JP2016207799A - 冷却基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】搭載面の重心に発熱素子が配置されない場合でも発熱素子への冷却性能が高い冷却基板を提供すること。
【解決手段】冷却基板8は、発熱素子10A、10Bが搭載される搭載面8aと、複数の冷却基板構成板が上下方向に積層されて接合一体化されてなる積層体とを具備する。搭載面8aは積層体の上面1aからなる。複数の構成板は、アルミニウムと炭素粒子との複合材からなる第1構成板1を含んでいる。第1構成板1の最大熱伝導方向Mは、積層体の平面視において、搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの発熱中心Hから第1構成板1の上面1aの重心Cへ向かう方向Dと揃うように設定されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、電子素子等の発熱素子を冷却する冷却基板に関する。
本明細書及び特許請求の範囲では、「アルミニウム」の語は、特に明示する場合を除き、純アルミニウムとアルミニウム合金との双方を含む意味で用いられ、また「板」の語は、特に明示する場合を除き、「箔」をも含む意味で用いられる。
また、本発明に係る冷却基板の上下方向は限定されるものではないが、冷却基板の構成を理解し易くするため、本明細書及び特許請求の範囲では、複数の冷却基板構成板の積層方向を冷却基板の上下方向、発熱素子が搭載される搭載面側を冷却基板の上側、及び、その反対側を冷却基板の下側とそれぞれ定義する。
金属と炭素粒子との複合材として、例えば特許文献1(特許第5150905号公報)や特許文献2(特許第5145591号公報)に記載されているように、アルミニウム層等の金属層と炭素粒子層としての炭素繊維層とが交互に複数積層されて接合一体化されたものが知られている。この種の複合材は、高い熱伝導性が必要な部材用の材料としての利用が期待されている。
ところで、発熱素子が搭載される搭載面を有する冷却基板は、複数の冷却基板構成板(例:配線板、絶縁板、緩衝板、冷却板)が上下方向に積層されて接合一体化されてなる積層体を具備している。搭載面は積層体の上面からなる。冷却板(冷却器、放熱部材及びヒートスプレッダを含む)は発熱素子を冷却するものであり、積層体の下部に配置されている。
特許5150905号公報 特許5145591号公報
上述の冷却基板の搭載面には、発熱素子をはじめその他にワイヤーボンディングに必要な部品が配置されることが多い。そのため、発熱素子は常に搭載面の重心(搭載面の図心)に配置されるとは限らない。
さらに、冷却基板には、発熱素子への冷却性能を高めるため一般に高い熱伝導性(即ち高い熱伝導率)が要求される。
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、搭載面の重心に発熱素子が配置されない場合でも高い冷却性能を有する冷却基板を提供することにある。
本発明は以下の手段を提供する。
[1] 複数の冷却基板構成板が上下方向に積層されて接合一体化されてなる積層体と、前記積層体の上面からなり且つ発熱素子が搭載される搭載面と、を具備し、
前記複数の構成板は、アルミニウムと炭素粒子との複合材からなる第1構成板を含んでおり、
前記第1構成板の最大熱伝導方向が、前記積層体の平面視において、前記搭載面における前記発熱素子の発熱中心から前記第1構成板の上面の重心へ向かう方向と揃うように設定されている冷却基板。
[2] 前記第1構成板は配線板であり、
前記搭載面は、前記積層体の前記配線板の上面からなる前項1記載の冷却基板。
[3] 前記第1構成板の最大熱伝導方向が、前記搭載面における前記発熱素子の発熱中心から前記第1構成板の上面の重心へ向かう方向に対して下方向に傾斜するように設定されている前項1又は2記載の冷却基板。
本発明は以下の効果を奏する。
前項[1]では、複数の構成板がアルミニウムと炭素粒子との複合材からなる第1構成板を含むことにより、冷却基板の熱伝導率が向上する。
さらに、第1構成板の最大熱伝導方向が、積層体の平面視において、冷却基板の搭載面における発熱素子の発熱中心から第1構成板の上面の重心へ向かう方向と揃うように設定されることにより、発熱素子が搭載面の重心に配置されない場合でも発熱素子に対する冷却基板の冷却性能が向上する。
前項[2]では、第1構成板は配線板であり、搭載面は積層体の配線板の上面からなることにより、発熱素子に対する冷却基板の冷却性能が更に向上する。
前項[3]では、第1構成板の最大熱伝導方向が、搭載面における発熱素子の発熱中心から第1構成板の上面の重心へ向かう方向に対して下方向に傾斜するように設定されることにより、発熱素子に対する冷却基板の冷却性能が更に一層向上する。
図1は、本発明の一実施形態に係る冷却基板の概略断面図である。 図2は、同冷却基板の搭載面の平面図である。 図3は、同冷却基板の配線層を中心とした概略断面図である。 図4は、配線層を形成する複合材の押出素材の斜視図である。 図5は、実施例1及び2の冷却基板の配線板の搭載面の平面図である。 図6は、実施例2の冷却基板の配線板を中心とした概略断面図である。 図7は、比較例2の冷却基板の配線板を中心とした概略断面図である。 図8は、比較例2の配線板を形成する複合材の押出素材の斜視図である。
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
本発明の一実施形態に係る冷却基板8は、図1〜3に示すように、電子モジュール用基板(例:パワーモジュール用基板)等として用いられるものであり、複数の冷却基板構成板1〜4が上下方向に積層されて接合一体化されることで形成された積層体5と、発熱素子10A、10Bが搭載される搭載面8aとを具備している。
複数の構成板1〜4は、配線板1、絶縁板2、緩衝板3及び冷却板4を含んでいる。そして、上から下へ順に配線板1、絶縁板2、緩衝板3及び冷却板4が積層状に配置されるとともに、これらが所定の接合手段により接合一体化されている。接合手段は限定されるものではなく、ろう付け、クラッド圧延、焼結(例:放電プラズマ焼結)等が用いられる。
配線板1は、冷却基板8の配線層を形成するものであり、配線層は回路層とも呼ばれている。配線板1の上面1a及び下面はそれぞれ平坦状に形成されるとともに水平に配置されている。冷却基板8の搭載面8aは配線板1の上面1aから形成されている。
絶縁板2は、冷却基板8の絶縁層を形成するものであり、電気絶縁性を有しており、具体的には、AlN(窒化アルミニウム)、Si(窒化ケイ素)、Al(アルミナ)等のセラミック製である。絶縁板2の上面及び下面はそれぞれ平坦状に形成されるとともに水平に配置されている。そして、絶縁板2の上面が配線板1の下面全体に面接触した状態にして絶縁板2が配線板1の下面に接合されている。
緩衝板3は、冷却基板8の緩衝層を形成するものである。緩衝層は、冷却基板8に発生する熱応力等の応力を緩和するための層である。緩衝板3はアルミニウム等の金属製であり、例えば、厚さ方向に貫通した複数の貫通孔(図示せず)を有するパンチングメタルで形成される。緩衝板3の上面及び下面はそれぞれ平坦状に形成されるとともに水平に配置されている。そして、緩衝板3の上面全体が絶縁板2の下面に面接触した状態にして緩衝板3が絶縁板2の下面に接合されている。
冷却板4は、発熱素子10A、10Bの動作に伴い発熱する発熱素子10A、10Bを冷却するためのものであり、積層体5の下部(詳述すると積層体5の最下部)に配置されている。冷却板4の上面及び下面はそれぞれ平坦状に形成されるとともに水平に配置されている。そして、冷却板4の上面が緩衝板3の下面全面に面接触した状態にして冷却板4が緩衝板3の下面に接合されている。
本実施形態では、冷却板4として、冷却液等の冷却流体が流通する複数の流通路4aを内部に有する板状の冷却器が用いられている。なお本発明では、冷却板4は上述のような冷却器であることに限定されるものではなく、その他に例えば板状の放熱部材やヒートスプレッダであっても良い。
配線板1、絶縁板2、緩衝板3及び冷却板4の平面視形状は限定されるものではなく、本実施形態では例えば方形状である(図2参照)。
発熱素子10A、10Bは、半導体素子等の電子素子(例:IGBT素子)を含むものである。半導体素子としては、Si半導体素子、SiC半導体素子、GaN半導体素子等が挙示される。
そして、発熱素子10A、10Bは、搭載面8aにおける所定箇所に配置されて接合手段として例えばワイヤーボンディングによりはんだ層11を介して接合され、これにより発熱素子10A、10Bが搭載面8aに搭載される。
なお本発明では、発熱素子10A、10Bの搭載面8aへの接合手段は、ワイヤーボンディング等のはんだ付けであることに限定されるものではなく、その他に例えばナノ粒子を用いた焼結であっても良い。
配線板1の搭載面8a(上面1a)及びその外周側面には、搭載面8aにおけるはんだ付け性を高めるためニッケル−リンめっき膜等のニッケルめっき膜6(その厚さ:2〜20μm)が、公知のニッケルめっき方法(例:電気ニッケルめっき法、無電解ニッケルめっき法)により薄く形成されている。
配線板1の厚さは限定されるものではないが、特に0.1mm以上2mm以下であることが望ましい。
冷却基板8において、配線板1の搭載面8aの重心(搭載面8aの図心)Cとその下面の重心と絶縁板2の上面の重心とその下面の重心と緩衝板3の上面の重心とその下面の重心と冷却板4の上面の重心とは、冷却基板8(積層体5)の平面視(即ち、搭載面8aに垂直な方向からの上面視)において略一致している。
冷却基板8では、発熱素子10A、10Bで発生した熱は、発熱素子10A、10Bから配線板1、絶縁板2、緩衝板3及び冷却板4に順次伝導する。その結果、発熱素子10A、10Bが冷却されて発熱素子10A、10Bの温度が低下する。
本実施形態の冷却基板8において、配線板1は、アルミニウム9aと炭素粒子9bとの複合材9からなるものである。すなわち、配線板1が「第1構成板」に相当している。
複合材9としては限定されるものではなく、例えば、溶湯撹拌法により製造された複合材、粉末焼結法により製造された複合材、塗工+焼結法により製造された複合材、粉末押出法により製造された複合材が用いられ、特に、熱伝導率について配向性を有する複合材が好適に用いられる。具体的には、最大熱伝導方向(即ち、最も大きな熱伝導率の方向)の熱伝導率が当該最大熱伝導方向に垂直な方向の熱伝導率に対して10%以上大きい複合材が特に好適に用いられる。
溶湯撹拌法とは、溶融したアルミニウム(即ちアルミニウム溶湯)に炭素粒子としての炭素粉末(例:炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粉末)を入れて撹拌混合し冷却凝固させる方法である。
塗工+焼結法とは、アルミニウム板上に炭素粒子としての炭素粉末(例:炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粉末)を塗工して得られた塗工板を複数積層して焼結一体化する方法である。
粉末押出法とは、アルミニウム粉末と炭素粒子としての炭素粉末(例:炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粉末)とを混合して押出加工する方法である。
粉末焼結法とは、アルミニウム粉末と炭素粒子としての炭素粉末(例:炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粉末)とを混合して加圧焼結する方法である。
特に、複合材9は、炭素粒子9bとして炭素繊維を用いた塗工+焼結法により製造されたもの、粉末押出法により製造されたもの、及び、粉末焼結法により製造されたものであることが望ましい。その理由は次のとおりである。
すなわち、複合材9を塗工+焼結法により製造する場合には、炭素繊維をアルミニウム板上に塗工する際に及び塗工板を複数積層する際に炭素繊維を特定の方向に揃えることができるので、熱伝導率について大きな配向性を有する複合材9を得ることができるし、複合材9の最大熱伝導方向の設定を容易に行うことができる。
複合材9を粉末押出法により製造する場合には、一般に押出方向が複合材9の最大熱伝導方向になるので、熱伝導率について大きな配向性を有する複合材9を得ることができるし、複合材9の最大熱伝導方向の設定を容易に行うことができる。
複合材9を粉末焼結法により製造する場合には、アルミニウム粉末と炭素粉末との混合物への加圧方向に対して垂直な方向が一般に複合材9の最大熱伝導方向になるので、熱伝導率について大きな配向性を有する複合材9を得ることができるし、複合材9の最大熱伝導方向の設定を容易に行うことができる。
アルミニウム9aの種類は限定されるものではなく、高純度アルミニウム(例:その純度3N、4N、5N)、JIS(日本工業規格)のアルミニウム合金記号A1000系(純アルミニウム)、A3000系、A6000系などのアルミニウムが用いられる。
炭素粒子9bの種類は限定されるものではないが、なるべく高い熱伝導率を有するもの、即ち高熱伝導性のものであることが、冷却基板8の冷却性能を向上させ得る点等で望ましい。特に、炭素粒子9bは、炭素繊維(例:ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維)、カーボンナノチューブ(例:単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維)、グラフェン(例:単層グラフェン、多層グラフェン)、天然黒鉛粒子(例:鱗片状黒鉛粒子)及び人造黒鉛粒子(例:異方性黒鉛粒子、等方性黒鉛粒子、熱分解黒鉛粒子)からなる群より選択される少なくとも一種であることが望ましく、更に、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン及び天然黒鉛粒子からなる群より選択される少なくとも一種であることがより望ましい。
炭素粒子9bの大きさは限定されるものではないが、炭素粒子9bが炭素繊維である場合、平均繊維長が10μm以上2mm以下の炭素繊維が特に好適に用いられる。炭素粒子9bがカーボンナノチューブである場合、平均長さが1μm以上10μm以下のカーボンナノチューブが特に好適に用いられる。炭素粒子9bが天然黒鉛粒子及び人造黒鉛粒子である場合、平均粒子径が10μm以上3mm以下の天然黒鉛粒子及び人造黒鉛粒子が特に好適に用いられる。
次に、配線板1の最大熱伝導方向について図2及び3を参照して以下に説明する。なお、図2には、本発明を理解し易くするためニッケルめっき膜6は図示されていない。
図2において、X方向は配線板1の搭載面8a(配線板1の上面1a)の横方向、Y方向は搭載面8aの縦方向をそれぞれ示しており、X方向及びY方向は互いに垂直である。「C」は搭載面8aの重心(搭載面8aの図心)である。「M」は配線板1の最大熱伝導方向である。「h」は搭載面8aにおける右側の発熱素子10Aの配置部の中心(配置部の図心)であり、「h」は搭載面8aにおける左側の発熱素子10Bの配置部の中心(配置部の図心)である。
本実施形態の冷却基板8では、配線板1の最大熱伝導方向Mは、図2に示すように積層体5の平面視において、搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの発熱中心Hから搭載面8aの重心Cへ向かう方向Dと揃うように設定されている。
ここで、搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの発熱中心Hは次のように定義される。
搭載面8aに搭載される発熱素子の数が一つである場合(当該発熱素子を例えば図2中の右側の発熱素子10Aとして説明すると)、搭載面8aにおける発熱素子10Aの配置部の中心hが一般に最も高温になるので、発熱素子10Aの発熱中心Hとは、搭載面8aにおける発熱素子10Aの配置部の中心hと定義する。
搭載面8aに搭載される発熱素子の数が複数である場合、各発熱素子の発熱量及び配置位置を考慮すべく、発熱素子の発熱中心Hとは、搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの発熱重心と定義する。
すなわち、搭載面8aにおける発熱素子の発熱中心HのX座標及びY座標をそれぞれHx及びHyとし、発熱素子の数をnとし、1〜n番までの各発熱素子の発熱量をQ〜Qとし、搭載面8aにおける1〜n番までの各発熱素子の配置部の中心のX座標をx〜xとし、搭載面8aにおける1〜n番までの各発熱素子の配置部の中心のY座標をy〜yとするとき、搭載面8aにおける発熱素子の発熱中心HのX座標Hx及びY座標Hyはそれぞれ次式(1X)及び(1Y)で算出される。
Hx=(x+x+…+x)/(Q+Q+…+Q) …式(1X)
Hy=(y+y+…+y)/(Q+Q+…+Q) …式(1Y)。
さらに、本実施形態の冷却基板8では、図3に示すように、配線板1の最大熱伝導方向Mは、平面視において搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの発熱中心Hから搭載面8aの重心Cへ向かう方向Dに対して、下方向に傾斜するように(即ち冷却板4に接近するように)設定されている。
本実施形態の冷却基板8には次の利点がある。
配線板1がアルミニウム9aと炭素粒子9bとの複合材9からなるので、冷却基板8の熱伝導率が向上する。さらに、配線板1の最大熱伝導方向Mが、図2に示すように積層体5の平面視において、冷却基板8の搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの発熱中心Hから搭載面8aの重心Cへ向かう方向Dと揃うように設定されているので、発熱素子10A、10Bが搭載面8aの重心Cに配置される場合はもとより発熱素子10A、10Bが搭載面8aの重心Cに配置されない場合でも、発熱素子10A、10Bに対する冷却基板8の冷却性能が向上する。すなわち、冷却基板8は発熱素子10A、10Bに対して高い冷却性能を有している。
特に、積層体5の平面視において、配線板1の最大熱伝導方向Mと搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの発熱中心Hから搭載面8aの重心Cへ向かう方向Dとの間の角度差αが45°以下であることが望ましい。この場合には、発熱素子10A、10Bに対する冷却基板8の冷却性能が確実に向上する。更に望ましい角度差αは25°以下である。
さらに、配線板1は複数の構成板1〜4のうち最も発熱素子10A、10Bに近い構成板であるので、配線板1がアルミニウム9aと炭素粒子9bとの複合材9からなることにより、発熱素子10A、10Bに対する冷却基板8の冷却性能が更に向上する。
さらに、図3に示すように、配線板1の最大熱伝導方向Mは、搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの発熱中心Hから搭載面8aの重心Cへ向かう方向Dに対して下方向に傾斜するように設定されているので、発熱素子10A、10Bから冷却板4への熱伝導速度が更に向上し、これにより発熱素子10A、10Bに対する冷却基板8の冷却性能が更に一層向上する。
本実施形態の冷却基板8では、配線板1は、例えば、アルミニウム粉末と炭素粉末としての炭素繊維とを用いた粉末押出法により製造された複合材からなるものであり、具体的には次のようにして製造された複合材からなる。
すなわち、図4に示すように、アルミニウム粉末と炭素繊維とを用いた粉末押出法により、押出方向Eに延びた棒状の複合材9の押出素材9A(これを便宜上「複合押出素材9A」を呼ぶ)を製造する。複合押出素材9Aの熱伝導率は押出方向Eに大きく配向しており、その最大熱伝導方向Mは押出方向Eと一致している。この複合押出素材9Aをその押出方向Eに対して斜め方向に且つ所定厚さで切断(その切断面S)することで切断片9zを得る。そして、この切断片9zの厚さ方向両面(即ち複合押出素材9Aの切断面S)が配線板1の上下両面になるように配線板1を切断片9zで形成する。このように配線板1を複合押出素材9Aから切り出すことにより、配線板1の最大熱伝導方向Mは搭載面8aと平行ではなく且つ配線板1の厚さ方向とも平行ではないものとなる。
配線板1の最大熱伝導方向Mの設定は、配線板1の最大熱伝導方向Mが所望する方向になるように複合押出素材9Aの押出方向Eに対する複合押出素材9Aの切断角θを設定することにより、行われる。したがって、配線板1の最大熱伝導方向Mの設定を容易に行うことができる。
なお、切断角θとは、複合押出素材9Aの押出方向Eに対して複合押出素材9Aの切断面Sがなす角度であり、本実施形態のように複合押出素材9Aをその押出方向Eに対して斜め方向に切断する場合は、その切断角θは0°<θ<90°に設定される。
以上で本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に示したものであることに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々に変更可能である。
上記実施形態では、配線板1がアルミニウム9aと炭素粒子9bとの複合材9からなるものであるが、本発明では、その他に例えば、緩衝板3や冷却板4がアルミニウムと炭素粒子との複合材からなるものであることを排除するものではない。さらに、本発明では、上記実施形態のように冷却基板8を構成する複数の構成板1〜4のうち一つだけがアルミニウムと炭素粒子との複合材からなるものであっても良いし、更に二つ以上がアルミニウムと炭素粒子との複合材からなるものであっても良い。
次に本発明の具体的な実施例及び比較例について以下に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
図5は、実施例1及び2の冷却基板8の配線板1の搭載面8aの平面図である。図6は、実施例2の冷却基板8の配線板1を中心とした概略断面図である。図7は、比較例2の冷却基板8の配線板1を中心とした概略断面図である。図8は、比較例2の配線板1を形成する複合材9の押出素材9Aの斜視図である。
これらの同図において、以下の実施例1〜2及び比較例1〜2を理解し易くするため、上記実施形態の冷却基板8と同等の構成要素には同じ符号が付されている。
<実施例1>
実施例1の冷却基板8では、図5に示すように、配線板1の搭載面8aの形状は平面視で正方形状であり、その寸法は横30mm×縦30mmである。配線板1の厚さは0.8mmである。搭載面8aにおけるその重心Cに対してY方向(縦方向)の片側にずれた箇所には、二つの発熱素子10A、10Bが互いにX方向(横方向)に離間して配置されてはんだ付けにより接合されている。各発熱素子10A、10BはSi半導体チップであり、その形状は平面視で正方形状であり、その寸法は横12mm×縦12mmである。さらに、両方の発熱素子10A、10Bの発熱量は互いに等しいものである。
配線板1は、塗工+焼結法により製造された、アルミニウムと炭素粒子との複合材からなる。使用した炭素粒子は炭素繊維である。したがって、配線板1は熱伝導率について配向性を有している。
図5に示すように、配線板1の最大熱伝導方向Mは、積層体5の平面視において、搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの発熱中心Hから搭載面8aの重心Cへ向かう方向Dと揃うように設定されており、詳述すると、配線板1の最大熱伝導方向Mは平面視において搭載面8aのY方向と略平行である。すなわち、積層体5の平面視において、配線板1の最大熱伝導方向Mと搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの発熱中心Hから搭載面8aの重心Cへ向かう方向Dとの間の角度差αが約0°に設定されている。さらに、配線板1の搭載面8aのX方向(横方向)の熱伝導率と搭載面8aのY方向(縦方向)の熱伝導率との比は1:2である。
<比較例1>
比較例1の冷却基板では、配線板1は熱伝導率について配向性を有しないものであり、配線板1の搭載面8aのX方向の熱伝導率と搭載面8aのY方向の熱伝導率との比は1:1である。比較例1の冷却基板のその他の構成及び搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの配置位置は、実施例1のそれと同じである。
<評価>
実施例1の冷却基板8と比較例1の冷却基板について発熱素子10A、10Bを動作させてその温度を測定したところ、比較例1の冷却基板よりも実施例1の冷却基板8の方が発熱素子10A、10Bの温度が低かった。したがって、実施例1の冷却基板8は高い冷却性能を有していることを確認し得た。
<実施例2>
実施例2の冷却基板8では、その配線板1の搭載面8aの形状、その寸法及び配線板1の厚さは、上記実施例1と同じである。さらに、発熱素子の数、その形状、その寸法、その発熱量、及び、搭載面8aにおける発熱素子の配置位置についても上記実施例1のそれと同じである。
本実施例2の冷却基板8では、配線板1は、上記実施形態と同じく、アルミニウム粉末と炭素繊維とを用いた粉末押出法により製造された複合材9からなるものである。したがって、配線板1は熱伝導率について配向性を有している。複合材9の押出素材9Aの押出方向Eに対する複合材9の押出素材9Aの切断角θは45°である(図4参照)。
図5に示すように、配線板1の最大熱伝導方向Mは、積層体5の平面視において、搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの発熱中心Hから搭載面8aの重心Cへ向かう方向Dと揃うように設定されており、詳述すると、配線板1の最大熱伝導方向Mは平面視において搭載面8aのY方向と略平行である。すなわち、積層体5の平面視において、配線板1の最大熱伝導方向Mと搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの発熱中心Hから搭載面8aの重心Cへ向かう方向Dとの間の角度差αが約0°に設定されている。
さらに、図6に示すように、配線板1の最大熱伝導方向Mは、搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの発熱中心Hから搭載面8aの重心Cへ向かう方向Dに対して斜め下方向に傾斜するように設定されている。
<比較例2>
比較例1の冷却基板では、配線板1は、実施例2と同様に、アルミニウム粉末と炭素繊維とを用いた粉末押出法により製造された複合材9からなるものであるが、図8に示すように、複合材9の押出素材9Aの押出方向Eに対する複合材9の押出素材9Aの切断角θは90°である。さらに、図7に示すように、配線板1の最大熱伝導方向Mは、配線板1の厚さ方向即ち上下方向と平行に設定されている。比較例2の冷却基板のその他の構成及び搭載面8aにおける発熱素子10A、10Bの配置位置は実施例2のそれと同じである。
<評価>
実施例2の冷却基板8と比較例2の冷却基板について発熱素子10A、10Bを動作させてその温度を測定したところ、比較例2の冷却基板よりも実施例2の冷却基板8の方が発熱素子10A、10Bの温度が低かった。したがって、実施例2の冷却基板8は高い冷却性能を有していることを確認し得た。
本発明は、電子素子等の発熱素子を冷却する冷却基板に利用可能である。
1:配線板(第1構成板)
1a:配線板の上面(積層体の上面)
2:絶縁板
3:緩衝板
4:冷却板
5:積層体
8:冷却基板
8a:搭載面
9:複合材
9a:アルミニウム
9b:炭素粒子
10A、10B:発熱素子
C:搭載面の重心(第1構成板の上面の重心)
H:搭載面における発熱素子の発熱中心
M:配線板の最大熱伝導方向(第1構成板の最大熱伝導方向)

Claims (3)

  1. 複数の冷却基板構成板が上下方向に積層されて接合一体化されてなる積層体と、前記積層体の上面からなり且つ発熱素子が搭載される搭載面と、を具備し、
    前記複数の構成板は、アルミニウムと炭素粒子との複合材からなる第1構成板を含んでおり、
    前記第1構成板の最大熱伝導方向が、前記積層体の平面視において、前記搭載面における前記発熱素子の発熱中心から前記第1構成板の上面の重心へ向かう方向と揃うように設定されている冷却基板。
  2. 前記第1構成板は配線板であり、
    前記搭載面は、前記積層体の前記配線板の上面からなる請求項1記載の冷却基板。
  3. 前記第1構成板の最大熱伝導方向が、前記搭載面における前記発熱素子の発熱中心から前記第1構成板の上面の重心へ向かう方向に対して下方向に傾斜するように設定されている請求項1又は2記載の冷却基板。
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