図1は、本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置1を示す平面図である。図2は、基板処理装置1を図1中のII−IIの位置にて切断した断面図である。基板処理装置1は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、装置収容室であるハウジング11内に収容される。図1では、ハウジング11を破線にて示す。
基板処理装置1は、制御部21と、基板保持部31と、基板回転機構33と、カップ部37と、第1処理液ノズル411と、第2処理液ノズル421と、ノズル移動機構43と、ノズル洗浄部44と、トッププレート51と、対向部材保持部53と、対向部材昇降機構55と、対向部材保持部移動機構57とを備える。制御部21は、基板回転機構33、ノズル移動機構43、ノズル洗浄部44、対向部材昇降機構55、対向部材保持部移動機構57、並びに、後述する第1処理液供給部413、第2処理液供給部423およびガス供給部45等の構成を制御する。図2および以降の図では、制御部21の図示を省略する。
図1では、第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421は、平面視においてトッププレート51から離間し、トッププレート51の周囲のそれぞれの退避位置に位置する。以下の説明では、第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421を区別する必要がない場合は、第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421をまとめて、あるいは、第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421のいずれか一方を、単に「処理液ノズル」ともいう。
基板保持部31は、水平状態で基板9を保持する。基板保持部31は、ベース部311と、複数のチャック312と、複数の係合部313とを備える。ベース部311は、上下方向を向く中心軸J1を中心とする略円板状の部材である。基板9は、ベース部311の上方に配置される。複数のチャック312は、中心軸J1を中心として略等角度間隔にて、ベース部311の上面の外周部に周方向に配置される。基板保持部31では、複数のチャック312により、基板9の外縁部が保持される。複数の係合部313は、中心軸J1を中心として略等角度間隔にて、ベース部311の上面の外周部に周方向に配置される。複数の係合部313は、複数のチャック312よりも径方向外側に配置される。基板回転機構33は、基板保持部31の下方に配置される。基板回転機構33は、中心軸J1を中心として基板9を基板保持部31と共に回転する。
カップ部37は、中心軸J1を中心とする環状の部材であり、基板9および基板保持部31の径方向外側に配置される。カップ部37は、基板9および基板保持部31の周囲を全周に亘って覆い、基板9から周囲に向かって飛散する処理液等を受ける。カップ部37の底部には、図示省略の排出ポートが設けられる。カップ部37にて受けられた処理液等は、当該排出ポートを介してハウジング11の外部へと排出される。また、当該排出ポートを介してカップ部37内のガスがハウジング11の外部へと排出される。
トッププレート51は、平面視において略円形の部材である。トッププレート51は、基板9の上面91に対向する対向部材であり、基板9の上方を遮蔽する遮蔽板である。トッププレート51は、対向部材本体511と、被保持部512と、複数の係合部513とを備える。対向部材本体511は、中心軸J1を中心とする略円板状の部材である。対向部材本体511は、基板9の上面91に対向する。対向部材本体511の中央部には、対向部材開口514が設けられる。対向部材開口514は、例えば、平面視において略円形である。対向部材開口514の直径は、基板9の直径に比べて十分に小さい。複数の係合部513は、中心軸J1を中心として略等角度間隔にて、対向部材本体511の下面の外周部に周方向に配置される。
被保持部512は、対向部材本体511の対向部材開口514の周囲から上方に突出する筒状の部位である。被保持部512は、フランジ接続部515と、対向部材フランジ部516とを備える。フランジ接続部515は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。フランジ接続部515は、対向部材開口514のエッジ近傍において対向部材本体511に接続される。対向部材フランジ部516は、フランジ接続部515の上端部から径方向外方に広がる。対向部材フランジ部516は、例えば、中心軸J1を中心とする略円環板状である。
対向部材保持部53は、トッププレート51の被保持部512を保持する。対向部材保持部53は、保持部本体531と、第1フランジ支持部532と、第1接続部533と、第2フランジ支持部534と、第2接続部535とを備える。保持部本体531は、略水平に延びる棒状のアームである。保持部本体531の基部(すなわち、図2中の右側の端部)は、対向部材昇降機構55および対向部材保持部移動機構57に接続される。基板処理装置1では、対向部材保持部53、対向部材昇降機構55および対向部材保持部移動機構57により、トッププレート51を搬送する対向部材搬送機構が構成される。対向部材搬送機構は、他の構成を含んでいてもよい。
保持部本体531の内部には、保持部本体531の略全長に亘る保持部内部空間536が設けられる。保持部本体531の先端部の下面には、保持部内部空間536に連通する開口537aが設けられる。開口537aは、トッププレート51の被保持部512の上方に設けられる。
第1フランジ支持部532、第1接続部533、第2フランジ支持部534および第2接続部535は、保持部本体531の先端部に取り付けられる。第1フランジ支持部532および第1接続部533は、保持部本体531の先端近傍に位置し、第2フランジ支持部534および第2接続部535は、第1フランジ支持部532および第1接続部533と保持部本体531の基部との間に配置される。第2フランジ支持部534は、トッププレート51のフランジ接続部515を挟んで、第1フランジ支持部532と反対側に位置する。
図3は、対向部材保持部53の先端部近傍を拡大して示す斜視図である。図3では、保持部本体531および対向部材本体511の図示を省略している。図1ないし図3に示すように、第1接続部533および第2接続部535はそれぞれ、保持部本体531の下面から下方に広がる略平板状の部位である。第1接続部533および第2接続部535はそれぞれ、保持部本体531の長手方向に略垂直な方向に広がる。第1フランジ支持部532は、第1接続部533の下端部から略水平に広がる略平板状の部位である。第1フランジ支持部532は、第1接続部533から保持部本体531の基部側へと広がる。第2フランジ支持部534は、第2接続部535の下端部から略水平に広がる略平板状の部位である。第2フランジ支持部534は、第2接続部535から保持部本体531の先端側へと広がる。
保持部本体531の長手方向における第1フランジ支持部532と第2フランジ支持部534との間の距離は、トッププレート51の対向部材フランジ部516の外径よりも小さく、かつ、フランジ接続部515の外径よりも大きい。保持部本体531の長手方向における第1接続部533と第2接続部535との間の距離は、対向部材フランジ部516の外径よりも大きい。図1および図2に示すように、開口537aは、保持部本体531の長手方向において、第1接続部533と第2接続部535との間に位置する。
図1に示す例では、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534は、第1接続部533および第2接続部535を介して、保持部本体531に固定される。換言すれば、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534は、対向部材保持部53における非可動部であり、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534の保持部本体531に対する相対位置は変化しない。
図2に示す位置にトッププレート51が位置する状態では、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534はそれぞれ、トッププレート51の対向部材フランジ部516の一部に下側から接して支持する。これにより、トッププレート51が、基板9および基板保持部31の上方にて、対向部材保持部53により吊り下げられる。以下の説明では、図2に示すトッププレート51の上下方向の位置を「第1の位置」という。トッププレート51は、第1の位置にて、対向部材保持部53により保持されて基板保持部31から上方に離間する。
第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534には、トッププレート51の位置ずれ(すなわち、トッププレート51の移動および回転)を制限する移動制限部(図示省略)が設けられる。移動制限部は、例えば、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534の上面から上方に突出する突起部と、対向部材フランジ部516に設けられて当該突起部が挿入される貫通孔とを含む。あるいは、移動制限部は、例えば、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534の上面から上方に突出して対向部材フランジ部516の外縁に接する突起部を含む。後述する基板処理装置1aにおいても同様である。
対向部材昇降機構55は、トッププレート51を対向部材保持部53と共に上下方向に移動させる。図4は、トッププレート51が図2に示す第1の位置から下降した状態を示す断面図である。以下の説明では、図4に示すトッププレート51の上下方向の位置を「第2の位置」という。すなわち、対向部材昇降機構55は、トッププレート51を第1の位置と第2の位置との間で上下方向に移動する。第2の位置は、第1の位置よりも下方の位置である。換言すれば、第2の位置は、トッププレート51が第1の位置よりも上下方向において基板保持部31に近接する位置である。
トッププレート51が第2の位置に位置する状態では、トッププレート51の複数の係合部513がそれぞれ、基板保持部31の複数の係合部313と係合する。複数の係合部513は、複数の係合部313により下方から支持される。例えば、係合部313は、上下方向に略平行なピンであり、係合部313の上端部が、係合部513の下端部に上向きに形成された凹部に嵌合する。また、トッププレート51の対向部材フランジ部516は、対向部材保持部53の第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534から上方に離間する。これにより、トッププレート51は、第2の位置にて、基板保持部31により保持されて対向部材保持部53から離間する(すなわち、対向部材保持部53と非接触状態となる。)。トッププレート51が第2の位置に位置する状態で基板回転機構33が駆動されると、トッププレート51は基板保持部31と共に回転する。
対向部材保持部53は、トッププレート51が第2の位置に位置する状態で、すなわち、対向部材フランジ部516が第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534から上方に離間した状態で、水平移動が可能な状態となる。対向部材保持部移動機構57は、水平移動が可能となった状態の対向部材保持部53を水平に移動させる。図1に示す例では、対向部材保持部53の移動は、第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421がそれぞれの退避位置に位置する状態で行われる。対向部材保持部移動機構57が保持部本体531を水平に回転することにより、対向部材保持部53が水平に移動する。
図1および図2に示すように、ノズル移動機構43は、第1ノズル昇降機構431、第1ノズル回転機構432、第2ノズル昇降機構433および第2ノズル回転機構434を備える。第1処理液ノズル411は、第1ノズル昇降機構431および第1ノズル回転機構432から水平方向に延びる第1アーム412の先端部に接続される。第1ノズル昇降機構431は、第1処理液ノズル411を第1アーム412と共に上下方向に移動する。第1ノズル回転機構432は、第1処理液ノズル411を第1アーム412と共に水平に回転する。
図1に示すように、第2処理液ノズル421は、第2ノズル昇降機構433および第2ノズル回転機構434から水平方向に延びる第2アーム422の先端部に接続される。第2ノズル昇降機構433は、第2処理液ノズル421を第2アーム422と共に上下方向に移動する。第2ノズル回転機構434は、第2処理液ノズル421を第2アーム422と共に水平に回転する。
図5は、基板処理装置1を示す平面図である。対向部材保持部53は、対向部材保持部移動機構57により、図1に示すようにトッププレート51の上方の位置と、図5に示すようにトッププレート51の周囲の位置(すなわち、トッププレート51の上方を避けた位置)との間で移動する。以下の説明では、図1に示す対向部材保持部53の平面視における位置を「保持位置」という。また、図5に示す対向部材保持部53の平面視における位置を「退避位置」という。
基板処理装置1では、トッププレート51が第2の位置に位置する状態で、対向部材保持部移動機構57による保持部本体531の回転により、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が水平に移動する。これにより、保持位置に位置する対向部材保持部53の第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が、対向部材フランジ部516およびフランジ接続部515から径方向外方へと離間して退避位置へと移動する。また、退避位置に位置する対向部材保持部53の第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が、保持位置へと移動して対向部材フランジ部516の下方に配置される。
図6は、基板処理装置1におけるガスおよび処理液の供給に係る気液供給部4を示すブロック図である。気液供給部4は、第1処理液ノズル411と、第2処理液ノズル421と、第1処理液供給部413と、第2処理液供給部423と、ガス供給部45とを備える。第1処理液供給部413は、第1処理液ノズル411に接続される。第1処理液供給部413は、後述するように、第1処理液ノズル411が基板9の上方に位置する状態で、第1処理液ノズル411を介して基板9の上面91に第1処理液を供給する。第2処理液供給部423は、第2処理液ノズル421に接続される。第2処理液供給部423は、後述するように、第2処理液ノズル421が基板9の上方に位置する状態で、第2処理液ノズル421を介して基板9の上面91に第2処理液を供給する。ガス供給部45は、対向部材保持部53に接続され、対向部材保持部53の保持部内部空間536にガスを供給する。ガス供給部45は、また、第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421にも接続され、第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421にガスを供給する。
基板処理装置1では、第1処理液および第2処理液として、様々な種類の液体が利用される。第1処理液および第2処理液はそれぞれ、例えば、基板9の薬液処理に用いられる薬液(例えば、ポリマー除去液、フッ酸や水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等のエッチング液)であってもよい。第1処理液および第2処理液はそれぞれ、例えば、基板9の洗浄処理に用いられる純水(DIW:deionized water)や炭酸水等の洗浄液であってもよい。第1処理液および第2処理液はそれぞれ、例えば、基板9上の液体を置換するために供給されるイソプロピルアルコール(IPA)であってもよい。第1処理液と第2処理液とは、好ましくは異なる種類の液体である。ガス供給部45から供給されるガスは、例えば、窒素(N2)ガス等の不活性ガスである。ガス供給部45からは、不活性ガス以外の様々なガスが供給されてもよい。
図7は、第1処理液ノズル411の一部を拡大して示す断面図である。第1処理液ノズル411は、例えば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)により形成される。第1処理液ノズル411の内部には、処理液流路416と、2つのガス流路417とが設けられる。処理液流路416は、図6に示す第1処理液供給部413に接続される。2つのガス流路417は、図6に示すガス供給部45に接続される。
第1処理液供給部413から処理液流路416に供給された第1処理液は、第1処理液ノズル411の下端面に設けられた吐出口416aから下方へと吐出される。ガス供給部45から中央のガス流路417(図中の右側のガス流路417)に供給された不活性ガスは、第1処理液ノズル411の下端面に設けられた下面噴射口417aから下方に向けて供給(例えば、噴射)される。ガス供給部45から外周部のガス流路417に供給された不活性ガスは、第1処理液ノズル411の外側面に設けられた複数の側面噴射口417b,417c,417dから周囲に供給される。
複数の側面噴射口417bは周方向に略等角度間隔にて配列される。複数の側面噴射口417bは、外周部のガス流路417の下端部から周方向に延びる周状流路に接続される。複数の側面噴射口417cは、複数の側面噴射口417bよりも上方において、周方向に略等角度間隔にて配列される。複数の側面噴射口417cは、当該ガス流路417から周方向に延びる周状流路に接続される。複数の側面噴射口417dは、複数の側面噴射口417cよりも上方において、周方向に略等角度間隔にて配列される。複数の側面噴射口417dは、当該ガス流路417から周方向に延びる周状流路に接続される。第1処理液ノズル411では、他のガス流路417が設けられ、当該他のガス流路417に側面噴射口417cや側面噴射口417dが接続されてもよい。
ガス供給部45(図6参照)から供給された不活性ガスは、複数の側面噴射口417bから、斜め下方に向けて供給(例えば、噴射)され、複数の側面噴射口417cから、斜め上方に向けて供給(例えば、噴射)される。また、ガス供給部45から供給された不活性ガスは、複数の側面噴射口417dから、およそ水平に供給(例えば、噴射)される。
なお、側面噴射口417b,417c,417dは、それぞれ1つだけ設けられてもよい。第2処理液ノズル421の構造は、図7に示す第1処理液ノズル411の構造と同様である。第2処理液ノズル421では、下端面に設けられた吐出口から、第2処理液が吐出される。
図8は、基板処理装置1を示す断面図である。図8では、トッププレート51が第2の位置にて基板保持部31により保持された状態を示す。また、対向部材保持部53は、対向部材保持部移動機構57により保持位置から退避位置に退避している。図5および図8に示すように、第1処理液ノズル411は、対向部材保持部53が退避した状態で、第1ノズル昇降機構431および第1ノズル回転機構432により退避位置から移動し、トッププレート51の被保持部512の上部開口517から被保持部512に挿入される。第1処理液ノズル411は、被保持部512の内側に位置する。換言すれば、第1処理液ノズル411の外側面は、被保持部512の内側面と径方向に対向する。以下の説明では、図8に示す第1処理液ノズル411の位置を「供給位置」という(第2処理液ノズル421においても同様)。図8に示す例では、供給位置に位置する第1処理液ノズル411の先端(すなわち、下端)は、対向部材本体511の対向部材開口514の下端縁よりも上方に位置する。第1処理液ノズル411の先端は、上下方向において対向部材開口514の下端縁と同じ位置に位置してもよい。
第1処理液供給部413(図6参照)から供給された第1処理液は、第1処理液ノズル411の吐出口416a(図7参照)から、対向部材開口514を介して基板9の上面91に向けて吐出される。また、ガス供給部45(図6参照)から供給された不活性ガスの一部は、第1処理液ノズル411の下面噴射口417a(図7参照)から、対向部材開口514を介してトッププレート51と基板9との間の空間90(以下、「処理空間90」という。)に供給される。
基板処理装置1では、図9に示すように、第1処理液ノズル411が、対向部材本体511の対向部材開口514から下方に突出してもよい。換言すれば、第1処理液ノズル411の先端が、対向部材開口514の下端縁よりも下方に位置する。ガス供給部45から供給された不活性ガスの一部は、第1処理液ノズル411内にて対向部材開口514を介して下方に流れ、第1処理液ノズル411の下面噴射口417aから処理空間90に供給される。第1処理液供給部413から供給された第1処理液は、第1処理液ノズル411内にて対向部材開口514を介して下方に流れ、第1処理液ノズル411の吐出口416aから基板9の上面91に向けて吐出される。以下の説明では、第1処理液が対向部材開口514を介して供給されるという場合、対向部材開口514よりも上方にて第1処理液ノズル411から吐出された第1処理液が対向部材開口514を通過する状態のみならず、図9のように、対向部材開口514に挿入された第1処理液ノズル411を介して第1処理液が吐出される状態も含む。後述する第2処理液ノズル421および第2処理液に関しても同様である。
図10は、図8中の第1処理液ノズル411およびその近傍を拡大して示す断面図である。図10では、トッププレート51は第2の位置に位置する。第1処理液ノズル411は、ノズル本体415と、ノズルフランジ部414とを備える。ノズル本体415は略円柱状であり、被保持部512のフランジ接続部515に挿入される。ノズルフランジ部414は、ノズル本体415の上端部に接続される。ノズルフランジ部414は、ノズル本体415の上部から径方向外方に広がる略円板状の部位である。ノズルフランジ部414は、対向部材フランジ部516の上面に対向する。
図10に示す例では、対向部材フランジ部516の上面とノズルフランジ部414の下面との間にラビリンス54が形成される。詳細には、対向部材フランジ部516の上面から上方に突出する第1突出部541と、供給位置に位置する第1処理液ノズル411のノズルフランジ部414の下面から下方に突出する2つの第2突出部543とにより、周方向の全周に亘ってラビリンス54が形成される。第1突出部541および2つの第2突出部543は、中心軸J1を中心とする略円筒状であり、その直径は互いに異なる。第1突出部541の直径は、内側の第2突出部543の直径よりも大きく、外側の第2突出部543の直径よりも小さい。第1突出部541の上端は、2つの第2突出部543の下端よりも上方に位置する。第2の位置に位置するトッププレート51が基板保持部31と共に回転する際には、2つの第2突出部543は回転せず、第1突出部541が2つの第2突出部543の間にて回転する。
第1処理液ノズル411が供給位置に位置する状態では、各側面噴射口417b,417cは、フランジ接続部515の内側面と径方向に対向する。ガス供給部45から第1処理液ノズル411に供給された不活性ガスの一部は、第1処理液ノズル411の外側面の複数の側面噴射口417bおよび複数の側面噴射口417cから、被保持部512の内側面と第1処理液ノズル411の外側面との間の間隙518に供給される。間隙518では、ガス供給部45からの不活性ガスが、第1処理液ノズル411の外側面から斜め下方および斜め上方に向かって供給される。側面噴射口417bから斜め下方に供給された不活性ガスは、間隙518を下方に向かって流れ、処理空間90へと供給される。側面噴射口417cから斜め上方に供給された不活性ガスは、間隙518を上方に向かって流れ、被保持部512の上部開口517へと至る。
また、各側面噴射口417dは、対向部材フランジ部516よりも上方にてラビリンス54と径方向に対向する。ガス供給部45から第1処理液ノズル411に供給された不活性ガスの一部は、第1処理液ノズル411の外側面の複数の側面噴射口417dから、ラビリンス54に向けておよそ水平に供給される。側面噴射口417dから水平に供給された不活性ガスは、側面噴射口417cから供給されて上部開口517へと至った不活性ガスと共に、ラビリンス54を介してラビリンス54の周方向外側へと流れる。第2処理液ノズル421が供給位置に位置する状態においても、同様である。
図11は、基板処理装置1を示す平面図である。図11では、第1処理液ノズル411は、第1ノズル昇降機構431および第1ノズル回転機構432により、図5に示すトッププレート51の上方の供給位置から移動し、図11に示すように、トッププレート51の上方から離間したトッププレート51の周囲の退避位置に位置している。また、第2処理液ノズル421は、第2ノズル昇降機構433および第2ノズル回転機構434により、図5に示すトッププレート51の周囲の退避位置から移動し、図11に示すように、トッププレート51の上方の供給位置に位置している。第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421の退避位置は、当該退避位置にて第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421の揺動が許容される程度の広がりを有する空間(すなわち、退避空間)をも含む概念である。
第2処理液ノズル421は、図10に示す第1処理液ノズル411と同様に、上述の供給位置において、トッププレート51の被保持部512の上部開口517から被保持部512の内側に挿入される。また、第2処理液ノズル421の先端(すなわち、下端)は、図10に示す第1処理液ノズル411と同様に、上述の供給位置において、対向部材本体511の対向部材開口514の下端縁よりも上方に位置する。第2処理液ノズル421の先端は、上下方向において対向部材開口514の下端縁と同じ位置に位置してもよい。
図5および図11に示す第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421の供給位置は、詳細には、トッププレート51の対向部材開口514の上方の位置である。また、第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421のそれぞれの退避位置は、基板保持部31の周囲の位置である。ノズル移動機構43は、第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421を、供給位置とそれぞれの退避位置との間で個別に移動する。
ノズル洗浄部44は、第1洗浄部441と、第2洗浄部442とを備える。第1洗浄部441は、第1処理液ノズル411の退避位置近傍に設けられる。第1洗浄部441は、退避位置に位置する第1処理液ノズル411を洗浄する。第1洗浄部441は、例えば、第1処理液ノズル411に向けて純水等の洗浄液を供給することにより、第1処理液ノズル411の洗浄を行う。第2洗浄部442は、第2処理液ノズル421の退避位置近傍に設けられる。第2洗浄部442は、図1に示す退避位置に位置する第2処理液ノズル421を洗浄する。第2洗浄部442は、例えば、第2処理液ノズル421に向けて純水等の洗浄液を供給することにより、第2処理液ノズル421の洗浄を行う。第1洗浄部441および第2洗浄部442では、例えば、洗浄終了後の第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421の乾燥も行われる。第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421の洗浄および乾燥の際には、第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421が退避位置(すなわち、退避空間)にて揺動されてもよい。
次に、基板処理装置1における基板9の処理の流れの一例について、図12Aおよび図12Bを参照しつつ説明する。まず、トッププレート51が図2に示す第1の位置に位置する状態で、基板9がハウジング11内に搬入され、基板保持部31により保持される(ステップS11)。このとき、トッププレート51は対向部材保持部53により保持されており、第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421は、それぞれの退避位置に位置する。
続いて、制御部21(図1参照)により対向部材昇降機構55が制御されることにより、対向部材保持部53が下方へと移動する。これにより、トッププレート51が第1の位置から第2の位置へと下方に移動し、トッププレート51が基板保持部31により保持される(ステップS12)。ガス供給部45から対向部材保持部53の保持部内部空間536に供給された不活性ガスは、被保持部512の上部開口517を介して下方へと流れ、対向部材開口514を介して処理空間90に供給される。
ステップS12では、対向部材保持部53の第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534は、トッププレート51の対向部材フランジ部516から下方に離間している。この状態で、制御部21により対向部材保持部移動機構57が制御されることにより、対向部材保持部53が水平に回転する。これにより、対向部材保持部53がトッププレート51の上方の保持位置から退避し、上述の退避位置へと移動する(ステップS13)。
次に、対向部材保持部53が退避位置に退避した状態で、制御部21により第1ノズル昇降機構431および第1ノズル回転機構432が制御されることにより、第1処理液ノズル411が退避位置から移動し、供給位置に位置する(ステップS14)。第1処理液ノズル411は、図8および図10に示すように、トッププレート51の被保持部512の上部開口517から挿入され、被保持部512の内側に位置する。
第1処理液ノズル411が供給位置に位置すると、制御部21によりガス供給部45が制御されることにより、第1処理液ノズル411の下面噴射口417aから不活性ガスが処理空間90に供給される。また、第1処理液ノズル411の側面噴射口417b,417cから、トッププレート51の被保持部512の内側面と第1処理液ノズル411の外側面との間の間隙518に不活性ガスが供給される。さらに、第1処理液ノズル411の側面噴射口417dから、対向部材フランジ部516の上面とノズルフランジ部414の下面との間のラビリンス54に向けて不活性ガスが供給される。
また、制御部21により基板回転機構33が制御されることにより、基板保持部31、基板9およびトッププレート51の回転が開始される(ステップS15)。第1処理液ノズル411からの不活性ガスの供給は、ステップS15以降も継続される。なお、トッププレート51等の回転開始(ステップS15)は、第1処理液ノズル411の供給位置への移動(ステップS14)よりも前に行われてもよい。例えば、ステップS15は、ステップS12とステップS13との間に行われてもよい。この場合、ステップS13では、対向部材保持部53は回転中のトッププレート51から離間して退避位置へと移動する。
そして、第1処理液供給部413により、第1処理液ノズル411が供給位置に位置する状態で、第1処理液が、第1処理液ノズル411から第2の位置に位置するトッププレート51の対向部材開口514を介して、回転中の基板9の上面91の中央部に供給される(ステップS16)。供給位置に位置する第1処理液ノズル411から基板9の中央部に供給された第1処理液は、基板9の回転により、基板9の中央部から径方向外方へと広がり、基板9の上面91全体に付与される。第1処理液は、基板9の外縁から径方向外方へと飛散し、カップ部37により受けられる。第1処理液が所定時間付与されることにより、第1処理液による基板9の処理が終了する。
第1処理液は、例えば、ポリマー除去液やエッチング液等の薬液であり、ステップS16において、基板9に対する薬液処理が行われる。なお、第1処理液の供給(ステップS16)は、基板9の回転開始(ステップS15)よりも前に行われてもよい。この場合、静止状態の基板9の上面91全体に第1処理液がパドル(液盛り)され、第1処理液によるパドル処理が行われる。
第1処理液による基板9の処理が終了すると、第1処理液ノズル411からの第1処理液の供給が停止される。そして、第1ノズル昇降機構431および第1ノズル回転機構432により、第1処理液ノズル411が供給位置から退避位置へと移動する(ステップS17)。
基板処理装置1では、制御部21により第2ノズル昇降機構433および第2ノズル回転機構434が制御されることにより、第2処理液ノズル421が退避位置から供給位置へと移動する(ステップS18)。第2処理液ノズル421は、図11に示すように、対向部材保持部53が退避位置に退避した状態で、トッププレート51の被保持部512の上部開口517から挿入され、被保持部512の内側に位置する。第2処理液ノズル421の移動(ステップS18)は、好ましくは、第1処理液ノズル411の移動(ステップS17)と並行して行われる。なお、ステップS18は、ステップS17の完了後に行われてもよい。
第2処理液ノズル421が供給位置に位置すると、ガス供給部45からの不活性ガスは、第2処理液ノズル421の下面噴射口から処理空間90に供給される。また、当該不活性ガスは、第2処理液ノズル421の外側面の側面噴射口から、間隙518およびラビリンス54に供給される。
続いて、制御部21により第2処理液供給部423が制御されることにより、第2処理液ノズル421が供給位置に位置する状態で、第2処理液が、第2処理液ノズル421から第2の位置に位置するトッププレート51の対向部材開口514を介して、回転中の基板9の上面91の中央部に供給される(ステップS19)。供給位置に位置する第2処理液ノズル421から基板9の中央部に供給された第2処理液は、基板9の回転により、基板9の中央部から径方向外方へと広がり、基板9の上面91全体に付与される。第2処理液は、基板9の外縁から径方向外方へと飛散し、カップ部37により受けられる。第2処理液が所定時間付与されることにより、第2処理液による基板9の処理が終了する。第2処理液は、例えば、純水や炭酸水等の洗浄液であり、ステップS19において、基板9に対する洗浄処理が行われる。
基板処理装置1では、第2処理液ノズル421の移動(ステップS18)または第2処理液の供給(ステップS19)と並行して、第1洗浄部441により、退避位置に位置する第1処理液ノズル411の洗浄が行われる(ステップS20)。
第2処理液による基板9の処理が終了すると、第2処理液ノズル421からの第2処理液の供給が停止される。基板9の回転は維持され、基板9の乾燥処理が行われる。乾燥処理の際の基板9の回転速度は、ステップS19における第2処理液による基板9の処理の際の回転速度よりも速い。また、第2ノズル昇降機構433および第2ノズル回転機構434により、第2処理液ノズル421が供給位置から退避位置へと移動する(ステップS21)。そして、第2洗浄部442により、退避位置に位置する第2処理液ノズル421の洗浄が行われる(ステップS22)。
また、対向部材保持部移動機構57により、対向部材保持部53が水平に回転し、退避位置から保持位置へと移動する(ステップS23)。このとき、対向部材保持部53の第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534は、第2の位置にて回転中のトッププレート51の対向部材フランジ部516から下方に離間している。
続いて、基板回転機構33による基板保持部31、基板9およびトッププレート51の回転が停止する(ステップS24)。次に、対向部材昇降機構55により対向部材保持部53が上方に移動することにより、トッププレート51が第2の位置から第1の位置へと上方に移動する(ステップS25)。トッププレート51は、基板保持部31から上方に離間して対向部材保持部53により保持される。その後、基板9がハウジング11から搬出される(ステップS26)。
ステップS23〜S26は、ステップS22の終了後に行われてもよい。あるいは、ステップS22は、ステップS23〜S26のいずれか、または、その複数と並行して行われてもよい。ステップS20も、例えば、ステップS22と並行して行われてもよい。ステップS23は、ステップS21よりも後、かつ、ステップS25よりも前に行われていればよい。例えば、ステップS23は、ステップS24よりも後、すなわち、トッププレート51等の回転停止後に行われてもよい。
上述のように、第1処理液および第2処理液による基板9の処理は、トッププレート51が第2の位置に位置する際に行われ、基板9の搬出入は、トッププレート51が第1の位置に位置する際に行われる。したがって、上記第1の位置および第2の位置はそれぞれ、「非処理位置」および「処理位置」と捉えることもできる。
基板処理装置1では、複数の基板9に対して、上述のステップS11〜S26が順次行われ、複数の基板9が処理される。なお、ステップS22は、ステップS26の終了後、次の基板9が搬入される前に行われてもよく、次の基板9に対するステップS11〜S17と並行して行われてもよい。あるいは、ステップS22は、次の基板9に対するステップS17とステップS18との間で行われてもよい。
以上に説明したように、基板処理装置1では、トッププレート51は、第1の位置にて対向部材保持部53により保持されるとともに、基板保持部31から上方に離間する。トッププレート51は、また、第2の位置にて基板保持部31により保持され、基板回転機構33により基板保持部31と共に回転する。ガス供給部45は、トッププレート51と基板9との間の処理空間90にガスを供給する。これにより、処理空間90を所望のガス雰囲気として、基板9の処理を当該ガス雰囲気にて行うことができる。例えば、処理空間90に不活性ガスを供給する場合、基板9を不活性ガス雰囲気(すなわち、低酸素雰囲気)にて処理することができる。
基板処理装置1では、また、ガス供給部45により、トッププレート51の被保持部512の内側面と、被保持部512の内側に位置する処理液ノズル(すなわち、供給位置に位置する第1処理液ノズル411または第2処理液ノズル421)の外側面との間の間隙518にガスが供給される。このため、基板9と共に回転するトッププレート51と、静止状態の処理液ノズルとの間の間隙518を、当該ガスにてシールすることができる。これにより、トッププレート51と処理液ノズルとの間の間隙518から、外気(すなわち、処理空間90の周囲の雰囲気)が処理空間90に進入することを抑制することができる。その結果、処理空間90を所望のガス雰囲気に維持し、基板9の当該ガス雰囲気における処理を容易に行うことができる。上述の「外気」は、ハウジング11内における処理空間90の周囲の雰囲気、すなわち、トッププレート51および基板保持部31の周囲の雰囲気を意味する。以下の説明においても同様である。
上述のように、基板処理装置1では、第1処理液ノズル411から第1処理液を基板9に供給する間(ステップS16)、ガス供給部45からのガスが第1処理液ノズル411から供給され、第2処理液ノズル421から第2処理液を基板9に供給する間(ステップS19)、ガス供給部45からのガスが第2処理液ノズル421から供給される。これにより、第1処理液および第2処理液による基板9の処理と並行してガス供給部45からのガスを処理空間90に供給する構造を簡素化することができる。
基板処理装置1では、トッププレート51が第2の位置に位置する状態で対向部材保持部53をトッププレート51の上方から退避させる対向部材保持部移動機構57が設けられる。基板処理装置1では、トッププレート51が回転する際に、トッププレート51の上方から対向部材保持部53が退避することにより、トッププレート51の上方における対向部材保持部53による気流の乱れを抑制することができる。また、トッププレート51の上面の形状や当該上面への追加構造の配置の自由度を向上することができる。
さらに、基板処理装置1では、対向部材保持部53が退避した状態で処理液ノズル(すなわち、第1処理液ノズル411または第2処理液ノズル421)が被保持部512の上部開口517から内側に挿入され、ガス供給部45からのガスが処理液ノズルの外側面から間隙518に直接的に供給される。これにより、間隙518へのガスの供給を容易に行うことができる。なお、ガス供給部45から対向部材保持部53を介してのガスの供給は省略されてもよい。この場合、対向部材保持部53は、例えばおよそ中実の部材であってよい。これにより、対向部材保持部53の構造を簡素化することができる。
ガス供給部45からのガスは、供給位置に位置する処理液ノズル(すなわち、被保持部512に挿入された第1処理液ノズル411または第2処理液ノズル421)の外側面から斜め上方および斜め下方に向かって供給される。これにより、被保持部512の上部開口517から間隙518に外気が進入することを、さらに抑制することができる。
基板処理装置1では、対向部材フランジ部516の上面とノズルフランジ部414の下面との間にラビリンス54が形成される。これにより、被保持部512近傍の外気、すなわち、対向部材フランジ部516の下側およびフランジ接続部515の径方向外側の外気が、対向部材フランジ部516とノズルフランジ部414との間から、被保持部512の上部開口517を介して間隙518および処理空間90へと進入することを抑制することができる。さらに、ガス供給部45からのガスが、処理液ノズルの外側面からラビリンス54に向けて供給されることにより、対向部材フランジ部516とノズルフランジ部414との間から間隙518に外気が進入することを、より一層抑制することができる。
基板処理装置1では、制御部21による制御により、第1処理液ノズル411が供給位置に位置する状態で、対向部材開口514を介して第1処理液が基板9に供給され、第1処理液ノズル411が供給位置から退避位置へと移動する。そして、第2処理液ノズル421が退避位置から供給位置へと移動し、対向部材開口514を介して第2処理液が基板9に供給される。これにより、1つの処理液ノズルから複数種類の処理液を順次供給する場合に比べて、複数種類の処理液の混液を抑制または防止することができる。また、供給位置から第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421を退避させることができるため、トッププレート51の被保持部512の内側面等に処理液が付着したとしても、当該処理液を容易に除去することができる。
第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421は、供給位置において、対向部材開口514の周囲から上方に突出する被保持部512の上部開口517から、被保持部512の内側に挿入される。これにより、外気が対向部材開口514を介して処理空間90に進入することを抑制することができる。その結果、処理空間90を所望のガス雰囲気に維持し、基板9の当該ガス雰囲気における処理を容易に行うことができる。
第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421の先端は、供給位置において、対向部材開口514の下端縁よりも上方、または、上下方向において当該下端縁と同じ位置に位置する。これにより、第1処理液ノズル411から供給された第1処理液が、基板9上にて跳ね返る等して第1処理液ノズル411の先端部に付着することを抑制することができる。同様に、第2処理液ノズル421から供給された第2処理液が、基板9上にて跳ね返る等して第2処理液ノズル421の先端部に付着することを抑制することができる。
基板処理装置1では、対向部材保持部53が、第1フランジ支持部532と、フランジ接続部515を挟んで第1フランジ支持部532の反対側に位置する第2フランジ支持部534と、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が取り付けられる保持部本体531を備える。第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534はそれぞれ、第1の位置に位置するトッププレート51の対向部材フランジ部516の一部に下側から接して支持する。トッププレート51が第2の位置に位置する状態では、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534を水平に移動することにより、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534を対向部材フランジ部516から径方向外方へと離間させ、また、対向部材フランジ部516の下方に配置する。
これにより、基板処理装置1では、第2の位置に位置するトッププレート51が静止状態であっても回転中であっても、簡素な構造にて第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534を対向部材フランジ部516から容易に離間させ、対向部材保持部53を退避位置へと移動することができる。また、トッププレート51が静止状態であっても回転中であっても、簡素な構造にて第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534を対向部材フランジ部516の下方へと容易に挿入し、対向部材保持部53を保持位置へと移動することができる。すなわち、基板処理装置1では、簡素な構造にてトッププレート51を保持することができるとともに、トッププレート51の状態にかかわらず、簡素な構造にて対向部材保持部53を保持位置と退避位置との間で移動することができる。
上述のように、基板処理装置1では、対向部材保持部53の退避位置から保持位置への移動(ステップS23)が、トッププレート51等の回転停止(ステップS24)よりも前に行われる。このように、トッププレート51等の回転中に対向部材保持部53を保持位置へと移動することにより、ステップS23がステップS24よりも後に行われる場合に比べて、基板9の処理に要する時間(すなわち、基板9が基板処理装置1に搬入されてから搬出されるまでの時間)を短縮することができる。また、対向部材保持部53の保持位置から退避位置への移動(ステップS13)が、トッププレート51等の回転開始(ステップS15)よりも後に行われる場合、すなわち、トッププレート51等の回転中に対向部材保持部53を退避位置へと移動する場合、ステップS13がステップS15よりも前に行われる場合に比べて,基板9の処理に要する時間を短縮することができる。
基板処理装置1では、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が保持部本体531に固定される。そして、対向部材保持部移動機構57が、保持部本体531を水平に回転することにより、対向部材保持部53が保持位置と退避位置との間で移動する。また、保持部本体531の回転により、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が、対向部材フランジ部516から径方向外方へと離間し、また、対向部材フランジ部516の下方に配置される。これにより、対向部材保持部53の構造を簡素なものとしつつ、トッププレート51の回転の有無にかかわらず、対向部材保持部53を保持位置と退避位置との間で移動することができる。
基板処理装置1では、ノズル洗浄部44により、退避位置に位置する第1処理液ノズル411が洗浄される。これにより、仮に第1処理液ノズル411に第1処理液等が付着した場合であっても、付着物を除去して第1処理液ノズル411を清浄な状態に維持することができる。その結果、第1処理液ノズル411を退避位置から供給位置へと移動する際に、第1処理液ノズル411からの第1処理液の意図しない滴下を抑制または防止することができる。また、第1処理液ノズル411が供給位置に位置した状態で、基板9上への第1処理液の意図しない滴下を抑制または防止することができる。
基板処理装置1では、退避位置に位置する第2処理液ノズル421も、ノズル洗浄部44により洗浄される。これにより、第2処理液ノズル421を清浄な状態に維持することができる。その結果、第2処理液ノズル421の移動の際に、あるいは、第2処理液ノズル421が 第2の位置した状態で、第2処理液ノズル421からの第2処理液の意図しない滴下を抑制または防止することができる。
図13は、本発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置1aを示す平面図である。基板処理装置1aでは、図1および図2に示す対向部材保持部53とは第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534の向きが異なる対向部材保持部53aが、対向部材保持部53に代えて設けられる。対向部材保持部53aには、支持部移動機構530も設けられる。基板処理装置1aのその他の構成は、図1に示す基板処理装置1と同様であり、以下の説明では、対応する構成に同符号を付す。
図13に示すように、対向部材保持部53aでは、第1フランジ支持部532、第1接続部533、第2フランジ支持部534および第2接続部535は、保持部本体531の先端部に支持部移動機構530を介して取り付けられる。第1フランジ支持部532および第1接続部533と、第2フランジ支持部534および第2接続部535とは、保持部本体531の長手方向のおよそ同じ位置に位置する。第2フランジ支持部534は、トッププレート51のフランジ接続部515を挟んで、第1フランジ支持部532と反対側に位置する。
第1接続部533および第2接続部535はそれぞれ、支持部移動機構530から下方に広がる略平板状の部位である。第1接続部533および第2接続部535はそれぞれ、保持部本体531の長手方向に略平行な方向に広がる。第1フランジ支持部532は、第1接続部533の下端部から略水平に広がる略平板状の部位である。第1フランジ支持部532は、第1接続部533から第2フランジ支持部534に近づく方向へと広がる。第2フランジ支持部534は、第2接続部535の下端部から略水平に広がる略平板状の部位である。第2フランジ支持部534は、第2接続部535から第1フランジ支持部532に近づく方向へと広がる。
保持部本体531の長手方向に垂直な方向(以下、「幅方向」という。)における第1フランジ支持部532と第2フランジ支持部534との間の距離は、トッププレート51の対向部材フランジ部516の外径よりも小さく、かつ、フランジ接続部515の外径よりも大きい。保持部本体531の幅方向における第1接続部533と第2接続部535との間の距離は、対向部材フランジ部516の外径よりも大きい。
支持部移動機構530は、第1接続部533および第1フランジ支持部532と、第2接続部535および第2フランジ支持部534とを、保持部本体531の長手方向に略平行な方向に略水平に移動する。すなわち、対向部材保持部53aでは、支持部移動機構530により、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が、保持部本体531に対して相対的に移動可能である。
基板処理装置1aでは、保持部本体531が保持位置に位置した状態で、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が、第1の位置に位置するトッププレート51の対向部材フランジ部516の一部に下側から接してトッププレート51を支持する。また、保持部本体531が保持位置に位置し、トッププレート51が第2の位置に位置した状態で、支持部移動機構530により第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が保持部本体531の基部に向かって移動することにより、図14に示すように、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が対向部材フランジ部516から径方向外方へと離間する。この状態で対向部材保持部移動機構57により対向部材保持部53aが水平に回転することにより、対向部材保持部53aが保持位置と退避位置との間で移動する。
また、基板処理装置1aでは、保持部本体531が保持位置に位置し、トッププレート51が第2の位置に位置した状態で、支持部移動機構530により第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が保持部本体531の先端に向かって移動することにより、図13に示すように、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が対向部材フランジ部516の下方に配置される。
基板処理装置1aでは、図1に示す基板処理装置1と同様に、第2の位置に位置するトッププレート51が静止状態であっても回転中であっても、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534を対向部材フランジ部516から離間させ、対向部材保持部53aを退避位置へと移動することができる。また、トッププレート51が静止状態であっても回転中であっても、対向部材保持部53aを退避位置から保持位置へと移動し、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534を対向部材フランジ部516の下方へと配置することができる。すなわち、基板処理装置1aでは、簡素な構造にてトッププレート51を保持することができるとともに、トッププレート51の状態にかかわらず、簡素な構造にて対向部材保持部53aを保持位置と退避位置との間で移動することができる。このように、基板処理装置1aでは、図1に示す基板処理装置1と同様に、対向部材保持部53aの保持位置と退避位置との間の移動を、トッププレート51等の回転中に行うことができるため、基板9の処理に要する時間を短縮することができる。
基板処理装置1aでは、支持部移動機構530による第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534の移動方向は、必ずしも保持部本体531の長手方向に略平行な方向である必要はない。例えば、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534は、支持部移動機構530により保持部本体531の長手方向に略垂直な方向に水平に移動してもよい。この場合、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が互いに離間する方向に移動することにより、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が対向部材フランジ部516から径方向外方へと離間する。また、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が互いに近づく方向に移動することにより、第1フランジ支持部532および第2フランジ支持部534が対向部材フランジ部516の下方に配置される。
上述の基板処理装置1,1aでは、様々な変更が可能である。
基板処理装置1,1aでは、処理液ノズル(すなわち、第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421)とは異なる構成を利用して、処理液ノズルと被保持部512との間の間隙518にガスが供給されてもよい。なお、間隙518には、必ずしもガスは供給されなくてもよい。また、処理液ノズルの供給位置は、対向部材開口514の上方の位置であれば、被保持部512の内側には限定されない。例えば、処理液ノズルは、被保持部512の上部開口517の上方に配置されてもよい。
基板処理装置1では、必ずしも、対向部材保持部53が退避位置に位置する状態で第1処理液ノズル411または第2処理液ノズル421が被保持部512に挿入される必要はない。また、必ずしも、第1処理液ノズル411および第2処理液ノズル421が退避位置に位置する状態で、対向部材保持部53が退避位置から保持位置へと移動する必要はない。例えば、図15に示すように、保持部本体531の側面に、第1処理液ノズル411のノズルフランジ部414よりも大きな切り欠き部531aが設けられ、供給位置に位置する第1処理液ノズル411は、保持位置に位置する対向部材保持部53の切り欠き部531aに平面視において収容されてもよい。この場合、対向部材保持部53が保持位置に位置する状態で、処理液ノズル(すなわち、第1処理液ノズル411または第2処理液ノズル421)が被保持部512に挿入されてもよい。また、処理液ノズルが被保持部512に挿入されている状態で、対向部材保持部53が退避位置から保持位置へと移動してもよい。
基板処理装置1では、第1フランジ支持部532と第2フランジ支持部534とが、図5中の右側の端部等で部分的に接続されていてもよい。基板処理装置1aでも同様に、第1フランジ支持部532と第2フランジ支持部534とが、保持部本体531の基部側の端部等で部分的に接続されていてもよい。
基板処理装置1,1aでは、第1処理液ノズル411,411aから複数種類の処理液が基板9上に順次供給されてもよい。第2処理液ノズル421,421aについても同様である。また、第1処理液ノズル411,411aおよび第2処理液ノズル421,421aに加えて、他の処理液ノズルが設けられてもよい。基板処理装置1では、第2処理液ノズル421、第2ノズル昇降機構433、第2ノズル回転機構434および第2洗浄部442が省略されてもよい。基板処理装置1aにおいても同様である。
対向部材昇降機構55は、必ずしもトッププレート51を上下方向に移動する必要はなく、トッププレート51を基板保持部31に対して相対的に移動すればよい。例えば、対向部材昇降機構55は、トッププレート51を移動することなく、基板保持部31を上下方向に移動することにより、トッププレート51を上下方向の第1の位置と第2の位置との間で基板保持部31に対して相対的に移動してもよい。この場合、対向部材保持部53により保持されて基板保持部31から上方に離間した状態におけるトッププレート51の位置が第1の位置であり、基板保持部31により保持された状態におけるトッププレート51の位置が第2の位置である。
基板処理装置1,1aでは、カップ部37は、同心円状に配置された複数のカップを備えていてもよい。この場合、基板9上に供給される処理液の種類が切り替えられる際に(例えば、薬液から洗浄液に切り替えられる際に)、基板9からの処理液を受けるカップも切り替えられることが好ましい。これにより、複数の処理液を容易に分別して回収または廃棄することができる。
基板処理装置1,1aでは、基板保持部31の中央部に下部ノズルが設けられ、基板9の下面に処理液が供給されてもよい。
基板処理装置1,1aでは、トッププレート51を利用して、低酸素環境下で行うことが望ましい様々な処理を行うことができる。処理空間90に供給されるガスは、窒素ガスには限定されず、アルゴン等の他の不活性ガスであってもよい。また、処理空間90に供給されるガスは、基板9上を所望のガス雰囲気とするためのガス、例えば、ガス組成比が管理された混合ガス(すなわち、複数種類のガスが混合されたもの)であってもよい。処理空間90に供給されるガスは、処理内容によっては、例えば低湿度のドライエアであってもよい。基板処理装置1,1aでは、処理空間90へのガスの供給は必ずしも行われなくてもよい。
基板処理装置1,1aでは、半導体基板以外の様々な基板に対する処理が行われてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。