JP7178655B2 - 澱粉含有組成物及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、澱粉含有組成物及びその用途に関する。
澱粉を水分と共に加熱すると、白濁した状態から、粘度が増し、透明度の高い状態となる。このような澱粉の現象は糊化と呼ばれ、食品等に独特の形態やテクスチャーを与える。そのため、増粘剤、安定剤、ゲル化剤等として、たれ、ソース類、餅、菓子等の澱粉系食品に澱粉が幅広く使用されている。しかし、糊化した澱粉は粘着性・ねばりが強く、加工装置等への澱粉の付着が多くなり、作業性や加工後の歩留まりが低下することが知られている。
澱粉を主成分とする食品原料は、澱粉の粘着質の性質が原因となって製造装置に付着しやすい。そのため、成型機を用いて成型加工する際には、生産性等の改善を目的として成型離型剤を使用することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001-238618号公報
特許文献1には、可食水溶性増粘剤とは水溶性かつ多少とも粘度を高める糖類と定義されている。そして、その好ましい例示として、オリゴ糖と称して市販される寡糖類混合物が挙げられている。しかしながら、これらの可食水溶性増粘剤は、食品に若干の甘味を与えてしまい、材料そのものの風味を損なう欠点がある。
そこで、本発明は、低アミロース含量の澱粉原料の糊化粘度を上昇させることで、糊化澱粉の加工装置等への付着を抑制させる技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、低アミロース含量の澱粉を含む澱粉原料にセルロースナノファイバーを添加することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕~〔7〕を提供する。
〔1〕(A)成分:アミロース含量が15質量%未満の澱粉を含む澱粉原料と、(B)成分:セルロースナノファイバーと、を含み、糊化した時の最高粘度Vと、前記(A)成分を単独で糊化した時の最高粘度Vの比(V/V)が1.6以上である、澱粉含有組成物。
〔2〕前記(A)成分に含まれる澱粉の総質量に対する前記(B)成分の質量の比が、0.1~50質量%である、上記〔1〕に記載の澱粉含有組成物。
〔3〕前記(B)成分が、化学変性セルロースナノファイバーを含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の澱粉含有組成物。
〔4〕前記化学変性セルロースナノファイバーが、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーであり、前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01~0.50である、上記〔3〕に記載の澱粉含有組成物。
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の澱粉含有組成物を有効成分とする、澱粉系食品用添加剤。
〔6〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の澱粉含有組成物を澱粉系食品の原料である澱粉の少なくとも一部に代えて用いることを含む、澱粉系食品の製造方法。
〔7〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の澱粉含有組成物を澱粉系食品の原料である澱粉の少なくとも一部に代えて用いる、澱粉系食品の改質方法。
本発明によれば、低アミロース含量の澱粉原料の糊化粘度を上昇させることができ、糊化澱粉の加工装置への付着を抑制することができる。そのため、生産性、作業性を改善し、澱粉系食品の効率的な生産の実現が期待される。
図1は、実施例1のRVA測定の結果を表すチャートである。 図2は、実施例2のRVA測定の結果を表すチャートである。 図3は、比較例1のRVA測定の結果を表すチャートである。 図4は、比較例2のRVA測定の結果を表すチャートである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書中、「AA~BB」という表記は、特に断りがない限り、AA以上BB以下を表す。また、「アミロース含量」は、澱粉に含まれるアミロペクチンとアミロースの総質量に対する割合を示す。
[1.澱粉含有組成物]
本発明の澱粉含有組成物は、下記の(A)成分及び(B)成分を含み、糊化した時の最高粘度Vと、(A)成分を単独で糊化した時の最高粘度Vの比(V/V)(以下、単に「粘度比(V/V)」と記載する)が1.6以上である。即ち、低アミロース含量の澱粉原料の最高粘度Vに対して、組成物の最高粘度Vが1.6倍以上なので、低アミロース含量の澱粉原料の糊化粘度を上昇させ、糊化澱粉の加工装置への付着を抑制することができる。
本発明の澱粉含有組成物において、粘度比(V/V)は、1.6以上であり、1.7以上がより好ましい。また、粘度比(V/V)の上限は、特に限定されず、通常、2.0以下である。
なお、本明細書中、最高粘度は、ラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)を用いて以下の測定条件で測定した粘度の最高値である。
RVA測定機器:PhysicaMCR301、Anton paar社製
温度条件:昇温速度10.75℃/minで50℃から93℃まで昇温し、7分間保持した後、降温速度10.75℃/minで93℃から50℃まで降温し3分間保持
回転速度:160rpm
治具:ST24/-2V-2V
[1-1.(A)成分]
(A)成分は、澱粉原料である。澱粉原料は、低アミロース含量の澱粉を含む原料である。澱粉原料は、アミロース含量が、15質量%未満であり、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
なお、アミロース量は、ヨウ素呈色比色法[小麦の品質評価法(IV)-小麦粉のアミロース測定法-、食品総合研究所(1992)参照]で測定し得る。また、澱粉原料として製品を使用する場合、通常、製品情報として入手可能であり、その値としてもよい。
通常、天然由来の澱粉は、それらが得られる植物種に依存して、アミロース含量が20%~30%である。一方、低アミロース含量の澱粉として、トウモロコシ澱粉(モチトウモロコシ澱粉)、米澱粉、小麦澱粉、大麦澱粉をベースにした低アミロース含量の穀類澱粉がある。また、低アミロース含量のジャガイモ澱粉と低アミロース含量のタピオカ澱粉もある。
[1-2.(B)成分]
(B)成分は、セルロースナノファイバーである。セルロースナノファイバーは、セルロースの微細繊維である。セルロースナノファイバーは、未変性セルロースをセルロース原料とするもの、変性セルロース(例えば、化学変性セルロース)を原料とするもの、のいずれでもよい。セルロースナノファイバーの平均繊維径は、通常、3~500nm程度である。セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は、通常、50以上である。アスペクト比の上限は特に限定されないが、通常、1000以下である。平均アスペクト比は、下記の式により算出することができる:
(式):アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
セルロースナノファイバーの平均繊維径及び平均繊維長は、原子間力顕微鏡(AFM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察した結果から得られる繊維径及び繊維長を平均することによってそれぞれ得ることができる。平均繊維長と平均繊維径は、セルロースナノファイバーを製造する際の、変性処理(例えば、酸化処理)、解繊処理等の条件により調整できる。
セルロースナノファイバーの製造方法は特に限定されないが、例えば、セルロース原料(例えば、パルプ)に機械的な力を加えて微細化する方法、セルロース原料に変性処理(例えば、化学変性処理)を行い得られる変性セルロース(例えば、カルボキシル化セルロース(以下、「酸化セルロース」ともいう)、カルボキシメチル化セルロース、エステル化セルロース(例えば、リン酸エステル化セルロース)、カチオン化セルロース等の化学変性セルロース)を解繊する方法、セルロース原料を解繊して得られる解繊セルロース繊維に変性処理を行う方法が挙げられる。
(セルロース原料)
セルロース原料(例えば、セルロース繊維)の由来は、特に限定されないが、例えば、植物(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等))、動物(例えば、ホヤ類)、藻類、微生物(例えば、酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物が挙げられる。
セルロース原料は、これらのいずれかであってもよく、2種類以上の組み合わせであってもよいが、中でも、植物又は微生物由来のセルロース原料が好ましく、植物由来のセルロース原料がより好ましい。
セルロース原料の数平均繊維径は、特に制限されないが、一般的なパルプである針葉樹クラフトパルプの場合30~60μm程度、広葉樹クラフトパルプの場合10~30μm程度である。その他の、一般的な精製を経たパルプの数平均繊維径は、50μm程度である。チップ等の数cm大のものを精製してセルロース原料を得る場合、リファイナー、ビーター等の離解機で機械的処理を行い、その数平均粒子径を50μm程度に調整することが好ましい。
(分散)
セルロース原料の解繊処理及び変性処理の少なくともいずれかの処理の際には、分散処理を行ってもよい。分散処理は、セルロース原料、解繊セルロース繊維又は変性セルロースを溶媒に分散し、分散体を調製する処理である。
分散処理においては、通常、溶媒にセルロース原料、解繊セルロース繊維又は変性セルロースを分散する。溶媒は、変性セルロースを分散できるものであれば特に限定されない。溶媒は、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等の親水性の有機溶媒)、それらの混合溶媒が挙げられる。食品に使用し得ること及びセルロース原料が親水性であることから、溶媒は水が好ましい。
分散体中の変性セルロースの固形分濃度は、通常、0.1質量%以上であり、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。これにより、セルロース原料に対する分散液量が適量となり効率的である。上限は、通常10質量%以下であり、6質量%以下が好ましい。これにより流動性を保持することができる。
解繊処理又は分散処理に先立ち、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理は、高速せん断ミキサーなどの混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて行えばよい。
(化学変性セルロースナノファイバー)
(B)成分は、化学変性セルロースナノファイバーを含むことが好ましく、化学変性セルロースナノファイバーであることがより好ましい。化学変性セルロースナノファイバーは、繊維の微細化が十分に進み、繊維長及び繊維径が均一である。そのため、澱粉含有組成物を食品に添加した際に、食品の食感の向上を期待し得る。
化学変性セルロースナノファイバーの製造方法は特に限定されないが、セルロース原料又は解繊セルロース繊維の化学変性処理を経る方法が挙げられる。化学変性処理は、セルロースの少なくとも一部を化学変性する処理であればよく、特に限定されないが、例えば、酸化、エーテル化、リン酸化、エステル化、カルボキシメチル化が挙げられ、酸化、カルボキシメチル化、又はエステル化が好ましく、カルボキシメチル化がより好ましい。
(カルボキシメチル化)
カルボキシメチル化の方法としては、例えば、セルロース原料又は解繊セルロース繊維をマーセル化し、その後エーテル化する方法が挙げられる。
カルボキシメチル化反応の際は、通常、溶媒を用いる。溶媒としては、例えば、水、アルコール(例、低級アルコール)、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、第3級ブチルアルコールが挙げられる。
混合溶媒における低級アルコールの混合割合は、通常、60~95質量%である。溶媒の量の下限は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維に対して、質量換算で、3倍以上が好ましい。また、その上限は、20倍以下が好ましい。従って、溶媒の量は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維に対して、質量換算で、3~20倍が好ましい。
マーセル化は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維とマーセル化剤とを混合して行う。マーセル化剤としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)が挙げられる。
マーセル化剤の使用量の下限は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維の無水グルコース残基当たり、モル換算で、0.5倍以上が好ましい。また、その上限は、20倍以下が好ましい。従って、マーセル化剤の使用量は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維の無水グルコース残基当たり、モル換算で、0.5~20倍が好ましい。
マーセル化の反応温度の下限は、通常、0℃以上であり、10℃以上が好ましい。上限は、通常、70℃以下であり、60℃以下が好ましい。従って、マーセル化の反応温度は、通常、0~70℃であり、10~60℃が好ましい。
マーセル化の反応時間の下限は、通常、15分間以上であり、30分間以上が好ましい。上限は、通常、8時間以下であり、7時間以下が好ましい。従って、マーセル化の反応時間は、通常、15分間~8時間であり、30分間~7時間が好ましい。
エーテル化反応は、通常、カルボキシメチル化剤をマーセル化後に反応系に添加して行う。カルボキシメチル化剤としては、例えば、モノクロロ酢酸ナトリウムが挙げられる。
カルボキシメチル化剤の添加量の下限は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維のグルコース残基当たり、モル換算で、0.05倍以上が好ましい。上限は、10.0倍以下が好ましい。従って、カルボキシメチル化剤の添加量は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維のグルコース残基当たり、モル換算で、0.05~10.0倍である。
エーテル化の反応温度の下限は、通常、30℃以上であり、40℃以上が好ましい。上限は、通常、90℃以下であり、80℃以下が好ましい。従って、エーテル化の反応温度は、通常、30~90℃であり、40~80℃が好ましい。
エーテル化の反応時間は、下限が、通常、30分間以上であり、1時間以上が好ましい。上限は、通常、10時間以下であり、4時間以下が好ましい。従って、エーテル化の反応時間は、通常、30分間~10時間であり、1時間~4時間が好ましい。
カルボキシメチル化セルロース又はカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.15以上がさらに好ましい。上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下がさらに好ましい。従って、カルボキシメチル置換度は、0.01~0.50が好ましく、0.10~0.40がより好ましく、0.15~0.35がさらに好ましい。
グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定方法は、次の方法である。
1)カルボキシメチル化セルロース繊維又はカルボキシメチル化セルロースナノファイバー(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。
2)メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えて得られた硝酸メタノール溶液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を、COOH基を有するカルボキシメチル化セルロース(以下、「酸型カルボキシメチル化セルロース」ともいう)にする。
3)酸型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5~2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。
4)80%メタノール15mLで酸型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。
5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのHSOで過剰のNaOHを逆滴定する。
6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する。
A=[(100×F’-(0.1NのHSO)(mL)×F)×0.1]/(酸型カルボキシメチル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:酸型カルボキシメチル化セルロース1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのHSOのファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
なお、本明細書において「カルボキシメチル化セルロースナノファイバー」は、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものをいう。従って、後述する水溶性高分子の一種であるカルボキシメチルセルロースとは区別される。「カルボキシメチル化セルロースナノファイバー」の水分散液を電子顕微鏡で観察すると、繊維状の物質を観察することができる。一方、水溶性高分子の一種であるカルボキシメチルセルロース(通常は粉末)の水分散液を観察しても、繊維状の物質は観察されない。また、「カルボキシメチル化セルロースナノファイバー」は、X線回折で測定した際にセルロースI型結晶のピークを観測することができるが、水溶性高分子のカルボキシメチルセルロースではセルロースI型結晶はみられない。
(カルボキシル化)
カルボキシル化(酸化)方法としては、例えば、セルロース原料又は解繊セルロース繊維を、N-オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物との存在下で酸化剤を用いて水中で酸化する方法が挙げられる。この酸化により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基(-COOH)又はカルボキシレート基(-COO)とを有するセルロース繊維を得ることができる。反応時のセルロースの濃度は特に限定されないが、5質量%以下が好ましい。
N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生し得る化合物をいう。N-オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル(TEMPO)及びその誘導体(例えば、4-ヒドロキシTEMPO)が挙げられる。
N-オキシル化合物の使用量は、セルロースを酸化できる触媒量であればよく、特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01~10mmolが好ましく、0.01~1mmolがより好ましく、0.05~0.5mmolがさらに好ましい。また、反応系に対して、0.1~4mmol/L程度が好ましい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能なアルカリ金属の臭化物が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、アルカリ金属のヨウ化物が含まれる。臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物及びヨウ化物の合計量は、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.1~100mmolが好ましく、0.1~10mmolがより好ましく、0.5~5mmolがさらに好ましい。
酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物が挙げられる。中でも、安価で環境負荷が少ないため、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。酸化剤の使用量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.5~500mmolが好ましく、0.5~50mmolがより好ましく、1~25mmolがさらに好ましく、3~10mmolがさらにより好ましい。また、例えば、N-オキシル化合物1molに対して1~40molが好ましい。
セルロースの酸化は、比較的温和な条件であっても反応が効率よく進行する。よって、反応温度は、4~40℃が好ましく、15~30℃程度の室温でもよい。
反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHの低下が認められる。酸化反応を効率よく進行させるために、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性溶液を添加することが好ましい。従って、酸化反応中の反応液のpHは、8~12程度に維持することが好ましく、10~11程度に維持することがより好ましい。なお、反応媒体は、取扱容易性や、副反応が生じにくいこと等から、水が好ましい。
酸化反応における反応時間は、目的とする酸化の程度で適宜設定し得る。反応時間は、通常、0.5~6時間であり、0.5~4時間程度が好ましい。
酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一又は異なる反応条件で酸化させてもよい。これにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、2段目の反応で効率よく酸化させることができる。
カルボキシル化(酸化)方法の別の例としては、オゾンを含む気体とセルロース原料又は解繊セルロース繊維とを接触させることにより酸化する方法が挙げられる。この酸化により、グルコピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50~250g/mが好ましく、50~220g/mがより好ましい。セルロース原料又は解繊セルロース繊維に対するオゾン添加量は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維の固形分100質量部に対し、0.1~30質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましい。
オゾン処理温度は、0~50℃が好ましく、20~50℃がより好ましい。オゾン処理時間は、特に限定されないが、通常、1~360分程度であり、30~360分程度が好ましい。オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となり得る。
オゾン処理を施した後に、酸化剤を用いて追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、例えば、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物や、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸が挙げられる。追酸化処理としては、例えば、これらの酸化剤を水又はアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を調製し、溶液中にセルロース原料又は解繊セルロース繊維を浸漬させる方法が挙げられる。
カルボキシル化(酸化)セルロース又はカルボキシル化(酸化)セルロースナノファイバー中のカルボキシル基量は、カルボキシル化(酸化)セルロース又はカルボキシル化(酸化)セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、0.6~2.0mmol/gが好ましく、1.0~2.0mmol/gがより好ましい。カルボキシル基量は、酸化剤の添加量、反応時間等の反応条件のコントロールにより調整できる。
(エステル化)
エステル化方法としては、例えば、セルロース原料又は解繊セルロース繊維に、リン酸系化合物Aの粉末又は水溶液を混合する方法、セルロース原料又は解繊セルロース繊維のスラリーに、リン酸系化合物Aの水溶液を添加する方法等のリン酸エステル化方法が挙げられる。
リン酸系化合物Aとしては、例えば、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸、及びこれらのエステルが挙げられる。リン酸系化合物Aは、塩の形態でもよい。リン酸系化合物Aは、低コストであり、扱いやすく、またパルプ繊維のセルロースにリン酸基を導入して解繊効率の向上が図れる等の理由から、リン酸基を有する化合物が好ましい。リン酸基を有する化合物としては、例えば、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウムが挙げられる。リン酸系化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、リン酸基導入の効率が高く、解繊工程で解繊しやすく、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
リン酸系化合物Aは、水溶液として用いることが好ましい。これにより、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率を高めることができる。リン酸系化合物Aの水溶液のpHは、7以下が好ましい。7以下であると、リン酸基導入の効率を高めることができる。pHの下限は、3以上が好ましい。3以上であると、パルプ繊維の加水分解を抑えることができる。
リン酸エステル化方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。固形分濃度0.1~10質量%のセルロース原料又は解繊セルロース繊維の分散液に、リン酸系化合物Aを撹拌しながら添加してセルロースにリン酸基を導入する。リン酸系化合物Aの添加量は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維100質量部に対するリン原子の量として、0.2質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。これにより、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。上限は、500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましい。これにより、収率向上が頭打ちとなることがなく、コスト面でも効率的である。従って、0.2~500質量部が好ましく、1~400質量部がより好ましい。
エステル化の際、セルロース原料又は解繊セルロース繊維、及びリン酸系化合物Aの他に、他の化合物(化合物B)の粉末や水溶液を混合してもよい。化合物Bは特に限定されないが、塩基性を示す窒素含有化合物が好ましい。本明細書において「塩基性」とは、フェノールフタレイン指示薬の存在下で水溶液が桃~赤色を呈すること、又は水溶液のpHが7より大きいことを意味する。塩基性を示す窒素含有化合物は特に限定されないが、アミノ基を有する化合物が好ましい。アミノ基を有する化合物としては、例えば、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。これらの中でも、低コストで扱いやすいことから、尿素が好ましい。化合物Bの添加量は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維の固形分100質量部に対し、2~1000質量部が好ましく、100~700質量部がより好ましい。
反応温度は、0~95℃が好ましく、30~90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、通常、1~600分程度であり、30~480分が好ましい。エステル化反応の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度にエステル化されて溶解しやすくなることを防ぐことができ、エステル化セルロースの収率が良好となり得る。得られたリン酸エステル化セルロース懸濁液を脱水した後、セルロースの加水分解を抑える観点から、100~170℃で加熱処理することが好ましい。さらに、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下、好ましくは110℃以下で加熱し、水を除いた後、100~170℃で加熱処理することが好ましい。
エステル化セルロースのグルコース単位当たりのリン酸基置換度は、0.001以上が好ましい。これにより、その後の解繊を十分に行うことができる。上限は、0.40以下が好ましい。これにより、セルロースの膨潤又は溶解を抑制し、ナノファイバーを効率的に得ることができる。従って、リン酸基置換度は、0.001~0.40が好ましい。セルロースへのリン酸基導入により、セルロース同士が電気的に反発する。このため、リン酸基を導入したセルロースは、容易にナノ解繊することができる。その後の解繊を効率よく行い得るため、調製されたリン酸エステル化セルロース又はリン酸エステル化セルロースナノファイバーは、煮沸後、冷水で洗浄することが好ましい。
(脱塩)
上記したそれぞれの化学変性後に得られる生成物が塩型の場合、脱塩処理を行い、塩(例えば、ナトリウム塩)をプロトン(酸型)に置換してもよい。
(解繊)
解繊処理の方法としては、例えば、セルロース原料又は変性セルロース(好ましくはその水分散体)に、高圧を印加する方法、強力なせん断力を印加する方法、或いは、高圧及び強力なせん断力の両方を印加する方法が挙げられる。高圧としては特に限定されないが、通常、50MPa以上であり、100MPa以上が好ましく、140MPa以上がより好ましい。
解繊に用いる装置は特に限定されないが、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式が挙げられる。これらの装置を用いることにより、セルロース又は化学変性セルロース(好ましくはセルロース又は化学変性セルロースの水分散体)に強力なせん断力を印加することができる。これらの中でも、水分散体に高圧及び強力なせん断力を印加できる装置(例えば、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザー)が好ましい。この装置を用いることで、解繊を効率よく行うことができる。解繊装置の処理(パス)回数は、1回でもよく、2回以上でもよい。解繊装置の処理(パス)回数は、2回以上が好ましい。解繊処理に先立ち、必要に応じて、混合、攪拌、乳化、分散等の予備処理を施してもよい。予備処理には、高速せん断ミキサー等の装置を用いればよい。
[1-3.(A)成分及び(B)成分の質量比]
本発明の澱粉含有組成物の(A)成分及び(B)成分のそれぞれの含有量としては以下のことがいえる。(A)成分に含まれる澱粉の総質量(絶乾総質量)に対する(B)成分の質量(絶乾総質量)の比が、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。これにより、十分な粘度向上効果を得られ得る。上限は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。これにより、澱粉含有組成物を食品に添加した際に、食品の食感の向上を期待し得る。従って、上記比は、0.1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、1~20質量%がさらに好ましく、5~20質量%がさらにより好ましい。
[1-4.水溶性高分子]
本発明の澱粉含有組成物は、水溶性高分子を含んでもよい。水溶性高分子としては、(A)成分以外の水溶性高分子であればよく、例えば、セルロース誘導体(例、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース)、キサンタンガム、キシログルカン、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、プルラン、アラビアガム、ジェランガム、ゲランガム、ポリデキストロース、ペクチン、キチン、水溶性キチン、キトサン、カゼイン、アルブミン、大豆蛋白溶解物、ペプトン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリセリン、ラテックス、ロジン系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、植物ガム、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー、ポリアクリル酸塩、でんぷんポリアクリル酸共重合体、タマリンドガム、グァーガム、及びコロイダルシリカ並びにそれら1種以上の混合物が挙げられる。中でも、カルボキシメチルセルロース及びその塩から選ばれる1種以上が、相溶性の点から好ましい。
(B)成分の質量(絶乾総質量)に対する水溶性高分子の質量の比は、5質量%以上が好ましい。上限は、50質量%以下が好ましい。斯かる範囲であると、セルロースナノファイバーの粘度特性及び分散安定性を向上し得る。したがって、上記比は、5~50質量%が好ましい。
[1-5.任意成分]
本発明の澱粉含有組成物は、必要に応じて、(A)成分、(B)成分及び水溶性高分子以外の成分(任意成分)を含んでもよい。任意成分としては、例えば、界面活性剤、加工澱粉、澱粉老化抑制剤、改質剤、これら以外に食品用の任意成分として許容されている成分が挙げられる。
界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、又はショ糖脂肪酸等エステルが挙げられる。加工澱粉としては、アセチル化澱粉等が挙げられる。改質剤としては、卵タンパク、乳タンパク等の弾力増強剤;冷凍過程にて肉のパサつきを予防する効果を発揮するタンパク質冷凍変性抑制剤;マスキング剤;褐変防止剤;酸化防止剤;日持向上剤等が挙げられる。
[1-6.澱粉含有組成物の製造方法]
澱粉含有組成物の製造方法は、澱粉とセルロースナノファイバーを混合することを含む方法であればよい。例えば、セルロースナノファイバーの分散液、該分散液の乾燥固形物、該分散液の湿潤固形物、セルロースナノファイバーと水溶性高分子との混合液、該混合液の乾燥固形物、該混合液の湿潤固形物、その他公知の形態のセルロースナノファイバーに、澱粉を添加し、混合する方法が挙げられる。本明細書において、湿潤固形物とは、分散液又は混合液と、乾燥固形物との中間の態様の固形物である。乾燥固形物として用いる場合、材料を混合する際における分散性の観点から、セルロースナノファイバーは、水溶性高分子と混合された形態であることが好ましい。
上記乾燥固形物及び湿潤固形物は、セルロースナノファイバーの分散液又は混合液を脱水及び/又は乾燥して調製すればよい。脱水方法及び乾燥方法は特に限定されないが、例えば、スプレードライ、圧搾、風乾、熱風乾燥、真空乾燥、及びその他従来公知の方法が挙げられる。
乾燥装置としては、例えば以下の装置が挙げられる。連続式の乾燥装置(例えば、トンネル乾燥装置、バンド乾燥装置、縦型乾燥装置、垂直ターボ乾燥装置、多重段円板乾燥装置、通気乾燥装置、回転乾燥装置、気流乾燥装置、スプレードライヤ乾燥装置、噴霧乾燥装置、円筒乾燥装置、ドラム乾燥装置、スクリューコンベア乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、振動輸送乾燥装置)、及び、回分式の乾燥装置(例えば、箱型乾燥装置、通気乾燥装置、真空箱型乾燥装置、撹拌乾燥装置)。これらの乾燥装置は、単独で用いてもよいし、2つ以上組み合わせて用いてもよい。乾燥装置は、ドラム乾燥装置が好ましい。これにより、均一に被乾燥物に熱エネルギーを直接供給できるので、エネルギー効率を高めることができる。また、必要以上に熱を加えずに、直ちに乾燥物を回収できる。
[1-7.澱粉含有組成物の形態]
本発明の澱粉含有組成物の形態は特に限定されず、例えば、液状(例えば、水溶液、分散液、ゲル状)、固体状(例えば、乾燥固形物、湿潤固形物)が挙げられる。
[2.澱粉系食品用添加剤]
本発明の澱粉系食品用添加剤は、上記の澱粉含有組成物を有効成分とする。上記した通り、澱粉含有組成物は低アミロース含量の澱粉原料の糊化粘度を上昇させ、糊化澱粉の加工装置への付着を抑制することができる。そのため、澱粉系食品の改質剤として生産性の向上を期待し得る。
[3.澱粉系食品の製造方法、改質方法]
本発明の澱粉系食品の製造方法又は改質方法は、澱粉系食品の原料である澱粉の少なくとも一部の代わりに用いることにより、通常の澱粉系食品と比較して、低アミロース含量の澱粉原料の糊化粘度を上昇させ、糊化澱粉の加工装置への付着を抑制することができる。そのため、本発明の澱粉含有組成物は、澱粉系食品の製造、及び澱粉系食品の増粘剤として、生産性の向上を期待し得る。
澱粉系食品は、澱粉を原料とする食品であれば特に制限されない。例えば、チャーハン、炊き込み御飯、おにぎり等の米飯;餅、せんべい、おかき等の米加工品;うどん、パスタ、中華麺、そば等の麺;求肥、大福、わらびもち等の和菓子;スポンジケーキ、ワッフル、カスタードクリーム、ドーナツ、焼成菓子(例えば、クッキー、ビスケット、クラッカー、乾パン、プレッツェル、パイ)等の洋菓子;食パン、フランスパン、クロワッサン、蒸しパン等のパン;あんまん、肉まん等の中華まん;フラワーペースト、フィリング等の製菓材料;インスタントカレー等のレトルト食品;カレールー、ケチャップ、マヨネーズ、たれ、ソース等の調味料類が挙げられる。
澱粉系食品の製造や改質に本発明の澱粉含有組成物を使用する際、澱粉含有組成物の添加量は、澱粉原料の糊化粘度を上昇させ、糊化澱粉の加工装置への付着を抑制することができる限り特に限定されない。澱粉系食品の原料である澱粉と本発明の澱粉含有組成物中の(A)成分の含量の合計に対する(B)成分の含量の比が、通常、0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上である量である。上限は特に限定されないが、50質量%以下である。
また、本発明の澱粉含有組成物の食品への添加方法は、特に限定されず、澱粉系食品の原料である澱粉に直接添加してもよく、製造工程において、澱粉系食品の原料である澱粉や他の原料と共に任意のタイミングで添加してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(製造例1:カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの製造)
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g(出発原料の無水グルコース残基当たり、モル換算で2.25倍)加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算、パルプのグルコース残基当たり、モル換算で1.5倍)添加した。30分撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシルメチル化したパルプを得た。これを水で固形分1質量%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、150MPaの圧力で5回処理することにより解繊し、濃度1質量%のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの水分散液を得た。平均繊維径は15nm、アスペクト比は50であった。
(実施例1)
もち米の結晶性米粉(アミロース含量0%、流粉砕品)3g及びカルボキシメチル化セルロースナノファイバー0.18g(固形分換算、1%水分散液18gとして添加)を撹拌して澱粉含有組成物(1)を得た。また、もち米の結晶性米粉3gに水18gを添加した対照サンプル(1)を得た。
澱粉含有組成物(1)と対照サンプル(1)に対して、RVA(ラピッド・ビスコ・アナライザー)を用いて粘度測定を行った。測定機器は、PhysicaMCR301、Anton paar社製を用いた。澱粉含有組成物(1)と対照サンプル(1)の最高粘度VとVから、粘度比(V/V)を算出した。結果を表1に記す。
なお、粘度測定条件は、以下の通りである。
温度:昇温速度10.75℃/minで50℃から93℃まで昇温し、7分間保持した後、降温速度10.75℃/minで93℃から50℃まで降温し3分間保持;
回転速度:160rpm;及び
治具:ST24/-2V-2V。
澱粉含有組成物(1)と対照サンプル(1)のRVA測定の結果を表すチャートを図1に示す。
(実施例2)
もち米の結晶性米粉の代わりに、ゆきむすび(アミロース含量8.1%、気流粉砕品)を用いたほかは、実施例1と同様にし、澱粉含有組成物(2)と対照サンプル(2)を得た。澱粉含有組成物(2)と対照サンプル(2)の最高粘度VとVから、粘度比(V/V)を算出した。結果を表1に記す。
澱粉含有組成物(2)と対照サンプル(2)のRVA測定の結果を表すチャートを図2に示す。
(比較例1)
もち米の結晶性米粉の代わりに、モミロマン(アミロース含量25.3%、気流粉砕品)を用いたほかは、実施例1と同様にし、澱粉含有組成物(3)と対照サンプル(3)を得た。澱粉含有組成物(3)と対照サンプル(3)の最高粘度VとVから、粘度比(V/V)を算出した。結果を表1に記す。
澱粉含有組成物(3)と対照サンプル(3)のRVA測定の結果を表すチャートを図3に示す。
(比較例2)
もち米の結晶性米粉の代わりに、タイ米(アミロース含量25.0%、気流粉砕品)を用いたほかは、実施例1と同様にし、澱粉含有組成物(4)と対照サンプル(4)を得た。澱粉含有組成物(4)と対照サンプル(4)の最高粘度VとVから、粘度比(V/V)を算出した。結果を表1に記す。
澱粉含有組成物(4)と対照サンプル(4)のRVA測定の結果を表すチャートを図4に示す。
Figure 0007178655000001
表1より、実施例1及び2の澱粉含有組成物は、比較例1及び2の澱粉含有組成物と比較して、最高粘度(粘度比(V/V))の増加が顕著であることが示された。
(実施例3)
ホームベーカリーの容器(下部に撹拌用のプロペラを備える)に、実施例1で用いた米粉280gと、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー2.8gを分散させた水240gとを入れ、餅を作るモードでCNF添加餅サンプル(5)を調製した。また、対照として、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを添加しないほかは同様にCNF無添加餅サンプル(5)を調製した。調製後、餅を容器から取り出す際にプロペラに付着している程度を付着性として、以下のように評価した。結果を表2に示す。
〇:付着が少ない
×:付着が多い
(実施例4、比較例3及び4)
実施例1で用いた米粉の代わりに、実施例2、比較例1及び2のそれぞれで用いた米粉を用いたほかは、実施例3と同様にしてCNF添加餅サンプル(6)~(8)及びCNF無添加餅サンプル(6)~(8)を調製し、それぞれの付着性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 0007178655000002
表2より、実施例3及び4のCNF添加餅サンプルは、比較例3及び4のCNF無添加餅サンプルと比較して、付着性が改善することが示された。

Claims (6)

  1. (A)成分:アミロース含量が10質量%以下の米粉である澱粉原料と、
    (B)成分:セルロースナノファイバーと、を含み、
    糊化した時の最高粘度Vと、前記(A)成分を単独で糊化した時の最高粘度Vの比(V/V)が1.6~2.0であり、
    前記(A)成分に含まれる澱粉の総質量に対する前記(B)成分の質量の比が、0.1~50質量%である、澱粉含有組成物を有効成分とする、澱粉系食品の付着抑制剤
  2. 前記(A)成分に含まれる澱粉の総質量に対する前記(B)成分の質量の比が、~50質量%である、請求項1に記載の付着抑制剤
  3. 前記(B)成分が、化学変性セルロースナノファイバーを含む、請求項1又は2に記載の付着抑制剤
  4. 前記化学変性セルロースナノファイバーが、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーであり、
    前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01~0.50である、請求項3に記載の付着抑制剤
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の付着抑制剤を澱粉系食品の原料である澱粉の少なくとも一部に代えて用いることを含む、澱粉系食品(ただし、もち粉を含む食品を除く)の製造方法。
  6. 請求項1~4のいずれか1項に記載の付着抑制剤を澱粉系食品の原料である澱粉の少なくとも一部に代えて用いる、澱粉系食品(ただし、もち粉を含む食品を除く)の改質方法。
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