図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す断面図である。基板処理装置1は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板保持部31と、基板回転機構33と、カップ部4と、トッププレート5と、対向部材移動機構6と、処理液ノズル71とを備え、これらの構成はハウジング11の内部に収容される。また、基板処理装置1は、基板回転機構33等の各構成を制御する制御部12をさらに備える。なお、図2以降の図面では、制御部12の図示を省略する。
基板保持部31は、水平状態で基板9を保持する。基板保持部31は、保持ベース部311と、複数のチャック312と、複数の係合部313と、ベース支持部314とを備える。基板9は、保持ベース部311の上方に配置される。保持ベース部311およびベース支持部314はそれぞれ、上下方向を向く中心軸J1を中心とする略円板状の部材である。保持ベース部311は、ベース支持部314の上方に配置され、ベース支持部314により下方から支持される。保持ベース部311の外径は、ベース支持部314の外径よりも大きい。保持ベース部311は、中心軸J1を中心とする周方向の全周に亘って、ベース支持部314よりも径方向外方に広がる。保持ベース部311は、例えば、比較的高い耐薬品性を有するフッ素樹脂により形成される。
保持ベース部311は、ベース本体部316と、ベース側壁部317とを備える。ベース本体部316は、中心軸J1を中心とする略円板状の部材であり、上面上に複数のチャック312および複数の係合部313が設けられる。ベース側壁部317は、中心軸J1を中心とする略円筒状の部材であり、ベース本体部316の外周部から下方に広がる。ベース側壁部317は、ベース支持部314の周囲においてベース支持部314から径方向外側に離間して配置される。
複数のチャック312は、中心軸J1を中心として略等角度間隔にて、保持ベース部311の上面の外周部に周方向に配置される。基板保持部31では、複数のチャック312により、基板9の外縁部が支持される。複数の係合部313は、中心軸J1を中心として略等角度間隔にて、保持ベース部311の上面の外周部に周方向に配置される。複数の係合部313は、複数のチャック312よりも径方向外側に配置される。
基板回転機構33は、回転機構収容部34の内部に収容される。基板回転機構33および回転機構収容部34は、基板保持部31の下方に配置される。基板回転機構33は、中心軸J1を中心として基板9を基板保持部31と共に回転する。
カップ部4は、中心軸J1を中心とする環状の部材であり、基板9および基板保持部31の径方向外側に配置される。カップ部4は、基板9および基板保持部31の周囲の全周に亘って配置され、基板9から周囲に向かって飛散する処理液等を受ける。カップ部4は、第1ガード41と、第2ガード42と、ガード移動機構43と、排出ポート44とを備える。
第1ガード41は、第1ガード側壁部411と、第1ガード天蓋部412とを有する。第1ガード側壁部411は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。第1ガード天蓋部412は、中心軸J1を中心とする略円環板状であり、第1ガード側壁部411の上端部から径方向内方に広がる。第2ガード42は、第2ガード側壁部421と、第2ガード天蓋部422とを有する。第2ガード側壁部421は、中心軸J1を中心とする略円筒状であり、第1ガード側壁部411よりも径方向外側に位置する。第2ガード天蓋部422は、中心軸J1を中心とする略円環板状であり、第1ガード天蓋部412よりも上方にて第2ガード側壁部421の上端部から径方向内方に広がる。
第1ガード天蓋部412の内径および第2ガード天蓋部422の内径は、基板保持部31の保持ベース部311の外径およびトッププレート5の外径よりも僅かに大きい。第1ガード天蓋部412の上面および下面はそれぞれ、径方向外方に向かうに従って下方に向かう傾斜面である。第2ガード天蓋部422の上面および下面もそれぞれ、径方向外方に向かうに従って下方に向かう傾斜面である。
ガード移動機構43は、第1ガード41を上下方向に移動することにより、基板9からの処理液等を受けるガードを第1ガード41と第2ガード42との間で切り替える。カップ部4の第1ガード41および第2ガード42にて受けられた処理液等は、排出ポート44を介してハウジング11の外部へと排出される。また、第1ガード41内および第2ガード42内のガスも排出ポート44を介してハウジング11の外部へと排出される。
トッププレート5は、平面視において略円形の部材である。トッププレート5は、基板9の上面91に対向する対向部材であり、基板9の上方を遮蔽する遮蔽板である。トッププレート5の外径は、基板9の外径、および、保持ベース部311の外径よりも大きい。トッププレート5は、対向部材本体51と、被保持部52と、複数の係合部53とを備える。対向部材本体51は、例えば、比較的高い耐薬品性を有するフッ素樹脂により形成される。対向部材本体51は、対向部材天蓋部511と、対向部材側壁部512とを備える。対向部材天蓋部511は、中心軸J1を中心とする略円環板状の部材であり、基板9の上面91に対向する。対向部材天蓋部511の中央部には、対向部材開口54が設けられる。対向部材開口54は、例えば、平面視において略円形である。対向部材開口54の直径は、基板9の直径に比べて十分に小さい。対向部材側壁部512は、中心軸J1を中心とする略円筒状の部材であり、対向部材天蓋部511の外周部から下方に広がる。
複数の係合部53は、中心軸J1を中心として略等角度間隔にて、対向部材天蓋部511の下面の外周部に周方向に配置される。複数の係合部53は、対向部材側壁部512の径方向内側に配置される。
被保持部52は、対向部材本体51の上面に接続される。被保持部52は、対向部材筒部521と、対向部材フランジ部522とを備える。対向部材筒部521は、対向部材本体51の対向部材開口54の周囲から上方に突出する略筒状の部位である。対向部材筒部521は、例えば、中心軸J1を中心とする略円筒状である。対向部材フランジ部522は、対向部材筒部521の上端部から径方向外方に環状に広がる。対向部材フランジ部522は、例えば、中心軸J1を中心とする略円環板状である。
対向部材移動機構6は、対向部材保持部61と、対向部材昇降機構62とを備える。対向部材保持部61は、トッププレート5の被保持部52を保持する。対向部材保持部61は、保持部本体611と、本体支持部612と、フランジ支持部613と、支持部接続部614とを備える。保持部本体611は、例えば、中心軸J1を中心とする略円板状である。保持部本体611は、トッププレート5の対向部材フランジ部522の上方を覆う。本体支持部612は、略水平に延びる棒状のアームである。本体支持部612の一方の端部は保持部本体611に接続され、他方の端部は対向部材昇降機構62に接続される。
保持部本体611の中央部からは処理液ノズル71が下方に突出する。処理液ノズル71は、対向部材筒部521に非接触状態で挿入される。以下の説明では、処理液ノズル71と対向部材筒部521との間の空間を「ノズル間隙56」と呼ぶ。
フランジ支持部613は、例えば、中心軸J1を中心とする略円環板状である。フランジ支持部613は、対向部材フランジ部522の下方に位置する。フランジ支持部613の内径は、トッププレート5の対向部材フランジ部522の外径よりも小さい。フランジ支持部613の外径は、トッププレート5の対向部材フランジ部522の外径よりも大きい。支持部接続部614は、例えば、中心軸J1を中心とする略円筒状である。支持部接続部614は、フランジ支持部613と保持部本体611とを対向部材フランジ部522の周囲にて接続する。対向部材保持部61では、保持部本体611は対向部材フランジ部522の上面と上下方向に対向する保持部上部であり、フランジ支持部613は対向部材フランジ部522の下面と上下方向に対向する保持部下部である。
図1に示す位置にトッププレート5が位置する状態では、フランジ支持部613は、トッププレート5の対向部材フランジ部522の外周部に下側から接して支持する。換言すれば、対向部材フランジ部522が、対向部材移動機構6の対向部材保持部61により保持される。これにより、トッププレート5が、基板9および基板保持部31の上方にて、対向部材保持部61により吊り下げられる。以下の説明では、図1に示すトッププレート5の上下方向の位置を「第1の位置」という。トッププレート5は、第1の位置にて、対向部材移動機構6により保持されて基板保持部31から上方に離間する。
フランジ支持部613には、トッププレート5の位置ずれ(すなわち、トッププレート5の移動および回転)を制限する移動制限部616が設けられる。図1に示す例では、移動制限部616は、フランジ支持部613の上面から上方に突出する突起部である。移動制限部616が、対向部材フランジ部522に設けられた孔部に挿入されることにより、トッププレート5の位置ずれが制限される。
対向部材昇降機構62は、トッププレート5を対向部材保持部61と共に上下方向に移動させる。図2は、トッププレート5が図1に示す第1の位置から下降した状態を示す断面図である。以下の説明では、図2に示すトッププレート5の上下方向の位置を「第2の位置」という。すなわち、対向部材昇降機構62は、トッププレート5を第1の位置と第2の位置との間で基板保持部31に対して相対的に上下方向に移動する。第2の位置は、第1の位置よりも下方の位置である。換言すれば、第2の位置は、トッププレート5が第1の位置よりも上下方向において基板保持部31に近接する位置である。
トッププレート5が第2の位置に位置する状態では、トッププレート5の複数の係合部53がそれぞれ、基板保持部31の複数の係合部313と係合する。複数の係合部53は、複数の係合部313により下方から支持される。換言すれば、複数の係合部313はトッププレート5を支持する対向部材支持部である。例えば、係合部313は、上下方向に略平行なピンであり、係合部313の上端部が、係合部53の下端部に上向きに形成された凹部に嵌合する。また、トッププレート5の対向部材フランジ部522は、対向部材保持部61のフランジ支持部613から上方に離間する。これにより、トッププレート5は、第2の位置にて、基板保持部31により保持されて対向部材移動機構6から離間する(すなわち、対向部材移動機構6と非接触状態となる。)。
トッププレート5が基板保持部31により保持された状態では、トッププレート5の対向部材側壁部512の下端が、基板保持部31の保持ベース部311の上面よりも下方に位置する。このため、ベース側壁部317と対向部材側壁部512とは径方向に対向する。以下の説明では、ベース側壁部317の外周面と対向部材側壁部512の内周面との間の径方向の距離を「ギャップ値」という。ギャップ値は、例えば、対向部材側壁部512の下端の上下方向の位置におけるベース側壁部317の外周面と対向部材側壁部512の内周面との間の径方向の距離である。なお、ギャップ値は、上下方向の他の位置におけるベース側壁部317の外周面と対向部材側壁部512の内周面との間の径方向の距離であってもよい。
また、以下の説明では、ベース側壁部317のベース本体部316との接続部近傍の部位を、ベース側壁部317の付け根部分といい、対向部材側壁部512の対向部材天蓋部511との接続部近傍の部位を、対向部材側壁部512の付け根部という。ベース側壁部317の付け根部近傍では、ベース本体部316の上下方向の厚さが、他の部位よりも薄い。換言すれば、ベース本体部316の外周部の上下方向の厚さは、当該外周部以外の部位よりも薄い。ベース側壁部317の付け根部の剛性は、対向部材側壁部512の付け根部の剛性よりも低い。このため、ベース側壁部317は、対向部材側壁部512に比べて径方向に変形しやすい。ベース側壁部317の付け根部と対向部材側壁部512の付け根部との剛性の差は、例えば、ベース側壁部317および対向部材側壁部512の付け根部の厚さ、形状、材料等を異ならせることにより実現される。
トッププレート5が第2の位置に位置する状態で基板回転機構33が駆動されると、トッププレート5は、基板9および基板保持部31と共に回転する。換言すれば、トッププレート5が第2の位置に位置する状態では、トッププレート5は、基板回転機構33により基板9および基板保持部31と共に中心軸J1を中心として回転可能となる。これにより、トッププレート5を回転する機構を基板回転機構33と独立して設ける場合に比べて、基板処理装置1を小型化することができる。
図3は、基板処理装置1におけるガスおよび処理液の供給に係る気液供給部7を示すブロック図である。気液供給部7は、処理液ノズル71と、処理液供給部72と、ガス供給部73とを備える。処理液供給部72は、処理液ノズル71に接続され、処理液ノズル71に処理液を供給する。ガス供給部73は、処理液ノズル71に接続され、処理液ノズル71にガスを供給する。
基板処理装置1では、処理液として、様々な種類の液体が利用される。処理液は、例えば、基板9の薬液処理に用いられる薬液(ポリマー除去液、フッ酸や水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等のエッチング液等)であってもよい。処理液は、例えば、基板9の洗浄処理に用いられる純水(DIW:deionized water)や炭酸水等の洗浄液であってもよい。処理液は、例えば、基板9上の液体を置換するために供給されるイソプロピルアルコール(IPA)等であってもよい。ガス供給部73から供給されるガスは、例えば、窒素(N2)ガス等の不活性ガスである。ガス供給部73からは、不活性ガス以外の様々なガスが供給されてもよい。
図4は、処理液ノズル71の一部を拡大して示す断面図である。処理液ノズル71は、例えば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)により形成される。処理液ノズル71の内部には、処理液流路716と、2つのガス流路717とが設けられる。処理液流路716は、図3に示す処理液供給部72に接続される。2つのガス流路717は、図3に示すガス供給部73に接続される。
処理液供給部72から図4に示す処理液流路716に供給された処理液は、処理液ノズル71の下端面に設けられた吐出口716aから下方へと吐出される。処理液ノズル71から複数種類の処理液が吐出される場合、処理液ノズル71には、複数種類の処理液にそれぞれ対応する複数の処理液流路716が設けられ、複数種類の処理液はそれぞれ複数の吐出口716aから吐出されてもよい。
ガス供給部73から中央のガス流路717(図中の右側のガス流路717)に供給された不活性ガスは、処理液ノズル71の下端面に設けられた下面噴射口717aから下方に向けて供給(例えば、噴射)される。ガス供給部73から外周部のガス流路717に供給された不活性ガスは、処理液ノズル71の側面に設けられた複数の側面噴射口717bから周囲に供給される。
複数の側面噴射口717bは周方向に略等角度間隔にて配列される。複数の側面噴射口717bは、外周部のガス流路717の下端部から周方向に延びる周状流路に接続される。ガス供給部73から供給された不活性ガスは、複数の側面噴射口717bから、斜め下方に向けて供給(例えば、噴射)される。なお、側面噴射口717bは1つだけ設けられてもよい。
処理液供給部72(図3参照)から供給された処理液は、処理液ノズル71の吐出口716aから、図2に示す対向部材開口54を介して基板9の上面91に向けて吐出される。換言すれば、処理液ノズル71は、処理液供給部72から供給された処理液を、対向部材開口54を介して基板9の上面91に供給する。基板処理装置1では、処理液ノズル71は、対向部材本体51の対向部材開口54から下方に突出してもよい。換言すれば、処理液ノズル71の先端が、対向部材開口54の下端縁よりも下方に位置してもよい。処理液供給部72から供給された処理液は、処理液ノズル71内にて対向部材開口54を介して下方に流れ、処理液ノズル71の吐出口716a(図4参照)から基板9の上面91に向けて吐出される。処理液が対向部材開口54を介して供給されるという場合、対向部材開口54よりも上方にて処理液ノズル71から吐出された処理液が対向部材開口54を通過する状態のみならず、対向部材開口54に挿入された処理液ノズル71を介して処理液が吐出される状態も含む。
ガス供給部73(図3参照)から処理液ノズル71に供給された不活性ガスの一部は、処理液ノズル71の下面噴射口717a(図4参照)から、対向部材開口54を介してトッププレート5と基板9との間の空間(以下、「処理空間90」という。)に供給される。また、ガス供給部73から処理液ノズル71に供給された不活性ガスの一部は、処理液ノズル71の複数の側面噴射口717b(図4参照)からノズル間隙56へと供給される。ノズル間隙56では、ガス供給部73からの不活性ガスが、処理液ノズル71の側面から斜め下方に向かって供給されて下方に向かって流れ、処理空間90へと供給される。
基板処理装置1では、基板9の処理は、好ましくは処理空間90に処理液ノズル71から不活性ガスが供給されて処理空間90が不活性ガス雰囲気となっている状態で行われる。換言すれば、ガス供給部73から処理空間90に供給されるガスは、処理雰囲気用ガスである。処理雰囲気用ガスには、処理液ノズル71からノズル間隙56へと供給され、ノズル間隙56を介して処理空間90に供給されるガスも含まれる。
次に、基板処理装置1における基板9の処理の流れの一例について、図5を参照しつつ説明する。まず、トッププレート5が図1に示す第1の位置に位置する状態で、基板9がハウジング11内に搬入され、基板保持部31により保持される(ステップS11)。このとき、トッププレート5は対向部材移動機構6の対向部材保持部61により保持されている。
続いて、対向部材昇降機構62により対向部材保持部61が下方へと移動される。これにより、トッププレート5が第1の位置から第2の位置へと下方に移動し、図2に示すように、トッププレート5が基板保持部31により保持される(ステップS12)。そして、ガス供給部73から処理液ノズル71を介して、ノズル間隙56および処理空間90に不活性ガス(すなわち、処理雰囲気用ガス)の供給が開始される。
次に、基板回転機構33が制御部12(図1参照)により制御されることにより、基板保持部31、基板9およびトッププレート5の回転が開始される(ステップS13)。処理液ノズル71からの不活性ガスの供給は、ステップS13以降も継続される。そして、処理液供給部72から処理液ノズル71へと第1処理液が供給され、第2の位置に位置するトッププレート5の対向部材開口54を介して、回転中の基板9の上面91の中央部に供給される(ステップS14)。
処理液ノズル71から基板9の中央部に供給された第1処理液は、基板9の回転により、基板9の中央部から径方向外方へと拡がり、基板9の上面91全体に付与される。第1処理液は、遠心力により基板9の外縁から径方向外方へと飛散し、ベース側壁部317と対向部材側壁部512との間を通過して処理空間90から排出される。基板処理装置1では、基板保持部31が回転する際に、トッププレート5も中心軸J1を中心として回転する。このため、トッププレート5に第1処理液が付着した場合であっても、当該第1処理液も遠心力により処理空間90から排出される。
処理空間90から排出された第1処理液は、カップ部4の第1ガード41により受けられる。図2に示す第1ガード41の上下方向の位置は、基板9からの処理液を受ける位置であり、以下の説明では「受液位置」という。基板処理装置1では、第1処理液が基板9に対して所定時間付与されることにより、第1処理液による基板9の処理が終了する。
第1処理液は、例えば、ポリマー除去液やエッチング液等の薬液であり、ステップS14において、基板9に対する薬液処理が行われる。なお、第1処理液の供給(ステップS14)は、基板9の回転開始(ステップS13)よりも前に行われてもよい。この場合、静止状態の基板9の上面91全体に第1処理液がパドル(液盛り)され、第1処理液によるパドル処理が行われる。
第1処理液による基板9の処理が終了すると、処理液ノズル71からの第1処理液の供給が停止される。そして、ガード移動機構43により第1ガード41が下方に移動され、図6に示すように、上述の受液位置よりも下方の待避位置へと位置する。これにより、基板9からの処理液を受けるガードが、第1ガード41から第2ガード42に切り替えられる。すなわち、ガード移動機構43は、第1ガード41を受液位置と待避位置との間で上下方向に移動することにより、基板9からの処理液を受けるガードを第1ガード41と第2ガード42との間で切り替えるガード切替機構である。
続いて、処理液供給部72から処理液ノズル71へと第2処理液が供給され、第2の位置に位置するトッププレート5の対向部材開口54を介して、回転中の基板9の上面91の中央部に供給される(ステップS15)。処理液ノズル71から基板9の中央部に供給された第2処理液は、基板9の回転により、基板9の中央部から径方向外方へと拡がり、基板9の上面91全体に付与される。第2処理液は、基板9の外縁から径方向外方へと飛散し、ベース側壁部317と対向部材側壁部512との間を通過して処理空間90から排出される。基板処理装置1では、上述のように、基板保持部31が回転する際に、トッププレート5も中心軸J1を中心として回転する。このため、トッププレート5に第2処理液が付着した場合であっても、当該第2処理液も遠心力により処理空間90から排出される。
処理空間90から排出された第2処理液は、カップ部4の第2ガード42により受けられる。第2処理液が基板9に対して所定時間付与されることにより、第2処理液による基板9の処理が終了する。第2処理液は、例えば、純水や炭酸水等の洗浄液であり、ステップS15において、基板9に対する洗浄処理が行われる。
第2処理液による基板9の処理が終了すると、処理液ノズル71からの第2処理液の供給が停止される。そして、ガス供給部73により処理液ノズル71の側面からノズル間隙56に向けて噴射される不活性ガスの流量が増大する。また、処理液ノズル71の下端面から処理空間90に向けて噴射される不活性ガスの流量も増大する。さらに、基板回転機構33が制御部12(図1参照)により制御されることにより、基板保持部31、基板9およびトッププレート5の回転速度が増大する。これにより、基板9の上面91上に残っている第2処理液等が径方向外方へと移動して基板9の外縁から径方向外方へと飛散し、ベース側壁部317と対向部材側壁部512との間を通過して処理空間90から排出される。処理空間90から排出された第2処理液等は、カップ部4の第2ガード42により受けられる。基板9の回転が所定の時間だけ継続されることにより、基板9の上面91上から処理液を除去する乾燥処理が行われる(ステップS16)。
基板9の乾燥処理が終了すると、基板回転機構33による基板保持部31、基板9およびトッププレート5の回転が停止される(ステップS17)。また、ガス供給部73からノズル間隙56および処理空間90への不活性ガスの供給が停止される。次に、対向部材昇降機構62により対向部材保持部61が上方に移動することにより、トッププレート5が、第2の位置から図1に示す第1の位置へと上方に移動する(ステップS18)。トッププレート5は、基板保持部31から上方に離間して対向部材保持部61により保持される。その後、基板9がハウジング11から搬出される(ステップS19)。基板処理装置1では、複数の基板9に対して、上述のステップS11〜S19が順次行われ、複数の基板9が順次処理される。
基板処理装置1では、上述のように、ステップS16における基板9の乾燥処理の際に、基板保持部31およびトッププレート5の回転速度が増大し、遠心力により基板保持部31およびトッププレート5の一部が変形する。具体的には、図7に示すように、基板保持部31のベース側壁部317およびトッププレート5の対向部材側壁部512が、径方向外方へと拡がるように変形する。ベース側壁部317は、例えば、下端部が付け根部よりも径方向外側に位置するように変形する。対向部材側壁部512も、例えば、下端部が付け根部よりも径方向外側に位置するように変形する。図7では、ベース側壁部317および対向部材側壁部512の変形量を実際によりも大きく描いている。また、図7では、変形前のベース側壁部317および対向部材側壁部512を二点鎖線にて示す。
ベース側壁部317および対向部材側壁部512が変形することにより、ベース側壁部317の外周面と対向部材側壁部512の内周面との間の径方向の距離であるギャップ値が変化する。上述のように、ベース側壁部317の付け根部の剛性は、対向部材側壁部512の付け根部の剛性よりも低く、ベース側壁部317は対向部材側壁部512に比べて径方向に変形しやすい。このため、ベース側壁部317の径方向外方への変形量は、対向部材側壁部512の径方向外方への変形量よりも大きくなり、ギャップ値は小さくなる。例えば、実際の基板保持部31の回転速度は1000〜1500rpmであり、ギャップ値の減少量は0.1mm以上1.0mm未満である。
基板処理装置1では、ステップS14,S15における第1処理液および第2処理液による基板9の処理(以下、「液処理」という。)の際には、ベース側壁部317および対向部材側壁部512の変形量は比較的小さく(あるいは、ほとんど変形せず)、ギャップ値は比較的大きい。このため、基板9上に継続的に供給される第1処理液および第2処理液を、処理空間90から容易に排出することができる。一方、ステップS16における基板9の乾燥処理の際には、ベース側壁部317の変形量は比較的大きく、ギャップ値は比較的小さくなる。このため、処理空間90の雰囲気を容易に制御して所望の雰囲気とすることができる。上述の例では、処理空間90は不活性ガス雰囲気とされる。これにより、基板9の乾燥が促進され、基板9の乾燥処理に要する時間が短縮される。
このように、基板処理装置1では、基板回転機構33(図6参照)により基板保持部31が回転される際に、ベース側壁部317および対向部材側壁部512が遠心力により変形することにより、ギャップ値が基板保持部31の回転速度に応じて変化する。これにより、処理空間90において、雰囲気の制御と処理液の排出とのバランスを、基板保持部31の回転速度により変更することができる。その結果、基板9の好適な処理を実現することができる。
詳細には、ギャップ値は基板保持部31の回転速度の増大に伴って減少するため、回転速度が比較的高く、処理空間90の雰囲気制御が重要視される乾燥処理の際に、ギャップ値を比較的小さくして雰囲気制御を容易に行うことができる。また、回転速度が比較的低く、処理空間90からの処理液の排出が重要視される液処理の際に、ギャップ値を比較的大きくして処理液の排出を容易に行うことができる。
基板処理装置1では、制御部12(図1参照)により基板回転機構33による回転速度が制御されることにより、ギャップ値が制御される。そして、基板9に対する処理の種類に応じて、制御部12がギャップ値を制御することにより、処理空間90からの処理液の排出と雰囲気制御との好ましいバランスを、基板9に対する各処理に合わせて実現することができる。
図7に示す例では、ギャップ値は、基板保持部31の回転速度に応じて、中心軸J1を中心とする周方向の全周に亘って変化する。これにより、処理空間90における雰囲気の制御および処理液の排出について、周方向における均一性を向上することができる。好ましくは、ギャップ値の変化は、全周に亘って略均一である。
また、ギャップ値の変化は、ベース側壁部317および対向部材側壁部512が遠心力により径方向外方へと変形し、ベース側壁部317の変形量が対向部材側壁部512の変形量よりも大きいことにより生じる。このため、基板保持部31の回転速度によるギャップ値の変更を容易に実現することができる。また、ギャップ値を変更するための特別な機構を設ける必要がないため、基板処理装置1の構造を簡素化することができる。さらには、ベース側壁部317および対向部材側壁部512の形状、構造および材料の選択の自由度を向上することもできる。
上述の基板処理装置1では、様々な変更が可能である。
基板処理装置1では、基板回転機構33により基板保持部31が回転される際に、必ずしも、ベース側壁部317および対向部材側壁部512の双方が遠心力により変形する必要はない。ギャップ値は、ベース側壁部317および対向部材側壁部512の少なくとも一方が遠心力により変形することにより、回転速度に応じて変化すればよい。この場合、上述のように、処理空間90において、雰囲気の制御と処理液の排出とのバランスを、基板保持部31の回転速度により変更することができる。その結果、基板9の好適な処理を実現することができる。
また、ギャップ値は、必ずしも周方向の全周に亘って変化する必要はなく、基板保持部31の回転速度に応じて、周方向の少なくとも一部において変化すればよい。この場合も、上述のように、処理空間90において、雰囲気の制御と処理液の排出とのバランスを、基板保持部31の回転速度により変更することができる。その結果、基板9の好適な処理を実現することができる。基板処理装置1では、例えば、それぞれがベース側壁部317の下端から上方に延びる複数のスリットが、略等角度間隔にてベース側壁部317に設けられる。これにより、ベース側壁部317の当該複数のスリット間の部位が、基板保持部31の回転速度に応じて容易に径方向に変化する。
ベース側壁部317が径方向外方へと変形する際には、必ずしも、下端部が径方向の最も外側に位置する必要はなく、例えば、ベース側壁部317の上下方向の中央部が可撓性を有する柔軟な材料(例えば、ゴムのような伸縮性を有する材料)により形成され、遠心力により下端部よりも径方向外側まで変形してもよい。対向部材側壁部512においても同様である。
基板処理装置1では、基板9の液処理および乾燥処理が行われる際に、トッププレート5は必ずしも基板保持部31に保持される必要はない。例えば、トッププレート5は、基板保持部31から離間して基板9の上方に配置され、基板回転機構33とは独立して設けられた他の回転機構により回転されてもよい。
また、基板9の液処理および乾燥処理が行われる際に、トッププレート5は必ずしも回転されなくてもよい。この場合、対向部材側壁部512は変形することなく、基板保持部31の回転時の遠心力によりベース側壁部317が径方向に変形することにより、ギャップ値が回転速度に応じて変化する。具体的には、基板保持部31の回転速度の増大に伴って、ベース側壁部317が径方向外方に変形し、ギャップ値は減少する。
基板処理装置1では、基板保持部31の回転時の遠心力により、ベース側壁部317および対向部材側壁部512の少なくとも一方が、径方向内方へと変形してもよい。例えば、図8に示すように、トッププレート5の対向部材本体51の外周部に、対向部材側壁部512を径方向内方に変形させる側壁部押圧機構55が設けられる。側壁部押圧機構55は、対向部材本体51の外周部にて周方向に略等角度間隔に配置される側壁押圧部551を備える。
各側壁押圧部551は、対向部材天蓋部511の外周部上面上に固定されて略周方向を向く回転軸552と、回転軸552を中心として回転可能な回転部材553とを備える。回転部材553は、回転軸552よりも上方に位置する錘部554と、回転軸552よりも下方にて対向部材側壁部512の外周面に接する側壁接触部555とを備える。錘部554は、好ましくは、回転軸552よりも径方向外側に位置する。
トッププレート5が基板保持部31と共に回転すると、遠心力により錘部554が径方向外方へと移動し、回転部材553が回転軸552を中心として回転する。図8に示す側壁押圧部551の回転部材553は、図8中の時計回りに回転する。これにより、側壁接触部555が対向部材側壁部512を径方向内方に押圧して変形させる。その結果、ギャップ値が、トッププレート5の回転速度の増大に伴って減少する。図8に示す例では、ベース側壁部317は、例えば、基板保持部31の回転時の遠心力により径方向外方に変形してもよく、基板保持部31の回転速度にかかわらず変形しなくてもよい。
あるいは、図8に示す例では、例えば、側壁部押圧機構55により対向部材側壁部512の遠心力による径方向外方への変形が抑えられて対向部材側壁部512が変形せず、ベース側壁部317が遠心力により径方向外方に変形することにより、ギャップ値が回転速度に応じて変化してもよい。
基板処理装置1では、基板9に対する処理の種類と、各処理に適した処理空間90からの処理液の排出と雰囲気制御とのバランスとの関係に合わせて、ギャップ値が、基板保持部31の回転速度の増大に伴って増大してもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。