JP2016221884A - 繊維強化樹脂構造体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】繊維強化樹脂構造体の屈曲部へのボイドの残留を抑制し、繊維強化樹脂構造体の強度の低下を抑制可能な、繊維強化樹脂構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを複数枚積層して繊維強化樹脂積層体を形成する工程と、前記繊維強化樹脂積層体を加熱する工程と、加熱した前記繊維強化樹脂積層体を、冷間プレス装置を用いてプレス加工し、繊維強化樹脂構造体を成形する工程と、を備え、プレス時に前記繊維強化樹脂積層体に形成される屈曲部又は前記屈曲部に隣接する領域に付加される圧力を相対的に高めた状態で前記プレス加工を行う。
【選択図】図6

Description

本発明は、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを用いて繊維強化樹脂構造体を成形する繊維強化樹脂構造体の製造方法に関する。
自動車車体の構造部品は、従来、鋼材等の金属材料により構成されていた。近年、車体の軽量化のために、炭素繊維強化樹脂(CFRP)等の繊維強化樹脂からなる構成部品が使用されつつある。かかる繊維強化樹脂からなる構成部品は、例えば、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを積層し、当該積層体を、金型を用いてプレス加工することにより成形される。繊維強化樹脂からなる構成部品(以下、「繊維強化樹脂構造体」ともいう。)の内部にボイドが残留すると、繊維強化樹脂構造体の強度が低下するおそれがあるため、以下の特許文献では、繊維強化樹脂の内部にボイドが残されることを抑制する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、熱硬化性樹脂を用いた繊維強化樹脂の製造方法に関する技術として、熱硬化性樹脂を加熱硬化して成形品を製造するにあたり、真空ポンプを用いて熱硬化性樹脂成形素材内から脱気する技術が開示されている。かかる特許文献1では、熱硬化性樹脂成形素材が硬化反応を起こさない程度に設定された金型間にシート状の熱硬化性樹脂成形素材が積層配置され、熱硬化性樹脂成形素材を型閉したまま真空ポンプを作動させることにより金型内のエアーが排気される。
また、特許文献2には、真空ポンプ等に接続された真空吸引配管を繊維強化樹脂成形用基材内の密閉空間内に差し込んで内部を減圧した後に周囲を密閉して作成した繊維強化樹脂成形用基材を用いて、繊維強化樹脂を成形する技術が開示されている。
特開平8−142205号公報 特開2002−248620号公報
ここで、繊維強化樹脂シートのマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂が用いられる場合、繊維強化樹脂構造体は冷間プレス加工により成形される。冷間プレス加工では、溶融状態の繊維強化樹脂シートの積層体(以下、単に「繊維強化樹脂積層体」ともいう。)が、融点よりも低い温度の金型によりプレスされる。このように、熱可塑性樹脂を用いた繊維強化樹脂積層体を冷間プレス加工する場合、熱可塑性樹脂は、金型に接した後、速やかに硬化し始める。そのため、特許文献1に記載されたような、熱硬化性樹脂を用いた繊維強化樹脂の製造方法による真空引きの手法を、熱可塑性樹脂を用いた繊維強化樹脂の製造方法に適用しても、内部のボイドをすべて除くことは困難である。
また、特許文献2に記載された技術では、1枚又は複数枚積層された繊維強化樹脂シートを熱可塑性樹脂シートで上下両面から覆うことで閉空間を形成し、当該閉空間内を減圧することで、強化繊維にマトリックス樹脂を充分に含浸させた繊維強化樹脂成形用基材が作成される。しかしながら、シート間に挟まれた空気を完全に脱気することは困難であり、当該基材を融点以上に加熱した後、融点未満の温度の金型を用いて冷間プレス成形した際に、成形品にボイドが生じるおそれがある。
このボイドが発生あるいは残留する位置は予測困難である場合が多いため、成形される繊維強化樹脂構造体において、想定していた物性が発現されない場合が生じ得る。特に、繊維強化樹脂構造体が屈曲部分を有する場合、プレス成形時の金型のプレス方向と、当該屈曲部分を成形するためのプレス面との成す角度が小さくなって、プレス成形中において当該屈曲部分には圧力がかかりにくくなる。そのため、他の領域で発生するボイドが屈曲部分に移動しやすい。繊維強化樹脂構造体の使用時において屈曲部分には応力が集中しやすく、ボイドが残されていると強度が著しく低下するおそれがある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、繊維強化樹脂構造体の屈曲部へのボイドの残留を抑制し、繊維強化樹脂構造体の強度の低下を抑制可能な、繊維強化樹脂構造体の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを複数枚積層して繊維強化樹脂積層体を形成する工程と、前記繊維強化樹脂積層体を加熱する工程と、加熱した前記繊維強化樹脂積層体を、冷間プレス装置を用いてプレス加工し、繊維強化樹脂構造体を成形する工程と、を備え、プレス時に前記繊維強化樹脂積層体に形成される屈曲部又は前記屈曲部に隣接する領域に付加される圧力を相対的に高めた状態で前記プレス加工を行う、繊維強化樹脂構造体の製造方法が提供される。
前記冷間プレス装置が、前記繊維強化樹脂積層体を挟んでプレスするための第1の金型及び第2の金型を備え、前記屈曲部における折れ曲がり方向の両側に位置する前記第1の金型のプレス面及び前記第2の金型のプレス面のうちの少なくとも一方のプレス面に、前記折れ曲がり方向に対して交差する凸状部を有することにより、前記繊維強化樹脂積層体に形成される前記屈曲部に隣接する領域に付加される圧力が相対的に高められてもよい。
前記凸状部の高さが、成形される前記繊維強化樹脂構造体の厚さの1/3未満、かつ、0.1mm以上の値であってもよい。
前記凸状部の端部と前記屈曲部の頂点との距離が1.0〜10.0mmの範囲内の値であってもよい。
前記繊維強化樹脂積層体における、少なくとも前記屈曲部に隣接する領域の厚さを、他の領域の厚さよりも厚くし、前記プレス加工を行うことにより、前記繊維強化樹脂積層体に形成される前記屈曲部に隣接する領域に付加される圧力が相対的に高められてもよい。
前記繊維強化樹脂積層体における、少なくとも前記屈曲部に隣接する領域に、層厚増加材料を配置し、前記プレス加工を行うことにより、前記繊維強化樹脂積層体に形成される前記屈曲部に隣接する領域に付加される圧力が相対的に高められてもよい。
前記繊維強化樹脂積層体における前記屈曲部に隣接する領域に前記層厚増加材料を配置することは、フィルム状又はシート状の樹脂材料あるいは前記繊維強化樹脂シートを積層することであってもよい。
前記樹脂材料は前記マトリックス樹脂の材料と同系の材料であってもよい。
以上説明したように本発明によれば、繊維強化樹脂構造体の屈曲部へのボイドの残留が抑制され、繊維強化樹脂構造体の強度の低下を抑制することができる。
繊維強化樹脂構造体の一例を示す斜視図である。 繊維強化樹脂構造体の製造方法を示す説明図である。 第1の実施の形態の冷間プレス工程で用いられる金型を示す説明図である。 従来の冷間プレス工程における屈曲部分の様子を示す説明図である。 従来の冷間プレス工程における面圧及び間隙の幅の変化を示す説明図である。 同実施形態の冷間プレス工程における屈曲部分の様子を示す説明図である。 スリットを介してボイドを排出する様子を示す説明図である。 第2の実施の形態の冷間プレス工程を示す説明図である。 同実施形態の冷間プレス工程における面圧の変化を示す説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
<<1.第1の実施の形態>>
第1の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法は、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを積層した繊維強化樹脂積層体を冷間プレス加工することによって繊維強化樹脂構造体を成形する繊維強化樹脂構造体の製造方法である。本実施形態においては、繊維強化樹脂構造体の屈曲部に隣接する領域に付加される圧力を高めた状態で冷間プレス加工が行われる。以下、繊維強化樹脂構造体の構成例について説明した後に、繊維強化樹脂構造体の製造方法について説明する。
<1−1.繊維強化樹脂構造体>
図1は、繊維強化樹脂構造体20の一例を示す斜視図である。繊維強化樹脂構造体20は、繊維強化樹脂を用いて成形され、鋼板からなる構造体と比較して軽量でありつつ、高い強度を有している。繊維強化樹脂構造体20の用途は特に限定されないが、繊維強化樹脂構造体20は、例えば、自動車車体用の構造部品として使用される。
繊維強化樹脂構造体20の成形素材となる繊維強化樹脂シートは、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させて形成される。使用される強化繊維は、特に限定されるものではなく、例えば、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維等であってもよく、さらにはこれらの強化繊維を組み合わせて使用してもよい。中でも、炭素繊維は、機械特性が高く、強度設計を行いやすいことから、強化繊維が炭素繊維を含むことが好ましい。
強化繊維は、長さが比較的短い短繊維であってもよいし、長さが比較的長い長繊維であってもよい。また、強化繊維は、繊維強化樹脂シートの一端から他端まで連続する連続繊維であってもよい。さらに、繊維強化樹脂シートは、強化繊維が一方向に向けて配置された一方向繊維強化樹脂シートであってもよいし、強化繊維が複数方向に向けて配置された繊維強化樹脂シートであってもよい。
また、繊維強化樹脂シートのマトリックス樹脂には熱可塑性樹脂が用いられる。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂などが例示される。これらの熱可塑性樹脂うちの1種類、あるいは2種類以上の混合物を使用することができる。これら熱可塑性樹脂は、単独でも、混合物でも、また共重合体であってもよい。混合物の場合には相溶化剤を併用してもよい。さらに、難燃剤として臭素系難燃剤、シリコン系難燃剤、赤燐などを加えてもよい。
この場合、使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、芳香族ポリアミド等の樹脂が挙げられる。中でも可塑性マトリックス樹脂がポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン及びフェノキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
なお、積層される複数の繊維強化樹脂シートは、それぞれ強化繊維の種類や含有率等が異なっていてもよい。また、積層される複数の繊維強化樹脂シートにおいて、マトリックス樹脂が相溶性を有する異なる材料同士であってもよく、あるいは、同一のマトリックス樹脂に対して異なる添加物等が混合されていてもよい。この場合においても、繊維強化樹脂シートの溶融及び硬化を効率的に行えるように、マトリックス樹脂の融点が近似することが好ましい。
繊維強化樹脂シートは、例えば、一般的なフィルム含浸法や溶融含浸法等のプロセスにより、強化繊維を連続的に送り出しながらマトリックス樹脂を当該強化繊維に含浸させる方法により製造される。この繊維強化樹脂シートを所望のサイズに切断することにより、成形素材としての繊維強化樹脂シートが得られる。所望のサイズに切断した複数の繊維強化樹脂シートの幅方向の端部を接着剤等により互いに接合して、所望の幅及び長さの繊維強化樹脂シートを形成してもよい。繊維強化樹脂シートの厚さは、例えば、0.03〜0.50mmの範囲内の値とすることができる。
本実施形態において、繊維強化樹脂シートを用いて成形される繊維強化樹脂構造体20は、図1に示すように、屈曲部R(R1,R2,R3,R4)と、屈曲部R(R1,R2,R3,R4)の両端に連続して形成された平面部22,26及び壁部24を有する。屈曲部Rは、繊維強化樹脂構造体20の面が折れ曲がって形成された部分である。一般的に、屈曲部Rには応力が集中しやすく、繊維強化樹脂構造体20に荷重が与えられたときに、屈曲部Rが損傷しやすい。そのため、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法では、屈曲部Rへのボイドの残留が抑制されるように繊維強化樹脂構造体20が成形されるようになっている。
なお、繊維強化樹脂構造体20は、構成面が折れ曲がった屈曲部Rを有していればよく、図1に例示した形状に限られない。
<1−2.繊維強化樹脂構造体の製造方法>
本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法について具体的に説明する。図2は、成形素材としての繊維強化樹脂シート10から繊維強化樹脂構造体20が得られるまでの工程を模式的に示した説明図である。かかる製造方法は、積層工程と、加熱工程と、冷間プレス工程とを備える。以下、各工程について詳細に説明する。
(1−2−1.積層工程)
積層工程は、複数枚の繊維強化樹脂シート10を積層して繊維強化樹脂積層体12を形成する工程である。本実施形態では、それぞれ連続繊維が一方向に向けて配置された4枚の繊維強化樹脂シート10が用いられる。このとき、4枚のうちの少なくとも1枚の繊維強化樹脂シート10の連続繊維の配置方向を異ならせて繊維強化樹脂シート10を積層することにより、得られる繊維強化樹脂構造体20の強度に異方性を持たせることができる。
上述のとおり、成形素材としての繊維強化樹脂シート10は、繊維強化樹脂シートを所望のサイズに切断したものであってもよく、所望のサイズに切断した繊維強化樹脂シートの幅方向の端部を互いに接合して所望の幅にしたものであってもよい。積層する繊維強化樹脂シート10の枚数や平面視の大きさは、製造する繊維強化樹脂構造体20の厚さや大きさに応じて、適宜選択し得る。
(1−2−2.加熱工程)
加熱工程は、繊維強化樹脂積層体12を加熱する工程である。加熱工程では、例えば、繊維強化樹脂積層体12が加熱装置40に投入される。当該繊維強化樹脂積層体12は、上面側及び下面側から、電熱線や遠赤外線ヒータ等の加熱手段41,43によって加熱される。加熱装置40の温度は、マトリックス樹脂の融点以上に設定される。加熱工程では、マトリックス樹脂が分解しないように、繊維強化樹脂積層体12が溶融状態にされる。用いられる加熱装置は、特に限定されない。
(1−2−3.冷間プレス工程)
冷間プレス工程は、溶融状態の繊維強化樹脂積層体12を冷間プレス加工し、所望の形状の繊維強化樹脂構造体20を成形する工程である。冷間プレス工程では、冷間プレス装置50の第1の金型51及び第2の金型53の温度がマトリックス樹脂の融点未満にされる。かかる冷間プレス工程において、第2の金型53上に溶融状態の繊維強化樹脂積層体12が設置された後に、対向する第1の金型51及び第2の金型53が互いに近接させられて繊維強化樹脂積層体12がプレス加工される。これにより、繊維強化樹脂積層体12が硬化して、所望の形状の繊維強化樹脂構造体20が得られる。
ここで、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法では、繊維強化樹脂構造体20の屈曲部Rへのボイドの残留を抑制するために、屈曲部R又は屈曲部Rに隣接する領域に付加される圧力を相対的に高めた状態で冷間プレス加工が行われる。屈曲部R又は屈曲部Rに隣接する領域に付加される圧力を相対的に高めることによって、繊維強化樹脂積層体12内のボイドが他の領域から屈曲部Rへと移動することが抑制される。
(1−2−3−1.金型)
まず、本実施形態の冷間プレス工程において用いられる金型の構成について説明する。図3は、冷間プレス工程で用いられる第1の金型51及び第2の金型53のうち、繊維強化樹脂構造体20の屈曲部Rを含む領域を成形する部分を部分的に示した断面図である。第1の金型51は、平面部22,26を成形するための平坦面52a,52eと、屈曲部Rを成形するための屈曲面52b,52dと、壁部24を成形するための交差面52cとを有する。
第2の金型53は、平面部22,26を成形するための平坦面54a,54eと、屈曲部Rを成形するための屈曲面54b,54dと、壁部24を成形するための交差面54cとを有する。また、第2の金型53は、3つの凸状部55(55a,55b,55c)を有する。凸状部55aは、屈曲面54bに隣接する平坦面54aに設けられる。凸状部55bは、屈曲面54dと交差面54cとの境界に設けられる。凸状部55cは、屈曲面54dに隣接する平坦面54eに設けられる。
本実施形態では、第2の金型53に凸状部55を設けることにより、当該凸状部55の位置における第1の金型51と第2の金型53との間隙の幅が、他の位置における間隙の幅よりも小さくなる。これにより、繊維強化樹脂積層体12を冷間プレス加工する際に、凸状部55に対応する位置に付加される圧力が相対的に高められる。これにより、屈曲部Rに隣接する領域に付加される圧力が相対的に高められ、繊維強化樹脂積層体12内における他の領域から屈曲部Rへのボイドの移動が抑制される。
ここで、屈曲面54dと交差面54cとの境界に凸状部55bが設けられる一方、屈曲面54bと交差面54cとの境界に凸状部が設けられていないのは、繊維強化樹脂積層体12の壁部24がプレスされた際に、当該壁部24に存在するボイドが、プレス方向前方の屈曲面54d側に押し出されるからである。ただし、屈曲面54bと交差面54cとの境界に凸状部が設けられていてもよい。
なお、本明細書において、第1の金型51と第2の金型53との「間隙の幅」とは、それぞれの位置における第1の金型51と第2の金型53との最短距離を指す。
図3では、凸状部55が断面により示されているが、凸状部55は、屈曲面54b,54dに沿って長尺に設けられる。すなわち、凸状部55は、成形される屈曲部Rの折れ曲がり方向に対して交差するように設けられている。それぞれの凸状部55a,55b,55cは、屈曲面54b,54dに沿って連続する1本の凸状部55a,55b,55cとしてもよいし、断続的に形成されていてもよい。ただし、それぞれの凸状部55a,55b,55cを断続的に形成する場合、ボイドの移動を堰き止められるように、隣との間隔が適切に設定される。図3に例示した凸状部55の断面形状は台形状であるが、凸状部55の断面形状は、矩形状や円弧状等の他の形状であってもよい。
また、凸状部55の高さは、成形される繊維強化樹脂構造体20の厚さの1/3未満、かつ、0.1mm以上の値であることが好ましい。例えば、繊維強化樹脂構造体20の平面部22,26の厚さが1mmの場合の凸状部55の高さの上限は0.3mmであり、平面部22,26の厚さが3mmの場合の凸状部55の高さの上限は1.0mmである。凸状部55の高さが低い場合には、屈曲部Rに隣接する領域に付加される圧力を相対的に高めることができずに、ボイドの移動を抑制できないおそれがある。また、凸状部55の高さが高すぎる場合には、得られる繊維強化樹脂構造体20の厚さが部分的に薄くなって、強度が低下するおそれがある。係る凸状部55の高さの上限は、繊維強化樹脂構造体20の厚さの1/4未満であることがより好ましく、1/5未満であることがさらに好ましい。
また、凸状部55を設ける位置に関し、屈曲面54b,54dの頂点P1,P2から凸状部55の端部までの距離が、例えば、1.0〜10.0mmの範囲内の値であることが好ましい。凸状部55を設ける位置が屈曲面54b,54dから離れすぎている場合には、繊維強化樹脂構造体20における凸状部55に対応する領域と屈曲部Rとの間にボイドが含まれやすくなって、ボイドを屈曲部R側に移動させてしまうおそれがある。また、凸状部55を設ける位置が屈曲面54b,54dに重なっている場合、凸状部55の幅にもよるが、ボイドを屈曲部Rから遠ざけにくくなって、屈曲部Rの強度が低下するおそれがある。したがって、屈曲面54b,54dの頂点P1,P2から凸状部55の端部までの距離が、2.0〜9.0mmの範囲内の値であることがより好ましく、3.0〜8.0mmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
なお、凸状部55は、第2の金型53ではなく、第1の金型51に設けられてもよく、第1の金型51及び第2の金型53の両方に設けられてもよい。凸状部55を第1の金型51及び第2の金型53の両方に設ける場合には、繊維強化樹脂構造体20の厚さが部分的に著しく薄くならないように、それぞれの凸状部55の位置や高さ等が適宜設定される。
(1−2−3−2.冷間プレス加工)
次に、上記第1の金型51及び第2の金型53を用いて実施される冷間プレス加工について説明する。以下、繊維強化樹脂構造体20の屈曲部Rにボイドが残留しやすいことについて説明した後、本実施形態による冷間プレス加工について説明する。
図4は、凸状部が設けられていない第1の金型151及び第2の金型153を用いて冷間プレス加工を実施している様子を示す説明図である。かかる図4は、繊維強化樹脂構造体120の屈曲部Rを含む領域がプレス成形される様子を示す断面図である。図5は、冷間プレス加工中における繊維強化樹脂積層体12に対する面圧の変化、及び第1の金型151と第2の金型153との間隙の幅の変化をそれぞれ示す図である。
図4及び図5に示すエリアAは、平面部22,26に対応するエリアであって、プレス面がプレス方向に対して直交するエリアである。エリアBは、壁部24に対応するエリアであって、プレス方向に対するプレス面の角度が小さくなっているエリアである。エリアCは、屈曲部R1,R2に対応するエリアである。また、図4の上から一段目の図は、図5の時刻t0の状態を示し、図4の上から二段目の図は、図5の時刻t1の状態を示し、図4の上から三段目の図は、図5の時刻t2の状態を示す。図4の一番下の図は、成形された繊維強化樹脂構造体120を部分的に示す断面図である。
図4に示すように、第2の金型153上に繊維強化樹脂積層体12を設置した状態で第1の金型151と第2の金型153とを近接させると、各エリアA,B,Cにおける第1の金型151と第2の金型153との間隙の幅は次第に小さくなる。このとき、エリアBにおける第1の金型151と第2の金型153との間隙の幅の減少度合いは、エリアA及びエリアCの減少度合いに比べて大きい(図5の時刻t0〜t1)。
そのため、エリアBにおいては、第1の金型151と第2の金型153との間隙の幅が、他のエリアA及びエリアCよりも早く所定値以下となって、面圧が上昇し始める(時刻t1)。また、繊維強化樹脂積層体12は、マトリックス樹脂の融点未満の温度にされた第1の金型151又は第2の金型153に接触した箇所から硬化し始めるため、面圧が上昇し得るエリアBに存在するボイド14aは、繊維強化樹脂積層体12内に閉じ込められる。その結果、エリアBに存在するボイド14aは、繊維強化樹脂積層体12内で、早い段階で壁部24から屈曲部R側へ押し出される。
引き続き第1の金型151と第2の金型153とを近接させることにより、エリアA及びエリアCにおける間隙の幅が所定値以下となって、エリアA及びエリアCにおいても面圧が上昇し始める。ただし、プレス面がプレス方向に対して直交するエリアAでは、プレス面とプレス方向との成す角度がエリアAよりも小さいエリアCに比べて面圧が高められやすい。そのため、エリアAの面圧の上昇度合いはエリアCの面圧の上昇度合いよりも大きい(時刻t1〜t2)。これにより、エリアAに存在するボイド14は、繊維強化樹脂積層体12内で、平面部22,26から屈曲部R側に移動する。
したがって、面圧の上昇時期が遅く、また、面圧が高められにくいエリアCの屈曲部Rにはボイド14が残留しやすくなる。なお、プレス面とプレス方向とのなす角度が小さくなるほど繊維強化樹脂積層体12に対して面圧が高められにくくなるため、第1の金型151と第2の金型153とを最も近づけた状態(図4の上から三段目の状態)においては、エリアA、エリアC、エリアBの順に面圧が大きくなっている(図5を参照)。
これに対して、第2の金型53に凸状部55a,55b,55cを設けて冷間プレス加工を実施した場合には、屈曲部Rへのボイドの残留が抑制される。図6は、第2の金型53に凸状部55a,55b,55cを設けた冷間プレス装置50を用いて冷間プレス加工を実施している様子を示す説明図である。
第2の金型53に凸状部55a,55b,55cが設けられている場合においても、基本的には、エリアA、エリアB、エリアCそれぞれにおける第1の金型51と第2の金型53との間隙の幅及び面圧は、図5に示したように変化する。したがって、第1の金型51と第2の金型53とを近接させた場合、エリアBにおける第1の金型51と第2の金型53との間隙の幅が他のエリアA,Cよりも早く所定値以下となって、エリアBから面圧が上昇し始める。ただし、第2の金型53には、屈曲面54dと交差面54cとの境界に凸状部55bが設けられている。そのため、エリアBから屈曲部R2側に押し出されるボイド14aは、凸状部55bが位置する領域を超えて屈曲部R2へ侵入できない(図6の上から二段目の図を参照)。
また、第1の金型51と第2の金型53とをさらに近接させると、エリアA及びエリアCの面圧がともに上昇し始める。このとき、エリアAの面圧の上昇度合いが、エリアCの面圧の上昇度合いよりも大きく、エリアAに存在するボイド14が、面圧が低いエリアCに向けて移動し始める。ただし、第2の金型53には、屈曲面54b,54dに隣接する平坦面54a,54eに凸状部55a,55cが設けられている。そのため、エリアAから屈曲部R1,R2側に押し出されるボイド14bは、凸状部55a,55cが位置する領域を超えて屈曲部R1,R2へ侵入できない(図6の上から三段目の図を参照)。
このように、第2の金型53の屈曲面54b,54dに隣接する位置に凸状部55a,55b,55cを設けて冷間プレス工程を実施することにより、プレス時に、屈曲部R1,R2に隣接する領域に付加される圧力が相対的に高められる。その結果、他の領域から屈曲部R1,R2へのボイド14a,14bの侵入が阻止されやすくなる。これにより、図6に示したように、得られる繊維強化樹脂構造体20における屈曲部R1,R2へのボイド14の残留が抑制される。
以上説明したように、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法によれば、冷間プレス加工により繊維強化樹脂構造体20を製造するにあたり、繊維強化樹脂積層体12内のボイド14の屈曲部R1,R2への移動が抑制される。したがって、得られる繊維強化樹脂構造体20の屈曲部R1,R2へのボイド14の残留が抑制され、繊維強化樹脂構造体20の強度の低下が抑制される。
また、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法は、真空引きによって繊維強化樹脂積層体12内を脱気する工程がないため、製造効率を向上させることができるとともに、脱気装置等の設備が不要となって製造コストを抑えることができる。ただし、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法は、真空引きの工程を含んでいてもよい。冷間プレス工程の前に繊維強化樹脂積層体12内を脱気することにより、得られる繊維強化樹脂構造体20の屈曲部R1,R2へのボイド14の残留をさらに抑制することができる。
<<2.第2の実施の形態>>
次に、第2の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法について説明する。本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法は、繊維強化樹脂積層体の表面にスリットを形成した状態で冷間プレス工程が実施される点において、第1の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法とは異なる。以下、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法の冷間プレス工程について、第1の実施の形態にかかる冷間プレス工程と異なる点を中心に説明する。
図7は、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法における冷間プレス工程を実施している様子を示す説明図である。図7の上段の図は、図6の上から三段目の図に対応する図であり、図7の下段の図は、上段の図の部分拡大図である。本実施形態においても、第2の金型53Aには、屈曲部R1,R2を成形するための屈曲面54b,54dに隣接する平坦面54a,54eに凸状部55a,55bが設けられている。
ここで、本実施形態では、第2の金型53Aの平坦面54eにおける、凸状部55bの近傍に凹部57が設けられている。凹部57は、凸状部55bを挟んで、屈曲面54d側とは反対側に設けられている。また、繊維強化樹脂積層体12には、第2の金型53Aに接する表面のうちの、第2の金型53Aに設けられた凹部57に対向する位置に、あらかじめスリット16が形成されている。
したがって、繊維強化樹脂積層体12を冷間プレス加工した際に、平面部26から屈曲部R2側に移動するボイド14bが、凸状部55bが位置する領域で堰き止められるとともに、スリット16を介して、第2の金型53の凹部57に排出される。繊維強化樹脂積層体12は、第1の金型51及び第2の金型53Aに接触した部分から硬化し始めるが、スリット16の周囲は凹部57に対向しており、硬化し始めるタイミングが周辺の領域よりも遅くなる。そのため、ボイド14bが排出されるタイミングでは、スリット16が塞がれにくくなっている。
繊維強化樹脂積層体12に形成されるスリット16の幅は、例えば、0.05〜0.7mmの範囲内の値であることが好ましい。スリット16の幅が大きすぎると、硬化前の繊維強化樹脂が漏れ出るおそれがある。一方、スリット16の幅が小さすぎると、ボイド14bが排出されないおそれがある。したがって、スリット16の幅は、0.1〜0.6mmの範囲内の値であることがより好ましく、0.1〜0.5mmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
また、繊維強化樹脂積層体12に形成されるスリット16の深さは、例えば、1.0〜10.0mmの範囲内の値であることが好ましい。スリット16が深すぎると、溶融状態の繊維強化樹脂積層体12の取り扱いが困難になったり、成形される繊維強化樹脂構造体20の強度が低下したりするおそれがある。一方、スリット16が浅すぎると、繊維強化樹脂積層体12の内部のボイド14bが排出されないおそれがある。したがって、スリット16の深さは、1.5〜8.0mmの範囲内の値であることがより好ましく、2.0〜5.0mmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
かかるスリット16は、繊維強化樹脂積層体12の表層に位置する少なくとも1枚の繊維強化樹脂シートにあらかじめ形成されていてもよいし、積層工程で繊維強化樹脂積層体12を形成した後に形成されてもよい。また、第1の金型51の平坦面52a,52eに凹部57が設けられ、スリット16が、繊維強化樹脂積層体12における第1の金型51に接する表面側に形成されてもよい。さらに、第1の金型51又は第2の金型53Aの交差面52c,54cの少なくとも一方に凹部57が設けられ、スリット16が、繊維強化樹脂積層体12の壁部24に相当する部分の表面に形成されてもよい。図7に例示したスリット16の断面形状は矩形状であるが、スリット16の断面形状は円弧状等の他の形状であってもよい。
以上説明したように、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法によっても、第1の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法では、凸状部55bにより堰き止められるボイド14bがスリット16を介して、繊維強化樹脂積層体12外に排出される。したがって、得られる繊維強化樹脂構造体20の屈曲部R2へのボイド14の残留がさらに抑制され、繊維強化樹脂構造体20の強度の低下が抑制される。
<<3.第3の実施の形態>>
次に、第3の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法について説明する。本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法では、金型に凸状部を設けるのではなく、面圧が高められにくい範囲の繊維強化樹脂積層体の厚さを厚くすることによって、屈曲部R又は屈曲部Rに隣接する領域に付加される圧力が相対的に高められる。以下、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法の冷間プレス工程について、第1の実施の形態にかかる冷間プレス工程と異なる点を中心に説明する。
図8は、本実施形態における冷間プレス工程を実施している様子を示す説明図である。本実施形態において用いられる第1の金型51B及び第2の金型53Bは、凸状部を有しない点を除いて、第1の実施の形態において用いられる第1の金型51及び第2の金型53と同様の構成を有している。一方、第2の金型53Bに設置された繊維強化樹脂積層体12における、屈曲部R及び壁部24に相当する部分の厚さが他の領域に比べて厚くされている。本実施形態では、繊維強化樹脂積層体12の屈曲部R及び壁部24に相当する部分に層厚増加材料18を配置することによって、当該部分の厚さが厚くされている。
すでに述べたように、屈曲部R及び壁部24では、平面部22,26に比べて、プレス面とプレス方向とがなす角度が小さくなり、面圧が上昇しにくくなっている。これに対して、屈曲部R及び壁部24に相当する部分の繊維強化樹脂積層体12の厚さを厚くすることによって、当該部分には、平面部22,26において生じる面圧よりも大きい面圧が生じやすくなり、平面部22,26から屈曲部Rへのボイドの侵入が抑制される。
図9は、本実施形態による冷間プレス加工中における繊維強化樹脂積層体12に対する面圧の変化を示す図である。図8の上から一段目の図は、図9の時刻t10の状態を示し、図8の上から二段目の図は、図9の時刻t11の状態を示し、図8の上から三段目の図は、図9の時刻t12の状態を示す。図8の一番下の図は、成形される繊維強化樹脂構造体20を部分的に示す断面図である。
図8に示すように、屈曲部R及び壁部24に相当する部分に層厚増加材料18が配置された繊維強化樹脂積層体12を第2の金型53B上に設置した状態で第1の金型51Bと第2の金型53Bとを近接させると、各エリアA,B,Cにおける第1の金型51Bと第2の金型53Bとの間隙の幅は次第に小さくなる。このとき、エリアBにおける第1の金型51Bと第2の金型53Bとの間隙の幅の減少度合いは、エリアA及びエリアCの減少度合いに比べて大きい。
さらに、エリアBの繊維強化樹脂積層体12上には層厚増加材料18が配置されているため、エリアBにおいては、第1の金型51Bと第2の金型53Bとの間隙の幅が、他のエリアA及びエリアCよりも早く所定値以下となって、面圧が上昇し始める(時刻t11)。このとき、エリアBでは、繊維強化樹脂積層体12の厚さが厚くされていることから、エリアBの厚さが厚くされていない図5の場合の面圧の上昇度合いに比べて、面圧の上昇度合いは大きくなる。
また、繊維強化樹脂積層体12は、マトリックス樹脂の融点未満の温度にされた第1の金型51B又は第2の金型53Bに接触した部分から硬化し始めるため、面圧が上昇し得る領域に存在するボイド14aは、繊維強化樹脂積層体12内に閉じ込められる。その結果、エリアBに存在するボイド14aは、繊維強化樹脂積層体12内で、早い段階で壁部24から屈曲部R側へ押し出される(図8の上から二段目の図を参照)。
引き続き第1の金型51Bと第2の金型53Bとを近接させることにより、層厚増加材料18が配置されているエリアCにおける第1の金型51Bと第2の金型53Bとの間隙の幅が所定値以下となる。そのため、本来面圧が上昇しやすいエリアAよりも先に、エリアCにおける面圧が上昇し始める。したがって、エリアBから移動したボイド14aを含め、エリアCに存在するボイド14は、エリアA側に押し出される。
さらに第1の金型51Bと第2の金型53Bとを近接させることにより、層厚増加材料18が配置されていないエリアAにおいても第1の金型51Bと第2の金型53Bとの間隙の幅が所定値以下となって、エリアAの面圧が上昇し始める。ただし、時刻t11〜t12の期間、エリアAにおいて生じる面圧は、層厚増加材料18が配置されたエリアCにおいて生じている面圧を上回ることがない。したがって、エリアAに存在するボイド14は、屈曲部R1,R2へ侵入できない。(図8の上から三段目の図を参照)。あるいは、エリアAにおいて生じる面圧がエリアCにおいて生じている面圧を上回るとしても、その時点ではマトリックス樹脂が硬化して、ボイド14が屈曲部R1,R2へ侵入できない状態になっている。
このように、繊維強化樹脂積層体12における屈曲部R及び壁部24に相当する部分の厚さを厚くして冷間プレス工程を実施することにより、プレス時に、屈曲部R1,R2に付加される圧力が相対的に高められる。その結果、図8に示したように、得られる繊維強化樹脂構造体20において、屈曲部R1,R2へのボイド14a,14bの残留が抑制される。また、繊維強化樹脂積層体12の層厚が厚くされた領域では、成形される繊維強化樹脂構造体20において他の領域に比べて樹脂の密度が高められる。したがって、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法により得られる繊維強化樹脂構造体20では、屈曲部R1,R2の強度が高められている。
繊維強化樹脂積層体12の屈曲部R及び壁部24に相当する部分に層厚増加材料18を配置する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。一つは、積層工程で形成された繊維強化樹脂積層体12の所定の位置に、フィルム状又はシート状の熱可塑性樹脂や、積層に使用している繊維強化樹脂シートを積層する方法である。熱可塑性樹脂は、溶着やホットスタンプ等によって繊維強化樹脂積層体12上に積層あるいは固定されてもよい。
このとき積層される熱可塑性樹脂材料は、繊維強化樹脂シート10のマトリックス樹脂の材料と同系の材料であることが好ましい。すなわち、積層される熱可塑性樹脂材料の融点は、マトリックス樹脂の融点と近似していることが好ましく、樹脂として相溶するもの同士であることがより好ましい。マトリックス樹脂と層厚増加材料18の融点が近似していれば、加熱工程や冷間プレス工程が効率的に実施される。
また、積層される熱可塑性樹脂の厚さは、例えば、0.1〜1.5mmの範囲内の値であることが好ましい。当該熱可塑性樹脂の厚さが厚すぎると、冷間プレス時において、層厚が薄い領域への加圧が不十分になるおそれがある。また、当該熱可塑性樹脂の厚さが薄すぎると、屈曲部Rにおける面圧の増加が不十分となって、屈曲部Rへのボイド14の侵入を抑制できないおそれがある。したがって、積層される熱可塑性樹脂の厚さは、0.15〜1.3mmの範囲内の値であることがより好ましく、0.2〜1.0mmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
また、繊維強化樹脂積層体12上に層厚増加材料18を配置する時期は、加熱工程が終了するまでの間であれば、特に限定されない。積層工程においてあらかじめ層厚増加材料18が積層されてもよいし、加熱工程の前あるいは途中で層厚増加材料18が積層されてもよい。
なお、本実施形態では、繊維強化樹脂積層体12における屈曲部R及び壁部24に相当する部分の厚さを厚くしているが、層厚を厚くする領域は、少なくとも屈曲部R又は屈曲部Rに隣接する領域であればよい。かかる領域における繊維強化樹脂積層体12の厚さを厚くすることによって、冷間プレス時に、屈曲部Rあるいは屈曲部Rに隣接する領域に付加される圧力が相対的に高められる。これにより、屈曲部Rへのボイド14a,14bの侵入が堰き止められ、あるいは、屈曲部Rのボイド14a,14bが他の領域へと押し出される。したがって、屈曲部Rへのボイド14a,14bの残留が抑制され、得られる繊維強化樹脂構造体20の強度の低下が抑制される。
以上説明したように、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法によっても、第1の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法では、屈曲部R及び壁部24に相当する部分の繊維強化樹脂積層体12の厚さを厚くすることにより、冷間プレス時に当該部分に付加される圧力が相対的に高められる。したがって、成形される繊維強化樹脂構造体20の屈曲部Rへのボイド14a,14bが抑制され、繊維強化樹脂構造体20の強度が高められる。
さらに、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法は、冷間プレス加工に用いる金型の改良を要しない。したがって、従来の冷間プレス装置を用いて冷間プレス工程を実施することによっても、成形される繊維強化樹脂構造体20の屈曲部Rへのボイド14a,14bの侵入が抑制される。
なお、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法においても、第2の実施の形態で説明したように、繊維強化樹脂積層体12の表面にスリット16を形成するとともに、当該スリット16に対向する金型のプレス面に凹部57を設けて、ボイド14bを排出してもよい。これにより、繊維強化樹脂構造体20の屈曲部Rへのボイド14bの残留がさらに抑制されやすくなる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
10 繊維強化樹脂シート
12 繊維強化樹脂積層体
14,14a,14b ボイド
16 スリット
18 層厚増加材料
20 繊維強化樹脂構造体
22,26 平面部
24 壁部
40 加熱装置
50 冷間プレス装置
51,51B 第1の金型
53,53A,53B 第2の金型
54a,54e 平坦面
54b,54d 屈曲面
54c 交差面
55,55a,55b,55c 凸状部
57 凹部
R,R1,R2,R3,R4 屈曲部

Claims (8)

  1. 強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを複数枚積層して繊維強化樹脂積層体を形成する工程と、
    前記繊維強化樹脂積層体を加熱する工程と、
    加熱した前記繊維強化樹脂積層体を、冷間プレス装置を用いてプレス加工し、繊維強化樹脂構造体を成形する工程と、を備え、
    プレス時に前記繊維強化樹脂積層体に形成される屈曲部又は前記屈曲部に隣接する領域に付加される圧力を相対的に高めた状態で前記プレス加工を行う、繊維強化樹脂構造体の製造方法。
  2. 前記冷間プレス装置が、前記繊維強化樹脂積層体を挟んでプレスするための第1の金型及び第2の金型を備え、
    前記屈曲部における折れ曲がり方向の両側に位置する前記第1の金型のプレス面及び前記第2の金型のプレス面のうちの少なくとも一方のプレス面に、前記折れ曲がり方向に対して交差する凸状部を有することにより、前記繊維強化樹脂積層体に形成される前記屈曲部に隣接する領域に付加される圧力が相対的に高められる、請求項1に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
  3. 前記凸状部の高さが、成形される前記繊維強化樹脂構造体の厚さの1/3未満、かつ、0.1mm以上の値である、請求項2に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
  4. 前記凸状部の端部と前記屈曲部の頂点との距離が1.0〜10.0mmの範囲内の値である、請求項2又は3に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
  5. 前記繊維強化樹脂積層体における、少なくとも前記屈曲部に隣接する領域の厚さを、他の領域の厚さよりも厚くし、前記プレス加工を行うことにより、前記繊維強化樹脂積層体に形成される前記屈曲部に隣接する領域に付加される圧力が相対的に高められる、請求項1に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
  6. 前記繊維強化樹脂積層体における、少なくとも前記屈曲部に隣接する領域に、層厚増加材料を配置し、前記プレス加工を行うことにより、前記繊維強化樹脂積層体に形成される前記屈曲部に隣接する領域に付加される圧力が相対的に高められる、請求項1又は5に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
  7. 前記繊維強化樹脂積層体における前記屈曲部に隣接する領域に前記層厚増加材料を配置することは、フィルム状又はシート状の樹脂材料あるいは前記繊維強化樹脂シートを積層することである、請求項6に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
  8. 前記樹脂材料は前記マトリックス樹脂の材料と同系の材料である、請求項7に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
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