次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
図1〜8は、本発明の第1実施形態を説明する図である。
図1及び2に示すように、本第1実施形態に係る冷却装置20Aは、発熱性素子27を冷却するものである。発熱性素子27としては半導体素子(例:パワー半導体素子)などが挙げられる。
冷却装置20Aは、互いに積層状に接合一体化された複数の冷却装置構成部材21〜25を備える。具体的には、冷却装置20Aは、複数の構成部材として、上配線層21、絶縁層22、下配線層23、緩衝層24及び冷却部材25を備えるとともに、これらの部材が上から下へこの記載の順に積層された状態で所定の接合手段により接合一体化されており、これにより冷却装置20Aが形成されている。
接合手段は限定されるものではなく、ろう付け、圧延クラッド、焼結(例:放電プラズマ焼結)などが用いられる。
絶縁層22は電気絶縁性を有しており、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)などのセラミックからなる。
上配線層21は、絶縁層22の上側に配置される板状の熱伝導部材に相当するものであり、絶縁層22の上面に接合されている。上配線層21の上側には発熱性素子27が搭載される。詳述すると、上配線層21はその平坦状の上面からなる、発熱性素子27用搭載面21aを有しており、発熱性素子27はこの搭載面21aにはんだ層26を介して接合されることで搭載面21aに搭載される。なお、上配線層21は回路層とも呼ばれている。
下配線層23は、絶縁層22の下側に配置されており、具体的には絶縁層22の下面に接合されている。
緩衝層24は、冷却装置20Aに発生する熱応力を緩和するための層であり、絶縁層22の下側に配置されており、具体的には下配線層23の下面に接合されている。
冷却部材25は、絶縁層22の下側に配置されており、具体的には緩衝層24の下面に接合されている。本第1実施形態では、冷却部材25は液冷式のものであり、詳述すると冷却部材25はその内部に冷却液(例:冷却水)が流通する通路(図示せず)が設けられたものである。
冷却装置20Aでは、発熱性素子27の熱は発熱性素子27からはんだ層26、上配線層21、絶縁層22、下配線層23、緩衝層24及び冷却部材25に順次伝導し、その結果、発熱性素子27が冷却される。
ここで本発明では、冷却部材25は液冷式のものであることに限定されるものではなく、その他に例えば空冷式のものであってもよい。冷却部材が空冷式のものである場合、冷却部材は一般に放熱部材(例:ヒートシンク、放熱板)などを備える。この場合、発熱性素子27の熱が放熱部材から放散されることにより発熱性素子27が冷却される。
冷却装置20Aにおいて、下配線層23、緩衝層24及び冷却部材25の材料は限定されるものではなく、好ましくは、金属(例:アルミニウム、銅)、金属−炭素粒子複合材、金属−窒化ホウ素複合材、グラファイトシートなどの高熱伝導性材料であることがよい。
次に、上配線層21の構成について以下に説明する。
図1及び2中の矢印W、L及びTは、それぞれ、冷却装置20Aの各構成部材(即ち、上配線層21、絶縁層22、下配線層23、緩衝層24及び冷却部材25)の幅方向W、長さ方向L及び厚さ方向Tを示している。矢印W、L及びTは互いに直交している。
図1及び2に示すように、上配線層21は上述したように搭載面21aを有している。なお、図2中のクロスハッチング領域「21b」は、上配線層21の搭載面21aにおける発熱性素子27との接合領域を示している。
上配線層21は平面視方形状であり、詳述すると平面視長方形状である。したがって、上配線層21は幅方向W及び長さ方向Lを有している。上配線層21の厚さは限定されるものではなく、好ましくは0.2〜2mmである。
上配線層21はその平面方向の熱伝導率に異方性を有するものである。
ここで、図1及び2に示すように、上配線層21において、上配線層21の平面方向における熱伝導率が最低の方向をa方向、上配線層21の平面方向におけるa方向に直交する方向をb方向、及び、上配線層21の厚さ方向をc方向と定義する。
さらに、上配線層21のa方向、b方向及びc方向の熱伝導率をそれぞれka、kb及びkcと定義する。
さらに、上配線層21のa方向、b方向及びc方向の線膨張率をそれぞれαa、αb及びαcと定義する。
上配線層21において、ka、kb及びkcは下記式1及び2を満足しており、またαa、αb及びαcは下記式3〜5を満足している。
kb>ka …式1
kc>ka …式2
|αa−αb|≦5ppm/K …式3
|αb−αc|≦5ppm/K …式4
|αc−αa|≦5ppm/K …式5。
ka、kb及びkcが式1及び2を満足することにより、発熱性素子27から冷却部材25への熱伝導性が向上する。これにより、冷却装置20Aの冷却性能を高めることができる。αa、αb及びαcが式3〜5を満足することにより、上配線層21の三方向(即ちa方向、b方向及びc方向)の線膨張率差に起因する熱応力を小さくすることができる。これにより、冷却装置20Aの冷熱サイクル負荷に対する信頼性、即ち冷却装置20Aの冷熱信頼性を高めることができる。
さらに、αa、αb及びαcはいずれも5〜15ppm/Kの範囲であることが好ましい。この場合、上配線層21とはんだ層26との間の線膨張率差、上配線層21と発熱性素子(具体的には半導体素子)27との間の線膨張率差、及び、上配線層21と絶縁層22との間の線膨張率差に起因する熱応力をそれぞれ小さくすることができる。これにより、冷却装置20Aの冷熱信頼性を更に高めることができる。
本第1実施形態では、上配線層21のa方向、b方向及びc方向は、それぞれ上配線層21の幅方向W、長さ方向L及び厚さ方向Tに向いており、詳述するとそれぞれ上配線層21の幅方向W、長さ方向L及び厚さ方向Tと一致している。
次に、上配線層21についてその材料を中心に以下に説明する。
図3に示すように、上配線層21は、アルミニウムマトリックス(ドットハッチングで示す)9とアルミニウムマトリックス9中に分散した多数の炭素粒子6とを含む板状のアルミニウム−炭素粒子複合材(詳述すると板状のアルミニウム−炭素粒子複合体)18で形成されている。なお、この複合材18はアルミニウム基炭素粒子複合材とも呼ばれている。
複合材18のアルミニウムマトリックス9のアルミニウム材料の種類は限定されるものではなく、好ましくは純アルミニウム又は高純度アルミニウムであることがよい。その理由は、このようなアルミニウムは高い熱伝導率を有するからである。
炭素粒子6としては、炭素繊維(詳述すると短炭素繊維)3a、黒鉛粒子及びグラフェンからなる群より選択される少なくとも一種が用いられることが好ましい。
炭素繊維3aとしては、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、気相成長炭素繊維(VGCF(登録商標)を含む)及びカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも一種が用いられ、好ましくはピッチ系炭素繊維又はPAN系炭素繊維が用いられる。その理由は、このような炭素繊維は安価に入手可能であるからである。特にピッチ系炭素繊維が好適に用いられる。その理由は、ピッチ系炭素繊維は高い熱伝導率を有するからである。
黒鉛粒子としては、天然黒鉛粒子(例:鱗片状黒鉛粒子4a)、人造黒鉛粒子及び熱分解黒鉛粒子からなる群より選択される少なくとも一種が用いられることが好ましく、特に鱗片状黒鉛粒子4aが好適に用いられる。その理由は、鱗片状黒鉛粒子4aはその平面方向において高い熱伝導率を有するからである。なお、鱗片状黒鉛粒子4aの平面方向とは、鱗片状黒鉛粒子4aの厚さ方向に垂直な面方向を意味する。
炭素粒子6の大きさは限定されるものではないが、炭素粒子6が炭素繊維3aである場合、炭素繊維3aの平均繊維長さは10μm〜2mmの範囲であることが好ましく、また炭素粒子6が鱗片状黒鉛粒子4aなどの黒鉛粒子である場合、黒鉛粒子における最も長い方向の長さは30μm〜3mmの範囲であることが好ましい。
炭素粒子6が鱗片状黒鉛粒子4aなどの黒鉛粒子である場合、そのアスペクト比は限定されるものではなく、好ましくは30以上であることがよい。その理由は、そのようなアスペクト比の黒鉛粒子は高い熱伝導率を有するからである。
さらに、炭素粒子6は非酸化性雰囲気(例:不活性ガス雰囲気、真空雰囲気)中にて2000〜3000℃の温度で熱処理されたという熱処理履歴を有するものであってもよい。この場合、炭素粒子6は高い熱伝導率を有する。
本第1実施形態では、複合材18の炭素粒子6として、炭素繊維3a及び鱗片状黒鉛粒子4aの両方が用いられている。したがって、複合材18は炭素繊維3aと鱗片状黒鉛粒子4aとの両方を炭素粒子6として含んでいる。
さらに、複合材18は、アルミニウムマトリックス9中に炭素繊維3a及び鱗片状黒鉛粒子4aのうち少なくとも一方が分散した複数の炭素粒子分散層2と、アルミニウムマトリックス9中に炭素粒子6が存在していない複数のアルミニウム層1とを含んでいる。複合材18において炭素粒子分散層2とアルミニウム層1とは交互に複数積層された状態に配列している。そして、複数の炭素粒子分散層2と複数のアルミニウム層1とがこの積層状態で接合一体化されている。
ここで、説明の便宜上、複合材18において、炭素粒子分散層2とアルミニウム層1との積層方向を複合材18のZ方向とし、Z方向に対して垂直な面方向における互いに直交する二方向のうちの一方を複合材のX方向及び他方を複合材のY方向とする。
複合材18では、炭素粒子分散層2に平行な面が複合材18の高熱伝導面XY(二点鎖線で示す)であり(図1及び2参照)、この高熱伝導面XYに垂直な方向、即ち複合材18のZ方向が複合材18の低熱伝導方向である。
図2に示すように、上配線層21において、複合材18のZ方向は上配線層21のa方向(即ち上配線層21の幅方向W)に向いており、具体的にはa方向と一致している。複合材18のX方向は上配線層21のb方向(即ち上配線層21の長さ方向L)に向いており、具体的にはb方向と一致している。複合材18のY方向は上配線層21のc方向(即ち上配線層21の厚さ方向T)に向いており、具体的にはc方向と一致している。
さらに、複合材18を詳細に説明すると次のとおりである。
本第1実施形態では、図3に示すように、複合材18における複数の炭素粒子分散層2は、複数の炭素繊維分散層3と複数の鱗片状黒鉛粒子分散層4とからなる。
炭素繊維分散層3は、複合材18のアルミニウムマトリックス9中に炭素繊維3aが分散し且つ鱗片状黒鉛粒子4aが存在してない層である。
鱗片状黒鉛粒子分散層4は、複合材18のアルミニウムマトリックス9中に鱗片状黒鉛粒子4aが分散し且つ炭素繊維3aが存在していない層である。
さらに、上配線層21において、複合材18における炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4とアルミニウム層1とは、上配線層21のa方向にその略全体に亘って規則的な積層順序に配列している。
炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4とアルミニウム層1とについての積層順序の単位7は、「アルミニウム層1/炭素繊維分散層3/アルミニウム層1/鱗片状黒鉛粒子分散層4」という単位である。そして、複合材18(上配線層21)において、炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4とアルミニウム層1とは、この積層順序単位7が上配線層21のa方向にその略全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って積層された状態に配列している。
積層順序単位7中に存在する炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4との層数比は1:1である。そして、炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4とは、この層数比で上配線層21のa方向の略全体に亘って配列している。
次に、複合材18の炭素粒子分散層2中の炭素繊維3a及び鱗片状黒鉛粒子4aが複合材18(上配線層21)に及ぼす作用について以下に説明する。
複合材18が炭素粒子6として炭素繊維3aを含むことにより、複合材18のX方向及びY方向の熱伝導率がアルミニウムの熱伝導率よりも僅かに高くなるとともに、複合材18のZ方向の熱伝導率がアルミニウムの熱伝導率よりも低くなり、また、複合材18のX方向及びY方向の線膨張率(具体例:2〜15ppm/K)がアルミニウムの線膨張率よりも低くなるとともに、複合材18のZ方向の線膨張率(具体例:30〜45ppm/K)がアルミニウムの線膨張率よりも高くなる。
複合材18が炭素粒子6として鱗片状黒鉛粒子4aを含むことにより、複合材18のX方向及びY方向の熱伝導率がアルミニウムの熱伝導率よりも高くなるとともに、複合材18のZ方向の熱伝導率がアルミニウムの熱伝導率よりも低くなり、また、複合材18のX方向及びY方向の線膨張率(具体例:8〜22ppm/K)はアルミニウムの線膨張率よりも低くなるとともに、複合材18のZ方向の線膨張率(具体例:5〜20ppm/K)もアルミニウムの線膨張率よりも低くなるが、アルミニウムの線膨張率に対する複合材18のZ方向の線膨張率の低下割合の方が複合材18のX方向及びY方向の線膨張率の低下割合よりも大きい。
複合材18が上述した特性を有する炭素繊維3a及び鱗片状黒鉛粒子4aの両方を炭素粒子6として含むことにより、ka、kb及びkcが上記式1及び2を確実に満足するようになるし、αa、αb及びαcが上記式3〜5を確実に満足するようになり、更に、αa、αb及びαcをそれぞれ5〜15ppm/Kの範囲に確実に設定することができる。そのため、冷却装置20Aの冷却性能及び冷熱信頼性を確実に高めることができる。
さらに、複合材18において、複合材18に対する炭素繊維3aの体積含有率(この値を「Vfc」とする)が5〜15体積%の範囲であり、複合材18に対する鱗片状黒鉛粒子4aの体積含有率(この値を「Vfg」とする)が20〜50体積%の範囲であることが好ましい。この場合、ka、kb及びkcが上記式1及び2を確実に満足するようになるし、αa、αb及びαcが上記式3〜5を確実に満足するようになり、更に、αa、αb及びαcをそれぞれ5〜15ppm/Kの範囲に確実に設定することができる。そのため、冷却装置20Aの冷却性能及び冷熱信頼性を更に確実に高めることができる。
Vfcの更に好ましい下限は10体積%である。Vfgの更に好ましい下限は25体積%であり、Vfgの更に好ましい上限は45体積%である。
次に、上配線層21の好ましい製造方法について図4〜7を参照して以下に説明する。
図4に示すように、第1アルミニウム箔11(詳述すると第1アルミニウム箔11の片側の表面)上に炭素繊維3aが塗工された複数の炭素繊維塗工箔11Aと、第2アルミニウム箔12(詳述すると第2アルミニウム箔12の片側の表面)上に鱗片状黒鉛粒子4aが塗工された複数の鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとをそれぞれ準備する。
第1及び第2アルミニウム箔11、12のアルミニウム材料が上述した複合材18のアルミニウムマトリックス9の材料である。
炭素繊維塗工箔11Aでは、炭素繊維3aは第1アルミニウム箔11上にその略全体に亘って塗工されており、更に、第1バインダー(図示せず)によって第1アルミニウム箔11に結着している。
また、炭素繊維3aが第1アルミニウム箔11上に塗工された状態において、炭素繊維3aの長さ方向は第1アルミニウム箔11の平面(即ち第1アルミニウム箔の表面と平行な面)内において略ランダムに向いており、したがって炭素繊維3aは第1アルミニウム箔11の平面内において殆ど配向していない。
炭素繊維塗工箔11Aは、第1バインダーが第1溶剤で溶解した第1バインダー液と炭素繊維3aとを含む第1塗料(図示せず)を第1アルミニウム箔11上に塗工し乾燥することにより、製作される。第1アルミニウム箔11上に塗工された第1塗料を乾燥する目的は、当該第1塗料中の第1溶剤を第1塗料から蒸発除去するためである。
炭素繊維塗工箔11Aにおいて、第1アルミニウム箔11上における炭素繊維3aの塗工量は、上配線層21のka、kb、kc、αa、αb及びαcが上述した所定の式を満足するように設定されることが好ましい。
鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aでは、鱗片状黒鉛粒子4aは第2アルミニウム箔12上にその略全体に亘って塗工されており、更に、第2バインダー(図示せず)によって第2アルミニウム箔12に結着している。
また、鱗片状黒鉛粒子4aが第2アルミニウム箔12上に塗工された状態において、鱗片状黒鉛粒子4aの平面方向が第2アルミニウム箔12の表面と平行になるように鱗片状黒鉛粒子4aが第2アルミニウム箔12上に分散しており、したがって鱗片状黒鉛粒子4aは第2アルミニウム箔12の平面内において殆ど配向していない。
鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aは、第2バインダーが第2溶剤で溶解した第2バインダー液と鱗片状黒鉛粒子4aとを含む第2塗料(図示せず)を第2アルミニウム箔12上に塗工し乾燥することにより、製作される。第2アルミニウム箔12上に塗工された第2塗料を乾燥する目的は、当該第2塗料中の第2溶剤を第2塗料から蒸発除去するためである。
鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aにおいて、第2アルミニウム箔12上における鱗片状黒鉛粒子4aの塗工量は、上配線層21のka、kb、kc、αa、αb及びαcが上述した所定の式を満足するように設定されることが好ましい。
第1及び第2バインダーは通常、樹脂からなり、その種類は限定されるものではない。具体的には、第1及び第2バインダーとして、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル系樹脂などが好適に用いられる。
第1及び第2溶剤の種類は限定されるものではなく、具体的には、溶剤として、親水性溶剤(例:イソプロピルアルコール、水)、有機溶剤などが用いられる。
第1塗料は、炭素繊維3aと第1バインダー液とを混合状態に含むものであることが好ましく、この場合、炭素繊維3aは第1バインダー液(第1塗料)中に略均一に分散している。第1塗料の調製は、炭素繊維3aと第1バインダー液とを混合容器内で所定のミキサーにより混合撹拌することにより行われることが好ましい。
第2塗料は、鱗片状黒鉛粒子4aと第2バインダー液とを混合状態に含むものであることが好ましく、この場合、鱗片状黒鉛粒子4aは第2バインダー液(第2塗料)中に略均一に分散している。第2塗料の調製は、鱗片状黒鉛粒子4aと第2バインダー液とを混用容器内で所定のミキサーにより混合撹拌することにより行われることが好ましい。
上述したミキサーとしては、ディスパー、プラネタリーミキサー、ビーズミルなどが用いられる。
第1塗料の第1アルミニウム箔11上への塗工方法は限定さない。好ましくは、第1塗料の塗工は、特開2015−25158号公報、特開2015−271655号公報などに開示されているようなロールtoロール方式により行われる。
第1塗料の塗工装置としては、グラビアコーター、3本ロールコーター(オフセットタイプ)、ナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター(2本ロールコーター)、スプレーコーター、カーテンコーター、リバースロールコーター、バーコーターなどが用いられる。
第1アルミニウム箔11上に塗工された第1塗料を乾燥する装置としては、乾燥炉などが用いられる。
第2塗料の第2アルミニウム箔12上への塗工方法は限定さない。好ましくは、第2塗料の塗工は、第1塗料の塗工と同様にロールtoロール方式により行われる。
第2塗料の塗工装置としては、例えば上述した第1塗料の塗工装置と同じものが用いられる。
第2アルミニウム箔12上に塗工された第2塗料を乾燥する装置としては、乾燥炉などが用いられる。
次いで、図4に示すように、複数の炭素繊維塗工箔11Aと複数の鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとが積層された状態の積層体15を形成する。
積層体15は、複数の炭素繊維塗工箔11Aと複数の鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとが積層体15の厚さ方向(同図では上下方向)の略全体に亘って規則的な積層順序で積層されるように形成されている。
ここで、積層体15の厚さ方向とは、炭素繊維塗工箔11A及び鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aの積層方向であり、この方向は上述した複合材18のZ方向と一致する。
炭素繊維塗工箔11Aと鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとについての積層順序の単位16は、「炭素繊維塗工箔11A/鱗片状黒鉛粒子塗工箔12A」という単位である。そして、積層体15において、炭素繊維塗工箔11Aと鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとは、この積層順序単位16が積層体15の厚さ方向にその略全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って積層された状態に配列している。
積層順序単位16中に存在する炭素繊維塗工箔11Aと鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとの枚数比は1:1である。そして、炭素繊維塗工箔11Aと鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとは、この枚数比で積層体15の厚さ方向の略全体に亘って配列している。さらに、同図に示すように、積層体15の最上段の炭素粒子塗工箔(同図では炭素繊維塗工箔11A)の上側に、炭素粒子が塗工されていないアルミニウム箔13を更に積層することが好ましい。
次いで、積層体15を加熱焼結し、これにより、積層体15全体に存在する複数の炭素繊維塗工箔11A及び複数の鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aを一括して接合一体化(詳述すると焼結一体化)する。その結果、図5及び6に示した、アルミニウム−炭素粒子複合材の本体(素材)17が得られる。本体17は例えば概略直方体状乃至立方体状である。
積層体15の焼結法は、真空ホットプレス法、パルス通電焼結法(SPS法)、熱間静水圧焼結法(HIP法)、押出法、圧延法などから選択される。
積層体15を加熱焼結する際には、積層体15をその厚さ方向(即ち、炭素繊維塗工箔11A及び鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aの積層方向)に加圧しながら加熱することが好ましい。その理由は積層体15を強固に焼結できるからである。
積層体15を焼結するための積層体15の加熱温度、即ち積層体15の焼結温度は限定されるものではなく、好ましくは550〜620℃である。
積層体15中に存在する第1及び第2バインダーは、積層体15の温度が略室温から焼結温度まで上昇するように積層体15を加熱する途中で昇華、分解などにより消失して積層体15中から除去される。
積層体15を加熱焼結する際において、積層体15が加熱されことにより、第1及び第2アルミニウム箔11、12のアルミニウム材料の一部が各炭素繊維塗工箔11Aの炭素繊維3a間に浸入して炭素繊維3a間の隙間が略消滅する。これにより、各炭素繊維塗工箔11Aの炭素繊維3aがアルミニウムマトリックス9中に層状に分散した状態になり、すなわち複合材の本体17に炭素繊維分散層3が炭素粒子分散層2として形成される。
さらに、第1及び第2アルミニウム箔11、12のアルミニウム材料の一部が各鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aの鱗片状黒鉛粒子4a間に浸入して鱗片状黒鉛粒子4a間の隙間が略消滅する。これにより、各鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aの鱗片状黒鉛粒子4aがアルミニウムマトリックス9中に層状に分散した状態になり、すなわち複合材の本体17に鱗片状黒鉛粒子分散層4が炭素粒子分散層2として形成される。
また、各炭素繊維塗工箔11Aの第1アルミニウム箔11と各鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aの第2アルミニウム箔12とが複合材の本体17のアルミニウム層1になる。
次いで、図5に示すように、複合材の本体17を複合材18のZ方向(即ち、複合材18における炭素粒子分散層2とアルミニウム層1との積層方向)と略平行な切断面19(一点鎖線で示す)にてスライス状に切断し、これにより、図7に示すように上配線層形成用の板状のアルミニウム−炭素粒子複合材18を得る。そして、この複合材18のZ方向が上配線層21のa方向に向くように上配線層21を複合材18で形成する。
詳述すると、上配線層21が複合材18で形成された状態では、複合材18のZ方向は上述したように上配線層21のa方向(即ち上配線層21の幅方向W)に向いており、複合材18のX方向は上配線層21のb方向(即ち上配線層21の長さ方向L)に向いており、複合材18のY方向は上配線層のc方向(即ち上配線層21の厚さ方向T)に向いている。
本第1実施形態の冷却装置20Aでは、上述したように、上配線層21を形成する複合材18における炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4とアルミニウム層1とが上配線層21のa方向に規則的な積層順序に配列している。これにより、冷却装置20Aの冷却性能及び冷熱信頼性を確実に高めることができる。
図8は、本発明の第2実施形態に係る冷却装置20Bにおける図3に対応する拡大断面図である。この図において、上記第1実施形態の冷却装置20Aの要素と同じ作用を奏する要素には、上記第1実施形態の冷却装置20Aの要素に付された符号と同じ符号が付されている。以下、本第2実施形態について上記第1実施形態との相異点を中心に説明する。
同図に示すように、本第2実施形態の冷却装置20Bでは、上配線層21を形成するアルミニウム−炭素粒子複合材18における炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4とアルミニウム層1とについての積層順序の単位7は、「アルミニウム層1/炭素繊維分散層3/アルミニウム層1/鱗片状黒鉛粒子分散層4/アルミニウム層1/鱗片状黒鉛粒子分散層4」という単位である。そして、複合材18(上配線層21)において、炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4とアルミニウム層1とは、この積層順序単位7が上配線層21のa方向にその略全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って積層された状態に配列している。
積層順序単位7中に存在する炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4との層数比は1:2である。そして、炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4とは、この層数比で上配線層21のa方向の略全体に亘って配列している。
複合材18の本体17は、次のような構成の積層体15を加熱焼結することにより得られる。
積層体15は、複数の炭素繊維塗工箔11Aと複数の鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとが積層体15の厚さ方向の略全体に亘って規則的な積層順序で積層されるように形成されている。
炭素繊維塗工箔11Aと鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとについての積層順序の単位16は、「炭素繊維塗工箔11A/鱗片状黒鉛粒子塗工箔12A/鱗片状黒鉛粒子塗工箔12A」という単位である。そして、積層体15において、炭素繊維塗工箔11Aと鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとは、この積層順序単位16が積層体15の厚さ方向にその略全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って積層された状態に配列している。
積層順序単位16中に存在する炭素繊維塗工箔11Aと鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとの枚数比は1:2である。そして、炭素繊維塗工箔11Aと鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとは、この枚数比で積層体15の厚さ方向の略全体に亘って配列している。
図9は、本発明の第3実施形態に係る冷却装置20Cにおける図3に対応する拡大断面図である。この図において、上記第1実施形態の冷却装置20Aの要素と同じ作用を奏する要素には、上記第1実施形態の冷却装置20Aの要素に付された符号と同じ符号が付されている。以下、本第3実施形態について上記第1実施形態との相異点を中心に説明する。
同図に示すように、本第3実施形態の冷却装置20Cでは、上配線層21を形成するアルミニウム−炭素粒子複合材18における炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4とアルミニウム層1とについての積層順序の単位7は、「アルミニウム層1/炭素繊維分散層3/アルミニウム層1/炭素繊維分散層3/アルミニウム層1/鱗片状黒鉛粒子分散層4」という単位である。そして、複合材18(上配線層21)において、炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4とアルミニウム層1とは、この積層順序単位7が上配線層21のa方向にその略全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って積層された状態に配列している。
積層順序単位7中に存在する炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4との層数比は2:1である。そして、炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4とは、この層数比で上配線層21のa方向の略全体に亘って配列している。
複合材18の本体17は、次のような構成の積層体15を加熱焼結することにより得られる。
積層体15は、複数の炭素繊維塗工箔11Aと複数の鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとが積層体15の厚さ方向の略全体に亘って規則的な積層順序で積層されるように形成されている。
炭素繊維塗工箔11Aと鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとについての積層順序の単位16は、「炭素繊維塗工箔11A/炭素繊維塗工箔11A/鱗片状黒鉛粒子塗工箔12A」という単位である。そして、積層体15において、炭素繊維塗工箔11Aと鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとは、この積層順序単位16が積層体15の厚さ方向にその略全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って積層された状態に配列している。
積層順序単位16中に存在する炭素繊維塗工箔11Aと鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとの枚数比は2:1である。そして、炭素繊維塗工箔11Aと鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとは、この枚数比で積層体15の厚さ方向の略全体に亘って配列している。
図10は、本発明の第4実施形態に係る冷却装置20Dにおける図3に対応する拡大断面図である。この図において、上記第1実施形態の冷却装置20Aの要素と同じ作用を奏する要素には、上記第1実施形態の冷却装置20Aの要素に付された符号と同じ符号が付されている。以下、本第4実施形態について上記第1実施形態との相異点を中心に説明する。
同図に示すように、本第4実施形態の冷却装置20Dでは、上配線層21を形成するアルミニウム−炭素粒子複合材18は、アルミニウムマトリックス9中に炭素繊維3a及び鱗片状黒鉛粒子4aが混合分散した複数の炭素繊維−鱗片状黒鉛粒子混合分散層5(これを「混合分散層5」ともいう)を複数の炭素粒子分散層2として含んでいる。複合材18において混合分散層5とアルミニウム層1とは、上配線層21のa方向に交互に複数積層された状態に配列している。そして、複数の混合分散層5と複数のアルミニウム層1とがこの積層状態で接合一体化(詳述すると焼結一体化)されている。
上配線層21を形成する複合材18における混合分散層5とアルミニウム層1とについての積層順序の単位7は、「アルミニウム層1/混合分散層5」という単位である。そして、複合材18(上配線層21)において、混合分散層5とアルミニウム層1とは、この積層順序単位7が上配線層21のa方向にその略全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って積層された状態に配列している。
上記上配線層21を形成するアルミニウム−炭素粒子複合材18の本体17は、次のような構成の積層体15を加熱焼結することにより得られる。
積層体15は、複数の炭素繊維−鱗片状黒鉛粒子混合塗工箔(これを「混合塗工箔」ともいう)を積層することにより形成される。
混合塗工箔は、炭素繊維3a及び鱗片状黒鉛粒子4aが混合状態でアルミニウム箔上にその略全体に亘って塗工されたものである。アルミニウム箔上の炭素繊維3a及び鱗片状黒鉛粒子4aはバインダーによってアルミニウム箔に結着している。
混合塗工箔は、バインダーが溶剤で溶解したバインダー液と炭素繊維3aと鱗片状黒鉛粒子4aとを含む塗料をアルミニウム箔上に塗工し乾燥することにより、製作される。塗料は、炭素繊維3aと鱗片状黒鉛粒子4aとを混合状態に含むものである。この場合、炭素繊維3aと鱗片状黒鉛粒子4aとはバインダー液(塗料)中に略均一に分散し且つ略均一に混合されている。
次いで、積層体15を加熱焼結し、これにより、積層体15全体に存在する複数の混合塗工箔を一括して接合一体化(詳述すると焼結一体化)する。その結果、アルミニウム−炭素粒子複合材18の本体17が得られる。その後は上記第1実施形態と同じ方法で上配線層21を複合材18で形成する。
以上で本発明の幾つかの実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
本発明では、アルミニウム−炭素粒子複合材18における積層順序単位7中に存在する炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4との層数比は1:1(第1実施形態)、1:2(第2実施形態)、2:1(第3実施形態)に限定されるものではなく、上配線層21(熱伝導部材)のka、kb、kc、αa、αb及びαcが上述した所定の式を満足するように設定されることが好ましい。したがって、この層数比は、1:1、1:2及び2:1の他に例えば1:3〜10であってもよいし3〜10:1であってもよい。
また本発明では、上配線層21(熱伝導部材)を形成するアルミニウム−炭素粒子複合材18は、複数の炭素繊維分散層3と複数の鱗片状黒鉛粒子分散層4と複数の炭素繊維−鱗片状黒鉛粒子混合分散層5とを複数の炭素粒子分散層2として含んでいてもよい。この場合、複合材18における炭素繊維分散層3と鱗片状黒鉛粒子分散層4と炭素繊維−鱗片状黒鉛粒子混合分散層5とアルミニウム層1とは、上配線層21(熱伝導部材)のa方向に規則的な積層順序に配列することが好ましい。
本発明の具体的な実施例及び比較例を以下に示す。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1では、図1〜7に示した上記第1実施形態の冷却装置20Aを以下の方法で製造した。なお、実施例1を理解し易くするため、上記第1実施形態の冷却装置20Aの要素に付された符号を用いて実施例1を説明する。
炭素繊維3aと第1バインダー液とを混合状態に含む第1塗料を調製した。
炭素繊維3aは、平均繊維長さ150μm及び平均繊維直径10μmのピッチ系炭素繊維であった。第1バインダー液は、ポリエチレンオキサイド(PEO)とポリビニルアルコール(PVA)との混合物の水溶液であった。第1塗料において、炭素繊維3aは第1バインダー液(第1塗料)中に略均一に分散していた。
そして、第1塗料を第1アルミニウム箔11上に塗工し乾燥することにより、第1アルミニウム箔11上に炭素繊維3aが所定の塗工量で塗工された炭素繊維塗工箔11Aを製作した。この塗工箔11Aでは、炭素繊維3aの長さ方向は第1アルミニウム箔11の平面(即ち第1アルミニウム箔11の表面と平行な面)内において略ランダムに向いており、したがって炭素繊維3aは第1アルミニウム箔11の平面内において殆ど配向していなかった。
また、鱗片状黒鉛粒子4aと第2マインダー液とを混合状態に含む第2塗料を調製した。
鱗片状黒鉛粒子4aは、その最長軸方向の平均長さが300μmであり、そのアスペクト比が30であった。第2バインダー液はPEOとPVAとの混合物の水溶液であった。第2塗料において、鱗片状黒鉛粒子4aは第2バインダー液(第2塗料)中に略均一に分散していた。
そして、第2塗料を第2アルミニウム箔12上に塗工し乾燥することにより、第2アルミニウム箔12上に鱗片状黒鉛粒子4aが所定の塗工量で塗工された鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aを製作した。この塗工箔12Aでは、鱗片状黒鉛粒子4aの平面方向が第2アルミニウム箔12の表面と平行になるように鱗片状黒鉛粒子4aが第2アルミニウム箔12上に分散されており、したがって鱗片状黒鉛粒子4aは第2アルミニウム箔12の平面内において殆ど配向していなかった。
次いで、図4に示すように、炭素繊維塗工箔11Aと鱗片状黒鉛粒子塗工箔12Aとを交互に複数積層することにより積層体15を形成した。この積層体15を真空中にて600℃で加熱焼結することにより、図5に示すようにアルミニウム−炭素粒子複合材の本体17を製造した。この本体17において、複合材に対する炭素繊維3aの体積含有率Vfcと複合材に対する鱗片状黒鉛粒子4aの体積含有率Vfgとを、それぞれ図1中の「Vfc」欄及び「Vfg」欄に記載した。
その後、複合材の本体17を複合材のZ方向と平行な切断面19にてスライス状に所定の厚さで切断し、これにより、図7に示すように上配線層形成用の平面視略長方形の板状のアルミニウム−炭素粒子複合材(詳述すると板状のアルミニウム−炭素粒子複合体)18を得た。
そして、複合材18のZ方向が上配線層21のa方向(即ち上配線層21の幅方向W)に向き且つ複合材18のX方向が上配線層21のb方向(即ち上配線層21の長さ方向L)に向き且つ複合材18のY方向が上配線層21のc方向(即ち上配線層21の厚さ方向T)に向くように上配線層21を複合材18で形成(製作)した。上配線層21の厚さは0.6mmであった。
また、上述した複合材18の本体17から、上配線層21のa方向(複合材18のZ方向)の熱伝導率kaと上配線層21のb方向(複合材18のX方向)の熱伝導率kbと上配線層21のc方向(複合材18のY方向)の熱伝導率kcとを測定するための試料をそれぞれ採取した。そして、各試料についてレーザーフラッシュ法により熱拡散率を測定し、これに試料の密度と試料の比熱を乗じることにより各熱伝導率ka、kb及びkcを算出した。なお、ka、kb及びkcはいずれも25℃での値である。この測定結果を表1中の「ka」欄及び「kb、kc」欄に記載した。ここで、kbとkcは同じ値であったため、両者をまとめて「kb、kc」欄に記載している。
さらに、複合材18の本体17から線膨張率測定用試料を採取し、この試料について、上配線層21のa方向(複合材18のZ方向)の線膨張率αaと上配線層21のb方向(複合材18のX方向)の線膨張率αbと上配線層21のc方向(複合材18のY方向)の線膨張率αcとをそれぞれ熱機械分析装置により測定した。なお、αa、αb及びαcはいずれも50℃から250℃の範囲における平均線膨張率の値である。この測定結果を表1中の「αa」欄及び「αb、αc」欄に記載した。ここで、αbとαcは同じ値であったため、両者をまとめて「αb、αc」欄に記載している。
次いで、上配線層21を用いて図1に示した冷却装置20Aを製造するとともに、上配線層21の搭載面21aにはんだ層26を介して発熱性素子としての半導体チップ27を接合することで半導体チップ27を搭載面21aに搭載した。
この冷却装置20Aに対して−40℃〜125℃の温度範囲及び1000サイクルの試験条件で冷熱サイクル試験を行った。そして、上配線層21とはんだ層26との間の接合界面、はんだ層26と半導体チップ27との間の接合界面、及び、上配線層21と絶縁層22との間の接合界面をそれぞれ超音波探傷器により評価した。その結果を表1中の評価欄に示した。
なお、評価欄において、符号「○」は接合界面に亀裂及び剥離が発生しておらずよって接合界面が良好であったこと、並びに、符号「×」は接合界面に剥離及び亀裂の少なくとも一方が発生しておりよって接合界面が不良であったことを意味している。
<実施例2、3、比較例1〜3>
実施例2、3、及び比較例1〜3では、Vfc及びVfgの値をそれぞれ表1中の「Vfc」欄及び「Vfg」欄に記載の値に変更したこと以外は上記実施例1と同じ方法によって上配線層を製作するとともに、上配線層を用いて製造された冷却装置に対して上記実施例1と同様に冷熱サイクル試験を行った。そして、上配線層21とはんだ層26との間の接合界面、はんだ層26と半導体チップ27との間の接合界面、及び、上配線層21と絶縁層22との間の接合界面をそれぞれ上記第1実施例と同じ方法で評価した。その結果を表1中の評価欄に示した。
表1から分かるように、上配線層21におけるka、kb及びkcが上記式1及び2を満足するとともに、上配線層21におけるαa、αb及びαcが上記式3〜5を満足している場合、すなわち実施例1〜3の場合は、冷却装置20Aの上述した接合界面が良好であり、したがって冷却装置20Aの冷熱信頼性が高いことを確認し得た。