル未満である。
各厚み「b」、「d」、「f」、「h」、「j」は、中心厚Lcと呼ぶことができることに注意されたい。更に、対物レンズ・アセンブリ10の各レンズ素子20の中心厚Lcは、対物レンズ・アセンブリ10を含む分光システムのスペクトル帯域から外へ寄生エタロンをシフトするために、以下の公式に従い、Lc>1/(4×η)、ここで、ηがレンズ・アセンブリの中赤外の動作帯域にわたる平均屈折率である。
図1Bに例示される実施例において、各素子20の各表面36、38は、それぞれの表面36、38の頂点42が光軸22に位置する状態で、湾曲し、光軸22に位置する曲率中心40(円で例示される)を有する。本明細書に提供されるように、各表面36、38について、曲率半径44はその頂点42からその曲率中心40までの距離に等しい。本明細書に提供されるように、各表面36、38について、(i)その頂点42がその曲率中心40の左側にある場合、曲率半径40は正であり(ii)その頂点42がその曲率中心40の右側にある場合、曲率半径44は負である。前部第1のレンズ素子26の前方表面36の曲率中心40、頂点42、及び曲率半径44だけが、図1Bにおいて名前を付けられることに注意されたい。第1のレンズ面が、完全な球形から離れた、非球面又は双曲面の表面を含む場合には、例えば最小二乗フィットを用いて、非球面の表面を最も良く説明する球体の半径が、使用されるだろう。
本明細書に提供されるように、ある実施例において、前部第1のレンズ素子26は、(i)前方表面36が負である曲率半径44を有すると共に(ii)前方表面36の曲率中心40が光軸22に配置されて近似的に対物面15に存在するように、独自に設計され、配置される。別言い方では、前部第1のレンズ素子26は、光軸22に沿った前部分離距離「a」が、前部第1のレンズ素子26の前方表面36の曲率半径44に近似的に等しいように、独自に設計され、配置される。代替の、非排他的な実施例において、前部分離距離「a」は、近似的に曲率半径44の1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1パーセント以内にある。この設計の利点は、第1の表面が軸上の物点に収差をもたらすことがなく、その表面において光線の屈曲がないため軸を外れた点における収差が無視できることである。
更に、前部第1のレンズ素子28の後方表面39は、以下の式によって定義されるように、無収差の状態を近似的に満たすように設計可能であり、R=−(η/(η+η’))×L、ここで、ηは第1のレンズ素子の屈折率であり、η’はレンズ素子を取り囲んでいる媒質の屈折率であり、Lは後方表面の頂点から軸上の物点までの物理的な距離であり、それは、軸上の物点から第1の素子の前方表面の頂点までの距離と、第1のレンズ素子の中心厚との合計である。
更に、ある実施例において、レンズ素子20は、光学的レンズ・アセンブリ10の作動距離46は、近似的に100ミリメートルより短く、75mm、又は50mmであるように、独自に設計され、配置される。本明細書に提供されるように、作動距離46という用語は、前部第1のレンズ素子26と対物面15との間の最短距離に等しいものとする。この設計の利点は、物体距離が、2xより大きい拡大率を要求する顕微鏡の応用例の場合、好適な範囲内に位置することである。
加えて、1つの実施例において、(i)後部第1のレンズ素子30はより低い分散の正の屈折力を有し、(ii)後部第2のレンズ素子34はより高い分散の負の屈折力を有する。この特徴により、後部レンズ群20Bは、逆分散を伴う正の屈折力を有する、空気間隔の二重レンズを作成する効果を実現することができ、すなわち、波長を増加させるにつれて二重レンズの有効焦点距離が減少する。
本明細書に提供されるように、設計に基づいて、レンズ素子20の少なくとも2つは、MIRスペクトル領域において動作する異なる材料でできている。1つの実施例において、前部第1のレンズ素子26は、中赤外のスペクトル領域で2より大きい屈折率を有する材料でできている。例えば、前部第1のレンズ素子26のための適切な材料は、ゲルマニウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、及びシリコンを含むグループから選択される。
1つの実施例において、前部第1のレンズ素子26は、他のレンズ素子28、30、32、32の1つの材料のアッベ数より大きい、赤外のアッベ数を有する材料でできている。更に、後部第1のレンズ素子32は第1の材料でできており、後部第2のレンズ素子34は第2の材料でできており、第1の材料は、中赤外のスペクトル領域において第2の材料のアッベ数より大きい、赤外のアッベ数を有する。
下記の表1は、図1A及び図1Bの対物レンズ・アセンブリ10のための1つの非排他的なレンズの仕様である。
表1を参照して、この例において、第1のレンズ群20Aについて、(i)前部第1のレンズ素子26は無収差であり、ゲルマニウムでできており(ii)前部第2の素子28はZnSeでできており(iii)前部第3のレンズ素子30はZnSeでできている。更に、第2のレンズ群20Bについて、(i)後部第1のレンズ素子32はゲルマニウムでできており(ii)後部第2のレンズ素子34はZnSでできている。本実施例において、(i)無収差の前部第1のレンズ素子26及び無収差の後部第1のレンズ素子32の使用(ii)前部第1のレンズ素子26及び後部第1のレンズ素子32に高い屈折率材料(例えばゲルマニウム)の使用、及び(iii)屈折レンズ素子20の使用を通して、収差は最小化され、高い分解能(高いNA)、広い視野(FOV)の性能を実現する。
図1Cは、図1A及び図1Bの対物レンズ・アセンブリ10が生成する複数のスポットダイヤグラム50を含む。図1Cは、光学及び照明設計ソフトウェアを使用して生成された、シミュレーションデータを例示する。これらのスポットダイヤグラム50は、対物レンズ・アセンブリ10の性能を分析するために使用可能である。この例では、各スポットダイヤグラム50は、二次元のプロットであり、垂直軸は、ミリメータ単位の視野位置(対物レンズ・アセンブリ10の視野中心(例えば光軸)から半径方向距離)であり、且つ水平軸は波長である。各スポットダイヤグラム50は、(破線で例示される)エアリーディスク52、及び(図1Aに例示される)光検出器に取り込まれるだろう、(円又は卵形で例示される)実際のスポット54を含む。
より詳細には、(i)スポットダイヤグラム50の上部の行は、0ミリメートルの視野位置(光学軸からオフセットしない)を有し、且つ、後続の各スポットダイヤグラム50の波長は、0.5ミクロン間隔で、5.5から11ミクロンまで変化し、(ii)スポットダイヤグラム50の上から2番目の行は、−0.125ミリメートルの視野位置(光学軸から0.125ミリメートルだけ放射状にオフセットする)を有し、且つ、後続の各スポットダイヤグラム50の波長は、0.5ミクロン間隔で、5.5から11ミクロンまで変化し、(iii)スポットダイヤグラム50の上から3番目の行は、−0.250ミリメートルの視野位置(光学軸から0.250ミリメートルだけ放射状にオフセットする)を有し、且つ、後続の各スポットダイヤグラム50の波長は、0.5ミクロン間隔で、5.5から11ミクロンまで変化し、且つ(iv)スポットダイヤグラム50の最も下位の行は、−0.325ミリメートルの視野位置(光学軸から0.325ミリメートルだけ放射状にオフセットする)を有し、且つ、後続の各スポットダイヤグラム50の波長は、0.5ミクロン間隔で、5.5から11ミクロンまで変化する。
これらのスポットダイヤグラム50は、上記に説明されて、図1A及び図1Bにおいて例示される対物レンズ・アセンブリ10が、視野位置が視野の端の方へ変化するなかで、きわめて良好な性能を維持することを例示する。これは、結果として、(図1Aに例示される)光検出器24によって取り込まれる、より高い分解能の像になるだろう。
図1Dは、上記で説明され、図1A及び図1Bにおいて例示される対物レンズ・アセンブリ10の性能を、別の方法で例示するグラフである。図1Dは、光学及び照明設計ソフトウェアを使用して生成された、シミュレーションデータを例示する。より詳細には、図1Dは、上記で説明され、図1A及び図1Bにおいて例示される対物レンズ・アセンブリ10について、マイクロメータ単位の波長(水平軸)に対する、波を単位にしたRMS波面誤差(垂直軸)を例示する。グラフは、4つの異なる視野位置の場合の別々の曲線を含み、すなわち、(i)視野位置が軸上の場合の曲線56(ii)視野位置が−0.125ミリメートル(−0.125ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線58(iii)視野位置が−0.250ミリメートル(−0.250ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線60、及び(iv)視野位置が−0.325ミリメートル(−0.325ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線62。性能は、RMS波面誤差が小さい場合に、より良好である。図1Dに例示されるように、対物レンズ・アセンブリ10のRMS波面誤差は、視野位置及び波長によって変化するだろう。重要なことは、対物レンズ・アセンブリ10は、所望の帯域にわたって可能な限りベストにRMS波面誤差を最小化するように設計されていることである。
図1Dに例示されるように、(i)RMS波面誤差は、全体の5.5から11マイクロメートルの領域について0.2波より小さく、且つ、(ii)軸上の視野位置の場合、RMS波面誤差は、全体の5.5から11マイクロメートルの領域について0.15波より小さい。加えて、各曲線56、58、60、62は、5.5から11マイクロメートルの領域において、特定の波長において最小のRMS波面誤差を有することに注意されたい。例えば、(軸上の)曲線56について最小のRMS波面誤差は、近似的に9.9マイクロメートルにおいて存在する。
図1Bに戻って参照すると、本明細書に提供されるように、物体14と前部第1のレンズ素子26の前方表面36との間の前部分離距離「a」を変えることは、RMS波面誤差が最小となる波長を変化させるだろう。従って、中赤外のスペクトル領域のある波長において、RMS波面誤差は、分離距離「a」を調整することによって、減少させ、且つ最適化させることが可能である。
図1Eは、上記で説明され、図1A及び図1Bにおいて例示される対物レンズ・アセンブリ10について、前部分離距離「a」を10マイクロメートルだけ増加させた状態において、マイクロメータ単位の波長(水平軸)に対する、波を単位にしたRMS波面誤差(垂直軸)を例示する。図1Eは、光学及び照明設計ソフトウェアを使用して生成された、シミュレーションデータを例示する。グラフは、4つの異なる視野位置の場合の別々の曲線を含み、すなわち、(i)視野位置が軸上の場合の曲線56(ii)視野位置が−0.125ミリメートル(−0.125ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線58(iii)視野位置が−0.250ミリメートル(−0.250ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線60、及び(iv)視野位置が−0.325ミリメートル(−0.325ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線62。
図1Eに例示されるように、物体をその名目位置から10マイクロメートル移動させると、曲線56(軸上)の最小RMS波面誤差は、ここで近似的に6.6マイクロメートルに移動する。従って、分離距離「a」は、レンズ・アセンブリ10の性能を調整して、レンズ・アセンブリの色収差補正領域を5.5〜11μmから3〜11μmまで増加させるように、適合可能である。
図1Fは、図1A及び図1Bにおいて例示されるレンズ・アセンブリ10に類似するレンズ・アセンブリ10(ある部分のみが図1Fに例示される)を含むアセンブリ70の簡略化された説明図である。本実施例において、アセンブリ70は、光軸22に沿ってコヒーレントな中赤外のビーム74を物体14に向ける、中赤外のレーザー光源72を含む。例えば、レーザー光源72は、中赤外スペクトルの異なる波長のビーム74を生成するように調整可能である。図1Fにおいて、ビーム74は物体14を透過する。或いは、アセンブリ70は、ビーム74がレンズ・アセンブリ10を透過して向けられ、それから物体14から反射するように設計可能である。
更に、本実施例において、アセンブリ70は、物体14を保持するステージ25A、及びレンズ・アセンブリ10に対して物体14を移動させるステージ移動アセンブリ25B、及び対物面15を含む。加えて、本実施例において、レンズ・アセンブリ10は、レンズハウジング18に対して前部レンズ群20Aのレンズ素子26、28、30を移動させるために、使用可能なレンズ移動アセンブリ76(例えば1つ又は複数のアクチュエータ)、物体14、対物面15、及び後部レンズ群20B(図1Bに例示される)を含む。或いは、レンズ移動アセンブリ76は、単に前部第1のレンズ素子26を移動させるために使用可能である。
この設計によって、移動アセンブリ25B、76のどちらか一方又は両方は、前部分離距離「a」を選択的に調整するために使用できて、レンズ・アセンブリ10の特性を選択的に調整する。加えて、本実施例において、アセンブリ70は、制御システム78を含み、それは、移動アセンブリ25B、76の一方又は両方を選択的に制御するために使用できて、レンズ・アセンブリ10の特性を選択的に調整する。制御システム78は、1つ又は複数のプロセッサを含むことができる。
例えば、レーザー光源72が調整可能である場合、制御システム78は、フィードフォワードのやり方で、選択的に分離距離「a」を調整するために移動アセンブリ25B、76の一方又は両方を制御可能であり、そのため、レンズ・アセンブリ10がビーム74の波長における最適な特性(RMS波面誤差を減少させる)を有する。別の言い方をすると、ある実施例において、本発明は、フィードフォワードのやり方で、分離距離「a」を調整し、対物レンズ・アセンブリ10の最良の性能を実現する。例えば、物体14の像を取り込むことが要求される場合、レーザービーム74が10マイクロメートルの中心波長を有する際、分離距離「a」は、10マイクロメートルにおける対物レンズ・アセンブリ10の最良の性能を実現するために調整される。或いは、物体14の像を取り込むことが要求される場合、レーザービーム74が8マイクロメートルの中心波長を有する際、分離距離「a」は、8マイクロメートルにおける対物レンズ・アセンブリ10の最良の性能を実現するために調整される。
1つの実施例において、実際の、又はシミュレーション試験は、中赤外のスペクトル又はその部分の各波長について最良の前部分離距離「a」を決定するために、実施できて、参照表を生成する。その後、制御システム78は、ビーム74の波長に基づいて、前部分離距離「a」を制御するために参照テーブルを使用できて、RMS波面誤差の低減を実現する。
所望の全波長領域にわたって最適な結果を実現するために要求される、分離距離「a」における変更の最大量は、対物レンズ・アセンブリ10の設計によって変化するだろう。例えば、代替の、非排他的な実施例において、分離距離「a」は、所望の最適化を実現するために、5、10、15、又は20マイクロメータの範囲だけ変更可能である。
対物レンズ・アセンブリ210の別の非排他的な例は、対物面15及び像平面16を伴って、図2Aに例示される。本実施例において、対物レンズ・アセンブリ210は、上記に説明されるレンズ・アセンブリ10に若干類似している。しかしながら、本実施例において、対物レンズ・アセンブリ210は、900〜2000cm−1(1100cm−1のスペクトル帯域幅)のスペクトル領域にわたって、0.35の開口数、4xの拡大率、全角度7度より大きい(又は17μm画素サイズによる480×480の画素FPAを使用する場合に2ミリメートルより大きい)視野、及び回折限界性能、及び、5.5から11マイクロメートル(5.5〜11μm)のスペクトル領域にわたる色収差制御を有する。
図2Aに例示される実施例において、対物レンズ・アセンブリ210は、4つの、間隔を置いて離れて配置される光学レンズ素子220を含み、それは、2つのグループに、すなわち、(i)第1の2つの素子220を含む前部レンズ群220A、及び(ii)最後部の2素子220Bを含む後部レンズ群220Bに分類可能である。前部レンズ群220Aは、対物面15に対して、後部レンズ群220Bより近く、一方、前部レンズ群220Aは、像平面16に対して、後部レンズ群220Bより遠い。
便宜上、図2Aにおいて左から右へ移動すると(物体位置から像の位置に)、レンズ素子220の(i)第1のレンズ群220Aは、観察されている物体214に最も近い、前部第1のレンズ素子226、及び、前部第1のレンズ素子226の右側に離れて且つ直接に間隔を置いて配置された、前部第2の素子228と名前を付けることができ、且つ、(ii)第2のレンズ群220Bは、前部第2のレンズ素子228の右側に離れて且つ直接に間隔を置いて配置された、後部第1のレンズ素子232、及び、後部第1のレンズ素子232の右側に離れて且つ直接に間隔を置いて配置された、後部第2のレンズ素子234と名前を付けることができる。
本実施例において、前部レンズ群220Aは無限の像共役のために補正され、及び/又は、後部レンズ群220Bは、後部レンズ群220Bの有効焦点距離が、波長の増加につれて減少するような逆分散を実現するように設計されている。
図2Bは、(i)前部レンズ群220Aのレンズ素子226、228(ii)後部レンズ群220Bのレンズ素子232、234、及び(iii)物体214を含む、図2Aの対物レンズ・アセンブリ210の一部を拡大し、簡略化した側面図である。レンズ素子220のそれぞれは、前方表面236及び後方表面238を含む。更に、各レンズ220はレンズ厚280(1つのみが図示される)を有し、分離距離282(1つのみが図示される)は隣接するレンズ素子220を分離する。更に、前部第1のレンズ素子226の前方表面236は、光軸22に沿って前部分離距離「a」離れて間隔を置いて配置される。
下記の表2は、図2A及び図2Bの対物レンズ・アセンブリ210のための1つの非排他的なレンズの仕様である。
表2を参照して、この例において、前部レンズ群220Aについて、(i)前部第1のレンズ素子226は無収差であり、ゲルマニウムでできており(ii)前部第2の素子228はZnSeでできている。更に、後部レンズ群220Bについて、(i)後部第1のレンズ素子232はゲルマニウムでできており(ii)後部第2のレンズ素子234はZnSでできている。本実施例において、(i)無収差の前部第1のレンズ素子226及び無収差の後部第1のレンズ素子232の使用(ii)前部第1のレンズ素子226及び後部第1のレンズ素子232において高い屈折率材料(例えばゲルマニウム)の使用、及び(iii)屈折レンズ素子220の使用を通して、収差は最小化され、高い分解能(高いNA)、広い視野(FOV)の性能を実現する。
図2Cは、上記で説明され、図2A及び図2Bにおいて例示される対物レンズ・アセンブリ210の性能を例示するグラフである。図2Cは、光学及び照明設計ソフトウェアを使用して生成された、シミュレーションデータを例示する。より詳細には、図2Cは、上記で説明され、図2A及び図2Bにおいて例示される対物レンズ・アセンブリ210について、マイクロメータ単位の波長(水平軸)に対する、波を単位にしたRMS波面誤差(垂直軸)を例示する。グラフは、4つの異なる視野位置の場合の別々の曲線を含み、すなわち、(i)視野位置が軸上の場合の曲線256(ii)視野位置が−0.5ミリメートル(−0.5ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線258(iii)視野位置が−0.750ミリメートル(−0.750ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線260、及び(iv)視野位置が−1.000ミリメートル(−1.000ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線262。図2Cに例示されるように、対物レンズ・アセンブリ10のRMS波面誤差は、視野位置及び波長によって変化するだろう。重要なことは、対物レンズ・アセンブリ210は、所望の帯域にわたってできる限り最良にRMS波面誤差を最小化するように設計されていることである。
図2Cに例示されるように、RMS波面誤差は、全体の5.5から11マイクロメートルの領域について0.18波より小さい。加えて、各曲線256、258、260、262は、5.5から11マイクロメートルの領域において、特定の波長において最小のRMS波面誤差を有することに注意されたい。従って、上記に提供されるように、RMS波長誤差は、前部分離距離「a」を調整することによって、再び調整可能である。
対物レンズ・アセンブリ310の別の非排他的な実例は、対物面15及び像平面16を伴って、図3Aに例示される。本実施例において、対物レンズ・アセンブリ310は、上記に説明されるレンズ・アセンブリ10に、若干類似している。しかしながら、本実施例において、対物レンズ・アセンブリ310は0.7の開口数及び12.5の拡大率を有する。
図3Aに例示される実施例において、対物レンズ・アセンブリ310は、6つの、離れて間隔を置いて配置される光学レンズ素子320を含み、それは3つのグループに、すなわち、(i)第1の2つの素子320を含む前部レンズ群320A(ii)3つの素子320を含む中間レンズ群320B、及び(iii)単一のレンズ素子320を含む後部レンズ群320Cに分類可能である。前部レンズ群320Aは、対物面15に対して、後部レンズ群320Cより近く、一方、前部レンズ群320Aは、像平面16に対して、後部レンズ群320Bより遠い。
便宜上、図3Aにおいて左から右へ移動すると(物体位置から像の位置に)、レンズ素子320の(i)前部レンズ群320Aは、前部第1のレンズ素子326、及び、前部第2のレンズ素子328と名前を付けることができ、(ii)中間レンズ群320Bは、中間第1のレンズ素子330、中間第2のレンズ素子332、及び中間第3のレンズ素子334、及び、(iii)後部レンズ群320Cの単一のレンズ素子320と名前を付けることができる。
図3Bは、(i)前部レンズ群320Aのレンズ素子326、328(ii)中間レンズ群320Bのレンズ素子332、334、336(iii)後部レンズ群320Cの1つのレンズ素子320、及び(iv)物体14を含む、図3Aの対物レンズ・アセンブリ310の一部を拡大し、簡略化した側面図である。レンズ素子320のそれぞれは、前方表面336及び後方表面338を含む。更に、各レンズ320はレンズ厚380(1つのみが図示される)を有し、分離距離382(1つのみが図示される)は隣接するレンズ素子320を分離する。更に、前部第1のレンズ素子326の前方表面336は、光軸22に沿って、物体14から前部分離距離「a」離れて間隔を置いて配置される。
下記の表3は、図3A及び図3Bの対物レンズ・アセンブリ310のための1つの非排他的なレンズの仕様である。
図3Cは、上記で説明され、図3A及び図3Bにおいて例示される対物レンズ・アセンブリ310の性能を例示するグラフである。図3Cは、光学及び照明設計ソフトウェアを使用して生成された、シミュレーションデータを例示する。より詳細には、図3Cは、上記で説明され、図3A及び図3Bにおいて例示される対物レンズ・アセンブリ310について、マイクロメータ単位の波長(水平軸)に対する、波を単位にしたRMS波面誤差(垂直軸)を例示する。グラフは、4つの異なる視野位置の場合の別々の曲線を含み、すなわち、(i)視野位置が軸上の場合の曲線356(ii)視野位置が−0.125ミリメートル(−0.125ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線358(iii)視野位置が−0.250ミリメートル(−0.250ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線360、及び(iv)視野位置が−0.325ミリメートル(−0.325ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線362。図3Cに例示されるように、対物レンズ・アセンブリ10のRMS波面誤差は、視野位置及び波長によって変化するだろう。
図3Cに例示されるように、RMS波面誤差は、全体の5.5から11マイクロメートルの領域について0.5波より小さい。加えて、各曲線356、358、360、362は、5.5から11マイクロメートルの領域において、特定の波長において最小のRMS波面誤差を有することに注意されたい。従って、上記に提供されるように、RMS波長誤差は、前部分離距離「a」を調整することによって、再び調整可能である。
図3Dは、1555cm−1(6.43μm)の赤外のレーザー照射によって、表3に定められた、6素子の0.7NA、12.5xレンズ・アセンブリ310を使用して、USAF1951分解能試験ターゲットの赤外の像の実際の試験結果を例示する。試験ターゲットは、ソーダ石灰ガラス基板にリソグラフィで定められた、幅及び間隔を変えた垂直及び水平のクロムの棒線のグループからなる。像は、表3において定められる赤外の光学アセンブリが、650μmの視野にわたって、4.39μmまで対象物を分解することができることを実証する。この結果は、レンズ・アセンブリの性能が、公式NA_effective=0.61×λ/4.39を使用して計算された、0.9の実効開口数(有効なNA)を生じさせることによって、設計仕様を超えることを実証した。
対物レンズ・アセンブリ410の更に別の非排他的な実例は、対物面15及び像平面16を伴って、図4Aに例示される。本実施例において、対物レンズ・アセンブリ410は、上記の説明されるレンズ・アセンブリ10に、若干類似している。しかしながら、本実施例において、対物レンズ・アセンブリ310は、0.15の開口数及び4xの拡大率を有する。
図4Aに例示される実施例において、対物レンズ・アセンブリ410は、3つの、間隔を置いて離れて配置される光学レンズ素子420を含み、それは、2つのグループに、すなわち、(i)第1の2つの素子420を含む前部レンズ群420A、及び(ii)単一のレンズ素子420を含む後部レンズ群420Bに分類可能である。前部レンズ群420Aは、対物面15に対して、後部レンズ群420Bより近く、一方、前部レンズ群420Aは、像平面16に対して、後部レンズ群420Bより遠い。
便宜上、図4Aにおいて左から右へ移動すると(物体位置から像の位置に)、レンズ素子420の(i)前部レンズ群420Aは、前部第1のレンズ素子426、及び、前部第2の素子428(ii)後部レンズ群420Bの単一のレンズ素子420と名前を付けることができる。
図4Bは、(i)前部レンズ群320Aのレンズ素子426、428、及び(ii)後部レンズ群420Bの1つのレンズ素子420、及び(iii)物体14を含む、図4Aの対物レンズ・アセンブリ410の一部を拡大し、簡略化した側面図である。レンズ素子420のそれぞれは、前方表面436及び後方表面438を含む。更に、各レンズ420はレンズ厚480(1つのみが図示される)を有し、分離距離482(1つのみが図示される)は隣接するレンズ素子420を分離する。更に、前部第1のレンズ素子426の前方表面436は、光軸22に沿って、物体14から前部分離距離「a」離れて間隔を置いて配置される。
下記の表4は、図4A及び図4Bの対物レンズ・アセンブリ410のための1つの非排他的なレンズ仕様である。
図4Cは、上記で説明され、図4A及び図4Bにおいて例示される対物レンズ・アセンブリ410の性能を例示するグラフである。図4Cは、光学及び照明設計ソフトウェアを使用して生成された、シミュレーションデータを例示する。より詳細には、図4Cは、上記で説明され、図4A及び図4Bにおいて例示される対物レンズ・アセンブリ410について、マイクロメータ単位の波長(水平軸)に対する、波を単位にしたRMS波面誤差(垂直軸)を例示する。グラフは、4つの異なる視野位置の場合の別々の曲線を含み、すなわち、(i)視野位置が軸上の場合の曲線456(ii)視野位置が−0.5ミリメートル(−0.5ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線458(iii)視野位置が−0.75ミリメートル(−0.75ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線460(iv)視野位置が−1ミリメートル(−1ミリメートルの放射軸オフセット)の場合の曲線462。図4Cに例示されるように、対物レンズ・アセンブリ10のRMS波面誤差は、視野位置及び波長によって変化するだろう。
図4Cに例示されるように、RMS波面誤差は、全体の5.5から11マイクロメートルの領域について0.8波より小さい。加えて、各曲線456、458、460、462は、5.5から11マイクロメートルの領域の特定の波長において最小のRMS波面誤差を有することに注意されたい。従って、上記に提供されるように、RMS波長誤差は、前部分離距離「a」を調整することによって、再び調整可能である。
図5は、本発明の特徴を有しているアセンブリ500の簡略化された説明図である。より詳細には、図5に例示されるアセンブリ500は、本発明の特徴を有している対物レンズ・アセンブリ510を利用する、中赤外の結像型顕微鏡(imaging microscope)である。特に、結像型顕微鏡500は、物体14の様々な特性を分析し、評価するために使用可能である。例えば、1つの実施例において、結像型顕微鏡500は、通常の照明の下ではあまり明らかでない試料14の特性を明らかにするために、1つ又は複数の物体(試料)14から直接の情報を得る、調整可能なレーザー放射を使用する、赤外の結像型顕微鏡である。
試料14は、通常又は専門の顕微鏡を使用して一般に分析される、ヒト組織、動物組織、植物物質、起爆性残留物、粉、液体、固体、インク、及び他の材料を含む、様々な物質であり得る。より具体的には、ある非排他的な応用例において、試料14は、ヒト組織であってもよく、結像型顕微鏡500は、ガン細胞の存在及び/又は他の健康に関連する状態のために、組織試料14の迅速なスクリーニングのために利用可能であり、及び/又は、結像型顕微鏡500は、起爆性残留物及び/又は他の危険物の存在のための試料14の迅速なスクリーニングなどの、ある法医学応用例で利用可能である。加えて、分析のために結像型顕微鏡500内で実質的に配置される場合、試料14はそれ自体で存在可能であり、又は、試料14は1つ又は複数のスライド(例えば、赤外で透明なスライド)を使用して定位置に保持可能である。
更に、試料14は、照射ビーム(例えば、赤外の照射ビーム)が試料14を貫通する透過を通じて(すなわち透過モードで)調査を可能にするために、十分に薄い可能性があり、又は、試料14は、試料による、照射ビーム(例えば、赤外の照射ビーム)の反射を通じて(すなわち反射モードで)分析される、光学的に不透明な試料であってもよい。例えば、図5に例示される実施例において、結像型顕微鏡500は、透過モード及び反射モードで二者択一的に利用可能である。
結像型顕微鏡500の設計は、変更可能である。図5に例示される実施例において、結像型顕微鏡500は、(i)レーザービーム574を生成するレーザー光源572(ii)ビーム574をある方向に向ける(steer)、間隔を置いて離れて配置された複数のビームステアラ(beam steerer)502(iii)透過モード又は反射モードのどちらかでビーム574を物体14に向けるように制御された、照射スイッチ504(iv)本発明の特徴を有している対物レンズ・アセンブリ510(v)ビーム・スプリッタ506、及び(vii)物体14の赤外の像を取り込む光検出器724を含む。結像型顕微鏡500は、図5に例示されるものより多い又は少ない構成部品によって設計可能であり、及び/又は、構成部品は、図5に例示されるものと別のやり方で構成可能であることに注意されたい。例えば、顕微鏡500は、本発明の特徴を有する1つ又は複数の中赤外の対物レンズ・アセンブリ、及び/又は、中赤外のスペクトル領域の外側で作動する1つ又は複数の対物レンズ・アセンブリを含む、複数位置レンズタレット(multiple position lens turret)(図示せず)を含むことができる。
1つの実施例において、レーザー光源572は、透過モード及び/又は反射モードにおいて、試料14を照射し、分析するために使用可能な、時間的にコヒーレントな照射ビーム574を放射する。ある実施例において、レーザー光源572は、近似的に2から20ミクロン(2〜20μm)の間の中赤外(「MIR」)領域スペクトルに存在する、照射ビーム34を生成する中赤外(MIR)のビーム源である。レーザー光源572は、パルスレーザー及び/又は連続波(CW)レーザーであり得る。更に、レーザー光源572は、所望の中赤外のスペクトル領域の一部又は全てに及ぶ、1つ又は複数の個別のレーザーを含むことができる。更に、各レーザーは、利得媒質、空洞光アセンブリ、出力光アセンブリ、及び波長依存(「WD」)フィードバックアセンブリ(例えば可動回折格子)を含む、外部共振器レーザーであり得る。1つの非排他的な実施例において、利得媒質は、いかなる周波数変換もせずに、それぞれのビーム574を直接放射する。非排他的な例として、利得媒体は、量子カスケード(QC:Quantum Cascade)利得媒体、バンド間カスケード(IC:Interband Cascade)利得媒体、又は中赤外のダイオードであり得る。或いは、別のタイプの利得媒体も利用可能である。他の実施例において、レーザー光源572は、グローバー(glow bar)、又は、例えばフィルタされたシンクロトロンによって生成される準コヒーレント源などの、インコヒーレントな赤外の放射源である。
光検出器724は、赤外光を検出して、赤外光を試料の像を表すアレイ状の電子信号に変換する、イメージセンサを含む赤外カメラであり得る。ある実施例において、イメージセンサは、照射ビーム574の波長に感応する、二次元アレイ状の感光性素子(画素)(例えば焦点面アレイ(FPA))を含む。画素素子間の間隔はアレイのピッチと呼ばれる。例えば、照射ビーム574がMIR領域にある場合、イメージセンサはMIR撮像素子である。より詳細には、照射ビーム574が2から20μmまでの赤外スペクトル領域にある場合、イメージセンサは2から20μmまでの赤外のスペクトル領域に感応する。適切な赤外イメージセンサの非排他的な実例は、(i)7から14μmスペクトル領域において通常は応答するFLIR Tau640赤外線カメラ内のFPAなどの酸化バナジウム(VOx)マイクロボロメータアレイ(ii)7.7から11.5のμmスペクトル領域において応答するFLIR Orion SC7000シリーズカメラ内のFPAなどの水銀テルル化カドミウム(HgCdTe又はMCT)アレイ(iii)1.5から5.5μmスペクトル領域において応答するFLIR Orion SC7000シリーズカメラ内のFPAなどのアンチモン化インジウム(InSb)アレイ(iv)インジウム砒化ガリウム(InGaAs)(v)2から20μmスペクトル領域において応答するDRS(DRS Technologies社)からVOx及び他の材料を含む非冷却ハイブリッドアレイ、又は(vi)2〜20μm領域において赤外光に感応するように設計されると共に画像情報の二次元アレイを生成するために各素子の信号レベルから読み出しを可能にする電子回路を有する、任意の他のタイプのイメージセンサ、を含む。加えて、結像型顕微鏡12は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又は記憶装置を含む、処理装置(図示せず)を更に含み、及び/又はそれに連結することができる。例えば、処理装置は、IRカメラの画素から情報を受信し、試料の像を生成することができる。更に、処理装置は、レーザー光源14の動作を制御可能である。
本明細書に説明されるレンズ素子は、中赤外のスペクトル領域での使用に適した特別な材料でできている。中赤外(mid−IR)レンズのために使用できる一般的な材料は、セレン化亜鉛又はZnSeである。ZnSeはまた、本明細書に示される構成に用いる場合にも適している。ZnSeは、特別な「ダイヤモンド旋削」プロセスの非球面レンズを形成するために使用されてもよい。優れた結果がこの方法で取得された一方で、ダイヤモンド旋削は高価である場合があり、時々、結果として不完全な装置となる。ZnSe材料はまた、高価であり、ある更なる欠点を有する。ある場合において、ZnSe以外の材料が好まれてもよい。「カルコゲニド」として、時として本明細書において知られている材料は、また、中赤外の波長での使用に適したレンズを形成するために使用されてもよい。カルコゲニドは、これらの材料が折々に成形されてもよいので、特に有効である。複雑な面形状(例えばある非球面レンズ)を有しているレンズの場合に、成形は、安価な製造のための良好な選択肢である。これらのレンズを形成するために有効な1つの好適なタイプの材料は、その商標名「AMTIR−1」によって時々照会される。
本発明の多くの例示的な態様及び実施例を上述したが、当業者は、ある修正、置換、追加、及びそれらの部分的組合せを理解されよう。それ故、次の添付の請求の範囲、及び今後導かれる請求項が、それらの真の趣旨及び範囲内にあるように、全てのその修正、置換、追加、及び部分的組合せを含むように解釈されることが意図される。

Claims (24)

  1. 対物面に配置される物体から中赤外の光を集めて、前記中赤外の光を像平面に集束させる、中赤外の対物レンズ・アセンブリであって、
    前記中赤外のスペクトル領域において動作する、複数の、間隔を置いて離れて配置される屈折レンズ素子を含み、
    前記複数のレンズ素子は、前記物体に最も近い、無収差の第1のレンズ素子を含み、
    前記第1のレンズ素子は、前記物体に面する前方表面、及び前記物体から隔たって面する後方表面を有し、
    前記前方表面は負である曲率半径を有する、対物レンズ・アセンブリ。
  2. 前記複数のレンズ素子は光軸に沿って間隔を置いて離れて配置され、前記第1のレンズ素子の前記前方表面は前記曲率の前方中心を有し、前記第1レンズ素子は、曲率の前記前方中心が前記光軸に配置されると共に近似的に前記対物面に存在するように、配置される、請求項1に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  3. 前記複数のレンズ素子は光軸に沿って間隔を置いて離れて配置され、前記第1のレンズ素子の前記前方表面は、前記光軸に沿って前記対物面から前部分離距離離れて間隔を置いて配置され、前記前部分離距離は、前記第1のレンズ素子の前記前方表面の前記曲率半径の大きさに近似的に等しい、請求項1に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  4. 前記前部分離距離が、前記第1のレンズ素子の前記前方表面の前記曲率半径の約1パーセント以内である、請求項3に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  5. 前記第1のレンズ素子が、前記中赤外のスペクトル領域において2より大きい屈折率を有する材料でできている、請求項1に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  6. 前記第1のレンズ素子がゲルマニウムでできている、請求項1に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  7. 前記複数のレンズ素子は、少なくとも第2のレンズ素子及び第3のレンズ素子を更に含み、前記レンズ素子の少なくとも2つは、異なる材料でできており、前記レンズ素子のそれぞれは、ゲルマニウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、及びシリコンを含むグループから選択される材料でできている、請求項1に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  8. 前記複数のレンズ素子が少なくとも第2のレンズ素子及び第3のレンズ素子を更に含み、前記レンズ素子の少なくとも3つが異なる材料でできており、前記レンズ素子のそれぞれは、ゲルマニウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、及びシリコンを含むグループから選択される材料でできている、請求項1に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  9. 前記複数のレンズ素子が第2のレンズ素子及び第3のレンズ素子を更に含み、前記レンズ素子の少なくとも2つは、異なる材料でできており、前記第1のレンズ素子が、前記第2のレンズ素子の第2の材料の赤外のアッベ数より大きい、赤外のアッベ数を有する、第1の材料でできている、請求項1に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  10. 前記複数のレンズ素子が、光軸に沿って間隔を置いて離れて配置され、隣接するレンズ素子が、前記光軸に沿って分離距離離れて間隔を置いて配置され、前記分離距離が、0.5ミリメートルより大きいか、又はゼロギャップ値を含む5マイクロメートル未満のどちらかである、請求項1に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  11. 前記複数のレンズ素子は、前部レンズ群及び後部レンズ群を含むように配置され、前記前部レンズ群は、前記第1のレンズ素子を含み、前記後部レンズ群より前記物体に近く、前記前部レンズ群は無限の像共役のために補正される、請求項1に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  12. 前記後部レンズ群は、間隔を置いて離れて配置される、第1の後部レンズ素子及び第2の後部レンズ素子を含み、前記後部レンズ素子は、前記後部レンズ群の有効焦点距離が波長の増加につれて減少するような逆分散を実現するように設計されている、請求項11に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  13. 前記第1の後部レンズ素子は正の屈折力を有し、前記第2の後部レンズ素子は負の屈折力を有し、前記第1の後部レンズ素子は第1の材料でできており、前記第2の後部レンズ素子は第2の材料でできており、前記第1の材料は、前記中赤外のスペクトル領域において前記第2の材料より低い分散、又はより高い赤外のアッベ数を有する、請求項12に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  14. 前記第1のレンズ素子の前記後方表面は、次式によって定義される、前記無収差の条件を近似的に満足する曲率半径Rを有し、
    R=−(η/(η+η’))×L
    ここで、ηは前記第1のレンズ素子の屈折率であり、η’は前記レンズ素子を取り囲んでいる媒質の屈折率であり、Lは前記後方表面の頂点から軸上の物点までの物理的な距離であり、前記物理的な距離は、前記軸上の物点から前記第1の素子の前記前方表面の頂点までの距離と、前記第1のレンズ素子の中心厚との合計である、請求項1に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  15. 請求項1に記載の対物レンズ・アセンブリを含み、
    前記対物レンズ・アセンブリの各レンズ素子の中心厚Lcは、センチメートルで測定され、公式:Lc>1/(4×η)に従い、
    ここで、ηが前記レンズ・アセンブリの前記中赤外の動作帯域にわたる平均屈折率である、アセンブリ。
  16. 前記中赤外のスペクトル領域内にあるレーザービームを前記物体に向ける、中赤外レーザーを更に含む、請求項15に記載のアセンブリ。
  17. 対物面に配置される物体から中赤外のスペクトル領域において光を集めて、前記光を像平面に集束させる、中赤外の屈折対物レンズ・アセンブリであって、
    前記中赤外のスペクトル領域において近似的に5.5マイクロメートルの波数領域にわたって、且つ100マイクロメートルから2ミリメートルまでの間の視野にわたって、近似的に0.5波より小さいRMS波面誤差を有する、対物レンズ・アセンブリ。
  18. 対物面に配置される物体から赤外の光を集めて、前記赤外の光を像平面に集束させる、赤外の対物レンズ・アセンブリであって、
    前記中赤外のスペクトル領域において動作する、複数の、間隔を置いて離れて配置される、屈折レンズ素子を含み、
    前記複数のレンズ素子は、前記レンズ・アセンブリの拡大率と前記レンズ・アセンブリの開口数との比が30より小さいように、設計され且つ配置される、対物レンズ・アセンブリ。
  19. 前記比が25より小さい、請求項18に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  20. 前記対物レンズ・アセンブリが100ミリメートル未満の作動距離を有する、請求項18に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  21. 物体から光を集めて、前記光を像平面に集束させる、中赤外の対物レンズ・アセンブリであって、
    前記中赤外のスペクトル領域において動作する、複数の、間隔を置いて離れて配置される、屈折レンズ素子と、
    前記複数のレンズ素子は、前記物体に最も近い、無収差の前部レンズ素子を含み、
    前記前部レンズ素子は、光軸、前記物体に面する前方表面、及び前記物体から隔たって面する後方表面を有し、
    前記前方表面は、前記光軸に沿って前記物体から前部分離距離離れて間隔を置いて配置され、
    前記前部分離距離を調整するために前記物体及び前記前部レンズ素子の少なくとも1つを移動させる移動アセンブリと、
    RMS波面誤差を減少させるために、前記前部分離距離を選択的に調整するように前記移動アセンブリを制御する、制御システムと、を含む、対物レンズ・アセンブリ。
  22. 前記移動アセンブリが前記前部レンズ素子に対して前記物体を移動させる、請求項21に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  23. 前記移動アセンブリが前記物体に対して前記前部レンズ群を移動させる、請求項21に記載の対物レンズ・アセンブリ。
  24. 請求項21に記載の対物レンズ・アセンブリと、
    前記中赤外のスペクトル領域内にあるレーザービームを前記物体に向ける、中赤外レーザーと、を含み、
    前記制御システムは、RMS波面誤差を最小にするために、前記レーザービームの波長に基づいて、前記前部分離距離を選択的に調整するように前記移動アセンブリを制御する、アセンブリ。
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