JP2016208946A - 食品用添加剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】加工食品の保水性、保形性に優れるとともに、従来食品が有している食感、風味を損なわない食品用添加剤の提供。【解決手段】アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対してカルボキシル基の量が0.6〜3.0mmol/g、あるいはアニオン変性セルロースファイバーの、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50である、アニオン変性セルロースナノファイバーを含有している、食品用保形剤、食品用保水剤としての食品用添加剤。【選択図】なし

Description

本発明は、食品用添加剤に関する。具体的には、加工食品に保形性、保水性を付与する食品用添加剤に関する。
ハンバーグや餃子などの畜肉系食品、かまぼこなどの水産ねり製品、マドレーヌやドーナッツ、和菓子などの生菓子や焼き菓子、ゼリー、プリンなどのゲル状食品などの加工食品には、様々な食品添加剤が使用されており、加工食品の、保水性、保形性、分散安定性などが付与されている。
例えば、挽肉加工食品の焼成後の歩留向上や、凍結解凍時のドリップ防止効果、肉粒感を失わずソフトでジューシーな食感が得られる方法として、平均粒子系が5〜40μmに微細加工したおからを用いる方法(特許文献1)、ミンチ状の畜肉または魚肉加工食品にジェランガム粉砕物を添加することで、保水性が向上し風味やジューシー感が良くなる方法(特許文献2)、餃子や肉まん、焼売、小龍包などの具材が内包される畜肉系食品では、内包される具材が分散して肉汁が外皮に染み出さないように、適度な保形性と保水性を有していることが求められ、ゼラチン又はコラーゲンパウダーを添加する方法(特許文献3)、平均分子量1000〜5000の低分子コラーゲンペプチドをマドレーヌに添加することで食感改良や離水抑制などの効果を付与する方法(特許文献4)などが提案されている。
特開2002−204675号 特開2007−222041号 特開2001−128650号 特許第5203336号
しかしながら、ジェランガムのような各種増粘剤を加工食品に利用する場合、保形性や保水性を十分に付与させるために添加量が多くなることがあり、食べた時のべとつきや食感が悪くなるといった問題、おからのような繊維状物質は加工食品の保形性向上に効果的ではあるが、その繊維サイズが大きくなることで食べたときのパサつきや繊維っぽさが残るといった問題、ゼラチン又はコラーゲンパウダーの添加による肉まん等の内包具材の保水性と保水性の両立については、加熱工程中は具材に含まれる水の分子運動が活発になるため、具材から水分が抜けやすく、また形も崩れしやすくなってしまう問題、レトルト食品や冷凍食品の煮込みハンバーグやミートボールなどのソース系畜肉食品では加熱時間の長さにより肉特有の獣臭さが強くなる問題があった。
そこで、本発明は、加工食品の保水性、保形性に優れるとともに、従来食品が有している食感、風味を損なわない食品用添加剤を提供することを目的とする。
上記課題は、以下の[1]〜[5]を含む手段により解決される。
[1] アニオン変性セルロースナノファイバーを含有していることを特徴とする食品用添加剤。
[2] 前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、カルボキシル基の量が0.6mmol/g〜3.0mmol/gであることを特徴とする[1]に記載の食品用添加剤。
[3] 前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50であることを特徴とする[1]に記載の食品用添加剤。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の食品用添加剤を含有することを特徴とする食品用保形剤。
[5] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の食品用添加剤を含有することを特徴とする食品用保水剤。
本発明によれば、加工食品の保水性、保形性に優れるとともに、従来食品が有している食感、風味を損なわない食品用添加剤を提供することができる。
本発明の食品添加物は、アニオン変性セルロースナノファイバー(以下、「アニオン変性CNF」ということがある)を含有することを特徴としており、従来食品が有している食感、風味を損なうことなく、加工食品に保水性、保形性を付与させることができる。
本発明において、優れた効果が発現する理由は明らかではないが、高いカルボキシル基、カルボキシメチル基を有しているアニオン変性CNFは保水性が高いこと、繊維であること(結晶性を有していること)から保形性に優れていると推測される。また、アニオン変性CNFは、水に分散した状態では曳糸性がなく高粘性となること、セルロースが無味無臭であることから食感、風味を損なうことが無いと推測される。
(アニオン変性セルロースナノファイバー)
本発明において、アニオン変性CNFは、繊維幅が4〜500nm程度、アスペクト比が100以上の微細繊維であり、カルボキシル化したセルロース(酸化セルロースとも呼ぶ)、カルボキシメチル基を導入したセルロースなどのアニオン変性セルロースを解繊することによって得ることができる。
(セルロース原料)
アニオン変性セルロースを製造するためのセルロース原料としては、例えば、植物性材料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物性材料(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするものを挙げることができ、それらのいずれも使用できる。好ましくは植物又は微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは植物由来のセルロース繊維である。
(カルボキシメチル化)
本発明において、アニオン変性セルロースとして、カルボキシメチル化したセルロースを用いる場合、カルボキシメチル化したセルロースは、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシメチル化することにより得てもよいし、市販品を用いてもよい。いずれの場合も、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.01〜0.50となるものが好ましい。そのようなカルボキシメチル化したセルロースを製造する方法の一例として次のような方法を挙げることができる。セルロースを発底原料にし、溶媒として3〜20質量倍の水及び/又は低級アルコール、具体的には水、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、又は2種以上の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールを混合する場合の低級アルコールの混合割合は、60〜95質量%である。マーセル化剤としては、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0〜70℃、好ましくは10〜60℃、かつ反応時間15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間、マーセル化処理を行う。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10.0倍モル添加し、反応温度30〜90℃、好ましくは40〜80℃、かつ反応時間30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間、エーテル化反応を行う。
なお、本明細書において、アニオン変性CNFの調製に用いるアニオン変性セルロースの一種である「カルボキシメチル化したセルロース」は、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものをいう。したがって、水に溶解し粘性を付与する水溶性高分子の一種であるカルボキシメチルセルロースとは区別される。「カルボキシメチル化したセルロース」の水分散液を電子顕微鏡で観察すると、繊維状の物質を観察することができる。一方、水溶性高分子の一種であるカルボキシメチルセルロースの水分散液を観察しても、繊維状の物質は観察されない。また、「カルボキシメチル化したセルロース」はX線回折で測定した際にセルロースI型結晶のピークを観測することができるが、水溶性高分子のカルボキシメチルセルロースではセルロースI型結晶はみられない。
本発明において、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50の範囲であることが好ましく、さらには0.10〜0.30の範囲がより好ましい。カルボキシメチル置換度が大きすぎると、結晶性(結晶化度)が低下するため、十分な保形性が発現されないとともに、水への溶解性が高くなるため、食感(べとつき感)が悪化する。一方、カルボキシメチル置換度が小さい(親水基が少ない)と保水性が低下するため、しっとり感の無い食品となってしまう。結晶化度はセルロース結晶I型が60%以上
、且つセルロース結晶II型がセルロース結晶I型に対し10〜50%であることが好ましく、セルロース結晶I型が70%以上、且つセルロース結晶II型がセルロース結晶
I型に対して20〜50%であることがさらに好ましい。
(カルボキシル化)
本発明において、アニオン変性セルロースとしてカルボキシル化(酸化)したセルロースを用いる場合、カルボキシル化セルロース(酸化セルロースとも呼ぶ)は、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシル化(酸化)することにより得ることができる。特に限定されるものではないが、カルボキシル化の際には、アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、カルボキシル基の量が0.6〜3.0mmol/gとなるように調整することが好ましく、1.0mmol/g〜3.0mmol/gになるように調整することがさらに好ましい。
カルボキシル化(酸化)方法の一例として、セルロース原料を、N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物との存在下で酸化剤を用いて水中で酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート基(−COO)とを有するセルロース繊維を得ることができる。反応時のセルロースの濃度は特に限定されないが、5質量%以下が好ましい。
N−オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。N−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシラジカル(TEMPO)及びその誘導体(例えば4−ヒドロキシTEMPO)が挙げられる。
N−オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であればよく、特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01〜10mmolが好ましく、0.01〜1mmolがより好ましく、0.05〜0.5mmolがさらに好ましい。また、反応系に対し0.1〜4mmol/L程度がよい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物およびヨウ化物の合計量は、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.1〜100mmolが好ましく、0.1〜10mmolがより好ましく、0.5〜5mmolがさらに好ましい。
酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などを使用できる。中でも、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムは好ましい。酸化剤の適切な使用量は、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.5〜500mmolが好ましく、0.5〜50mmolがより好ましく、1〜25mmolがさらに好ましく、3〜10mmolが最も好ましい。また、例えば、N−オキシル化合物1molに対して1〜40molが好ましい。
セルロースの酸化工程は、比較的温和な条件であっても反応を効率よく進行させられる。よって、反応温度は4〜40℃が好ましく、また15〜30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHの低下が認められる。酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを8〜12、好ましくは10〜11程度に維持することが好ましい。反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等から、水が好ましい。
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5〜6時間、例えば、0.5〜4時間程度である。
また、酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一または異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
カルボキシル化(酸化)方法の別の例として、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、グルコピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50〜250g/mであることが好ましく、50〜220g/mであることがより好ましい。セルロース原料に対するオゾン添加量は、セルロース原料の固形分を100質量部とした際に、0.1〜30質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。オゾン処理温度は、0〜50℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。オゾン処理時間は、特に限定されないが、1〜360分程度であり、30〜360分程度が好ましい。オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。 オゾン処理を施した後に、酸化剤を用いて、追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物や、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。例えば、これらの酸化剤を水またはアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作成し、溶液中にセルロース原料を浸漬させることにより追酸化処理を行うことができる。
酸化セルロースのカルボキシル基の量は、上記した酸化剤の添加量、反応時間等の反応条件をコントロールすることで調整することができる。
(解繊)
アニオン変性セルロースを解繊する際に用いる装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの装置を用いることができる。解繊の際にはアニオン変性セルロースの水分散体に強力なせん断力を印加することが好ましい。特に、効率よく解繊するには、前記水分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊及び分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて、前記水分散体に予備処理を施してもよい。
本発明において、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度を0.01〜0.50とすることが好ましい。
本発明において、アニオン変性CNFの絶乾質量に対して、カルボキシル基の量が0.6mmol/g〜3.0mmol/gの範囲であることが好ましく、さらには1.0mmol/g〜2.0mmol/gの範囲がより好ましい。カルボキシル基が多すぎると、結晶性(結晶化度)が低下するため、十分な保形性が発現されないとともに、水への溶解性が高くなるため、食感(べとつき感)が悪化する。一方、カルボキシル基が少ない(親水基が少ない)と保水性が低下するため、しっとり感の無い食品となってしまう。結晶化度はセルロース結晶I型が20%以上であることが好ましく、さらに好ましくは30%以上である。
(加工食品)
本発明において、加工食品として、冷凍食品、粉末食品、シ−ト状食品、瓶詰食品、缶詰食品、レトルト食品、漬物類、燻製品、干物、佃煮、塩蔵品、畜肉製品(ハム,ソ−セ−ジ,ハンバ−グ,ハンバ−ガ−パティ,ミ−トボ−ルなど)、魚肉練り製品(蒲鉾,竹輪,さつま揚げなど)、乳製品(バタ−,チ−ズ,ヨ−グルト,加工乳,脱脂乳など)、卵製品(だし巻,卵豆腐など)、惣菜、パン類、菓子類(ケ−キ,ゼリ−,プリン,シュ−クリ−ム,飴,スナック菓子,饅頭など)、麺類(うどん,そば,中華麺,パスタなど)、調味料(みそ,醤油,ソ−ス,ケチャップ,たれ,マヨネ−ズなど)が挙げられる。
加工食品にアニオン変性CNFを利用する場合、アニオン変性CNFは分散液の状態で使用することも、粉体の状態で使用することもできる。また、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限度において必要に応じ増粘剤などの食品添加剤を併用することができる。具体的には、グァーガム、ラムダカラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、イオタカラギナン、カッパカラギナン、カシアガム、グルコマンナン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、タマリンド種子多糖類、ペクチン、サイリウムシードガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、マクロホモプシスガム、ラムザンガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カードラン、プルラン、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)カルシウム、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース誘導体、微結晶セルロース、発酵セルロース、ゼラチン、水溶性大豆多糖類、デンプン、加工デンプンなどを挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)780mgと臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。
上記の工程で得られた酸化パルプを水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を得た。得られた繊維は、平均繊維径が40nm、アスペクト比が150であった。得られたカルボキシル化セルロースナノファイバーを凍結乾燥し粉末状にすることでカルボキシル化セルロースナノファイバー(CNF1)を得た。
<カルボキシル基量の測定方法>
カルボキシル化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した:
カルボキシル基量〔mmol/gカルボキシル化セルロース〕=a〔ml〕×0.05/カルボキシル化セルロース質量〔g〕。
<カルボキシメチル(CM)化CNFの製造>
パルプを混ぜることが出来る撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。30分撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシルメチル化したパルプを得た。その後、カルボキシメチル化したパルプを水で固形分1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、150MPaの圧力で5回処理することにより解繊し、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー分散液とした。得られた繊維は、平均繊維径が50nm、アスペクト比が120であった。得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを凍結乾燥し粉末状にすることでカルボキシメチル化セルロースナノファイバー粉末品(CNF2)を得た。
<グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定方法>
カルボキシメチル化セルロース繊維(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(CM化セルロース)を水素型CM化セルロースにした。水素型CM化セルロース(絶乾)を1.5〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのHSOで過剰のNaOHを逆滴定した。カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出した:
A=[(100×F’−(0.1NのHSO)(mL)×F)×0.1]/(水素型CM化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型CM化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのHSOのファクター
F:0.1NのNaOHのファクター。
<平均繊維径、アスペクト比の測定方法>
アニオン変性CNFの平均繊維径および平均繊維長は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について解析した。なおアスペクト比は下記の式により算出した:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
<結晶化度の測定>
セルロースI型結晶の結晶化度、I型とII型の比は下記の測定で求めた。セルロース結晶化度は、広角X線回折法による測定で得られたグラフの回折角2θのピークにより算出した。手順は次の通りである。まずセルロースを液体窒素で凍結させ、これを圧縮し、錠剤ペレットを作成した。その後、このサンプルを用いてX線回折測定装置(LabX XRD−6000、島津製作所製)により測定した。得られたグラフを、グラフ解析ソフトPeakFit(Hulinks社製)によりピーク分離し下記の回折角度を基準として結晶I型とII型、非結晶を判別した。なお、結晶I型とII型の比は、上記ピークの面積比から算出した:
結晶I型:2θ=14.7°、16.5°、22.5°
結晶II型:2θ=12.3°、20.2°、21.9°
非晶成分:2θ=18°
次にセルロースI型の結晶化度は、18°の回折強度(Ia)と22.5°の回折強度(Ic)の値からSegal法とよばれる下記の式で算出した:
I型の結晶化度=(Ic-Ia)/Ic×100
(ハンバーグ1〜18の調製)
表1及び表2の処方に基づき、ハンバーグを調製した。具体的には、ミンチ肉と食塩をよく混ぜ合わせ、水で戻した大豆タンパク、ソテーオニオンをよく混ぜ合わせる。続いて、全卵液、ビーフエキスを混ぜ合わせ、上白糖、L−グルタミン酸Na、ブラックペッパー、ガーリックパウダー、ナツメグ、添加剤(CNF1、CNF2、CMC、キサンタンガム)、赤パン粉を加え均一になるまで混ぜ合わせる。その後、空気抜きを行い重量が80〜85gとなるようにハンバーグリングで成形し、200〜220℃に調整した鉄板で片面45秒の両面1.5分間焼成し、続いてスチームコンベクションオーブンで100℃、10分間スチームし、粗熱を取りハンバーグを調製した。得られたハンバーグは、粗熱を取った直後のものをハンバーグ1〜9とし、粗熱を取った直後に冷凍保管したものをハンバーグ10〜18とした。
Figure 2016208946
(実施例1〜12、比較例1〜6)
ハンバーグ1〜9とレンジ解凍したハンバーグ10〜18の保形性、保水性(ジューシー感)、食感(べとつき(ネバさ)、肉のほぐれ易さ)について10人による試食評価を行った。結果を表2に示す。
<保形性評価>
ハンバーグの外観(ふっくら感、保形性)を目視で観察し下記基準にて評価した。
○: 10人中9人以上が型崩れがないと評価した
△: 10人中6〜8人がやや型崩れはあるが問題とは思わないと評価した。
×: 10人中5人以下が大きな型崩れがあり問題であると評価した。
<保水性(ジューシー感)の評価>
ハンバーグを食べた時の保水性(ジューシー感)を下記基準にて評価した。
○: 10人中9人以上が十分に保水性(ジューシー感)を感じると評価した
△: 10人中6〜8人がやや保水性(ジューシー感)を感じるレベルと評価した。
×: 10人中5人以下が保水性(ジューシー感)がなくパサパサしていると評価した。
<食感評価>
ハンバーグを食べた時の食感(べとつき(ネバさ)、肉のほぐれ易さ)を下記基準にて評価した。
○: 10人中9人以上がべとつき(ネバさ)がない、または肉がほぐれ易くボリュームを感じると評価した
△: 10人中6〜8人がややべとつき(ネバさ)を感じる、またはやや肉がほぐれる程度だが問題ないレベルと評価した。
×: 10人中5人以下が気になるレベルのべとつき(ネバさ)または肉の硬さを感じ食感が良くないと評価した。
Figure 2016208946
*添加量:ハンバーグ全重量に対する添加量(質量%)
(実施例13〜21、比較例7〜15;煮込みハンバーグの調製)
市販のデミグラスソース(ハインツ製)530部と市販のトマトケチャップ(カゴメ製)105部、水52部をフライパンに加え沸騰するまで加熱しデミグラスソース1を調製した。
表1の処方で調製し冷凍保管したハンバーグ13〜18をレンジ解凍し、それぞれのハンバーグ重量の70重量%分のデミグラスソース1をハンバーグと一緒に袋に加え真空包装した。沸騰したお湯に包装したハンバーグを入れ90℃以上の条件で加熱殺菌(15分、30分、60分)し取り出した後、冷却し冷凍保管した。1日後、湯煎で解凍したものについて10人により保形性、保水性、食感、風味の試食評価を行った。結果を表3に示す。
<風味評価>
ハンバーグを食べた時の肉特有の獣臭さを評価した。
○: 10人中9人以上が獣臭さがないと評価した
△: 10人中6〜8人がやや獣臭さを感じるが問題ないレベルと評価した。
×: 10人中5人以下が気になるレベルの獣臭さと評価した。
Figure 2016208946
*添加量:ハンバーグ全重量に対する質量%
(実施例22〜27、比較例16〜21;おでん用ハンバーグの調製)
沸騰したお湯1000部に市販のおでんの素(ヱスビー食品製)20部を加え、おでんつゆを調製した。
表1の処方で調製し冷凍保管したハンバーグ13〜18をレンジ解凍し、ステンレスビーカー(筒状)に入れおでんつゆ300部を添加し、完全に浸す状態とした。加熱している鍋にステンレスビーカーを置き湯煎状態で加熱(1時間、5時間)を行った。加熱終了後、10人による試食評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 2016208946
*添加量:ハンバーグ全重量に対する質量%
(実施例28〜30、比較例22;焼き餃子の調製)
表5の処方に基づき、焼き餃子を調製した。具体的には、表5の具材を混ぜ合わせ均一になるまで練り、市販の餃子の皮に対して13gとなるように具をのせて包む。コンベクションオーブンで90℃、10分間蒸し、粗熱を取った後に冷凍庫で保管する。冷凍状態のままフライパンで蒸し焼きにし、10人による試食評価を行った。結果を表6に示す。
Figure 2016208946
<保形性評価>
餃子の外観(保形性)を目視で観察し下記基準にて評価した。
○: 10人中9人以上が外皮の破れもなく形状を維持していると評価した
△: 10人中6〜8人が外皮の破れはないが、全体的にしんなりとして嵩高さを感じないと評価した。
×: 10人中5人以下が外皮の破れがあり、見た目が良くないと評価した。
<食感評価>
餃子を食べた時の保水性(ジューシー感)、食感(外皮の食感、具材のほぐれやすさ)を下記基準にて評価した。
○: 10人中9人以上がジューシー感がある、または外皮はパリッとしており具材もほぐれやすくボリュームを感じると評価した。
△: 10人中6〜8人がややジューシー感がある、または外皮はやや水分を吸収し柔らかくなっており、具材はやや固さを感じると評価した。
×: 10人中5人以下がジューシー感がない、または外皮は水分をたくさん吸収ししんなりしており具材もほぐれにくく固さを感じると評価した。
Figure 2016208946

(実施例31〜33、比較例23;ゼラチン入り焼き餃子の調製)
表7の処方に基づき、ゼラチン入り焼き餃子を調製した。具体的には、市販品の鶏がらスープの素8部、オイスターソース6部、粉末ゼラチン10部、水176部を鍋に入れ沸騰させて均一に混ぜ合わせた後、冷蔵庫でゼリー状になるまで保管しゼラチンスープ1を調製した。その後、表7の具材を混ぜ合わせ均一になるまで練り、市販の餃子の皮に対して13gとなるように具をのせて包む。コンベクションオーブンで90℃、10分間蒸し、粗熱を取った後に冷凍庫で保管する。冷凍状態のままフライパンで蒸し焼きにし、10人による試食評価を行った。結果を表8に示す。
Figure 2016208946
Figure 2016208946
*添加量:餃子全重量に対する添加量(質量%)
(実施例34〜36、比較例24;マドレーヌの調製)
表9の処方に基づき、マドレーヌを調製した。具体的には、全卵と上白糖を湯煎で温めながら上白糖が完全に溶けるまで混ぜ合わせ、そこに予め薄力粉とベーキングパウダー、添加剤(CNF2、CMC、キサンタンガム)を混合し篩にかけた粉原料を加え撹拌混合する。続いてブランデー、バニラエッセンスを加え、さらに予めハチミツと無塩バターを溶かして混ぜておいたものを加え型枠に流し込み160℃、10分で焼成した。焼成後、粗熱を取ったマドレーヌの保形性、保水性(しっとり感)、食感(べとつき(ネバさ)、パサつき)について10人による試食評価を行った。結果を表10に示す。
Figure 2016208946
<保形性評価>
マドレーヌの外観(保形性、型崩れ)を目視で観察し下記基準にて評価した。
○: 10人中9人以上が型崩れもなくボリュームを感じると評価した
×: 10人中8人以下が型崩れがあると評価した。
<表面性および食感評価>
マドレーヌ表面の質感(しっとり、こんがり)と食べた時の保水性(しっとり感)を評価した。
○: 10人中9人以上が十分に保水性(しっとり感)を感じると評価した
△: 10人中6〜8人がやや保水性(しっとり感)を感じるレベルと評価した。
×: 10人中5人以下が保水性(しっとり感)がなくパサパサしていると評価した。
Figure 2016208946
*添加量:マドレーヌ全重量に対する添加量(重量%)

Claims (5)

  1. アニオン変性セルロースナノファイバーを含有していることを特徴とする食品用添加剤。
  2. 前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、カルボキシル基の量が0.6mmol/g〜3.0mmol/gであることを特徴とする請求項1に記載の食品用添加剤。
  3. 前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50であることを特徴とする請求項1に記載の食品用添加剤。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の食品用添加剤を含有することを特徴とする食品用保形剤。
  5. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の食品用添加剤を含有することを特徴とする食品用保水剤。
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