以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。図2は、第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の印刷部および圧力生成部の概略構成図である。なお、以下の説明における上下方向は鉛直方向であり、図2における紙面の上下を上下方向とする。
図1に示すように、第1実施形態に係るインクジェット印刷装置1は、4つの印刷部2と、圧力生成部3と、搬送部4と、制御部5とを備える。
印刷部2は、インクを循環させつつ、搬送部4により搬送される用紙にインクを吐出して画像を印刷する。4つの印刷部2は、それぞれ異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する。4つの印刷部2は、吐出するインクの色が異なる以外は、同様の構成を有する。
図2に示すように、印刷部2は、インクジェットヘッド11と、インク循環部12と、インク補給部13とを備える。
インクジェットヘッド11は、インク循環部12により供給されるインクを吐出する。インクジェットヘッド11は、複数のヘッドモジュール16を有する。
ヘッドモジュール16は、インクを貯留するインクチャンバ(図示せず)と、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)と、ノズルが開口したノズル面16aとを有する。インクチャンバ内には、ピエゾ素子(図示せず)が配置されている。ピエゾ素子の駆動により、ノズルからインクが吐出される。ノズル面16aは、搬送部4により搬送される用紙に対向するヘッドモジュール16の下面である。
ヘッドモジュール16は、ヘッドホルダ17に保持されている。ヘッドホルダ17は、各印刷部2のインクジェットヘッド11のヘッドモジュール16を保持するとともに、後述する分配器22および集合器23を内部に収容している。
インク循環部12は、インクを循環させつつインクジェットヘッド11にインクを供給する。インク循環部12は、加圧タンク(請求項の第1タンクに相当)21と、分配器22と、集合器23と、負圧タンク(請求項の第2タンクに相当)24と、回収タンク(請求項の第3タンクに相当)25と、インク循環管26〜29と、インク回収弁30と、インク循環ポンプ31と、ヒートシンク32と、ヒータ33とを備える。
加圧タンク21は、インクジェットヘッド11に供給するインクを貯留する。加圧タンク21のインクは、インク循環管26および分配器22を介してインクジェットヘッド11に供給される。すなわち、加圧タンク21は、インクの循環方向におけるインクジェットヘッド11の上流側に配置されている。加圧タンク21内には、インクの液面上に空気層36が形成されている。加圧タンク21は、後述の加圧連通管52を介して、後述の加圧共通気室51に接続されている。加圧タンク21は、インクジェットヘッド11の近傍であって、ノズル面16aより高い位置(上方)に配置されている。
加圧タンク21には、加圧タンク液面センサ37と、インクフィルタ38とが設けられている。
加圧タンク液面センサ37は、加圧タンク21内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。加圧タンク液面センサ37は、加圧タンク21内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
インクフィルタ38は、インク内のゴミ等を除去する。
分配器22は、インク循環管26を介して加圧タンク21から供給されるインクを、インクジェットヘッド11の各ヘッドモジュール16に分配する。
集合器23は、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクを各ヘッドモジュール16から集める。集合器23により集められたインクは、インク循環管27を介して負圧タンク24へと流れる。
負圧タンク24は、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクを集合器23から受け取って貯留する。すなわち、負圧タンク24は、インクの循環方向におけるインクジェットヘッド11の下流側に配置されている。負圧タンク24内には、インクの液面上に空気層39が形成されている。負圧タンク24は、後述の負圧連通管57を介して、後述の負圧共通気室56に接続されている。負圧タンク24は、インクジェットヘッド11および加圧タンク21の近傍であって、加圧タンク21と同じ高さに配置されている。
負圧タンク24には、負圧タンク液面センサ40が設けられている。負圧タンク液面センサ40は、負圧タンク24内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。負圧タンク液面センサ40は、負圧タンク24内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
回収タンク25は、加圧タンク21へ供給するインクを貯留する。回収タンク25は、インク補給部13からインクの供給を受け、供給されたインクを貯留する。また、回収タンク25は、負圧タンク24からインクを受け取って貯留する。回収タンク25は、インク循環管29を介して加圧タンク21に接続され、インク循環管28を介して負圧タンク24に接続されている。これにより、回収タンク25は、インクの循環経路における負圧タンク24から加圧タンク21への経路上に配置されている。換言すれば、回収タンク25は、インクの循環経路における負圧タンク24から加圧タンク21への経路に直接的に接続されている。回収タンク25内には、インクの液面上に空気層41が形成されている。回収タンク25は、後述の回収連通管64を介して、後述の回収共通気室63に接続されている。回収タンク25は、インクジェットヘッド11のヘッドモジュール16のノズル面16aより低い位置(下方)に配置されている。
回収タンク25には、回収タンク液面センサ42が設けられている。回収タンク液面センサ42は、回収タンク25内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。回収タンク液面センサ42は、回収タンク25内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
インク循環管26は、加圧タンク21と分配器22とを接続する。インク循環管26には、加圧タンク21から分配器22に向かってインクが流れる。インク循環管27は、集合器23と負圧タンク24とを接続する。インク循環管27には、集合器23から負圧タンク24に向かってインクが流れる。インク循環管28は、負圧タンク24と回収タンク25とを接続する。インク循環管28には、負圧タンク24から回収タンク25に向かってインクが流れる。インク循環管29は、回収タンク25と加圧タンク21とを接続する。インク循環管29には、回収タンク25から加圧タンク21に向かってインクが流れる。インク循環管26〜29、分配器22、および集合器23により、加圧タンク21、インクジェットヘッド11、負圧タンク24、および回収タンク25の間でインクの循環を行うための循環経路が構成される。
インク回収弁30は、インク循環管28内のインクの流路を開閉する。インク回収弁30は、インク循環管28の途中に設けられている。インク回収弁30は、通電時に閉鎖され、非通電時に開放されるノーマルオープン型の電磁弁からなる。
インク循環ポンプ31は、回収タンク25から加圧タンク21へインクを送液する。インク循環ポンプ31は、インク循環管29の途中に設けられている。
ヒートシンク32は、インク循環部12において循環されるインクを冷却する。ヒートシンク32は、インク循環管28の途中に設けられている。
ヒータ33は、インク循環部12において循環されるインクに加熱する。ヒータ33は、インク循環管29の途中に設けられている。
インク補給部13は、インク循環部12にインクを補給する。インク補給部13は、インクカートリッジ46と、インク補給弁47と、インク補給管48とを備える。
インクカートリッジ46は、インクジェットヘッド11による印刷に用いられるインクを収容している。インクカートリッジ46内のインクは、インク補給管48を介してインク循環部12の回収タンク25に供給される。
インク補給弁47は、インク補給管48内のインクの流路を開閉する。インク補給弁47は、インク補給管48の途中に設けられている。インク補給弁47は、ノーマルオープン型の電磁弁からなる。
インク補給管48は、インクカートリッジ46と回収タンク25とを接続する。インク循環中において、インク補給弁47が開放されると、回収タンク25に生成された負圧により、インク補給管48内をインクカートリッジ46から回収タンク25に向かってインクが流れる。
圧力生成部3は、各印刷部2の加圧タンク21、負圧タンク24、および回収タンク25にインク循環のための圧力を生成する。図2に示すように、圧力生成部3は、加圧共通気室51と、4本の加圧連通管52と、加圧圧力調整弁53と、加圧圧力調整管54と、加圧圧力センサ55と、負圧共通気室56と、4本の負圧連通管57と、負圧圧力調整弁58と、負圧圧力調整管59と、負圧圧力センサ60と、加負圧連通弁61と、加負圧連通管62と、回収共通気室63と、4本の回収連通管64と、回収圧力調整弁65と、回収圧力調整管66と、回収大気開放弁67と、回収大気開放管68と、エアフィルタ69と、回収圧力センサ70と、エアポンプ71と、エアポンプ用配管72と、負圧導入弁73と、負圧導入管74とを備える。
加圧共通気室51は、各印刷部2の加圧タンク21の圧力を等しくするための気室である。加圧共通気室51は、4本の加圧連通管52を介して4つの印刷部2の加圧タンク21の空気層36と連通されている。これにより、各印刷部2の加圧タンク21どうしが、加圧共通気室51および加圧連通管52を介して連通されている。
加圧連通管52は、加圧共通気室51と加圧タンク21の空気層36とを連通させる。4本の加圧連通管52は、各印刷部2に1本ずつ対応して設けられている。加圧連通管52は、一端が加圧共通気室51に接続され、他端が加圧タンク21の空気層36に接続されている。
加圧圧力調整弁53は、加圧共通気室51および加圧タンク21の圧力を調整するために、加圧圧力調整管54内の空気の流路を開閉する。加圧圧力調整弁53は、加圧圧力調整管54の途中に設けられている。加圧圧力調整弁53は、通電時に開放され、非通電時に閉鎖されるノーマルクローズ型の電磁弁からなる。なお、加圧圧力調整弁53は、請求項の密閉手段の一部に相当する。
加圧圧力調整管54は、加圧共通気室51および加圧タンク21の圧力調整のための空気の流路を形成する。加圧圧力調整管54は、一端が加圧共通気室51に接続され、他端が回収大気開放管68に接続されている。
加圧圧力センサ55は、加圧共通気室51内の圧力を検出する。加圧共通気室51内の圧力は、各印刷部2の加圧タンク21内の圧力と等しい。加圧共通気室51と各印刷部2の加圧タンク21の空気層36とが連通されているためである。
負圧共通気室56は、各印刷部2の負圧タンク24の圧力を等しくするための気室である。負圧共通気室56は、4本の負圧連通管57を介して4つの印刷部2の負圧タンク24の空気層39と連通されている。これにより、各印刷部2の負圧タンク24どうしが、負圧共通気室56および負圧連通管57を介して連通されている。
負圧連通管57は、負圧共通気室56と負圧タンク24の空気層39とを連通させる。4本の負圧連通管57は、各印刷部2に1本ずつ対応して設けられている。負圧連通管57は、一端が負圧共通気室56に接続され、他端が負圧タンク24の空気層39に接続されている。
負圧圧力調整弁58は、負圧共通気室56および負圧タンク24の圧力を調整するために、負圧圧力調整管59内の空気の流路を開閉する。負圧圧力調整弁58は、負圧圧力調整管59の途中に設けられている。負圧圧力調整弁58は、ノーマルクローズ型の電磁弁からなる。なお、負圧圧力調整弁58は、請求項の密閉手段の一部に相当する。
負圧圧力調整管59は、負圧共通気室56および負圧タンク24の圧力調整のための空気の流路を形成する。負圧圧力調整管59は、一端が負圧共通気室56に接続され、他端が回収大気開放管68に接続されている。
負圧圧力センサ60は、負圧共通気室56内の圧力を検出する。負圧共通気室56内の圧力は、各印刷部2の負圧タンク24内の圧力と等しい。負圧共通気室56と各印刷部2の負圧タンク24の空気層39とが連通されているためである。
加負圧連通弁61は、加圧共通気室51と負圧共通気室56との間の連通、遮断を切り替えるために、加負圧連通管62内の空気の流路を開閉する。加負圧連通弁61は、加負圧連通管62の途中に設けられている。加負圧連通弁61は、ノーマルオープン型の電磁弁からなる。加負圧連通弁61が開放され、加圧共通気室51と負圧共通気室56とが連通されることで、加圧連通管52、加圧共通気室51、加負圧連通管62、負圧共通気室56、および負圧連通管57を介して、加圧タンク21と負圧タンク24とが連通される。すなわち、加負圧連通弁61の開放、閉鎖により、加圧タンク21と負圧タンク24との間の連通、遮断が切り替えられる。したがって、加圧タンク21と負圧タンク24とが、加負圧連通弁61を介して接続されているということができる。加負圧連通弁61は、請求項の弁に相当する。
加負圧連通管62は、加圧共通気室51と負圧共通気室56とを連通させるための空気の流路を形成する。加負圧連通管62は、一端が加圧共通気室51に接続され、他端が負圧共通気室56に接続されている。
回収共通気室63は、各印刷部2の回収タンク25の圧力を等しくするための気室である。回収共通気室63は、4本の回収連通管64を介して4つの印刷部2の回収タンク25の空気層41と連通されている。これにより、各印刷部2の回収タンク25どうしが、回収共通気室63および回収連通管64を介して連通されている。
回収連通管64は、回収共通気室63と回収タンク25の空気層41とを連通させる。4本の回収連通管64は、各印刷部2に1本ずつ対応して設けられている。回収連通管64は、一端が回収共通気室63に接続され、他端が回収タンク25の空気層41に接続されている。
回収圧力調整弁65は、回収共通気室63および回収タンク25の圧力を調整するために、回収圧力調整管66内の空気の流路を開閉する。回収圧力調整弁65は、回収圧力調整管66の途中に設けられている。回収圧力調整弁65は、ノーマルクローズ型の電磁弁からなる。
回収圧力調整管66は、回収共通気室63および回収タンク25の圧力調整のための空気の流路を形成する。回収圧力調整管66は、一端が回収共通気室63に接続され、他端が回収大気開放管68に接続されている。
回収大気開放弁67は、回収共通気室63および回収タンク25を密閉状態(大気から遮断された状態)と大気開放状態(大気に通じた状態)との間で切り替えるために、回収大気開放管68内の空気の流路を開閉する。回収大気開放弁67は、回収共通気室63の近傍の回収大気開放管68上に設けられている。回収大気開放弁67は、ノーマルオープン型の電磁弁からなる。なお、回収大気開放弁67は、請求項の切替手段に相当する。
回収大気開放管68は、回収共通気室63および回収タンク25を大気開放するための空気の流路を形成する。回収大気開放管68は、一端が回収共通気室63に接続され、他端(上端)がエアフィルタ69を介して大気に通じている。回収大気開放管68には、加圧圧力調整管54、負圧圧力調整管59、および回収圧力調整管66が接続されている。これにより、加圧圧力調整管54、負圧圧力調整管59、および回収圧力調整管66が大気に連通される。加圧圧力調整管54、負圧圧力調整管59、および回収圧力調整管66は、回収大気開放弁67とエアフィルタ69との間で回収大気開放管68に接続されている。
エアフィルタ69は、回収大気開放管68への空気中のゴミ等の進入を防止する。エアフィルタ69は、回収大気開放管68の上端に設置されている。
回収圧力センサ70は、回収共通気室63内の圧力を検出する。回収共通気室63内の圧力は、各印刷部2の回収タンク25内の圧力と等しい。回収共通気室63と各印刷部2の回収タンク25の空気層41とが連通されているためである。
エアポンプ71は、回収共通気室63から空気を吸引するとともに、加圧共通気室51へ空気を送る。エアポンプ71は、エアポンプ用配管72の途中に設けられている。
エアポンプ用配管72は、エアポンプ71により回収共通気室63から加圧共通気室51へ送られる空気の流路を形成する。エアポンプ用配管72は、一端が回収共通気室63に接続され、他端が加圧共通気室51に接続されている。
負圧導入弁73は、回収共通気室63内の圧力を用いて負圧共通気室56内の圧力を下げるために、負圧導入管74内の空気の流路を開閉する。負圧導入弁73は、負圧導入管74の途中に設けられている。負圧導入弁73は、ノーマルクローズ型の電磁弁からなる。なお、負圧導入弁73は、請求項の密閉手段の一部に相当する。
負圧導入管74は、回収共通気室63内の圧力を用いて負圧共通気室56内の圧力を下げるための空気の流路を形成する。負圧導入管74は、一端が回収共通気室63に接続され、他端が負圧共通気室56に接続されている。
ここで、印刷部2および圧力生成部3における加圧系、負圧系のエア量設計について説明する。
後述するように、インクジェット印刷装置1では、インク循環の終了時に、加負圧連通弁61が開放される。このときに、インク循環時における加圧タンク21および加圧共通気室51を含む加圧系の正圧と、負圧タンク24および負圧共通気室56を含む負圧系の負圧とが相殺され、加圧タンク21、加圧共通気室51、負圧タンク24、および負圧共通気室56の圧力が大気圧相当になるように、加圧系のエア量および負圧系のエア量が設計されている。
具体的には、ボイルの法則より、以下の式(1)が成り立つように、インクジェット印刷装置1における加圧系のエア量Vk1および負圧系のエア量Vf1が設計されている。なお、圧力はゲージ圧とする。
Pks×Vk1+Pfs×Vf1=0 …(1)
ここで、Pksは、インク循環時における加圧タンク21の設定圧である。Pfsは、インク循環時における負圧タンク24の設定圧である。設定圧Pks,Pfsは、インク循環部12において所定のインク循環流量でインクを循環させつつ、インクジェットヘッド11のノズル圧を適正値(負圧)にするための圧力値として設定されるものである。
加圧系のエア量Vk1は、インク循環時に加圧タンク21に連通し、加圧タンク21とともに設定圧Pksとなる部分のエア量である。加圧系のエア量Vk1は、以下の式(2)で表される。
Vk1=4×Vkt+Vkc+4×Vkr+Vkb+Vkn+Vkp …(2)
ここで、Vktは、加圧タンク21内の空気層36の容量である。Vktは、加圧タンク21内の液面の基準高さ以上の空間の体積に相当する。Vkcは、加圧共通気室51の容量である。Vkrは、加圧連通管52の容量である。Vkbは、加圧圧力調整管54の加圧共通気室51と加圧圧力調整弁53との間の部分の容量である。Vknは、加負圧連通管62の加圧共通気室51と加負圧連通弁61との間の部分の容量である。Vkpは、エアポンプ用配管72の加圧共通気室51とエアポンプ71との間の部分の容量である。
負圧系のエア量Vf1は、インク循環時に負圧タンク24に連通し、負圧タンク24とともに設定圧Pfsとなる部分のエア量である。負圧系のエア量Vf1は、以下の式(3)で表される。
Vf1=4×Vft+Vfc+4×Vfr+Vfb+Vfn+Vfi …(3)
ここで、Vftは、負圧タンク24内の空気層39の容量である。Vftは、負圧タンク24内の液面の基準高さ以上の空間の体積に相当する。Vfcは、負圧共通気室56の容量である。Vfrは、負圧連通管57の容量である。Vfbは、負圧圧力調整管59の負圧共通気室56と負圧圧力調整弁58との間の部分の容量である。Vfnは、加負圧連通管62の負圧共通気室56と加負圧連通弁61との間の部分の容量である。Vfiは、負圧導入管74の負圧共通気室56と負圧導入弁73との間の部分の容量である。
図1に戻り、搬送部4は、給紙台(図示せず)から用紙を取り出し、その用紙を搬送経路に沿って搬送する。搬送部4は、用紙を搬送するためのローラ、ローラを駆動させるモータ(いずれも図示せず)等を有する。
制御部5は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
制御部5は、印刷時には、インク循環部12においてインクを循環させつつ、インクジェットヘッド11からインクを吐出するよう印刷部2および圧力生成部3を制御する。また、制御部5は、インク循環を行わない待機時には、加圧圧力調整弁53、負圧圧力調整弁58、および負圧導入弁73を閉鎖して加圧タンク21および負圧タンクを大気から遮断された密閉状態とするとともに、回収大気開放弁67を開放して回収タンク25を大気開放状態とするよう制御する。
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
図3は、インクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。図3のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に印刷ジョブが入力されることにより開始となる。
図3のステップS1において、制御部5は、加負圧連通弁61および回収大気開放弁67を閉鎖し、負圧導入弁73を開放する。加負圧連通弁61の閉鎖により、加圧共通気室51と負圧共通気室56との間が遮断される。また、負圧導入弁73の開放により、負圧共通気室56と回収共通気室63とが連通される。また、回収大気開放弁67の閉鎖により、回収共通気室63および回収タンク25が大気から遮断される。
なお、待機中は、加負圧連通弁61および回収大気開放弁67は開放され、負圧導入弁73は閉鎖されている。また、加圧圧力調整弁53、負圧圧力調整弁58、および回収圧力調整弁65は閉鎖されている。また、インク回収弁30およびインク補給弁47は開放されている。
次いで、ステップS2において、制御部5は、液面維持制御を開始する。液面維持制御は、加圧タンク21、負圧タンク24、および回収タンク25の液面を基準高さ付近に維持するための制御である。液面維持制御において、制御部5は、加圧タンク21、負圧タンク24、および回収タンク25の液面高さに応じて、インク循環ポンプ31、インク回収弁30、およびインク補給弁47を制御する。
具体的には、図4(a)に示すように、加圧タンク液面センサ37がオフの状態では、制御部5は、インク循環ポンプ31をオン(駆動)とする。加圧タンク液面センサ37がオンの状態では、制御部5は、インク循環ポンプ31をオフ(停止)とする。
また、図4(b)に示すように、負圧タンク液面センサ40がオフの状態では、制御部5は、インク回収弁30を閉鎖する。負圧タンク液面センサ40がオンの状態では、制御部5は、インク回収弁30を開放する。
また、図4(c)に示すように、回収タンク液面センサ42がオフの状態では、制御部5は、インク補給弁47を開放する。回収タンク液面センサ42がオンの状態では、制御部5は、インク補給弁47を閉鎖する。
図3に戻り、ステップS2に続いて、ステップS3において、制御部5は、圧力制御を開始する。圧力制御は、加圧タンク21、負圧タンク24、および回収タンク25にそれぞれの設定圧Pks,Pfs,Prsを生成し、それらを維持するための制御である。ここで、回収タンク25の設定圧Prsは、負圧タンク24の設定圧Pfsより小さい(絶対値が大きい)負圧である。回収タンク25の設定圧Prsは、負圧タンク24との圧力差により負圧タンク24から回収タンク25へインクを送るための圧力値として設定されるものである。
圧力制御において、制御部5は、検出された加圧タンク21の圧力Pk、負圧タンク24の圧力Pf、および回収タンク25の圧力Prに応じて、エアポンプ71、加圧圧力調整弁53、負圧導入弁73、負圧圧力調整弁58、および回収圧力調整弁65を制御する。
具体的には、図5(a)に示すように、Pk<Pksかつ|Pr|<|Prs|の場合、制御部5は、エアポンプ71をオン(駆動)とし、加圧圧力調整弁53および回収圧力調整弁65を閉鎖する。これにより、エアポンプ71により密閉状態の回収共通気室63から空気が吸引されることで、回収タンク25の圧力が低下する(負圧の絶対値が大きくなる)。また、エアポンプ71により密閉状態の加圧共通気室51へ空気が送られることで、加圧タンク21の圧力が上昇する。
Pk<Pksかつ|Pr|≧|Prs|の場合、制御部5は、エアポンプ71をオンとし、加圧圧力調整弁53を閉鎖し、回収圧力調整弁65を開放する。これにより、エアポンプ71により密閉状態の加圧共通気室51へ空気が送られることで、加圧タンク21の圧力が上昇する。また、回収圧力調整弁65が開放されることにより、回収圧力調整管66を介して回収共通気室63へ空気が流入することで、回収タンク25の圧力が上昇する(負圧の絶対値が小さくなる)。
Pk≧Pksかつ|Pr|<|Prs|の場合、制御部5は、エアポンプ71をオンとし、加圧圧力調整弁53を開放し、回収圧力調整弁65を閉鎖する。これにより、エアポンプ71により密閉状態の回収共通気室63から空気が吸引されることで、回収タンク25の圧力が低下する(負圧の絶対値が大きくなる)。また、加圧圧力調整弁53が開放されることにより、加圧圧力調整管54を介して加圧共通気室51から空気が流出することで、加圧タンク21の圧力が低下する。
Pk≧Pksかつ|Pr|≧|Prs|の場合、制御部5は、エアポンプ71をオフ(停止)とし、加圧圧力調整弁53および回収圧力調整弁65を開放する。これにより、加圧圧力調整管54を介して加圧共通気室51から空気が流出することで、加圧タンク21の圧力が低下する。また、回収圧力調整管66を介して回収共通気室63へ空気が流入することで、回収タンク25の圧力が上昇する(負圧の絶対値が小さくなる)。
また、図5(b)に示すように、|Pf|<|Pfs|の場合、制御部5は、負圧導入弁73を開放し、負圧圧力調整弁58を閉鎖する。これにより、負圧導入管74を介して密閉状態の負圧共通気室56から空気が吸引されることで、負圧タンク24の圧力が低下する(負圧の絶対値が大きくなる)。
|Pf|≧|Pfs|の場合、制御部5は、負圧導入弁73を閉鎖し、負圧圧力調整弁58を開放する。これにより、負圧圧力調整管59を介して負圧共通気室56へ空気が流入することで、負圧タンク24の圧力が上昇する(負圧の絶対値が小さくなる)。
図3に戻り、ステップS3に続いて、ステップS4において、制御部5は、加圧タンク21、負圧タンク24、および回収タンク25にそれぞれの設定圧Pks,Pfs,Prsが生成されたか否かを判断する。加圧タンク21、負圧タンク24、および回収タンク25の少なくともいずれかにおいて設定圧が生成されていないと判断した場合(ステップS4:NO)、制御部5は、ステップS4を繰り返す。
加圧タンク21、負圧タンク24、および回収タンク25にそれぞれの設定圧Pks,Pfs,Prsが生成されたと判断した場合(ステップS4:YES)、ステップS5において、制御部5は、印刷ジョブの実行を開始する。具体的には、制御部5は、印刷ジョブに基づき、搬送部4により搬送される用紙にインクジェットヘッド11からインクを吐出させて画像を印刷させる。
印刷ジョブの実行中は、加圧タンク21からインクジェットヘッド11へインクが供給され、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクが負圧タンク24に回収される。加圧タンク21からインクジェットヘッド11へのインクの流出により加圧タンク液面センサ37がオフになると、液面維持制御により、インク循環ポンプ31が回収タンク25から加圧タンク21へインクを送液する。インクジェットヘッド11から負圧タンク24へのインクの流入により負圧タンク液面センサ40がオンになると、インク回収弁30が開放され、負圧タンク24から回収タンク25へインクが流れる。このようにしてインクが循環されつつ、印刷が行われる。
また、回収タンク25から加圧タンク21へのインクの送液により回収タンク液面センサ42がオフになると、インク補給弁47が開放され、インクカートリッジ46から回収タンク25へインクが補給される。
印刷ジョブの実行開始後、ステップS6において、制御部5は、印刷ジョブが終了したか否かを判断する。印刷ジョブが終了していないと判断した場合(ステップS6:NO)、制御部5は、ステップS6を繰り返す。
印刷ジョブが終了したと判断した場合(ステップS6:YES)、ステップS7において、制御部5は、圧力制御を終了する。ここで、エアポンプ71が駆動中の場合、制御部5は、それを停止する。また、制御部5は、加圧圧力調整弁53、負圧圧力調整弁58、回収圧力調整弁65、および負圧導入弁73のなかに開放されているものがあればそれを閉鎖し、閉鎖されているものはそれを維持する。
次いで、ステップS8において、制御部5は、液面維持制御を終了する。ここで、インク循環ポンプ31が駆動中の場合、制御部5は、それを停止する。また、制御部5は、インク回収弁30およびインク補給弁47の少なくともいずれかが開放されている場合、制御部5は、開放されているものを閉鎖する。
圧力制御および液面維持制御の終了により、インク循環部12におけるインク循環が終了する。
次いで、ステップS9において、制御部5は、加負圧連通弁61を開放する。前述のように、インクジェット印刷装置1では、式(1)が成り立つように、加圧系のエア量Vk1および負圧系のエア量Vf1が設計されているので、加負圧連通弁61が開放されると、加圧系の正圧と負圧系の負圧とが相殺される。この結果、加圧タンク21および負圧タンク24の圧力が大気圧相当になる。
次いで、ステップS10において、制御部5は、回収大気開放弁67、インク回収弁30、およびインク補給弁47を開放する。これにより、一連の動作が終了し、インクジェット印刷装置1が待機状態となる。
インクジェット印刷装置1が待機状態のとき、加圧タンク21および負圧タンク24は、大気から遮断された密閉状態である。一方、回収タンク25は、大気開放状態である。このため、待機中におけるインクジェットヘッド11のノズル圧Pnは、回収タンク25内のインクの液面とノズル面16aとの高低差(水頭差)Hに応じた圧力になっている。具体的には、待機中におけるノズル圧Pnは、以下の式(4)で表される。
Pn=−ρ×g×H …(4)
ここで、ρはインクの密度である。gは重力加速度である。ノズル圧Pnが負の値(負圧)になるのは、ノズル面16aより回収タンク25が下方に配置されているためである。
回収タンク25は、待機中のノズル圧Pnがメニスカス破壊圧を超えないような高さに配置されている。メニスカス破壊圧は、ノズルの径およびインクの表面張力に応じて決まるものである。
以上説明したように、インクジェット印刷装置1は、回収タンク25を備える。制御部5は、待機時には、加圧圧力調整弁53、負圧圧力調整弁58、および負圧導入弁73を閉鎖して加圧タンク21および負圧タンク24を密閉状態とするとともに、回収大気開放弁67を開放して回収タンク25を大気開放状態とするよう制御する。
これにより、待機中におけるインクジェットヘッド11のノズル圧Pnが、大気開放された回収タンク25内の液面とノズル面16aとの高低差Hによって決まる。このため、環境変化により大気圧が変動しても、ノズル圧Pnの変動は抑えられるので、メニスカスが破壊されてノズルからのインク漏れや空気の吸い込みが発生することを抑えられる。したがって、インクジェット印刷装置1によれば、待機中におけるノズルからのインク漏れや空気の吸い込みを低減できる。
インクジェット印刷装置1において、回収タンク25は、負圧タンク24から加圧タンク21への経路上に配置されている。回収タンク25は、インク循環時には、回収大気開放弁67の閉鎖により密閉状態とされるとともに、負圧が付与される。待機時においては、回収タンク25は、回収大気開放弁67の開放により大気開放状態とされる。これにより、回収タンク25を循環経路上に配置した構成で、インク循環時には回収タンク25の負圧により負圧タンク24から回収タンク25へインクを送るとともに、待機中には回収タンク25内の液面とノズル面16aとの高低差Hによってノズル圧が決まるようにすることができる。
インクジェット印刷装置1では、加圧タンク21および負圧タンク24がインクジェットヘッド11より上方に配置されているので、加圧タンク21および負圧タンク24がインクジェットヘッド11より下方に突出しない。このため、インクジェットヘッド11のノズル面16aのクリーニング等を行うメンテナンス機構(図示せず)等のレイアウトの自由度が高められる。
また、インクジェット印刷装置1では、負圧タンク24と回収タンク25との間のインク循環管28にヒートシンク32が配置され、加圧タンク21と回収タンク25との間のインク循環管29にヒータ33が配置されている。このため、インクジェットヘッド11のメンテナンスのためにヘッドホルダ17を移動させる構成としても、高重量のヒートシンク32およびヒータ33を移動させる必要がないようにすることが可能になる。
また、インクジェット印刷装置1では、回収タンク25がノズル面16aより下方に配置されているので、待機中のノズル圧Pnを負圧とすることができる。これにより、ノズルに傷等がある場合でも、ノズルからのインク漏れを抑制することが可能になる。この結果、待機中のインク漏れをより低減できる。
また、インクジェット印刷装置1では、加圧タンク21と負圧タンク24とが、ノーマルオープン型の電磁弁からなる加負圧連通弁61を介して接続されている。そして、インク循環時の正圧(設定圧Pks)が加圧タンク21に生成され、負圧(設定圧Pfs)が負圧タンク24に生成された状態で加負圧連通弁61が開放されると、加圧タンク21の正圧と負圧タンク24の負圧とが相殺されるようになっている。このため、インク循環中に電源が遮断されても、ノーマルオープン型の加負圧連通弁61が開放されることで、加圧タンク21および負圧タンク24の圧力を逃がすことができる。
なお、印刷部2において、1つの回収タンク25に対して、インクジェットヘッド11と、回収タンク25以外のインク循環部12の各部とを、それぞれ複数備えた構成とすることもできる。例えば、図6に示すように、1つの回収タンク25に対して、インクジェットヘッド11、加圧タンク21、分配器22、集合器23、負圧タンク24、インク循環管26〜29、インク回収弁30、インク循環ポンプ31、ヒートシンク32、およびヒータ33をそれぞれ2つずつ備えた構成としてもよい。
このように、1つの回収タンク25を複数のインクジェットヘッド11に共通のものとすることで、装置構成の複雑化を抑えつつ、1色に対して複数のインクジェットヘッド11を設ける構成を実現できる。
なお、この場合も、インク循環の終了時に加負圧連通弁61が開放されたときに、加圧系の正圧と負圧系の負圧とが相殺されるように、加圧系のエア量および負圧系のエア量が設計される。
(第2実施形態)
次に、上述した第1実施形態の印刷部および圧力生成部を変更した第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態における印刷部および圧力生成部の概略構成図である。
図7に示すように、第2実施形態における印刷部2Aは、第1実施形態における印刷部2のインク循環部12、インク補給部13を、それぞれインク循環部12A、インク補給部13Aに置き換えた構成である。
インク循環部12Aは、第1実施形態におけるインク循環部12に対し、インク循環管28をインク循環管76に置き換え、インク循環管29、回収タンク25、およびインク回収弁30を省略し、サブタンク(請求項の第3タンクに相当)77、サブタンク弁78、および接続管(請求項の接続経路に相当)79を設けた構成である。
インク循環管76は、加圧タンク21と負圧タンク24とを接続する。インク循環部12Aでは、インク循環管26,27,76、分配器22、および集合器23により、インクの循環経路が構成される。インク循環管76は、この循環経路における負圧タンク24から加圧タンク21への経路を構成する。
インク循環管76には、インク循環ポンプ31、ヒートシンク32、およびヒータ33が設置されている。インク循環ポンプ31は、負圧タンク24から加圧タンク21へインクを送液する。
サブタンク77は、負圧タンク24へ供給するインクを貯留する。サブタンク77は、インク補給部13Aからインクの供給を受け、供給されたインクを貯留する。サブタンク77は、接続管79を介してインク循環管76に間接的に接続されている。サブタンク77内には、インクの液面上に空気層80が形成されている。サブタンク77は、後述のサブタンク連通管90を介して、後述のサブタンク共通気室89に接続されている。サブタンク77は、インクジェットヘッド11のヘッドモジュール16のノズル面16aより低い位置(下方)に配置されている。
サブタンク77には、サブタンク液面センサ81が設けられている。サブタンク液面センサ81は、サブタンク77内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。サブタンク液面センサ81は、サブタンク77内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
サブタンク弁78は、インク循環管76とサブタンク77との間の連通、遮断を切り替えるために、接続管79内のインクの流路を開閉する。サブタンク弁78は、接続管79の途中に設けられている。サブタンク弁78はノーマルオープン型の電磁弁からなる。
接続管79は、インク循環管76とサブタンク77とを連通させるためのインクの流路を形成する。接続管79は、一端がインク循環管76の負圧タンク24とインク循環ポンプ31との間の部分に接続され、他端がサブタンク77に接続されている。
インク補給部13Aは、第1実施形態におけるインク補給部13に対し、インク補給ポンプ82を追加した構成である。
インク補給部13Aのインク補給管48は、インクカートリッジ46とサブタンク77とを接続する。また、インク補給部13Aのインク補給弁47は、ノーマルクローズ型の電磁弁からなる。
インク補給ポンプ82は、インクカートリッジ46からサブタンク77へインクを送る。インク補給ポンプ82は、インク補給管48の途中に設けられている。
圧力生成部3Aは、各印刷部2Aの加圧タンク21および負圧タンク24にインク循環のための圧力を生成する。図7に示すように、圧力生成部3Aは、第1実施形態における圧力生成部3に対し、負圧大気開放弁86および負圧大気開放管87を追加し、エアポンプ用配管72、回収共通気室63、回収連通管64、回収大気開放管68をそれぞれエアポンプ用配管88、サブタンク共通気室89、サブタンク連通管90、サブタンク大気開放管91に置き換えるとともに、回収圧力調整弁65、回収圧力調整管66、回収大気開放弁67、回収圧力センサ70、負圧導入弁73、および負圧導入管74を省略した構成である。
負圧大気開放弁86は、負圧共通気室56および負圧タンク24を密閉状態と大気開放状態との間で切り替えるために、負圧大気開放管87内の空気の流路を開閉する。負圧大気開放弁86は、負圧大気開放管87の途中に設けられている。負圧大気開放弁86は、ノーマルクローズ型の電磁弁からなる。
負圧大気開放管87は、負圧共通気室56および負圧タンク24を大気開放するための空気の流路を形成する。負圧大気開放管87は、一端が負圧共通気室56に接続され、他端がサブタンク大気開放管91に接続されている。
ここで、負圧共通気室56および負圧タンク24が大気開放されるのは、インクジェットヘッド11のメンテナンスのためにノズルからインクを押し出すパージを行う場合である。この場合、負圧大気開放弁86が開放され、加圧圧力調整弁53および加負圧連通弁61が閉鎖された状態で、エアポンプ71により負圧共通気室56から加圧共通気室51へ空気が送られる。これにより、加圧タンク21が加圧され、インクジェットヘッド11のノズルからインクが押し出される。
エアポンプ用配管88は、エアポンプ71により負圧共通気室56から加圧共通気室51へ送られる空気の流路を形成する。エアポンプ用配管88は、一端が負圧共通気室56に接続され、他端が加圧共通気室51に接続されている。エアポンプ用配管88の途中にエアポンプ71が設けられている。
サブタンク共通気室89は、各印刷部2Aのサブタンク77を大気開放状態とするための共通の気室である。サブタンク共通気室89は、サブタンク大気開放管91を介して常時大気開放されている。サブタンク共通気室89は、4本のサブタンク連通管90を介して4つの印刷部2Aのサブタンク77の空気層80と連通されている。これにより、各印刷部2Aのサブタンク77が、常時大気開放状態になっている。
サブタンク連通管90は、サブタンク共通気室89とサブタンク77の空気層80とを連通させる。4本のサブタンク連通管90は、各印刷部2Aに1本ずつ対応して設けられている。サブタンク連通管90は、一端がサブタンク共通気室89に接続され、他端がサブタンク77の空気層80に接続されている。
サブタンク大気開放管91は、サブタンク共通気室89を大気と連通させる。サブタンク大気開放管91は、一端がサブタンク共通気室89に接続され、他端がエアフィルタ69を介して大気に通じている。サブタンク大気開放管91には、加圧圧力調整管54、負圧圧力調整管59、および負圧大気開放管87が接続されている。
ここで、印刷部2Aおよび圧力生成部3Aにおける加圧系、負圧系のエア量設計について説明する。
第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、インク循環の終了時に加負圧連通弁61が開放されたときに、加圧系の正圧と負圧系の負圧とが相殺されるように、加圧系のエア量および負圧系のエア量が設計されている。
具体的には、ボイルの法則より、以下の式(5)が成り立つように、印刷部2Aおよび圧力生成部3Aにおける加圧系のエア量Vk2および負圧系のエア量Vf2が設計されている。
Pks×Vk2+Pfs×Vf2=0 …(5)
加圧系のエア量Vk2は、以下の式(6)で表される。
Vk2=4×Vkt+Vkc+4×Vkr+Vkb+Vkn+Vkq …(6)
ここで、Vkqは、エアポンプ用配管88の加圧共通気室51とエアポンプ71との間の部分の容量である。Vkt,Vkc,Vkr,Vkb,Vknは、それぞれ前述の式(2)にも含まれているものである。
負圧系のエア量Vf2は、以下の式(7)で表される。
Vf2=4×Vft+Vfc+4×Vfr+Vfb+Vfn+Vfq+Vfh …(7)
ここで、Vfqは、エアポンプ用配管88の負圧共通気室56とエアポンプ71との間の部分の容量である。Vfhは、負圧大気開放管87の負圧共通気室56と負圧大気開放弁86との間の部分の容量である。Vft,Vfc,Vfr,Vfb,Vfnは、それぞれ前述の式(3)にも含まれているものである。
次に、第2実施形態におけるインクジェット印刷装置の動作について説明する。
図8は、第2実施形態におけるインクジェット印刷装置の動作を説明するためのフローチャートである。図8のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置に印刷ジョブが入力されることにより開始となる。
図8のステップS11において、制御部5は、加負圧連通弁61およびサブタンク弁78を閉鎖する。加負圧連通弁61の閉鎖により、加圧共通気室51と負圧共通気室56との間が遮断される。また、サブタンク弁78の閉鎖により、インク循環管76とサブタンク77との間が遮断される。
なお、待機中は、加負圧連通弁61およびサブタンク弁78は開放されている。また、加圧圧力調整弁53、負圧圧力調整弁58、負圧大気開放弁86、およびインク補給弁47は閉鎖されている。
次いで、ステップS12において、制御部5は、液面維持制御を開始する。第2実施形態における液面維持制御は、加圧タンク21、負圧タンク24、およびサブタンク77の液面を基準高さ付近に維持するための制御である。液面維持制御において、制御部5は、加圧タンク21および負圧タンク24の液面高さに応じて、サブタンク弁78およびインク循環ポンプ31を制御する。また、制御部5は、サブタンク77の液面高さに応じて、インク補給弁47およびインク補給ポンプ82を制御する。
具体的には、図9(a)に示すように、加圧タンク液面センサ37および負圧タンク液面センサ40がともにオフの状態では、制御部5は、サブタンク弁78を開放し、インク循環ポンプ31をオフとする。
加圧タンク液面センサ37がオンで負圧タンク液面センサ40がオフの状態では、制御部5は、サブタンク弁78を閉鎖し、インク循環ポンプ31をオフとする。加圧タンク液面センサ37および負圧タンク液面センサ40がともにオンの状態でも同様に、制御部5は、サブタンク弁78を閉鎖し、インク循環ポンプ31をオフとする。
加圧タンク液面センサ37がオフで負圧タンク液面センサ40がオンの状態では、制御部5は、サブタンク弁78を閉鎖し、インク循環ポンプ31をオンとする。
また、図9(b)に示すように、サブタンク液面センサ81がオフの状態では、制御部5は、インク補給弁47を開放し、インク補給ポンプ82をオンとする。サブタンク液面センサ81がオンの状態では、制御部5は、インク補給弁47を閉鎖し、インク補給ポンプ82をオフとする。
図8に戻り、ステップS12に続き、ステップS13において、制御部5は、圧力制御を開始する。第2実施形態における圧力制御は、加圧タンク21および負圧タンク24にそれぞれの設定圧Pks,Pfsを生成し、それらを維持するための制御である。圧力制御において、制御部5は、検出された加圧タンク21の圧力Pkおよび負圧タンク24の圧力Pfに応じて、エアポンプ71、加圧圧力調整弁53、および負圧圧力調整弁58を制御する。
具体的には、図10に示すように、Pk<Pksかつ|Pf|<|Pfs|の場合、制御部5は、加圧圧力調整弁53および負圧圧力調整弁58を閉鎖し、エアポンプ71をオンとする。これにより、密閉状態の負圧タンク24からエアポンプ71により空気が吸引されることで、負圧タンク24の圧力が低下する(負圧の絶対値が大きくなる)。また、密閉状態の加圧タンク21にエアポンプ71により空気が送られることで、加圧タンク21の圧力が上昇する。
Pk≧Pksかつ|Pf|<|Pfs|の場合、制御部5は、加圧圧力調整弁53を開放し、負圧圧力調整弁58を閉鎖する。また、制御部5は、エアポンプ71をオンとする。これにより、加圧圧力調整管54を介して加圧タンク21から空気が流出することで、加圧タンク21の圧力が低下する。また、密閉状態の負圧タンク24からエアポンプ71により空気が吸引されることで、負圧タンク24の圧力が低下する(負圧の絶対値が大きくなる)。
Pk<Pksかつ|Pf|≧|Pfs|の場合、制御部5は、加圧圧力調整弁53を閉鎖し、負圧圧力調整弁58を開放する。また、制御部5は、エアポンプ71をオンとする。これにより、密閉状態の加圧タンク21にエアポンプ71により空気が送られることで、加圧タンク21の圧力が上昇する。また、負圧圧力調整管59を介して負圧タンク24に空気が流入することで、負圧タンク24の圧力が上昇する(負圧の絶対値が小さくなる)。
Pk≧Pksかつ|Pf|≧|Pfs|の場合、制御部5は、加圧圧力調整弁53および負圧圧力調整弁58を開放し、エアポンプ71をオフとする。これにより、加圧圧力調整管54を介して加圧タンク21から空気が流出することで、加圧タンク21の圧力が低下する。また、負圧圧力調整管59を介して負圧タンク24に空気が流入することで、負圧タンク24の圧力が上昇する(負圧の絶対値が小さくなる)。
図8に戻り、ステップS13に続き、ステップS14において、制御部5は、加圧タンク21および負圧タンク24にそれぞれの設定圧Pks,Pfsが生成されたか否かを判断する。加圧タンク21および負圧タンク24の少なくともいずれかにおいて設定圧が生成されていないと判断した場合(ステップS14:NO)、制御部5は、ステップS14を繰り返す。
加圧タンク21および負圧タンク24にそれぞれの設定圧Pks,Pfsが生成されたと判断した場合(ステップS14:YES)、ステップS15において、制御部5は、印刷ジョブの実行を開始する。
印刷ジョブの実行中は、加圧タンク21からインクジェットヘッド11へインクが供給され、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクが負圧タンク24に回収される。加圧タンク液面センサ37がオフで負圧タンク液面センサ40がオンの状態になると、液面維持制御により、インク循環ポンプ31が負圧タンク24から加圧タンク21へインクを送液する。このようにしてインクが循環されつつ、印刷が行われる。
インクの消費によりインク量が減少し、加圧タンク液面センサ37および負圧タンク液面センサ40がともにオフの状態になると、液面維持制御により、サブタンク弁78が開放される。これにより、負圧が付与されている負圧タンク24と大気開放状態のサブタンク77との圧力差により、サブタンク77から負圧タンク24へインクが送られる。
また、サブタンク77から負圧タンク24へのインクの供給により、サブタンク液面センサ81がオフになると、液面維持制御により、インク補給弁47が開放され、インク補給ポンプ82が駆動される。これにより、インクカートリッジ46からサブタンク77へインクが補給される。
印刷ジョブの実行開始後、ステップS16において、制御部5は、印刷ジョブが終了したか否かを判断する。印刷ジョブが終了していないと判断した場合(ステップS16:NO)、制御部5は、ステップS16を繰り返す。
印刷ジョブが終了したと判断した場合(ステップS16:YES)、ステップS17において、制御部5は、圧力制御を終了する。ここで、エアポンプ71が駆動中の場合、制御部5は、それを停止する。また、制御部5は、加圧圧力調整弁53および負圧圧力調整弁58の少なくともいずれかが開放されている場合、制御部5は、開放されているものを閉鎖する。
次いで、ステップS18において、制御部5は、液面維持制御を終了する。ここで、インク循環ポンプ31が駆動中の場合、制御部5は、それを停止する。また、制御部5は、サブタンク弁78が開放されている場合、それを閉鎖する。また、制御部5は、インク補給弁47が開放されてインク補給ポンプ82が駆動中の場合、インク補給弁47を閉鎖するとともにインク補給ポンプ82を停止する。
次いで、ステップS19において、制御部5は、加負圧連通弁61を開放する。前述のように、第2実施形態では、式(5)が成り立つように、加圧系のエア量Vk2および負圧系のエア量Vf2が設計されているので、加負圧連通弁61が開放されると、加圧系の正圧と負圧系の負圧とが相殺される。この結果、加圧タンク21および負圧タンク24の圧力が大気圧相当になる。
次いで、ステップS20において、制御部5は、サブタンク弁78を開放する。これにより、一連の動作が終了し、インクジェット印刷装置が待機状態となる。
インクジェット印刷装置が待機状態のとき、加圧タンク21および負圧タンク24は、大気から遮断された密閉状態である。そして、サブタンク弁78が開放されているので、大気開放状態のサブタンク77内のインクが、接続管79を介して、インク循環管76内のインクに連通されている。
このため、待機中におけるインクジェットヘッド11のノズル圧Pnは、サブタンク77内のインクの液面とノズル面16aとの高低差(水頭差)Hに応じた圧力になっている。すなわち、待機中におけるノズル圧Pnは、前述の式(4)で表される。
サブタンク77は、第1実施形態の回収タンク25と同様に、待機中のノズル圧Pnがメニスカス破壊圧を超えないような高さに配置されている。
以上説明したように、第2実施形態では、制御部5は、待機時には、加圧圧力調整弁53、負圧圧力調整弁58、および負圧大気開放弁86を閉鎖して加圧タンク21および負圧タンク24を密閉状態とするとともに、サブタンク弁78を開放して大気開放状態のサブタンク77とインク循環管76とを連通させる。
これにより、待機中におけるノズル圧Pnが、サブタンク77内の液面とノズル面16aとの高低差Hによって決まる。このため、第1実施形態と同様に、環境変化により大気圧が変動しても、ノズル圧Pnの変動は抑えられる。したがって、第2実施形態によっても、待機中におけるノズルからのインク漏れや空気の吸い込みを低減できる。
また、サブタンク77は、接続管79を介してインク循環管76に間接的に接続されているので、循環経路外にサブタンク77を配置した構成で、待機中におけるノズル圧Pnがサブタンク77内の液面とノズル面16aとの高低差Hによって決まるようにすることができる。
なお、印刷部2Aにおいて、1つのサブタンク77に対して、インクジェットヘッド11と、サブタンク77以外のインク循環部12Aの各部とを、それぞれ複数備えた構成とすることもできる。例えば、図11に示すように、1つのサブタンク77に対して、インクジェットヘッド11、加圧タンク21、分配器22、集合器23、負圧タンク24、インク循環管26,27,76、サブタンク弁78、接続管79、インク循環ポンプ31、ヒートシンク32、およびヒータ33をそれぞれ2つずつ備えた構成としてもよい。
このように、1つのサブタンク77を複数のインクジェットヘッド11に共通のものとすることで、装置構成の複雑化を抑えつつ、1色に対して複数のインクジェットヘッド11を設ける構成を実現できる。
なお、この場合も、インク循環の終了時に加負圧連通弁61が開放されたときに、加圧系の正圧と負圧系の負圧とが相殺されるように、加圧系のエア量および負圧系のエア量が設計される。
(第3実施形態)
次に、上述した第2実施形態の印刷部を変更した第3実施形態について説明する。図12は、第3実施形態における印刷部および圧力生成部の概略構成図である。
図12に示すように、第3実施形態における印刷部2Bは、第2実施形態における印刷部2Aのインク循環部12Aを、インク循環部12Bに置き換えた構成である。
インク循環部12Bは、第1実施形態におけるインク循環部12に対し、回収タンク25、インク循環管28をそれぞれサブタンク(請求項の第3タンクに相当)96、インク循環管97に置き換え、インク回収弁30を省略し、インク帰還ポンプ(請求項のポンプに相当)98、迂回管(請求項の迂回経路に相当)99、および迂回弁(請求項の迂回開閉手段に相当)100を設けた構成である。
サブタンク96は、加圧タンク21へ供給するインクを貯留する。サブタンク96は、インク補給部13Aからインクの供給を受け、供給されたインクを貯留する。また、サブタンク96は、負圧タンク24からインクを受け取って貯留する。サブタンク96は、インク循環管29を介して加圧タンク21に接続され、インク循環管97を介して負圧タンク24に接続されている。これにより、サブタンク96は、インクの循環経路における負圧タンク24から加圧タンク21への経路上に配置されている。換言すれば、サブタンク96は、インクの循環経路における負圧タンク24から加圧タンク21への経路に直接的に接続されている。サブタンク96は、インクジェットヘッド11のヘッドモジュール16のノズル面16aより低い位置(下方)に配置されている。
サブタンク96内には、インクの液面上に空気層101が形成されている。空気層101は、圧力生成部3Aのサブタンク連通管90を介して、サブタンク共通気室89に連通されている。これにより、サブタンク96は、常時大気開放状態になっている。
サブタンク96には、サブタンク液面センサ102が設けられている。サブタンク液面センサ102は、サブタンク96内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。サブタンク液面センサ102は、サブタンク96内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
インク循環管97は、負圧タンク24とサブタンク96とを接続する。インク循環部12Bでは、インク循環管26,27,97,29、分配器22、および集合器23により、インクの循環経路が構成される。
インク帰還ポンプ98は、負圧タンク24からサブタンク96へインクを送液する。インク帰還ポンプ98は、インク循環管97の途中に設けられている。
迂回管99は、インク帰還ポンプ98を迂回する経路を構成する。迂回管99は、一端がインク循環管97の負圧タンク24とインク帰還ポンプ98との間の部分に接続され、他端がインク循環管97のインク帰還ポンプ98とサブタンク96との間の部分に接続されている。
迂回弁100は、迂回管99内のインクの流路を開閉する。迂回弁100は、迂回管99の途中に設けられている。迂回弁100はノーマルオープン型の電磁弁からなる。
第3実施形態の印刷部2Bおよび圧力生成部3Aにおける加圧系、負圧系のエア量設計は、上述した第2実施形態の印刷部2Aおよび圧力生成部3Aにおける加圧系、負圧系のエア量設計と同様である。すなわち、第3実施形態においても、前述の式(5)が成り立つように、印刷部2Bおよび圧力生成部3Aにおける加圧系のエア量Vk2および負圧系のエア量Vf2が設計されている。
次に、第3実施形態におけるインクジェット印刷装置の動作について説明する。
図13は、第3実施形態におけるインクジェット印刷装置の動作を説明するためのフローチャートである。図13のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置に印刷ジョブが入力されることにより開始となる。
図13のステップS21において、制御部5は、加負圧連通弁61および迂回弁100を閉鎖する。加負圧連通弁61の閉鎖により、加圧共通気室51と負圧共通気室56との間が遮断される。また、迂回弁100の閉鎖により、迂回管99内のインクの流路が閉鎖される。
なお、待機中は、加負圧連通弁61および迂回弁100は開放されている。また、加圧圧力調整弁53、負圧圧力調整弁58、負圧大気開放弁86、およびインク補給弁47は閉鎖されている。
次いで、ステップS22において、制御部5は、液面維持制御を開始する。第3実施形態における液面維持制御は、加圧タンク21、負圧タンク24、およびサブタンク96の液面を基準高さ付近に維持するための制御である。液面維持制御において、制御部5は、加圧タンク21の液面高さに応じて、インク循環ポンプ31を制御する。また、制御部5は、負圧タンク24の液面高さに応じて、インク帰還ポンプ98を制御する。また、制御部5は、サブタンク96の液面高さに応じて、インク補給弁47およびインク補給ポンプ82を制御する。
具体的には、図14(a)に示すように、加圧タンク液面センサ37がオフの状態では、制御部5は、インク循環ポンプ31をオンとする。加圧タンク液面センサ37がオンの状態では、制御部5は、インク循環ポンプ31をオフとする。
また、図14(b)に示すように、負圧タンク液面センサ40がオフの状態では、制御部5は、インク帰還ポンプ98をオフとする。負圧タンク液面センサ40がオンの状態では、制御部5は、インク帰還ポンプ98をオンとする。
また、図14(c)に示すように、サブタンク液面センサ102がオフの状態では、制御部5は、インク補給弁47を開放し、インク補給ポンプ82をオンとする。サブタンク液面センサ102がオンの状態では、制御部5は、インク補給弁47を閉鎖し、インク補給ポンプ82をオフとする。
図13に戻り、ステップS22に続き、ステップS23において、制御部5は、圧力制御を開始する。第3実施形態における圧力制御は、前述した第2実施形態における圧力制御と同様である。
次いで、ステップS24において、制御部5は、加圧タンク21および負圧タンク24にそれぞれの設定圧Pks,Pfsが生成されたか否かを判断する。加圧タンク21および負圧タンク24の少なくともいずれかにおいて設定圧が生成されていないと判断した場合(ステップS24:NO)、制御部5は、ステップS24を繰り返す。
加圧タンク21および負圧タンク24にそれぞれの設定圧Pks,Pfsが生成されたと判断した場合(ステップS24:YES)、ステップS25において、制御部5は、印刷ジョブの実行を開始する。
印刷ジョブの実行中は、加圧タンク21からインクジェットヘッド11へインクが供給され、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクが負圧タンク24に回収される。加圧タンク21からインクジェットヘッド11へのインクの流出により加圧タンク液面センサ37がオフになると、液面維持制御により、インク循環ポンプ31がサブタンク96から加圧タンク21へインクを送液する。インクジェットヘッド11から負圧タンク24へのインクの流入により負圧タンク液面センサ40がオンになると、インク帰還ポンプ98が負圧タンク24からサブタンク96へインクを送液する。このようにしてインクが循環されつつ、印刷が行われる。
また、サブタンク96から加圧タンク21へのインクの供給によりサブタンク液面センサ102がオフになると、インク補給弁47が開放され、インク補給ポンプ82が駆動される。これにより、インクカートリッジ46からサブタンク96へインクが補給される。
印刷ジョブの実行開始後、ステップS26において、制御部5は、印刷ジョブが終了したか否かを判断する。印刷ジョブが終了していないと判断した場合(ステップS26:NO)、制御部5は、ステップS26を繰り返す。
印刷ジョブが終了したと判断した場合(ステップS26:YES)、ステップS27において、制御部5は、圧力制御を終了する。ここで、エアポンプ71が駆動中の場合、制御部5は、それを停止する。また、制御部5は、加圧圧力調整弁53および負圧圧力調整弁58の少なくともいずれかが開放されている場合、制御部5は、開放されているものを閉鎖する。
次いで、ステップS28において、制御部5は、液面維持制御を終了する。ここで、インク循環ポンプ31が駆動中の場合、制御部5は、それを停止する。また、制御部5は、インク帰還ポンプ98が駆動中の場合、それを停止する。また、制御部5は、インク補給弁47が開放されてインク補給ポンプ82が駆動中の場合、インク補給弁47を閉鎖するとともにインク補給ポンプ82を停止する。
次いで、ステップS29において、制御部5は、加負圧連通弁61を開放する。加負圧連通弁61が開放されると、加圧系の正圧と負圧系の負圧とが相殺される。この結果、加圧タンク21および負圧タンク24の圧力が大気圧相当になる。
次いで、ステップS30において、制御部5は、迂回弁100を開放する。これにより、一連の動作が終了し、インクジェット印刷装置が待機状態となる。
インクジェット印刷装置が待機状態のとき、加圧タンク21および負圧タンク24は、大気から遮断された密閉状態である。そして、迂回弁100が開放状態とされているので、負圧タンク24と大気開放状態のサブタンク96とが迂回管99を介して連通されている。
このため、待機中におけるインクジェットヘッド11のノズル圧Pnは、サブタンク96内のインクの液面とノズル面16aとの高低差(水頭差)Hに応じた圧力になっている。すなわち、待機中におけるノズル圧Pnは、前述の式(4)で表される。
サブタンク96は、第1実施形態の回収タンク25と同様に、待機中のノズル圧Pnがメニスカス破壊圧を超えないような高さに配置されている。
以上説明したように、第3実施形態では、制御部5は、待機時には、加圧圧力調整弁53、負圧圧力調整弁58、および負圧大気開放弁86を閉鎖して加圧タンク21および負圧タンク24を密閉状態とするとともに、迂回弁100を開放して負圧タンク24と大気開放状態のサブタンク96とを連通させる。
これにより、待機中におけるノズル圧Pnが、サブタンク96内の液面とノズル面16aとの高低差Hによって決まる。このため、第1実施形態と同様に、環境変化により大気圧が変動しても、ノズル圧Pnの変動は抑えられる。したがって、第3実施形態によっても、待機中におけるノズルからのインク漏れや空気の吸い込みを低減できる。
第3実施形態において、サブタンク96は、負圧タンク24から加圧タンク21への経路上に配置され、インク循環時および待機時に大気開放状態に大気開放状態とされている。インク循環時には、迂回弁100が閉鎖状態とされるとともに、インク帰還ポンプ98により負圧タンク24からサブタンク96へインクが送られる。インク帰還ポンプ98を用いることで、第1実施形態のような回収タンク25の負圧により負圧タンク24から回収タンク25へインクを送る構成と比べて、負圧タンク24からサブタンク96への経路における圧力損失の影響による流量の低下を抑えることができる。待機時には、迂回弁100が開放状態とされることで、負圧タンク24とサブタンク96とが迂回管99を介して連通される。
これにより、サブタンク96を循環経路上に配置した構成において、インク循環時の負圧タンク24からサブタンク96への経路における流量の低下を抑えるとともに、待機中におけるノズル圧Pnがサブタンク96内の液面とノズル面16aとの高低差Hによって決まるようにすることができる。
なお、印刷部2Bにおいて、1つのサブタンク96に対して、インクジェットヘッド11と、サブタンク96以外のインク循環部12Bの各部とを、それぞれ複数備えた構成とすることもできる。例えば、図15に示すように、1つのサブタンク96に対して、インクジェットヘッド11、加圧タンク21、分配器22、集合器23、負圧タンク24、インク循環管26,27,97,29、インク帰還ポンプ98、迂回管99、迂回弁100、インク循環ポンプ31、ヒートシンク32、およびヒータ33をそれぞれ2つずつ備えた構成としてもよい。
このように、1つのサブタンク96を複数のインクジェットヘッド11に共通のものとすることで、装置構成の複雑化を抑えつつ、1色に対して複数のインクジェットヘッド11を設ける構成を実現できる。
なお、この場合も、インク循環の終了時に加負圧連通弁61が開放されたときに、加圧系の正圧と負圧系の負圧とが相殺されるように、加圧系のエア量および負圧系のエア量が設計される。
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
例えば、上述した第1実施形態では、回収タンク25をインクジェットヘッド11のノズル面16aより下方に配置した。しかし、待機中のノズル圧Pnがメニスカス破壊圧を超えない範囲内であれば、回収タンク25をノズル面16aより上方に配置してもよい。第2実施形態でも同様に、待機中のノズル圧Pnがメニスカス破壊圧を超えない範囲内であれば、サブタンク77をノズル面16aより上方に配置してもよい。また、第3実施形態でも同様に、待機中のノズル圧Pnがメニスカス破壊圧を超えない範囲内であれば、サブタンク96をノズル面16aより上方に配置してもよい。